AC/DC『BLACK ICE』(2008)
2008年10月にリリースされた、AC/DC通算14枚目(オーストラリア国内では15枚目)のオリジナルアルバム。前作『STIFF UPPER LIP』(2000年)から約8年半という全キャリアの中でもっとも長いスパンを経て発表された本作は、アメリカでは『FOR THOSE ABOUT TO ROCK WE SALUTE YOU』(1981年)以来実に27年ぶりの1位を獲得。そのほかにも本国オーストラリアやイギリス、カナダ、フランスなど29カ国で1位に輝いた、(現時点での)2000年代を代表する1枚です。
プロデューサーに初めてブレンダン・オブライエン(AEROSMITH、PEARL JAM、RAGE AGAINST THE MACHINEなど)を迎えて制作した本作は、全15曲で約56分とオリジナルアルバムとしては過去最長。じゃあ聴くのが大変かといいますと、まったくそんなことはなく、どの曲も3〜4分台で相変わらずのAC/DC節が終始貫かれており、カッコいいロックンロールがぎっしり凝縮された濃厚な作品集と言えます。
正直、ブライアン・ジョンソン(Vo)、アンガス・ヤング(G)、マルコム・ヤング(G)、クリフ・ウィリアムズ(B)、フィル・ラッド(Dr)という黄金期が復活して以降の2枚……『BALLBREAKER』(1995年)と『STIFF UPPER LIP』は「悪くはないけど、最高とまでは言い切れない」彼らにしては並な作品でした。いや、どれも“らしい”作風なんだけど、音源だけじゃ理解しきれない、ライブを体験しないとキツいかな……と思えてくるような“若干地味”なものばかりだったんですよね(だからこそ、『STIFF UPPER LIP』は来日公演をようやく目にすることができて、印象が少し良くなったわけですが)。
で、それと比べて今回の『BLACK ICE』はといいますと、全体的に軽やかさやキャッチーさが増しているように感じられました。『THE RAZORS EDGE』(1990年)みたいにどキャッチーではないですが、それでも同作に匹敵する“わかりやすさ”が備わっている。アップテンポの曲が1曲もなくったって、ここまでやれるんだぞ?という気概も感じられるし、ミドルテンポの中にも多少の上下を付けて変化を与えている。
聴く人が聴けばマンネリの一言で片付けられてしまうかもしれない。それはもう仕方ない、その人にとってAC/DCというバンドの本質がまったく必要としないものなのでしょう。けど、ロックンロールが好きで、AC/DCというバンドに多少なりとも魅力を感じたことがあるリスナーなら、このアルバムって最初から最後まで気持ちよく楽しめるものなんじゃないでしょうか。それこそオープニングの「Rock N Roll Train」のキャッチーさから、エンディングを飾るタイトルトラック「Black Ice」のヘヴィさまで、ノリノリでね。
思えば、本作を携えたさいたまスーパーアリーナ公演(2010年3月)が現時点で最後の来日なんですよね。あの巨大な機関車が登場する「Rock N Roll Train」でのオープニング、懐かしいなあ……。
黄金期ラインナップによる最後のオリジナル作品、そして同ラインナップでの最後の来日。いろいろ感慨深い記憶を残す1枚です。
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