OVERKILL『THE WINGS OF WAR』(2019)
2019年2月に発表された、OVERKILL通算19作目のオリジナルアルバム。前作『THE GRINDING WHEEL』(2017年)から2年ちょうどという現代としては短いスパンで制作された1枚。来年で1stアルバム『FEEL THE FIRE』(1985年)でまる35年、とにかく勤勉なバンドです。
前作は6〜7分の長尺曲が多く、中には王道ヘヴィメタル色の強いミドルナンバーが含まれていたりと活動歴が40周年に近づいても新たな道に挑もうとする姿勢に感服しましたが、今作ではまた前作とは異なる視点で制作が進められたようです。
前作発表後にドラマーがジェイソン・ビットナー(SHADOWS FALL)に交代。また、エンジニアも前作のアンディ・スニープからクリス・“ゼウス”・ハリスに変更したことも功を奏してか、前作の王道さとは異なる前のめりなハードコア感が強まっている印象を受けます。
楽曲にしても、全10曲(ボーナストラック除く)中6分超えは1曲のみ。3〜4分台の楽曲が5曲と、ここ最近の彼らにしては意外とコンパクトにまとまっている印象を受けます。が、そこは我らがOVERKILL。4〜5分の中で複雑な展開を重ねていくアレンジは健在で、アンディの活きのよさもあってかリズム面がより強化されているような気がします。
特に冒頭3曲(「Last Man Standing」「Believe In The Fight」「Head Of A Pin」)の圧迫感はさすがの一言で、そこからスローな展開を含む「Bat Shit Crazy」やどことなくドラマチックさもあるミドルヘヴィ「Distortion」と、前半はかなり気持ち良い構成となっています。
後半もどことなくパンキッシュな「A Mother's Prayer」を筆頭に、ハードコアと王道メタルをミックスした「Welcome To The Garden State」、不穏さが際立つミドルチューン「Where Few Dare To Walk」、やはり突っ走ることを諦めない「Out On The Road-Kill」、とにかくドラミングの激しさが目立つ「Hole In My Soul」と、常に暑苦しさ全開。ある種“金太郎飴”的なアルバムではあるんだけど、同時代に誕生したバンドたちが次々とスタイルを変えていく中、自分たちに何が求められているかをよく理解し、一貫した方向性を保ち続けているその姿勢は尊敬に値するものがあるのではないでしょうか。
スラッシュメタル、パワーメタルの範疇で語れば“正しい”以外の何ものでもない1枚。ただ、先にも書いたように(過去のアルバムと比べて、という意味で)特に今回はあまりにも“金太郎飴”すぎて、キメの1曲や強く印象に残る楽曲が少ない気がします。この時代にこういうアルバムを作ってくれるその心意気には100点を与えたいけど(これを還暦前後のジイさんが歌っているってだけで満点なんだけど)、全キャリア中で繰り返し聴く作品の部類に入るかと言われると、若干微妙な立ち位置かもしれません。まあ、とはいえそれも時間が経ってみないとね。意外と長く楽しめる可能性もゼロではないので。
完成度は高いけど、現時点では彼らにしては平均点+αな1枚かな。
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