DUFF McKAGAN『TENDERNESS』(2019)
GUNS N' ROSESのベーシスト、ダフ・マッケイガンが2019年5月末に発表したソロアルバム。ソロ作品としてはDUFF McKAGAN'S LOADEDでの『THE TAKING』(2011年)から8年ぶり、ソロ名義では『BELIEVE IN ME』(1993年)以来実に26年ぶりのアルバムとなります(本来、1999年に『BEAUTIFUL DISEASE』というアルバムを完成させリリース予定でしたが、レーベルとのトラブルで現在まで未発表。なので、ここでは本作『TENDERNESS』をソロ2ndアルバムと記載します)。
55歳になったダフが2019年の今鳴らすのは、ハードロックでもパンクロックでもなく、アコースティックベースのアーシーでレイドバックしたカントリーロック。オルタナ・カントリー界の鬼才シューター・ジェニングスをプロデューサーに迎え、彼のバンドメンバーとともにスタジオ入りして制作した今作は、これまでのダフのイメージからすると非常に“枯れ”まくった1枚と言えます。
本作のテーマは「GUNS N' ROSESの2年半に亘るワールドツアーの間に遭遇した悲痛な思い、怒り、恐怖、混乱など」だそうで、そういった感情がスロー/ミディアムテンポのスカスカなサウンドとともに展開されているのですが、ダフがあの“男気に溢れた味のある声”で歌うことで完全に自身の世界観へと昇華させてしまう。その説得力はさすがの一言です。
ある意味でロック/パンクを体現してきた男が、80〜90年代に一時代を築き上げたメガヒットバンドの一員として再び世界中を周り、そこで目にしてきた現状は決して喜ばしいものではなかった。そういった負の感情がダフを音楽制作/表現へと向かわせた……そういった意味では、今作もまた彼にとって(音楽的にではなく、生き方/スタイルという意味での)パンクロック作品なのかもしれません。
そして、そういった負の感情が気づけばポジティブなものへと昇華された。ここで鳴らされている楽曲や綴られている言葉の数々は、すべてがマイナスなものではありません。そういった負の感情の中から幸福や平和を導き出そう、つなげていこうとする姿勢がところどころから感じられるのです。これこそが、ダフ・マッケイガンという男の心意気といいますか、我々が彼のことを愛してやまない理由でもあるわけです。
決して刺激的ではないし、ガンズのハードコア・ファンからはヌルいと言われてしまうかもしれない。しかし、こんなにもエモーショナルなアルバムは過去のダフの作品には存在しなかった……それを今このご時世にこういう形で世に送り出す、その姿勢に心打たれるし、嘘がないと信用できる。何度でも何時間でも、ずっと聴いていられる心の安定剤的な1枚です。
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