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2019年5月

2019年5月31日 (金)

2019年5月のお仕事

2019年5月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※5月31日更新)

 

[WEB] 5月31日、「リアルサウンド」にて乃木坂46のライブ評「乃木坂46、選抜ライブに感じた変化の中で受け継がれる伝統 新たな地平へ向かうグループの姿を見た」が公開されました。

[紙] 5月31日発売「BUBKA」2019年7月号にて、映像ディレクター池田一真インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 5月30日発売「月刊エンタメ」2019年7月号にて、乃木坂46田村真佑&早川聖来インタビュー、欅坂46齋藤冬優花&佐藤詩織インタビュー、欅坂46関有美子&松田里奈インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 5月29日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterインタビュー「Little Glee Monsterが語る、信頼から生まれるアカペラの秘密とメンバー全員で描く未来の形」が公開されました。

[WEB] 5月29日、「リアルサウンド」にて乃木坂46桜井玲香&伊藤理々杏インタビュー「乃木坂46 桜井玲香&伊藤理々杏に聞く、先輩から後輩へと受け継がれる思い」が公開されました。

[WEB] 5月29日、HYDEオフィシャルFacebookにて、シカゴでのワンマン公演レポート(英文)が公開されました。

[WEB] 5月28日、イベント「mights」オフィシャルサイトにてNo Buses近藤×スグロリョウゴ対談の英訳バージョンが公開されました。

[紙] 5月24日発売「CONTINUE」Vol.59にて、「CNTエンタテインメント!」内コラムを執筆しました。(Amazon

[紙] 5月2日発売「日経エンタテインメント!」2019年6月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆しました。(Amazon

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また、4月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、Apple Musicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1904号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

NINE INCH NAILS『PRETTY HATE MACHINE』(1989)

1989年10月にリリースされた、NINE INCH NAILSのデビューアルバム。日本では次作となるEP『BROKEN』(1992年)発売にあわせて、1992年7月に初めて国内盤化されました。

実際、彼らの名前を目にするようになったのって1991年あたりからで、それまでここ日本では一部マニア以外には無名だったような。特に自分のようにメタル中心で聴いていたリスナーがNINの名前を知ることになるのは、間違いなくGUNS N' ROSES経由なんですよね(当時、アクセル・ローズがNINロゴTシャツを着ていたので)。自分もそれで知って、西新宿でアルバムを購入したわけですが……ガンズのガの字も感じられませんでしたけどね!(笑)

『BROKEN』からNINを知ったというリスナーが多いかと思いますが、そこで展開されていたスラッシーなギターとヘヴィなリズムを期待して本作に触れると、ちょっと面食らうかも。というのも、ここで展開されているのは“エレクトリック・ボディ・ミュージック”と呼ばれるダンサブルかつ無機質なビートにディストーションギターを乗せた、ニューウェイヴ寄りのサウンドですから。

「Wish」のようなスラッシュ色の強い楽曲は皆無。アップテンポといっても「Sin」のようにシンセポップのハード化させたようなものが中心なわけですから、そりゃあ『BROKEN』の路線を期待した人にとっては“ちょっと違う”となるでしょう。だけど、本作で初めてNINを知ったリスナーは、彼らと同時期にデビューした日本のバンドSOFT BALLETを思い浮かべたのではないでしょうか。事実、僕も最初に聴いたときは「あれ、これってソフバじゃん」と思ったクチですから。

ダンスミュージックと呼ぶには内向的すぎ、HR/HMと呼ぶには音圧が足りない。だけど、どこか攻撃性を感じさせるそのスタイルは、当時MEGADETH経由で日本のファンに受け入れられたMINISTRYにも通ずるものがあったと思います。

また、時代的にも80年代に登場したダークなエレポップやサンプリング文化中心のヒップホップ、そしてアンダーグラウンドでくすぶっていたインダストリアルロックやオルタナティヴロックが少しずつ後続たちに影響を与え始めたタイミングであり、そういった影響がバランスよくミックスされたのが『PRETTY HATE MACHINE』という傑作だったと捉えることはできないでしょうか。

なお、本作はリリース20周年を記念して2010年にリマスタリング&ボーナストラック(QUEEN「Get Down Make Love」カバー)追加&ジャケット変更で再発されています。今年でリリース30周年、さすがに時代を感じさせる音ですが、せっかくなのでリマスタリングされた音であの時代の空気を感じてみてください。

 


▼NINE INCH NAILS『PRETTY HATE MACHINE』
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2019年5月30日 (木)

PETER GABRIEL『US』(1992)

1992年9月発売の、ピーター・ガブリエル通算6枚目のオリジナルアルバム。前作『SO』(1986年)から6年ぶりの新作でしたが、その間には映画『最後の誘惑』サウンドトラックアルバム『PASSION』(1989年)や初のベストアルバム『SHAKING THE TREE』(1990年)が発表されていたので、意外と空いた感覚は少なかったような記憶があります。

『SO』が全英1位/全米2位を記録し、特にアメリカでは500万枚以上を売り上げ、「Sledgehammer」(全英2位/全米1位)や「Big Time」(全英13位/全米8位)といったヒットシングルまで生み出したピーガブですが、続く本作『US』は前作の延長線上にある世界観が展開されています。

ですが本作、『SO』にあった煌びやかさや派手さは皆無。ひたすら地味でダウナーでダークな世界観が展開されていきます。確かにこれも『SO』の中にあった一部分ではあるものの(いや、大半はこういった作風で、むしろ「Sledgehammer」や「Big Time」といったシングル曲が異色だったわけですが)、この地味さは1992年という時代にもフィットしていたんじゃないか……当時を振り返ると、そんな印象が残っています。

だってこのアルバム、『SO』以上に聴きまくったもの。中高生の頃にヒットした『SO』は、MTVでのブレイクもあって至るところで楽曲を耳にしましたが、アルバム単位では10代半ばの小僧が聴くには少々大人びた内容だったんですよね。ところが、そこから6年を経て20代に突入した自分は多少なりともいろんな音楽を耳にするようになったこともあり、この『US』の地味さが妙に心地よかったりしたんですよね。

序盤3曲(「Come Talk To Me」「Love To Be Loved」「Blood Of Eden」)の流れるような穏やかさは、そのサウンドに身を任せるだけで気持ち良い。かと思うと、先の「Sledgehammer」の進化系でもある「Steam」のキャッチーさは本作の中では異色の輝きを放っている。めっちゃポップですよね、この流れで突如現れると。

そして「Only Us」で再びダウナーな世界へと舞い戻り、異常に音数の少ないスタンダート調スローナンバー「Washing Of The Water」で心を落ち着かせ、ピーガブ流ヘヴィロックと言えなくもない「Digging In The Dirt」で再び熱を帯びる。オリエンタルな香りのする「Fourteen Black Paintings」やロック色の強いミディアムダンスチューン「Kiss The Frog」を経て、最後に穏やかな中にも高揚感を覚えるビートが心地よい「Secret World」で約60分の旅を終える。うん、完璧な構成じゃないでしょうか。

何気に『SO』よりも好きだし、実際『SO』よりも完成度の高い1枚だと思うのですよ。セールス的には『SO』には及ばないものの、僕の中では一番リピートする機会の多い作品です。

 


▼PETER GABRIEL『US』
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2019年5月29日 (水)

GENESIS『WE CAN'T DANCE』(1991)

1991年10月にリリースされた、GENESIS通算14枚目のスタジオアルバム。フィル・コリンズ(Vo, Dr)、マイク・ラザフォード(G, B)、トニー・バンクス(Key)という“メガヒット期”の黄金トリオでの最後のアルバムにして、前作『INVISIBLE TOUCH』(1986年)や前々作『GENESIS』(1983年)にも匹敵する大ヒット作(全英1位/全米4位。イギリスでは過去最高の5×プラチナム、アメリカでも4×プラチナムを記録)となりました。

また、前作ほどではないものの、「No Son Of Mine」(全英6位/全米12位)、「I Can't Dance」(全英7位/全米7位)、「Hold On My Heart」(全英16位/全米12位)、「Jesus He Knows Me」(全英20位/全米23位)、「Never A Time」(全米21位)とヒットシングルも多数誕生しています。

ヒュー・パジャムをプロデューサーに迎えた『GENESIS』『INVISIBLE TOUCH』の2作でシンセポップ路線を確立させたGENESISでしたが、ぶっちゃけフィル・コリンズのソロとの違いはどこにあるのか……という疑問が生まれたのもまた事実。特に『INVISIBLE TOUCH』はその方向性が顕著で、それもあってシングルがバカ売れしたのもあったんじゃないでしょうか。

ところが、フィルのソロが80年代末から内省的な方向へとシフト。その余波はバンドの路線にも多少なりとも影響……したと言えるのではないでしょうか。

特に、今作の序盤は「No Son Of Mine」「Jesus He Knows Me」「Driving The Last Spike」といつになくシリアス路線です。特にこの3曲はロック色も強まっており、アップテンポの「Jesus He Knows Me」や10分にもおよぶ「Driving The Last Spike」からは“もともとはプログレバンドだったんだよね、俺たち”という強いこだわりも見え隠れします。

かと思えば、打ち込みを多用したダウナーなダンスポップ「I Can't Dance」があったり、AOR的なミディアムバラード「Never A Time」、プログレポップ=ポンプ的路線の「Dreaming While You Sleep」、アダルトロックな「Tell Me Why」や「Living Forever」、フィル・コリンズらしい王道バラード「Hold On My Heart」など聴き手を選ばない心地よいテンポ感/サウンドの楽曲が続きます。とはいえ、どの楽曲もアレンジまで含め非常にきめ細やかに作り込まれたものばかりで、隙を一切見せることはない。

さらに、終盤に入ると再びダークなアダルトロック「Way Of The World」、スタンダード調のバラード「Since I Lost You」と続き、最後は再び10分強のモダンなプログレナンバー「Fading Lights」で幕を下ろします。

全12曲で71分という非常に長いアルバムですが、プログレバンドとしての意地とヒットメイカーとしての誇り、そしてアーティストとして現状維持を望まない成長ぶりなどいろんな要素が凝縮された結果、このボリュームとなったのでしょう。結果、フィルはここでバンドとしてやり尽くしてしまったが故に脱退を選ぶことになるのですが。

ポップアルバムとしての『INVISIBLE TOUCH』の完成度の高さは疑いようがありませんが、片やロックアルバムとしての極みは本作にて表現されている。それも間違いない事実なわけです。個人的にはGENESISのアルバムでもっとも好きな1枚です。

 


▼GENESIS『WE CAN'T DANCE』
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2019年5月28日 (火)

YES『FRAGILE』(1971)

1971年11月に発表された、YESの通算4作目にあたるオリジナルアルバム。前作『THE YES ALBUM』(1971年)から9ヶ月という短いスパンで登場した本作は、全英7位/全米4位とアメリカでの人気を決定づける1枚となりました。また、シングルカットされたオープニングトラック「Roundabout」は全米13位という好記録を残しており、現在まで彼らを代表する1曲として幅広く知られています。特にここ日本では、2012年にテレビアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』のエンディングテーマに使用されたことで知ったというライト層も多いのではないでしょうか。

本作からリック・ウェイクマン(Key)が加入し、ジョン・アンダーソン(Vo)、スティーヴ・ハウ(G)、クリス・スクワイア(B)、ビル・ブルーフォード(Dr)という黄金期メンバーが揃った最初の1枚でもあります。

また、本作は全9曲中「Roundabout」「South Side Of The Sky」「Long Distance Runaround」「Heart Of The Sunrise」の4曲のみがYESとして制作された楽曲で、残りの5曲はメンバー5人がソロ演奏や多重録音などで表現したソロ楽曲という非常に厄介な構成となっています。1人ひとりのエゴが強くなった結果、こういった内容になったのか、はまたま……。

しかし、そうは言いながらも内容は非常に申し分のないもので、バンドによるスリリングな長尺ナンバーの合間に収められたソロ曲は、アルバムに緩急を付けるという意味でも重要な役割を果たしているのではないでしょうか。特に「Roundabout」と「South Side Of The Sky」の間に挟まれたリックによるブラームスのカバー「Cans And Brahms」とジョンのボーカル多重録音曲「We have Heaven」の牧歌的な雰囲気は、アルバム前半の良いアクセントとなっています。

かと思えば、後半には“いかにも”な変拍子の「Five Per Cent For Nothing」(ビルによる30秒程度の短尺曲)、クリスのベースを前面に打ち出した7拍子の「The Fish (Schindleria Praematurus)」(前曲「Long Distance Runaround」との組曲形式)、スティーヴのアコギインスト「Mood For A Day」などのインストナンバーが多く含まれており、タイプの異なる楽曲群は雑多な印象を与えるものの、アルバムを締めくくる10分強の大作「Heart Of The Sunrise」のインパクト(映画『バッファロー'66』などでおなじみですね)ですべて帳消しにされます。わはは(笑)。

オープニングとエンディングに70年代プログレッシヴロックの代表的ナンバーが配置されていることもあり、本作は間違いなく初期YESを代表する1枚であり、バンドが絶頂期に突入するタイミングに生まれた奇跡的バランスのアルバムとも言えるわけですが、一方で各自がソロ曲でエゴのぶつけ合いをするという当時の状況はまさに“こわれもの(アルバム邦題)”に近かったのかなと。そこから次作を『CLOSE TO THE EDGE』(1972年/“崖っぷち”の意。邦題は『危機』)と名付けたのも、なんとも皮肉な話です。

 


▼YES『FRAGILE』
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2019年5月27日 (月)

KING CRIMSON『RED』(1974)

1974年10月にリリースされた、KING CRIMSONの7thアルバム。ロバート・フリップ(G)、ジョン・ウェットン(Vo, B)、ビル・ブルーフォード(Dr)のトリオ編成を軸に、デヴィッド・クロス(Violin)、メル・コリンズ(Sax)、イアン・マクドナルド(Sax)などをゲストに迎えた、70年代クリムゾンのラスト作となります。

前作『STARLESS AND BIBLE BLACK』(1974年)から約半年という短いスパンで発表された本作ですが、リリース時点ですでに解散を発表済み。バンドの終焉を感じさせるメランコリックな楽曲(「Fallen Angel」「Starless」)も用意されているものの、本作で注目される機会が多いのはタイトルトラック「Red」や「One More Red Nightmare」といったヘヴィな作風の楽曲でした。

特に「Red」は歪みまくったギターサウンドを用いたヘヴィなリフを用いた、重厚感のあるミドルナンバーで、それまでのクリムソンとは一線を画する1曲と言えます。しかも、約6分半におよぶこの曲はボーカルなしのインストゥルメンタルナンバー。ドラマチックとは言い難い不穏な展開を含め、クリムゾンのメタルサイドなんて声もよく耳にします。そしてこの曲、90年代のクリムゾンサウンドの指針になっているはずで、これがなかったらあのダブルトリオ編成で奏でるメタリックなサウンドは生まれなかったのではないか、そう思っております。

また、「One More Red Nightmare」は「Red」にも通ずるヘヴィなリフを用いているものの、ボーカルが入ると急にキャッチーさが増す異色の1曲。プログレだとかメタルだとかカテゴライズが難しいものの、その後のロックに多大な影響を与えたことは間違いありません。

かと思えば、8分にもおよぶインプロビゼーションが繰り広げられる「Providence」という彼ららしい1曲も用意。この曲はライブテイクをそのまま使っているようで、バンドとデヴィッド・クロスのバイオリンとのセッションからはほかのスタジオテイクとは異なる緊張感を味わうことができます。

そして、叙情性の強い歌モノ2曲(「Fallen Angel」「Starless」)のうち、特に「Starless」は初期の「Epitaph」「The Court Of The Crimson King」(ともに1stアルバム『IN THE COURT OF THE CRIMSON KING』収録)にも匹敵する名曲。前半のドラマチックな泣メロと、後半の即興演奏を含む展開という12分にもおよぶ2部構成は、これぞクリムゾンと胸を張って言えるもの。ある種の集大成感も漂っております。

全5曲で約40分。6分以下の楽曲が皆無という“プログレあるある”作品の代表的な1枚ですが、1stアルバム同様に初心者も入っていきやすい内容ではないでしょうか。特に楽器の経験があるリスナーなら、ここで展開されているプレイは存分に楽しめるはず。聴けばこれが45年前のアルバムだなんて、とても信じられないと思いますよ。

ご存知のとおり、クリムゾンの諸作品はデジタル配信およびストリーミング配信がされておらず、まもなく海外ではサブスクリプションサービスでの配信がスタートするという話もあります。日本ではまだまだ先のようですが、こういった名盤が誰でも手軽に楽しめるようになると、今みたいなカルト的人気とはまた異なる広まり方もするのでは……なんて思うのですが、いかがでしょう。

 


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2019年5月26日 (日)

BLACK LABEL SOCIETY『SONIC BREW (20TH ANNIVERSARY BLEND 5.99 - 5.19)』(2019)

2019年5月にリリースされた、BLACK LABEL SOCIETYのセルフカバーアルバム。デビュー20周年を記念して、20年前の1999年5月にアメリカで発売された1stアルバム『SONIC BREW』を現編成で再レコーディングした内容となっています。

オリジナル盤ではザック・ワイルド(Vo, G, B, Pianoなど)とフィル・オンディッチ(Dr/2000年に脱退)の2人でレコーディングを試みたわけですが、今回のセルフカバー盤ではスタジオ音源をザック(Vo, G, Piano)、ジョン・ディサルヴォ(B)、ジェフ・ファブ(Dr)の3人、ライブ音源をこの3人+ダリオ・ロリーナ(G)という最新オリジナルアルバム『GRIMMEST HITS』(2018年)を制作した現在の布陣で再レコーディングしています。ダリオ、スタジオで弾かせてもらえなくてかわいそう……。

再構成とは言いながらも、基本的なアレンジはオリジナルに忠実。ちょっとしたフレーズが変わっている箇所もありますが、それはこの20年のライブ活動を経て進化したものと受け取ることができるはず。

また、サウンド的には歪なまでに低音の鳴りが激しかったオリジナル盤と比べてかなり整理され、バランスの良いサウンドを楽しむことができます。あの異常なまでに重低音がバリバリ響いてくる麻薬のようなサウンドに長年慣れてしまっていたので、最初は物足りなさを感じたのも事実。

しかし、その代わりにメロディがかなり際立って聴こえるのが新鮮なんですよ、このニューバージョン。前のレビューで「ブルースフィーリングの“ノリ”で構築した歌メロ」なんてことを書きましたが、こうやって聴くと意外と“ノリ”だけじゃないことにも気づかされます。やっぱりザック、ギタリストだけじゃなくてソングライターとしても非凡な存在だったのね。恐れ入りました。

この再録盤最大の聴きどころはそういった新たな気づきがたくさんあることはもちろんですが、再発盤に追加収録されたオジー・オズボーンのカバー「No More Tears」がカットされ(再々レコーディングってことになっちゃいますからね)、代わりに「Black Pearl」と「Spoke In The Wheel」のアンプラグドバージョンを追加(ダリオはこの2曲に参加)。オリジナルバージョンをよりレイドバックさせた「Black Pearl」は渋みを増し、ピアノを軸にリアレンジされた「Spoke In The Wheel」は原曲以上に尊い1曲に生まれ変わっています。これ、どっちも最高っすね。20年の積み重ねがあったからこそ生まれた新バージョンだと思います。

オリジナルの良さは何物にも変えがたいものがあるのは事実。だけど、20年経過したからこそ生み出すことができた本作は、そことも違う魅力がしっかり備わっている。どっちが優れていると言い切ることは一概に難しいけど、純粋に楽しめるという意味では間違いなく“買い”の1枚です。

 


▼BLACK LABEL SOCIETY『SONIC BREW (20TH ANNIVERSARY BLEND 5.99 - 5.19)』
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2019年5月25日 (土)

BLACK LABEL SOCIETY『SONIC BREW』(1999)

1999年5月にリリースされた、ザック・ワイルド(Vo, G)率いるBLACK LABEL SOCIETYのデビューアルバム。本作は日本で前年1998年秋に先行リリースされていますが、アメリカではその日本盤に1曲追加した全14曲入りで正式リリース。が、そのジャケットにクレームが付き、現行のジャケットに変更した形で同年秋に再発売されました。その際に、オジー・オズボーン「No More Tears」の(ある意味)セルフカバーが再追加され、全15曲入りで流通されています。

PRIDE & GLORY、ソロと渡り歩き、その合間にはオジーの『OZZMOSIS』(1995年)のソングライティング&レコーディングに参加(ツアーには参加せず)。紆余曲折あり、ようやくたどり着いたのがこのBLACK LABEL SOCIETYであり、現在まで20年にわたり彼のメインバンドとして活動が継続しています。

レコーディングメンバーはザック(Vo, G, B, Pianoなど)とフィル・オンディッチ(Dr)の2名(再追加された「No More Tears」のみ、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)がプレイ)。その後、ザック&フィルの2人にニック・カタニース(G)とジョン・ディサルヴォ(B)が加わる形で正式にバンド化します。

基本的にはPRIDE & GLORYで展開した“カントリー・メタル”を進化させたスタイルで、『OZZMOSIS』で聴かせた低音重視のヘヴィなギターサウンドと、ソロ名義でのアコースティック作『BOOK OF SHADOWS』(1996年)での繊細さも含む、ザックという男の“豪快さ&強さ”と“繊細さ&優しさ”が混在したメタルアルバムに仕上がっています。とはいえ、本作では比率的に“豪快さ&強さ”のほうが優っており、“繊細さ&優しさ”は味付け程度といった具合。そのへんのバランスは以降、アルバムごとに変化していくことになります。

とにかくギターとベースの音圧が尋常じゃない(笑)。今でこそスピーカーで処理し切れないほどの低音を出すダンスミュージックやヒップホップは多いですが、そういった低音を効かせたサウンドってメタルの十八番だったはずなんです。それを20年前に、オジーのもとで活躍したギタリストが率先してやっていた事実。忘れてはなりません。

正直、全体的にはポップとは言い難い作風です。実際、分厚い楽器隊の音に耳が行きがちなのですが、意外とメロディはしっかり存在する。けれど、どちらかというとブルースフィーリングで構築された“ノリ”一発のメロディといった印象かな。で、「Beneath The Tree」「Black Pearl」「Spoken In The Wheel」のように音の薄い楽曲で、そのメロディがようやくあらわになるという。まあ、この作品にはこういう“ノリ”一発のメロのほうが合っているんですけどね。

まあ、あれです。「No More Tears」のカバーを聴けば、ザックがこのバンドで何をやりたいのかが一耳瞭然かと。オリジナルのサイケデリックさ、皆無ですからね(笑)。

なお、本作は今年でUSリリース20周年ということで、現メンバーで再レコーディングしたアニバーサリー盤『SONIC BREW (20TH ANNIVERSARY BLEND 5.99 - 5.19)』もリリースされたばかり。こちらについても後日、改めて触れてみたいと思います。

 


▼BLACK LABEL SOCIETY『SONIC BREW』
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2019年5月24日 (金)

THIN LIZZY『THUNDER AND LIGHTNING』(1983)

1983年3月にリリースされた、THIN LIZZYの通算12枚目にして最後のスタジオアルバム。

解散が決定してから制作されたアルバムって、その多くが“やっつけ”だったり過去のパブリックイメージに沿った想定範囲内の内容だったりすることが多いんだけど、これは異常にテンションが高く、かつ過去のイメージに捉われず新境地に到達してしまったという異色の1枚です。

フィル・ライノット(Vo, B)、スコット・ゴーハム(G)、ブライアン・ダウニー(Dr)という黄金期のメンバーに、前作『RENEGADE』(1981年)から加入したダーレン・ワートン(Key)に、本作が初参加のジョン・サイクス(G)という5人で制作。ジョン・サイクスがソングライティング面で大健闘したのかというと、ジョンの名前は「Cold Sweat」で確認できるのみ。ジョンが加入したのは本作のレコーディング直前で、すでに大半の楽曲は完成していたそうですから、またジョンのような若いミュージシャンが加わったことで演奏に熱が入ったってことなのかもしれませんね。

前のめりなスピードチューン「Thunder And Lightning」のスリリングな構成、ダークで穏やかな「The Sun Goes Down」、メロディアスハードロック「The Holy War」「Cold Sweat」など正統派HR/HMファンにもアピールする楽曲を含みつつも、「Baby Please Don't Go」や「Bad Habits」「Heart Attack」のように従来のTHIN LIZZYファンにも馴染みやすい楽曲もしっかり用意されている。完全に変わったのではなく、バンドとしての軸は残しつつも時代に歩み寄ってヘヴィなスタイルを取り入れた。それがこの進化の理由なのかもしれません。

フィルの味わい深い中音域で歌われる楽曲群は、当時主流だったハイトーンやがなるようなボーカルとは相反するもので、それがどこかパンク的でもあり。そこがTHIN LIZZYを唯一無二のバンドとして知らしめた要因といえるでしょう。事実、「Thunder And Lightning」はバックトラックだけ聴けばスピードメタル的な作風ですが、フィルのボーカルが乗ると急にパンクロックっぽくなるから不思議です。

古くからのファンには賛否あるようですが、僕は初めて聴いたTHIN LIZZYのスタジオアルバムがこれだったので、やっぱり思い入れが強いんですよね(生粋のジョン・サイクス・ファンなもので)。でも、ジョンが弾いているから云々を抜きにしても、本作は非常に素晴らしいハードロックアルバムだと断言できます。

最後に、本作で好きなギタープレイのほとんどが、ジョンのものではなくてスコットのプレイだという事実も書き残しておきたいと思います。

 


▼THIN LIZZY『THUNDER AND LIGHTNING』
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2019年5月23日 (木)

BLUE MURDER『NOTHIN' BUT TROUBLE』(1993)

日本先行で1993年9月にリリースされたBLUE MURDERの2ndアルバム。海外では翌1994年2月に発売されたようです。前作『BLUE MURDER』(1989年)から4年ぶりに発表された本作は、その間のすったもんだ(カーマイン・アピス&トニー・フランクリンのリズム隊脱退など)を経て、難産の末に完成した1枚です。

プロデューサーは前作でのボブ・ロックからジョン・サイクス(Vo, G)のセルフプロデュースへと変更。とはいえ、ミックスはマイク・フレイザーというボブ・ロックがらみの人選なので、サウンドの質感的には前作の延長線上にあると言えるでしょう。

肝心の楽曲ですが、前作がWHITESNAKE“サーペンス・アルバス”に対する執念(と言う名の怨念。笑)が前面に出まくった作風だったのに対し、本作はそこだけに固執せず、ジョン・サイクスというアーティストの全キャリアを総括するような楽曲が揃っています。その“全キャリア”というのはプロのギタリストとしてだけではなく、彼が子供の頃に愛したブリティッシュ・ロックまでを包括するもので、ハードロックというジャンルだけでは括りきれないバラエティ豊かなものと言えます。

例えばオープニングを飾る「We All Fall Down」は完全にジョンが参加した末期THIN LIZZYですし、ボーカルの節回しもフィル・ライノットを彷彿とさせるもの。スリリングなアップチューンで冒頭を飾ると、続くSMALL FACESのカバー「Itchycoo Park」では急に牧歌的な雰囲気に。アコースティックギターがメインのこの曲で早くも和んだ空気を作り上げると、3、4曲目はWHITESNAKE時代に得たソングライティング力をフルで発揮させた「Cry For Love」「Runaway」というエモーショナルな楽曲が続く。しかも、これらで1stアルバムでの力みが完全に抜けきった、伸びやかなボーカル&ギターを聴かせてくれるのですから。

以降、「Dance」のようにポップで豪快なハードロックあり、ジョンの代わりにケリー・キーリングが歌うアップチューン「I'm On Fire」、メジャーキーのエモいバラード「Save My Love」、グルーヴィーな「Love Child」、流麗なメロディが印象的な「Shouldn't Have Let You Go」、ダイナミックな大作「I Need An Angel」、トラッドミュージック風の「She Knows」と、さまざまなタイプの楽曲が並び、改めてジョン・サイクスというソングライターの非凡さが体感できる構成となっています。

そういった意味ではアルバムとしてのまとまりは1stアルバムよりも薄いかもしれません。が、シンガーとしても力量が向上し、またギタリストとしてもより深みを増した本作の楽曲群の出来は、明らかに前作よりも上。何を重視するかで本作の対する評価は異なるかもしれませんが、このアルバムがBLUE MURDER名義では事実上最後のスタジオアルバムになったという現実を目の当たりにすると、ジョンの才能はBLUE MURDERという狭い枠の中には収まりきらなかった……ということなのかもしれません。

つまり、ここでようやくWHITESNAKEに対する“復讐”は終わったんじゃないかなと。以降もデヴィッド・カヴァーデイルに対する不平不満を口にし続けるジョンですが、実はこのアルバムでけじめはつけていた。そんな気がしてなりません。

 


▼BLUE MURDER『NOTHIN' BUT TROUBLE』
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2019年5月22日 (水)

BADLANDS『VOODOO HIGHWAY』(1991)

1991年6月発売の、BADLANDS通算2作目のスタジオアルバム。デビュー作『BADLANDS』(1989年)発表後にエリック・シンガー(Dr)が脱退(のちにアリス・クーパー・バンド→KISSへ)。代わりにジェフ・マーティンが加入します。ジェフはRACE-Xではシンガーでしたが、もともとはドラマーとして音楽活動をしていたとのこと。当時はそういった事実を知らなかったので、このパート変更に驚いたものです。

さて、ジェイク・E・リー(G)を中心に、BLACK SABBATHなどで活躍したレイ・ギラン(Vo)を迎えて結成されたこのバンド。デビューアルバムではジェイクのブルース趣味と産業ハードロック色が絶妙なバランスでミックスされた良作でしたが(このへんはプロデューサーのポール・オニールの手腕によるものが大きいのかなと)、本作では産業ハードロック色が後退し、生々しいブルースロック/ハードロックが展開されています。

レイの圧倒的なボーカルはそのままに、彼の力量を見事に活かしたブルースフィーリングに溢れた楽曲群は、前作の路線を好んでいたリスナーには少し地味に感じるかもしれません。が、その完成度はなかなかのものがあり、生々しいサウンドプロダクション(そう、ここも前作とは相反する色付けなんですよね)と相まって非常にカッコよい仕上がりとなっています。

いわゆる“ウェル・メイド”なサウンドから、80年代末あたりを起点により“ロウ(生)”っぽいサウンドが好まれるようになりだしたのもあり、このアルバムは(ハードロック/ヘヴィメタルがオン・タイムかどうかは別として)非常に時代感のある作りではないかと、今聴くとそう思えてきます。事実、このアルバムが発売された1991年、この数ヶ月後にNIRVANAPEARL JAMといったシアトル勢がメジャーデビューすることを考えると、なるほどと納得するものがあるんですよね。

さてさて。ジェイクのギターは要所要所で速弾きも飛び出しますが、それはオジー・オズボーンのところで聴かせた80年代らしいものとは異なるタイプで、あくまでブルースロックをベースにしたフリーキーなもの。リフは相変わらずカッコいいんだけど、以前と比べたらシンプルで単調なものが増えているかもしれません。が、良く捉えればそれはあくまでこれらの曲調に合わせたものであり、そういう意味でもバランス感に優れた作品だと思います。

ジェフのドラミングもテクニカルというよりは、地味ながらも曲に合った、的確なプレイが中心。グレッグ・チェインソン(B)のベースと合わせて、リズム隊は前に出過ぎることなくギターとボーカルをバックアップすることに終始徹している印象です。

セールス的には惨敗したものの(全米140位)、個人的には1stアルバムよりもお気に入りの1枚。前作同様、現在ストリーミングサービスにはBADLANDSのメジャー作2枚は配信されておらず、iTunesなどでのダウンドード販売も国内流通なし。本当、勿体なさすぎですよ、ワーナーさん!

 


▼BADLANDS『VOODOO HIGHWAY』
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2019年5月21日 (火)

THE ROLLING STONES『HONK』(2019)

2019年4月発売のTHE ROLLING STONES最新ベストアルバム。本来はこの春からスタートする予定だった全米ツアーに合わせたアイテムだったのですが、ご存知のとおりミック・ジャガー(Vo)の急病でツアー延期に。なんともとんちきなタイミングでのリリースになってしまいましたが、それでも全英8位、全米23位というまずまずの数字を残しました。

いわゆるアーティスト公認のベストアルバムとしては、2012年の『GRRR!』以来6年半ぶり。『GRRR!』には新曲2曲が含まれていましたが、本作はRolling Stones Records設立後初のアルバム『STICKY FINGERS』(1971年)から最新スタジオアルバム(ブルースカバーアルバム)『BLUE & LONESOME』(2016年)までの全スタジオ作品から最低1曲ずつ選ばれ収録(2枚組およびボーナスディスク付きデラックス盤のみ)という代物になります。また、3枚のディスクから抜粋したCD1枚ものも海外のみでリリース。ここでは、3枚組仕様のデラックス盤について話を進めていきます。

70年代以降のベストということで、「(I Can't Get No) Satisfaction」も「Jumpin' Jack Flash」も、本タイトルの元ネタとなっているであろう「Honky Tonk Women」も入っていない。ですが、これだけの代表曲(全38曲)がズラリと並ぶとなかなか壮観なものがあります。実際、ほとんどの曲が口ずさめますしね。

また、ベストアルバムとはいえ単なるヒット曲集では終わっておらず、一般的なベスト盤からは漏れることの多い「Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)」(1973年の『GOATS HEAD SOUP』収録)や同アルバムのオープニングを飾る「Dancing With Mr. D」(オープニング曲)、「Rocks Off」(1972年の『EXILE ON MAIN ST.』収録)が含まれているのも興味深いところ。アップテンポの「Respectable」(1978年の『SOME GIRLS』収録)や「Rough Justice」(2005年の『A BIGGER BANG』)あたりが収録されているのも、セレクト的に面白いなと思います。要するに、このへんが全米ツアーでは披露されるんじゃないか……ってことだったのかな。

あ、このベストアルバムですがフィジカル&デジタルとストリーミングとでは曲順が異なるのでご注意を。僕も最初、ストリーミングで楽しんでからCDを購入したのですが、リッピングしたものを聴き始めたら2曲目から全然違う曲順でびっくりしたので。

まあ既発曲中心のDISC 1および2についてはこれくらいでいいでしょう。今回特に強くオススメしたいのはこの2枚ではなく、デラックス盤のみで聴くことができるDISC 3なのですよ。

こちらは全10曲入りのライブアルバムとなっており、収録時期も2013年から2018年と非常に幅広いもの。こちらには60年代の「Get Off Of My Cloud」や「She's A Rainbow」「Let's Spend The Night Together」「Under My Thumb」が含まれているけど、上に挙げたような王道の代表曲はゼロ。まあそのへん含めたらほかのライブ盤と一緒になっちゃうしね。

このライブ盤の魅力はそういった60年代曲や「Dancing With Mr. D」「Shine A Light」といった70年代曲の最新ライブバージョンだけでなく、豪華アーティストとのコラボレーション曲が豊富に含まれている点でしょう。「Beast Of Burden」ではエド・シーラン(ストリーミングでは本作のみ未配信。契約の関係でしょうか)、「Wild Horses」ではフローレンス・ウェルチ(FLORENCE & THE MACHINE)、「Dead Flowers」ではブラッド・ペイズリー、「Bitch」ではデイヴ・グロール(FOO FIGHTERS)がそれぞれ参加しており、各々のカラーが濃く表れた好演を楽しむことができます。

個人的にはフローレンスが参加した「Wild Horses」の色気、デイヴ・グロールのハイテンションぶりに笑みがこぼれる「Bitch」がお気に入り。これらを聴くためだけにアルバムを購入しても損はしないかと。10曲入りライブアルバムにしては割高ですが、おまけに36曲入りベストアルバムが付いてくると考えればお安い気がしません?

気づけば2014年から実現していないストーンズ日本公演。これを機にそろそろ……と思うのですが。待ってます。

 


▼THE ROLLING STONES『HONK』
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2019年5月20日 (月)

SAMMY HAGAR & THE CIRCLE『SPACE BETWEEN』(2019)

2019年5月発売の、SAMMY HAGAR & THE CIRCLEによる1stスタジオアルバム。

2014年に結成されたこのバンドは、サミー・ヘイガー(Vo, G)と元VAN HALENのマイケル・アンソニー(B)、サミーの近年の活動におけるパートナーであるヴィック・ジョンソン、そしてジョン・ボーナム(LED ZEPPELIN)の実子であるジェイソン・ボーナム(Dr)という4人編成。2015年にライブアルバム『AT YOUR SERVICE』を発表していますが、正式なスタジオアルバムはこれが初となります。

いわゆる“スーパーバンド”ではあるものの、先のライブアルバムではサミーのソロナンバーに加え、サミー在籍時のVAN HALEN、MONTROSEやLED ZEPPELINといったレジェンドバンドの名曲がカバーされていました。こういったロッククラシックをライブで披露し続けることで、このバンドならではのグルーヴ感を数年かけて構築していったということなのでしょうか。

実際、本作で展開されているサウンドやグルーヴ感は非常に肩の力が抜けたナチュラルなもので、各メンバーが過去に在籍したバンドのカラーを多少感じさせつつも、THE CIRCLEというバンド“らしさ”がデビュー作の時点でしっかり完成している印象を受けました。

正直このメンツなら派手で豪快なアメリカンハードロックが期待できそうなものですが(事実ライブアルバムはそういうテイストでしたしね)、土着的なアメリカンロックをルーツにしながらアコースティック色を随所に織り交ぜている、非常に落ち着いた“大人のロック”を聴かせてくれるのです。

サミー自身、加齢により以前ほどハイトーンが出なくなってきたというのもあるのでしょうが(もう71歳ですからね!)、メロディのトーンもかなりクールというか落ち着いていて、声を張り上げて歌うようなほとんどない。「Free Man」のようなヘヴィロックも存在するものの、ダウンチューニングすることでキーが低くなり、それにあわせてトーンも落ち着いている。でも、これはこれで非常にカッコいいと思います。

楽曲自体も2〜3分台のものが大半で、全10曲で約35分という短さ。音楽的方向性含め、まるで70年代のロックアルバムのようで、1曲1曲に無駄がない点含めて気軽に楽しめるのは良作だと思います。演者側のリラックスした雰囲気が伝わってくることもあって、リスナー側も肩肘張らずに気楽に再生できる。視点を変えれば「アクが弱い」とも言えるわけですが、70〜90年代に数々のヒット作を生み出してきたサミーが残り少ない音楽人生をこういう形で楽しもうとしている。もうこれはこれでいいんじゃないかと思います。

最後に。やっぱりマイケル・アンソニーのハイトーンコーラスが入ると、楽曲の雰囲気が一気に引き締まりますね。今のVAN HALENに足りないのはまさにこれなんですよね。そりゃバンドへの復帰を打診するわけだ(笑)。

 


▼SAMMY HAGAR & THE CIRCLE『SPACE BETWEEN』
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2019年5月19日 (日)

ANDY BLACK『THE GHOST OF OHIO』(2019)

2019年4月に発売されたBLACK VEIL BRIDESのフロントマン、アンディ・ビアサックの“アンディ・ブラック”名義での2ndアルバム。ソロデビュー作『THE SHADOW SIDE』(2016年)から3年ぶりの新作となりますが、前作の全米22位から最高200位と記録やセールスを一気に落とす結果に。しかし、そういった現実とは相反し、その内容は非常に優れたものと言えるのではないでしょうか。

前作ではBLACK VEIL BRIDESでのハードロック路線とは異なる、落ち着いた“大人のロック&ポップス”を聴かせてくれたアンディ。基本的な方向性は前作の延長線上にあるものの、今作ではより洗練されたモダンなポップロックを提供してくれています。

プロデューサーは前作から引き続きジョン・フェルドマン(BLACK VEIL BRIDES、FEVER 333ONE OK ROCKなど)が担当。ジョンはBLACK VEIL BRIDESの最新作『VALE』(2018年)でも共同プロデュースやソングライティングで参加していることから、よっぽどアンディに気に入られているのでしょう。実際、ヘヴィなものからポップなスタイルまで幅広く手がける人ですしね。

全12曲収録と、曲数的には前作の13曲とほぼ変わらないのですが、トータルランニングは前作の約50分から今回は40分と一気に短縮。それもそのはず、1曲がほぼ2〜3分台と昨今ヒットチャートを占めるポップソングと同等のスタイルなのですよ。無駄を削ぎ落とし、歌を聴かせるための最良のアレンジを施した結果がこれなのだとしたら、今回はすべてが良い方向に作用していると言えるでしょう。

例えば、ジョン・ボン・ジョヴィがソロ2作目『DESTINATION ANYWHERE』(1997年)で目指した、土着的なアメリカンロックをバンドスタイルにこだわらないモダンなアレンジで表現するあのスタイルに一番近いのかな。ソングライターとしての成長も大いに伝わるし、バンドとの差別化もちゃんとできている。バンドのアルバムが3年間隔でのリリースだとしたら、その合間にこういう“ガス抜き”は大歓迎です。

また、ゴシック調のアルバムジャケットといい、前半6曲を「ACT I」、後半6曲を「ACT II」と括る構成といい、どこかドラマ性を感じさせるものがあります。事実、以前よりもドラマチックさが増したサウンド&アレンジにぴったりですし、これは個人的にも好印象かな。

一時は新たなロックスターとして注目を集めたアンディおよびBLACK VEIL BRIDESですが、ここ最近は若干停滞気味なのかな。特にここ日本では2作連続で国内盤がリリースされていないし、アンディのソロも2作とも国内盤発売の予定なし。本国での状況や注目具合が正しい形で伝わりきらない、伝える手段が少ないという悪循環を生み出していますが、せめてこのアルバムの良さだけはストレートに伝わってほしいと願うばかりです。

 


▼ANDY BLACK『THE GHOST OF OHIO』
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2019年5月18日 (土)

RAMMSTEIN『(untitled)』(2019)

2019年5月17日に世界同時リリースされた、RAMMSTEINの7thアルバム。便宜上『RAMMSTEIN』(全大文字で表記)と明記されていますが、実はタイトルなし。LED ZEPPELIN4作目KORN8枚目と一緒ですね。

オリジナルアルバムとしては前作『LIEBE IST FÜR ALLE DA』(2009年)から10年ぶりの新作。仕事柄、いち早く本作を聴く機会を得たのですが、まあ最初に聴いたときはビックリしましたよ。きっと、皆さんと同じ感想だったと思います。

先行シングル「Deutschland」や「Radio」ですでに気づいていた事実ですが、とにかく本作に収録された楽曲群は聴きやすいの一言。従来の彼ららしさを残しつつもわかりやすさが一気に増し、非常にコンパクトでモダンな楽曲が多い印象を受けました。

わかりやすさは「Radio」「Zeig dich」といった楽曲に顕著で、ストレートな「Ausländer」やシャッフルビートのスタジアムロック風「Sex」など、ある意味では彼ららしいんだけど今までとちょっと違う……そんなアップデート感が伝わってきます。

実際、インタビューでもメンバーは「生命だったりエネルギーだったりがたくさんあるんだ。でも、すべてが怒りというわけではない。音楽はそれを超えるものだからね。RAMMSTEINにとってこれまでとは違うんだ。聴くのが楽しいなんて言ってもらえるかもしれないね」と、これまでの作品とはまったく異なるアプローチを取ったと語っています。

とにかくノリの良い前半から一転、後半となる6曲目「Puppe」からテイストが変わっていきます。力強いビートはそのままに、エモーショナルさが増していくんですね。この曲や、続く「Was ich liebe」でのドラマチックさ、クラシックギターとストリングスのみで表現される「Diamant」のエモ味は鳥肌モノ。この3曲の流れは本作のハイライトと断言できます。

かと思えば、従来のRAMMSTEINを彷彿とさせる「Tattoo」のような楽曲もあるし、ラストはホラーテイストのミドルヘヴィ「Hallomann」で締めくくり。全11曲で46分強というトータルランニング含め、とにかくスルッと楽しめる1枚に仕上がっています。

正直、彼ららしい猟奇性、変態性はこの音からは伝わりにくいし、むしろど真ん中を突いてくるようなキャッチーさ、ポップさ、ドラマチックさは今まで彼らを敬遠してきた層にもリーチするのではないでしょうか。そういう意味では、これからRAMMSTEINを聴いてみようというビギナーにうってつけの1枚。いやはや、10年ぶりの新作でここまでやりきるとは、恐れ入りました!

 


▼RAMMSTEIN『(untitled)』
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2019年5月17日 (金)

MICHAEL MONROE『BLACKOUT STATES』(2015)

2015年10月に発表された、マイケル・モンローの同名バンド名義による3rdアルバム。マイケル個人としては通算8枚目のソロアルバムに当たります(JESUSALEM SLIMDEMOLITION 23.を含むと10枚目)。

前作『HORNS AND HALOS』(2013年)から加わったドレゲン(G / BACKYARD BABIESTHE HELLACOPTERS)が早くも脱退(こちらは健康上の理由とBACKYARD BABIES再始動が理由)。ジンジャー・ワイルドハート、ドレゲンとスター性の強いギタリスト、かつソングライターとしても強烈な個性を持つ人間がアルバムごとに変わる状況含め、いかにもマイケル・モンローらしいなと思ってしまいましたが、ドレゲンに代わり加入したのはリッチ・ジョーンズ(ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ジンジャー・ワイルドハードなど)。

……あれ、今回地味じゃね?(苦笑)

そう思った人、仲間だね(笑)。リッチは2013年のジャパンツアーに参加できなかったドレゲンの代役として帯同したキャリアの持ち主で、加入も自然な流れだったんでしょう。要は“人間性”が求められたのかな。

前作の時点でソングライティング能力を遺憾なく発揮していたもうひとりのギタリスト、スティーヴ・コンテは本作でも大半の楽曲に名を連ねており、改めてこのバンドのメインソングライターとして手腕を振るっていますが、さて、リッチ・ジョーンズはどうかといいますと……。

全13曲中8曲にクレジットされており、そのすべてがスティーヴとの共作、あるいはその2人とサミ・ヤッファ(B)やマイケルとの共作という形となっています。スティーヴのように単独名義での楽曲はないものの、少なからずバンドの曲作りに貢献できているようです。ひと安心。

さて、肝心の内容ですが、どこからどう切り取ってもマイケル・モンローそのもの。ソロになってから、特にこのバンド編成になってからの彼のパブリックイメージそのままのサウンド/楽曲を楽しむことができます。つまり、「ポップで親しみやすいメロディが備わった豪快なロックンロールとパンクロック、ときどきレイドバックしたカントリーロック風ポップチューンも」楽しめるというわけです。あと、ディー・ディー・ラモーン(RAMONES)が生前書き残した未発表曲「Under THe Northern Lights」が、マイケルの手によって正式レコーディングされているのも本作の特徴かな。

ただ、悪い言い方をしてしまうと、何の驚きもない予定調和とも受け取れる。これはもう、聴き手に委ねるしかありませんが……僕はわりと好きです。いや、かなり好きかな。飛び抜けてすごい!と思える楽曲が1曲くらい欲しかった気がするけど、前作と前々作『SENSORY OVERDRIVE』(2011年)が良すぎたというのも大きいのかしら。ちょっと贅沢ですよね。

そんな中、個人的には「R.L.F.」という高速パンクチューンが大のお気に入り。これ、マイケルが昔から口にしてきた信条「Rock Like Fuck」のことですからね。そりゃ嫌いになれるわけがない。いまだにこの姿勢でロックと向き合ってくれていることに感謝します。

さて、本作リリース後は30年のソロキャリアを総括するベストアルバム『THE BEST』(2017年)をリリースしていますが、オリジナルアルバムは4年待っても届かない状況。そんな中、この夏には『SUMMER SONIC』で3年ぶりの来日が実現……ってことは、そろそろってことですよね? 期待してもいいですよね? 過剰に期待して待ってます。

 


▼MICHAEL MONROE『BLACKOUT STATES』
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2019年5月16日 (木)

JOHN DIVA & THE ROCKETS OF LOVE『MAMA SAID ROCK IS DEAD』(2019)

アメリカ・カリフォルニア出身の5人組バンド、JOHN DIVA & THE ROCKETS OF LOVEが2019年2月にSPV Records傘下のSteamhammerからリリースした1stアルバム。

バンド名からをおわかりのように、フロントマンのジョン・ディーヴァ(Vo)を中心としたツインギター編成のバンドで、“自称・ヘアメタルバンド”と自ら名乗るほどの潔さを見せる彼らのサウンドはまんま80年代のLAメタル(ヘアメタル、グラムメタル)を彷彿とさせるもので、ある意味ではゼロ年代に登場したSTEEL PANTHERのフォロワーと言えなくもありません。

オープニングを飾る「Whiplash」の疾走感はまんまあの時代のハードロックだし、続く「Lolita」でのシンセを用いたポップ&キャッチーな路線と、どこかRATT「Round And Round」を思わせるアレンジには思わずクスッとしてしまうものがあります。

かと思えば、チープな打ち込みを同期させたブルースロック調「Rock 'n' Roll Heaven」にはどこか中期POISONを思わせる雰囲気も。そもそもジョン・ディーヴァの歌い方や声質が、そのPOISONのブレット・マイケルズに似ているのかな(WHITE LIONのマイク・トランプっぽくもあるけど)。そういえばルックスもそれっぽいし……と、ここまでは計算なのか天然なのか不明ですが、とにかく聴けば「ああ、LAメタルが好きなんだね」と微笑ましく思えてくるから不思議です。

ほかにも、オープニングにツインリードを用いたシャッフルビートの「Wild Life」は“サーペンス・アルバス”期のWHITESNAKE、アカペラコーラスから始まる「Blinded」はBON JOVIまんまだし、ピアノを用いたパワーバラード「Just A Night Away」もちゃんと用意されている。

聴けばすぐに「本当に好きなんだね(微笑)」とニンマリしてしまうこのアルバム。残念ながら「これ!」というキメの1曲はありませんが、どれも平均点以上の出来ではないかと。

最近、日本のThe Blue Scream含めこういった80’sヘアメタル・リバイバルが盛んになりつつありますが、個人的には大歓迎。ただ、単なる焼き直しのみで終わらない“プラスα”だけは必ず見つけてほしいなと、密かに思っています。だって、それがなければこのシーン、一過性のもので終わってしまうので。勿体ないですもん、こんなにきらびやかで素敵な世界があるってことが伝わる前に消えてしまうのは。

 


▼JOHN DIVA & THE ROCKETS OF LOVE『MAMA SAID ROCK IS DEAD』
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2019年5月15日 (水)

KAATO『SLAM!』(2019)

オーストラリア出身のハードロックバンド、KAATOが2019年3月に発表した2ndアルバム。ここ日本では幾度にわたり来日公演を行っており、この4月に実施されたジャパンツアーも大盛況だったと伝え聞いております。

カート・ロウニー(Vo)とミカ・ノーティネン(B)の2名が正式メンバーで、レコーディングにはACCEPTのクリストファー・ウィリアムス(Dr)も全面参加。なんて話を聞くと、どれだけヘヴィなサウンドなんだろう……と勘違いしそうですが、本作で展開されているのは70年代の古き良き時代のクラシック・ロック(グラムロック色強し)を現代的に昇華するのではなく、現在の技術でまんまプレイしたらこうなりましたという内容なのです。

思えばオーストラリアって愚直にクラシック・ロックを追求するバンドが多いですよね。そのオリジネーターでもあるAC/DCしかり、WOLFMOTHERしかり、AIRBOURNEしかり、JETしかり。このKAATOもその延長線上にあると言っても過言ではありません。

ダイナミックなバンドサウンドと、どこかグラマラスさを感じさせるメロディやフレーズの数々、そういった要素で構築される楽曲群は正直、「70年代半ばに存在したB級グラムロックバンドのリマスター/リイシュー」と言われたら信じてしまうぐらい当時の空気感を感じさせるもの。もちろんこれは褒め言葉で、今やこういったスタイルを継承するバンドが表舞台に大手を振って活躍することが減っているだけに(GRETA VAN FLEETはまた別の解釈でブレイクした気がするので、ここに含めるのはやめておきます)、KAATOのようなバンドが日本で受け入れられているという事実には感慨深いものがあります。

全7曲(日本盤のみボーナストラック1曲追加)、うち1曲「Slam!」は80秒程度で続く「Glamour Queen」へのイントロダクションなので、歌モノは実質6曲。トータルでも30分程度という短さはまさに70年代のロックそのもの。と同時に、フィジカルよりもデジタルでのリリースが主流になりつつある現在においては、これくらいの長さでアルバムとして発表されてもなんら違和感なし。むしろ、初めてこのバンドの作品に触れてみようというリスナーにとってはちょうどよい曲数/長さなのではと思います。

力強いギターリフとカートのセクシーな歌声を軸に展開されていく楽曲の数々は、単なるクラシック・ロックの焼き直しだけでは終わらない、原石ならではの魅力が至るところから感じられます。例えばTHE STRUTSあたりが好きというリスナーにも確実に響くものがあるでしょうし、最近のバンドはよくわからないけど70〜80年代のハードロックは今も好きという層にも十分にアピールする。そんな、さらなるブレイクの可能性を秘めた“開戦前夜”的な内容で、彼らにハマるのは今からでも遅くないと教えてくれる1枚です。

 


▼KAATO『SLAM!』
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2019年5月14日 (火)

ENUFF Z'NUFF『10』(2000)

ENUFF Z'NUFFが2000年10月にリリースした通算9作目のスタジオアルバム(日本では同年3月に先行リリース)。9作目なのに『10』というタイトル? と当時は疑問に思ったものですが、これは1998年のライブアルバム『LIVE』を加えた「通算10作目のアルバム」という意味なんだとか。紛らわしいですね。

この頃の彼らは海外ではインディーズ、日本ではメジャー(ポニーキャニオン)という非常に不安定な状況下でしたが、こうやって安定した良作を日本でしっかり流通させてくれる、しかも海外よりも半年以上も前にリリースしてくれるという恵まれた現状を喜ばしく思ったものです。

が、そういった活動状況が災いしてか、本作は日本でリリースされたバージョンと、半年後に海外でリリースされたバージョンとで収録内容および曲順が一部異なりました(もっと言えばジャケットもね)。SpotifyやApple Musicで聴けるストリーミングバージョンは今でこそ日本バージョンに準じた内容なので、ここでは初出の日本バージョンで話を進めます。

前作『PARAPHERNALIA』(1999年)までの数年は過去に制作した音源をパッケージしてお茶を濁していた感が強かった彼らですが、その『PARAPHERNALIA』で本格的に息を吹き返し、続く今作『10』では当時の彼らが目指した「普遍的なロック/パワーポップ」スタイルがひとつの到達点にまで達したように思います。

デビュー当時のようなフラッシーなギタープレイや重厚なハードロックサウンドを完全に排除して、地味ながらも普遍的な楽曲作りに専念した結果が本作なのかなと。それに、『PARAPHERNALIA』までは確実に存在したハードロック的要素が本作では可能な限り払拭されている。スタイル的にはダークな『TWEAKED』(1995年)とアコースティックベースの『SEVEN』(1997年)をよりスケールアップさせたような印象を受けますが、今作でのソングライターとしての手応えは、間違いなくバンドの(というよりもフロントマンであるドニー・ヴィの)その後の方向性を決定づけたと言っても過言ではない気がします。

若干ダークながらもヘヴィすぎない「Wake Up」から「The Beast」への流れ、そこから一気に弾ける「There Goes My Heart」という構成も素晴らしいですし、何よりも「There Goes My Heart」という名曲が含まれているというだけで本作に対する評価は大きく変わる気がします。

さらに「All Right」や「Holiday」といった良メロナンバーも含まれていますし、「Bang On」みたいなアップテンポのロックンロールやサイケデリック調の「Fly Away」、本作でもっともハードロック色が強い「No Place To Go」(USバージョンの『PARAPHERNALIA』にオリジナルバージョン収録。今作のバージョンではチップ・ズナフが歌唱)があったりと、アルバムとしてもバラエティ豊か。「ENUFF Z'NUFFってどんなバンド?」と質問されたら、まずこれを聴かせておけ!と言いたくなるくらい、“らしさ”がたっぷり詰まった1枚です。

 


▼ENUFF Z'NUFF『10』
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2019年5月13日 (月)

DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』(2019)

ENUFF Z'NUFFドニー・ヴィ(Vo, G)が2019年4月にリリースした、通算4作目のスタジオソロアルバム。本作のCDは日本でのみ一般流通、海外ではPledgeMusicを通じて購入することが可能です。

前作『THE WHITE ALBUM』(2014年)は2枚組、かつスタジオ音源にライブテイクなどを織り交ぜたバラエティに富んだ内容で、そのあとにはアウトテイク集『!』(2016年)の発表もありましたが、本作は新曲のみによる純然たるスタジオアルバム(日本盤のみボーナストラックとしてジョン・レノン「Instant Karma」のカバーを収録)。どこからどう聴いても「ENUFF Z'NUFFのドニー・ヴィ」そのものという、良質なパワーポップアルバムです。

ゲストプレイヤーとしてMR. BIGのポール・ギルバート(G)、元JELLYFISHのロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.(Piano, Strings)、そしてENUFF Z'NUFF時代の盟友ジョニー・モナコ(G)などが参加。ポール・ギルバートのプレイは……一聴しておわかりかと思いますが(笑)、オープニングの「Beautiful Things」での速弾きかなと。浮いてるっちゃあ浮いてますが、ENUFF Z'NUFF時代もこういったプレイが含まれた楽曲は存在しましたし、双方納得済みでのこのプレイでしょうから、まあ良しとします。別に楽曲をぶち壊すほどのものでもありませんし。

まあとにかく、どの曲も非常に優れたメロディと、シンプルながらもメロディの良さを際立たせるバンドアンサンブル、要所要所で挿入される壮大なストリングスアレンジなど、すべてが完璧なバランスで成立しています。そこに“この声”が乗るのですから……ぶっちゃけ、今のENUFF Z'NUFF以上にENUFF Z'NUFFらしいと言いたくなっちゃいますよね(ズナフ・ファンの皆さんごめんなさい)。

どこかで耳にしたことがあるような気がするくらい、自然と馴染むメロディの数々。古き良き時代のロックやポップスからのいろんなフレイバーを織り交ぜた結果、そういった錯覚を覚えるわけですが、これもドニーの個性・才能なんでしょうね。改めて、ものすごいソングライターだと納得させられました。

全体的にはアコースティックロックやカントリーをベースにしており、ENUFF Z'NUFF時代で言えば『SEVEN』(1997年/日本では1994年、CHIP & DONNIE名義で『BROTHERS』として発売)や、『10』(2000年)あたりに近いのかな。派手さは皆無だけど無駄も一切なし。新しさはゼロかもしれないけど何遍でも繰り返して聴きたくなる、そんなエヴァーグリーンな1枚。

ボートラの「Instant Karma」も完コピに近い形でカバーされていますが、これがまったく浮いておらず、むしろほかのオリジナル曲と馴染んでいる……と言えば、本作の完成度の高さをご理解いただけるのでは。とにかくずっと聴いていたい、そんな良作です。

 


▼DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』
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2019年5月12日 (日)

CRAZY LIXX『FOREVER WILD』(2019)

スウェーデンの5人組グラムメタルバンド、CRAZY LIXXが2019年5月に発表した6thアルバム。2016年にギタリスト2名が総入れ替えとなりましたが、前作『RUFF JUSTICE』(2017年)は北欧メロディックメタルらしさを前面に打ち出した、非常に良質なアルバムでした。

前作から2年という比較的短いスパンで届けられた本作は、彼らのルーツであるSKID ROWMOTLEY CRUE、あるいはGUNS N' ROSESなど80's USヘアメタルからの影響が色濃く表れ、それでいて生まれのルーツである北欧らしさもしっかり備わった、ワイルドなハードロックサウンドと憂いあるメロディが融合した非常に良質なハードロックアルバムに仕上がっています。

例えば、DOKKEN『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)やSKID ROWの1stアルバム『SKID ROW』(1989年)あたりが今でも好きだという往年のリスナーにも絶対に引っ掛かりがある1枚だと思いますし、もっと言えばDEF LEPPARD『PYROMANIA』(1983年)『HYSTERIA』(1987年)で聴ける楽曲やサウンドが好きというリスナーも絶対に気に入ると思うんです。

と同時に、FAIR WARNINGPINK CREAM 69、TREATといったヨーロッパのメロディアスハードロックバンド、カナダのHAREM SCAREMあたりの名前にピンとくる人にも少なからずアピールするのでは、と。CRAZY LIXXという名前を聴いて、イコール・ヘアメタルという印象を持ってしまっている人は少なからずいるのではないかと思うのですが(昔の筆者のように)、聴かず嫌いはよくないですね。

オープニングの「Wicked」から拳を上げてシンガロングしたくなるメロディ満載だし、楽曲のバラエティの幅(メジャー/マイナーの曲調や、アップテンポからミディアム、スローまでのテンポ感)もこの手のバンドにしては広めだし、何よりもダニー・レクソン(Vo)の癖が強すぎず嫌味のないボーカルがこういった湿り気の強いメロディにハマっている。そこにDEF LEPPARD風の多重録音コーラスが重なることで、楽曲のゴージャスさが増している。そうそう、これが好きなんだよ……ってニンマリするHR/HMファン、決して少なくないはずですよ。

果たしてこれを「2019年のリアルな音」と言い切ることができるのか……いや、そんな細かいことはどうでもいい! “今の音/曲”ではなく“普遍的な音/曲”で十分じゃないかと。きっと1年後も、5年後も、10年後も、いつ聴いても同じ興奮と感動を与えてくれる、そんな時代を超越した良作だと思います。「2019年を代表する1枚」というよりも、「21世紀を代表する1枚」……大袈裟かもしれないけど、それでいいじゃない。それくらい良くできた傑作です。

 


▼CRAZY LIXX『FOREVER WILD』
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2019年5月11日 (土)

WHITESNAKE『FLESH & BLOOD』(2019)

WHITESNAKE通算12枚目のオリジナルアルバム。スタジオ作品としてはDEEP PURPLEのカバーアルバム『THE PURPLE ALBUM』(2015年)以来となりますが、純粋な新作という意味では『FOREVERMORE』(2011年)から8年も経っているんですね。驚きです。

レコーディングメンバーはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)、レブ・ビーチ(G / WINGER)、ジョエル・ホークストラ(G / ex. NIGHT RANGER)、マイケル・デヴィン(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)、ミケーレ・ルッピ(Key)という布陣。ミケーレ以外は『THE PURPLE ALBUM』制作時と同じメンツですが、あれはカバーアルバムですしね。今回は演奏以上にソングライティング面での才能が大いに求められるわけですから……。

『GOOD TO BE BAD』(2008年)と『FOREVERMORE』ではダグ・アルドリッチ(G / THE DEAD DAISIES、BURNING RAIN)がカヴァーデイルの片腕となり楽曲制作を行い、ファンをそれなりに納得させる楽曲群……つまり、大ブレイクした『WHITESNAKE』(1987年)前後の作風を維持しつつ、初期のブルースロック、ソウルフィーリングを散りばめ、モダンなアレンジを施すことに成功しました。さて、今回はどうでしょう?

本作ではレブとジョエルが初めてソングライティングに参加していますが、全体的には『WHITESNAKE』というよりも続く『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)ジミー・ペイジとの『COVERDALE・PAGE』(1993年)の頃の空気感に近い印象を受けます。

先行リリースされた「Shut Up & Kiss Me」はドライブ感の強いアップテンポのハードロックチューンでしたが、ブリティッシュというよりはアメリカンな音作り&曲調でした。別にジョエルが参加してるからってわけではないけど、ぶっちゃけNIGHT RANGERがやっても違和感ない楽曲といいますか。悪くはないし、むしろいい曲なんだけど「これをWHITESNAKEが今やる意味とは?」と考え込んでしまいました。

その後先行カットされた「Trouble Is Your Middle Name」も「Hey You (You Make Me Rock)」も、印象としては「Shut Up & Kiss Me」と一緒。悪くはないんだけど、このバンドがこういったタイプの楽曲をやる意味ばかりを考えてしまうという。

で、そんな不安を抱えたままアルバムと向き合ったのですが、やはり印象は最初に抱いたものから変わることはありませんでした。

ハードロックアルバムとしては非常に良質だし、即効性の強い曲が多いと思うんです。ちゃんと『FOREVERMORE』までのカラーを引き継いでいるし、曲によっては確かに80年代初頭〜中盤の香りが感じられるものも少しだけど存在する。でも、そこに乗っかるフラッシーなギターソロ……これ、必要?

そう、これなんですよ。『SLIP OF THE TONGUE』時のスティーヴ・ヴァイ(G)を思い浮かべてしまったのです。あそこまでトリッキーではないけど、それにしても……っていうね。

オープニングナンバー「Good To See You Again」は初期WHITESNAKEファンにも引っかかりがあるであろう良曲ですが、続く「Gonna Be Alright」の不思議な感じ……ああ、これがCOVERDALE・PAGEの“幻の2ndアルバム”に収録される予定だった楽曲なのか。ってアウトテイクじゃん(苦笑)。

「Always & Forever」の突き抜けるような能天気さ、「When I Think Of You (Color Me Blue)」のアクのなさは本当に『SLIP OF THE TONGUE』のそれだし、タイトルトラック「Flesh & Blood」もDAMN YANKEESあたりにやらせたいミドルナンバーだし(笑)。

「Crying In The Rain」を彷彿とさせる「Heart Of Stone」は歌メロが弱いし、「Get Up」はもっと泥臭くできなかったのかなと不満が込み上げてくるし。だけど、アコースティックナンバー「After All」は非常に良いと思うんです。結局、こういう肩の力が抜けた楽曲で一番本領発揮するというね、悲しいかな。

で、本編ラストの「Sands Of Time」も『SLIP OF THE TONGUE』的だし……嗚呼。

いや、『SLIP OF THE TONGUE』はそこまで嫌いじゃないですよ。むしろ好きな部類のアルバム。だけど、従来のファンは今これを求めているわけではないし、むしろあれを2019年に焼き直す意味がわからない。リリース30周年だから? え、そんな理由!?

冗談はさておき。やっぱりここ10年くらいのWHITESNAKEの楽曲は、どうもシンセの主張が強すぎて「う〜ん……」と感じてしまうものが多いんですよね。全部が全部必要かな? と思ってしまう。半分くらいシンセなしでもまったく通用すると思うんだけどな。あるいはオルガン主体にするとか。

あ〜〜〜〜っ、なんかモヤモヤする!(苦笑) 無駄に曲が良いから思いっきり貶せないんだよ!(苦笑)

……と、通常の倍以上かけて本作についてああだこうだと述べてみましたが、最終的にはこれを読んだあなたの耳で感じたものがすべてだと思います。ただ、僕は全面的には受け入れられなかった。それだけのことです。

 


▼WHITESNAKE『FLESH & BLOOD』
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2019年5月10日 (金)

SHADOWS FALL『THE WAR WITHIN』(2004)

2004年9月リリースの、SHADOWS FALL通算4作目のスタジオアルバム。本作から「What Drives The Weak」「Inspiration On Demand」が全米メインストリームロックチャートTOP40入りしたことから、アルバム自体も全米20位まで上昇(これが初のTOP200入り)。アメリカだけでも40万枚を超える、キャリア最大のヒット作となりました。

前作『THE ART OF BALANCE』(2002年)の時点でセールス10万枚を突破するほどのパワーを持っていた彼らですが、今作を経て同郷のKILLSWITCH ENGAGEらとともに新たなUSメタルシーンを築き上げていくことになります。

プロデュースは前作から引き続きゼウス(HATEBREEDロブ・ゾンビOVERKILLなど)が担当。サウンド的には90年代後半に登場した北欧メロディックデスメタルの影響下にありつつも、ANTHRAXなどオールドスクールなUSメタルをベースにした非常に正統派に近いメタルサウンドではないでしょうか(だからこそ、ギタリストのジョナサン・ドネイズがのちにANTHRAXに正式加入したのは非常に合点がいくわけです)。

ブライアン・フェア(Vo)のボーカルはスクリームをベースにしつつも、要所要所でクリーントーン(メロディを歌う)を取り入れており、そのへんが初期北欧メロデスとの違いかなと。このへんはKILLSWITCH ENGAGEにも通ずるスタイルですが、こういった“両刀使い”は遡ればPANTERAあたりから見受けられるものですし(もっと言えば初期METALLICASLAYERもか)、ルーツをしっかり大切にしつつもメタルを現代的にアップデートしようとする彼らなりのこだわりが見え隠れします。

とはいいつつも、SHADOWS FALLも初期はもっとデスメタル的要素が強かったので、このスタイルは試行錯誤を重ねつつたどり着いたひとつのゴールだったのかもしれませんね。と同時に、本作以降の彼らはこの到達点をどうアップデートさせていくかに苦心し、活動に行き詰まるわけですが。

ですが、初めて「Inspiration On Demand」を聴いたときの驚きは今でもよく覚えています。懐かしさと新しさを兼ね備えた若いバンドが今、アメリカで支持を得ている……それだけで胸がギュッと締め付けられたし、当時リアルタムで活躍しているバンドに興味を失っていた自分が再びシーンに目を向けるきっかけを作ったアルバムのひとつですからね。改めて今聴いても、本当によくできた内容だと思います。

かたや90年代のUSグルーヴメタルをより鋭角化させ、コアとポピュラリティを両立させるLAMB OF GOD。そして、ヨーロッパのシーンを察知しつつも、それを独自の解釈でUSメタル化させたSHADOWS FALLやKILLSWITCH ENGAGE。彼らが2000年代中盤〜後半のUSメタルシーンを支え続けたからこそ今がある。歴史を振り返るという意味でも、本作はマストで聴いておきたい1枚です。

 


▼SHADOWS FALL『THE WAR WITHIN』
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2019年5月 9日 (木)

LAMB OF GOD『ASHES OF THE WAKE』(2004)

LAMB OF GODが2004年8月(日本では9月)にリリースした通算3作目のスタジオアルバム。Epic Recordsへのメジャー移籍第1弾アルバムであると同時に、前身バンドBURN THE PRIEST時代の作品を含めれば4枚目のオリジナルアルバムとなります。

メジャー流通が大きく影響してか、本作は前作『AS THE PALACES BURN』(2003年)の全米64位を大きく上回る最高27位を記録。現在までに50万枚以上を売り上げ、キャリア最大のヒット作となっています。

デヴィン・タウンゼンドを共同プロデューサーに迎えた前作から一転、今作ではマシーン(CLUTCHFALL OUT BOY、SUICIDE SILENCEなど)がプロデュースを担当。ここでのタッグの手応えは、続く次作『SACRAMENT』(2006年)へとつながっていきます。

が、プロデューサーが変わろうと彼らがやることには一切変化なし。PANTERA以降のモダンヘヴィネス/グルーヴメタルを追求し、それこそPANTERAからそのバトンを受け取り、彼ららしいヘヴィで攻撃的なミドルナンバー中心の新たなアメリカンヘヴィメタルを築き上げています。

PANTERAとの比較ばかりになってしまい恐縮ですが、LAMB OF GOD最大の魅力はギタリストが2人いることではないでしょうか。2本のギターが絡み合うことで生まれる独創的なギターリフは、以降のメタルバンドに多大な影響を与えたはずです。

また、ランディ・ブライ(Vo)のボーカルはクリーントーンに走ることなく、一切の手抜きなしで全編スクリームの嵐。PANTERAでさえ歌メロを感じさせるパートが豊富に用意されていたのに、LAMB OF GODときたら容赦なし(笑)。そこが良いんですけどね。

さらに、クリス・アドラー(Dr)のツーバス連打を多用したドラミングも圧巻の一言。間違いなく彼は2000年代以降のトップドラマーのひとりだと思いますし、その理由がよくわかるのが本作でのプレイなんじゃないかな。先のギターリフと絡み合うことで生まれる独特のグルーヴ感は、デカイ音で聴けばただひたすら気持ち良いですし。

ただ、そういった「メロディ要素が少ない」ことが理由でメタル初心者にはちょっとハードルが高い……なんて思われてしまいがちな彼ら。いえいえ、意外とキャッチーなんですよ? なので、このグルーヴ感に一度ハマってしまったら、きっと抜け出せなくなるはず。ぜひ本作か次作『SACRAMENT』あたりを入門編に、彼らに触れてみることをオススメします。

なお、タイトルトラック「Ashes Of The Wake」は本作中唯一のインストナンバー(セリフのみ)。この曲では元MEGADETHのクリス・ポーランド(G)とTESTAMENTのアレックス・スコルニック(G)がゲスト参加しており、攻めまくりのギターバトルを楽しむことができます。このクライマックス感がたまらないんだよなあ。

あと、本作は今年でリリース15周年を迎えたこともあり、デジタル&アナログでボーナストラックを追加したアニバーサリーエディションも発売。SpotifyやApple Musicでもこちらのバージョンは聴くことができるので、今回はそちらのリンクを貼っておきますね。

 


▼LAMB OF GOD『ASHES OF THE WAKE』
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2019年5月 8日 (水)

THE DAMNED THINGS『HIGH CRIMES』(2019)

ANTHRAXのスコット・イアン(G)やFALL OUT BOYのジョー・トローマン(G, Vo)&アンディ・ハーレー(Dr)らを中心に結成されたスーパーバンド、THE DAMNED THINGSの2ndアルバム。前作『IRONICLAST』(2010年)から8年4ヶ月ぶりの新作となります。

前作発表時からメンバーチェンジが生じ、本作はスコットとジョー、アンディ、キース・バックリー(Vo / EVERY TIME I DIE)というオリジナル編成に加え新加入のダン・アンドリアーノ(B / ALKALINE TRIO)という布陣でレコーディング。前作まで在籍していたロブ・カッジアーノ(G / ex. ANTHRAX、元VOLBEAT)は2012年の活動休止以降、THE DAMNED THINGSには参加していないようです。

2016年から再始動した彼らですが、本作の制作には2年もの歳月を要したとのこと。もともとはEPとして、各メンバーの在籍するバンドの合間を見てレコーディングを始めたものの、気づけばアルバムまでスケールアップしてしまったということなのでしょう。

ANTHRAXやEVERY TIME I DIEといったメタル側、FALL OUT BOYのメインストリーム色&パンク色、そういった要素がどの程度のバランスで融合しているのかと聴く前に不安を覚えるリスナーも少なくないでしょう。しかし、ここで展開されているオールドスクールなハードロックを聴いて彼らを嫌いになれるロックファンは少ないのではないでしょうか。それくらい、どのバンドのカラーも多少なり感じさせつつ、ど真ん中をスピード違反で突っ走るようなパワーロックを聴かせてくれるのです。

メタル的なユニゾンプレイを含みつつも、ひたすら高速疾走するパンキッシュなナンバーも、軽やかさ以上にヘヴィさが目立つし、歌うことに徹したキースの歌声もこのパンキッシュかつブルージーなサウンドにぴったり。メタルというよりは70年代のハードロック的だし、そこにパンクやハードコアの香りを漂わせるという点では、MOTÖRHEADが作った道筋を全力で走り続けたらここにたどり着いた。そんな内容ではないでしょうか。

適度にフィーチャーされたオルガンサウンドも、またそういったオールドスクールなハードロックサウンドに華を添えているし、中には「Omen」みたいなブギーナンバーや「Storm Charmer」のようなミディアムテンポのサイケデリックヘヴィロックも存在する。ただ懐かしいだけではなくて、しっかりモダンな味付け/アレンジで現代のバンドだという主張も見え隠れする。70年代末にも90年代にも、あるいは2000年代にもあったような音かもしれないけど、これを上記のようなメンツで“本気の遊び”として2019年に鳴らすことに意味がある。そんな「今聴かずにいつ聴くの?」という1枚。可能な限りの爆音で楽しんでください。

 


▼THE DAMNED THINGS『HIGH CRIMES』
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2019年5月 7日 (火)

THE WiLDHEARTS『RENAISSANCE MEN』(2019)

2019年5月に発売されたTHE WiLDHEARTSの7thオリジナルアルバム。当初ファンクラブ限定でリリースされた『FISHING FOR LUCKIES』(1994年)、カバーアルバム『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE, VOL. 1』(2008年)を含むと、通算9枚目のスタジオアルバムということになります。

前作『¡CHUTZPAH!』(2009年)からほぼ10年ぶりという、奇跡的に実現した今回のリリース。メンバーもジンジャー(Vo, G)、C.J.(G, Vo)、リッチ(Dr)にオリジナルメンバーのダニー(B, Vo)が約16年ぶりに正式復帰(2005年に一度だけライブに参加)という、まさにクラシック・ラインナップと呼ぶにふさわしい編成となっています。ダニーのレコーディング参加はそれこそ2003年以来で、脱退直前のアルバム『THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED』(2003年)には参加していなかったので、アルバム制作にしっかり携わるとなると『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)以来22年ぶり(苦笑)。さらに、このラインナップでのレコーディングとなるとシングル「Caffeine Bomb」(1993年)以来なので26年ぶり……時空が歪みます(笑)。

さて、10年ぶりの新作。全10曲で38分強という濃厚な時間をリリース日から何度にも渡り体感し続けています。これ、最強じゃないでしょうか。90年代の“あの”時代を彷彿とさせつつも、2000年代以降の彼らの挑戦や前作での実験的試みもしっかり血肉になっている。しかもそれらが単なる焼き直しで終わることなく、2019年という時代で戦うことを前提として“新作”として構築されている。痒いところに手が届く、待ちに待った1枚という表現がぴったりなロックンロールアルバムだと断言できます。

音の厚みやゴージャスなサウンドエフェクトは前作『¡CHUTZPAH!』にも通ずるものがありますが、あそこまでデジタル色が強いわけではない。でも、しっかりとモダンなロックバンドの音としてちゃんと成立させることに成功しているし、そこにタフなバンドアレンジと甘美なメロディが乗る。そのメロディもいつになく冴えまくっているし、甘々なのにポップ過ぎないから後味も良い。正直、2000年代前半〜中盤あたりの楽曲は平均点から脱することができない、もしくは高い平均点になかなか達することができない楽曲ばかりでしたが、ここに収録されている楽曲群はその平均以上のものばかりで、ぶっちゃけ2000年代以降の作品の中では最高傑作ではないかと思うのです(次点で前作『¡CHUTZPAH!』かな)。

楽曲自体も非常にハードエッジで前のめりな楽曲が多く、ここ最近のジンジャーの参加作品の中でも一番彼のパブリックイメージに近いものばかり。しかも、パワーポップ的な作風のものもそのサウンドエフェクトのせいでかなりハードに聴こえる。なもんだから、パンキッシュな楽曲と並んでもテンションが落ちることがないし、楽曲のバリエーションはあるはずなのに統一感が強い。そうそう、THE WiLDHEARTSってこういうバンドだったよね!って膝を叩きたくなるぐらい、真っ当なほどにTHE WiLDHERTSしている。こんなアルバムをこのメンツで聴ける日が訪れるなんて、90年代後半には想像もしてなかったよ。

さあ、この最高の1枚を携えて6月末からは待望の来日公演も実現。ここ最近は定期的に来日してくれる彼らですが、新作を携えたライブとなると本当に……10数年ぶり? 今から楽しみでなりません。正直、定番の代表曲は聴き飽きたので(笑)、本作からの楽曲披露を心待ちにしております。今観るべき、いや、今観なければいけない重要なロックバンドの貴重なライブ、僕も万全を期して足を運びたいと思います。

 


▼THE WiLDHEARTS『RENAISSANCE MEN』
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2019年5月 6日 (月)

THERAPY?『SEMI-DETACHED』(1998)

1998年3月(日本では4月)に発売された、THERAPY?の4thフルアルバム。実験的な作風の前作『INFERNAL LOVE』(1995年)にチェロでゲスト参加していたマーティン・マッカリック(ex. SIOUXSIE AND THE BANSHEES)が、本作からギター&チェロで正式参加。新たに4人編成のバンドとして再スタートを切ることになりました。

プロデューサーは名作『TROUBLEGUM』(1994年)を手がけたクリス・シェルドンが再び担当。サウンドのタッチ的には同作ほど冷たさはないものの、『INFERNAL LOVE』で落胆したファンを再び納得させるだけの“あの”テイストは若干復調しているように思います。

が、オープニングを飾る「Church Of Noise」には当時誰もが驚いたのではないでしょうか。メロディの“ひねくれているけどキャッチー”なところは従来のTHERAPY?らしいのですが、全体的に能天気さが漂っている。電話のプッシュ音をフィーチャーしていたり、エンディングのオルガンの牧歌的な音あったりと、とても『TROUBLEGUM』や『INFERNAL LOVE』と作ったバンドと同じものとは思えないほど。2曲目「Tightrope Walker」の曲調や、中盤に登場するツインリードも然り、ですよね。

かと思えば、THE WiLDHEARTSを彷彿とさせる疾走感の強いパワーポップ「Lonely, Cryin', Only」があったりと、メジャーキーのインパクトが強い楽曲がいくつか含まれており、最初に聴いたときは面食らったことを今でもよく覚えています。で、それら2曲がシングルカットされているという事実。ブリットポップも終わり、パンキッシュなバンドもひと段落したこのタイミングに彼らがどこへ向かおうとしていたのか、不安を感じずじはいられませんでした。

とはいえ、それ以外の楽曲は従来のTHERAPY?らしさを踏襲している。「Black Eye, Purple Sky」や「Born Too Soon」のダーク&ヘヴィさは前作までの彼らのまんまだし、「Stay Happy」あたりからは90年前後のオルタナティヴロックやグランジからの影響が見え隠れする。ああ、基本的にやりたいことは変わってないんだな……とここでちょっとだけ安心するわけです。

思えば『TROUBLEGUM』にも「Nowhere」のようなキャッチーでポップな楽曲は含まれていましたし、その路線を別のテイストで表現したと思えば先のメジャー路線も納得できるんですけど、いかんせんインパクトが強すぎた(笑)。しかも推し曲としてシングル化するわけですから、「今後そっちで行きたいの?」と勘違いしてしまったわけです。ごめんよ、アンディ・ケアンズ(Vo, G)。

確かに、もうここには『NURSE』(1992年)までの尖りきった彼らは存在しないのかもしれません。けど、要所要所にその鋭さは残されている。要は表現の仕方や整理の仕方が上手になったということなのでしょう。そういう意味では、『NURSE』以前の彼らとも地続きでつながっていることが理解できる、そんな集大成的な1枚が本作なのかもしれませんね。

あ、本作は国内サブスクリプションサービスでは聴くことができません。日本盤は廃盤状態ですが中古ショップをこまめに回れば見つけることができるはずなので、ぜひチェックしてみてください。

 


▼THERAPY?『SEMI-DETACHED』
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2019年5月 5日 (日)

GUN『SWAGGER』(1994)

スコットランドのグラスゴー出身4人組バンド、GUNが1994年7月(日本では9月)にリリースした3rdアルバム。もともとは5人組編成で、A&M Recordsから『TAKING ON THE WORLD』(1989年)メジャーデビューを果たした彼らでしたが、2ndアルバム『GALLUS』(1992年)発表後にギタリストの1人が脱退し、ドラマーも交代。このアルバムから4人組バンドとして再出発しました。

プロデュースを手がけたのはクリス・シェルドン(THERAPY?THE ALMIGHTYTERRORVISIONFEEDERなど)。レーベル的にはTHERAPY?の『TROUBLEGUM』(1994年)を担当した経緯もあって、この組み合わせになったんでしょうかね。でも、すごくピッタリだと思います、ここで表現されている音に。

本作からはリードシングルとして、ファンクグループCAMEOが80年代半ばにヒットさせた「Word Up!」のカバーがヒット(全英8位)。アルバムもキャリア最高の全英5位まで上昇し、バンドにとっても代表作と言える1枚となりました。

「Word Up!」やオープニングトラック「Stand In Line」を聴けばなんとなく気づくと思いますが、ここで展開されているサウンドはハードロックをベースにファンクやヒップホップなど“跳ねた”ビートを取り入れたミクスチャーロック的なもの。時代的にレッチリの大ヒットなどもあって、こういう方向にシフトしていくハードロックバンドは当時少なくなかったと記憶していますが、そんな中で彼らはここでようやく“らしさ”や独特の個性を手に入れ、自信を得たのかもしれません(といってもこのバンドの場合、その後も作品ごとにサウンド的な変遷を繰り返すことになるのですが)。

もちろん、前作までにあったストレートなビートに湿り気のある英国らしいメロディが乗った「Don't Say It's Over」(全英19位)や、トラディショナルな空気感を持つ「The Only One」(同29位)のような楽曲も健在。かと思えば、どストレートにラップメタルにトライした「Something Worthwhile」やグルーヴィーながらもポップさが保たれた「Seems Like I'm Losing You」のような楽曲も含まれていて、微笑ましいといいますか。うん、この不器用さ、嫌いじゃないです。

好きなことを全部やっているだけという点においては、決して器用なバンドとは言えないかもしれません。が、それらが1枚のアルバムに並んだときにちぐはぐさを生み出すことなく自然と統一感を生み出している。これこそが先に記した“らしさ”や独特の個性なんじゃないでしょうか。

ミクスチャーロックと言い切ってしまうにはわかりやすいし、HR/HMの枠で括ろうとすると散漫すぎる。1994年というあの時代の空気感がそのままパッケージされた本作は、実は当時を語る上で欠かせない良作ではないかと思っています。

 


▼GUN『SWAGGER』
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2019年5月 4日 (土)

ドント・ブリーズ(2016)

あらすじ
ティーンネイジャーのロッキーは生活能力が全くない両親のもとから幼い妹を連れて逃げるための逃走資金を必要としていた。そんな時、恋人のマニーから、地下室に大金を隠しているとの噂される盲目の老人宅へ友人のアレックスと3人で強盗に入る計画を持ちかけられる。真夜中にそこへ忍び込み、孤独な盲目の老人から大金を手に入れるのはいとも簡単なはずだったが…。
そこにいたのは目は見えないが、どんな“音”も聞き逃さない超人的な聴覚を持つ老人…。そして想像を絶する<異常者>だった。寝室、キッチン、屋根裏、クローゼット、バスルーム…どこに逃げようが、ヤツは“音”を聞きつけものすごいスピードでやってくる。家中の明かりを消され、逆にハンディキャップを与えられ、逃げ道を失った彼らだったが、なんとか老人に見つからず地下室までたどりつく。
そこで目にしたものはあまりにも衝撃的な光景。ロッキーの悲鳴が鳴り響く…。彼らはここから無傷で出られるのか…。

制作:サム・ライミ、監督:フェデ・アルバレスというリメイク版『死霊のはらわた』(2013年)コンビによるスリラー系ホラー映画。死人が生き返ったり死霊が襲いかかったり、死体がバラバラになったりなどのスプラッター表現ゼロ。しかも、登場人物はすべて悪人で誰ひとり共感できないという、なんともな作品。

盲目で聴覚・嗅覚が健常者よりも敏感な退役軍人の爺 vs ロクでもない不良3人(うち1人女性)と、ホラー映画としてはちょっと登場人物が“弱い”ものの、それでも約90分最後まで集中して観られたので、作品としてはかなり面白いほうじゃないかと。

まあとにかく、見どころはいかに老人に気づかれずに、犯人(1人は瞬殺されたので男女2人)がゲットした大金を持って家から脱出するか。最初こそ明かりがついていたのに、途中で消されてしまい健常者の犯人側にも老人と同じハンディキャップが与えられる。暗視カメラを使った映像は生々しいものがあり、ここはかなりドキドキしながら楽しみました。

にしても、老人の隠された性癖(性癖なんですかね?)が明かされてからの展開が、ちょっとだけ興ざめといいますか……全然入り込めなかった。そもそもその◯◯、ちゃんと機能するのかね?という疑問もありましたし(苦笑)。あと、老人はある意味では被害者なのですが(強盗に入られる以前に、事故で娘を失っている)、そこを差し引いても◯◯を監禁していたりするのでプラマイゼロ、いやマイナスじゃん!と思うわけですどね。

と、中盤にテンションが落ちたものの、終盤にかけて老人&犬からの脱出劇はとてもスリリングで、ラストに追われる不安を残したまま、まだまだ恐怖は終わらない……というエンディングは素晴らしかったと思います。

ただ、最初に書いたように、登場する主要人物4人が誰ひとり善人ではないこと、観る側として感情移入できないこともあって、ホラーとしては良作ながらも映画としてはあまり“残らない”1本かなと。単純に「面白かった!」で済ませられたらよかったんだけど。

たぶんホラー映画って基本、主人公が不条理な状況下で異常者(ゾンビなり死霊なり)に追われ、「いきなり訪れる恐怖」と立ち向かう姿に自分を重ねてドキドキしながら楽しむことが多いと思うんです。だから、主人公は一般的に気が弱かったり人より劣るところがあるのに、最後は知恵を振り絞ったり火事場の馬鹿力を発揮したりして相手に打ち勝つ、その姿に共感したり(共感?)自分を重ねたりするんでしょうけど……まあこの作品のような主人公というのも、現代アメリカ的なのかな。そういった意味では、日本人の我々にはちょっと共感しにくいものがあるのかも。

(*70点)

 


▼ドント・ブリーズ
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THUNDER『THE MAGNIFICENT SEVENTH!』(2005)

2005年2月(日本では3月)にリリースされたTHUNDER通算7作目のオリジナルアルバム。前作『SHOOTING AT THE SUN』(2003年)の時点では期間限定復活ぐらいの軽い気持ちで復活した彼らでしたが、その後バンドは活動を継続することを決意。その結果、前作はオンラインでの販売だったところ(日本ではビクターから通常販売)、今作は通常のインディーズレーベルを通してリリースされ、全英70位にランクイン。先行カットされたシングル「I Love You More Than Rock n' Rol」も最高27位まで上昇し、全盛期に迫る勢いのヒットとなりました。

前作では地味さ、おとなしさが印象に残り、まだまだバンドとしてはリハビリ状態なのかな?と思わずにはいられませんでしたが、今作ではそんな不安を払拭。往年の“らしさ”に加え、大人になったロックバンドの色気が感じられる聴き応えのある1枚に仕上がっています。

オープニングを飾るシングル曲「I Love You More Than Rock n' Rol」は非常にシンプルなロックンロールナンバーですが、これが不思議とクセになる。日本人があまり好みそうにないタイプの楽曲ですが、こういう曲って欧米では異常にウケがいいんですよね。結果、現在までセットリストのクライマックスに組み込まれることが多い、再結成後の彼らを代表する1曲になっています。

かと思えば、どこかMETALLICA「Enter Sandman」を彷彿とさせるヘヴィな「The Gods Of Love」があったり、往年のTHUNDERらしさを踏襲した「Monkey See, Monkey Do」や「I'm Dreaming Again」「Amy's On The Run」があったりと、序盤から濃厚な仕上がり。特に「The Gods Of Love」はリフやアレンジこそ先述の空気感がありますが、楽曲のメロディや運び方は『BEHIND CLOSED DOORS』(1995年)あたりのヘヴィでエモーショナルな楽曲と共通するものも多い。つまり、時代がヘヴィさを求めるから取ってつけたというわけではなく、こういったカラーも彼らの持ち味のひとつなのです。

そういう意味では、本作では決して新たな挑戦が詰まった1枚というわけではありません。むしろ、これまでに発表してきた諸作品を現在の技術と感性で再構築した、と言ったほうが正しい内容かもしれません。

ダニー・ボウズ(Vo)も必要以上に張り上げて歌うことはないし、ルーク・モーリー(G)のギターも派手に弾きまくることはない。だって、楽曲がそういう演出を求めていないんだから。そういった点においては前作同様に地味な印象も拭えないのですが、完成度は前作の数倍以上。むしろ、リスナーが「これが聴きたかった!」と断言できる内容の、“いかにも”な1枚ではないでしょうか。

クラシックロック、ルーツロックとかいろいろ言い方はあると思いますが、古き良き時代のロックンロール、ハードロックを2005年という時代に正しい形で表現した、いかにも英国らしいロックアルバムです。

 


▼THUNDER『THE MAGNIFICENT SEVENTH!』
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2019年5月 3日 (金)

WHITESNAKE『FOREVERMORE』(2011)

2011年3月にリリースされた、WHITESNAKE通算11作目のスタジオアルバム。前作『GOOD TO BE BAD』(2008年)が全英7位/全米62位という当時としてはまずまずの数字を残しましたが、今作は全英33位/全米49位という良いのか悪いのか微妙な結果に。本国では数字を一気に落としていますが、アメリカでは若干上げている。枚数的には僅差といったところなんじゃないでしょうか。

レコーディングにはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)ダグ・アルドリッチ(G)、レブ・ビーチ(G)のほか、新加入のマイケル・デヴィン(B)、ブライアン・ティッシー(Dr)が参加。前作では正規メンバー扱いだったティモシー・ドゥルーリー(Key)はサポート扱いで記されています。

どの曲もデヴィッド&ダグによるものという点は前作と変わらず。ライブアルバム『LIVE... IN THE SHADOWN OF THE BLUES』(2006年)に収録された新曲4曲を含めれば、本作で3度目のコラボレーションということになり、さすがに2人の関係性も板についてきたのでしょうか、前作以上にリラックスした雰囲気が各曲から伝わってきます。

オープニングを飾る「Steal Your Heart Away」にしろシングルカットされた「Love Will Set You Free」にしろエネルギッシュさみなぎるハードロックですが、前作よりも力み過ぎていない、むしろ自然体で鳴らされているような感触があります。「I Need You (Shine A Light)」のようなロックチューンはまさにその象徴的1曲と言えるのではないでしょうか。

特にこういった傾向は「Easier Said Than Done」や「One Of These Days」「Fare Thee Well」のようなミディアム/スローナンバーに顕著で、前作における「All For Love」や「Summer Rain」の延長線上にありながらも、より練り込まれた印象を受けます。高音が厳しくなったデヴィッドにあわせてダウンチューニングした結果、こういったミディアムナンバーのトーンが落ち着いたものになった。そこは結果オーライなのかな。

全体的にもミディアムテンポの楽曲が中心なのですが、そんな中で突然飛び込んでくる「Dogs In The Street」や「My Evil Ways」のようなアップチューンが良いアクセントになっている。80年代後半のスタイルをベースにしつつも、どこか80年代初頭の初期WHITESNAKEの香りもほのかに感じられる。前作で10枚目という節目を迎え、ここでもう一度原点回帰……というのは言い過ぎかもしれませんが、改めてWHITESNAKEというバンドの在り方を見つめ直した。なんて解釈するのは過大評価でしょうか?

全13曲で60分超えというボリュームは前作同様で、正直長すぎるなあと思ってしまうし、前作同様「これ!」という1曲がないという点においては減点対象になってしまいますが、個人的には前作よりも印象が良いんですよね。確実に「平均点やB+」以上の完成度を誇る楽曲群が並ぶ1枚だと思います。

 


▼WHITESNAKE『FOREVERMORE』
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2019年5月 2日 (木)

EUROPE『SECRET SOCIETY』(2006)

2006年10月(日本では11月)にリリースされた、EUROPE通算7作目のオリジナルアルバム。前作『START FROM THE DARK』(2004年)で本格的再始動を果たした彼らの、再結成後2作目のスタジオ作品となります。

前作では大ヒット作『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)を手がけたケヴィン・エルソンをプロデューサーに迎えたものの、そのサウンドは『THE FINAL COUNTDOWN』とはまったく異なる、80年代中期のDEEP PURPLEを彷彿とさせるミドルテンポ中心のヘヴィな作風でした。ジョン・ノーラム(G)のやりたいようにやらせすぎ!などいろんな声がありましたが、ソングライティングでジョンが絡んでいるのって半分くらいで、むしろ彼ひとりがどうこうじゃなくて、「ジョーイ・テンペスト(Vo)の今の声域に合わせた曲作り」「もはや大ヒットを狙うのではなく5人の趣味、やりたいことに素直になる」などの結果だったのだと思うのです。

そんな賛否両論あった復帰作から2年。正真正銘の勝負作となるこのアルバムではバンドがセルフプロデュースを担当。作風的には前作の延長線上にあるものの、アップテンポの楽曲が一気に増えたことでアルバムとしてもスムーズでまとまりがあるように感じられます。

また、メロディセンスも前作より際立つものが多く、オープニングを飾る新機軸ナンバー「Secret Society」やシングルカットもされた「Always The Pretenders」、ミドルテンポの「Wish I Could Believe」、ピアノやストリングスをフィーチャーした泣きメロパワーバラード「A Mother's Son」、往年のポップさにも通ずる「Forever Traveling」など聴きどころも多く、前作の汚名返上は果たせたのではないかと思います。

個人的にも、どこかRUSHを思わせる「Secret Society」を初めて聴いた時点で「お、ついに次のフェーズに入ったか!」と前向きに捉えられたし、むしろこのバンドに「The Final Countdown」(楽曲のほう)や2ndアルバム『WINGS OF TOMORROW』(1984年)の幻影を追うのは酷なのではと思ったのでした。つまり、「彼らが再結成してまでやりたいことって何なのだろう?」って素直に知りたくなったのです。

だから、続く8thアルバム『LAST LOOK AT EDEN』(2009年)に初めて触れたときは「新しい全盛期がくる!」と確信したのですが……。

新作が出るたび、いまだにそういった80年代の幻影と追い求め、比較して貶すこと、そろそろやめません? 過去との比較と決別し、作品単位で向き合ってみてはどうでしょうか。そこで初めて見えてくるもの、このバンドにはたくさんあるはずなので。これはその取っ掛かりに最適な1枚だと思います。

 


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2019年5月 1日 (水)

TESTAMENT『THE NEW ORDER』(1988)

1988年5月(日本では6月)に発売されたTESTAMENTの2ndアルバム。本国アメリカでは初めてBillboard 200入り(最高136位)した記念すべき1枚であり、バンドの代表作として本作を挙げるリスナーも少なくないようです。

デビューアルバム『THE LEGACY』(1987年)は初期シンガーのスティーヴ“ゼトロ”スーザ(TESTAMENTの前進バンドLEGACY在籍。脱退後、EXODUSに加入)在籍時に制作された楽曲が大半を占めており、チャック・ビリー(Vo)が制作に携わった楽曲は1曲のみ(「Do Or Die」で共作)でしたが、今作では全10曲中6曲の作詞に参加。10曲中2曲がインスト、1曲はカバーなので、ほぼすべての楽曲に携わっていると言っていいでしょう。

また、そういったチャックの個性が大いに反映された歌詞は、それ以前のステレオタイプなメタルソング(悪魔だなんだという古典的なもの)とは異なり当時の社会情勢など現実社会に目を向けたものが多く、本作では核戦争後の世界が描かれており、ある種のコンセプトアルバム的な作風となっています。

またサウンド面でも、リードギターのアレックス・スコルニック(G)のメロディアスかつテクニカルなソロプレイも本作から開花し始め、アコースティックギターやメランコリックなソロプレイを効果的に用いたイントロダクションや静と動を巧みに使い分けたアレンジは特筆に値するものがあります。そういった個性的な要素をヘヴィなギターリフとリズムに絡ませることでTESTAMENTらしさを作り上げることに成功し、歌詞の面含めて以降のTESTAMENTのカラーが本作にて確立され始めます。

まあ、とにかく冒頭の「Eerie Inhabitants」から適度なドラマチックさを兼ね備えた楽曲の数々は、スラッシュメタルの一言で片付けるには勿体ないほどの完成度を誇るものばかり。「Trial By Fire」や「Into The Pit」「Disciples Of The Watch」「The Preacher」など、その後の彼らのライブには欠かせない代表曲の数々が収録されているという点でも、次作『PRACTICE WHAT YOU PREACH』(1989年)とあわせて最初に聴くべき入門編アルバムと言えるでしょう。

そして、先に記したように本作にはカバー曲も収録。それがAEROSMITHの代表作『ROCKS』(1976年)収録のヘヴィナンバー「Nobody's Fault」というのも興味深いところ。スラッシュメタルバンドがAEROSMITH? しかもこの曲?と当時は驚いたものですが、これがまたアルバムの流れに合っているんですよね。

今でも「Trial By Fire」や「Disciples Of The Watch」「The Preacher」あたりを聴くと、そのイントロだけで滾るものがあるし、30年という歳月を経てもなお魅力の尽きないヘヴィメタルアルバムのひとつです。

 


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