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2019年6月18日 (火)

THE QUIREBOYS『AMAZING DISGRACE』(2019)

2019年4月にリリースされたTHE QUIREBOYSの11thアルバム(リアレンジアルバム『HALFPENNY DANCER』を含めると12作目)。2010年代に入ってからほぼ1〜2年に1枚ペースで順調に作品を重ねる彼らですが、本作も前作『WHITE TRASH BLUES』(2017年)から約1年半ぶりの新作となります(といっても、前作はブルースカバーアルバムだったので、純粋なオリジナル作品としては2016年の『TWISTED LOVE』以来2年半ぶり)。

デビュー時のオリジナルメンバーはスパイク(Vo)とガイ・グリフィン(G)しか残っていませんが、やっていることは基本的にまったく変わっていません。『A BIT OF WHAT YOU FANCY』(1990年)を筆頭にメジャーからリリースした初期2作にあった硬質なハードロック的側面は完全に払拭され、ブルースやソウルをベースにした、肩の力抜けまくりのロックンロールが本作でも展開されています。

2014年にリズム隊が交代して以来、5年近くにわたり同じメンバーで活動していることもあり、バンドの安定感はバッチリ。大半の曲でゴスペル調の女性コーラスをフィーチャーしており、無駄にゴージャスさだけはあります(笑)。

もともとスパイクの歌声はしゃがれまくっているので、デビューから30年近く経った最新作を聴いても衰えが一切感じられない。キー自体は若干下がっているんだろうけど、それを感じさせないだけの存在感と凄みが同居しており、気楽に聴き始めたつもりがついつい引き込まれてしまう。なんだろう、この魅力は。

ストーンズやSMALL FACES、あるいはロッド・スチュワートや彼が在籍したFACESのように、R&Bやソウル、ブルースをルーツに持つブリティッシュ・ロックは1960年代から現在に到るまで、いくつかのビッグネームを除いては数えきれないほど生まれては消えていきました。きっと90年代半ば頃のTHE QUIREBOYSもその“生まれては消えて”側だったはずなんです。

しかし、2000年代に復活して以降の彼らはそのルーツ感を完璧に自分たちのモノにして、気づけば誰にも真似できない域にまで達していた。

そうなんですよ、ここで表現されているサウンドや楽曲って簡単に真似できそうで、実はオリジナリティが確立された非常に真似の難しいものなんですよね。特にこのアルバムで鳴らされているサウンド/楽曲は、普遍性が強くて「どこかで聴いたことがあるようなもの」ばかり。でも、それが誰々のパクリと指摘できるほど明確なものではなく、イメージ的に「◯◯っぽい」けど実はこのバンドならではのオリジナルにまで昇華されている。ただ地味で渋いだけじゃなくて、その中身はものすごく高度なものだと、何度も繰り返し聴いているうちに気づかされました。おそるべし。

こういう、どんなタイミングでも気楽に楽しめる作品ほど実は計算されまくっている。あるいはド天然だからこそ生まれた偶然の産物かもしれない……前者だと信じたいけど(笑)、とにかく時代を超越した素晴らしいルーツロックアルバムです。

 


▼THE QUIREBOYS『AMAZING DISGRACE』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

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