PERIPHERY『PERIPHERY IV: HAIL STAN』(2019)
海外では2019年4月初頭に、日本では同年5月下旬にリリースされたPERIPHERYの6thアルバム。前作『PERIPHERY III: SELECT DIFFICULTY』(2016年)から3年ぶりの新作にあたる本作は、これまで在籍したSumerian Recordsから離脱し、新たに設立されたプライベートレーベル3DOT Recordingsからの第1弾リリースとなります。そういったことも影響してなのか(プロモーション的に)、アメリカではここ数作20位台をキープしていましたが、今作は最高64位という成績。ただ、イギリスでは過去最高の23位という数字を残しており、チャートの順位だけでは測りきれないものがあるかと。
2012年から在籍したアダム・ゲットグット(B)が2017年に脱退したものの、本作のプロデュースおよびレコーディングメンバーとしてアルバムには参加しているので、関係は脱退後も良好なようです。
さて、気になる内容ですが……いきなり17分近い大作「Reptile」で幕開け。ジェント的なアレンジこそ至るところに散りばめられていますが、完全にプログレッシヴメタルですよね。まあ、ジャンル分けとか細かいことは特に気にすることないと思います。エピックと呼ぶにふさわしいこのドラマチックで圧倒的な楽曲を乗り越えた先には、前作にも通ずるブルータルなモダンメタルチューンが待ち受けているのですから。
序盤こそ初期の彼らに備わっていたキャッチーさが薄くなったかな?と心配になり、若干聴き手を選びそうな気がしないでもないですが、アンセミックな「It's Only Smiles」やドラマチックな「Crush」や叙情的な大作「Satellites」など、中盤以降は従来の“らしさ”も強く感じさせるナンバーも多数存在。そういった楽曲群のメロディアスさに関しては、正直前作以上ではないかと思っています。
なにやら本作は、過去のアルバムと比べて過去最長となる1年をかけてレコーディングに取り組んだという意欲作とのこと。視点を変えれば、それだけ難産だったのかな……と受け取ることもできなくはないですが、メンバー脱退などを経てバンドがこの6作目のアルバムで何を表現したかったのか、何を証明したかったのか。
もちろん至るところで(本人たちが望む/望まないは別として、このジャンルの立役者としてあえて言いますが)ジェントらしいフレーズやアレンジを効果的に用いていますが、それだけではない普遍性とモダンなポップスにも通ずる要素も感じられます。そして、そういった要素が絶妙なバランスで混在することで、もはやジェントなんて狭い括りは必要ないと断言できるほどの独自性の高さを手に入れた。その結果、バンドとしては確実に一段高いステージへと到達した……そういった事実を見事に証明する、濃厚な大作だと思います。
▼PERIPHERY『PERIPHERY IV: HAIL STAN』
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