« 2019年1月 | トップページ | 2019年3月 »

2019年2月

2019年2月28日 (木)

2019年2月のお仕事

2019年2月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※2月26日更新)


[WEB] 2月26日、「リアルサウンド」にてNICKELBACKのライブ評「Nickelback、モンスターバンドならではの充実感あるライブに 熱狂に包まれた6年ぶり日本武道館」が公開されました。

[紙] 2月23日発売「BRODY」2019年4月号にて、佐藤詩織×鈴本美愉、守屋茜(以上、欅坂46)、TAKAHIROの各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 2月23日発売「アップトゥボーイ」2019年4月号にて、欅坂46 2期生 井上梨名、田村保乃、森田ひかるの各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月19日、「リアルサウンド」にてGALNERYUSのライブ評「GALNERYUSはHR/HM界の至宝だーーEX THEATER ROPPONGIで目撃した“伝説の一夜”」が公開されました。

[WEB] 2月16日、「リアルサウンド」にてONE OK ROCKのアーティスト評「ONE OK ROCKが国内外で続けるあくなき挑戦 カテゴライズ超越した『Eye of the Storm』を聴いて」が公開されました。

[WEB] 2月15日、「リアルサウンド」にてましのみインタビュー「ましのみ『ぺっとぼとレセプション』は“聴き手に寄り添う”作品に 楽曲制作に活かされた経験と成長」が公開されました。

[WEB] 2月14日、「NIKKEI STYLE」にて「乃木坂46のドラマ『ザンビ』 齋藤・堀に女優の魅力」(「日経エンタテインメント!」2019年2月号掲載記事を再構成)が公開されました。

[CD] 2月6日発売のCONVERGEのアルバム「THE DUSK IN US」日本盤にて、ライナーノーツを執筆しました。(Amazon

[紙] 2月4日発売「日経エンタテインメント!」2019年3月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月2日、「『ヘドバン』界隈が選ぶ“2018年のメタル系アルバム・ベスト20” 」に寄稿しました。

[CD] 2月1日発売のWITHIN TEMPTATIONのアルバム「RESIST」日本盤にて、ライナーノーツを執筆しました。(Amazon


=====


また、1月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1901号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

HEART『BRIGADE』(1990)

1990年3月に発表された、HEART通算10作目のオリジナルアルバム。再ブレイクのきっかけとなったメガヒット作『HEART』(1985年)、それをフォローアップする『BAD ANIMALS』(1987年)の流れを汲む“80’s路線”の最終作で、全米3位まで上昇し200万枚を超えるヒット作となりました。また、本作からは「All I Wanna Do Is Make Love To You」(全米2位)という代表曲が生まれたほか、「I Didn't Want To Need You」(同23位)、「Stranded」(同13位)、「Secret」(同64位)がシングルカットされています。

過去2作を手がけたロン・ネヴィソン(オジー・オスボーン、http://www.tmq-web.com/europe/index.html、KISS、SURVIVORなど)から離れ、今作ではリッチー・ズィトー(CHEAP TRICKBAD ENGLISHPOISONMR. BIGなど)がプロデュースを担当。前作『BAD ANIMALS』以上にツルツルにブラッシュアップした産業ロックサウンドで構築された、非常に高品質なロック/ポップアルバムに仕上げられています。

また、恒例となった外部ソングライターの起用もさらに強化され、DEF LEPPARDブライアン・アダムスで知られるジョン・マット・ラングを筆頭に、ホリー・ナイトやアルバート・ハモンド、ダイアン・ウォーレン、トム・ケリー、ビリー・スタインバーグなどそうそうたるメンツが参加。さらに、HEART初期作品からおなじみのスー・アニスにくわえ、メンバーのデニー・カーマッシ(Dr)のMONTROSE時代の盟友であるサミー・ヘイガー(当時はVAN HELEN在籍)や、そのサミーのソロバンドのメンバーであるジェシ・ハームズなどの名前もクレジットに見つけることができます。

先に「非常に高品質なロック/ポップアルバム」と書きましたが、もちろんハードロック的側面を持つ楽曲も残っています。それはオープニングの「Wild Child」やブラスサウンドをフィーチャーした「Talk, Dark Handsome Stranger」、ヘヴィなミドルナンバー「The Night」あたりから感じることができるでしょう。しかし、それも“80年代のAEROSMITH”的範疇に収まるもの、と言えばなんとなくご理解いただけるのではないでしょうか。その“適度さ”や“程よさ”はある一定の枠からはみ出しておらず、そこに物足りなさを感じるリスナーもいるかもしれません。

とはいえ良曲目白押しなので、そういった点では貶しようが一切なし。アン・ウィルソン(Vo)の圧倒的な歌声も健在だし、「All I Wanna Do Is Make Love To You」みたいにロック/ポップス両サイドで完全無敵な存在感を示す1曲も存在する。完全にやり切った感の強い1枚なんじゃないでしょうか。そういった意味では(タイミング的なものもありますが)、僕的にはAEROSMITHの『PUMP』(1989年)と並ぶ傑作だと思っています。



▼HEART『BRIGADE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "HEART『BRIGADE』(1990)" »

2019年2月27日 (水)

BRYAN ADAMS『RECKLESS』(1984)

1984年11月に発表された、ブライアン・アダムス通算4作目のオリジナルアルバム。ブレイクのきっかけを掴んだ前作『CUTS LIKE A KNITE』(1983年)からほぼ2年ぶりの新作で、「Run To You」(全米6位)、「Somebody」(同11位)、「Summer Of '69」(同5位)、「One Night Love Affair」(同13位)、「It's Only Love」(同15位)とヒットシングルを次々に生み出し、ついには「Heaven」で初の全米1位を獲得。アルバム自体も本国カナダで初の1位に輝き、アメリカでも1位、イギリスでは最高7位という好成績を残しています。また、セールス的にもアメリカのみで500万枚超えと、過去最大のヒット作となりました。

前作からの流れがあったとはいえ、全10曲中6曲がシングルカットされたという事実からもわかるように、とにかくこのアルバムは最初から最後まで完全無敵すぎるんですね。この頃になるとマイケル・ジャクソン『THRILLER』(1982年)を機に、1枚のアルバムからどれだけヒットシングルが産み落とせるか……言い換えれば、どれだけシングル級のクオリティの楽曲だけでアルバムを完成させるかということにも意識的だったのではないかと思うのです。

また、MTV全盛の時代に入ったものの、まだまだラジオから生まれるヒット曲というのも多かった時代。映像的なヴィジュアル重視はもちろんですが、それがなくても“勝てる”作品づくりは、この当時のアメリカではとにかく大切にされていたのではないでしょうか。

そういった意味で、このアルバムは本当に隙がないし、捨て曲も皆無。しかも、ちゃんとブライアン・アダムスという人のキャラクターを理解しているのか、全10曲中でバラードはたったの1曲(「Heaven」)のみ。若きロックスターとしてのイメージを前面に打ち出し、それを完璧なまでに具現化させた。硬派な「Run To You」や「Somebody」もあれば、フレッシュな「Summer Of '69」や「She's Only Happy When She's Dancin’」もある。かと思えば、攻め攻めに突っ走るライブ向きな「Kids Wanna Rock」や「Ain't Gonna Gry」もあるし、当時大ヒットを飛ばしていたティナ・ターナーをフィーチャーした豪快な「It's Only Love」まであるのですから……適度にポップで適度にハード。これがもうちょっと硬質になると、のちのBON JOVIにつながっていくんでしょうね。そして、もうちょっとソフトになるとJOURNEYになる……というのは言い過ぎかな。

数年前に30周年盤が出たばかり……と思っていたら、あれももう5年前の話で、本作は今年で発売35周年を迎えるという事実におののいています。まさに青春真っ盛り、中2だった自分が毎日大音量で聴きまくったこのアルバム。今聴いてもまったく飽きがこないし、古臭いと感じない。青春の甘酸っぱさとほろ苦さが真空パックされた、80年代を代表する、いや、20世紀をだい評する“青春ロック”アルバムとして全世代にオススメしたい1枚です。



▼BRYAN ADAMS『RECKLESS』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 国内盤2CD+DVD+Blu-ray Audio / 海外盤CD / 海外盤2CD / 海外盤2CD+DVD+Blu-ray Audio / MP3

続きを読む "BRYAN ADAMS『RECKLESS』(1984)" »

2019年2月26日 (火)

TNT『INTUITION』(1989)

1989年初頭にリリースされた、TNTの4thアルバム。前作『TELL NO TALES』(1987年)が“北欧メタル”の流れに乗り、ここ日本でも高く評価されたことを受け発表された今作。前作で見せたポップでキャッチーな路線を押し進めた、非常に耳障りの良い1枚に仕上がっています。

オープニングのインタールード「A Nation Free (Intro)」でのドラマチックな展開は、往年のQUEENを思わせるものがあり、これから始まる煌びやかな世界への期待を高めるに十分な役割を果たしてくれます。で、そこからどんな曲に続くのかと思えば、それまでのTNTからしたら異色の「Caught Between The Tigers」。跳ね気味のリズムが印象的な、世が世ならファンクメタルと呼びたくなるような1曲で聴き手を驚かせます。

そんな予想外な流れから、リードシングル「Tonight I'm Falling」へと続くのですが、この王道ポップメタルを初めて聴いたときの感動といったら……キラキラしたメロディはもちろんのこと、それを華麗に演出するバンドアンサンブルをはじめ、トニー・ハーネル(Vo)のハイトーンボーカルやロニー・ル・テクロ(G)のテクニカルなギターソロなど、とにかくすべての要素が完璧な形で合致した、傑作中の傑作と言えるでしょう。

さらにそこから、分厚いコーラスとドラマチックなアレンジが素晴らしいバラード「End Of The Line」、先の「Tonight I'm Falling」をよりポップかつキャッチーに昇華させたタイトルトラック「Intuition」と続き、アルバム前半はあっという間に終了。後半はヘヴィなリフとグルーヴィーなリズム、パワフルなポーカルの相性も抜群な「Forever Shine On」から始まり、ポップ路線の「Learn To Love」、ロニーが歌うおふざけ調の短尺曲「Ordinary Lover」、「Tonight I'm Falling」や「Intuition」と並ぶポップチューン「Take Me Down (Fallen Angel)」、北欧のバンドらしい陰りと感動的なメロディ&アンサンブルが絶妙なハーモニーを生み出すバラード「Wisdom」で幕を下ろします。

全10曲で37分と標準よりも短めの作品で、インタールード的な楽曲が2曲含まれているので歌モノは実質8曲となりますが、前作も全11曲で30分強という短さだったので、それと比べたら……とは思いつつも、もう2曲くらい欲しかった印象も。ですが、この10曲で完璧な構成を構築してしまっているので、ほかにどんな曲が加えればいいのか悩ましいところ。これはこれで正解だったんでしょうね。

ちなみに本作、当時としてはかなり音質の素晴らしいアルバムだった印象があります。ギターの音色やドラムの質感など、当時としてはかなり異色でしたよね。確かドラムに関しては、ケネス・オディイン(Dr)がバスドラ、スネア、タム、シンバルなど曲に合った最良の音をサンプリングし、それをトリガーだったかエレドラだったかを使って叩くという、緻密な作業が繰り広げられていたそうなんです(と、当時の音楽誌で読んだ記憶があります)。今でこそそういった手法は珍しくないですが、30年前の、しかもハードロックバンドでここまで徹底して作り込んでいたのって、おそらくDEF LEPPARDぐらいじゃないかって気がします。あとは『OUT OF THIS WORLD』(1988年)期のEUROPEとか。そう考えると、本作の方向性って“北欧版『HYSTERIA』”と言えるんじゃないかな……言い過ぎですか?

前作にあったメタリックなファストチューンは皆無ですが、ここまでに名前が挙がったようなバンドに興味がある方なら絶対に興味を示す1枚だと思います。日本ではなぜか本作のデジタル配信およびストリーミングは行われていませんが、ぜひ盤で聴いてみることをオススメします。



▼TNT『INTUITION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

2019年2月25日 (月)

LUCER『GHOST TOWN』(2019)

デンマーク・コペンハーゲン出身の4人組バンド、LUCERが2019年1月(日本では2月)にリリースした2ndアルバム。『BRING ME GOOD NEWS』(2016年)に続く作品となり、これが日本デビューアルバムになるようです。

ベースボーカル、ギター×2、ドラムという編成の彼らは、過去にWHITE LIONのシンガーだったマイク・トランプのバックバンドも勤めた経験があるそうで、本国では彼らの楽曲がビールのCMに採用されるなど、名実ともに確立されたものがあるみたいですね。

実はこのアルバムから現編成になったようで、それ以前はシングルギターのトリオ編成だったとのこと。プロデュースを手がけたのは同郷の名エンジニア、テュー・マドセン(MESHUGGAHTHE HAUNTEDDIR EN GREYONE OK ROCKなど)。彼が過去に手がけたメンツから、かなり硬派な音をイメージするかと思いますが、聴いてもらえばわかるようにLUCERのサウンドはハードロック、というよりはポップロックの部類に属するもの。上に挙げたバンドの中ではONE OK ROCKあたりにもっとも近いのかな。

資料の中にはこのアルバムに対して「彼らのルーツと言えるNIRVANAOASISRAMONESSEX PISTOLSといったプリミティヴでエナジェティックな影響をうかがわせながら、一方でモータウンやディスコ・ミュージックをはじめとした多種多様な音楽ジャンルのエッセンスを採り込んでいる」との説明がありますが、まあOASISはわかるけど、そのほかは……ポップセンスという意味では納得できますが、いわゆるパンク/ガレージロック的なタイトさ/ワイルドさは感じされる、むしろ昨今のヒットチャートを賑わせるモダンなテイストが強く、要所要所で王道ハードロック的なカラーを取り入れている、と説明するほうが正しいのかなと。

1曲1曲はかなり練られ、作り込まれており、プロデュースのみならずミックスも担当したテュー・マドセンの言葉にある「全曲ヒットする可能性を秘めている」というのもあながち間違いではないなと。

北欧らしい哀愁味は若干薄味。かといって能天気なまでに突き抜けるほどの明るくもなく、どこかくぐもった感覚があるのがデンマーク出身のバンドらしさなのか。80年代中盤、ブライアン・アダムスのヒットを筆頭にこの手のサウンドを持つバンドがカナダやイギリスから続発したなあ……なんてことを急に思い出しました。そういう懐かしさすら感じられる、終始安心して楽しめる極上のポップアルバム。40オーバーはすんなりと楽しめるんじゃないでしょうか。逆に若い世代にはこういった音がどう響くのか、非常に気になるところです。



▼LUCER『GHOST TOWN』
(amazon:国内スペシャルプライス盤CD / 国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "LUCER『GHOST TOWN』(2019)" »

2019年2月24日 (日)

RISE OF THE NORTHSTAR『THE LEGACY OF SHI』(2018)

2019年10月(日本では11月)リリースの、RISE OF THE NORTHSTAR通算2作目のフルアルバム。彼らはフランス出身の5人組ハードコア/ニューメタルバンドで、前作『WELCAME』(2014年)は本国から1年遅れの2015年夏にここ日本でも発売されています。

ご存知のとおり、彼らは大の日本/ジャパニーズカルチャー好き。バンド名は漫画『北斗の拳』がモチーフだし、ステージ衣装は不良漫画をイメージした学ラン、曲中には『ドラゴンボール』をはじめとした日本の漫画/アニメのキーワードや渋谷など日本の地名、侍や不良などのワードが登場するほどで、来日経験も多数。そもそも、今回のアルバムジャケットにもしっかり『SHIの伝承(英タイトルの日本語訳)』と記されています(これ、日本盤のみならず海外盤も一緒ですから)。

アルバム全体がというわけではないですが、本作中の数曲はコンセプチュアルな関連性を持っているようで、それがアルバムタイトルの『SHIの伝承』につながるようです。インタビューなどによると、この“SHI”には日本で言うところの「士」や「死」「詩」など複数の意味を持たせているとのことで、その解釈によってストーリーの感じ方も異なるんだとか。そのへんはぜに歌詞や対訳で確認してもらいたいところです。

さて、気になるサウンドですが……前作までに存在したオールドスクールなハードコア路線が後退し、モダンなニューメタルやラップメタル(ラップコアでは非ず)色が一気に濃くなっています。そういった意味では、前作に対して若干古臭いイメージを持ったリスナーにも受け入れてもらえるのでは……という気がします。個人的には前作までの路線が好みだったので、残念ではありませんが……。

とかいいながらも、リフワークや楽曲の構成はひたすらカッコいいですし、女性による日本語ナレーションから始まるオープニングからの流れはアメリカの同系統バンドには出せない魅力が感じられます。そんなカッコいい曲を聴いていると、突然「渋谷」だの「サイタマ(地名ではなく漫画『ワンパンマン』の主人公のほう)だの聴き慣れたワードが飛び込んできてドキッとさせられたりクスッとさせられたり。

サウンドプロダクション、楽曲のアレンジ力、アルバムの構成力などは格段の進歩が感じられる、相当な力作ではないかと。特に彼らのようなバンドはここ日本でこそウケなかったらどうするよ?っていう存在だと思うので、ぜひとも温かい目で見守りつつ応援してあげてほしい。そう思わずにはいられません。


▼RISE OF THE NORTHSTAR『THE LEGACY OF SHI』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "RISE OF THE NORTHSTAR『THE LEGACY OF SHI』(2018)" »

2019年2月23日 (土)

KING 810『SUICIDE KING』(2019)

2019年1月にリリースされたKING 810の3rdアルバム。過去2作はかのRoadrunner Recordsから発表されていましたが(といっても2枚とも日本盤未発売)、本作から完全自主レーベルでのリリース。それもあってかCDなどフィジカルでの発売はなし、MP3と各種ストリーミングサービスでの配信のみとなります。

前作『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016年)リリース後にアンドリュー・ビール(G)とアンドリュー・ワークマン(Dr)が相次いで脱退。現在はデヴィッド・ガン(Vo)とユージーン・ギル(B)の2人のみで活動を続けているようです。

デビューアルバム『MEMOIRS OF A MURDERER』(2014年)でのNYハードコア的なオールドスクールサウンド、前作でのモダンヘヴィネス色を強めた方向性と作品ごとに変化を重ねてきた“全米一危険なバンド”ことKING 810ですが、今作もヘヴィなミドルテンポの楽曲が中心で(このへんは過去2作の延長線上)、そこにデジタル/インダストリアルの要素が若干加わったような印象を受けます。これは(おそらくですが)ドラムが生音からマシンビートになったことも大きく影響しているのかもしれません。

また、その変化によるものなのかわかりませんが、どことなくヒップホップ色も強まっているような。「.45」あたりは完全にそれですよね。もともとスポークンワードなども取り入れた、独特なボーカルスタイルを見せてきた彼らなだけに、このシフトチェンジ(?)はなるほどといいますか違和感なく入っていけます。

曲によってはメロウなパートも含まれていたり、ピアノを使った曲や女性ボーカルが含まれたパートがあったりと聴きどころも少なくないのですが、どうにも一本調子な印象も。単調なマシンビートに音数が決して多くはないギターリフが乗り、ラップ調のボーカルが重なるわけですから、まあそうなるわな。

前作の感想で「テンポの上げ下げで抑揚をつけることなく、テンポ感はほぼ一定の中で音数や激しさで強弱をつけて聴き手を惹きつける手法は、メタルやラウドロックというよりも映画のサウンドトラック的な印象も」と書きましたが、その片鱗はここにも多少は残っています。「Black Rifle」で聴けるゴシック調の楽曲もそうですが、ギターをただの歪みものとして終わらせず、ひんやりとダークな世界観をカラフルさを演出するための道具として使っているあたりに新しさを感じつつも、「ああ、同じバンドなんだな」と妙に納得したり。

MARILYN MANSONの近作に似ているのかな。聴き終えたときの後味は近いものがあると思います。もはや“全米一危険なバンド”とは言い難いけど、これはこれで悪くないんじゃないかと。聴き手は相当選ぶことになるかと思いますが。



▼KING 810『SUICIDE KING』
(amazon:MP3

続きを読む "KING 810『SUICIDE KING』(2019)" »

2019年2月22日 (金)

LIMP BIZKIT『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』(2000)

2000年10月にリリースされた、LIMP BIZKITの3rdアルバム。前作『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)から1年4ヶ月という短いスパンで発表されていますが、実はその間には映画『ミッション:インポッシブル2』のサウンドトラック(2000年5月発売)にテーマソング「Take A Look Around」も提供しており(本作にも収録)、初の全米No.1を獲得した前作の勢いをよい形で引き継ぐことに成功。前作から引き続き全米1位を記録し、売り上げも700万枚近いセールスに達しています。

プロデューサーは前作から引き続きテリー・デイト(DEFTONESPANTERASOUNDGARDENなど)が担当。基本路線は大ヒット作となった『SIGNIFICANT OTHER』の延長線上にあると言えるでしょう。事実、1作目『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』(1997年)にあった狂気性は完全に払拭され、代わりにバカバカしいまでの陽気さと、それと対比するような陰の要素(過去作にもあったサイケデリックさ含む)が絶妙なラバンスでミックスされた、無敵感の強い1枚に仕上げられています。

そう、本当に無敵といいますか、怖いものナシな姿勢がアルバムを通していろんなところに表出しているんですよね(お下品なアルバムタイトル含め。笑)。それは前作の焼き直しと揶揄されそうなスタイルもそうなんですか、歌われている歌詞もまた然りでして。いろんなものを敵に回しても不思議じゃないくらいの強気さがにじみ出ており、その自信が聴き手にもダイレクトに伝わった結果、ここまで爆発的なヒットを記録できたのではないか……改めてそう思います。

まあ焼き直しは言葉半分にしろ、収録されている楽曲群のカッコ良さはハンパないです。ヒップホップをベースにしたラウドロックは今や腐るほどありますが、『ミッション:インポッシブル』のメインテーマを引用した「Take A Look Around」にしろ、シングルカットされた「My Generation」「Rollin' (Air Raid Vehicle)」にしろ強い即効性がありますし、リリースから20年近く経った今聴いても素直にカッコいいと思える。これこそがオリジネーターの強みなのかなと(まあ、彼ら自身もRAGE AGAINST THE MACHINEKORN以降のバンドではあるのですが)。

と同時に、「My Way」や「The One」「It'll Be OK」「Boiler」のようにヘヴィながらも影があって、じっくり聴かせる曲もしっかり含まれている。「Hold On」なんてALICE IN CHAINSの影響下にあるサイケバラードですからね。そこにXZIBITらをフィーチャーした「Getcha Groove On」みたいな完全なるヒップホップチューンも含まれるんだから、そりゃあ飽きがこないわけですわ。改めて、これがバカ売れしたことに納得です。

残念ながら、LIMP BIZKITの全盛期を本作を最後となり、ウェス・ボーランド(G)の脱退などもあってしばらく低迷期に突入します。その後もメンバーの出入りが続くのですが、現在は黄金期の布陣で活動しているので、そろそろ『GOLD COBRA』(2011年)以来となるオリジナルアルバムにも期待したいところです。



▼LIMP BIZKIT『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "LIMP BIZKIT『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』(2000)" »

2019年2月21日 (木)

DEFTONES『AROUND THE FUR』(1997)

1997年10月(日本は同年11月)リリースの、DEFTONES通算2作目のスタジオアルバム。マドンナが設立したレーベルMaverickからのリリースで、チャートインしなかった前作『ADRENALINE』(1995年)から一変、本作は最高29位まで上昇。ミリオンセールスを記録し、DEFTONESにとっての出世作となりました。

プロデュースは前作から引き続きテリー・デイト(PANTERASOUNDGARDENHELMETなど)が担当。フランク・デルガド(Key, Samplers Turntable)が参加した最初の作品で、このアルバムへのゲスト参加を機に翌1998年にはバンドに正式加入することになります。

また、M-9「Headup」には当時SEPULTURAを脱退したマックス・カヴァレラ(現SOULFLY)がボーカル&ギターで、M-10「MX」にはエイブ・カニンガム(Dr)の妻アナリン・カニンガムがボーカルで、それぞれゲスト参加しております。

ポストハードコアや今でいうニューメタルの延長線上にあったデビュー作『ADRENALINE』も個性的で素晴らしかったものの、続く今作ではシューゲイザーやポストロックからの影響が見え始め、その後の彼らの人気を決定づける要素が早くも確立され始めます。グランジによくあった強弱法(静かなAメロから、サビで激しく爆発するアレンジ)が多用された「My Own Summer (Shove It)」や、UKロック的耽美な歌メロをヘヴィサウンドに乗せて歌う「Be Quiet And Drive (Far Away)」を筆頭に、のちの“DEFTONESらしさ”はすでにここに集約されていた……といっても過言ではない気がします。

また、ターンテーブルのスクラッチや音響系的なサウンドエフェクトを多用し始めたのも、このアルバムから。それこそフランク・デルガドの手腕によるものが大きいのですが、もっと言えばチノ・モレノ(Vo)の脳内にあった青写真を具現化できたからこその結果ではないか、と。ここでの音楽的成長(およびセールス的成功)が自信へとつながり、続く次作『WHITE PONY』(2000年)でその才能が一気に爆発した……この流れ、今振り返ってもゾクゾクしますね。

とはいえ、当時の僕はこのアルバム、完全にスルーしていたんですよね(苦笑)。DEFTONESに完全にハマったのは『WHITE PONY』からで(しかもRADIOHEADに慣れた耳で聴いてハマるという)、後追いで本作にたどり着いたわけでして。今思えば、なんでこれに気づけなかったんだと反省するばかりですが、おかげで今こうしてこのアルバムや『ADRENALINE』も楽しめているわけですから、結果オーライということで(苦笑)。

そんな僕が言うのもなんですが(笑)、本作は90年代後半のヘヴィロック/ラウドシーンを語る上で絶対に欠かせない1枚です。



▼DEFTONES『AROUND THE FUR』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "DEFTONES『AROUND THE FUR』(1997)" »

2019年2月20日 (水)

KORN『UNTOUCHABLES』(2002)

2002年6月に発表された、KORN通算5作目のスタジオアルバム。プロデューサーは前作のブレンダン・オブライエンからマイケル・ベインホーン(SOUNDGARDENRED HOT CHILI PEPPERSMARILYN MANSONなど)に交代。リードシングル「Here To Stay」が初めて全米TOP100入り(72位)したことも手伝い、アルバムは最高2位と3作連続1位こそ逃すものの150万枚程度のヒットを記録しています。セールス的には前作『ISSUES』(1999年)の2分の1程度まで落ち込んでいますが、これは発売前に音源がネット上でリークされてしまったことが悪影響を及ぼしたと言われています。

実はマイケルのプロデューサー起用は一度、3rdアルバム『FOLLOW THE LEADER』(1998年)のときに試みたものの、当時は良い関係を築けずに制作初期に決裂。しかし、バンド側から新たな挑戦としてマイケルとの再タッグが提案され、このコラボレーションが実現しました。

聴いてもらえばわかるように、本作は前作のメロウな路線をさらに進化させ、表現方法的にもさらに幅を広げた相当な実験作。まず驚くのは、ジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱力の向上でしょう。前作まではあくまでアジテーターかつ楽器のひとつとして存在していたボーカルが、ここではしっかり“歌”として独立した表現が確立されているんです。

それにあわせて、バンドアンサンブルも非常に凝ったものとなっており、ラップメタル的な側面は減退。代わりに、その後のサウンドにより色濃く表れることになるニューウェイヴからの影響が見え始めます。この要素はのちの彼らにとって新たな武器になると同時に、のちのジョナサンのソロ作『BLACK LABYRINTH』(2018年)にもつながっていく重要な側面。そういった要素をヘヴィロック/ラップメタルに寄せるのではなく、むしろ新要素側からヘヴィロック側へと接近させる手法を取っているのではないか。そう思わせられる、非常に聴きごたえのある内容に仕上げられています。

聴きようによっては、当時主流だったニューメタルに近いものも感じられますが、もとはそのニューメタルバンドがKORNから影響を受ける側だったはず。でも、ここではKORNがただ流行に乗ったというより、それまで見せてこなかったルーツを露わにすることで格の違いを見せつけた、そう受け取ることはできないでしょうか。

発売当初こそ賛否両論あった本作ですが、今聴くと非常に完成度が高いし、このプログレッシヴかつサイケデリックな要素はのちのラウドロックにも通ずるものがある……いわば、現在のシーンにおける新たなルーツ、教科書的な1枚と言えるのではないか。そういった意味でもKORNの歴史を語る上で、また2000年代のラウドシーンを語る上で欠かせない作品だと断言できます。今こそ再評価されるべき1枚です。



▼KORN『UNTOUCHABLES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "KORN『UNTOUCHABLES』(2002)" »

2019年2月19日 (火)

JUDAS PRIEST『KILLING MACHINE』(1978)

1978年10月に本国イギリスでリリースされた、JUDAS PRIESTの5thアルバム。アメリカでは『HELL BENT FOR LEATHER』と改題され、翌1979年初頭に発表されています。本作からは「Take On The World」(全英14位)、「Evening Star」(同53位)という初のチャートインシングルが生まれ、アルバムも全英32位/全米128位のスマッシュヒットを記録しています。

「Hell Bent For Leather」やFLEETWOOD MACのカバー「The Green Manalishi (With The Two-Pronged Crown)」といった現在までのライブ定番曲に加え、最新の来日公演でも披露された「Running Wild」、ロブ・ハルフォード(Vo)をフィーチャーしたSKID ROWのカバーでおなじみの「Delivering The Goods」など、意外と知名度の高い楽曲も多い本作。ロブが初めて“スタッズ&レザー”を身にまとい、のちに知られるようになるSM的ファッションが定着するきっかけとなった1枚でもあります。

1978年というと、イギリスではパンクロック〜ニューウェイヴの全盛期で、HR/HMシーンはほぼ壊滅状態。アメリカではVAN HALENなど新たな波が生じはじめ、イギリスでもIRON MAIDENなどがオーバーグラウンド浮上に向けて動き始めた時期ですが、そんな中でJUDAS PRIESTはそれ以前の古典的なハードロック(プログレッシヴロックの影響下にあるドラマチックな展開を持つアレンジなど)と、次作『BRITISH STEEL』(1980年)での“コンパクト&ストレート”な路線との間の時期でもありました。

もちろん、前作『STAINED CLASS』(1978年)と比べたらかなりモダンになり始めていますし、のちのヘヴィメタル路線に通ずる要素もほんの少しですが備わり始めています。「Take On The World」のようなオーディエンスとシンガロングできる楽曲の誕生も、次作に向けた変化を予兆させる1曲と言えるでしょう。

また、バラードにしても前作だったらドラマチックな大作「Beyond The Realms Of Death」なのに対し、今作では3分半程度のコンパクトなアコースティックナンバー「Before The Dawn」だったりする。もっと言えば、続く『BRITISH STEEL』ではバラードが排除されているので、そういった意味でも本作は過渡期的1枚なのかもしれません。

そういえば、本作のタイトルトラック「Killing Machine」が先日、41年ぶりに演奏されたことが大きなニュースとなりました。本作のリリースツアー以来やってなかったということですよね。それもすごいな。そして、この曲が意外と今のプリーストに合ってることも、昨年末のツアーを観た人ならなんとなく共感してもらえるのではないでしょうか。

日本では前作『STAINED CLASS』の人気が高いし、海外では次作『BRITISH STEEL』が高く評価されている。そういった意味ではこの『KILLING MACHINE』は、やっぱり高い山の間にある隠れた名盤的な立ち位置なのかな。個人的にはかなり好きな部類に入る1枚なんですけどね。



▼JUDAS PRIEST『KILLING MACHINE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3))

続きを読む "JUDAS PRIEST『KILLING MACHINE』(1978)" »

2019年2月18日 (月)

LED ZEPPELIN『PHYSICAL GRAFFITI』(1975)

1975年2月に発表された、LED ZEPPELIN通算6作目のスタジオアルバム。前作『HOUSES OF THE HOLY』(1973年)から2年ぶりと、それまでの彼らのキャリア中最長のスパンを経て発表された、初にして唯一の2枚組オリジナルバムです。

前年1974年に初めてツアーを行わなかった彼らですが、その間にはジョン・ポール・ジョーンズ(B, Key)の脱退騒ぎがあり(当時は噂レベルですが、のちに本人が認めています)、結局バンドにとどまることとなったジョンはメンバーとともに1974年春からレコーディングに突入。8曲の新曲を完成させますが、長さ的には当時のアルバム1枚半分近いボリュームとなり、全部リリースしたかった彼らは「だったら」とそれまでの未発表音源を掘り起こし、7曲を追加する形で正式リリースへとこぎつけました。

未発表曲は古いもので3rdアルバム『LED ZEPPELIN III』(1970年)制作時のアウトテイク「Bron-Yr-Aur」(この頃の彼ららしい、トラッドミュージック風のアコースティックインスト)、それ以外は4thアルバム『LED ZEPPELIN IV』(1971年)から3曲、前作から3曲という内訳。前作のタイトルトラックとなる予定だった「Houses Of The Holy」や「The Rover」など、なんでこれが本編から漏れたの?という曲も多く、寄せ集め感が皆無なところはこのバンドらしいといいますか。とにかくそのボリュームと内容の濃さに驚かされるばかりです。

若い頃は派手な「Custard Pie」や王道ブルースハードロック「In My Time Of Dying」、かの日本のバンドも元ネタにしたファンクロック「Trampled Under Foot」、名曲中の名曲「Kashmir」などがまとまったDISC 1ばかり聴いていましたが、実はこのアルバムの本筋はDISC 2にこそあるんじゃないか……最近聴き返してそんな気がしていました。

シンセサイザーを導入した長尺の「In The Light」や、後半からの展開に続々するムーディーなロック「Down By The Seaside」、前作で見せた新境地をさらに突き詰めた「Ten Years Gone」、『LED ZEPPELIN IV』のアウトテイクながらも軽快かつ大らかなノリの「Night Flight」、スリリングなギターリフがカッコいい「The Wanton Song」、“ストーンズ第6のメンバー”ことイアン・スチュワート(Piano)をフィーチャーしたノリノリのロックンロール「Boogie With Stu」、『LED ZEPPELIN III』の路線を進化させた「Black Country Woman」、そしてツェッペリンらしい王道ハードロック「Sick Again」と非常にバラエティに富んだ楽曲が並んでいる。ぶっちゃけ、統一感がないっちゃあないんですが、そんな不満を言わせないくらい圧倒感が上回っている。そこに“ザ・王道”なDISC 1が加わるわけですから、確かに最強なんですよね。

このアルバムがもっとも好きという声が多いというのも頷ける話。事実、アメリカでは当時6週連続1位を記録。2枚組にも関わらず1600万枚(800万セット)以上も売り上げている事実がすべても物語っていると思います。1作目から5作目までの集大成的内容でもあるので、中〜後期ツェッペリンの入門編としてもオススメです。



▼LED ZEPPELIN『PHYSICAL GRAFFITI』
(amazon:日本盤2CD / 日本盤3CD / 日本盤ボックスセット / 海外盤2CD / 海外盤3CD / MP3

続きを読む "LED ZEPPELIN『PHYSICAL GRAFFITI』(1975)" »

2019年2月17日 (日)

THUNDER『PLEASE REMAIN SEATED』(2019)

THUNDERが2019年1月に発表した、通算12作目のスタジオアルバム。前作『RIT IT UP』(2017年)から2年ぶり、BMG移籍第1弾作品となります。本国イギリスでは2015年の前々作『WONDER DAYS』(全英9位)、前作『RIT IT UP』(同3位)に続いて8位という好記録を残しています。

本作はバンドのデビュー30周年を祝福する企画アルバム的内容で、過去の楽曲をアコースティックテイストでリアレンジ&再構築したものとなっています。これは2017年末に発表されたEP『CHRISTMAS DAY』に収録した「Love Walked In」の再録バージョンがきっかけとなり、そこから発展したもの。アルバムは全12曲収録の通常盤に加え、ボーナストラック7曲を追加したCD2枚組バージョン、アナログ盤(12曲)、デジタル(12曲)が用意されています。

内訳は以下のとおり。

<DISC 1(全仕様共通)>
01. Bigger Than Both Of Us [sg「A Better Man」]
02. Future Train [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
03. Girl's Going Out Of Her Head [1st『BACKSTREET SYMPHONY』]
04. I'm Dreaming Again [7th『THE MAGNIFICENT SEVENTH』]
05. Fly On The Wall [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
06. Just Another Suicide [5th『GIVING THE GAME AWAY』]
07. Empty City [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]
08. Miracle Man [9th『BANG!』(2008)]
09. Blown Away [6th『SHOOTING AT THE SUN』]
10. Loser [6th『SHOOTING AT THE SUN』]
11. She's So Fine [1st『BACKSTREET SYMPHONY』]
12. Low Life In High Places [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]

<DISC 2(デラックス盤CDのみ)>
01. Stand Up [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
02. River Of Pain [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
03. Like A Satellite [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]
04. Robert Johnson's Tombstone [8th『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』]
05. Higher Ground [1st『BACKSTREET SYMPHONY』]
06. Everybody Wants Her [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]
07. Long Way From Home [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]

全19曲中、1stアルバム『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)から3曲、2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』(1992年)から5曲、3rdアルバム『BEHIND CLOSED DOORS』(1995年)から4曲、5thアルバム『GIVING THE GAME AWAY』(1999年)から1曲、6thアルバム『SHOOTING AT THE SUN』(2003年)から2曲、7thアルバム『THE MAGNIFICENT SEVENTH』(2005年)から1曲、8thアルバム『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006年)から1曲、9thアルバム『BANG!』(2008年)から1曲、1993年のシングル「A Better Man」のカップリングから1曲。直近2枚および4thアルバム『THE THRILL OF IT ALL』(1997年)からの楽曲が選外で、やはりメジャーから発表され大きなヒットとなった初期3作からの楽曲が大半を占めています。中でも2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』期の楽曲が一番多い(「A Better Man」は同作からのシングルなので、カップリング曲も同時期に録音されたもの)というのは彼らの中で一番評価が高い作品ということなのか、それとも「もう一度やり直したい」と思っている1枚なのか、そのへんが気になるところです(ちなみにチャート上では最高2位とキャリア中もっとも高い記録を残しています)。

オルガンやピアノ、ブルースハープ、女性コーラス、ゴスペルコーラス隊など曲ごとに多彩なゲストを迎えることで、アコースティックセットながらも重厚なアレンジで再構築されている名曲の数々は、曲によってキーを落とすことでダニー・ボウズ(Vo)の中音域の旨味を見事に活かしたものに生まれ変わり、ある曲ではリズムをシャッフルに変えることで新鮮味が加わり、既発曲の再録音盤ですが完全にニューアルバムとして楽しめるのではないでしょうか。

周年の企画盤なので、今後このスタイルがメインになるということはないでしょうが、これもTHUNDERというバンドのルーツであり、これまでの楽曲に混在してきた要素。そのひとつに特化したこのアルバムは聴く人によっては“ロック”であり、ある人には“ロック”ではないかもしれない。だけど、そんなことはどうでもいいほどに優れた楽曲と優れた演奏と優れた歌が楽しめる。もうそれだけで十分じゃないですか。このバンドに関しては、何度もの解散/活動休止を経て、こうやって30周年までたどり着いたわけですから。

個人的にはぜひボーナストラック7曲を含むフィジカルのデラックス盤で楽しんでほしい1枚。特にボーナスディスクのほうにヒットシングル(「Stand Up」「Rever Of Pain」「Like A Satellite」「Everybody Wants Her」)が多く含まれているし、中でもアコギ1本のみで歌われる「Like A Satellite」の渋みは至高の仕上がりですから。



▼THUNDER『PLEASE REMAIN SEATED』
(amazon:海外盤CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

続きを読む "THUNDER『PLEASE REMAIN SEATED』(2019)" »

2019年2月16日 (土)

RIVAL SONS『FERAL ROOTS』(2019)

RIVAL SONSが2019年1月に発表した通算6枚目のスタジオアルバム。本作から新たにLow Country Sound / Atlantic Recordsと契約し、晴れてメジャーリリースを飾ることとなりました。プロデュースはこれまで同様、デイヴ・コブが担当。実は新たに契約したLow Country Sound自体がデイヴ主宰レーベルなので、この流れは自然なものだったりするんですね。

ということで、メジャーに移籍しようが制作陣がこれまでと変わらないので、音そのものに及ぼす変化もまったくなし。相変わらず時代錯誤なオールドスクールかつサイケデリックなハードロックを聴かせてくれます。

ジェイ・ブキャナン(Vo)の太くてソウルフルな歌声は、本作でも健在。冒頭の「Do Your Worst」から最高のボーカルを轟かせています。その後もブルースやソウルをベースにした豪快なハードロックが展開されていくのですが、4曲目「Look Away」ではトラッドミュージック的なアコースティックギター&オルガンで序盤を飾り「おっ!?」と驚かされる。が、2分ほどすると本編(バンド演奏によるストロングスタイルのハードロック)が始まりひと安心(笑)。このテイストは続くタイトルトラック「Feral Roots」にも登場し、ある意味ではこのアルバムにおける武器のひとつと言えるのではないでしょうか。

こういうアレンジの幅が広がったことで、よりロックバンドとしての王道感が強まったと感じたのは僕だけでしょうか。このアコースティックアレンジ含め、スコット・ホリデイ(G)のギターワークは過去の作品と比べても特に本作では秀でていると思います。と同時に、デイヴ・ベステ(B)&マイク・マイリー(Dr)によるシンプルで無駄がなく、それでいてぶっとくて耳に残るリズムアンサンブルは昨今のこの手のロックバンドの中でも最強だと断言できます。

中盤以降も最高にソウルフルな「Too Bad」や「Stood By Me」、中期ツェッペリンを彷彿とさせるサイケな「All Directions」、打ち込み同期アレンジながらも他の楽曲から浮いていない「End Of Forever」、ゴスペル調バラード「Shooting Stars」と名曲目白押し。捨て曲皆無の、完全無欠の1枚です。

最近はGRETA VAN FLEETこそのこの手のハードロックの救世主と持て囃されていますが……正直言うと、最初は「ちょっと待て、RIVAL SONSがいるじゃないか?」と思ったんですね。Earache Records所属なのにこの音というアンバランスさ含め、最高に個性的だと思っていたんですが、やっぱり宣伝力の違いなのか……と思っていたところに、Atlantic Recordsとの契約決定。ついにRIVAL SONSが世の中に見つかるときが来た! やったー!と思ったのも束の間、本作は今のところ日本盤のリリースなし。なんだよっ!(苦笑)

頭からケツまで、終始ストロングスタイルの“黒っぽい”王道ハードロックを轟かせるRIVAL SONSのニューアルバム『FERAL ROOTS』。今こそこの傑作とあわせて、バンドとしても再評価されるべきだと思うのですが……ねえ?



▼RIVAL SONS『FERAL ROOTS』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

続きを読む "RIVAL SONS『FERAL ROOTS』(2019)" »

2019年2月15日 (金)

THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE『ARE YOU EXPERIENCED』(1967)

ジミ・ヘンドリックスがトリオ編成のバンド、THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE名義で1967年に発表したデビューアルバム。本国アメリカよりも先にイギリスで評価されたこともあり、本作はまず同年5月にイギリスで、続いて8月にアメリカで発表されています。チャート的には全英2位、全米5位という好成績をいきなり残しており、特にアメリカでは現在までに500万枚超の売上記録を残しています。

オリジナルのイギリス盤と北米盤とでは収録内容、曲順が異なるのですが、現行のCDはオリジナルのUK盤11曲にアルバム未収録のシングル6曲を追加した17曲入りとなっています(デジタルおよびストリーミングもこちら)。本稿ではこの17曲バージョンで話を進めたいと思います。

1967年というとLED ZEPPELIN結成前ですし、DEEP PURPLEもアートロック時代ど真ん中、THE WHOこそそれに近いことをやっていたもののまだハードロックと呼ぶにはちょっと早く、かろうじてCREAMがハードロック寄りなことをやっていた程度の“前夜”かなと。そう考えると、いかにジミヘンが時代的に早熟すぎたかがご理解いただけるかと。

ここで聴けるサウンドやギタープレイは、今の耳で聴けばまさにハードロックと呼べるもの。オープニングの「Foxy Lady」のヘヴィさ、「Manic Depression」のギターフレーズやアレンジ、「I Don't Live Today」のグルーヴ感やフィードバックは今聴いても本当にカッコいいですし、これを今のサウンドプロダクションで再現したら……いや、再現は無理ですね。蛇足でした。

このサウンドプロダクションだからこその質感とヘヴィさは、絶対に現代の技術でも真似できないものでしょう。今聴いてもそう思うんだから、50数年前の当時はどれだけの衝撃だったんでしょうか……そりゃあリッチー・ブラックモアやジミー・ペイジも影響受けてハードロックに走りますよ。わかるわかる。

ジミヘンのすごさはこういったハード&ヘヴィでサイケデリックなプレイのみならず、「Red House」でのどブルース、「Hey Joe」や「The Wind Cries Mary」での緩急の付け方、「Fire」や「Stone Free」でのファンキーさ、「May This Be Love」での“間”の上手な使い方、そして各曲でのボーカルパフォーマンス、すべてにおいて別格だということ。天才を通り越して、恐ろしさすら感じさせます(だからこそ短命だったんでしょうけど。まあ結果論ですが)。

こうして通して聴くと、このアルバムの時点で大半の代表曲が揃っていることに驚かされます。だって「Purple Haze」もここですからね(正確にはアルバム未収録のシングル曲なのですが)。のちにベストアルバムもリリースされていますが、現状では入門編としてこのアルバムがもっとも手軽に楽しめるのではないでしょうか。上に挙げた前時代のハードロックバンドとあわせて聴くもよし、レッチリなどのルーツとして掘り起こすもよし。ロックファンなら避けては通れない1枚だと思います。



▼THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE『ARE YOU EXPERIENCED』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE『ARE YOU EXPERIENCED』(1967)" »

2019年2月14日 (木)

RED HOT CHILI PEPPERS『MOTHER'S MILK』(1989)

1989年8月にリリースされた、RED HOT CHILI PEPPERS通算4作目のオリジナルアルバム。前作『THE UPLIFT MOFO PARTY PLAN』(1987年)から引き続きマイケル・ベインホーン(SOUNDGARDENHOLEMARILYN MANSONなど)がプロデュースを手がけており、「Highter Ground」(スティーヴィー・ワンダーのカバー)や「Knock Me Down」などがオルタナチャートでヒットしたこともあってか、アルバム自体も初めて全米TOP100入り(52位)を果たし、100万枚を売り上げる出世作となりました。

前作発表後の1988年6月、オリジナルメンバーのヒレル・スロヴァク(G)がオーヴァードーズで急逝。また、彼の死にショックを受けたジャック・アイアンズ(Dr)もバンドを脱退。残されたアンソニー・キーディス(Vo)とフリー(B)はバンドを立て直すため、ヒレルに憧れていたジョン・ジョンフルシアンテ(G)、デトロイトのローカルバンドで活動していたチャド・スミス(Dr)を向かい入れ、いわゆる黄金期メンバーが揃うことになります。

その新編成で最初に制作された本作『MOTHER'S MILK』は、メガヒットを記録する次作『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)と比較すると非常にアグレッシヴで、なおかつメタリックな要素も多数含まれています。マイケル・ベインホーンによるサウンドプロダクションも影響してか、オープニングの「Good Time Boys」にしろカバー曲「Higher Ground」にしろツーバス連打の「Nobody Weird Like Me」にしろ、かなり硬質なサウンドで固められている印象が強く、『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』以降のイメージで触れると面食らうかもしれません。

しかし、「Magic Johnson」や「Knock Me Down」「Stone Cold Bush」といったファンキーな楽曲はテンポ感こそかなりアゲアゲなものの、それ以降の彼らにも通ずる要素が感じられる。そういった意味では、初期のテイストを新たな布陣で整理し、次に向けてスタイルを模索していると受け取ることもできるでしょう。バンドの歴史的には過渡期の1枚だったのかなと、今ならそう言えるかもしれませんね(過渡期にしては強烈すぎるんですけど)。

ジミ・ヘンドリクスのカバー「Fire」や次作への布石と言えるムーディーなインスト「Pretty Little Dirty」、パンキッシュな(というかまんまな)「Punk Rock Classic」、グルーヴィーなミドルチューン「Sexy Mexican Maid」、ファンキーでダンサブルな「Johnny, Kick A Hole In The Sky」など、バラエティに富んだ作風は次作以上ですし、このはっちゃけっぷりはデイヴ・ナヴァロ(G/当時ex. JANE'S ADDICTION)が参加した唯一のアルバム『ONE HOT MINUTE』(1995年)にも似ている気がします。僕自身、初めてリアルタムで触れたレッチリがこの『MOTHER'S MILK』だったこともあって、なぜ自分が『ONE HOT MINUTE』に思い入れがあるのか、本作を聴き返して理解できた気がします。

ジョン・フルシアンテのギタープレイは若さからくる激しさが強く表現されており、今となっては懐かしい限り。その天才的なプレイに加え、ソングライティング面でも本領発揮となるのが、続く『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』になるとは、本作を聴いていた頃には想像もできませんでした。



▼RED HOT CHILI PEPPERS『MOTHER'S MILK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "RED HOT CHILI PEPPERS『MOTHER'S MILK』(1989)" »

2019年2月13日 (水)

PRINCE『BATMAN』(1989)

昨日からの続きになってしまいますが……それでは、レニー・クラヴィッツがデビューした当時のプリンスはどうだったかといいますと、実は意外と伸び悩んでいた時期なのかなと。それはセールス面はもちんのこと、音楽面においても。THE REVOLUTIONを解散させ、ソロ名義で動き始めた2枚組アルバム『SIGN O' THE TIMES』(1987年)、発売直前に急遽お蔵入りとなった『THE BLACK ALBUM』(1987年/1994年に正式発売)、その代案として制作された異色の“ワントラック”アルバム『LOVESEXY』(1988年)……創作意欲こそ右肩上がりでしたが、それと反比例するかのようにチャートの成績や売り上げは下降線をたどる一方。『LOVESEXY』に至っては全米11位、50万枚というそれ以前の作品よりもひどい記録を残すことになります。

そんな中、1989年6月に発表されたのがこの通算11枚目のスタジオアルバム『BATMAN』。本作は同時期に劇場公開されたティム・バートン監督作品『バットマン』のサウンドトラック的立ち位置の1枚ですが、実際には映画からインスピレーションを得て作られたオリジナルアルバムと言ったほうが正しいのかもしれません。

楽曲中に映画のセリフなどがサンプリングされているものの、かといってサントラ的なインストは皆無。どれもプリンスらしい歌モノで、近作と比べると非常に“わかりやすい”内容となっています。

それは、各楽曲が非常にシンプルな構成・アレンジで、良い意味で作り込みを緩めている、悪い意味で簡素と受け取れるものなんですね。だけどプリンスの場合、これくらい“抜いた”ほうが世の中の流れに沿うんじゃないか……そう思わせてしまうのも、この作品の罪作りな部分といいますか。

コアなプリンスファンからしたら、ここで展開されているサウンドや楽曲群は茶番でしかないのかもしれません。だけど、我々がイメージするプリンス像がディフォルメして表現されているという点においては、一般層・ライト層にとって取っつきやすい。実際、文字通り派手なパーティチューン「Partyman」やファンキーな「Trust」は“いかにも”だし、ファルセットを多用したセクシーな「Scandalous」も“いかにも”。シーナ・イーストンとデュエットしたバラード「The Arms Of Orion」しかり、クールなファンクロック「Electric Chair」しかりです。

そして、アルバムのラストを飾るのが歌モノというよりも、開き直りも甚だしい“サンプリング”ナンバー「Batdance」。6分を超えるこの曲は、プリンスらしいフレーズやフレイバーを凝縮させたプログレダンスチューンで、この曲が「Kiss」(1986年)以来の全米1位を獲得することになろうとは、なんとも皮肉な話です。

なお、このアルバム自体も『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985年)以来の全米No.1を獲得し、アメリカだけで200万枚を超えるセールスを記録しました。さらに本作からは「Partyman」(全米18位)、「The Arms Of Orion」(同36位)というヒットシングルも生まれています。前作『LOVESEXY』からは「Alphabet St.」(全米8位)のみだったことを考えると、本当に皮肉というかなんというか。

このアルバムで息を吹き返したプリンスですが、続く次作『GRAFFITI BRIDGE』(1990年)では再び迷走に突入することになります。



▼PRINCE『BATMAN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "PRINCE『BATMAN』(1989)" »

2019年2月12日 (火)

LENNY KRAVITZ『LET LOVE RULE』(1989)

こちらはデビュー時“ビートルズの再来”ではなく“ジョン・レノンの再来”と言われた、レニー・クラヴィッツのデビューアルバム(1989年9月発売)。リリース当初は全米61位、全英56位と大きなヒットにつながりませんでしたが、1990年にマドンナの「Justify My Love」をプロデュースしたことで一躍有名となり、続く2ndアルバム『MAMA SAID』(1991年)へと続いていくことになります。

僕も本作発売当時は音楽誌で名前を目にした程度で、音源を聴いたのはリリースから1年以上経ってから。たぶん「Let Love Rule」か「Mr. Cab Driver」をラジオで聴いたか、MTVでMVを目にしたかがきっかけだったと記憶しています(もはやどっちが先か覚えていませんが)。自分的にはそれほど衝撃的……類の音楽ではなかったものの、どこか引っかかるものがあり、レンタルショップに行ったんだけど置いておらず。結局WAVEだったかCISCOだったかでCDを購入したんだったかな(それすらもあやふや)。その程度の出会いだったんですよね、最初は。

もっとも、僕自身が彼に興味を持ち始めるのが次作『MAMA SAID』の「Always On The Run」を聴いて(いや、同曲のMVを観て)からなので……はい、GUNS N' ROSESスラッシュ(G)が参加していたからです。わかりやすいですね(笑)。なもんで、デビューアルバムの印象というのも本当に曖昧なもので、むしろ『MAMA SAID』でハマって以降聴き返してみて良さを知ったくらいなんです。

実際、派手さのないアルバムだと思います。宅録をベースに、要所要所でゲストを迎えるというスタイルはこのときからすでに始まっており、ストリングスや一部の分厚いコーラス以外はほぼ彼の演奏および声によるもの。ジミ・ヘンドリクスほどブルージーでもハードでもなく、ジョン・レノンほど思想が強くない。でも“ラヴ&ピース”の精神は至るところから感じ取れるし、何より楽曲が優れている。おそらく“スティーヴー・ワンダー以降、プリンス未満”ということなんでしょうけど、その“ちょうど良さ”がレニー・クラヴィッツの魅力であると同時に弱点でもあるのかなと。久しぶりにこのアルバムを聴き返して、そんなことを思ってしまいました。

あと、一時期「I Build This Garden For Us」を狂ったようにリピートしまくっていた時期があったな、ってことも急に思い出しました。何か因縁めいたものがあったんでしょうね、自分の中で。その理由すら思い出せませんが(苦笑)。

レニーにとっては重要な1枚なはずなんですけど、個人的には思ったよりもそこが伝わってこなかった残念なアルバム……というのは言い過ぎですが、思い入れはそれなりにありますよ。やっぱり初期3作は久しぶりに聴いても色褪せていないなと感じますし。うん、純粋に良いアルバムであることには違いありません。そこだけは保証します。



▼LENNY KRAVITZ『LET LOVE RULE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "LENNY KRAVITZ『LET LOVE RULE』(1989)" »

2019年2月11日 (月)

THE KNACK『GET THE KNACK』(1979)

1979年6月にリリースされた、THE KNACKの記念すべきデビューアルバム。「My Sharona」(全米1位)、「Good Girls Don't」(同11位)のヒットも手伝い、アルバム自体も全米1位を記録。200万枚以上を売り上げる代表作となりました。

1978年結成というど新人の彼らが、なぜデビューまもなくして「My Sharona」というメガヒットを生み出すことができたのか。当時小学生だった自分には知る由もありません。ルックスが良いわけでもないですしね。そう考えると、単純に曲の良さ・強さにより、ラジオを中心に広まっていったと考えるのが正しいのでしょう。実際、クセになる曲ですしね。

バンド自体はニューウェイヴの流れから誕生したのでしょうけど、ここで展開されるサウンドはパワーポップと呼ばれるジャンルそのもの。4ピース編成(ギター×2、ベース、ドラム)で奏でられるシンプルなスタイルは、アルバムジャケットのアートワークも手伝って、どこか“次世代のビートルズ”を思わせるものがあったのかもしれません。同時代に活躍し、同じビートルズの影響下にあるCHEAP TRICKは文字通りアイドル的色合いもありましたが、THE KNACKに関してはそういった要素は皆無(苦笑)。ですが、曲のキャッチーさに関しては負けていないわけです。

ハードロックほど歪み切らないギターサウンドと気持ち良いハーモニーを軸に、このアルバムはドライブ感の強いアップチューン「Let Me Out」で幕を開けます。この曲のカッコ良さといったら……正直、自分は「My Sharona」よりも上だと思っています。その後もアップダウンを繰り返しながら、極上のポップチューンを聴かせてくれる。「She's So Selfish」のクールさ、「Maybe Tonight」の切なさったら、もうね。たまりませんよ(笑)。

アルバム後半にはバディ・ホリーのカバー「Heartbeat」も収録されており、このアレンジも素直にカッコいいもの。「Lucinda」で聴けるR&B調アレンジも意外性があって良いし、全12曲本当に無駄がないんですよね。

思えばあの頃はTHE CARSやDEVO、BLONDIEといったバンドがウケていたわけで、その流れにありつつもうちょっとベーシックなロックバンド(なおかつ曲がキャッチー)というのもあって、受け入れられたのかな……のわりにバカ売れしたのはこの1枚で、あとはひたすら下降する一方でしたが(苦笑)。いや、その後も良いアルバム、結構あるんですけどね。『SERIOUS FUN』(1991年)とか『ZOOM』(1998年)とか。

個人的には、2005年のフジロックで彼らを観られた(しかもドラムがMR. BIGのパット・トーピー!)のが一生の思い出。ナマで「My Sharona」を聴けたわけですし。その5年後、フロントマンのダグ・フィーガー(Vo, G)は亡くなってしまうので、あれが最初で最後のチャンスだったんですよね……。



▼THE KNACK『GET THE KNACK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "THE KNACK『GET THE KNACK』(1979)" »

2019年2月10日 (日)

CHEAP TRICK『DREAM POLICE』(1979)

1979年9月発売の、CHEAP TRICK通算4作目のオリジナルアルバム。当初は同年前半にリリースされる予定でしたが、日本から遅れて発売されたライブアルバム『AT BUDOKAN』(1978年)の大ヒットにより発売延期となっていました。しかし、『AT BUDOKAN』から良い流れを受けて、本作も全米6位という好成績を残すことができたので、結果オーライと言えるでしょう。

初期3作(1st『CHEAP TRICK』、2nd『IN COLOR』、3rd『HEAVEN TONIGHT』)でバンドとしてのカラーを完全に固めた彼らは、『AT BUDOKAN』でライブバンドとしての強みをアピール(なおかつ、初期楽曲の良さも同時アピール)することに成功。続く4作目ではそこから一歩踏み込んで、スタジオ作品として優れたアルバム作りに取り組みます。

『IN COLOR』以降の作品を手がけるトム・ワーマン(MOTLEY CRUEPOISONKIXなど)が再度プロデュースを担当した本作は、曲によってオルガンやピアノ、ストリングスなどをフィーチャーし、1曲1曲の完成度を高めることに挑みます。

シングルカットされた「Dream Police」はストリングスを導入した、伸びやかかつスリリングなアレンジを堪能できますし、かと思えば「Gonna Raise Hell」では初期の彼らが持つヘヴィさを10分近いセッションの中に凝縮させることに成功。「Voices」のように美しいバラードもあれば、ビートルズの名フレーズまで登場するゴキゲンなロックンロール「The House Is Rockin' (With Domestic Problems)」も飛び出すし、トム・ピーターソン(B)がボーカルを務める「I Know What I Want」、サイケデリックなミディアムスローチューン「Need Your Love」もある。甘くとろけるようなキャッチーさの中に時折見え隠れする凶暴さ、狂気性にドキッとさせられる、一筋縄でいかない感じがいかにもCHEAP TRICKらしい1枚です。

初期3作と比較してバンドとしてのタフさが確実に増している。そこを良しとするか否かで本作の評価はガラリと変わりそうな気がします。1作目や2作目が好きというリスナーは、もしかしたら本作で展開されるハードロック寄りの世界観は気に入らないかもしれませんし。逆に、ハードロック寄りのリスナーは初期3作に対して持っていたチープさがこの『DREAM POLICE』で解消される。聴き手の立場によって、そのへんの捉え方は変わってくるのでしょうね。

パワーポップと呼ぶにはハードロックすぎるのは確かにあると思います。が、彼らの歴史を語るうえでは欠かせない1枚なのも間違いない事実。本作以前と本作以降でいろんな流れが変わるという意味でも、分岐点となる重要作と言えるでしょう。



▼CHEAP TRICK『DREAM POLICE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "CHEAP TRICK『DREAM POLICE』(1979)" »

2019年2月 9日 (土)

WEEZER『WEEZER (TEAL ALBUM)』(2019)

2019年1月24日に突如リリースされた、WEEZERのカバーアルバム(通算12枚目のスタジオアルバム)。今のところデジタルおよびストリーミングのみのリリースで(一応、3月にはフィジカルリリースの予定もあるようです)、セルフタイトルが冠されたことでシリーズの一環としてジャケットの色から“TEAL(=青緑) ALUBM”と呼ばれているようです。

WEEZERは昨年、TOTOの「Africa」や「Rosanna」をカバーして話題になりましたが、その流れからカバーアルバムの着想が生まれたのでしょうか。それとも来月リリース予定のオリジナルアルバム『WEEZER (BLACK ALBUM)』制作の合間に息抜きとして録音されたものなのでしょうか。その真相は不明ですが、まあとにかく40代の洋楽リスナーには懐かしい楽曲ばかりではないでしょうか。

取り上げられているアーティストはTOTO、TEARS FOR FEARSEURYTHMICS、A-HA、THE TURTLES、BLACK SABBATH、ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA、TLC、マイケル・ジャクソン、ベン・E・キングとバラエティに富んだもの。とはいえ、大半が80年代にヒットした楽曲ばかりで(ベン・E・キング「Stand By Me」も同名映画の主題歌として80年代半ばにリバイバルヒットしましたし)、リヴァース・クオモ(Vo, G)や筆者と同世代のリスナーにはたまらない内容と言えるでしょう。

そのアレンジも原曲に忠実なもので、4人の演奏を軸に再構築されたサウンドは「WEEZERのようでWEEZERとはちょっと違う」印象を受けます。特に「Sweet Dreams (Are Made Of This)」(原曲:EURYTHMICS)や「Take On Me」(原曲:A-HA)から感じるニューウェイヴ感は今までのWEEZERにありそうでなかったもの。前者に関してはアニー・レノックスそっくりな歌声まで再現されており、思わずクスッとしてしまうのではないでしょうか。かと思えば、後者ではどこか頼りない歌声が原曲とは違った味を醸し出しており、これもなかなかの仕上がりと言えます。

WEEZERとしての本領発揮と言えるのが、M-5「Happy Together」(原曲:THE TURTLES)やM-7「Mr. Blue Sly」(原曲:ELO)といったあたり。パワーポップバンドとしてのルーツが垣間見れる良カバーと言えるでしょう。かと思えば、ハードロックバンドとしての側面を「Paranoid」(原曲:BLACK SABBATH)で、昨今のモダンなR&B調ポップサウンドを「No Scrubs」(原曲:TLC)でストレートに表現する……なんて感心していたら、「Billie Jean」(原曲:マイケル・ジャクソン)のボーカルを含む完コピぶりに爆笑させられる。で、最後は若干エレクトリックな香りのする「Stand By Me」で終了。いやあ、最初から最後まで飽きさせないトリッキーな1枚ですね、これは。

原曲が良いんだから、あとは味付け次第。そこでどうWEEZERらしさを出すか……なんて難しいことを考えていた自分が馬鹿らしくなるくらいまっすぐ攻めてくる(いや、まっすぐ進んでいるようで脇道を100キロオーバーで突っ走る)、そんなアルバムです。『WEEZER (BLACK ALBUM)』を前に、良い気分転換になりました(笑)。



▼WEEZER『WEEZER (TEAL ALBUM)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "WEEZER『WEEZER (TEAL ALBUM)』(2019)" »

2019年2月 8日 (金)

HARDCORE SUPERSTAR『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』(2018)

スウェーデンのハードロックバンド、HARDCORE SUPERSTARが2018年9月に発表した11thアルバム。前作『HCSS』から3年半ぶり、デビュー20周年を祝う記念碑的1枚となっています。また、本作を携えた7年ぶりの来日公演(単独公演としては10年ぶり!)も同年11月に実現し、大成功を収めたばかりです。

2008年にヴィック・ジーノ(G)が加入し、現在の編成が落ち着いたこともあるのでしょう。久しぶりのアルバムとなった今作はそのタイトルのとおり、デビュー時から一貫した彼らのスタイルが非常に良い形で体現された、終始ご機嫌なハードロックアルバムに仕上げられています。

正直なところ、ここ数作の彼らに対してあまり良い印象を持っていませんでした。「数曲良い曲はあるんだけど、アルバムとしては……」というイメージは、日本での2作目(通算3作目)『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)の頃から多少あったと思います。ぶっちゃけ、アルバムまるまる楽しめたのって日本4作目(通算5作目)『HARDCORE SUPERSTAR』(2005年)が最後だったんじゃないか……そんな気すらします。

ところが、今作はどうでしょう。オープニングの「AD/HD」からキャッチーでグラマラス、それでいてヘヴィさもしっかり備わっているハードロックが展開されている。特にこの曲はモータウンナンバーにも通ずるキャッチーさが備わっていて(元ネタ、わかりますよね?笑)、冒頭でいきなりハートを鷲掴みにされてしまう。以降も要所要所にシンガロングしたくなるフレーズが用意されており、1コーラス聴いたら口ずさみたくなるようなメロディばかり。あれ、このバンドってこんなに良かったっけ?と自分を疑いたくなるほど、良曲目白押しなんです。

極め付けは、タイトルトラックのM-5「You Can't Kill My Rock N' Roll」でしょうか。このアンセム感といったら……なんだろう、こんな気持ちになるの久しぶりってくらいの懐かしさを思い出させてくれる。アルバムの芯の太さといい、楽曲のキャッチーさといい、すべてにおいてMOTLEY CRUEの傑作『DR. FEELGOOD』(1989年)に匹敵するものがある。しかもそれらは30年前の焼き直しではなく、ちゃんと2018年の音として成立している。そりゃあグッとくるわけですよ。

残念ながら来日公演はスケジュールの都合で足を運ぶことができませんでしたが、こんなに悔やんだライブも久しぶりのこと。昨年のベストアルバム20選に入れるかどうかギリギリまで悩みましたが、別の日に選んでいたらトップ10内にさえ選んでいた可能性すらある、頭を空っぽにして終始無心で楽しめる“2018年裏ベストNo.1”アルバムです。



▼HARDCORE SUPERSTAR『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "HARDCORE SUPERSTAR『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』(2018)" »

2019年2月 7日 (木)

BACKYARD BABIES『DIESEL & POWER』(1994)

1994年にリリースされたBACKYARD BABIESの1stフルアルバム。1987年に前身バンドが結成され、1989年から現在の名前で活動を開始した彼らは、このフルアルバムまでの5年間にいくつかのデモ音源とEP『SOMETHING TO SWALLOW』(1991年)を発表していますが、ちゃんとしたアルバムという形で制作されたのは本作が初めて。バンドの名前が一気に知れ渡るのは続く2ndアルバム『TOTAL 13』(1998年)からのことで、日本でも同作からのイメージが強いのも事実。結果、『TOTAL 13』の成功も手伝って、ここ日本では翌1999年にこの『DIESEL & POWER』が初リリースされることになります。

また、本作は海外でも何度か再リリースを繰り返しており、直近だと2006年にボーナストラック「Lies」を追加した14曲仕様が発売されているようです。現在デジタルおよびストリーミングで聴くことができるのも、この再発バージョンになります。

『TOTAL 13』はパンキッシュかつキャッチーでコンパクトな楽曲がずらりと並ぶ、非常に聴きやすい印象が強いですが、それもこれもドレゲン(G, Vo)が『DIESEL & POWER』以降にTHE HELLACOPTERSに参加したことが大きかったのではないでしょうか。ニッケ・アンダーソン(Vo, G)と絡んだこと、および『SUPERSHITTY TO THE MAX!』(1996年)『PAYIN' THE DUES』(1997年)で学んだことが、『TOTAL 13』には直接的に反映されていると思うのです。

では、“それ以前”となるこの『DIESEL & POWER』はどうかといいますと、良くも悪くも“それまでの影響”がストレートに、色濃く表れた1枚と言えるでしょう。その影響とはGUNS N' ROSESであり、80年代後半のスリージーで埃っぽいブルースベースのハードロック。曲によっては『TOTAL 13』以降の彼らに通ずる部分も見受けられるのですが、『TOTAL 13』と同じスタイルを求めてしまうとちょっと厳しい印象も。曲の出来・不出来の差も見受けられ、60分近い長尺のトータルランニングは聴く人によっては若干厳しいものがあるかもしれません。

……と、『TOTAL 13』リリース当時は感じていたのですが、あれから20年近く経った今聴き返してみると、意外と普通に楽しめる自分がいるのもまた事実。それはBYBが一時活動休止した際、ニッケ・ボルグ(Vo, G)やドレゲンがリリースしたソロアルバムに本作の片鱗が感じられたからに他ありません。つまり、このデビューアルバムの時点ではバンドとしての調和よりも、メンバー個々がやりたいこと、表現したい音がそのままど直球に出てしまった。そう捉えると、非常に微笑ましく思えて仕方ありません。

曲によってはサックスやホーンセクション、オルガンなどをフィーチャーしており、このへんは最近の彼らにも通ずるものがある。ただ、表現力が乏しかったせいもあり、こういった味付けが当時はうまくできなかっただけ。結局、やりたいこと、やろうとしてることはこの時点から現在に到るまで何ひとつ変わっていない。ただ、それを表現する上での技術が作品を重ねるごとに上手になった。それだけのことなんでしょうね。

まもなく結成30周年を記念したニューアルバム『SILVER & GOLD』をリリース予定の彼ら。昨年発表された先行シングル「Shovin' Rocks」ではさらに無駄を削ぎ落とした、シンプルなロックンロールを鳴らしていますが、それすらもこの30年で得た知識と経験がなせる技なのかもしれません。



▼BACKYARD BABIES『DIESEL & POWER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "BACKYARD BABIES『DIESEL & POWER』(1994)" »

2019年2月 6日 (水)

THE WiLDHEARTS『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』(1992)

1992年11月(日本では翌1993年1月)にリリースされた、THE WiLDHEARTS通算2作目のEP。同年4月に発売された初EP『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』に収録された4曲を新たにテリー・デイト(SOUNDGARDEN、PANTERA、DEFTONESなど)がリミックスしたものに、新曲4曲を追加した2枚組EP(CDおよびアナログ)となります。ただし、日本ではCD1枚にまとめられていたこともあり、これがデビューアルバムと認識されることもしばしば。正式な1stアルバムは続く『EARTH VS THE WiLDHEARTS』(1993年)となるのでお間違えなく。

2枚組仕様だとDISC 1が『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』のリミックス盤で、曲順はオリジナルとは異なるものになっています。彼らの原点的1曲である「Nothing Ever Changes But the Shoes」から始まるオリジナル盤の曲順も気に入っていますが、いかんせん僕自身最初に聴いたのが『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』日本盤なので、フェイドインしてくる「Turning American」始まりの構成が身に焼き付いている。これはもう、卵が先か鶏が先かと同じようなものなので、どれが正解とは言い難いものがありますよね。

オリジナル盤と比べたら、リミックスされた『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』バージョンの4曲はどれも芯が太くなった印象で、新録された後半4曲とのクオリティの差はほぼ感じない。むしろ初期4曲の時点で楽曲の完成度が異常に高いことに改めて気づかされるのではないでしょうか。

DISC 2(日本盤後半)の4曲も捨て曲なしで、彼らが1992年のデビュー年の段階でその個性を確立させていたことに気づかされます。比較的ポップでキャッチーさが際立つ曲が多いのが後半4曲の魅力かな。「Splattermania」はもちろんのこと、のちにライブの定番曲にまで成長する「Weekend (5 Long Days)」、ワイルドなロックンロール調の「Something Weird Going On In My Head」、バラード風でエンディングのアレンジにクスっとさせられる「Dreaming In A」と、どれもメロディのキャッチーさがハンパない。サウンドアレンジのヘヴィさが印象的な前半との対比もしっかり感じられるし、何よりジンジャー(Vo, G)のソングライターとしての非凡さがこの時点ですでに際立っていたことに驚かされるばかり。シンガーとしてはもう一歩ですけどね(笑)。

日本のファンにとっては、すべてはここから始まったと言っても過言ではない重要な1枚。現在は廃盤状態で中古盤をこまめに探すしか入手方法はありません(デジタル配信もされていないし)が、2010年に再発された『EARTH VS THE WiLDHEARTS』リマスターバージョン(2枚組仕様)のDISC 2にまるまる収録されているので、こちらの新品を探したほうが早いかもしれません(曲順は初出EPに沿ったものになっていますのでご注意を)。



▼THE WiLDHEARTS『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / EARTH VS THE WiLDHEARTS』海外盤2CD

2019年2月 5日 (火)

METALLICA『HELPING HANDS... LIVE & ACOUSTIC AT THE MASONIC』(2019)

2019年2月リリースの、METALLICA初となるアコースティックライブアルバム。オフィシャルのライブアルバムとしては、限定販売などのEPやアナログ盤を除けば同名映画のサウンドトラックとして発表された『METALLICA: THROUGH THE NEVER』(2013年)以来となるのでしょうか。とはいえ、今作もフィジカルでは今のところアナログ盤のみでのリリースとなり、そのほかはiTunes Storeなどでのデジタル販売、Apple MusicやSpotifyでのストリーミング配信にて聴くことができる“イマドキらしい”形態での発表となります。

このアルバムは、2018年11月3日にサンフランシスコで行われた『All Within My Hands Foundation』設立1周年記念コンサート「Helping Hands Benefit Concert」の模様を収録したもの。『All Within My Hands Foundation』はMETALLCIAが設立したチャリティ組織で、「飢餓と戦い、労働力の教育を通して持続可能なコミュニティを創り出すこと」を目的とした団体とのことで(詳細)、本作の売上はすべて同組織に寄付されるそうです。せっかくなら、ストリーミングだけじゃなくてダウンロード購入、あるいはアナログ盤を購入しておきたいところですね。

さて、気になる内容ですがオールアコースティック編成ということで、METALLICAの楽曲からアコースティック向きのナンバー、意外な楽曲のアコースティックアレンジ、そしてDEEP PURPLE「When A Blind Man Cries」、NAZARETH「Please Don’t Judas Me」、ボブ・シーガー「Turn The Page」、BLUE ÖYSTER CULT「Veteran Of The Psychic Wars」といったカバーからなる全12曲を楽しむことができます。「Please Don't Judas Me」と「Veteran Of The Psychic Wars」はこれが初音源化となる、貴重なテイクと言えるでしょう。個人的には「Please Don't Judas Me」の枯れっぷりと「Veteran Of The Psychic Wars」のサイケ感が気に入っています。

まずファンは冒頭の「Disposable Heroes」から驚かされることでしょう。これ、原曲を知らなかったらこんな曲だと思ってしまうくらいしっくり来るアレンジで、曲名を見なかったら気づかないリスナーも多いんじゃないでしょうか。かろうじて歌詞を追えば「……えっ?」と気づくかもしれませんが、僕はこれをいきなり聴いて(よい意味で)お茶を吹き出しましたから(よい意味で?)。

「The Unforgiven」や「Bleeding Me」「Nothing Elese Matters」といった、ある種こういった企画向きの楽曲はもちろん悪いわけがない。「The Unforgiven」はギターソロに入るところでの盛り上がり(熱の加わり具合)が別の意味で興味深かったなあ。

かと思えば「All Within My Hands」で再び別モノ感を味わい、カントリー調でアーシーに生まれ変わった「Enter Sandman」や「The Four Horseman」に爆笑し、ただギターをアコギに変えただけじゃん!というツッコミすら愛おしい「Hardwired」にニヤニヤする……きっと20年前にこれをやられたら「終わった」とかグチをこぼしていたんでしょうけど、もはやそういった批判もバカバカしくなるくらいの潔さすら感じる。これを毎回ライブでやられたらさすがに呆れるけど、遊びとしては全然アリだと思います。

音を聴いてもわかると思いますが(特にYouTubeでの映像を観れば一目瞭然)、このライブはバンドの4人以外にもキーボードやペダルスティールなどゲストプレイヤーが多数参加しています。以前にも4人だけのアコースティック音源が発表されていますが、それと比べるとクオリティが雲泥の差といいますが。とにかく音の厚みが異なるし、アレンジ含む完成度もかなり高いんじゃないかと思いました。そのへんが、本作を嫌いになれない大きな理由でもあるのかなと。

とはいえ、もはやこのバンドに関しては僕自身、全肯定の域に入ってしまっているのでまともなレビューなんてできない状態なわけでして……なかなかジャパンツアーが決定せずモヤモヤが続く中、こういった作品や過去作のデラックス盤を聴いて無理やり気持ちをつないでいるところですので。早く来てくださいね、マジで(苦笑)。



▼METALLICA『HELPING HANDS... LIVE & ACOUSTIC AT THE MASONIC』
(amazon:アナログ盤2枚組)(iTunes Store / mora

続きを読む "METALLICA『HELPING HANDS... LIVE & ACOUSTIC AT THE MASONIC』(2019)" »

2019年2月 4日 (月)

SOILWORK『VERKLIGHETEN』(2019)

2019年1月発売の、SOILWORK通算11作目のオリジナルアルバム。前作『THE RIDE MAJESTIC』(2015年)から約3年半ぶりの新作となります。

前作発表後、ドラマーのダーク・ヴェルビューレンがMEGADETHに勧誘されるというサプライズ(ハプニング?)があり、バンドは新たに若手のバスティアン・トゥアスガールド(Dr)を迎えて活動再開。特にここ数作は毎回ラインナップが変更しており、バンドとして安定した活動が送れていませんでしたが、ここでようやく編成が固まったと思いたいものです。

僕自身、随分と久しぶりにSOILWORKの新作を聴いたのですが(テン年代以降の作品はほぼ未聴でした)、本作には自分がハマった6thアルバム『STABBING THE DRAMA』(2005年)の頃の面影もしっかり残っており、よりメロディアスに進化した“ブルータルな北欧メタル”を堪能することができます。

新ドラマー・バスティアンのプレイは非常に手数が多く、どんなにキャッチーでメロウだろうが、その後ろでドコドコと激しいプレイを聴かせてくれる。ボーカルスタイルやメロディに関しては、ビョーン“スピード”ストリッド(Vo)が別プロジェクトのTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAに参加していることも大きいのでしょうか、非常にキャッチーさを増しており、AメロやBメロでグロウルやスクリームをかましてもサビでは力強く歌い上げるスタイルにより拍車がかかり、自信に満ちたボーカルパフォーマンスを楽しむことができるはずです。

楽曲群も、聴けばすぐにそれがSOILWORKだとわかるものばかりで、確実にオリジナリティを確立しています。正直、2000年代後半以降の作品はそのへんが薄くなりつつあり、徐々にこのバンドから離れていったのですが、本作に関しては楽曲の良さ、ボーカル&演奏の素晴らしさが際立っており、平均点以上の仕上がりになっているのではないでしょうか。

もはやこれをメロディックデスメタルと呼ぶべきなのか、あるいは呼べるものなのか、正直僕にはわかりません。しかし、確実にその面影は残っていますし、見方を変えればメロデスの現在進行形/最新型と捉えることもできるでしょう。疾走感もしっかり備わっており、ブラストビートやグロウルなどエクストリームメタルに必要不可欠な要素も、さらにメロディアスな要素も至るところに散りばめられている。うん、確実にメロデスではあるんだけど、僕はこれをそんな狭い枠で括りたくないという気持ちもあって。純粋にヘヴィメタルでいいじゃないか……と思うわけです。

中にはメロデスに対していまだに嫌悪感や拒否反応を示すリスナーも少なくないはず。そんな人にこそ、このアルバムを聴いてほしいなと思うわけです。北欧のバンドが持つ“らしさ”を現代的に昇華させた、全メタルファン必聴の1枚だと断言させてください。

あ、最後に追記。本作の「Needles and Kin」にはAMORPHISのトミ・ヨーツセン(Vo)、「You Aquiver」には元ANNIHILATOR、EXES TO EYESのデイヴ・シェルドン(G)がゲスト参加しているとのこと。当初は「Stålfåge」にARCH ENEMYのアリッサ・ホワイト=グラズ(Vo)が参加しているという話もありましたが、こちらは実現しなかったそうです(ソース)。



▼SOILWORK『VERKLIGHETEN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "SOILWORK『VERKLIGHETEN』(2019)" »

2019年2月 3日 (日)

AMARANTHE『HELIX』(2018)

スウェーデンのメタルコアバンド、AMARANTHEが2018年10月に発表した通算5作目のオリジナルアルバム。前作『MAXIMALISM』(2016年)発表後にクリーンボーカル担当のジェイク・E(Vo)が脱退し、代わりに同じくスウェーデン出身のパワーメタルバンドDYMAZTYのフロントマン、ニルス・モーリン(Vo)が加入。この新体制で制作されたのが本作『HELIX』で、本国のアルバムチャートでは最高19位を記録しています。

2011年のデビュー以降、ほぼ2年ペースで新作を届けてくれる彼ら。そのベースとなっているのは男女3人(女性&男性のクリーン、男性スクリーム)の個性的なボーカリストの調和から生まれる独特なハーモニーと、エレクトロニコアをベースにしたモダンなメタルコアサウンドであり、そういったベーシックな部分は5作目となる今作でも大きな変化はありません。もちろん、毎回同じことをやっているわけではないので、作品を重ねるごとに生じる進化や成長は至るところから感じられるはずです。

ニルスは前作リリース後のツアーから参加していることもあり、本作ではクリーンボーカル交代が良い方向に作用しているようです。非常に正統派HR/HMシンガー的なニルスの歌声と、ここ数作で推し進められたストレートなハードロック色との相性も抜群。確かに、前任のジェイクの個性が強かった(かつ耳に馴染んでいた)こともあって、最初に聴いたときは若干の違和感は否めませんでしたが、個人的には数回聴くうちにそのへんは自然と解消されたように思います。

楽曲に関しても過去の焼き直しでは終わっておらず、近作と比べてもエレクトロ色がより濃くなったアレンジと、モダンヘヴィネス的な色合いが混ざり合うことで生まれる調和の精度もより高まっています。中でもアルバム中盤、ひときわヘヴィな「GG6」でのヘンリク・エングルンド・ヴィルヘルムソン(Vo)のグロウルやラップ調ボーカルや、そこから続くダンサブルな「Breakthrough Starshot」でのエリーゼ・リード(Vo)&ニルスのボーカルパフォーマンスの対比(楽曲面、サウンド面も含む)は本作のハイライトと言えるのではないでしょうか。

エリーゼ嬢の艶やかなボーカルも過去イチだと思いますし、若干ソウルフルさが増しているような印象も受けます。極上のメロディと適度なヘヴィさ、そしてモダンなエレクトロアレンジなど、すべてが「痒いところに手が届く」作りになっており、最初から最後まで安心して楽しめる1枚だと断言できます。この編成でのライブ、早く観てみたいですね。秋頃の大型イベント(今年はあるのかしら?)みたいな大舞台で、思う存分大きな音で堪能したいものです。



▼AMARANTHE『HELIX』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD / 海外デラックス盤CD / MP3

続きを読む "AMARANTHE『HELIX』(2018)" »

2019年2月 2日 (土)

WITHIN TEMPTATION『RESIST』(2019)

オランダのシンフォニックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONが2019年2月に発表した通算7枚目のスタジオアルバム。本国で1位、アメリカでも16位まで上昇した出世作『HYDRA』(2014年)からまる5年ぶりの新作となり、Nuclear Blast Recordsから新たにメジャーのVertigo Records(Universal Music傘下)へ移籍して最初の作品となります。

本来は昨年12月中旬にリリース予定だった本作ですが、制作上の問題から直前になって翌年2月まで延期。実は僕、今作の日本盤ライナーノーツを執筆する都合上、11月の時点でこのアルバムを聴き込んでいたため、個人的にも「ようやく」といいますか「待望の」という言葉がぴったりな1枚となりました。

で、発売までにこれだけ聴き込んだら、作品によっては若干の飽きがきてもおかしくないんですが、本作に関してはその内容のディープさも手伝ってか、最初に聴いてから3ヶ月経った今も新鮮な気持ちで接することができるのですから不思議です。

ライナーノーツや音楽誌でのインタビューで語られているとおり、前作を伴うワールドツアー終了後、シャロン・デン・アデル(Vo)は今作の制作と向き合い始めるのですが、その途中で自身が燃え尽き症候群的な状態に陥っていることに気づきます。これには個人的な不幸なども影響していたそうですが、そういった事情からレコーディングは一時中断。これと代わるように、シャロンは自身の癒しを求めソロプロジェクト・MY INDIGOを始動させます。ここでフォーキーでシンプルなサウンドを追求した彼女は、再び音楽に対する情熱を取り戻し、改めてWITHIIN TEMPTATIONへと向かっていくのです。こうして過去最長となる5年というインターバルを置いて、この『RESIST』というアルバムは完成しました。

聴いてもらえばわかるように、本作で鳴らされている音はエレクトロの色合いを強めた、非常にモダンなものばかり。シンフォニックの要素は残されているものの、過去作と比べたら少しだけ薄まっているように感じるかもしれません。しかし、それこそがこのバンドが新たに試みた挑戦であり、このアルバムのテーマのひとつでもあるわけです。情報社会となった現代に対する“抵抗”が綴られた歌詞と、それらを「今日のポップニュージックに欠けている反抗的なエッジ」の部分を「よりヘヴィでダーティーで、さらに未来的に」表現したサウンド。そう聞くとなるほど、どの曲もヒットチャートを席巻するモダンなヒット曲と並んでも違和感なく聴けるのではないでしょうか。

初期〜中期の楽曲群を好むリスナーにこの挑戦がどう受け取られるのかも気になるところですが、それ以上に新しいファン層を獲得できるかもしれない、そんな淡い期待もこのアルバムを聴いたら捨て切れません。「The Reckoning」にはPAPA ROACHのジャコビー・シャディックス(Vo)、「Raise Your Banner」はIN FLAMESのアンダース・フリーデン(Vo)がゲスト参加。さらに「Endless War」では、シャロンはベルギーのロックバンドARIDのシンガー、ジャスパー・ステヴァーリンクと艶やかなデュエットを聴かせてくれます。前作でも元NIGHTWISHのターヤ、KILLSWITCH ENGAGEの元シンガーであるハワード・ジョーンズ、SOUL ASYLUMのフロントマン、デイヴ・パーナーとかなりバラエティに富んだ面々を迎えていますが、今作はそれ以上に統一感が感じられるものになっている印象を受けます。

いろいろな意味で“攻め”の姿勢が感じられる本作。このトライが吉と出るか凶と出るかは現時点ではわかりませんが、僕は好意的に受け入れたいと思います。こういう作品、売れてほしいなあ。



▼WITHIN TEMPTATION『RESIST』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤2CD+カセット+Tシャツ / MP3

続きを読む "WITHIN TEMPTATION『RESIST』(2019)" »

2019年2月 1日 (金)

SKID ROW『SKID ROW (30TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION)』(2019)

1989年1月に発売されたSKID ROWのデビューアルバムにして最大のヒット作(全米6位/500万枚)がリリース30周年を記念して、2019年1月にリマスタリング&ボーナストラック多数追加で再リリースされました。といっても本作、CDでの発売はなしで、デジタルリリースおよびサブスクリプションサービスでの配信のみ。アルバム本編がリマスタリングされたのなら、せっかくですしアナログ盤でも欲しいところですが……。

本サイトでも2年前にオリジナル盤のレビューを公開していますので、アルバム自体の内容についてはそちらに譲るとして。気になるリマスタリングの効果ですが、確かにドラムがふくよかになり、若干硬くなったような印象が。ギターの出音も以前より聴きやすくなったし、全体的に古臭さは減った気がします(あくまでイメージですが)。特に「18 And Life」のように強弱のはっきりした曲だと、そのへんの変化がよりわかりやすいのではないでしょうか。

アルバム本編に続いては、このデビュー盤制作時のアウトテイク「Forever」を収録。こちらは1998年発売のベストアルバム『40 SEASONS: THE BEST OF SKID ROW』にも収録されていたので、特に目新しさはなし。まあアルバム本編の楽曲と比べたら、確かにクオリティ的に一歩劣るかなという気はします。悪くないですけどね。

で、本作最大の収穫は、いわゆるDISC 2(配信なのでディスクもクソもないんですが)のライブ音源。1989年4月28日にカリフォルニア州ウェストミンスターのThe Marqueeで収録された全10曲からなるこの音源は、デビュー間もない彼らのライブフルセットをまるまる収めたものになります。フルスケールのライブアルバムをリリースしていない彼ら(特にセバスチャン・バック在籍時)にとって、たった10曲とはいえこれはありがたいかぎり。

内訳はアルバム収録曲11曲中「Can't Stand The Heartache」「Midnight / Tornado」除く9曲に、KISS「Cold Gin」のカバーを加えたもの。うん、当時の定番セトリですね。ここから3ヶ月後の1989年7月に実現した初来日公演も基本的にこれに近いもので、ここに「Can't Stand The Heartache」「Midnight / Tornado」とSEX PISTOLS「Holidays In The Sun」、RAMONES「Blitzkrieg Bop」などのカバー曲を追加したワンマン仕様でしたから。

そんなSKID ROWの若さあふれる(笑)ライブをじっくり楽しめるこのアニバーサリー盤、悪いわけがない。バズの若々しくて若干息切れも感じられるボーカル含め、2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)以降の彼らが失った“何か”を感じ取ることができるはずです。

まあとにかく曲が良いので、文句なしの内容かと。このライブ盤目当てでダウンロード購入してもいいくらい。2年後にはぜひフルライブの音源&映像をパッケージした『SLAVE TO THE GRIND』デラックス盤にも期待したいところですね。



▼SKID ROW『SKID ROW (30TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION)』
(amazon:MP3

続きを読む "SKID ROW『SKID ROW (30TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION)』(2019)" »

« 2019年1月 | トップページ | 2019年3月 »

2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

カテゴリー

無料ブログはココログ