SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』(1995)
『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)を携えたワールドツアー終了後、なかなか再始動しないGUNS N' ROSESに対して痺れを切らしたスラッシュ(G)。ダフ・マッケイガンやギルビー・クラークがソロ契約&ソロアルバム発売を果たしたのを機に、ついに自身もソロ活動を本格始動させます。
1994年に結成されたSLASH'S SNAKEPITは、ソロというよりはあくまでバンド名義での活動を主としたもの。このへんにスラッシュのこだわり(何がやりたいのか)が伺えます。集まったメンバーは元JELLYFISHのエリック・ドヴァー(Vo)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)に、ギルビー・クラーク(G)&マット・ソーラム(Dr)というガンズ組。レコーディングにはディジー・リード(Key)も参加しているので、これじゃあ“アクセル・ローズとダフ抜きのガンズ”と言えなくもないですが、そもそもギルビーもマットもディジーもオリジナルメンバーではないので微妙ですが。
こうして、マイク・クリンクを共同プロデューサー、ミックスにスティーヴ・トンプソン&マイケル・バルビエロというガンズの諸作品を手がけてきた布陣を迎えて1995年2月に発表されたのが、このデビューアルバム。全米70位とガンズのソロ活動の中ではもっとも成功した1枚で、さすがアクセルと肩を並べる存在と言えます。
イジー・ストラドリンがアーシーでレイドバックしたロックンロール、ダフがパンクを主軸とするならば、スラッシュは土着型の王道アメリカンハードロックが武器と言えるでしょう。実はそれって、ガンズと聞いて我々がまず最初にイメージする要素だったりしませんか? つまり、このアルバムで展開されているサウンドや楽曲スタイルって、「もしガンズが1995年当時にニューアルバムを作ったら、半分くらいはこんな路線になるんじゃないか?」というものなんですよ(もちろん、残り半分はアクセルの色が強いものになるはず)。
ガンズの武器であるスラッシュらしいギターフレーズ&ソロ(と音色)、『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)あたりで聴けたラフだけど硬質なサウンドプロダクションのせいもあって、確かに本作はどことなくガンズっぽいですし、なんなら一連のソロアルバムの中で一番ガンズに近い1枚だと思います。楽曲自体も(のちにアクセルが訴えますが)ガンズの次の作品に向けて作ったものも含まれているようですし。
ただ、すべてがすべてスラッシュひとりで書いた曲ではないですし、大半はエリックとの共作だったり、中にはギルビー単独で書いた曲や、ダフやイジーの名前がクレジットに入った(!)曲も含まれている。そういった意味では本当に「SLASH'S SNAKEPITというバンドのアルバム」を目指したものなんでしょうね。
エリックの歌声はアクセルほどハイトーンでストレートなものではないので、歌を聴いてそこまでガンズを思い浮かべることはないですが、それでも「Beggars & Hangers-On」や「Good To Be Alive」「What Do You Want To Be」のような曲をアクセルが歌ったらどうなるんだろう……というワクワク感も多少あったりして。
全14曲で70分というトータルランニングが『USE YOUR ILLUSION』シリーズに通ずるものがあるのですが、『USE YOUR ILLUSION』と比べると楽曲のカラーがバラエティに富んでいるわけでもないので、さすがに尺的にキツイと感じることも。6分前後および6分超えの曲が4曲も含まれていることから、もうちょっとアレンジ力のある人間がバンドに携わっていたら、さらに完成度の高い内容になったのではないか……そういった意味ではバンドとはいえ、やはりソロはソロなんですね(メインバンドに対するオナニーという意味で)。
この布陣でのSLASH'S SNAKEPITこれが最初で最後。この5年後にスラッシュ以外のメンバーを総入れ替えして2ndアルバム『AIN'T LIFE GRAND』(2000年)を発表していますが、そちらについてはまた別の機会に。
▼SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3)
« GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』(1994) | トップページ | MOTLEY CRUE『LIVE: ENTERTAINMENT OR DEATH』(1999) »
「Guns n' Roses」カテゴリの記事
- BLACK SABBATH / OZZY OSBOURNE: BACK TO THE BEGINNING(2025年7月5日)(2025.07.06)
- SLASH『ORGY OF THE DAMNED』(2024)(2024.05.30)
- IGGY POP『EVERY LOSER』(2023)(2023.01.12)
- マイケル・ジャクソンの黄金期をオリジナルアルバムで振り返る(1979〜1991年)(2022.12.31)
- GUNS N' ROSES『USE YOUR ILLUSION II: DELUXE EDITION』(2022)(2022.11.22)
「Alice in Chains」カテゴリの記事
- BLACK SABBATH / OZZY OSBOURNE: BACK TO THE BEGINNING(2025年7月5日)(2025.07.06)
- JERRY CANTRELL『BRIGHTEN』(2021)(2021.11.02)
- METAL CHURCH『HANGING IN THE BALANCE』(1993)(2021.07.28)
- ALICE IN CHAINS『MUSIC BANK』(1999)(2021.04.03)
- ALICE IN CHAINS『THE DEVIL PUT DINOSAURS HERE』(2013)(2020.08.25)
「1995年の作品」カテゴリの記事
- REEF『REPLENISH』(1995)(2022.04.06)
- THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)(2022.02.14)
- OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995)(2021.03.28)
- BLUR『THE GREAT ESCAPE』(1995)(2021.03.27)
- AC/DC『BALLBREAKER』(1995)(2020.10.01)
「Slash」カテゴリの記事
- SLASH『ORGY OF THE DAMNED』(2024)(2024.05.30)
- HEROES AND MONSTERS『HEROES AND MONSTERS』(2023)(2023.01.24)
- SLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS『APOCALYPTIC LOVE』(2012)(2023.01.22)
- 2022年総括(2023.01.04)
- マイケル・ジャクソンの黄金期をオリジナルアルバムで振り返る(1979〜1991年)(2022.12.31)
「Jellyfish」カテゴリの記事
- TOMMY'S ROCKTRIP『BEAT UP BY ROCK 'N ROLL』(2021)(2021.05.14)
- SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』(1995)(2019.03.21)
「Slash's Snakepit」カテゴリの記事
- TOMMY'S ROCKTRIP『BEAT UP BY ROCK 'N ROLL』(2021)(2021.05.14)
- SLASH'S SNAKEPIT『AIN'T LIFE GRAND』(2000)(2020.04.29)
- SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』(1995)(2019.03.21)
「Gilby Clarke」カテゴリの記事
- ROCK STAR SUPERNOVA『ROCK STAR SUPERNOVA』(2006)(2022.11.20)
- GILBY CLARKE『THE GOSPEL TRUTH』(2021)(2021.05.06)
- CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』(1985)(2020.05.23)
- HOLLYWOOD ROSE『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』(2004)(2019.03.17)
- GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』(1994)(2019.03.20)