HELMET『BETTY』(1994)
1994年6月に発表された、HELMETの3rdアルバム(メジャーのInterscope Recordsからの新作としては、1992年の『MEANTIME』に次ぐ2作目)。「Milquetoast」などのラジオヒットを受け、チャート的には前作の68位を上回る全米45位まで上昇し、イギリスでも最高38位と初ランクインを果たしました。
前作では1曲のみスティーヴ・アルビニが携わり、全体のミックスをアンディ・ウォレスという時の人が手がけましたが、今作ではトッド・レイ(ジャック・ジョンソン、HOUSE OF PAIN、BEASTIE BOYSなど)とブッチ・ヴィグ(NIRVANA、THE SMASHING PUMPKINS、GARBAGEなど)がプロデュース、アンディ・ウォレスがミックスを担当しています。
前作ほどの残虐さや過剰さは薄れましたが、緻密なバンドアンサンブルと整理されたサウンドからはじんわりと狂気が感じられるものに仕上がっている印象を受けます。ジョン・ステニアー(Dr)のドラミングは相変わらず数学的でひたすらカッコいいのですが、前作で聴けたカンカンしたスネアサウンドは若干抑え気味。ミックスのせいもあるのでしょうけど、そこだけが残念でなりません。しかし、そのぶんペイジ・ハミルトン(Vo, G)&ロブ・エチェベリア(G)のストリングス隊とのバランスも良く、アルバムの完成度としては過去イチではないかと思います。
ペイジ・ハミルトンのボーカルも前作で聴けたシャウトに近いスタイルは減退し、落ち着いたトーンで淡々と歌うことでクールさと同時に狂気性を感じさせるものへと昇華。シングルカットもされた「Milquetoast」での淡々と歌う中、演奏がどんどん熱を帯びていくアレンジは圧巻モノです。
かと思えば、抑え気味に叫ぶ「Tic」で感じられるコントロール感、「Rollo」でのグルーヴ、「Street Crab」や「Clean」での引き摺るようなヘヴィなリズム、ジャジーなギタープレイから突如ノイジーなインプロヴィゼーションへと変化するインスト「Beautiful Love」(ジャズのスタンダードをカバーしたもの)、ヒップホップからの影響が強い「The Silver Hawaiian」、脱力感ハンパないオルタナブルース「Sam Hell」などバラエティに富んだ楽曲が満載。ここでペイジ・ハミルトンのアーティスト性が一気に開花し、バンドとしての個性も確立されることになったわけです。
初期衝動性の強いインディー盤『STRAP IT ON』(1990)や衝撃のデビュー作『MEANTIME』を良しとするリスナーからは、本作で試みた実験は快く思われていないようですが、HELMETというバンドの極みは本作にあると個人的には考えています。1994年というロックにおける重要な年にリリースされたという点において、決して欠かすことができない必聴盤ではないでしょうか。
▼HELMET『BETTY』
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