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2019年3月

2019年3月31日 (日)

2019年3月のお仕事

2019年3月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※3月31日更新)


[WEB] 3月31日、「BUBKA WEB」にて「乃木坂46 賀喜遥香 グラビア&インタビュー「ガールフレンド」」の序文が公開されました。

[WEB] 3月31日、「BUBKA WEB」にて「番組プロデューサー長尾真が語る 「距離感」と「積極性」が生み出した日向坂46のアイデンティティ」の序文が公開されました。

[WEB] 3月31日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載「L.A. Guns、Buckcherry、The Treatment……80年代ハードロックを継承する新譜10選」が公開されました。

[WEB] 3月31日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のDJ ピエール中野ライブレポート「音楽からの恩恵を昇華した伝道師、DJ ピエール中野」が公開されました。

[WEB] 3月31日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のSUPER BEAVERライブレポート「SUPER BEAVER、15年目に突入するバンドの「感謝」」が公開されました。

[WEB] 3月31日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のYogee New Wavesライブレポート「Yogee New Waves、日曜を彩る心地よいグルーヴ」が公開されました。

[WEB] 3月31日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のSIX LOUNGEライブレポート「シンプルさと骨太さを極めたSIX LOUNGEの美学」が公開されました。

[WEB] 3月30日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のROTTENGRAFFTYライブレポート「ROTTENGRAFFTYが貫禄のステージで見せた自由さ」が公開されました。

[WEB] 3月30日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のHYUKOHライブレポート「HYUKOHが描いた変幻自在の音世界」が公開されました。

[WEB] 3月30日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のKANA-BOONライブレポート「オーディエンスを刺激したKANA-BOONの躍動」が公開されました。

[WEB] 3月30日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにて「ツタロックフェス2019」のSiMライブレポート「SiMが作り出したサークルピット続出の熱狂空間」が公開されました。

[紙] 3月30日発売「BUBKA」2019年5月号にて、「ひらがな推し」長尾真プロデューサー、乃木坂46賀喜遥香のインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月29日、「リアルサウンド」にてPassCodeのアルバム評「PassCode『CLARITY』は想像を超える力作だ ボーダーレスな新アルバムに至るまでの足跡を辿る」が公開されました。

[WEB] 3月28日、「リアルサウンド」にてTHE YELLOW MONKEYのイベント評「THE YELLOW MONKEY『9999』武道館試聴会サプライズ演奏 直接届けた感動とファンへの思い」が公開されました。

[紙] 3月26日発売「CONTINUE」Vol.58にて、「『ラブライブ! 』シリーズと、その音楽。」内A-RISEおよびSaint Snowのグループ解説&全楽曲解説を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 3月25日発売「Rolling Stone Japan」vol.6にて、HYDE巻頭表紙ロングインタビュー、ソロ活動総括コラム、ソロ作品&関連作品ディスクレビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 3月23日発売「TV Bros.」2019年5月号にて、THE YELLOW MONKEYヒーセインタビュー(Wikipedia本人検証、この話がしたい!)、ニューアルバム『9999』解説&「これを聴くべき!」3曲を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月15日、「MTV Japan」オフィシャルサイトにて日向坂46のライブレポート「新たなスタートを切った日向坂46、MTVのイベントで貴重なトーク&ライブを展開!」が公開されました。

[紙] 3月13日発売の欅坂46小林由依1st写真集「感情の構図」にて、巻末インタビューを担当しました。(Amazon

[紙] 3月11日発売「ヘドバン Vol.21」にて「ブリング・ミー・ザ・ホライズンとの向き合い方」のススメ、LOVEBITES 2019.1.27 マイナビ赤坂BLITZ ライヴ・レポート、ANTHEM『NUCLEUS』、BUCKCHERRY『Warpaint』、BACKYARD BABIES『Sliver & Gold』、MARK MORTON『Anesthetic』、OVERKILL『The Wings Of War』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月10日、「リアルサウンド」にて眩暈SIRENのライブ評「眩暈SIRENが表現する、暗闇に差す一筋の救済 楽曲を通した“感情の共有と共鳴”を見た」が公開されました。

[WEB] 3月7日、「リアルサウンド」にてTHE YELLOW MONKEYのアーティスト分析記事「THE YELLOW MONKEY再集結後の軌跡が凝縮 『9999』全貌を現場スタッフの証言と共に解説」が公開されました。

[紙] 3月4日発売「日経エンタテインメント!」2019年4月号にて、IZ*ONE宮脇咲良・ウォニョン・ユリ・チェヨン座談会を担当・執筆、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月2日、「リアルサウンド」にて欅坂46武元唯衣&田村保乃インタビュー「欅坂46 2期生 武元唯衣&田村保乃が語る、1期生との共演で芽生えた自覚と覚悟」が公開されました。

[WEB] 3月1日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのライブ評「Little Glee Monster、2年ぶり日本武道館で見せた“新たな武器” キャリア最高峰のステージを目撃」が公開されました。

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また、2月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1902号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

RAMMSTEIN『SEHNSUCHT』(1997)

1997年8月にリリースされた、RAMMSTEINの2ndアルバム。日本では1998年7月に発売されており、本作をもって日本デビューを飾っております。ドイツ本国では本作で本格的ブレイク(初の1位獲得)を果たし、アメリカでも最高45位まで上昇。100万枚を超えるヒット作となりました。

僕自身、彼らがドイツ出身のインダストリアルメタルバンドであるということは1997年に発売された映画『ロスト・ハイウェイ』のサウンドトラックを通じて知っておりました。ザクザクしたギターサウンドとMINISTRYやKMFDM、DIE KRUPPS、あるいは初期のNINE INCH NAILSにも通ずるデジタルビートを融合させたスタイルに、いかついドイツ語のボーカルが乗るという独特のスタイルは当時の自分にとって衝撃以外の何ものでもなく、アルバムは発売されてからしばらくして入手したと記憶しています(おそらく年内、もしくは1998年初頭には入手していたはず)。

当然日本語対訳もないし、学生時代にドイツ語を専攻していたとはいえ理解できるのは一部のタイトルのみ。けど、そんなことどうでもよかった。とにかくドイツ語の語感がこういったスタイルのメタルにぴったりだったし、何よりもサウンドとミドルテンポ中心の楽曲が文句なしによかった。

……一部の楽曲で歌われている内容が近親相姦や性的虐待についてだった、ってことを知ったのはもう少し経ってからですが(苦笑)。

まあ、歌詞云々は別にして(いや、僕はそこも含めて“らしくて”良いと思いますが)、とにかく楽曲のカッコよさは随一。ボーカルもラップ調でパーカッシブさを強調しているところが気持ちいいし、ヘヴィで(ある意味)ダンサブルな楽曲が並ぶ中、突如「Klavier」のようにセンチメンタルな楽曲が飛び込んできてハッとさせられる。その構成含めアルバム全体の完成度はさすがの一言です。

KMFDM などはいたものの、特にここ日本では90年代後半のドイツのメタル/ラウドロックといえばまだまだHELLOWEENをはじめとするジャーマンメタル勢が幅を利かせていた時代。母国語でインダストリアルメタルをやっていて、しかもキワモノ的歌詞というマイナスポイントが多かった彼らですが、だからこそ根強いファンが多かったのも事実。実際、リリースから20年以上経った今このアルバムを聴いても、古臭さはほとんど感じられないし。

以前、その後のシーンを激変させる象徴的なラウドロックアルバムが1997年に5枚発表されているという記事を書いたことがありますが(こちら)、そういう作品がドイツから2枚(RAMMSTEINとATARI TEENAGE RIOT)も輩出されているというのが興味深いですね。

いよいよ5月17日には10年ぶりのニューアルバム『RAMMSTEIN』のリリースが正式決定した彼ら。先行発表された新曲「Deutschland」も期待を裏切らない仕上がりだっただけに、今年は日本でも彼らの人気がついに本格化しそうですね。


▼RAMMSTEIN『SEHNSUCHT』
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2019年3月30日 (土)

RAVEN『SCREAMING MURDER DEATH FROM ABOVE: LIVE IN AALBORG』(2019)

2019年1月にリリースされた、RAVEN通算3作目のライブアルバム。本作は最新スタジオアルバム『EXTERMINATION』(2015年)を携え、2017年11月にデンマークのオールボーで録音されたものだそうで、当時ジョー・ハッセルヴァンダー(Dr)が心臓発作のためライブから離れており、代わりにFEAR FACTORYなどで活躍したマイク・ヘラーがサポート参加していました(その後ジョーは引退し、マイクが正式加入)。

ぶっちゃけ、RAVENは2ndアルバム『WIPE OUT』(1982年)や3rdアルバム『ALL FOR ONE』(1983年)を90年代以降に後追いで聴き、リアルタイムではCombat Recordsから唯一発表された(日本ではソニーから発売)7thアルバム『NOTHING EXCEEDS LIKE EXCESS』(1988年)や、方向性がブレていた8thアルバム『ARCHITECT OF FEAR』(1991年)を聴いた程度。あ、ウド・ダークシュナイダーとデュエット(笑)した「Born To Be Wild」のシングルは、渡英した際にはアナログ7インチを購入するくらいには好きでした。

そんなライトリスナーの自分ですが、このライブアルバムを最近になってようやく聴くことができ……ちょうど3月半ばに行われた4年ぶりの来日公演に行けなかったことを泣くほど後悔しているところです。

いわゆるNWOBHM期のバンドではありますが、そんなロートルさを感じさせないほど、はち切れんばかりのエネルギッシュさに満ち溢れた強烈なサウンドと演奏を堪能できるのですから。スラッシュメタルの始祖なんて言われる理由もよくわかりますし、なによりも初期の名曲が“今の音”でよりパワフルかつ攻撃的にバージョンアップしているのですから……初期の音源に物足りなさを感じる方にはうってつけと言えるでしょう。

それもこれも、マイクのドラミングに引っ張られたものが大きいのでしょうかね。ジョン・ギャラガー(Vo, B)のボーカルも冴えてるし、マーク・ギャラガー(G)も王道感があって清々しいし。過去のスタジオ音源に慣れている耳には、マイクのドラミングやフレーズに違和感を覚えるかもしれませんが、そういう細かいことを忘れさせてくれるほど、圧巻のパフォーマンスだと思います。

そして、オープニングを飾る「Destroy All Monsters」含め、最新作からの楽曲もそれらの旧作に負けていない。「Hung, Drawn & Quartered」まで頭4曲の暴走感といったら、気持ちいいのなんのって。そこから「Rock Until You Drop」での(途中のアッパーな展開含む)ミドルヘヴィなアレンジも最高のひとこと。後半に向けての緩急に富んだ選曲も素晴らしいですし、全11曲で54分強という長さも物足りなさを感じさせないくらいのちょうど良さ。初めて聴くという人にも入っていきやすいボリュームなんですよね。

ベスト選曲とか新作中心とかそういったこともなく、単に「今のRAVEN」がパーフェクトな形で凝縮された、「そうそう、ライブアルバムってこういうものだよね!」と膝を叩きなるくらいに完璧な作品。聴き終えたあとに胸がスカッとする、ヘヴィメタルらしいライブアルバムだと思います。

そりゃあ、これを聴いたらライブ観たくなりますわな。なんでみんな、もっと早く教えてくれなかったの……(苦笑)。

まあ、前作から4年近く空きましたし、現編成も固まってきたところなので、近い将来新作を携えて戻ってきてくれることに期待しましょう。そうじゃないとやってられないわ(笑)。



▼RAVEN『SCREAMING MURDER DEATH FROM ABOVE: LIVE IN AALBORG』
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2019年3月29日 (金)

ANTHRAX『SPREADING THE DISEASE』(1985)

1985年10月にリリースされた、ANTHRAXの2ndアルバム。ニール・タービン(Vo)とダン・リルカ(B)が脱退し、代わりにジョーイ・ベラドナ(Vo)とフランク・ベロ(B)が加入し、以降の黄金期ラインナップが完成。まず1985年2月にEP『ARMED AND DANGEROUS』を発表し、続いてこのアルバムをリリースしました。また、本作はIsland Recordsからの初メジャー流通ということもあってか、チャートインできなかった1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年)とは異なり全米113位という記録を残しています。

基本的な作風は前作『FISTFUL OF METAL』の延長線上にあるのですが、より歌えるシンガーが加入したことで、スラッシュメタル的なサウンドスタイルの中にも正統派メタル的な要素が強まったような印象を受けます。ミディアムテンポの「Madhouse」なんてまさにメンバーチェンジが功を奏した1曲ですしね。

とはいいながらも、全体的にスピード感を強調した楽曲が中心。次作『AMONG THE LIVING』(1987年)ではよりプログレッシヴで複雑なアレンジの楽曲が増えていきますが、オープニングの「A.I.R.」や続く「Lone Justice」を聴く限りでは本作ではまだ直線的な疾走チューンが中心かな。

その一方で、次作での「Indians」にも通ずるドラミングのヘヴィナンバー「The Enemy」や1stアルバムでのパンキッシュなスタイルをそのまま引き継いだ「Aftershock」、ミドルテンポの歌モノパワーメタル「Medusa」といった変化球も含まれており、スピード一辺倒で終わらせない気概も感じられます。このへんのバランス感が徐々に調整されていき、最終的にはミドルヘヴィ中心の作風へとシフトしていくのですから、そういう意味では本作はそのスタート地点と捉えることができるでしょう。

EP『ARMED AND DANGEROUS』で先行リリースされた「Armed And Dangerous」はこのアルバムにも収められていますが、EPとは別ミックス。この曲とラストの「Gung-Ho」は前ラインナップ時代に書かれた曲で、クレジットにはニール・タービンやダン・リルカの名前も見つけることができます。つまり、この作品は黄金期への橋渡し的内容、過渡期的内容と呼ぶこともできるでしょう。以降の作品と比べて完璧なまでの名作度が若干低いのは、そういった要因もあるのかもしれません。

ただ、個人的にはずっとこのアルバムが一番好きだったんですよ、ANTHRAXの中では。もちろん最初に聴いたアルバムというのも大きいですし、それこそMETALLICA『MASTER OF PUPPETS』(1986年)を手にした直後くらいに初めて聴いた1枚でもあるので、自分の血となり肉となったという点でも重要なんです。



▼ANTHRAX『SPREADING THE DISEASE』
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2019年3月28日 (木)

EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN』(1986)

言わずと知れたEUROPEの大出世作にして最大のヒット作。1986年5月にリリースされた通算3作目のアルバムで、海外では本作からEpic Recodsでのメジャー流通となりました(日本では当時はビクター、現在はソニーから発売)。誰もが一度は耳にしたことのあるタイトルトラックの大ヒット(全米8位/全英1位)に続き、「Rock The Night」(全米30位/全英12位)、「Carrie」(全米3位/全英22位)、「Cherokee」(全米72位)とヒットシングルを連発し、アルバム自体も全米8位、全英9位を記録。アメリカだけでも300万枚以上、全世界で700万枚近いセールスを誇る最大のヒット作となりました。

スウェーデンのローカルバンドだった彼らですが、ここ日本では1stアルバム『EUROPE』(1983年)の時点で一部HR/HMファンの間で高い人気を誇り、北欧のバンドらしい哀愁味のあるハードロックサウンドで好評を博しました。しかし、新たに世界的な大手レーベルやマネジメントと契約したことにより「売れるものを」と入れ知恵されたのでしょうか、より洗練されたサウンドへとシフトチェンジします。

プロデューサーにもケヴィン・エルソン(JOURNEYMR. BIGなど)を迎え世界進出を本気で狙った今作は、お聴きのとおり新加入のミック・ミカエリ(Key)のシンセを前面に打ち出した産業ハードロック的なスタイルを確立。ジョン・ノーラム(G)のギタープレイは主張の強すぎず、ソロのときだけ前に出てくるという程度の存在感。楽曲的にもミドルテンポのハードロック「Rock The Night」や「Danger On The Track」「Cherokee」や、王道のパワーバラード「Carrie」「Time Has Come」など確実にアメリカ進出を意識したものばかりで、そんな中に前作までのカラーを残す「Ninja」や「On The Loose」が程よいフックとなり、以降の作品と比べると“北欧らしさ”がまだ垣間見れるバランス感となっています。

個人的には日本のみでシングルカットされたラストナンバー「Love Chaser」(確か日本映画のテーマソングだったんですよね)がお気に入り。「The Final Countdown」ほどダサすぎず、それでいて以降のEUROPEらしさと従来のらしさがバランスよく混在している。ジョン・ノーラムのギタープレイも印象的だしね。ライブではもはや披露される機会は皆無ですが、このへんや「Ninja」「On The Loose」があるからギリギリ初期ファンをつなぎとめられた1枚なのかなと……といいながらも、僕自身リアルタイムではこのアルバムから入ったリスナーなので、それ以前のことはわからないのですが。

とか言いながらも、やっぱりシングルカットされた楽曲もマイナーな曲も含め、どれも思い出深く馴染み深いナンバーばかりなので、やっぱりアルバム全体通して楽しみたい1枚。シンセの音色に多少の古臭さを感じてしまうのは否めませんが、それも歴史の記録ということで。うん、やっぱり傑作です。



▼EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN』
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2019年3月27日 (水)

WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)

WHITESNAKEが1984年に発表した6thアルバム『SLIDE IT IN』が今年で35周年を迎えたということで、新たにリマスタリングを施されたエディションが2019年3月に発売。ジョン・サイクス(G)が参加したUSミックスを使った1枚ものと、USミックス+UKオリジナルミックスの2枚組、そして新たなリミックス音源や秘蔵レア音源6枚組+MVや最新インタビューを収めたDVD付き“アルティメット・スペシャル・エディション”の3仕様が用意さています。

『SLIDE IT IN』と続く『WHITESNAKE』(1987年)はちょうど本格的なアメリカ進出と重なったこともあり、本国イギリスとアメリカとで収録内容や曲順が異なったりと、何かと曰く付きの作品だったりします。そのへんは各アルバムのレビューで過去に触れてきましたが、特に『SLIDE IT IN』はここでさらに厄介なことになっています(詳しくはこちらをご覧ください)。

2009年に25周年を記念したCD+DVD仕様が海外でリリースされましたが、そこではUSミックスを使った、元のUK版ともUS版とも異なる曲順を用意(便宜上、こちらを以前のレビューに沿って④と呼びます)。あれから10年を経て新たに完成したリマスタリング版USミックス&UKミックスは、その④をベースにしたもの(UKミックスのみ、ボーナストラックとしてシングルのみに収録された「Need Your So Bad」と、エディ・クレイマーがミックスした「Gambler」「Guilty Of Love」の7インチ・バージョンを追加)。

 

⑤35TH ANNIVERSARY EDITION

01. Gambler
02. Slide It In
03. Slow An' Easy
04. Love Ain't No Stranger
05. Give Me More Time
06. Standing In The Shadow
07. Hungry For Love
08. All Or Nothing
09. Spit It Out
10. Guilty Of Love
11. Need Your So Bad [UK MIXのみ]
12. Gambler (7" Eddi Kramer Mix 1983) [UK MIXのみ]
13. Guilty Of Love (7" Eddi Kramer Mix 1983) [UK MIXのみ]

これが今の「正規トラックリスト」ということにでもしたいのでしょうか。まあ④で耳慣れた曲順とはいえ、80年代に散々①で聴きまくった耳にはやっぱりどこか違和感が残ります。それでもUSミックス②よりはマシですけどね。

で、本作のボックスセットには新たにリミックスを施された「35周年リミックス」というものが用意されており、こちらがDISC 3に収録されているのですが……これがね、またまたすごい代物なんですよ(苦笑)。

 

⑥35TH ANNIVERSARY REMIX EDITION

01. Slide It In
02. Slow An' Easy
03. Love Ain't No Stranger
04. Give Me More Time
05. Guilty Of Love
06. All Or Nothing
07. Spit It Out
08. Standing In The Shadow
09. Hungry For Love
10. Gambler
11. Need Your So Bad

もうね、何が何やら……原型すら残っていませんよ、これ(笑)。冒頭3曲は②のUSミックスと同じなんですが……これ、どういう意図があるんでしょうね。「Gambler」が10曲目で本編ラスト?と思いきや、新たに「Need Your So Bad」をしれっと追加することで、なんとなく収まり良く見せている感もあり。やっぱり違和感は拭いきれませんが、それ以上に気になるのがリミックスされたサウンドなんです。

全体的に音の硬さやリバーブの掛け方が現代的になっており、オルガンをオリジナル盤よりも前に出したミックスと言えばいいんでしょうか。曲によっては(特に「Standing In The Shadow」あたり)「あれっ、こんな音入ってたっけ?」と驚くものもあり、そういった意味では『WHITESNAKE』の“30TH ANNIVERSARY EDITION”で初披露されたリミックス曲にも似た感想を覚えました。基本的にはUKミックスのテイクをもとにリミックスしたようですが、ところどころでジョン・サイクスのプレイも聴こえてくるので、そこをいいとこ取りしたかったってだけなんですかね。完全にデヴィッド・カヴァーデイルのエゴですわ(苦笑)。

なお、ボックスセットには『SLIDE IT IN』レコーディング時のモニターミックス音源や、ジョン・ロード(Key)在籍時ラストライブ音源、1984年3月1日のグラスゴー公演、アルバム収録曲の簡易デモなどの貴重な音源も満載。3仕様の中では間違いなくボックスセットを購入することをオススメします。

けど……まだこのアルバムを聴いたことがないというビギナーは、オリジナルのUK盤から聴いたほうがいいんじゃないかなと。なんなら、今回の2枚組仕様のUKミックスをオリジナルの曲順に変えて聴いてみてもいいと思います(CDに関して言えば、音質的には確実に最新リマスターのほうが今の耳に合っているものなので)。

 


▼WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』
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2019年3月26日 (火)

RATT『DANCING UNDERCOVER』(1986)

1986年8月(日本では10月)にリリースされたRATT通算3作目のオリジナルアルバム。過去2作同様にボー・ヒル(WINGERWARRANTアリス・クーパーなど)がプロデュースを担当しています。本作からは「Dance」「Body Talk」「Slip Of The Lip」がシングルカットされましたが、ヒットしたのは「Dance」(全米59位)のみ。それも影響してかアルバム自体も最高26位と、過去2作で達成した連続TOP10入りを逃し、セールスも100万枚程度に止まっています。

路線的には過去2作とほとんど一緒。“Ratt 'N' Roll”と呼ばれるミドルテンポの楽曲が中心ですが、そこに「Drive Me Crazy」のようなアップチューンがあったり、「Body Talk」のようなメタリックなファストチューンがあったりと、アルバムとしての緩急はしっかりついている。

また、各楽曲の完成度も過去2作と比べてそこまで劣るとは思えない。事実、シングルカットされた「Dance」や「Body Talk」はシンプルにカッコいいハードロックナンバーだし、特に前者のキャッチーさはそれ以前のシングルヒットにも引けを取らないと思うのです。シングル曲のないB面(M-6以降)も悪くないし、ラストの「Enough Is Enough」も新鮮さが感じられるんですよね。

では、なぜ大きなヒットに結びつかなかったのでしょう。それは、おそらくスティーヴン・パーシー(Vo)の単調なボーカルスタイルによるものが大きいのではないかと。みんな、そこに気づいてしまったのです。

1986年8月というと、のちにメガヒットを記録するBON JOVIの3rdアルバム『SLIPPERY WHEN WET』がアメリカでリリースされたタイミング。RATTとBON JOVIはほぼ同じタイミングにデビューを果たし、同じペースでアルバムを発表してきましたが、どうしてここまで差が付いてしまったのかと問われたら、結局は楽曲の良さとそれを表現する者の器用さなのかなと。ジョン・ボン・ジョヴィも決してテクニカルなシンガーではありませんが、スティーヴンと比べたら曲ごとに色を変えることができる人。バラードも“味”で聴かせられてしまうシンガーなのです。

ところが、スティーヴンには繊細なラブソングもキャッチーなパワーバラードも歌えない。いや、歌えるんでしょうけど、リスナーが求めるものにはならない。実はこのへんがネックになり、RATTはこのアルバム以降迷走期に突入することになるわけです。皮肉な話です。

RATTというバンドを軸にして考えれば良作なのに、外側で拡大し始めたシーンからみたら「いつも同じで単調」とみなされてしまう。つくづく不幸なバンドだと思います。



▼RATT『DANCING UNDERCOVER』
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2019年3月25日 (月)

E・Z・O『E・Z・O』(1987)

1987年4月発売の、E・Z・Oのデビューアルバム。このバンド、もともとはFLATBACKERとして日本国内で2枚のアルバムを発表しており、渡米と同時にバンド名を変更。ジーン・シモンズKISS)とヴァル・ギャレイのプロデュースにより、海外ではGeffen Recordsから、国内はFLATBACKER時代同様ビクターからリリースされました。国内ではオリコン6位、アメリカでも150位まで上昇するなど、日本の新人バンドとしてはなかなかの成績を残したのではないでしょうか。

FLATBACKER時代は日本語詞、スラッシュメタルやハードコアからの影響が強いサウンドが特徴だった彼らですが、このE・Z・Oの1stアルバムはHR/HM色の強い作品に仕上げられています。楽曲によってはFLATBACKERの名残(「House Of 1,000 Pleasures」のメインリフ)も感じられますが、もちろんここではまったく別モノに変化。テンポ的にもFLATBACKER時代は前のめりのファストチューンが多かったところ、本作ではミドルテンポのヘヴィチューンが中心に。このへん、LOUDNESS『THUNDER IN THE EAST』(1985年)で試みた路線に近いものを感じます。

全9曲中7曲がバンドと外部ライターとの共作で、2曲が職業ライターの手によるもの。MVも制作された「Flashback Heart Attack」にはHOUSE OF LORDSなどで知られるジェイムズ・クリスチャン(Vo)、「House Of 1,000 Pleasures」や「Mr. Midnight」ではBLACK 'N BLUEのジェイミー・セント・ジョーンズ(Vo)、そして「Here It Comes」や「Kiss Of Fire」などではKISSとの共作でおなじみのアダム・ミッチェルの名前を見つけることができます。このへんは確実にジーン・シモンズの手腕によるものですね(バンド名変更や歌舞伎の隈取メイクも確実にジーンの発案だろうし)。

とにかく、どの曲も非常にキャッチー。シングルカットされた「Here It Comes」のみ毛色が異なりますが、そのほかは基本的に豪快でメロディアスなハードロック。ちょうどBON JOVIがブレイクし、ここからWHITESNAKEが当たりGUNS N' ROSESがデビューするという絶妙なタイミングだったこともあり(E・Z・Oとガンズはアメリカでのレーベルメイトですしね)、本作も海外で高い評価を獲得したようです。セバスチャン・バック(ex. SKID ROW)の口からもE・Z・Oの名前が飛び出すこともありましたしね。

ドラムサウンドに時代を感じるものの、Shoyo(G)のギターワークやMasaki(Vo)のディストーションボイスは今聴いても凄みというか恐ろしさを覚えます。特にMasakiはダサダサ日本語詞のFLATBACKER時代を忘れさせるだけの実力を発揮しており、そこから90年代のLOUDNESS加入につながるわけです。

今でこそサブスクで手軽に聴くことができる本作。実はCDはしばらく廃盤状態でした(紙ジャケ化含め、何度か再発されてきましたが)。ホント、良い時代になりましたね。80年代後半のHR/HMブームにおける(世界的には)隠れた名盤、そしてジャパニーズメタルの歴史に名を残す傑作、ぜひこの機会に触れてみてください。



▼E・Z・O『E・Z・O』
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2019年3月24日 (日)

MOTLEY CRUE『THE DIRT SOUNDTRACK』(2019)

3月22日からNetflixにてついに配信開始となりました、MOTLEY CRUEの自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』。本当は『DOWNLOAD JAPAN 2019』関連の取材やそれに伴い遅延していたほかの仕事の影響もあり、実際に映画を観るのはこの土日になりそう……と思っていたんですが、金曜深夜に観てしまいました、結局(苦笑)。率直な感想についてはこちらにてご確認いただけると幸いです。

で、公開と同時にリリースされたサウンドトラックアルバム(と呼んでいいのかな?)のほうは発売開始と同時にしっかりダウンロード購入して、先に聴かせてもらいました。

ということで、本日紹介するのはMOTLEY CRUEの自伝映画サントラにして最新ベストアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』です。

アルバムには映画公開前に先行配信された、映画の主題歌的楽曲「The Dirt (est. 1981)」やマドンナの名曲カバー「Like A Virgin」など新録楽曲4曲と、映画の主軸となる80年代前半(1981年の1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』、1983年の2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』)の楽曲を中心とした過去のナンバー14曲を収録。バンド創世記の話も多く含まれていることから、インディーズ時代の楽曲で構成された『TOO FAST FOR LOVE』収録曲が最多の5曲含まれているのは納得。『SHOUT AT THE DEVIL』からも、普段のベスト盤で選出される機会のない「Red Hot」を含む4曲が選出されています。

と同時に、バンドとしてはネガティヴな話題(ヴィンス・ニールの交通事故、ニッキー・シックスのオーバードーズによる心停止など)が続いた3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)の楽曲がそれぞれ1曲ずつ、そこからバンドとして起死回生を図った5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)の楽曲が3曲選ばれているのは、まあ理解の範疇かな。特に『DR. FEELGOOD』からこの3曲(「Same Ol' Situation (S.O.S.)」「Kickstart My Heart」「Dr. Feelgood」)というのも、予告映像を観る限りでは納得いくし。

問題となるのはやっぱり新録4曲ですよね。「The Dirt (est. 1981)」は映画でトミー・リー役を演じたラッパー、マシン・ガン・ケリーをフィーチャーしたアンセミックな1曲。活動停止から3年以上経った今でもトミーっぽいドラミングに、いかにもミック・マーズなギターフレーズやソロ、ヴィンスのこの声が乗れば間違いなくMOTLEY CRUEになることを証明してくれた意義は大きいと思います。うん、単純にカッコいい。現時点でのラストアルバム『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)の延長というよりは、90年代末のトミー脱退直前からオリメンが再度揃う2枚組ベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』(2005年)あたりまでの彼らを彷彿とさせるカラーや雰囲気がある楽曲だなと。当然ながら一発で気に入りました。

「Ride With The Devil」もその延長線上にあるダークな楽曲。派手さはないものの、最近のニッキー・シックスらしさ……SIXX: A.M.っぽさも見え隠れする“アルバムの中の1曲”といった印象。うん、悪くない。3曲目「Cash And Burn」も同系統のヘヴィチューンで、いかにもニッキーらしい。モダンさも提示されており、正直この3曲の路線でアルバム1枚聴いてみたいと思ったくらい。『SAINTS OF LOS ANGELES』もあれはあれで悪くなかったけど、どこか“品が良すぎる”ところもあったので、これくらいのアクの強さがある楽曲で占められた作品ならきっと『SAINTS OF LOS ANGELES』がイマイチだと思ったファンも納得させられるはず。あと、プロデュースがボブ・ロックというのも大きな鍵になっているんじゃないかな。先に挙げた時期からのつながりは、これによるものもあるでしょうし。

ラストは「Like A Virgin」。これはギャグとして受け取っておきます(笑)。バカだなあ、もう。まあ、80年代や90年代だったら彼らがこの曲を選ぶことはなかったでしょうし、これも2019年ならではかなと。

思えば80年代の楽曲を軸にしたベストアルバムって、メンバー公認ではこれまでありそうでなかったものだと思うので、映画を楽しむという意味はもちろんのこと、輝かしいバンドの最盛期に思いを寄せるという意味でも興味深い1枚かな。新鮮味のない既発曲が半数以上ですが、個人的には楽しめる内容でした。



▼MOTLEY CRUE『THE DIRT SOUNDTRACK』
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QUIET RIOT『CONDITION CRITICAL』(1984)

1984年7月発売の、QUIET RIOT通算2作目(日本のみ4作目)のオリジナルアルバム。前作『METAL HEALTH』(1983年)がいきなり全米1位を獲得し、600万枚を超えるセールスを記録したことを受け、1年4ヶ月という短いスパンで制作。全米15位、トータル100万枚と前作には到底及ばない結果しか残せませんでしたが、『METAL HEALTH』と併せて初期の彼らを語る上では欠かせない1枚と言えます。

とにかく本作は前作の焼き直し、あるいは「同じヒット作をもう1枚作ろう!」という商魂が丸見え(笑)。さすがにリスナーもバカじゃないので、「前のを薄めた内容なら『METAL HEALTH』だけで十分だわ、ほかにも新しくて良いバンドがたくさんいるしね!」と思ったかどうかわかりませんが、すべては結果として数字に表れているわけですね。

冒頭を飾るヘヴィな「Sing Of The Times」からして、前作における「Metal Health (Bang Your Head)」の延長線上にある1曲。だからといって悪いわけではないですし、これはこれで良い曲なんですよ。で、続くM-2「Mama Weer All Crazee Now」は前作における「Cum On Feel The Noize」同様、SLADEのカバー。なにもそこまで真似なくても……と思うのですが、これも原曲の良さ大前提なので、なかなかの出来。シングルカットもされましたが、全米5位の「Cum On Feel The Noize」とは比べものにならない全米51位止まり。嗚呼。

で、『METAL HEALTH』ならここからマイナー調のミドルナンバー「Don't Wanna Let You Go」、能天気なパーティチューン「Slick Black Cadillac」と続くわけですが、この『CONDITION CRITICAL』では「Party All Night」「Stomp Your Heads, Clap Your Feet」といったパーティソング2連発。つまりバンドは「カラッとしたアップチューンがウケた」と認識していたのでしょう。アルバム冒頭からそういったカラーの強い楽曲が続くことで、軸は定まったけど幅は狭くなったことを提示することになるわけです。

5曲目にようやくメジャーコードのパワーバラード「Winners Take All」が登場しますが、これもそれ以前の4曲からの流れに沿ったもので、アルバムのカラーにぴったり。もうちょっと“憂い”があったら良かったんだけどなあ。

後半もヘヴィなミドルナンバー「Conditional Critical」や前のめりなファストチューン「Scream And Shout」、これぞ“LAメタル”な「Red Alert」、マイナーキーの美メロハードロック「Bad Boy」、シンガロングしたくなるアップテンポの「(We Were) Born To Rock」となかなかの良曲揃いなのですが、やはり『METAL HEALTH』と比較したら弱さが否めない。なぜなんでしょうね。

個人的に『METAL HEALTH』の良さって、のちに“LAメタル”と括られることになるパーティ感の強いポップでキャッチーな楽曲とミドルテンポ&ファストなメタルナンバー、そして適度な“憂い”が感じられるミディアムナンバーとバラードにあったと思っています。そのバランス感が絶妙だったからこそ、アルバムとしてもヒットしたのではないでしょうか。

ところが、この『CONDITION CRITICAL』からは“憂い”の部分が一気に減退し、パーティ感ばかりを強調してしまった。それが当時のカリフォルニアの空気だと言ってしまえばそれまでですが、にしてもメガヒット作の次に出す勝負作としてはちょっと弱いのではないでしょうか。1年数ヶ月という短いスパンで完成させねばならなず、深く考える余裕が足りなかったのも敗因と言えるでしょう。

1曲1曲は悪くないのに、アルバムとして(しかも『METAL HEALTH』の次作として)聴くと物足りなさを感じる。非常にかわいそうな作品と言えますし、ここでコケたことが続く『QR III』(1986年)以降の失速につながるのですから、罪作りな1枚ですね。



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2019年3月23日 (土)

MOTLEY CRUE『SUPERSONIC AND DEMONIC RELICS』(1999)

1999年6月にリリースされた、MOTLEY CRUEのアルバム未収録&アウトテイクを集めたコンピレーションアルバム。前年にElektra Recordsから自主レーベルMotley Recordsへと移籍した彼らですが、その際に過去のカタログをすべてMotley Recordsから再発。しかし、1991年のコンピレーション盤『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991年)だけは廃盤となり、その関係から同作に収録された新曲やアルバム未収録曲がこの新規コンピ盤に移行しています。 『DECADE OF DECADENCE '81-'91』や2003年にMotley Recordsから再発されたオリジナルアルバムを持っていればほぼ事足りる内容ですが、興味深いのはジョン・コラビ期の楽曲も含まれている点。そのへん含め、各曲について触れていきたいと思います。


「Teaser」「Rock 'N' Roll Junkie」「Primal Scream」「Anarchy In The U.K.」「Angela」

これらは先の『DECADE OF DECADENCE '81-'91』にも収録されていますね。前者はトミー・ボーリン(ex DEEP PURPLE)のカバーで、5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)期のレコーディング。チャリティアルバム『STAIRWAY TO HEAVEN / HIGHWAY TO HELL』(1989年)が初出です。「Rock 'N' Roll Junkie」も同時期のレコーディング楽曲で、映画『フォード・フェアレーンの冒険』のサントラに提供されました。残りは『DECADE OF DECADENCE '81-'91』用に録音された新曲&カバーで、「Primal Scream」は活動停止まで必ず演奏されてきた代表曲のひとつ。


「Sinner & Saints」「Monsterous」「Say Yeah」「So Good, So Bad」「Mood Ring」

本邦初公開となった未発表デモ音源。「Sinner & Saints」が2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)期、「Monsterous」「Say Yeah」が『DR. FEELGOOD』期のアウトテイクなのですが、まあ聴けばその作風/曲調からなんとなく想像できますよね。「Monsterous」のみ1分ちょっとの未完成版ですが、まあどれもこれも出来としては中途半端なのでカットされて正解だったかなと。「So Good, So Bad」は3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)期のアウトテイク。同作は前作『SHOUT AT THE DEVIL』からのアウトテイクなども含む過渡期作品でしたが、こういった曲もあったんですね。そして最後の「Mood Ring」は1984年の録音されたデモ。曲というよりはセッションの断片っぽい内容で、『THEATRE OF PAIN』に向けたセッションの中から生まれたものなんでしょうね。いかにもお遊びっぽい1曲です。


「Planet Boom」「Bittersuite」「Father」「Hooligan's Holiday (Extended Holiday Version by SKINNY PUPPY)」

すべてジョン・コラビ在籍時の6thアルバム『MOTLEY CRUE』(1994年)期から。頭3曲の初出はEP『QUATERNARY』(1994年)で、それぞれトミー・リー、ミック・マーズ、ニッキー・シックスのソロナンバーとなります(あれ、ジョンの「Friends」は……苦笑)。「Planet Boom」はその後のMETHODS OF MAYHEMに通ずるヒップホップ/ミクスチャーロック感がありますし、「Bittersuite」はミックによるいぶし銀のギタープレイを堪能でき、「Father」はいかにもニッキーらしいオルタナ/インダストリアル感満載。 最後の1曲は『MOTLEY CRUE』収録曲の、表記のとおりSKINNY PUPPYが手がけた11分強にわたるリミックス。序盤は原曲のままですが、ギターソロに入るあたりから一気にインダストリアル調に世界観が広がっていく、なかなかの仕上がり。『QUATERNARY』日本盤にも収録されていたので、聴き覚えのあるファンも多いのでは。なお、『QUATERNARY』は本国ではもともと限定販売された作品でしたが、日本では一般発売されたので中古にてすぐに探すことができるかと。海外のみでリリースされたボックスセット『MUSIC TO CRASH YOUR CAR TO: VOL.2』(2004年)でも、これらの楽曲を聴くことができます。


「Dr. Feelgood (Live)」「Knock 'Em Dead, Kid (Demo)」

前者は『DECADE OF DECADENCE '81-'91』日本盤や当時の海外盤シングルが初出の、1989〜1990年頃のライブ音源。後者は『SHOUT AT THE DEVIL』収録曲のデモ音源。

……以上、駆け足で解説してきましたが、読んでいただいたとおりライトユーザーというよりはコアリスナーに向けた内容です。まあ「こういう世界もあります」っていう程度で収めておいてもらえたらと思います。



▼MOTLEY CRUE『SUPERSONIC AND DEMONIC RELICS』
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2019年3月22日 (金)

MOTLEY CRUE『LIVE: ENTERTAINMENT OR DEATH』(1999)

今日からNetflixで『THE DIRT』が公開されるということで、今回はこちらを紹介しようかと思います。

1999年11月にリリースされた、MOTLEY CRUE初の公式ライブアルバム。1997年にヴィンス・ニール(Vo)が復帰して、ミック・マーズ(G)、ニッキー・シックス(B)、トミー・リー(Dr)のオリジナルメンバーが揃うものの、当時所属していたElektra Recordsとうまくいかず、1998年に自主レーベルMotley Recordsを設立。初のグレイテスト・ヒッツアルバムに続いて発表されたのが本作となります。

このアルバムは2枚組仕様となっているのですが、1本のフルステージを完全収録したものではなく、ヴィンス在籍時のライブ音源からベストテイクをまとめたもの。つまり、録音時期はまちまちで、構成的にも実際のライブの流れに沿ったものというわけではありません。そこだけが勿体ない(実際のライブをまるまる収録したものは、三度オリジナル編成が揃うことになる2006年の『CARNIVAL OF SINS: LIVE』まで待つことになります)。

選曲的にはDISC 1が1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)から2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)の楽曲のみで構成、DISC 2が3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)、4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)、5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)、コンピレーションアルバム『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991年)の黄金期の楽曲で構成されています。録音時期は、古いもので1982年11月、新しいものは1999年3月とかなり幅があるようです。特にDISC 1は楽曲的に90年代後半に演奏されていなかったものも多いためか、80年代前半の録音が多く、逆にDISC 2は90年代以降の録音が中心となっています。

なもんで、DISC 1の演奏は荒々しいし、ヴィンスの声もよく出ていてしっかり歌えている。一方で、DISC 2になると演奏はカッチリと作るこまれた強靭なものなのに、ヴィンスは歌詞をかなり省略して歌う“省エネモード”(笑)。まあこればかりは仕方ないですね(笑)。

個人的にはリアルタイムで体験できなかったDISC 1の時代が新鮮で、こちらを聴く頻度が高いかもしれません。なにせ「Public Enemy #1」や「Merry-Go-Round」「Starry Eyes」が含まれていますからね。あと、ちゃんと歌えている「Shout At The Devil」も良いです(笑)。

DISC 2は普通にグレイテスト・ヒッツですよね。全部シングル曲ですし。MOTLEY CRUEというバンドが80年代後半に向けて変質している様が、この選曲からも伺えるかと思います。荒々しくて曲もいなたいDISC 1と比べると洗練されてる感ハンパないですが、それでも「Wild Side」や「Dr. Feelgood」を聴けば血がたぎるし、「Primal Scream」のグルーヴ感は本当に気持ちいいし、「Home Sweet Home」を聴けば一緒に歌いたくなるし、ラストの「Kickstart My Heart」が始まれば拳を上げたくなるし。たまったもんじゃありませんよ(笑)。こうやって素直に聴くと「最高!」ったらありゃしない。

ですが、当時はこの“考えられていない”構成に対して「これが待ちに待った初のライブアルバムかよ……」とがっかりしたのもまた事実。しかも、これと前後するかのようにトミー・リーが脱退してしまいますし。初めてこのバンドと向き合うモチベーションが下がった時期だったことも付け加えておきます。



▼MOTLEY CRUE『LIVE: ENTERTAINMENT OR DEATH』
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2019年3月21日 (木)

SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』(1995)

『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)を携えたワールドツアー終了後、なかなか再始動しないGUNS N' ROSESに対して痺れを切らしたスラッシュ(G)。ダフ・マッケイガンギルビー・クラークがソロ契約&ソロアルバム発売を果たしたのを機に、ついに自身もソロ活動を本格始動させます。

1994年に結成されたSLASH'S SNAKEPITは、ソロというよりはあくまでバンド名義での活動を主としたもの。このへんにスラッシュのこだわり(何がやりたいのか)が伺えます。集まったメンバーは元JELLYFISHのエリック・ドヴァー(Vo)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)に、ギルビー・クラーク(G)&マット・ソーラム(Dr)というガンズ組。レコーディングにはディジー・リード(Key)も参加しているので、これじゃあ“アクセル・ローズとダフ抜きのガンズ”と言えなくもないですが、そもそもギルビーもマットもディジーもオリジナルメンバーではないので微妙ですが。

こうして、マイク・クリンクを共同プロデューサー、ミックスにスティーヴ・トンプソン&マイケル・バルビエロというガンズの諸作品を手がけてきた布陣を迎えて1995年2月に発表されたのが、このデビューアルバム。全米70位とガンズのソロ活動の中ではもっとも成功した1枚で、さすがアクセルと肩を並べる存在と言えます。

イジー・ストラドリンがアーシーでレイドバックしたロックンロール、ダフがパンクを主軸とするならば、スラッシュは土着型の王道アメリカンハードロックが武器と言えるでしょう。実はそれって、ガンズと聞いて我々がまず最初にイメージする要素だったりしませんか? つまり、このアルバムで展開されているサウンドや楽曲スタイルって、「もしガンズが1995年当時にニューアルバムを作ったら、半分くらいはこんな路線になるんじゃないか?」というものなんですよ(もちろん、残り半分はアクセルの色が強いものになるはず)。

ガンズの武器であるスラッシュらしいギターフレーズ&ソロ(と音色)、『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)あたりで聴けたラフだけど硬質なサウンドプロダクションのせいもあって、確かに本作はどことなくガンズっぽいですし、なんなら一連のソロアルバムの中で一番ガンズに近い1枚だと思います。楽曲自体も(のちにアクセルが訴えますが)ガンズの次の作品に向けて作ったものも含まれているようですし。

ただ、すべてがすべてスラッシュひとりで書いた曲ではないですし、大半はエリックとの共作だったり、中にはギルビー単独で書いた曲や、ダフやイジーの名前がクレジットに入った(!)曲も含まれている。そういった意味では本当に「SLASH'S SNAKEPITというバンドのアルバム」を目指したものなんでしょうね。

エリックの歌声はアクセルほどハイトーンでストレートなものではないので、歌を聴いてそこまでガンズを思い浮かべることはないですが、それでも「Beggars & Hangers-On」や「Good To Be Alive」「What Do You Want To Be」のような曲をアクセルが歌ったらどうなるんだろう……というワクワク感も多少あったりして。

全14曲で70分というトータルランニングが『USE YOUR ILLUSION』シリーズに通ずるものがあるのですが、『USE YOUR ILLUSION』と比べると楽曲のカラーがバラエティに富んでいるわけでもないので、さすがに尺的にキツイと感じることも。6分前後および6分超えの曲が4曲も含まれていることから、もうちょっとアレンジ力のある人間がバンドに携わっていたら、さらに完成度の高い内容になったのではないか……そういった意味ではバンドとはいえ、やはりソロはソロなんですね(メインバンドに対するオナニーという意味で)。

この布陣でのSLASH'S SNAKEPITこれが最初で最後。この5年後にスラッシュ以外のメンバーを総入れ替えして2ndアルバム『AIN'T LIFE GRAND』(2000年)を発表していますが、そちらについてはまた別の機会に。



▼SLASH'S SNAKEPIT『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』
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2019年3月20日 (水)

GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』(1994)

イジー・ストラドリンに代わり、GUNS N' ROSESにギタリストとして加入することになったギルビー・クラーク。80年代半ばにアイドル的な立ち位置のパワーポップバンドCANDYや、ハードロックバンドKILL FOR THRILLSなどで活躍したのちにガンズに加わるのですが、バンドがスタジアムバンドとして人気肥大していく中でツアーのみに参加ということもあって、正直ミュージシャンとしてどこまでの才能がある人なのか、いまいちわかっていなかったところがありました。

そんな中、ガンズ活動休止中にダフ・マッケイガンに続いてソロアルバムを発表するのがギルビーだとわかると、当時のファンは「お前かよ!」と総ツッコミを入れることになるわけです。だって、オリメンのスラッシュより先なんですから。

そんなわけで、1994年7月にVirgin Recordsから発表されたのがこの『PAWNSHOP GUITARS』というアルバム。ガンズが所属するGeffen Recordsからではないというあたりに、いろいろ政治的なものを感じますね。

プロデュースを手掛けたのは、キース・リチャーズとの仕事などで知られるわディ・ワクテル。レコーディングには同じくガンズからマット・ソーラム(Dr)とディジー・リード(Key)が全面参加し、スラッシュやダフも数曲でゲスト参加。さらに、ダフやスラッシュのアルバムにはノータッチだったアクセル・ローズがストーンズのカバー「Dead Flowers」で、ギルビーとデュエットしているという事実に、これまた多くのファンが「……なぜ!?」と驚くことになるわけです。笑える。

ほかにもPIXIESフランク・ブラックSKID ROWのドラマー、ロブ・アフューソ、ELECTRIC ANGELSや2代目SLASH'S SNAKEPITに在籍し現在ALICE COOPER BANDで活躍中のライアン・ロキシーなども名を連ねています。何気に豪華ね。

ギルビーのボーカルは可もなく不可もなくの“ヘタウマ”タイプ。適度にパンキッシュなスリージーハードロックにはこれくらいでちょうどいいのかもしれません。作曲面でも「Cure Me... Or Kill Me」のようなハードロックから「Tijuanna Jail」のポップパンク、「Skin & Bones」のホンキートンク路線、「Johanna's Chopper」でのサイケロックまで、ガンズ路線からポップなものまで意外と器用にこなせることがわかります。あと、ストーンズの「Dead Flowers」とTHE CLASHの「Jail Guitar Doors」(ダフとフランク・ブラックがゲスト参加)というカバーのセンスもなかなか。この才能がガンズで一度も活かされることがなかったのが悔やまれます。

この手のロックとしては、実は隠れた名盤的色合いの強い1枚。過去のガンズ在籍メンバーの中では(大全盛期に在籍していたにも関わらず)もっとも影の薄いギルビー。今となってはアクセルのゲスト参加って、「まあこれで許してや?」的なご祝儀だったのかな……というのは言い過ぎでしょうか(苦笑)。



▼GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』
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2019年3月19日 (火)

OZZY OSBOURNE『DIARY OF A MADMAN』(1981)

オジー・オズボーンが1981年11月に発表した、通算2作目のソロアルバム。BLACK SABBATH脱退を経て起死回生の一撃となったソロデビューアルバム『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)が全英7位、全米21位というヒットにつながり、バンドはそこから間髪入れずにレコーディングに突入。ランディ・ローズ(G)、ボブ・ディズリー(B)、リー・カースレイク(Dr)という同じ布陣で制作されました。

聴いてもらえばわかるように、疾走感のあるオープニングトラック、ポップでキャッチーなシングル曲、メロディアスなスロー/ミディアムナンバー、ヘヴィなミドルナンバーという序盤の構成は前作『BLIZZARD OF OZZ』をなぞったもの。もちろんまったく同じというわけではないですが、作品の方向性としては何がやりたいかは一聴してすぐに理解できると思います。

ですが、このアルバムを聴き進めていくうちに、『BLIZZARD OF OZZ』を軸にした世界観がより広がりを見せていることにも気づかされます。パーカッシヴなドラミングから始まる「Little Dolls」は前曲「Believer」にも引けを取らないヘヴィでキャッチーな楽曲だし、オジーのビートルズ愛好家ぶりが反映されたメロディアスなバラード、ダイナミックなアレンジがひたすらカッコいいシャッフルナンバー「S.A.T.O.」、そしてクラシカルかつドラマチックな展開を見せる大名曲「Diary Of A Madman」。オジーの才能はもちろんですが、それを見事な形で具体化し、クオリティの高い作品へと昇華させたランディの才能も前作以上の形で開花しています。

もちろん、前作の延長線上と表現したアルバム前半の4曲も、1曲1曲のクオリティは前作以上。ランディのギタープレイも圧巻の一言で、個人的には「Over The Mountain」や「Flying High Again」のギターソロはいつ聴いても心踊るものがあります。「You Can't Kill Rock And Roll」のバラード調に始まりながらもサビで勢いをつけるアレンジも冴えまくっているし、サバス時代とは異なるヘヴィさがにじみ出た「Believer」のギターワークも最高。要するに文句の付けどころがない1枚なのです。

ランディ・ローズは本作発表後数ヶ月後の1982年3月19日に飛行機事故で此の世を去るわけですが、ランディ在籍時の本作収録曲の公式ライブ音源って「Flying High Again」「Believer」くらいしかなかったじゃないですか。そのせいもあってか、10代の頃はこのアルバムに対する印象が薄かったんです。ライブアルバム『TRIBUTE』(1987年)にも上記2曲しか収められていませんでしたしね。

ところが、年をとってからオジーのカタログをひととおり聴いて、何度もリピートしていくうちに『DIARY OF A MADMAN』の完成度の高さに改めて気づかされる。そんな機会が年々増えていったわけです。ぶっちゃけ、『BLIZZARD OF OZZ』と比較するのが愚問かと思えるぐらい、初期2作はそれぞれに素晴らしいアルバムであって、僕の中では甲乙付け難いんです。そう思うリスナー、絶対に多いと思うんですよね。

今年も3月19日がやってきてしまいました。残念ながら2日後に控えた『DOWNLOAD JAPAN 2019』でのオジー来日はキャンセルになってしまいましたが、だからこそ今日はこのアルバムを爆音で楽しめたらと……。



▼OZZY OSBOURNE『DIARY OF A MADMAN』
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DUFF McKAGAN『BELIEVE IN ME』(1993)

GUNS N' ROSESダフ・マッケイガン(B)が1993年9月(日本では同年10月)に発表した、現時点で唯一のソロアルバム。当時はガンズが『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)に伴うワールドツアーが終了したあとで、バンドとしての活動が一時的に休止していたタイミング。本作の2ヶ月後には、事前にレコーディングされていたカバーアルバム『THE SPAGHETTI INCIDENT?』(1993年)もリリースされています。

ガンズの在籍メンバーとしてはいち早くソロ活動に乗り出したダフ(元メンバーのイジー・ストラドリンは脱退後の1992年にアルバムを発表していますが、ガンズに所属したままでのソロ活動はこれが初)。このアルバムでダフはベースはもちろんのこと、リードボーカルやリズムギター、ドラム、ピアノなど大々的に挑戦。どこか“スリージーロック版レニー・クラヴィッツ”みたいなスタイルで、アルバム作りに臨んでいます。

曲によってはさまざまなゲストミュージシャンも多数参加。スラッシュ(G)やギルビー・クラーク(G)、ディジー・リード(Key)、マット・ソーラム(Dr)といった“アクセル・ローズ抜き”ガンズの面々に加え、ジェフ・ベック(G)やレニー・クラヴィッツ(Vo)、当時SKID ROWのメンバーだったセバスチャン・バック(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、ロブ・アフューソ(Dr)など、顔の広いダフらしい豪華な面々が華を添えています。

ダフ自身はガンズのアルバムやライブでも「So Fine」や「New Rose」「Attitude」などでその歌声を披露してきましたが、決して個性的で上手というタイプではない、雰囲気で聴かせる“ヘタウマ”タイプ。当然このアルバムでもそういったスタイルが全開で、ガンズのアルバムをパンク/オルタナ側に寄せたその作風に妙にフィットしています。スラッシュがリードギターを弾きまくるオープニング曲「Believe In Me」からして、そのカラー押しまくりですものね。

かと思えば、クラヴィネットを多用したファンキーな「(Fucked Up) Beyond Belief」があったり、オルガンやストリングスを被せたスローバラード「Could It Be U」があったりと、相変わらず器用さも提示している。なんて感心していると、1分半程度のタイトルまんまな疾走パンクチューン「Punk Rock Song」なんて曲もある。さすがダフ、我々の思い描くパブリックイメージを裏切りません。

さまざまなゲストミュージシャンのカラーも強く打ち出しながらも、それに消されることのないダフの個性。アルバムとしては決して完成度が高いとは言い難いラフな内容ですが、そこも含めて当時のガンズのメンバーが作ったソロアルバムという印象が強いかも。この春、久しぶりにソロライブを行うというダフ(※参照)、そのあとには本作以来となるソロ名義でのアルバムもリリース予定なんだとか。ガンズでの活動を経た今の彼がどんな作風のアルバムを作るのか、そしてどんなゲストが参加するのか、とても気になります。



▼DUFF McKAGAN『BELIEVE IN ME』
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2019年3月18日 (月)

IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS『IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS』(1992)

4年ぶりのオリジナルアルバム『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)のリリースを待たずしてGUNS N' ROSESを事実上脱退したイジー・ストラドリン(G, Vo)。そんな彼が1992年10月、自身のメインバンドとなるTHE JU JU HOUNDSを携えて発表したのがこのアルバム。ガンズと同じGeffen Recordsからのリリースで、全米102位という記録を残しています。

THE JU JU HOUDSのメンバーはイジーのほか、元THE GEORGIA SATELLITESのリック・リチャーズ(G)、ジミー・アシュハースト(B)、チャーリー・クィンタナ(Dr)という布陣。ジミーはのちにBUCKCHERRY(2005〜2013年)の一員としても活躍しています。また、アルバムには元THE FACESのメンバーでストーンズのサポートでも知られるイアン・マクレガン(Key)や、レニー・クラヴィッツとのコラボレートでおなじみのクレイグ・ロス(G)、ニッキー・ホプキンス(Piano)、ロニー・ウッド(G, Vo)など豪華なメンバーがゲスト参加しています。

ガンズのメインソングライターのひとりだったイジーがほとんどの楽曲をひとりで書いていることもあり、どうしてもガンズと比較してしまいがちですが……ああ、この人はアクセル・ローズの管理下で窮屈な思いをしていたんだな、というのがこのアルバムを初めて聴いたときの印象でした。こんなに肩の力が抜けていて、それでいてクールさがしっかり保たれている極上のロックンロールアルバム、今のガンズには作れないよな、って。

かっちり作り込まれた『USE YOUR ILLUSION』シリーズというよりは、ラフさの目立ったデビューアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)をよりレイドバックさせたようなこのアルバム。オープニングの「Somebody Knockin'」のリラックス感からして、70年代のストーンズが戻ってきたかのような錯覚を覚えます。かと思えば、2曲目にレゲエの名曲「Pressure Drop」をパンキッシュにカバー(終盤に思いっきりレゲエになりますが)。「Shuffle It All」での哀愁漂うソウルフルな色合いや、「How Will I Go」でのレイドバックしたアコースティックテイストなど、とにかくすべてにおいて力み過ぎていない。だから、聴いてるこっちも曲が進むにつれてどんどん脱力していく。『USE YOUR ILLUSION』2作に窮屈さを覚えたリスナーには、こちらこそが“我々が望むもの”だったのかもしれませんね。

とはいえ、筆者的には『USE YOUR ILLUSION』での気が触れんばかりの完璧主義と、イジーのソロで聴けるレイドバック感、両方があってこその“初期ガンズ”なんですけど。そのさじ加減って本当に難しいんですね。そして、バンドって本当に難しい。このアルバムを何度も聴くにつれ、そう思わずにはいられませんでした。

クライマックスは、終盤に収められたロニー・ウッドのカバー「Take A Look At The Guy」。本家ロニーも歌とギターでゲスト参加していて、一瞬「あれ、今どっちが歌ってるの?」ってくらいイジーとロニーが似た雰囲気を醸し出している。ああ、イジーがもう少し心が強かったら、ガンズにおけるロニーみたいな存在になれたのに……(結局、その役割をダフ・マッケイガンが担っていくわけですが)。

THE JU JU HOUNDS名義はこの1枚のみで終了しますが、イジーはこのあとも不定期でソロアルバムを作り続けます。今や仙人のような立ち位置の彼。またこういったノリノリ(死後)のR&Rアルバムを作ってほしいところです。



▼IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS『IZZY STRADLIN AND THE JU JU HOUNDS』
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2019年3月17日 (日)

HOLLYWOOD ROSE『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』(2004)

アクセル・ローズやイジー・ストラドリンが在籍していたGUNS N' ROSESの前身バンド、HOLLYWOOD ROSE。そのバンドのデモ音源を軸にしたコンピレーションアルバムが、2004年にリリースされています。『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』と身も蓋もないタイトルのこのアルバム、当然アクセルは怒り狂い訴えるわけですが、最終的にその訴えを棄却。結果、現在もこうやってストリーミングサービスで手軽に聴くことができるわけです。便利な世の中になったもんだ。

というわけで本作。そのHOLLYWOOD ROSEのメンバーだったクリス・ウェバー(G)が持ち込んだデモテープがもとになっています。クリスといえば、ガンズの1stアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)に収録された「Anything Goes」や、次作『GN'R LIES』(1988年)収録の「Reckless Life」のクレジットにてその名前を見つけることができる知る人ぞ知る存在。小金欲しさに過去の遺産を売ったわけだ。わかりやすいぞ。

そのデモテープに収録されていたのは「Killing Time」「Anything Goes」「Rocker」「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」の5曲。そう、先に挙げたガンズの2作品に収録されている2曲に加え、昨年発売の『APPETITE FOR DESTRUCTION』デラックス盤にも収められた「Shadow Of Your Love」と計3曲のガンズクラシックのオリジナルバージョンが聴くことができるわけです。そりゃファンなら絶対に手を出したくなりますよね。

デモは1984年初頭に録音されたそうで、当時のメンバーはアクセル(Vo)、イジー(G)、クリス(G)、ジョニー・クリーズ(Dr)、スティーヴ・ダロウ(B)という布陣(のはず)。なぜかスティーヴの名前はクレジットに見当たりません。ベースの音はしっかり聴こえるので、もしかしたら別のメンバーが単発で弾いている可能性もありますが、ここでは特に大きな問題はないのでスルーします。

さすがに5曲だけだと商売にならんということで本作、かなりの水増しが施されております。実はCD自体は15曲入りなのですが、その内訳は「オリジナルデモ音源」「オリジナルデモ音源のギルビー・クラーク(ex. GUNS N' ROSES)によるリミックスバージョン」「オリジナルデモ音源のフレッド・コウリー(CINDERELLA)によるリミックスバージョン」というもの。おいおい……。

まず「オリジナルデモ音源」ですが、若々しいアクセルの歌声を聴けるというだけで満足。曲にもその後の片鱗が感じられるほか、「Anything Goes」や「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」のアレンジ違いでは若干拙さも感じられたりして興味深いものがあったりします。あれですね、リフワークがスラッシュが加わってからのものとは全然違っていて、ここにはその後の豪快さがまったくないんですね。こじんまりとしているといいますか。細かく刻むリフワークはクリスによるものなんでしょうかね(イジーっぽくもあるけど)。その違いでこうも雰囲気が変わるか、と。

で、リミックスですが……うん、確かにオリジナルデモより聴きやすく整理されてるわ。ギルビーのやつが一番クオリティ上がってる気がして聴きやすい。特に「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」の2曲はトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)がギターを追加しちゃってますからね(笑)。邪道すぎ!

フレッドは自身がドラマーということもあってか、ドラムサウンドが心地よくエッジが効いたミックス。バスドラのペタペタ感が軽減されて、若干メタリックさが増している気も。あと、ボーカルも前に出ていて、一方でギターが少し後ろに下がっている。このへんは完全に趣味なんでしょうね。

というわけで、3者3様のミックス違いを楽しみつつ……1回聴いたら十分なこのアルバム(笑)。それでも数年に1回は引っ張り出したくなる、そんな罪作りな1枚です。



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2019年3月16日 (土)

TESLA『SHOCK』(2019)

2019年3月発売の、TESLA通算8作目のオリジナルアルバム(2007年発売のカバーアルバム『REAL TO REEL』および『REAL TO REEL, VOL.2』を含むと10作目)。前作『SIMPLICITY』(2014年)から5年ぶり、再結成後4作目のオリジナル作品となります。ここ数作は自身の自主レーベルTesla RecordsやFrontiers Recordsから発表されていましたが、今作はメジャーのUMe(Universal Music Group)からのリリース。オリジナルアルバムのメジャー流通はGeffen Recordsから最後の作品となった4thアルバム『BUST A NUT』(1994年)以来、25年ぶりとなります。

プロデュースを手がけたのはDEF LEPPARDのギタリスト、フィル・コリン。フィルは2016年発売のライブアルバム『MECHANICAL RESONANCE LIVE!』に追加収録された新曲「Save That Goodness」のプロデュース&共作でクレジットされており、そこからの流れで今作も手がけることになったのかな。そもそも80年代から同じ事務所だったこともあり、付き合いも長いですからね。気心知れたメンツによる、リラックスした制作現場が想像できますし。

フィルは今作でもソングライターとして活躍(一部ギターやコーラスにも参加)。それも影響してか、どの曲も非常によく練り込まれた、ポップでキャッチーなものばかり。全体を通してバラードやミディアムテンポのメロウな楽曲が目立ち、このへんにフィルのポップセンスが反映されているのか、あるいはプロデューサー目線でそういった方向へと導いたのか気になるところです。

オープニングを飾る「You Won't Take Me Alive」のファンキーなギターワークやキャッチーなメロディは非常に耳障りも良く、なおかつTESLAらしいガッツのあるバンドサウンドも維持されており、なかなかの仕上がり。続く「Taste Like」も適度なレイドバック感のあるロックンロールで、そこからピアノ&ストリングスをフィーチャーしたバラード「We Can Rule The World」へと流れる構成は今までありそうでなかったもので、ハッとさせられます。

この曲を含むバラード調の楽曲に導入されたハーモニー/コーラスはこれまでのTESLAっぽくなく、むしろDEF LEPPARDのそれに近いもの。これも取って付けたものという感じではなく、自然とマッチしているので違和感なし。また、バラードも前半〜中盤にいくつかあるものの、後半はロック色の強い構成となっていて、従来のファンも納得させる内容ではないかと。特に初期を彷彿とさせる「The Mission」からラストの「Comfort Zone」までの流れは絶品だと思います。

良い意味での“80年代の黄金期”を現代的にポリッシュしたのが、この『SHOCK』という作品ではないでしょうか。従来の彼ららしさとは異なる、良い意味での“ショック”なポイントも含まれた良作。2019年にこういう作品がどこまで評価されるのか、楽しみなところです。



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2019年3月15日 (金)

KIX『FUSE 30 REBLOWN (BLOW MY FUSE 30TH ANNIVERSARY SPECIAL EDITION)』(2018)

いやあ、こんなアルバム出ていたんですね。全然情報が追えてなくて、たまたま見つけてびっくりしました。

昨年11月に配信限定でリリースされていた、KIXの出世作『BLOW MY FUSE』(1988年)30周年を記念したデラックス盤。フィジカルでの一般流通はないようで、デジタル版とストリーミング版のみでの発表となります。

前作『MIDNITE DYNAMITE』(1985年)から3年ぶりに発表された通算4作目アルバムはKIXにとって起死回生の1枚となり、「Don't Close Your Eyes」(全米11位)のシングルヒットも手伝いアルバム自体も最高46位、100万枚を超えるヒット作となりました。

……なんていう説明は過去に書いた本作のレビューで触れられているので、このへんにして。ここではリミックス&リマスタリングが施されたアルバム本編と、ボーナストラックとして追加されたアルバム収録曲のデモ音源について触れていきたいと思います。

まず、リミックスを手がけたのがRATTの諸作品やKIX『MIDNITE DYNAMITE』などをプロデュースしてきたボー・ヒル。オリジナル盤はトム・ワーマン、デュエイン・バロン、ジョン・パーデルといった面々が担当していましたが、良い意味で80年代らしいチープさと小気味良さが残る質感でした。しかし、このリミックス盤は非常にガッツがある質感で、リバーブを抑えめにしたせいもあって非常に生々しさが前面に打ち出されています。正直、オープニングの「Red Lite, Green Lite, TNT」のイントロを聴いた瞬間に「あれ、全然違う?」と驚いたほど。ドラムやギターの太さ、ボーカルやコーラスの温かみなど、すべての音がグイグイ前に迫ってくる感じがあって、僕はとても現代的なミックスなのかなと思いました。曲によってはオリジナル盤ではあまり聴こえてこない音も鮮明に届くようになっているし、最後まで新鮮な気持ちで楽しめました。

後半のデモトラック集は各曲に録音データが入っているので、そのへんも踏まえて聴くとより興味深く楽しめるかも。古いもので1984年3月(『MIDNITE DYNAMITE』制作時期?)、それ以外が1986〜7年と、『BLOW MY FUSE』というアルバムが世に届けられるまでいかに時間がかかったかが伺えるし、アレンジの違い(「No Ring Around Rosie」なんて序盤、びっくりしますよね)からもいろいろ煮詰めていったんだなってことが見えてきます。個人的にはこれはこれでアリだなと思えました。

新鮮なサウンドで生まれ変わった名盤と、その完成までの変遷が見える副読本。このデラックス盤はそんな捉え方ができるのではないでしょうか。ついこないだもSKID ROW1stアルバムデラックス盤が出たばかりですが、1988〜9年ってHR/HMシーンにおいても最盛期から過渡期に差し掛かり始めたタイミングで面白い作品がたくさんあるので、今後も配信限定でこういったアイテムが次々発表されるのかもしれませんね。こういう企画なら大歓迎なので、このあとにも期待しておきます。



▼KIX『FUSE 30 REBLOWN (BLOW MY FUSE 30TH ANNIVERSARY SPECIAL EDITION)』
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2019年3月14日 (木)

LYNCH MOB『LYNCH MOB』(1992)

1992年4月(日本では5月)にリリースされた、LYNCH MOBの2ndアルバム。デビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)から1年半という比較的短いインターバルで発表されましたが、実はその間にボーカリストがオニー・ローガンからロバート・メイソンへと交代するというハプニングが発生しています。そういう人事異動があったからこそ、早く“次”を見せたかったのかもしれませんね。

オニーは決してテクニカルなシンガーではなかったけど、1stアルバムで表現されていたアグレッシヴなハードロックには最適だったと思います。しかし、新人ということもあってか、パワーで押し切るだけといった武器の少なさも見え隠れしていました。実際、初来日公演を観たときもそのへんの未熟さが露呈し、評価は微妙かな……と思いましたし。

ところが、2代目シンガーのロバートは(同じく無名ながらも)どんなタイプの楽曲でも無難にこなすタイプ。良く言えば器用、悪く言えば突出した個性に欠ける。なもんで、このアルバムも最初に聴いたときは『WICKED SENSATION』ほどのパンチが感じられませんでした。

しかし、ジョージ・リンチ(G)にとってはようやく「エゴを出しすぎず(ドン・ドッケン)、未熟さの感じられない(オニー)プロフェッショナル」なシンガーを手に入れられたわけで、なもんだから楽曲の幅も一気に広がっている。攻撃性は若干影を潜め、ギターも曲によっては少し引っ込むことを覚え始めました(笑)。

が、このバランス感が本当に絶妙で、よくやくここで“バンド”になれたのかな、と今聴くと感じるわけです。でなければ、ブラスセクションをフィーチャーした歌モノ「Tangled In The Web」やムーディーな「Dream Until Tomorrow」のような楽曲はやれなかったと思いますし。

いや、本当にどの曲もよくできているんですよ。オープニングの「Jungle Of Love」からして前作の路線をより洗練させ、そこにEXTREME的な“ハネ”を加えた新しさがあったり、「Heaven is Waiting」なんてDOKKENでもやれそうだし、前作にはなかったアップチューン「I Want It」もあるし。さらに、QUEENのカバー「Tie Your Mother Down」まである(タイミング的にフレディ・マーキュリーへのトリビュートなんでしょうか)。全10曲、非常にバランスが良くて、構成も練られている。ブルース色が減退したのも大きいのかな。この洗練された感にDOKKENでいうところの3rdアルバム『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に近いものがあると思うのは僕だけでしょうか。

チャート的にも前作の全米46位に次ぐ最高56位を記録。グランジ勢が台頭し始めたタイミングとはいえ、なかなか検討したと思うんです……なのに、このアルバムで一度解散するんですよね(苦笑)。その後、ジョージとミック・ブラウン(Dr)はDOKKEN再結成に参加することになるわけです。



▼LYNCH MOB『LYNCH MOB』
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2019年3月13日 (水)

PRIMAL SCREAM『VANISHING POINT』(1997)

1997年のデジタルものが続いたので、もう1枚だけお付き合いください。こちらはPRIMAL SCREAMが1997年7月(日本では6月)にリリースした通算5枚目のスタジオアルバム。『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』(1994年)から3年ぶりの新作で、前作同様全英2位という好記録を残しています。

本作の制作期間に(当時)元THE STONE ROSESのマニ(B)が正式加入。レコーディングは「Kowalski」「Motorhead」の2曲のみでしたが、以降のライブには全面参加し、ローゼズ再結成までの15年近くにわたり在籍することになります。

前作での60年代末〜70年代前半のストーンズ/アメリカ南部サウンド路線から一転し、本作ではサンプリングを多用したダブからの影響が強いサウンドがベースになっており、それもあってかボビー・ギレスピー(Vo)が参加しないインストゥルメンタル曲(あるいはそれに準ずる楽曲)が複数含まれているのが特徴。「Get Duffy」や8分もの長尺曲「Trainspotting」(同名映画のサウンドトラックに提供したもの)や、ほぼつぶやきに近いボーカルを含む「Kowalski」「Stuka」がそれにあたります。

また、ボーカル入りの楽曲にしてもインストパートが大半を占める楽曲が多く、このあたりは代表作『SCREAMADELICA』(1992年)とはまた異なる“らしさ”が強調され、新たな独自性が開花するきっかけとなりました。

かと思えば、前作の延長線上にあるバンドサウンド構成のロックンロール「Medication」があったり、ダビーで牧歌的なバラード「Star」があったり、かのMOTÖRHEADのデジタルカバー「Motorhead」があったりと、相変わらずの無軌道さも示されており、そのアンバランスそうでしっかりバランスが取れた作風もさすがの一言。オープニングを飾る「Burning Wheel」にしろ60年代後期のストーンズを思わせるメロ&テイストですし、なんだかんだでこの色合いを捨てていないところにも好感が持てます。

とはいえ、ここ日本では前作『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』で一般的認知度を獲得し、「Rocks」や「Jailbird」のようなわかりやすい曲が評価されたあとだけに、このアルバムの作風は難解に映ったのもまた事実。雑誌やツウの間では高評価を獲得したものの、前作で寄って集まった“一見さん”は少しずつ離れていったのでした(まあ、それでよかったんですけどね)。

ここでの経験がさらに追求されたのが、続く“もうひとつの代表作”『XTRMNTR』(2000年)。本作から次々作『EVIL HEAT』(2002年)までの3作はある種の連作的な色合いもあるので、ぜひあわせて聴いてほしいところです。また、本作にはよりダブ色を強めたリミックスアルバム『ECHO DEK』(1997年)も用意されているので、そっち側の素養がある方はぜひこちらにもトライしてみてください。



▼PRIMAL SCREAM『VANISHING POINT』
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2019年3月12日 (火)

「#平成の30枚」

Twitterのハッシュタグでよく目にする「#平成の30枚」という企画。これ、面白いですね。30年を30枚のアルバムで紹介するというのは、いろんな側面があると思うんですよ。一般的な名盤なのか、その年バカ売れしたものなのか、あるいはもっと私的な選出なのか。でも、そのどれを取ってもいろいろ見えてくるものがある。30枚くらいだからちょうどいいんでしょうね。これが昭和だったら……無理か(苦笑)。

ということで、こういうのに便乗するのが好きな私としては、とりあえず記録として残しておこうと。ただ、普通にTwitter上に残すのは違うよね、せっかくならこっちだよねってことで、無理くり1989年から2018年までの30年をすごい勢いで振り返ってみました。平成元年(1989年)っていうと、自分が高2〜高3の時期。音楽的にも多感だった10代後半の終盤ですね。特に90年代半ばまでは思い出深い作品がたくさんあるだけに1年1枚縛りはなかなかキツイものがありますが……あえて自分内でルールを作って選出しました。

① 同じアーティストのアルバムは複数枚選ばない(バンド/ソロは例外とする)
② 可能な限り今の自分の直感に従う(過去BEST OF企画の年間1位に選んだとしても今回も選ぶとは限らない。今の感覚で選ぶ)
③ 2枚同時発売など連作となっているものは例外として2枚選出も可(ガンズとかラルクみたいなね。ガンズは関係ないけど)

以上、これだけを守って選んだら……やっぱりキツかった(笑)。さて、個人的な思い入れ乱れまくりの30枚、ぜひご堪能あれ。


平成元年(1989年)
X『BLUE BLOOD』(Spotify

平成2年(1990年)
ユニコーン『ケダモノの嵐』(Spotify

平成3年(1991年)
BUCK-TICK『狂った太陽』(Spotify

平成4年(1992年)
佐野元春『sweet16』(Spotify

平成5年(1993年)
LUNA SEA『EDEN』(Spotify

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THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』(1997)

1997年4月にリリースされた、THE CHEMICAL BROTHERSの2ndアルバム。前年9月に発売された、ノエル・ギャラガーOASIS)をフィーチャーしたシングル「Setting Sun」が全英1位を獲得(アメリカでも80位まで上昇)。続くアルバムからのリードシングル「Block Rockin' Beats」も全英1位に輝いたことで、アルバム自体も初登場1位という大記録を達成。アメリカでも最高14位/50万枚を売り上げる好成績を残しています。

前作『EXIT PLANET DUST』(1995年)での路線を踏襲しつつ、よりロック色を強めたこと。そして、前作でのティム・バージェス(THE CHARLATANS)やベス・オートンをフィーチャーした歌モノを、“時のバンド”だったOASISのノエル・ギャラガーを(さらには引き続きベス・オートンも)起用することで作品自体のメジャー感を強めることに成功した結果が、この1位という数字に表れているのかなと思います。

とはいえ、昨日取り上げたTHE PRODIGYの『THE FAT OF THE LAND』(1997年)同様に、このアルバムもシンプルでわかりやすく、かつロックファンにも訴求する魅力的な内容なんですよね。

ただ、それはビート的なお話であり、楽曲の構成としてはテクノならではの1コードで延々引っ張るスタイルがベース。THE PRODIGY以上にそういう側面が強いことから、全体的にデジロックと括るのはちょっと違うかなという気がします。まあ「Block Rockin' Beats」はデジロックと言われたらそうかもしれないけど、「Elektorobank」や「The Private Psychedelic Reel」あたりは違いますしね。

あと、THE PRODIGYは1曲1曲がコンパクトなものが多く、そのへんもロック的と捉えることができるかもしれないけど、THE CHEMICAL BROTHERSは4〜5分台の曲もあるにはあるけど、先の「Elektorobank」は8分台、「The Private Psychedelic Reel」にいたっては9分半もありますから。そういった点においても、リスナーの嗜好が分かれそうな気がします。

このアルバムや続く『SURRENDER』(1999年)が素直に楽しめるなら、“こっち側”にもすんなりと入っていけるんじゃないかな。個人的にはこの人たちの持つサイケデリックテイストが本当に大好きで、アルコールを入れて爆音で聴く「The Private Psychedelic Reel」や「Piku」「Where Do I Begin」あたりは気持ちいいって言葉だけでは片付けられないくらいの魅力と効力があるので。

間もなく4年ぶりの新作『NO GEOGRAPHY』がリリースされ、夏にはフジロックで再来日。ライブではハズレが一度もない彼らのこと、きっと今回も最高な“あっち側”を見せてくれるはずです。



▼THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』
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2019年3月11日 (月)

THE PRODIGY『THE FAT OF THE LAND』(1997)

THE PRODIGYが1997年6月に発表した3rdアルバムにして最大のヒット作。当時、ダンスミュージック好きのみならず洋楽ロックファンはみんな持ってたんじゃないかってくらい、バカ売れしたんですよ。だって、当時の日本盤はエイベックスからのリリースでしたからね。

本国イギリスではXL Recordingsからでしたが、アメリカではマドンナのレーベル・Marverick Recordsからのリリース。いろんな偶然が重なった結果、本国のみならずアメリカでも1位を獲得し、イギリスでは140万枚以上、アメリカでも300万枚近い売り上げに達し、全世界トータルで1000万枚を超えるメガヒット作となりました。

直前に発表されたTHE CHEMICAL BROTHERSの『DIG YOUR OWN HOLE』(1997年)とあわせて、特にヨーロッパや日本では“ビッグビート”や“デジロック”などと呼ばれるように。Wikiによると前者は「テクノの細分類のひとつであり、バンドサウンド重視の音作りとサンプリングによるループを多用したブレイクビーツが特徴」とのこと。後者はおそらく日本での造語だと思いますが、意味合い的にはビッグビートと一緒かな。つまり、最初に書いた「ダンスミュージック好きのみならず洋楽ロックファンはみんな持ってたんじゃないか」っていうのは、そういうテクノとロックの垣根を壊したという意味も大きいのかなと。そういえばこの年、初開催された『FUJI ROCK FESTIVAL』にもTHE PRODIGYは出演予定でしたしね(中止になった2日目に出演予定でした)。

このアルバム、今聴くと……確かにカッコいいんだけど、意外と単調なんですよね。シンプルなリズムとギターなどをサンプリングしたリフがループされ、その上に歌やラップが乗る。BPM的にも120〜130の楽曲が多いのかな(調べてみたら、ヒットシングルの「Breathe」が130なものの、「Smack My Bitch Up」が136、「Firestarter」が142と意外と高め。それ以外は110台後半から130台が中心でした)。このテンポ感がロック寄りのビッグビート特有なものなんでしょう。確かにノリやすいですしね。

けど、それ以上に楽曲としてよくできているものが多いのかな。上に挙げたヒットシングルはどれもキャッチーだし、KULA SHAKERのクリスピアン・ミルズ(Vo, G)をフィーチャーした「Narayan」も“っぽさ”が強いし。ラストに配置されたBPM170の「Fuel My Fire」なんてL7のカバーであって、完全にパンクロックですから。そりゃロックファンも入っていきやすいわけです。

ここ1週間くらい、移動中はこのアルバムをよく聴いてます。理由は言わなくてもわかりますよね。ホント、頭空っぽにして無心で楽しめる1枚。最後に彼らのライブを観たのはフジロックだったかな。昨年末にはニューアルバム『NO TOURISTS』(2018年)も発売されたので、この夏は苗場あたりでまた会えるのかなと思っていたんだけど……残念です。



▼THE PRODIGY『THE FAT OF THE LAND』
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2019年3月10日 (日)

ALTITUDES & ATTITUDE『GET IT OUT』(2019)

MEGADETHのデヴィッド・エルフソンとANTHRAXのフランク・ベロというベーシスト2名が中心となり結成されたプロジェクト、ALTITUDES & ATTITUDE。彼らが2014年に発表したデビューEP『ALTITUDES & ATTITUDE』以来となるフルアルバムを、2019年1月に発表しました。

このプロジェクトはトリオ編成で、フランクがボーカル&ギター、エルフソンがベース、フェフ・フリーデル(DEVO、A PERFECT CIRCLEなど)がドラムというのが基本スタイルのようです(曲によってフランクがベース、エルフソンがギターを弾くことも)。アルバムはジェイ・ラストン(ANTHRAX、STONE SOURSTEEL PANTHERなど)がプロデュースを担当し、エース・フレーリー(ex. KISS)やガスG.(FIREWIND)、ニタ・ストラウス(ex. THE IRON MAIDENS)、クリスチャン・マルトゥッチ(STONE SOUR)などがゲスト参加しているとのこと。

フランクのボーカルは時に自身のバンド・ANTHRAXのジョーイ・ベラドナのような節回しをするときがあるものの(オープニングトラック「Get It Out」がまさにそれ)、声質そのものは意外とマイルド。がなるというよりはメロディを丁寧に歌いながら、ときどき激しさを見せるデイヴ・グロール(FOO FIGHTERS)的なカラーがあると思いました。嫌味のない、親しみやすさのある声ですよね。

音楽性自体は、MEGADETHとANTHRAXということでスラッシュメタル的なものをイメージしてしまいがちですが、もっとポップでオルタナティヴロックのようなスタイルと言えばいいのかな。「Leviathan」のようなインストにこそ両バンドのテクニカルなスタイルを重ねることができますが、それ以外の歌モノではパンクともメタルとも違う、ハードロック寄りのオルタナギターロックみたいな世界が展開されています。これもまた嫌味のないスタイルで、万人受けしそうな印象が。

アルバム日本盤にはデビューEP収録曲(「Booze And Cigarettes」「Tell The World」「Here Again」)がリミックスされて収録されていますが、この時点ですでに現在のスタイルは確立されていたんですね。なるほど、こういうことがやりたかったんだ、と。

例えばKISSのようなポップでキャッチーで適度にハードながらも、THE POLICEあたりの70年代末ニューウェイヴ的な色合いもある。結果、FOO FIGHTERSのようなバンドに一番近いという……これが正しい表現かどうかわかりませんが、僕は嫌いじゃないです。

ただ、メタルファンからしたらこの2人が揃っているのにこのスタイルでいいのか、正解なのかという声が上がってきそうですが、当人たちが今これをやりたいというんですから、いいじゃないですか。そのぶん、メインバンドのほうでは相変わらずアグレッシヴなことをやってくれているんですから。

にしても、MEGADETHのこともANTHRAXのことも知らないリスナーがこのアルバムを聴いたとき、果たしてどんなリアクションをするんでしょうね。むしろそっちのほうが気になります。



▼ALTITUDES & ATTITUDE『GET IT OUT』
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2019年3月 9日 (土)

BACKYARD BABIES『SLIVER & GOLD』(2019)

BACKYARD BABIES待望の8thアルバム。海外では新たにCentury Media Records(ソニー流通)と契約して発表される本作、海外では3月8日にリリース済みですが、ここ日本では4月3日と約1ヶ月遅れての発売となります。日本盤(これまでと変わらずビクターから発売)を待ちきれずに輸入盤を購入してしまったファンも少なくないのではないでしょうか。

今作はプロデューサーにチップ・キースビー(THE HELLACOPTERSMICHAEL MONROEなど)を迎えて制作。さらに、曲作りにはそのTHE HELLACOPTERSやIMPERIAL STATE ELECTRICの一員であるニッケ・アンダーソン(Vo, G)も参加し、「44 Undead」という曲を完成させています。

昨年発表された先行シングル「Shovin' Rocks」でのパーティ感の強いロックンロールにときめき、続くアルバムの完成に今か今かと心踊らせていたファンは自分含めたくさんいたはず。さらに今年に入ってからは、次なるリードトラックとしてアルバムのオープニング曲「Good Morning Midnight」が公開。疾走感に満ち溢れた“らしい”この曲で、次のアルバムも最高に決まってる!……そう実感したのは僕だけではないでしょう。

で、実際に届けられたこのアルバム。前作がリハビリに思えてしまうぐらいに活き活きとした、王道中の王道なBYBらしい1枚に仕上げられています。

前作『FOUR BY FOUR』(2015年)は今でも良作だと思っていますし、非常に“らしい”作品だとも信じています。ですが、こうやって新作を前にすると、前作はニッケ・ボルグ(Vo, G)やドレゲン(G, Vo)のソロアルバムに入ってそうな曲も含まれており、良くも悪くも「様子見感」があったのかなと思えてきます。つまり、今回はそれぐらい従来のBYBらしさが自然な形で戻ってきているのです。

と同時に、やはり2人のフロントマンによるソロ活動の成果もしっかり反映されており、それらが強く主張しすぎることなくBYBというバンドの枠内に絶妙なバランス感で収まっている。そのへんはBYBとしてのツアーを重ねた成果や、ドレゲンがTHE HELLACOPTERS再結成ライブで得た経験によるものも大きいのかなと。

全体的にコンパクトなのは前作同様で、全10曲で35分程度と前作同等なのにはさすがに驚きましたが、ところが通して聴いてみるとそんなこと微塵も感じさせないぐらいに濃厚なんです。無理やり舵を切ってる感がないぶん、自然体でロックンロールを楽しんでいる様子が目に浮かぶし、それがダイレクトに伝わってくる。文句の付けどころがないほど、完璧なまでにBYBしていて、さらに過去を軽々と飛び越えていく。これが結成30周年を迎えたバンドの新作か!と驚くぐらい、エネルギッシュで初期衝動に満ちた1枚です。

日本デラックス盤には、ニッケ&ドレゲンによるアコースティックライブ音源5曲を追加(日本盤はこちらを別ディスクに収めた2枚組仕様)。このリラックスした感じも今の彼ららしくて、非常に好感が持てます。このボーナストラックをプラスして、ようやく51分強(笑)。おまけとしては純分すぎるくらいの内容なので、輸入盤をお持ちの方も改めて日本デラックス盤を購入してみてはどうでしょう。

 


▼BACKYARD BABIES『SLIVER & GOLD』
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2019年3月 8日 (金)

BUCKCHERRY『WARPAINT』(2019)

BUCKCHERRY通算8作目のオリジナルアルバム。前作『ROCK 'N' ROLL』(2015年)から3年半ぶりの新作で、本作から新たにCentury Media Recordsでのリリース(日本ではソニーから発売)。バンド編成も大きな変革があったあとの1作目ということで、ある種“三度目のデビューアルバム”とも言えるでしょう。

ご存知のとおり、前作リリースから2年ほど経った2017年春にジョシュ・トッド(Vo)とともにバンド創世記から活動してきたキース・ネルソン(G)と、再結成後からバンドを支えてきたイグザビエル・ムリエル(Dr)が相次いで脱退。こうして第2期BUCKCHERRYはあえなく解体となってしまうわけです。

その後、ジョシュとスティーヴィー・D(G)は別プロジェクト・JOSH TODD & THE CONFLICTとしてアルバム『YEAR OF THE TIGER』(2017年)を発表。BUCKCHERRYにあったパンキッシュな要素を強めたそのサウンドは、『ROCK 'N' ROLL』での“バック・トゥ・ルーツ”的路線に刺激を感じなかったリスナーには高く評価されたのではないでしょうか。

こういったガス抜きを経て、ジョシュ&スティーヴィーにケリー・レミュー(B)という前作までのメンバーに加え、ケヴィン・レントゲーン(G)&フランシス・ルイズ(Dr)という布陣にて制作されたBUCKCHERRY名義での新作は、原点回帰とも言える“毒々しさ”と“いかがわしさ”が混在した良作に仕上がっています。オープニングの「Warpaint」こそ1曲目にしてはインパクトが弱いものの、以降はヘヴィな「Right Now」やNINE INCH NAILSのカバー「Head Like A Hole」などアクが強い曲や、彼ららしいレイドバックしたバラード「Radio Song」などが続きます。

正直、本作からのリードトラック「Head Like A Hole」が初公開されたときはその選曲センスに「?」となりましたが、こうやってアルバムの中の1曲として聴くと実はまったく違和感なく楽しめるという。しかも、この1曲がアルバム内で非常に重要な役割を果たす“必要不可欠なピース”だったことに気づかされるわけです。

かと思えば、前作での経験もしっかり活かされた「Backdown」やど直球のパンクチューン「No Regrets」もあるし、豪快な「The Devil's In The Details」などとにかく曲者勢揃いといった印象。海外盤は全12曲で44分程度というコンパクトな内容ですが、日本盤のみそこに3曲追加。こちらにはTHE TIMEのカバー「Jungle Love」や、「Kamikaze」と題された疾走チューンなどが含まれており、正直「こっちをアルバム本編に入れたらよかったのに」と思うものもあったり。全15曲、トータル53分と若干ボリューミーとなり1曲1曲のインパクトが薄まる印象が無きにしも非ずですが、このバンドはこれくらいでもいいのかなと。

ただ、問題点がゼロというわけではありません。1曲1曲と取り上げるとアクが強いものの、アルバムとして通して聴くと意外とサラッと聴けてしまう。つまり、アルバムというまとまった形になるとインパクトが弱まるという、不思議な現象が生じているのです。

その理由も何度か聴いて気づいたのですが、これまでの作品に感じられた「ボーカルとギターがグイグイ引っ張る感」のうちギターのパワーが弱まっているからじゃないかなと。ミックスのせいも多少は関係しているでしょうけど、これまでのアルバムの中でもそのパンチが一番弱いんですよね。良い曲が多いだけに、そこだけがすごく勿体ないと思いました。



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2019年3月 7日 (木)

QUEENSRYCHE『THE VERDICT』(2019)

QUEENSRYCHE通算15作目のスタジオアルバム(オリジナル作品としては14作目)。トッド・ラ・トゥーレ(Vo)加入後3作目となり、前作『CONDITION HUMAN』(2015年)から3年半ぶりという待望の1枚です。

トッド加入後の2作(2013年の『QUEENSRYCHE』と続く『CONDITION HUMAN』)は、前任シンガーのジェフ・テイト主導期の退屈オルタナ路線(苦笑)から一転、初期(1988年の『OPERATION: MINDCRIME』まで)を思わせるメロディアスなヘヴィメタル路線に回帰し、多くのファンを喜ばせてくれました。

この新作も基本的にはその延長線上にあるのですが、そこからさらに『EMPIRE』(1990年)にあった側面までを包括した力作となっています。つまり、多くのファンが思い浮かべるQUEENSRYCHEのパブリックイメージどおりの内容と言えるのではないでしょうか。

実は本作、ドラマーのスコット・ロッケンフィールドが家庭の事情でレコーディングに参加しておらず、なんとトッドがすべて叩いているとのこと。この事実はリリース直前まで伏せられおり、先行リリースされていた楽曲を聴いただけでは誰かゲストドラマーが叩いているのかと思っていたのですが……そもそもトッドのキャリアはドラマーから始まっているそうですが、にしてもここまで叩けるとは正直驚きです。

だって、フルタイムのドラマー以外が叩くことで、従来のQUEENSRYCHEらしいテクニカルな要素を薄めなくてはいけないのでは?なんて思考になってもおかしくないところを、ちゃんと“らしい”楽曲とアレンジで固めているのですから。とはいえ、前作と比べたら1曲1曲が若干コンパクトになった印象もあるし、なんとなく『EMPIRE』っぽい色合いが増えたのはそういった理由もあるのかな?と邪推したくなったり……まあ考えすぎですかね。

勢いがあってメタリックで、という曲よりも「Bent」や「Inner Unrest」みたいにミドルテンポで凝ったアレンジが加えられた曲のほうに魅力を感じる。そんな自分みたいなひねくれ者なら、ツインリードがあったりダークなメロディ&コーラスがあったりというこの曲にこそ、往年のQUEENSRYCHEを見出してしまう。そういった意味では、「ようやく戻ってきたな」というのがこのアルバムなんじゃないでしょうか。

シンガーが変わってからアルバム2枚出したし、そろそろ変化を加えてもいいタイミングじゃない? だけどそれはリスナーが納得する“らしさ”を残しつつやっていかないとね。なんて話し合いがあったかどうかはわかりませんが、ここ数作の中ではもっともバランス感に優れた1枚だと思いました。全10曲で44分というボリュームもちょうど良いですしね(日本盤はアルバム1枚分のボーナストラックをまとめた特典ディスク付き仕様も用意。こちらは2枚で80分超えなんですが……長ければいいってもんじゃないんですよ、このご時世)。

なんとなくですが、『OPERATION: MINDCRIME』や『EMPIRE』が好きなリスナーは過去2作よりも今回のほうが気に入るんじゃないか……なんて気がするんですが、いかがでしょう。僕はトッド加入後で一番好きです。



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2019年3月 6日 (水)

BRYAN ADAMS『SHINE A LIGHT』(2019)

ブライアン・アダムス通算14作目のスタジオアルバム。前作『GET UP』(2015年)から3年半ぶりですが、その間には新曲2曲を含むベストアルバム『ULTIMATE』(2017年)があったり、同年1月には久しぶりの来日公演も実現しているので、そこまで空いた気がしないような。そもそも『GET UP』自体がオリジナル作としては7年半ぶりだったので、程よい間隔かなと。

タイトルトラック「Shine A Light」がエド・シーランとの共作との触れ込みで今年1月に先行配信されましたが、これがとにかく良い曲でして。90年代末以降の彼に増えた穏やかな路線ではあるものの、極上のポップセンスは健在で、今年60歳(!)になろうとするブライアンに『RECKLESS』(1984年)の面影を重ねるのは少々酷かな?なんて思いながら「これはこれでアリでしょ!」と同曲を楽しんでいました。

続く2ndシングル「That's How Strong Our Love Is」はジェニファー・ロペスとのデュエット曲で、こちらもより穏やかなR&B路線。ロックサイドからケチをつけようと思えばいくらでもつけられますが、それでもやっぱり曲の良さは抜群。「これもいいよね、うんうん。もういいじゃないのロックとかどうとか……」と自分を言い聞かせながら、アルバムが3曲めに差し掛かると……。

あれっ、ロックしてるじゃん。思いっきりロックンロールしてる(笑)。確かに大人になったぶん落ち着き払っているものの、しっかり成熟したロックンロールを鳴らしまくっている。しかも、どの曲も2〜3分台とコンパクトでキャッチー。『RECKLESS』時代を彷彿とさせるメロディやフレーズも飛び出し、10代で彼に出会った層なら確実にノックアウトされるはず。

よりアダルト路線になったバラードはあるにはあるけど、それも全12曲(日本盤は13曲)のうちほんと数曲。80年代の『RECKLESS』や『INTO THE FIRE』(1987年)でのブライアン青年が大人になり、人生折り返してから晩年をどう過ごすか。その答えがこれなんじゃないか、そんな気がしました。

アルバムの最後をTHIN LIZZYでおなじみの「Whiskey In The Jar」(METALLICAもカバーしたアレ)で締めくくる構成も素晴らしい。アコギとハーモニカというシンプルなアレンジも、今だからこその説得力が強いし。全12曲で35分ちょっとというトータルランニングも今の時代にフィットしてるしね。

ロックが死んだとか言われるこんなご時世だからこそ、ロックを聴かなくなった大人たちに届いてほしい1枚。と同時に、こんな大人もカッコいいかも?と若い子たちに見つかってほしい1枚でもあります。こんな年の取り方を、自分もしたいものです。



▼BRYAN ADAMS『SHINE A LIGHT』
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2019年3月 5日 (火)

WEEZER『WEEZER (BLACK ALBUM)』(2019)

全編カバー曲で構成された最新作『WEEZER (TEAL ALBUM)』から1ヶ月ちょっとで届けられた、WEEZER通算13作目のスタジオアルバム。今回は全10曲のオリジナルナンバーで構成された純粋な新作で、本来はこっちが『PACIFIC DAYDREAM』(2017年)に続くニューアルバムとしてアナウンスされていたのですが……っていう一連の流れは、『WEEZER (TEAL ALBUM)』のレビューにてご確認ください。

『WEEZER (WHITE ALBUM)』(2016年)の時点で「次の新作は“ブラックアルバム”」だと言われていましたが、その間に異色作『PACIFIC DAYDREAM』を挟んだわけですが、この『WEEZER (BLACK ALBUM)』を聴き終えた今となっては結果としてこのリリース順で正解だったなと思いました。

デイヴ・シーテック(TV ON THE RADIO)をプロデューサーに迎えた本作は、収録曲のすべてがリバース・クオモ(Vo, G)がピアノを使って作曲したものなんだとか。それもあってか、確かにメロディの流れ・構成や質感が以前とは若干異なる印象を受けます。今まで以上に軟らかさを伴うといいますか、ギターポップのそれとはどこか違うといいますか……非常に感覚的なものなので、明確に言葉で伝えるのが非常に難しいのですが、デビュー時からずっとWEEZERを追ってきたリスナーなら聴いた瞬間に「あれ、今回はちょっと違う?」と気づくものがあるんじゃないでしょうか。

アルバムは序盤の「Can't Knock The Hustle」や「Zombie Bastards」こそ『PACIFIC DAYDREAM』と共通する香りがありますが、「Living In L.A.」などは従来のWEEZERらしさを保つもの。特に『WEEZER (WHITE ALBUM)』にあったBEACH BOYS的な色合いを包括するアレンジやメロディも多く、結局はここ数作で試みた実験がここにきて一気に花開いた、そんな1枚になっているのではないでしょうか。

いわゆるギター重視のパワーポップチューンというよりは、もっとルーツ的なもの、それこそ60年代のポップス黄金期を下地にした楽曲群は活動初期の名曲とはまた違った輝きを放っており、どれも即効性とスルメ的な魅力を兼ね備えたものばかり。40分にも満たないトータルランニングは相変わらずですが、だからこそ何度もリピートしたくなる中毒性が高い。2010年代が終わろうとするこのタイミングに、まさかWEEZERが新たな傑作を完成させるなんて誰が想像できたでしょう。いや、これは本当に素晴らしいポップアルバムだと思います。

あと、これは同意してもらえなくてもいいけど、このアルバムは非常に密室性の強い作品でもあるなと。正直、これを絶対にライブで聴きたい、観たいという気にはならないんですよ(もちろん良い意味で)。そういった意味でも、WEEZERは新たな境地に到達してしまったなと。ホント、恐ろしいバンドです。



▼WEEZER『WEEZER (BLACK ALBUM)』
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2019年3月 4日 (月)

IN FLAMES『I, THE MASK』(2019)

2019年3月発売の、IN FLAMES通算13作目のオリジナルアルバム。プロデューサーは前作『BATTLES』(2016年)から引き続きハワード・ベンソン(MY CHEMICAL ROMANCEPAPA ROACHHALESTORMなど)が担当し、ミックスをクリス・ロード・アルジ、マスタリングをテッド・ジェンセンという大御所たちが手がけています。

前作で初参加だったジョー・リカード(Dr)は前作のツアー途中で離脱。新たにターナー・ウェインが加入し、またベーシストも1997年から在籍したピーター・イワースからブライス・ポールへと交代します。デビューから今年で25周年、すでにオリジナルメンバーはアンダース・フリーデン(Vo)しか残っていませんし、ここ数作はメロデス(=メロディック・デスメタル)から乖離したメロディアスメタル/オルタナメタル路線に進みつつありました。しかし、本作では中期の名作6th『REROUTE TO REMAIN』(2002年)から8th『COME CLARITY』(2006年)あたりに回帰した、ストロングスタイルな1枚に仕上がっています。

まず、全体を通してアンダースのグロウルの比率がここ数作と比べて急増していることに気づくはずです。冒頭の「Voices」からしてそうなのですが、サビではいつもどおりメロディアスに歌い上げているものの、そこに至るまでがグロウルで構成されている。これって、メロウなままで歌い続けるのと大きく違い、曲のメリハリがかなり変わってくるんですよね。

また、楽曲自体がメロデスとメタルコア/ニューメタルの中間にある、それこそ『COME CLARITY』あたりの路線にかなり近いものばかり。タイトルトラック「I, The Mask」みたいに“これぞメロデス!”というタイプもあれば、もっと王道路線寄りの「Call My Name」もある。かと思えばバラードタイプの「Follow Me」やらエモーショナルな「We Will Remember」みたいな楽曲も含まれている。

後半に進むにつれてそのエモさはさらに増していくのですが、だからといってメロデスらしい攻撃性が減退することもない。「Burn」のようにバランスの取れた良曲もあれば、モダンメタル調の「Deep Inside」もあるし、ゴシックテイストの「All The Pain」やら、ラストを飾るにふさわしいアコースティックバラード「Stay With Me」もある。ホント、全体のバランスの良さが『COME CLARITY』あたりに通ずるわけですよ。そりゃ聴きやすいわけだ。

ただ、その聴きやすさというのは前作や前々作『SIREN CHARMS』(2014年)とはまったく異なるもので、このバンドに求める要素のすべてがバランスよく揃っているという意味。うん、文句なしの良作だと思います。

デビュー25周年でここまでたどり着いたか、という感慨深さのある1枚。ここ数作で彼らから離れてしまったというファンにこそ聴いてもらいたい作品です。



▼IN FLAMES『I, THE MASK』
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2019年3月 3日 (日)

ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』(2019)

2019年1月に発表された、ARCH ENEMYのカバーアルバム。バンド初期からシングルのカップリングやアルバムのボーナストラックとして収録されてきた歴代のカバー曲を1枚にパッケージした作品で、その内訳も初期3作のヨハン・リーヴァ時代、ブレイクのきかっけを作ったアンジェラ・ゴソウ時代、現在のアリッサ・ホワイト=グラズ時代と3世代にわたる、ある種のオールタイム“裏”ベストアルバムとなっています。

取り上げられているカバーはIRON MAIDENJUDAS PRIESTEUROPEMEGADETH、MANOWAR、QUEENSRYCHEPRETTY MAIDSSCORPIONSKISSなど彼らのルーツにあるHR/HMバンドからG.B.H.、DISCHARGEといったハードコアバンド、SKITSLICKERS、ANTI-CIMEX、MODERAT LIKVIDATIONという地元スウェーデンのハードコア/クラストコアバンド、マイケル・アモット(G)がかつて在籍したCARCASS、そしてTEARS FOR FEARSやマイク・オールドフィールドといったポップ寄りまで、バラエティに富んだもの。JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、EUROPE、SKITSLICKERSはボーカリスト違いで複数選ばれているものもあります。

全24曲中、M-1「Shout」からM-11「City Baby Attacked By Rats」までがアリッサ時代、M-12「Warning」からM-20「Symphony Of Destruction」までがアンジェラ時代、ラスト4曲がヨハン時代としっかりブロック分けされているので、そこまで違和感を感じることはないかと。特にアリッサ時代はM-5「Nitrad」から「City Baby Attacked By Rats」までのパンク/ハードコアのカバーが続く流れで統一感を作るなど、構成も考えられていますしね。

ARCH ENEMYの活動を追っているリスナーには、すべて既出で所持している音源ばかりでしょう。しかし、こういった“ファン”アルバムは出すことに意味があるので、そこに文句をつけるのは野暮というもの。そんな中、M-1「Shout」は昨年発売されたアナログボックスセット『1996-2017』やアナログ7インチ盤「Reason To Believe」に収録されていたものですが、CD化はこれが初めて。原曲をよりヘヴィにしたアレンジはどことなくツェッペリン「Immigrant Song」に似ていて、DISTURBEDのカバーバージョンとは違った味わい深さがあります。

そのほかのカバーに関しては原曲まんまのものから凝ったアレンジのものまでさまざまですが、基本的には原曲に対する愛情が強いものが多い印象です。個人的にはPRETTY MAIDS「Back To Back」、EUROPE「Wings Of Tomorrow」、CARCASS「Incarnated Solvent Abuse」、IRON MAIDEN「Aces High」がお気に入りです。

ちなみに、CDブックレットにはマイケル・アモットによる各曲の解説入り。残念ながら日本盤はおろか、配信&ストリーミングもなしの本作ですが、特にストリーミングに関しては過去作もゼロなので、これを機に動いてほしいものです。



▼ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』
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2019年3月 2日 (土)

MARK MORTON『ANESTHETIC』(2019)

2000年代を代表するUSヘヴィロック/ヘヴィメタルバンドLAMB OF GODのギタリスト、マーク・モートンによる初のソロアルバム。全10曲すべてが歌モノで、それぞれ異なるシンガーを迎えて制作されたものとなっています。そういう意味ではギタリストのエゴが前面に打ち出されたものではなく、あくまでソングライター/表現者としてバンドとは異なるアプローチで作り上げた1枚と言えるでしょう。

参加シンガーはチェスター・ベニントン(LINKIN PARK)、ジャコビー・シャディックス(PAPA ROACH)、マーク・ラネガン(ex. SCREAMING TREES)、チャック・ビリー(TESTAMENT)、ジェイク・オニ(ONI)、マイルス・ケネディ(ALTER BRIDGESLASH)、マーク・モラレス(SONS OF TEXAS)、ジョシュ・トッド(BUCKCHERRY)、ネイマー・マドックス、アリッサ・ホワイト-グルーズ(ARCH ENEMY)、そしてLAMB OF GODのフロントマンであるランディ・ブライとマーク自身という豪華かつバラエティに富んだ面々。演奏面ではギターをマークがすべて担当したほか、STONE SOURのロイ・マイヨルガ(Dr)、MEGADETHのデイヴィッド・エレフソン(B)、KORNのレイ・ルジアー(Dr)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)、TRIVIUMのパオロ・グレゴリート(B)&アレックス・ベント(Dr)、CLUTCHのジャン・ポール・ガスター(Dr)、元THE BLACK CROWESのスティーヴ・ゴーマン(Dr)&マーク・フォード(G)といったジャンルの垣根を超えた布陣が顔を揃えています。

アルバムはマークとジェイク・オニ、そしてLAMB OF GODのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバーとの共同制作によるもの。楽曲自体はマークが「いつかバンドとは別の形で発表したい」と長年書き溜めてきたものなのですが、各シンガーの個性が強いこともあってか、それぞれのシンガーに合った手法で書き下ろされたものと錯覚してしまいそうになります(もちろんそういう曲も含まれていますが)。

チェスターが亡くなる数ヶ月前に制作されたオープニングトラック「Cross Off」はLINKIN PARKをよりモダンヘヴィネス寄りにした良曲ですし、ジャコビーが歌う「Sworn Apart」もPAPA ROACHのアルバムに入っていたとしても不思議じゃない1曲。かと思えばマーク・ラネガンが歌う「Axis」ではアーシーさが前面に打ち出されているし、チャック・ビリー&ジェイク・オニによる「The Never」のスラッシュ&王道メタルなノリもひたすらカッコいい。

マイルス・ケネディ歌唱による「Save Defiance」は完全にマイルスのノリだし、マーク・モラレス参加の「Blur」はSONS OF TEXAS寄りのスモーキーさが表出している。ジョシュ・トッドが歌う「Back From The Dead」なんてBUCKCHERRYをヘヴィにさせたノリで好印象だし、ネイマー・マドックスによる「Reveal」はどこかファンキー。マーク本人が歌唱する「Imaginary Days」は正統派ハードロックの香りが感じられ、ラストを飾るランディ&アリッサによる「The Truth Is Dead」は2人の声の対比も良いし、なにより楽曲がLAMB OF GODの延長線上にあるのが良い。

マークのギタリストとしての非凡さも随所に感じられるし、何よりも曲のバラエティ豊かさに驚かされる。このひと、こんなに多才だったんだと驚き連発の1枚です。

LAMB OF GOD本体は、昨年BURN THE PRIEST名義のカバーアルバム『LEGION: XX』を発表したりと若干リラックスモードかもしれませんが、こういったガス抜きを経て次にどんなオリジナルアルバムを届けてくれるのか、今から楽しみでなりません。まずは奇跡の共演が実現した(特に、貴重なチェスターの声が残された)この意欲作をじっくり聴き込みたいと思います。



▼MARK MORTON『ANESTHETIC』
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2019年3月 1日 (金)

PAPA ROACH『WHO DO YOU TRUST?』(2019)

2019年1月リリースの、PAPA ROACH通算10作目のオリジナルアルバム。前作『CROOKED TEETH』(2017年)から1年8ヶ月ぶりの新作で、引き続きニコラス・ファーロングとコリン・ブリッテイン、そしてバンドの共同プロデュース作品となります。

いわゆるミクスチャーロック/メタルコア的作風に回帰した前作では、単なる焼き直しで終わらない成長ぶりを見せた彼らですが、今作はそこからさらに一歩踏み込んだ意欲作/挑戦作となっています。それは音楽的な幅広さはもちろんですが、ここ数作で取り入れていたフィーチャリングシンガー(前作ではスカイラー・グレイとマシン・ガン・ケリー、前々作『F.E.A.R.』ではIN THIS MOMENTのマリア・ブリンクとラッパーのロイス・ダ・ファイブ・ナイン)を排除してすべて自分たちの声と音だけで構築した点からも伺えます。

「お前は誰を信じる?」と問いかけるアルバムタイトルからして象徴的ですが、本作ではバンドの原点であるニューメタルナンバー「The Ending」にとどまらず、どこかTHE PRODIGY的な香りのする「Renegade Music」や、アコギを軸にしたモダンなラウドロック/ポップ「Not The Only One」、RAGE AGAINST THE MACHINEを現代的に昇華させた「Who Do You Trust?」、シンガロングパートが耳に残る新世代アンセム「Elevate」、現代的な味付けを施したパワーバラード「Come Around」など、序盤から同じタイプの楽曲が1曲たりとも存在しません。

さらに後半に進むほどにその方向性はさらに拡散していき、ストレートなオルタナロック「Feels Like Home」、ダウナーなポップロック「Problems」、デジロック的な様相の「Top Of The World」、1分半にも満たないハードコアチューン「I Suffer Well」、グランジを2019年に再生させた「Maniac」、デジタルとバンドサウンドを融合させたダイナミックな「Better Than Life」と、ひたすら個性的な楽曲が続きます。

どの曲も4分以下(「Top Of The World」を除き、すべて3分台)と昨今のポップソングにも似た作りで、アルバム自体も全12曲で38分。そのぶっ飛んだ内容と収録時間含め、非常に現代にフィットした作りと言えるでしょう。もはは1組のアーティストの新作を聴いているというよりも、流行りの楽曲を集めたオムニバスアルバムと言ったほうが合っているような気すらします。

時代に真っ向から対峙するこういった挑戦を良しとするか悪しとするかで、本作の評価は真っ二つに分かれると思います。僕自身は好意的に受け止めていたのですが、世の中的にはそうでもなかったようで、アメリカでは2ndアルバム『INFEST』(2000年)以降で初めてトップ20入りならず(最高73位)。ただ、これという一発が出ないとは限らない内容なので、そのあたりの変動は今後も期待できそうです。個人的には、本作とFEVER 333『STRENGTH IN NUMB333RS』BRING ME THE HORIZON『AMO』は2019年のシーンを占う上で重要な役割な3枚だと思っているのですが……果たしてどうなるのでしょうか



▼PAPA ROACH『WHO DO YOU TRUST?』
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