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2019年6月25日 (火)

U2『THE UNFORGETTABLE FIRE』(1984)

1984年10月にリリースされた、U2通算4作目のスタジオアルバム。前作『WAR』(1983年)から1年7ヶ月ぶりの新作ですが、その間にライブアルバム『UNDER A BLOOD RED SKY』(1983年)があったりと、本格的なアメリカ進出に向け何かと活動が活発なタイミングでのリリースとなりました。実際、今作からは「Pride (In The Name Of Love)」(全英3位/全米33位)、「The Unforgettable Fire」(全英6位)というヒットが生まれ、アルバム自体も前作と同じく全英1位/全米12位という記録を残しています。

過去3作を手がけたスティーヴ・リリーホワイトから一転、本作ではプロデューサーにブライアン・イーノとダニエル・ラノワを迎えて制作。この変更が功を奏し、サウンド的にはもちろんのこと、楽曲面にも新たな可能性を感じさせるものを生み出すことに成功しました。

初期3作は青臭さと前のめりな熱量が大きな武器でしたが、本作では一歩引いたところから物事を俯瞰で眺めているような、そんな大人になったU2の姿がニューウェイヴ以降のサウンドプロダクションを用いて表現されている……なんて書いたら大げさでしょうか?

ボノ(Vo)の歌の強さ、熱さは相変わらずですが、それでも以前ほど叫ぼうとせず、むしろ歌い上げる程度に収めて感情を強く出しすぎないようにしている。そんな印象を受けます。例えば「A Sort Of Homecoming」や「The Unforgettable Fire」での歌唱はまさにこれに当てはまるんじゃないかなと。鋭さや怒りが目立った『WAR』までの作風と異なり、ここでは優しさや包容力が色濃く表れているように感じます。

もちろん、それもこれも『WAR』での成功があったからこそ。その経験をベースに、「Pride (In The Name Of Love)」では高らかに歌い上げ、「Wire」や「Indian Summer Sky」では『WAR』までの攻撃性を見せながらもどこか落ち落ち着き払っている。「Bad」や「Elvis Presley And America」のような長尺曲では、まるで物語を伝える語り部のように歌でストーリーを聴かせていく。こういった楽曲は過去3作にはなかったタイプであり、と同時に以降の彼らのスタイルにおける重要な雛形となった欠かすことができないナンバーでもある。こういった実験が、続くメガヒット作『THE JOSHUA TREE』(1987年)へとつながるわけです。

メンバーがシカゴで目にした、広島・長崎への原爆投下から生き延びた被害者が描いた絵。そのタイトルが本作のアルバムタイトルのもとになっています。ビリビリ響く『WAR』と有無を言わさぬ傑作『THE JOSHUA TREE』に挟まれ、若干地味な印象を与えてしまう本作ですが、何気にクセになる楽曲が多いんですよね。個人的にも中学生の頃に聴きまくった、大切な1枚です。

 


▼U2『THE UNFORGETTABLE FIRE』
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