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2019年8月

2019年8月31日 (土)

2019年4月〜6月のアクセスランキング

ココログリニューアルを受け、この春から3ヶ月区切りで公開中の記事から上位30エントリーをまとめてみました。トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどは省いておりますので、まだ読んでいない記事などありましたら、よろしければ参考にしていただけたらと。

ちなみに、記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記ですが、前者は記事初出日、後者は前回2019年1〜3月のアクセスランキングの順位になります。ご参考まで。

 

1位:VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)(※2017年3月24日更新/↑4位)

2位:浜田麻里 The 35th Anniversary Tour Gracia@日本武道館(2019年4月19日)(※2019年4月22日更新)

3位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN』(1984)(※2017年3月2日更新/↑18位)

4位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新)

5位:DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』(2019)(※2019年5月13日更新)

6位:SLAYER『REIGN IN BLOOD』(1986)(※2018年3月8日更新)

7位:RED HOT CHILI PEPPERS『ONE HOT MINUTE』(1995)(※2017年7月21日更新/↑30位)

8位:KISS『CRAZY NIGHTS』(1987)(※2017年3月12日更新)

9位:EUROPE『WALK THE EARTH』(2017)(※2017年10月28日更新)

10位:BLACK VEIL BRIDES『VALE』(2018)(※2018年2月4日更新)

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2019年8月のお仕事

2019年8月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※8月30日更新)

 

[紙] 8月30日発売「月刊エンタメ」2019年10月号にて、乃木坂46中田花奈&新内眞衣インタビュー、星野みなみ×金川紗耶×田村真佑インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 8月29日発売「VOICE BRODY」vol.5にて、渕上舞インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 8月25日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載「Russian Circles、Volbeat、Sacred Reich……西廣智一が選ぶ注目すべきHR/HM新作5作」が公開されました。

[WEB] 8月19日、「リアルサウンド」にてTHE SIXTH LIEインタビュー「THE SIXTH LIEが語る、『とある科学の一方通行』OP曲や海外公演が広げたバンドの可能性」が公開されました。

[WEB] 8月17日、「ドワンゴジェイピーnews」にてレポート記事「I乃木坂46賀喜遥香 新曲ひとりキャンペーン、愛知を奔走」が公開されました。その他の媒体でも同様の記事が公開中です。

[WEB] 8月12日、「リアルサウンド」にてINORANインタビュー「INORANが語る、“まだ見ていないもの”に向かう姿勢「音楽の力の信じて生き勝る」」が公開されました。

[WEB] 8月7日、「ドワンゴジェイピーnews」にてレポート記事「乃木坂46 4期生・賀喜遥香が“ひとりキャンペーン”をスタート「ズッキュン!」実演に大歓声」が公開されました。その他の媒体でも同様の記事が公開中です。

[紙] 8月7日発売「ヘドバン Vol.23」にて、BABYMETAL「PA PA YA!!(feat. F.HERO)」クロス・レビュー、人間椅子『新青年』クロス・レビュー、BARONESS『Gold & Grey』クロス・レビュー、新作ディスクレビュー(Boris『tears e.p』、LOVEBITES『DAUGHTERS OF THE DAWN - LIVE IN TOKYO 2019』、MANOWAR『The Final Battle I』、THY ART IS MURDER『Human Target』)を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 8月7日発売「別冊カドカワ 総力特集 欅坂46 20190807」にて、「欅共和国2019」初日レポート&メンバーコメント(菅井友香、藤吉夏鈴、田村保乃、小林由依)、守屋茜インタビュー、「MY BEST HITS」齋藤冬優花インタビュー、「欅坂46 こちら有楽町 星空放送局」収録レポート、欅坂46二期生合同インタビュー&メンバー30問30答(武元唯衣、田村保乃、藤吉夏鈴、森田ひかる)を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 8月3日発売「日経エンタテインメント!」2019年9月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆しました。(Amazon

[WEB] 8月2日、Maison book girlオフィシャルサイトにてニューシングル「umbla」オフィシャルインタビューが公開されました。

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また、7月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、Apple Musicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1907号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

FEEDER『TALLULAH』(2019)

2019年8月上旬にリリースされた、FEEDER通算10作目のオリジナルアルバム。

新作としては『ALL BRIGHT ELECTRIC』(2016年)以来ほぼ3年ぶりとなるのですが、実は日本未発売のベストアルバム『THE BEST OF FEEDER』のデラックス盤(CD3枚組)には『ARROW』と題された9曲入りアルバムが付属しており、もし同作をオリジナルフルアルバムとカウントするならば、今回の『TALLULAH』は11作目のアルバムということになるのでしょうか。

プロデュースを手がけたのはメンバーのグラント・ニコラス(Vo, G)と、ティム・ローという前作『ALL BRIGHT ELECTRIC』と同じ布陣。しかし、多少実験色の強かった前作とは異なり、今作は「FEEDERとはこういうもの」というイメージをわかりやすく具現化した内容と言えるでしょう。

もちろん、聴き手がFEEDERの“どこ”、あるは“どの時代”を求めるかによって違いは生じることでしょう。ここで言う「FEEDERとはこういうもの」というのは、イギリスでもっともブレイクしていた時期……つまり、2000年代前半の、数々のシングルヒットが生まれた3rdアルバム『ECHO PARK』(2001年)、ドラマーのジョン・リーを失い悲しみと向き合いながら制作された4thアルバム『COMFORT IN SOUND』(2002年)、アルバムとしては自己最高の全英2位を記録した5thアルバム『PUSHING THE SENSES』(2005年)あたりの作風を踏襲したもの。パブリックイメージ的にも、特に後者2作品を「FEEDERらしい」と呼ぶのではないでしょうか。

本作には、そういった「聴けばFEEDERの新曲だとすぐに認識できる」良曲が豊富に用意されています。パンキッシュで疾走感溢れるアップチューン、グルーヴィーでヘヴィなミドルナンバー、そして壮大なアレンジでじっくり歌を聴かせるポップなミディアム/スローナンバー……FEEDERにとっての王道中の王道が、ここで再び繰り広げられているのです。

とはいえ、それらが単なる“焼き直し”では終わっておらず、ここ数作で試された実験の成果(特に2000年代後半からの10数年は、いかにその「FEEDERとはこういうもの」を維持しつつそこから離れるか?を命題に格闘していた気がします)もしっかり反映されており、今作が単なる原点回帰とは異なることを示しているのではないでしょうか。

とにかく、最初から最後までスルスル聴き進められる、実に気持ち良い1枚。日本盤には収録曲のひとつ「Kyoto」(もちろん、日本の京都のこと)が日本語で歌われたバージョンを収録。でも、どうせなら英詞バージョンも聴きたかったな(配信およびストリーミングでも日本語バージョンしか聴けないので。残念)。

このアルバムを聴くと、不思議とライブが観たくなるんですよね。そういう躍動感がしっかり備わっている、新たな全盛期にふさわしい力作ではないでしょうか。そういえば9月後半には、早くも来日するんですね。遅ればせながら、本作のリリースタイミングに知りました。ぜひ行かねば。

 


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2019年8月30日 (金)

TEENAGE FANCLUB『GRAND PRIX』(1995)

1995年5月にリリースされた、TEENAGE FANCLUBの5thアルバム(日本では同年6月発売)。本国イギリスではCreation Recordsから販売されましたが、アメリカや日本ではメジャーのGeffen Records流通3作目のアルバムとしてリリースされています。

個人的に3rdアルバム『BANDWAGONESQUE』(1991年)、そして今作に続く6thアルバム『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』(1997年)は非常に重要な作品で、こと“パワーポップ”というジャンルで語ろうとするとこの『GRAND PRIX』というアルバムは傑作以外の何物でもないなと思っております。

デヴィッド・ビアンコ(オジー・オズボーンAC/DC、THE POSIES、トム・ペティなど)を共同プロデューサーに迎えた本作は、前作『THIRTEEN』(1993年)よりも骨太で、それでいてしなやかさが際立つバンドサウンドを楽しむことができる良番。とにかく曲が良いし、音の質感も“グランジ以降だけど、ブリットポップほどあからさまじゃない”といった印象で、普遍性の強いものに仕上がっているんじゃないかと思っています。事実、リリースから25年近く経った今聴いても、まったく古臭さを感じませんしね。

全13曲中、ノーマン・ブレイク(Vo, G)が5曲、ジェラルド・ラブ(Vo, B)&レイモンド・マッギンレイ(Vo, G)が各4曲というベストバランスで楽曲制作されており、冒頭の「About You」(レイモンド作)、「Sparky's Dream」(ジェラルド作)、「Mellow Doubt」(ノーマン作)という流れも最高。そこから「Don't Look Back」(ジェラルド作)、「Verisimilitude」(レイモンド作)、「Neil Jung」(ノーマン作)という構成も圧巻で、ここまでの6曲(アナログでいうとA面かな)が完璧すぎるんですよ。なんだ、このアルバム。貶すところないし!ってくらいに。

もちろん7曲目「Tears」(ノーマン作)以降の流れも文句なしで、最後のお遊び的組曲「Hardcore / Ballad」(ノーマン作)も締めくくり的方もベストの一言。全13曲で42分というボリュームといい、パーフェクトとしか言いようがありません。もし人生の10枚を選べと言われたら、間違いなくその1枚に本作を選ぶことでしょう。

チャート的にも本作で初めて全英チャートTOP10入り(7位)を果たし、「Mellow Doubt」(全英34位)、「Sparky's Dream」(同40位)、「Neil Jung」(同62位)というヒットシングルも生まれています。前作までが良くも悪くもグランジの波に飲み込まれ不幸に見舞われたTFCですが、ここでギターロップ/ギターポップバンドとしてその地位を確立。続く次作『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』でその人気を決定づけることになります。

 


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2019年8月29日 (木)

EXPLOSIONS IN THE SKY『THE WILDERNESS』(2016)

2016年4月にリリースされた、EXPLOSIONS IN THE SKYの6thアルバム(一部では7thアルバムという表記も)。

『PRINCE AVALANCHE』(2013年)、『LONG SURVIVOR』(同年)、『MANGLEHORN』(2014年)といった映画のサウンドトラックは次々に制作していたものの、オリジナルアルバムとしては前作『TAKE CARE, TAKE CARE, TAKE CARE』(2011年)から実に5年ぶりとなります。

個人的にはEXPLOSIONS IN THE SKYって静と動を巧みに使い分けつつも、分厚い轟音ギターを重ねた激情的なアンサンブルで聴き手を高揚させるインストゥルメンタル・ポストロックという印象が強かったのですが、このアルバムでその考えを改めさせられました。

ここで展開されているのは、ポストロックっちゃあポストロックなのですが、それ以前の「動」の要素を極力抑え気味に、エレクトロニカやアンビエントなどの要素を強めた、シンフォニックなサウンドスケープが展開されています。つまり、癒しであったり繊細さであったり、そういった感情の機敏さが丁寧に表現されている。そんなイメージを受けたのです。

もちろん、随所随所にこれまでの彼らを彷彿とさせるエネルギッシュなプレイが散りばめられており、それらが程よいアクセントになっていますが、決してそれがメインになっているわけではない。むしろ、先に挙げた「分厚い轟音ギターを重ねた激情的なアンサンブル」をできるだけ避け、別の形でドラマチックさを演出しているように感じられます。

映画のサントラを3作立て続けに制作してきたこともあってか、そのドリーミーでピースフルな世界観はどこかシネマティックで、なんとなく裏に隠されたストーリーすら浮かび上がってくる。適度なノスタルジーも感じさせつつも、使用している楽器や音像はエレクトロ色を強めた近代的なものというアンバランスさも絶妙で、ただ気持ちよく聴き過ごしてしまうには勿体ない、非常に手の込んだ1枚と言えるのではないでしょうか。

バンドにとっては間違いなく新境地へと到達した1枚であり、リスナーにとってはいろいろと“試される”実験作でもある。かといって、ここで彼らが完全に変わってしまったというわけではなく、あくまで2016年というタイミングにもっともふさわしい表現方法がこれだった、ということだけなんじゃないでしょうか。事実、その後に実現したフジロックでの来日公演では過去の楽曲を交えることで、より緩急が際立った極上のパフォーマンスを楽しむことができましたから。

 


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2019年8月28日 (水)

RUSSIAN CIRCLES『BLOOD YEAR』(2019)

2019年8月初頭にリリースされたRUSSIAN CIRCLESの7thアルバム。

前作『GUIDANCE』(2016年)で遅ればせながら初めて彼らの音に触れたのですが、その生々しくてアグレッシヴな演奏と、プログレかと思わせる技巧派アンサンブルに一発でノックアウト。残念ながらいまだライブを観ることは叶っていないのですが、ぜひ近々に一度は生で観てみたいバンドの1組です。

3年ぶりに届けられた本作は、前作から引き続きCONVERGEのカール・バルー(G)がプロデュースとレコーディングを担当。前作が好きなら間違いなく一発で気に入る1枚に仕上げられています。

以下、先日公開されたリアルサウンドさんでの新譜キュレーション連載記事にて執筆した、本作の紹介文から引用させていただきます(記事はこちらからご確認ください)。

ギターとベース、ドラムのみで構築されるインストナンバーはいわゆる“歌モノ”とは異なり、メロディが主軸となって進行するものとは異なります。が、それでも最初から最後まで飽きずに惹きつけられてしまうのは、彼らが構築する楽曲群のアレンジ力や演奏力&表現力の高さ、そして要所要所に散りばめられたトリッキーな味付けによるものが大きい。ポストロックやエクスペリメンタルミュージックの要素も感じさせつつ、メタルやエクストリームミュージック的な生々しく分厚い音像と楽器一つひとつの音の太さ、それらが折り重なることで生まれる不思議な調和と不調和からは、ジャンルの枠を超えた魅力が感じられるはずです。メタルリスナーはもちろんのこと、DEAFHEAVENなどポストメタルのファン、MOGWAIEXPLOSIONS IN THE SKYのようなバンドのファンにも存分にアピールすることでしょう。

うん、ここで全部言ってしまっているな(笑)。メタルリスナーの中でも、いわゆるラウド/ヘヴィ系をこよなく愛する人、メタルというジャンルに制限を与えない人にこそ触れてほしい1枚だと思いますし、それと同時にメタルやラウドに偏見を持っているオルタナ系リスナーにも触れてほしい傑作だと思うのですが、いかがでしょう。

こういった作品は、以前取り上げたBARONESSの新作『GOLD & GREY』(2019年)みたいなジャンルの枠を超越したロック作品が、それこそ多ジャンルにわたり高く評価される。それこそがエクストリームミュージック・シーンの未来につながると信じてやみません。だって、本作はそれを成し遂げるだけの魅力を持った、最高の1枚なのですから。

 


▼RUSSIAN CIRCLES『BLOOD YEAR』
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2019年8月27日 (火)

THE DEAD DAISIES『LOCKED AND LOADED: THE COVERS ALBUM』(2019)

2019年8月下旬リリースの、THE DEAD DAISIES初のカバーアルバム。日本では2週間遅れて、同年9月上旬にリリースされます。

彼らはこれまで4枚のスタジオアルバム、1枚のライブアルバムを発表していますが、その中には自身のルーツを表明するようなカバー曲を収録しています。また、ライブでもそういった楽曲は積極的に披露されており、いかにクラシックロックの存在がTHE DEAD DAISIESにとって切っても切り離せないものであるかが理解できるかと思います。

本作にはそういった各作品に収録されてきたカバー曲をひとまとめにすることで、そのルーツをより明確にする役割が課せられているわけです。と同時に、本作で初公開となるライブ音源も2曲(日本盤は3曲)も含まれており、すでに各音源を所有しているリスナーにとっても持っていて損はない1枚と言えるのではないでしょうか。

ピックアップされているカバーアーティストはSENSATIONAL ALEX HARVEY BAND、ハウリン・ウルフ、CCR(CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL)、THE WHOTHE BEATLESTHE ROLLING STONES、GRAND FUNK RAILROAD、ニール・ヤング、DEEP PURPLEといった、メジャー感の強いものからコアなロックファンが喜びそうなマニアックなものまで。特に、日本ではそこまで一般的知名度の高くないSENSATIONAL ALEX HARVEY BANDが取り上げられているのは、海外ならではといったところでしょうか。

また、日本盤ボーナストラックの「Let It Be (Live)」含めビートルズが3曲も取り上げられているのは微笑ましいといいますか。やりすぎだろ!ってツッコミたくもなりますよね、そりゃ。

それぞれ録音時期が異なるため、曲によってバンドメンバーが異なるのはご愛嬌。1曲のみ(「Helter Skelter」)ジョン・コラビ(Vo)の前任であるジョン・スティーヴンス(Vo, G)が歌っているスタジオテイクが用いられています。この曲、ライブアルバム『LIVE & LOUDER』(2017年)でジョン・コラビが歌っているテイクもあるのに、スタジオテイクをそこまでして使いたかったんですかね。それとも満遍なく過去の在籍メンバーが参加した楽曲を使いたかったんでしょうか。

本作のみで聴くことができるのが「Rockin' In The Free World」と「Highway Star」の各ライブテイク(と、先の「Let It Be」)。前者は特筆すべき点はありませんが、後者は……あれ、意外とカッコいいじゃない(笑)。特に、オリジナルではジョン・ロード(Key)が弾いていたオルガンソロを完全にギターで再現している点が興味深く、聴いているだけでニヤニヤしてしまいます。

いわゆる“ファンアルバム”なので、これで今後の方向性がどうこう言いたくもないし、点数を付けたりもしなくないので。聴いた人が楽しめるかどうか、それで十分な1枚だと思います。

 


▼THE DEAD DAISIES『LOCKED AND LOADED: THE COVERS ALBUM』
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2019年8月26日 (月)

SWERVEDRIVER『FUTURE RUINS』(2019)

9月上旬に来日公演を控えたSWERVEDRIVERが、2019年1月にリリースした6thアルバム。

再結成後、初の新作となった前作『I WASN'T BORN TO LOSE YOU』(2015年)から4年ぶりに発表された本作では、彼らのパブリックイメージどおりの「ノイジーでドリーミーなシューゲイズサウンド」が展開されており、多くのリスナーを満足させてくれるはずです。

正直な話、90年代の諸作品はリアルタイムで聴いていたものの、再結成後のアルバムは聴いたか聴いていないか記憶にない……ぐらい、個人的に触手が伸びなかった印象でした。今聴くと決して悪くないし、どこからどう聴いても「ああ、SWERVEDRIVERだ」という内容なのですが、当時の自分にはそこまで必要のない音だったのかもしれません(生活面でも環境が一変し、慌ただしかったのも大きいとは思いますが)。

ところが、本作を初めて聴いたとき……オープニングの「Mary Winter」のキラキラ感を散りばめたシューゲイズ/ドリームポップナンバーや、独特の浮遊感漂うタイトルトラック「Future Ruins」、穏やかなと豪快さが共存する「Theeascending」、気怠さとキラキラした眩しさが交互に訪れる「Everybody's Going Somewhere & No-One's Going Anywhere」など……どれを聴いても惹きつけられる自分がいることに気づきました。

ああ。自分、SWERVEDRIVERのことを思っていた以上に好きなんじゃないか、とそこで初めて気づくわけです。

もともとシューゲイザーは好きなジャンルだし、WEB上の解説や店頭のポップなどにその文字が含まれているだけで触手が伸びるような人間ですもの。嫌いになれるわけがない。

真新しさは皆無かもしれません。しかし、だからこそのディープさや説得力が感じられるのもまた事実。RIDEもそうですけど、解散を経て10数年ぶりに戻ってきたこの手のバンドはルーツを大切にしてくれる(もちろん、すべてがそうとは言いませんが)。RIDEは最新作『THIS IF NOT A SAFE PLACE』で今と向き合いながら生き長らえることを選び、SWERVEDRIVERは自分の出生の意味を大切にしながら成長していくことを選んだ。同じ年にリリースされた2枚を聴くと、同じジャンルをベースにしながらも途中から違う方向へと枝分かれし、気づいたときにはまたそれらの枝が交わり始める……そんなイメージを受けるのです。

まあとにかく。今もこうやって彼らの新作を楽しめる幸せ、そして再び日本の地を訪れてくれる幸せを嚙みしめようではありませんか。

 


▼SWERVEDRIVER『FUTURE RUINS』
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2019年8月25日 (日)

RIDE『THIS IS NOT A SAFE PLACE』(2019)

2019年8月リリースの、RIDE通算6枚目のオリジナルアルバム。

2014年に再結成を果たし、2017年6月には『TARANTULA』(1996年)以来21年ぶりの新作『WEATHER DIARIES』を発表し、全英11位という好記録を残したRIDE。そこから2年2ヶ月という(このご時世においては比較的)短いスパンで届けられた新作は、前作を超える全英7位という好結果を残しています(全英TOP10入りは1994年の3rdアルバム『CARNIVAL OF LIGHT』の5位以来のこと)。

復活作となった前作『WEATHER DIARIES』はRIDEの歴史を総括するような、集大成的な内容で古くからのリスナーから再結成後に彼らをしったビギナーまで、幅広い層を楽しませてくれました。続く本作も基本的な作風な一緒で、RIDEなりに“2019年のシューゲイザー/ドリームポップ”と真摯に向き合った力作に仕上がっています。

オープニングの「R.I.D.E.」のゴリゴリしたデジタル風カラーに若干驚かされますが、続く「Future Love」では従来のRIDEらしさが表現されたポップチューンが楽しめます。

その後もキャッチーな楽曲、独自の解釈でシューゲイザーを表現したナンバーがズラリと並びます。作風こそ前作以上にモダンさを感じさせるものですが、どの曲も聴けばそれがRIDEの新曲だとわかるものばかり。単なる焼き直しで終わっておらず、しっかりと“今を生きるバンド”としての生命力がアルバム中至るところから感じられます。

プロデュースを手がけたのは、前作から引き続きエロル・アルカンが担当。前作にもその香りは感じられましたが、今作はその比じゃないくらいにエロル・アルカン色が強まっているのかなと感じました。もともとロッキン色の強いDJ/アーティストですが、今作ではエレクトロ/ダンスミュージックのテイストをロック/シューゲイザー/ドリームポップと掛け合わせることで、従来のRIDEらしさをうまいことバージョンアップさせることに成功しているように感じました。そりゃあ嫌いな人、いないでしょ?っていう内容ですよ、これは。

なおかつ、しっかりと内省的なアコースティックナンバーや、『CARNIVAL OF LIGHT』あたりで実験したアーシーな路線もしっかり含まれている。つまり、“最強のRIDE”ってことです。

まさか解散から20年以上経ってから再結成してオリジナルアルバムを2枚も届けてくれるとは思ってもみなかったし、それら2作品が(個人的に)その年を代表する1枚になるなんて、彼らが解散した90年代半ばは想像もしてなかったなあ。感慨深さ以上に、聴いているだけで胸が熱くなる1枚です。

 


▼RIDE『THIS IS NOT A SAFE PLACE』
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2019年8月24日 (土)

TRIVIUM『IN WAVES』(2011)

2011年8月に発表された、TRIVIUM通算5作目のスタジオアルバム。70分近い大作志向だった前作『SHOGUN』(2008年)は全米23位まで上昇しましたが、本作はそれを超える最高13位を記録。現時点ではキャリア最高位を残しています。

前作発表後に10年近く在籍したトラヴィス・スミス(Dr)が脱退し、新たにニック・オーガスト(Dr)が加入してから最初に制作されたのが本作。プロデューサーにかのコリン・リチャードソン(CARCASSFEAR FACTORYNAPALM DEATHBULLET FOR MY VALENTINEなど)とマーティン・フォード(ex. DUB WAR、ex. SKINDRED)を迎えたこのアルバムは、バンドとしても新たな挑戦がたっぷり詰まった1枚に仕上がっています。

聴いてもらえばわかるように、これまでのメタルコア/スラッシュメタルの延長線上とは異なるモダンなサウンドへとシフトチェンジ。前作までにあった“古き良き時代のHR/HMの王道感+現代的な味付け”を通り越し、非常に“ナウ”(死語)なタッチへと変貌を遂げたことで、従来のファンの間でも賛否あったように記憶しています。

だって、オープニングのひんやりしたSE「Capsizing The Sea」からグルーヴメタル的アレンジの「In Waves」への流れといったら……キャッチーなメロディこそTRIVIUM的ですが、楽曲のタイプとしては完全に今までにないタイプ。その後もスクリームを多用しつつもしっかりメロディが耳に残るキャッチーさと、プログレッシヴなんだけど従来のメタル的なそれとは異なるモダンさが際立つプレイ&アレンジの楽曲が続いていきます。

でもね、これが意外と悪くないんですよ。確かに『ASCENDANCY』(2005年)が好きだったリスナーにはキツいし、『THE CRUSADE』(2006年)での“新世代メタル宣言!”的なストレートさも皆無。なのに、聴いていると非常にクセになる楽曲ばかり。「In Waves」同様にシングルカットされた「Built To Fall」や「Caustic Are The Ties That Bind」あたりも、アレンジ次第では前作までに収録されていてもおかしくないんでしょうけど、味付けによってここまで化けるかという驚きもあり。1分半程度のインスト2曲を含む全13曲、トータル51分という長さも程よくて、個人的には前作以上に気に入っている1枚だったりします。

あと、本作は音のみならず、映像やヴィジュアル、衣装のイメージまでをもコントロールしたトータル性の高い内容で、デラックス盤付属のDVDやYouTubeなどで公開されているMV、さらにはアートワークからもその気合いが伝わってきます。結局、こういったコンセプチュアルな作り込みはこれ1作のみとなってしまいましたが、ここでの実験は確実に以降の作品にも活かされているので、決して無駄ではなかったんだなと思っています。

なお、上に書いたように本作にはデラックス盤が用意されており、そちらは本編途中にボーナストラック3曲、最後のインスト「Leaving This World Behind」のあとにSEPULTURAのカバー「Slave New World」など2曲の計5曲を追加した内容となっています。全18曲で約68分……って前作と一緒やん(苦笑)。個人的にはコンパクトな通常盤の13曲構成がお気に入りなので、まずはこちらから聴いて、さらに気になったらデラックス盤を聴いてみると新たな発見があるかもしれませんよ(どちらもSpotifyやApple Musicで聴くことができます)。

 


▼TRIVIUM『IN WAVES』
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2019年8月23日 (金)

LIGHT THE TORCH『REVIVAL』(2018)

KILLSWITCH ENGAGEのシンガー、ハワード・ジョーンズがバンド脱退後の2012年に結成したバンドDEVIL YOU KNOW。これまでに『THE BEAUTY OF DESTRUCTION』(2014年)、『THE BLEED RED』(2015年)と2枚のアルバムを発表してきましたが、2017年にバンド名をLIGHT THE TORCHに変更。改名後初となるアルバム(通算3作目)『REVIVAL』を2018年3月にリリースしました。

デビュー時はツインギターの5人編成でしたが、前作の時点で正式メンバーは4人(シングルギター編成)となり、ライブのみギタリスト1名をサポートメンバーとして迎えています。

オリジナルメンバーはすでにハワードのほか、元ALL SHALL PERISHのフランチェスコ・アルトゥサト(G)の2人のみですが、デビューアルバム完成後に加入したライアン・ウォンバチャー(B / BLEEDING THROUGH)も初期メンバーと捉えれば、ドラム以外は不動のメンバーということになります。

さて、本作で展開されているサウンドですが、DEVIL YOU KNOW時代のサウンドを引き継ぎつつも、よりモダンで重低音を活かした(若干ジェント的な香りのする)メロディアスなヘヴィメタルが展開されています。

KILLSWITCH ENGAGE時代の諸作品……代表作となった3rdアルバム『THE END OF HEARTACHE』(2004年)ほどメタルコア的でもなく、スクリームの比率もかなり抑えられており(とはいえ、皆無というわけではないのでご心配なく)、軸になるのはあくまでメロディアスな“歌”。シンガロングできそうなサビが豊富に用意されており、そういった点においては古巣のKILLSWITCH ENGAGEが最近発表した最新作『ATONEMENT』(2019年)にも共通するものがあると言えるでしょう。

本作を聴くと、改めてハワードは個性的で歌のうまいシンガーだということに気づかされます。もちろん、そんな事実は重々理解していたのですが、それでもそう思わされるということは、べらぼうにダメ押しされているってことなんでしょうか。ミドルテンポでヘヴィ、だけどメロディアスという本作で展開されている楽曲群はまさに歌を聴かせるハワードに最適で、そこに楽器隊のモダンさや、適度に取り入れたデジタル要素などが良いアクセントとなり、バンドとしての個性をさらに強いものへと引き立てている。本作を聴いて、そんな印象を受けました。

正直、DEVIL YOU KNOW時代は「良いんだけど、歌以外は平均的」といったどっちつかずな印象がありましたが、本作でようやく“らしさ”のきっかけを手に入れられたのかな、と。ハワード自身も第二の、いや、第三のデビュー作でようやく本当のスタート地点に立てたのかもしれませんね。

残念ながら本作は日本でのリリースは叶いませんでしたが、メタルフェスなどを通じて来日の機会を得たら、一気に知名度が向上するはず。ぜひ来年の春あたりに予定されているフェスでの“初来日”に期待したいところです。

 


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2019年8月22日 (木)

KILLSWITCH ENGAGE『ATONEMENT』(2019)

2019年8月16日リリースの、KILLSWITCH ENGAGE通算8枚目のスタジオアルバム。日本盤は海外から少しだけ遅れて8月21日にリリースされています。

2ndアルバム『ALIVE OR JUST BREATHING』(2002年)から前作『INCARNATE』(2016年)まで6作をRoadrunner Recordsから発表してきた彼らですが、今作からアメリカではMetal Blade Records、イギリスではMusic For Nations、それ以外の海外はColumbia / Sonyからのリリースとなり、ここ日本でも本作はソニー・ミュージックからの第1弾作品となっています。

初代シンガーのジェシー・リーチ(Vo)が復帰してから3作目、通算5作目のアルバムということで、すでに後任を務めたハワード・ジョーンズ(Vo / 現LIGHT THE TORCH)在籍枚数を超えていたんですね。

さて、本作ですが全11曲で39分という非常にコンパクトで聴きやすい内容にまとまっています。実際、1曲1曲の仕上がりも非常にわかりやすく(と同時に、2〜3分台の楽曲中心なので聴きやすい)、かつ的確に仕上げられている印象が強く、スルスルと聴き進められる1枚じゃないかと思います。

全体的にはハワード在籍時の3rdアルバム『THE END OF HEARTACHE』(2004年)で確立された個性が、そのまま円熟期を迎えたような完成度の高さを誇り、「(2000年代以降の)メタルコアってカッコいい!」と再認識させられる内容だと思いました。

とにかく、ヘヴィなオープニングナンバー「Unleashed」から、ジェシー&ハワードという夢の共演が実現した「The Signal Fire」、もはやメロディアスな王道ヘヴィメタルそのものの「Us Against The World」、大先輩のチャック・ビリー(Vo / TESTAMENT)をフィーチャーした「The Crownless King」、コンパクトな歌モノメタル「I Am Broken Too」などなど、とにかく聴きどころが多く、それもあって先のように39分があっという間に感じられるのです。

ニューメタル以降のアメリカン・ヘヴィメタルを再建させた代表格として、申し分なしの内容ですし、もはや普遍性の強いヘヴィメタルバンドにまで成長しきったんじゃないかと思わせられるくらいの集大成感もある。仮にここから、このアルバムを基盤に同クオリティの作品を増産させることになっても……いや、そんなバンドじゃないな(笑)。そうならないように、ここをまた“仮想敵”としてさらに上へと突き進んでいくはず。

とにかく、文句の付けどころがないほどに完璧なモダン・ヘヴィメタル・アルバム。年間ベスト候補決定です。

 


▼KILLSWITCH ENGAGE『ATONEMENT』
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2019年8月21日 (水)

KING 810『MIDWEST MONSTERS』(2012)

2019年6月末に突如デジタルリリースされた、KING 810の7曲入りEP。

新機軸を打ち出した3rdアルバム『SUICIDE KING』を今年1月に自主販売したばかりの彼らですが、本作はこれに続く新作というわけではなく、実は2012年に発表したインディーズ作品の再リリースに当たります。

なので、サウンド的にはメジャーデビューアルバム『MEMOIRS OF A MURDERER』(2014年)の延長線上にある(いや、『MEMOIRS OF A MURDERER』が本作の延長線上にあるというのが正しいんだけど)オールドスクールなハードコアサウンドが展開されています。

自主制作ということもあり、ドラムのこもり具合や若干の安っぽさは否めませんが、それでも『MEMOIRS OF A MURDERER』で我々を楽しませてくれたゴリゴリなヘヴィサウンドは存分に堪能できるはずです。冒頭の「Midwest Monsters」〜「The Death Posture」の構成などはドキッとさせられますし、この時点ですでに光るものを持っていたんだなと気づかされます。

全編押しまくりの内容で、ミドルテンポだけじゃなくてアッパーな楽曲/アレンジも要所要所に散りばめられている。この手のバンドはミドルテンポ一辺倒で淡白になりがちですが、だからこそ全7曲25分という内容は程よいなと感じました。

あと、その後のメジャーデビュー作で開花するダークなゴシックナンバーや、スポークンワーズを用いたスロウナンバー、ブルース色の強い楽曲やスローバラードといった変化球はこの時点では皆無。どういう経緯でそういった幅広さを手に入れたのかも気になるところです。

「Wolves」や「Dragging Knives」など評価すべき楽曲は少なくありませんが、これ!という突出したナンバーが見当たらないという意味では、KING 810もこの時点ではまだ“One of Them”でしかなかったのかなと。だからこそ、メジャーデビューまでの2年間は非常に重要なものだったんでしょうね。じゃなきゃ、かのRoadrunner Recordsと契約することもなかったでしょうし。

彼らのルーツを知る上では貴重な1枚ではありますが、ではまず最初に聴くべき作品かと問われると、それはどうかなと。個人的には1stアルバム、2ndアルバム『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016年)で彼らの本質に触れたあとに、副読本的に聴く程度でいいんじゃないかと(3rdアルバムで彼らに失望したリスナーにとっては、本作は真っ先に聴くべき1枚かもしれませんが)。

 


▼KING 810『MIDWEST MONSTERS』
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2019年8月20日 (火)

MICHAEL MONROE『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999)

1999年10月にリリースされた、マイケル・モンロー通算4作目のソロアルバム。当初日本のみで発売されたJERUSALEM SLIM唯一のアルバム『JERUSALEM SLIM』(1992年)DEMOLITION 23.名義でのアルバム『DEMOLITION 23.』(1994年)を含めると通算6作目ということになります。

前作『PEACE OF MIND』(1996年)前後でニューヨークから故郷フィンランドへと帰国し、音楽の拠点を地元に移したマイケル。前作はドラム以外のパートをほぼマイケルひとりで担当するというセルフ・メイド感の強い、ある種“閉じた”作品でしたが、続く本作は非常に豪快な“開けた”1枚に仕上がっています。

リズム隊のみ地元のプレイヤーに担当させ、自身はボーカルのほかギター、ハーモニカ、サックス、ピアノなど相変わらず多才ぶりを発揮。楽曲に関しても全13曲中、カバー2曲を除く11曲を(公私ともに当時のパートナーだった)ジュード・ワイルダーと共作しています。

ぶっちゃけ、楽曲のタイプ的には前作の延長線上にあるシンプルでパンキッシュなハードロックなのですが、前作を覆っていた“緩さ”が完全に払拭され、非常にタイトな印象を受けるのが本作の特徴。「Life Gets You Dirty」から「Just Because You're Paranoid」へと続く冒頭の構成からは、絶妙な緊張感も感じられ、良い意味で“怒っている”なと。正直、90年代前半のマイケルはいろんなゴタゴタに巻き込まれ、本来なら怒るべきだと思っていたんです。なのに、パンクバンドであるDEMOLITION 23.は怒りよりも享楽的な雰囲気が強いし、すべてを捨てて故郷に戻って制作した『PEACE OF MIND』からはある種の“諦め”すら感じられた。

おいおい、こっちはそんなマイケル・モンローを求めてねぇぞ、と。

もちろん、前作での原点回帰が本作の完成に必要な要素だったことは間違いありません。すべては結果論でしかないですが。

良くも悪くもアメリカナイズされた2ndアルバム『NOT FAKIN' IT』(1989年)から10年を経て、ようやくマイケルは“自分らしさ”を手に入れたんだ。当時はそう思いました。しかし、その後ジュードとの死別が訪れるとは、この頃は思ってもみませんでしたが……。

あ、あと当時はBACKYARD BABIESといったフォロワーたちがマイケルと共演したりすることで、マイケルに対する再評価が始まった時期でもあったんでしたっけ。そういう意味では、本作の登場は必然だったのかもしれません。

ちなみに、本作に収録されているカバー曲のひとつに、HANOI ROCKS「Self Destruction Blues」が含まれています。のちに再結成するハノイもこちらのバージョンを再カバーしていましたね(ハノイ・バージョンは2007年のアルバム『STREET POETRY』収録)。タイトさではハノイ・バージョンが優っていますが、荒々しさはソロ・バージョンのほうが格段に上なので、機会があったら聴き比べてみてください。

 


▼MICHAEL MONROE『LIFE GETS YOU DIRTY』
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2019年8月19日 (月)

THE DARKNESS『HOT CAKES』(2012)

2012年8月にリリースされたTHE DARKNESSの3rdアルバム。

前作『ONE WAY TICKET TO HELL... AND BACK』(2005年)発表後、2006年にジャスティン・ホーキンス(Vo, G)の脱退によりバンドは解散。それぞれ別々に音楽活動を続けてきましたが、2011年春にジャスティン、ダン・ホーキンス(G)、フランキー・ポーレイン(B)、エド・グラハム(Dr)というオリジナルメンバーでの再結成を発表。同年秋には『LOUD PARK 11』での来日も実現しました。

こうしたライブ活動を経て完成した3rdアルバムは、全英4位/全米43位というデビュー作『PERMISSION TO LAND』(2003年)にも匹敵する数字を残しています。

ミックスにボブ・エズリン(KISSPINK FLOYDアリス・クーパーなど)を迎え、ほぼセルフプロデュースで制作された本作は、どこからどう切り取っても「これぞTHE DARKNESS」と呼べる内容。オープニングの「Every Inch Of You」こそシンプルで拍子抜けしそうになりますが、続く先行シングル「Nothin's Gonna Stop Us」はQUEEN風多重コーラスを含む“いかにも”な1曲。そこから「With A Woman」「Keep Me Hangin' On」と“ポップでいかがわしい”ロックンロールが続きます。

そうそう、これこれ!と言いたくなるぐらいに当時のままで、だけど前作からの時間の経過もちゃんと伝わるアップデート感も至るところに散りばめられており、全11曲(デラックス盤ボーナストラックを除く)を聴き終えたときの満足感・充足感は相当なものがあるはずです。

もし7年のブランクがなかったら、5枚目か6枚目あたりで醸し出しそうな空気感なのかな、これ。確かに『PERMISSION TO LAND』にあった衝動は弱まって、大人になった落ち着きが全体を覆っているかもしれないし、『ONE WAY TICKET TO HELL... AND BACK』でのバキバキに固められた無敵感もここにはないかもしれない。でも、負けを認めた大人たちが「それでも前に進もう」という気概だけは失わず、ルーツを忘れることなく今のやり方で“俺たちらしさ”を表現した。それが、この復活作なんじゃないでしょうか。

そういう意味では、終盤に含まれたRADIOHEAD「Street Spirit (Fade Out)」のカバーは「若い奴に取り入ろう」という意図とは異なる、「何をしたってTHE DARKNESSはTHE DARKNESSのまま」という証明をしようとしたのではないか。そう思わずにはいられません。じゃないと、こんなバカバカしいほどの名カバー(いや、迷カバー?笑)、アルバム本編に入れようと思いませんよ。

ちなみに本作、日本ではSpotifyで聴くことができません。Apple Musicでは配信されているので、気になる人はそちらでチェックしてみてください。

 


▼THE DARKNESS『HOT CAKES』
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2019年8月18日 (日)

WHITE LION『BIG GAME』(1989)

1989年8月に発表されたWHITE LIONの3rdアルバム。海外ではAtlantic Recordsからのリリースでしたが、ここ日本ではビクターと独自契約しており、日本盤も海外より1ヶ月早い7月上旬に発売されたようです。

前作『PRIDE』(1987年)からシングルカットした「Wait」(全米8位)を機に、「Tell Me」(同58位)、「When The Children Cry」(同3位)と次々ヒット曲が生まれ、アルバム自体も最高11位まで上昇、アメリカだけでも200万枚以上を売り上げ、一躍人気バンドの仲間入りを果たしたWHITE LION。続く本作はその出世作の延長線上にある作品作りを目指します。

プロデューサーには引き続きマイケル・ワグナー(ACCEPTDOKKENSKID ROWなど)を迎え、キャッチーでポップなわかりやすいアメリカンハードロックとラジオでかかりやすいパワーバラード、さらにはひと昔前のヒット曲のカバーといった当時の“お約束”を凝縮した、良くも悪くも“売れ線”な1枚を完成させました。

シングルヒットした「Little Fighter」(全米52位)は完全に「Wait」や「Tell Me」の延長線上にあるポップメタルですし、アコギを軸にしたバラード「Broken Home」も明らかに「When The Children Cry」を意識したもの。それ以外にも豪快なアメリカンロック「Goin' Home Tonight」や適度なヘヴィさを持つミドルチューン「Dirty Woman」など、当時のWHITE LIONの魅力をベストな状態で曲に詰め込むことに成功しています。

かと思えば、VAN HALEN直系のハードブギー「Let's Get Crazy」みたいな攻めの1曲もあるし、その流れを汲むGOLDEN EARRINGの良カバー「Rader Love」(全米59位)もある。不思議なメロディ運びの「If My Mind Is Evil」にもバンドとしてのこだわりが感じられるし、今思えば次作への布石だった6分超えのプログレッシヴな大作「Cry For Freedom」など、実は“お約束”だけでは終わらせないという気概もしっかり備わっていたのです。当時はそこまで意識してなかったけど(苦笑)。

でも本作、『PRIDE』ほどのヒットにつながりませんでした。先に記したとおり、シングルカットされた楽曲もBillboardの上位入りを果たせず、アルバムも前作の11位には及ばない全米19位止まり(売り上げは50万枚程度)。

時代的にはまだHR/HMブームの最中でした。が、いわゆる「ポップでキャッチー」なものから「オーガニックな本格派」へと流行が移り始めていたのも要因だったのかな。BON JOVIがアコースティックギターを軸にアンプラグド的な手法を武器にし、GUNS N' ROSESのようなギミックなしで戦うバンドにファンの目が向き始め、そのガンズやSKID ROWのようにカリスマ性の強いフロントマンを擁するバンドがもてはやされる。確かにヴィト・ブラッタ(G)のテクニカルなプレイは圧倒的でしたが、いくらキャッチーな楽曲でもそれを歌うマイク・トランプ(Vo)の表現力が乏しければ……ねえ。

1曲1曲の完成度は高いものの、1枚通して聴くとあまり印象に残らない、そんな不思議なアルバム。これは続く意欲作『MANE ATTRACTION』(1991年)にも言えることなんですよね、残念ながら。

 


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2019年8月17日 (土)

EXTREME『EXTREME』(1989)

1989年3月にリリースされたEXTREMEのデビューアルバム。日本では2ヶ月遅れの5月にポニーキャニオンから、日本独自のジャケットに差し替えられ発売されています(その後、ユニバーサルからの再発分からは海外盤と同じジャケットに戻されました)。

B!誌のディスクレビューでその存在を知り、動いている姿を目にしたのは当時TBSで日曜深夜に放送されていたHR/HM専門プログラム『PURE ROCK』でのことだったと記憶しています。確か、同年秋に控えた初来日公演に向けて、地元ボストンで撮影されたリハーサル&コメント映像と「Kid Ego」のMVがオンエアされたはずで、そのリハーサル映像では次作『EXTREME II: PORNOGRAFFITTI』(1990年)に収録されることになるタイトルトラック「Pornograffitti」がすでに演奏されています。あとで1stアルバムを購入したとき、「あれ、あのリハ映像でやってた曲、入ってないじゃん!」とがっかりして、そこから1年後に「あ、この曲!」とやっとめぐり逢えたの、今でもいい思い出です。

そんな印象深い本作との出会いですが、内容的には以降のアルバムと比べて若干劣るかな。もちろん良い曲も多いですが、いまいち“ヤマに欠ける”といいますか。

オープニングの「Little Girl」やシングルカットされた「Kid Ego」、ヌーノ・ベッテンコート(G)の非凡なギタープレイを存分に味わえる「Mutha (Don't Wanna Go To School Today)」や「Play With Me」など今でもオススメできる楽曲も少なくないですし、QUEEN的な壮大さを持つバラード「Watching, Waiting」「Rock A Bye Bye」などもあるのですが、すべてがパーフェクトかというとそうでもないんですよね。デビューアルバムってアマチュア/インディーズ時代の集大成でもあるわけですが、本作の場合は比較的似通った曲が多いのも、そういったマイナス要素の一因なのかなと。

あと、ゲイリー・シェローン(Vo)というクセ/抑揚の少ないシンガーの存在もマイナスポイントかもしれません。その動き含めヴィジュアル的には面白みのある人ですが、音源だけとなるとね。器用な人ではないけど比較的どんなタイプの楽曲でも歌いこなせてしまうソツのなさは、武器にもなるんだけど仇にもなる。次作以降ではそれがちゃんと武器に転化されるんだけど、残念ながらここではまだ原石のままなんですよね。扱いの難しい人です。

……というのが、90年代に僕が持っていたEXTREMEの1stアルバムに対する印象。

これを書く際、久しぶりにSpotifyで聴いてみたのですが、当時はあまり印象に残らなかった「Teacher's Pet」とか「Flesh 'n' Blood」あたりが今聴くと意外と良いと思えたのは新たな収穫でした。うん、記憶の中にあったイメージよりも全然悪くない。デビューアルバムとしてはかなり高クオリティな1枚だったんだね。ゴメンよ、ちゃんと気づいてあげられなくて。

本作でのメジャーデビューから30年。再結成後のオリジナルアルバム『SAUDADES DE ROCK』(2008年)からすでに11年経ちましたが、そろそろ新曲も聴いてみたいものです。

 


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2019年8月16日 (金)

YNGWIE MALMSTEEN『BLUE LIGHTNING』(2019)

2019年3月にリリースされたイングヴェイ・マルムスティーンのニューアルバム。RISING FORCE名義やカバー盤、インスト作品も含めると、通算21枚目のスタジオアルバムになるようです。

前作『WORLD ON FIRE』(2016年)からほぼ3年ぶりの新作にあたりますが、本作に含まれる新曲は全12曲(日本盤ボートラを含めると全14曲)中4曲のみ。しかも、うち2曲はインストで、歌モノ新曲は2曲のみ。

あ、書き忘れましたが、イングヴェイの新作ではここ数作、ボーカルをすべてインギー本人が担当しております(ちなみに、ドラム以外の楽器もすべてインギーがプレイ)。確か『SPELLBOUND』(2012年)からだったと思いますが、同作では全13曲中歌モノは3曲、前作『WORLD ON FIRE』も全11曲中歌モノは3曲でした。ところが、今回は全12曲中歌モノが10曲、日本盤においては12曲が歌モノ……つまり、インギーの素敵な(笑)歌声を12曲も堪能できるのですよ。なんて素晴らしいんでしょう……。

なんて自虐的なことを書きましたが、本作のテーマになっているのは“ブルース”。彼のルーツにブルースがあることは80年代末くらいから伝わってきてはいましたが、それもせいぜいアルバムに1、2曲それっぽいフレイバーが感じられるかな程度。ここまでブルースと真っ向から向き合った内容は初めてではないでしょうかね。

上に書いたように、本作には新曲が4曲しか収録されていないわけですが、それ以外の楽曲はといいますと、いわゆるブルース“っぽい”ロック/ハードロックナンバーのカバーとなっております。そう、“モロなブルース”は皆無です。そこがインギーらしい!(笑)

カバーのセレクトはジミ・ヘンドリクスDEEP PURPLEZZ TOPTHE BEATLESTHE ROLLING STONESエリック・クラプトンといったもの。ジミヘンに関しては3曲、パープルとストーンズが各2曲(それぞれ日本盤の場合)、ビートルズも「While My Guitar Gently Weeps」をセレクトしているので、実質クラプトンも2曲ってことになりますね。

 

……え、ブルース?(苦笑)

 

まあまあ。心を落ち着かせて。広い心で楽しもうじゃないですか……はい、どこからどう聴いてもインギーだとわかるギタープレイ&フレーズ満載で、おもっくそ弾きまくってます。ブルージーなフィーリングこそ感じられますが、プレイそのものはイングヴェイ・マルムスティーン印。なんていうか、カラオケスナックで営業してる姿が目に浮かぶような……(泣笑)。

でもね、インギーのボーカルはこういった楽曲(いわゆるシンプルなロック/ハードロック)にぴったりだという、うれしい発見はありました。書き下ろされた歌モノ新曲も従来の路線と比較したら「う〜ん……」とは思ってしまうものの、この流れで聴くと全然“あり”だし。僕は嫌いじゃないですよ?

ただ……音が悪すぎる! これはここ数作すべてに言えることですが、このモコモコした音質だけはどうにかならないんでしょうか。ちゃんとしたエンジニアを雇ってミックスしてもらうという発想はないのでしょうか。HR/HMの珍盤に関してかなり寛容な僕ですけど、この音質のせいで評価が半減していることは特筆しておきたい。これ、2019年の音じゃないよ……。

ということで、ストリーミングでは聴くことができないインギーの新作、CDを購入してまで聴け!と強くオススメはしませんが、カバーソング大好きおじさんや11月に控えた『GENERATION AXE』を楽しみにしているリスナーは「怖いもの見たさ」で手に取るのもいいのではないでしょうか。ちょうどお盆ですしね!(半笑)

 


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2019年8月15日 (木)

BLACK LABEL SOCIETY『STRONGER THAN DEATH』(2000)

2000年4月にリリースされた、ザック・ワイルド(Vo, G)率いるBLACK LABEL SOCIETYの2ndアルバム。前作『SONIC BREW』は日本では1998年10月発売だったので1年半ぶり、海外では1999年4月リリースなのでほぼ1年ぶりという感覚になります。

レコーディングは前作同様、ドラムをフィル・オンディッチが担当し、それ以外のパートをすべてザックひとりでこなしています。もちろん、この頃にはすでに4人編成でライブを行っていましたが、相変わらずレコーディングでは自分の思い通りに、好き放題やっていたと。そういえば、アルバムジャケットにはバンド名のみならずザック・ワイルドと個人名も入っていますし、まあそういうことなんですよね、結局。

サウンド的には低音を効かせまくったヘヴィ路線と、前作の延長線上にあるもの。とはいえ、前作はプロデューサーを立てているのに生々しさ全開!みたいな豪快さが全面に散りばめられていましたが、本作はザックのセルフプロデュースのせいもあるのか、若干整理されているような印象すら受けます(あくまで前作比での話ですが)。実際、ダウンチューニングで低音がバリバリに効いたヘヴィさの中にも、メロディアスさやキャッチーさが垣間見えますし、その後の進化の予兆みたいなものはすでに表出しているのではないでしょうか。

……なんてこと書きましたが、冒頭3曲のミドルヘヴィ路線(「All For You」「Phoney Smiles & Fake Hellos」「13 Years Of Grief」)はただただ爆音で、無心で楽しみたいところ。この低音がビリビリいう感覚、たまらないですね。

そこからの4曲目「Rust」のダークなバラード路線は、どこかグランジバンドっぽさも感じさせます。抑揚のないメロディに相反し、ギターソロでは感情が壊れたようなプレイが楽しめるこの曲、実はザック流のブルースなんですよね。うん、良き良き。

かと思えば、「Superterrorizer」で再び地を這うようなヘヴィ路線へと回帰。「Counterfeit God」や「Ain't Life Grand」は現代的なBLACK SABBATHと言えなくもないし(特に前者のボーカル・パフォーマンスはどこかオジー・オズボーン的ですし)、ピアノをフィーチャーしたバラード「Just Killing Time」ではそれまでの暴虐性から一変、ひたすら美しい世界が展開されていく。この落差こそが、ザック・ワイルドという男の魅力でもあるんですよね。

ラストは“名は体を表す”という言葉がぴったりなタイトルトラック「Stronger Than Death」と、8分にもおよぶヘヴィブルース「Love Reign Down」で締めくくり。全11曲で50分という内容ですが、かなり濃厚な1枚に仕上がっています。

『暴挙王』という邦題がぴったりな内容ではありますが、同時にザック・ワイルドというアーティストの懐の深さも存分に堪能できる良作でもあると。特に、ギタリスト視点でいろんな発見があるだけではなく、シンガー目線でもザックの表現力が徐々に幅を広げつつあることが伝わってくるはずです。

 


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2019年8月14日 (水)

OZZY OSBOURNE『BARK AT THE MOON』(1983)

1983年12月にリリースされた、オジー・オズボーンの3rdアルバム。

1982年3月19日にランディ・ローズ(G)を事故で失い、失意のどん底だったオジー。正式な後任が決まるまではバーニー・トーメ(TORME、GILLANなど)やブラッド・ギルス(NIGHT RANGER)がライブでサポートを務めましたが、オーディションを経てジェイク・E・リー(RATT、ROUGH CUTT)が正式加入。こうしてようやく3rdアルバムの制作までこぎつけることとなりました。

レコーディングにはボブ・ディズリー(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)、ドン・エイリー(Key)という布陣が参加。トミーはライブにこそ参加していたものの、オジーとのスタジオレコーディングはこれが初となります(が、レコーディング終了後にバンドを離脱。後任としてカーマイン・アピスが加入)。

楽曲クレジットはすべてオジーの名前のみとなっていますが、ギターリフなどは当然ジェイクによるもの。ランディ時代の2作(1st『BLIZZARD OF OZZ』、2nd『DIARY OF A MADMAN』)にあった繊細さは後退し、ギタープレイ同様に豪快さの目立つ楽曲/アレンジが多いような気がします。そういう意味ではブリティッシュHR/HMを下地にしつつも、よりアメリカンな音に近づいたということなのでしょうか(本格的な“アメリカ化”は次作『THE ULTIMATE SIN』で一気に開花するわけですが)

どうしてもタイトルトラックの印象が強い本作ですが(メロディ、アレンジ、ボーカル、ギタープレイ含めすべてが完璧)、それ以外にも良曲は多数存在します。例えばマイナー調のミディアムナンバー「You're No Different」やアメリカンHR化した「Rock 'n' Roll Rebel」、スリリングなファストチューン「Centre Of Eternity」、オジーのビートルズ趣味が大きく反映されたピアノバラード「So Tired」、前作の「S.A.T.O.」をよりアメリカナイズさせたシャッフルチューン「Slow Down」、アルバムラストを飾るドラマチックな「Waiting For Darkness」……意外と良いんですよね。

前2作のイメージで接すると、その作風の違いに戸惑うのもわかります。僕も最初はそうでしたから。特に、2002年以降流通しているリミックス盤はギターと同じくらいシンセが前に出過ぎていたり、ドラムの音に変化があったりと、オリジナルミックスと異なる妙な演出が施されているので、より戸惑うんじゃないかな。可能でしたら、90年代まで流通していたCDを中古で安く手に入れるのをオススメします。

あと、現行盤と配信/ストリーミング版はボーナストラック2曲(「Spiders」「One Up The ‘B’ Side」)が追加されており、アルバムとしての完成度を落としているので、個人的にはあまりオススメしないかな。これ、いらないよマジで……。

まあ、とにかく。これ以降のオジーの作品の雛形はある程度ここで完成しているし、もっと言えば90年代の大ヒット作『NO MORE TEARS』(1991年)の原点でもあるのかなと。そういう意味でも、非常に重要な1枚だと思っています。

 


▼OZZY OSBOURNE『BARK AT THE MOON』
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2019年8月13日 (火)

BLACK SABBATH『SABBATH BLOODY SABBATH』(1973)

BLACK SABBATHが1973年12月に発表した5thアルバム。全英4位、全米11位という好記録を残しており、本作までを初期サバスの黄金期と認識するファンも少なくないようです。

『血まみれの安息日』の邦題でHR/HMファンの間ではおなじみのこのアルバム。前作『VOL.4』(1972年)では従来の“らしさ”に拍車がかかりつつも、新たな実験にも取り掛かるなどバンドとしての意欲が伝わってきましたが、この新作制作に入る際には新曲がひとつもできていなかったとのこと。つまり、バンドとしては枯渇状態にあったようです。

その要因のひとつに、オジー・オズボーン(Vo)をはじめとするメンバーのドラッグ問題もバンドに大きな影を落としていたことは否めません。ですが、トニー・アイオミ(G)はあるとき、起死回生の一撃となるギターリフに出会います。それがタイトルトラック「Sabbath Bloody Sabbath」のメインリフでした。

その「Sabbath Bloody Sabbath」からスタートするこのアルバム、とにかく「Sabbath Bloody Sabbath」の完成度が素晴らしいのなんのって。リフの強烈さはもちろんのこと、そこに乗るオジーの甲高い声、Bメロのジャジーなフレージングや後半の盛り上がりなど、サバスが山をひとつ乗り越えてまた新たな山を登り始めた、そんな“次への鍵”になっていたんじゃないかと思います。

続く「A National Acrobat」や「Sabbra Cadabra」といい、ラストの「Spiral Architect」といい、サバスのサバスたる所以が詰め込まれているし、中でも特に「Spiral Architect」は前作での実験が結実したようなアレンジ含め素晴らしいのなんの。

かと思えば、サイケデリックなロックチューン「Killing Yourself To Live」やシンセを前面に打ち出した「Who Are You?」、グルーヴィーな「Looking For Today」、アコギとピアノなどで構成された「Fluff」は確実に『VOL.4』がなかったら生まれなかっただろう楽曲群だし。実は意外と粒ぞろいな1枚なんじゃないかと思っています。

実は10代〜20代前半の自分は完全なる『MASTER OF REALITY』(1971年)&『VOL.4』信者で、有名曲の多い2ndアルバム『PARANOID』(1970年) や表題曲しか聴きどころがない(と思い込んでいた)本作を毛嫌いしていました。でもね、年を取るとキャッチーな『PARANOID』はもちろんのこと、良い意味で“らしくない”ことにトライしようとした本作が愛おしく思えてくるんですよね。不思議なものです。

というわけで、僕的にはオジー在籍時のサバスに捨て作なし……と思っております(今後、6作目『SABOTAGE』から8作目『NEVER SAY DIE!』、さらにはラスト作『13』までを取り上げる機会があると思うので、そちらも好意的に触れていきたいと思います)。

 


▼BLACK SABBATH『SABBATH BLOODY SABBATH』
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2019年8月12日 (月)

SAINT VITUS『SAINT VITUS』(2019)

ロサンゼルス出身のドゥームメタルバンドSAINT VITUSが2019年5月に発表した、通算9作目のオリジナルアルバム。

前作『LILLIE: F-65』(2012年)から7年ぶりの新作にあたり(そもそも前作自体が解散〜再結成を経ての17年ぶりの新作だったので、7年くらいじゃ驚きもしませんが)、ワイノ(Vo)脱退を経て2015年に再々加入した初代シンガーのスコット・リーガーズ(Vo)を含む新編成で初のサルバムとなります。

ベーシストもオリジナルメンバーのマーク・アダムスの離脱/パット・ブルダーズの加入という事情もあり、果たしてデビューアルバム(1984年)以来となるセルフタイトルに込めた意味や意気込みなど、どういったものがあるのか……恐る恐るアルバムを手にしたのですが、そんな不安をオープニングの「Remains」にて払拭してくれます。

BLACK SABBATH直系のミドル/スローナンバーを軸に、どこかオジー・オズボーンにも似た歌い上げや、時にドスの効いたヘヴィな歌唱、地を這うようなリズム隊の重厚さ、もはやヴィンテージサウンドと呼べるようなギターの音色と、重苦しいリズムとボーカルの合間をうねるように暴れまわるギターリフ&ギターソロ。定番と言っちゃあ定番かもしれませんが、そこには他のバンドとは比にならない説得力が感じられます。

なんていうんでしょうね、ワインだったらボジョレーと年季の入った熟成品くらいの違いといいますか。真新しさは皆無なんですが、だからこそどんな小細工も通用しない鉄壁さで周りに誰も寄せ付けない、唯一無二感が伝わってくるんです。

どこかホラー映画のサウンドトラックのようでもあり、例えば「A Prelude to...」から「Bloodshed」への組曲的構成はホラー映画のクライマックスが思い浮かびますし、「City Park」の不穏さなんて“まんま”ですからね。不気味な笑い声のサンプリングで終わったかと思うと、そのまま悪魔が召喚されるんじゃないかってくらい不気味なギターリフが鳴り響く「Last Breath」へと続く。もはや本家のサバスですら真似できない領域に突入した、そんな印象すら受けます。

ここで余韻を残して終わる……と思いきや、最後の最後に1分半程度の高速ハードコアチューン「Useless」で唐突に締めくくるあたりも、彼らのバンドとしてのこだわりや、どこから生まれたのかというルーツを証明するようで、思わずニヤリとしてしまいます。いいですね、この最後にハッとさせられる構成。

この手のバンドに決して詳しいわけではありませんが、そんな自分でもすんなり楽しめてしまう良作。このジャンルの入り口としてはうってつけの1枚じゃないでしょうか。

 


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2019年8月11日 (日)

THY ART IS MURDER『HUMAN TARGET』(2019)

2019年7月下旬にリリースされた、THY ART IS MURDERの5thアルバム。

THY ART IS MURDERは2006年に結成された、オーストラリア出身の5人組デスコアバンド。2008年にデビューEP『INFINITE DEATH』を発表し、地元のインディーズチャートでトップ10入りという好記録を残しています。さらに、その後もエクストリームメタルバンドとして本国で初めてメインストリーム・チャートTOP40入りを果たしたほか、3rdアルバム『HOLY WAR』(2015年)がオーストラリア出身のエクストリームメタルバンドとして初のBillboard 200(総合アルバムチャート)TOP100入り(82位)を実現させています。

前作『DEAR DESOLATION』(2017年)から2年ぶりの新作にあたる今作は、2ndアルバム『HATE』(2012年)から4作連続でウィル・パットニー(PIG DESTROYER、MISS MAY I、SHADOWS FALLなど)をプロデューサーに迎えて制作。デスコア色を残しつつも、ジェントなどからの影響を見せつつ、さらにオールドスクールなデスメタルやグラインドコアの要素を強めている、そんな印象を受けました。

ということもあり、モダンなエクストリームミュージックを愛好する者はもちろんのこと、90年代〜ゼロ年代前半のエクストリームメタルを愛聴してきたリスナーにも非常にとっつきやすい1枚かもしれません。とはいえ、ジャンルがジャンルなので、その「とっつきやすさ」というのも一般的な「とっつきやすさ」とは次元が違うわけですが(笑)。

とにかく、オープニングの「Human Target」から4曲目「Make America Hate Again」まで、1曲1曲が3分少々と非常にコンパクトなのでスルスル聴き進めることができます。なもんで、そこからの5曲目「Eternal Suffering」の不穏なオープニング〜ブラストビート炸裂のアレンジには、思わず鳥肌が立つのではないでしょうか。個人的にはこの構成、大好きです。

後半も基本的にはコンパクトな楽曲が並ぶのですが、ラスト2曲……「Eye For An Eye」「Chemical Christ」の“異物感”は非常にクセになるものがあります。むちゃくちゃカッコいい……言語力がどんどん減退していくような、そんな壮絶さと爽快さを併せ持つこの流れ、本当に最高以外の何モノでもありません。

10曲で38分強という長さも程よいですし、何よりもオープニングの「Human Target」から何も考えずに楽しめる、有無を言わせぬ破壊力を持っている(とはいいながらも、実は歌詞がかなり社会派なので、できることなら歌詞対訳と照らし合わせて楽しんでもらいたい……とも思ったり)。日々の茹だるような暑さを忘れさせてくれる、あるいはより暑くたぎらせてくれる、最強の1枚です。

 


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2019年8月10日 (土)

SLIPKNOT『WE ARE NOT YOUR KIND』(2019)

ついにリリースされたSLIPKNOTの約5年ぶり、通算6作目のオリジナルアルバム。

このアルバムに関しては、実はすでにリアルサウンドさんのメタル/ラウド系新譜キュレーション連載(7月21日掲載分)にてたっぷり書いてしまっており、今さら付け加えることもないのかな……と思いつつ、改めてCDで、そしてストリーミングで聴いてみたのですが、やはり基本的な印象は初聴のときとほぼ変わりませんでした。うん、よいアルバム。

なので、詳しくはこちら(リアルサウンド - Slipknot、Abbath、GYZE……西廣智一が選ぶ話題性の高いHR/HM新作6作)にて確認していただくとして。

トータル約63分という長さ(日本盤ボーナストラックを除く)は、実は前作『.5: THE GRAY CHAPTER』(2014年)の通常盤と一緒なんですよね。にも関わらず、僕はこの新作を初めて聴いたとき、前作のときに感じた「……長すぎ!」という印象をまったく得ることがなかった。なぜなんでしょう。

それは、新譜キュレーション連載で書いた下記の行に集約されているのかなと思いました。以下、引用しますね。

筆者は常々、Slipknotのアルバムは「ヘヴィさ/攻撃性」「ポップさ/メロディアスさ」「耽美さ/刹那さ」の3つの要素で構成されていると考えており、前作はこのうち「ヘヴィさ/攻撃性」に長けたぶん「ポップさ/メロディアスさ」が若干後退した1枚と感じていました。これは当時のバンドの状況を考えれば納得のいく話かと思います。しかし、今回の新作ではこの3要素がアルバムの中で一番良いバランス感で三角形を作っている。ヘヴィな曲はとことんヘヴィだし、そのヘヴィさもエクストリームさを追求したものから90年代ヘヴィロック的なもの、あるいは80年代のHR/HMを彷彿とさせるギターリフまでさまざま。かと思えば、「ポップさ/メロディアスさ」「耽美さ/刹那さ」に特化した楽曲もしっかり存在しており、1曲1曲の際立ち方は過去最高ではないかと感じました。その3要素の中心にある楽曲が、リードトラックとして公開された「Unsainted」というのも、なるほどと頷けるものがあります。

うん、これで十分だ(笑)。ただ、そこに付け加えるとしたら、1曲1曲がしっかり考えて作り込まれているという点。ジム・ルート(G)はリリースインタビューで「このアルバムを作ったときにインスピレーションになったのは、シングルだけじゃなくフルアルバムを作ることにこだわっているアーティストたちだ。今の音楽業界はとにかくシングルを出して稼ぐ方向に傾いているけど、俺たちスリップノットはひとつの作品として完成している、アルバムでしか味わえない体験を届けたかった」と発言していますが、もちろんアルバム通して聴いたときの破壊力は抜群ですが、それには1曲1曲の完成度がしっかりしていないといけない。つまり、「シングルを作るための、シングルを作った結果のアルバム」ではなくて「良い曲しかないアルバムだったから、結果としてシングルがたくさん“切れた”」という従来の(?)アルバム制作方法を意識した結果の1枚ということなんでしょう(とはいえ、SLIPKNOTがこれまで「シングルを意識した制作方法」をしたことなんで皆無でしょうけどね)。

なんにせよ、バンドのデビュー20周年にふさわしい集大成的な力作。早くライブで聴きたい!って曲ばかりが詰まっているので、来年3月の『KNOTFEST JAPAN』も本当に楽しみです。

 


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2019年8月 9日 (金)

SCORPIONS『COMEBLACK』(2011)

2011年11月に発表された、SCORPIONSのカバーアルバム。日本では若干遅れて2012年1月にリリースされています。

前年3月に解散を前提として制作されたオリジナルアルバム『STING IN THE TAIL』(2010年)を発表し、以降のワールドツアーが好評を博したSCORPIONS。同作は本国ドイツで2位、アメリカでも17年ぶりにトップ30入り(23位)を果たし、それに気を良くしたバンドは「全世界のファンへの感謝」を形とするために、“アンコール盤”として新たなスタジオアルバムを制作しました。

本作はすべて新録曲で構成されていますが、新曲は一切含まれておりません。全13曲(ボーナストラック除く)中、前半の7曲は1980〜1990年のヒット曲を当時の編成で再録したもの。クラウス・マイネ(Vo)が以前ほどハイトーンが出せなくなっているため、すべてダウンチューニングとなっています。録音状態やミックスは非常にドライなもので、「Rock You Like A Hurricane」のようなキャッチーな楽曲には合っているのですが、オープニングの「Rhythm Of Love」はちょっと物足りなさを感じてしまいます(もともと、原曲がビッグ・プロダクションで派手でしたしね)。

後半6曲は、バンドが影響を受けた60年代のアーティストの楽曲をカバーしたもの。そのセレクトはハードロックとは程遠いもので、THE BEATLES、THE KINKS、THE ROLLING STONES、T. REX、SMALL FACES、グロリア・ジョーンズとブリティッシュビートが中心。唯一、グロリア・ジョーンズのみ浮いていますが、これはピックアップした「Tainted Love」がSOFT CELLがカバーしていることから、実はSOFT CELLのほうを取り上げたつもりなのかな、と。そう考えればラインナップ的にもT. REXと並ばせることができますし、非常に腑に落ちるものもありますね。

どの曲も程よい感じにハードロック化されており、前半7曲との差を感じさせないアレンジだと思いました。「Tainted Love」も「Children Of The Revolution」もダウンチューニングのせいもあって、適度なヘヴィさがありますし。THE KINKSの「All Day And All Of The Night」も「ああ、ギターリフという点でかなり影響受けているんだな」という気づきもありましたし。

ちなみに、デラックス盤には「Big City Nights」のセルフカバーと、フランスの女性歌手アマンジーヌ・ブルジョワとの「Still Loving You」デュエットバージョン、「Shapes Of Things」(THE YARDBIRDSカバー)が追加されています。後者2曲は別として、なぜ「Big City Nights」は本編に入れなかった?という疑問が残りますが、日本盤およびストリーミングサービスではすべて聴けるので問題なし。

これが全盛期にリリースされていたら「単なる手抜き」と揶揄されていたと思いますが、解散が決定した中での最後のプレゼントというポジションなら“アリ”だったわけです。ところが、ご存知のとおりSCORPIONSはその後解散を撤回。さらなるオリジナルアルバム『RETURN TO FOREVER』(2015年)も発表し、2016年秋には来日公演も行なっています。となると、このアルバム……今となっては非常にトンチキな1枚なわけです。

……まあ、こういう肩の力の抜けたSCORPIONSも悪くない、よね?(苦笑)

 


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2019年8月 8日 (木)

THE MAN『ULTIMATE FORMATION』(2019)

ANTHEMの柴田直人(B)を中心に結成されたHR/HMトリビュートバンド、THE MANが2019年7月に発表したライブアルバム。

THE MANという名前はANTHEMのアナグラムで、参加メンバーも現ANTHEMの森川之雄(Vo)、清水明男(G)、田丸勇(Dr)という「ANTHEMの楽曲を演奏しないANTHEM」であるわけですが、このほかにさまざまなゲストが参加することによって、クラシックロックの数々をANTHEMでは出せない色で表現しています。

このライブ音源は今年2月、新宿LOFTで収録されたもので、曲によってゲストミュージシャンとして小野正利(Vo/GALNERYUS)、YUHKI(Key/GALNERYUS)、島紀史(G/Concerto Moon)が参加しています。

演奏されている楽曲もJUDAS PRIESTゲイリー・ムーアDIORAINBOWTHIN LIZZYMICHAEL SCHENKER GROUPUFODEEP PURPLEMOTÖRHEAD など、まさにクラシックロックの名にふさわしいアーティストのものばかり。誰もが一度は聴いたことがある名曲を、カバーするアーティストごとに編成を変えて演奏しているわけです。

例えば冒頭の3曲、JUDAS PRIESTの楽曲ではANTHEMの4人に島が加わったツインギター編成でプレイ。これは納得ですね。かと思えば、DIOやRAINBOWの楽曲では柴田&田丸のANTHEMリズム隊に小野、島、YUHKIという変則的な編成でライブに臨んでいます。小野さんの歌うDIOやRAINBOWナンバー、納得です。

個人的にすごくグッときたのが、URIAH HEEPの「July Morning」。あれ、清水さんのギターってこんなに官能的だったっけ?とクレジットを確認したほどです。YUHKIさんのオルガンもめっちゃいい味だしているし、何よりも森川さんのボーカルが……男泣きしそうなほどの哀愁味が漂っていて、最高以外のなにものでもない。

かと思えば、MOTÖRHEAD「Iron Fist」ではレミー顔負けのディストーションボイスで聴く者を完全にノックアウト。ホント、すごいシンガーですね。

そして、小野さんのロニー・ジェイムズ・ディオ……過去にも彼のソロアルバムなどで披露されてきましたが、やっぱり良いですね。僕はこの人がう歌うディオとクラウス・マイネ(SCORPIONS)が大好きです。

こういうカバーってやっぱりそれなりに実力が発揮される場でもあると思うので、こういう国内一流どころのHR/HMアーティストたちが一堂に会して楽しむ姿がパッケージされるのは、非常に良い企画だと思いました。しかも、それが映像ではなく音源のみというのが、また最高じゃないですか。

 


▼THE MAN『ULTIMATE FORMATION』
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2019年8月 7日 (水)

SKILLET『VICTORIOUS』(2019)

男女混合4人組ヘヴィロックバンド、SKILLETが2019年8月上旬にリリースした10thアルバム。

7作目の『AWAKE』(2009年)が全米2位まで上昇し、200万枚以上を売り上げるヒット作となり、同作からシングルカットされた「Monster」はアメリカだけでも300万枚を超えるメガヒットシングルとなりました。僕自身も同作で彼らのことを初めて知ったのですが、いわゆる“クリスチャン・ロック/メタル”の部類に入ることもあって最初は若干躊躇したものの、音そのものはモダンなヘヴィロックだったので気にせずよく聴いていた記憶があります。

本作もここ数作の延長線上にある作風ですが、スタジアムロック風の音作りにモダンなエレクトロ風味をまぶし、1曲3分台、長くても4分台前半というコンパクトな形でまとめた“イマドキ”の1枚に仕上げられています。なので、全12曲でも44分強というトータルランニングは最近のこの手のアルバムの中でもかなり聴きやすい類ではないでしょうか。

アルバムのタイトルトラック「Victorious」はLINKIN PARKのチェスター・ベニントンの死に衝撃を受け、チェスターに向けて、そしてまだ悲しみの淵にいる彼のファンに向けて書いたものとのこと。

フロントマンのジョン・クーパー(Vo, B)は「うつ病について調べて、理解して、とても悲しくなった。この曲は落ち込んでいる人たちに向けてかける言葉なんだ。チェスター・ベニントンと会ったことはないけれど、俺はLINKIN PARKの大ファンだ。彼が亡くなったとき、信じられなかった。だからもし彼に会うチャンスがあったら伝えたいことを曲にしたかったんだ。それが『Victorious』さ。葛藤している人たちが乗り越えるのを助けられれば良いな」とコメントを寄せています。

また、長いキャリアのわりにこれが初のセルフプロデュース作でもあり、ジョンと彼の妻でもあるコリー・クーパー(G, Key)が大半を手がけているとのこと。今や男女混合ボーカルのヘヴィロックバンドは多数存在しますが、その多くは女性ボーカルを主軸に起き、男性ボーカルはスパイスとして用いられることが多いと思います。が、SKILLETの場合はあくまでジョン(男性)のボーカルが軸となり、そこにコリー(女性)の歌声が合いの手のように入る。このバランス感が実は絶妙に気持ち良かったりするんですよね。

前作『UNLEASHED』(2016年)は全米3位まで上昇し、最終的に50万枚以上を売り上げましたが、あの頃よりもロックが低迷したアメリカで本作がどこまで検討するのか、非常に気になるところです。1曲1曲はアリーナロック風味のポップロックという趣ですし、こういう作品だからこそウケてほしいんだけどなあ……。

 


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2019年8月 6日 (火)

ALCATRAZZ『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』(1983)

ALCATRAZZが1983年10月にリリースしたデビューアルバム。日本では2ヶ月遅れて、同年12月に発売されています。

MICHAEL SCHENKER GROUPを脱退したグラハム・ボネット(Vo)が、自身がオーバーグラウンドに進出するきっかけとなったRAINBOWと同系統のバンドを組もうとして、元NEW ENGLANDのメンバーとともに結成したのがこのALCATRAZZ。RAINBOW的ということで、当然リッチー・ブラックモアから影響を受けたギタリストを探すわけですが、そこで白羽の矢が立ったのがSTEELERという当時はほぼ無名だったバンド(のちにボーカルのロン・キールがKEELを、ドラムのマーク・エドワーズがLIONを結成することで、ここ日本では特に再注目されるようになるわけですが)のギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンというわけです。

……なんて説明、古くからのHR/HMファンにはもはや必要ないかと思いますが、念のため(笑)。

今回このタイミングに紹介しようと思ったのは、今日という日に「Hiroshima Mon Amour」をじっくり聴きたいなと思ったから。ご存知のとおり、この今日は1945年8月5日に原子力爆弾が投下された広島に捧げたものです。歌詞に登場する“Little Boy”はその広島に落とされた原爆のコードネームを意味するもので、歌詞の中には投下後の悲惨さがさまざまな比喩で表現されています。

初めてこのアルバムを聴いたときは、オープニングを飾る「Island In The Sun」のキャッチーさや、RAINBOWっぽいリフを持つ「Jet To Jet」にばかり耳がいきがちでしたが、やっぱりこのアルバムは(個人的には)「Hiroshima Mon Amour」なんですよね。この曲でのグラハムのハイトーンを聴くと、自然と涙が溢れそうになるし、イングヴェイの速弾きを含むギターソロもここでは負の感情の高まりを見事に投影してくれていると思うし。

実は、本当にたまたまなんですが、今年の8月6日は広島に滞在しているんですね。自分の誕生日に広島にいることはもちろん生まれてから初めての経験なのですが、だからこそ今日はこの曲を静かに聴きたいな、と。

やっつけっぽくてちょっとアレですが、もちろんそのほかの楽曲も素晴らしいですし、RAINBOW系統のハードロックが好きなリスナーなら絶対に聴いておくべき1枚だと思います。個人的には捨て曲なし、ってくらい好きな1枚ですし。

と同時に、やはり日本人なら「Hiroshima Mon Amour」を歌詞の内容含めて、じっくりと吟味してもらいたい。そう願ってやみません。

 


▼ALCATRAZZ『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』
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2019年8月 5日 (月)

SOUNDGARDEN『LIVE FROM THE ARTISTS DEN』(2019)

2019年7月末にリリースされた、SOUNDGARDENのライブCD/Blu-ray。バンドにとっては再結成直後の2011年3月に発表された『LIVE ON I-5』に続く2作目のライブアルバムとなります。

本作は、結果的に最後のスタジオアルバムとなってしまった『KING ANIMAL』(2012年)リリース後、2013年2月17日に行われた全米ウィンターツアーの最終公演、ロサンゼルス・The Wiltern Theaterでのライブを完全収録したもの。アルバムタイトルにもある同名の人気音楽番組のために行われたライブでもあり、当時の新曲に加え、おなじみの代表曲、番組のために用意されたレア曲を含む貴重なライブだったそうです。特に「Blind Dogs」(映画『バスケットボール・ダイアリーズ』サントラ収録曲)がライブで演奏されたのは、この公演が初めてだったとのこと。それもあり、ファンの間では長らく音源化が待たれていたライブなんだとか。

確かに、冒頭から「Incessant Mace」という超初期の長尺曲からゆらゆら始まったかと思えば、「My Wave」「Been Away Too Long」と新旧のアップチューンが続き、さらに「Jesus Christ Pose」「Flower」といった初期の代表曲で畳み掛けてくる。この流れだけ見ても、通常のライブよりもスペシャル感の強いセットリストなんじゃないかという気がします。

CDには全29曲がディスク2枚にわたり収録されており、このうち17曲が初音源化とのこと。結局実現しなかった『KING ANIMAL』を携えた来日公演、いや、最初の解散前のラスト作である『DOWN ON THE UPSIDE』(1996年)での来日も実現していないため、実質ここ20年くらい彼らはここ日本で“空白”に近い存在だったわけで、だからこそこのライブアルバムはその“穴”を埋める貴重なアイテムにもなるのです。結果的に、未来はないわけですけど……。

音源を聴いてもらえばわかるように、クリス・コーネル(Vo, G)の声の調子は決してよろしくはありません。まあ、晩年は以前のように思うように高音が出ない状態でしたし、これが平常運転だったという可能性もありますが……なんにせよ、我々日本人が生で体験できなかった“全米No.1獲得後のSOUNDGARDEN”を、“再結成後のSOUNDGARDEN”をたっぷり堪能できるわけですから、聴かない理由はありません。

「Jesus Christ Pose」のアグレッシヴさに驚かされたり、そこに乗るクリスの悲痛な歌声に悲しさを覚えたり、いろいろ感情が追いつかない部分もありますが、演奏に関しては熟練とは相反する前のめり感が感じられるのではないでしょうか。特に10分以上にわたるヘヴィチューン「Slaves & Bulldozers」からひたすらフィードバックが続く「Feedbacchanal」という怒涛のエンディングは圧巻の一言なので、最初から最後まで心して向き合ってほしいと思います。

なお、本作はBlu-ray版も同時発売されているようです。僕はまだ未見ですが、できることなら映像でも楽しんでいただけたらと……なにせSOUNDGARDENの映像作品がBlu-ray化されるの、これが初めてだと思うので。

 


▼SOUNDGARDEN『LIVE FROM THE ARTISTS DEN』
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2019年8月 4日 (日)

KING CRIMSON『DISCIPLINE』(1981)

1981年9月にリリースされた、KING CRIMSON通算8作目のオリジナルアルバム。

ロバート・フリップ(G)、ジョン・ウェットン(Vo, B)、ビル・ブルーフォード(Dr)のトリオ編成を軸に、デヴィッド・クロス(Violin)、メル・コリンズ(Sax)、イアン・マクドナルド(Sax)などをゲストに迎えた、70年代クリムゾンのラスト作『RED』(1974年)をもってその活動を一旦終了させたクリムゾン。しかし、80年代に入りロバート・フリップ&ビル・ブルーフォードにエイドリアン・ブリュー(Vo, G)、トニー・レヴィン(B, Stick)を加えた4人編成で再始動。このアルバムで新生クリムゾンの全貌が明らかとなりました。

初期のフリーキーなスタイル、後期のメタリックなサウンドなど時期によって表現方法や奏でるサウンドに大きな変化が生じるクリムゾンですが、80'sクリムゾンは過去のどの時期とも似ていない新たなスタイルを確立。時期的なものもあるのでしょうが、非常にニューウェイヴにも似た、ダンサブルなサウンドが展開されています。

まず、聴いていきなり驚くのが「Elephant Talk」での像の鳴き声を真似たエイドリアン・ブリューのギタープレイ。かなり昔、日本のテレビCMでも動物の鳴き真似プレイを目にすることができましたが、かつそのベースとなるサウンドが非常にダンサブルでメタルのメの字はおろか、プログレのプの字すら皆無のヘロヘロサウンド&ボーカルに最初は「?っ」とひっくり返ったものです(といっても、僕自身はリアルタイムではなく、発売から10年以上経ってからの初聴だったのですが)。

「Frame By Frame」でのポリリズムを用いたギターアンサンブルやバンドアレンジに、かろうじてプログレの匂いを感じることができますが、続くストーナンバー「Matte Kudasai」の平和な感じはちょっと……と、頭3曲に肩を落としたこと、今でもよく覚えています(笑)。

ところが、4曲目「Indiscipline」でその雰囲気が一変。そうそう、これが聴きたかったんだ!という重厚なアンサンブルが突如繰り広げられるのです。これこそ、プログレッシヴロックのクリムゾンだ!と。ボーカルの軽薄さだけはどうにもなりませんが(笑)、この1曲にどれだけ救われたことか。

後半も再びダンサブルな「Thela Hun Ginjeet」や、当時のテクノポップの影響を受けたかのような(シンセ・ギターの影響も大きいのでしょうね)「The Sheltering Sky」、ダンサブルなプログレ・クリムゾンという「Descipline」と、かなりバラエティに富んだ内容になっています。

最初こそ面を食らった1枚ですが、実は今ではトップクラスで好きな1枚でもあります。それは、リアルタイムで体験した90年代のクリムゾンはこの“ニューウェイヴ期”なくしては語れないから。これがあったから、僕の好きな90年代のクリムゾンが存在するんだ、ここにいろんなヒントが隠されているんだと思いながら聴き返していたら、いろんな発見があったし、どんどん好きになっていった、と。『クリムゾン・キングの宮殿』(1969年)の頃とはまったく異なる存在ではありますが、これもクリムゾン。仰々しいプログレ時代が苦手という人にこそ、一度は触れてもらいたい「気軽に聴けるクリムゾン」なのです。

 


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2019年8月 3日 (土)

TOOL『10,000 DAYS』(2006)

2006年5月にリリースされた、TOOL通算4作目のオリジナルフルアルバム。

3rdアルバム『LATERALUS』(2001年)から5年ぶりの新作で、前作から引き続き全米1位を獲得。アメリカ国内だけでも100万枚以上ものセールスを記録しており、同作発表後には『SUMMER SONIC 2006』で三度目の来日公演も実現。翌2007年2月には自身二度目の単独来日ツアーも敢行しております。

プログレッシヴさに拍車がかかった前作を経て制作された今作は、方向性的には『LATERALUS』の延長線上にあるかと思います。が、今作のほうが若干地味目で取っ付きにくさが強いイメージを受けます。言い方は悪いけど、TOOL上級者向けアルバムみたいな。

アルバムを重ねるごとに、確かに個々のプレイやアンサンブルの難易度が上がっているのは間違いありません。事実、もっとも大ヒットした2ndアルバム『AENIMA』(1996年)が持っていた“難解だけどわかりやすい”という絶妙なバランス感は続く『LATERALUS』で一旦崩壊。それにより、現在に至るまで彼らが維持している“ヘヴィメタル/ラウドロック版プログレッシヴサウンド”というスタイルが確立されたことも間違いないと思います。

あと、過去2作に漂っていた宗教的な雰囲気が本作ではより強まっているのかな?という印象も。これもあくまでイメージでしかありませんが、アメリカという国や文化を理解する上でやはり欠かせないのが宗教感。ここ日本ではそのへんの解釈や個々の信仰がまちまちだったりするので、なかなか深い部分まで理解するのは難しいのかもしれません。ただ、TOOL然り、同じくメイナード・キーナン(Vo)が所属するA PERFECT CIRCLE然り、そこは切っても切り離せない要素なのかな。

さらに、そういった要素を強めているのが、ボーカルのメロディラインであったり短尺のインタールドであったり、シタールやタブラなど楽器を効果的に用いたサウンドエフェクトにもあると思うのですが……いかがでしょう。

そのへんも含め、僕はこのアルバムを非常に“2000年代のアメリカらしい”1枚だと認識しています。あの時代ならではの光景が浮かんでくるといいますか。だからこそ、本当はその後の混沌としたアメリカを随時に表現してほしかったのですが……次作が届くのが2019年8月30日、13年以上もかかってしまったというのも、また彼ららしいといいますか。

本作を含むTOOLの過去作が8月2日からストリーミングサービスでの配信スタート、というニュースも飛び込んできております。日本でも同日の日中から聴けるようになっていますが、おそらく新作もリリースと同時にストリーミング開始されると思います。はたしてどんな内容になるのか、今からワクワクですね。

あと、今回もCDは特殊パッケージなのかも気になるところ。『AENIMA』のホログラム風ジャケット、『LATERALUS』の特殊ケース、さらには『10,000 DAYS』のメガネ風デジパック(笑)など、毎回凝ったパッケージで(主に収納面で)困らせてきた彼らが、次は何に手を出すのか。ガクブルしながら待ちたいと思います。

 


▼TOOL『10,000 DAYS』
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2019年8月 2日 (金)

KILLSWITCH ENGAGE『DISARM THE DESCENT』(2013)

2013年4月にリリースされた、KILLSWITCH ENGAGEの6thアルバム。日本では1週間前倒しの、3月末に先行発売されています。

バンドがセールス的に初めて成功を収めた3作目『THE END OF HEARTACHE』(2004年)から二度目のセルフタイトル作となる前作『KILLSWITCH ENGAGE』(2009年)まで、約10年近くにわたり在籍したハワード・ジョーンズ(Vo)が脱退し、初代シンガーのジェリー・リーチ(Vo)が復帰したのが本作。チャート的に過去最高(全米7位)を記録した前作から引き続き、本作も全米7位という数字を残しています。

ジェシー在籍時の2ndアルバム『ALIVE OR JUST BREATHING』(2002年)がメタルコアというジャンルにおいて、ひとつの教科書的な存在として高く評価され、続くハワード加入後の『THE END OF HEARTACHE』でメロディアスなスタイルを強調することで、メタルコアというジャンルをさらに高い次元へと到達させたKILLSWITCH ENGAGE。特に『ALIVE OR JUST BREATHING』は現在に至るまで神聖化されていることもあり、ジェシーの再加入により当時は「新作は“第二の『ALIVE OR JUST BREATHING』”になるのでは!?」なんて囁かれたほどでした。

しかし、聴いていただけばおわかりのように、ここで展開されている基本的なスタイルは『THE END OF HEARTACHE』から前作『KILLSWITCH ENGAGE』までバンドが築き上げてきた独自のスタイルを、さらに高い次元に昇華させたもの。そりゃあそうなりますよね。なもんで、“第二の『ALIVE OR JUST BREATHING』”を期待した層からは当時相当低い評価を与えられたのでした。

ですが、これそんな酷いアルバム? いや、むしろ“メタルコア以降”のヘヴィメタル作品としてはかなりレベルの高い1枚だと思うのですが、いかがでしょう?

ジェシーらしさも要所要所に垣間見えるし、何よりもクリーン&メロウなパートを高い表現力で聴かせてくれる彼の実力たるや、相当なものがあると思います。確かに歌唱力やクリーンパートの個性という点においては前任のハワードに劣るかもしれません。が、スクリームやグロウルに関してはさすがの一言ですし、この緩急こそが“今のKILLSWITCH ENGAGE”なのだ、本作はその“今のKILLSWITCH ENGAGE”をより高いレベルへと導いた力作なのだ、と思うのですが……。

アグレッションという点においては過去数作の中では一番ですし、全12曲で40分少々というトータルランニングも文句なしで、とにかく最初から最後まで気持ちよく聴ける(デラックス盤はボーナストラック4曲が追加されて54分。これもこれで悪くない)。まもなくジェシー再加入後3作目となる新作『ATONEMENT』がリリースされます。ぜひこのタイミングに、ジェシー再加入後の作品をしっかり振り返ってみてはどうでしょう。

 


▼KILLSWITCH ENGAGE『DISARM THE DESCENT』
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2019年8月 1日 (木)

KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003)

2003年11月にリリースされた、KORN通算6作目のオリジナルアルバム。

マイケル・ベインホーン(SOUNDGARNDENRED HOT CHILI PEPPERSオジー・オズボーンなど)をプロデューサーに迎え制作した前作『UNTOUCHABLES』(2002年)で、メロディアスかつプログレッシヴな作風へとシフトして賛否両論を巻き起こしたKORN。同作から1年弱という短期間で、今度は初のセルフプロデュース(ジョナサン・デイヴィスがメイン、フランク・フィリペッティがサポート&ミックス)に乗り出します。

アルバム発売の数ヶ月前には映画『トゥーム・レイダー2』のテーマソングとして、新曲「Did My Time」を提供。リリース当時のレビューにも書きましたが、この曲を聴く限りでは『UNTOUCHABLES』の延長線上にある作風になるのかなと思っていました。

で、実際に届けられたアルバム。オープニング「Right Now」のギターリフを聴いて「お、原点回帰?」と若干期待したものの、確かにヘヴィだけど基本的には前作の延長線上にあるスタイルで間違いないのかなと。確かにボーカルスタイルは若干初期の歌唱法を取り戻しつつありますが、それもアルバム全体においてはスパイスといったほうがいいのかな。やっぱり全体を通して耳に残るのは、ジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱力・表現力の向上と、その彼が扱うキャッチーなメロディなのですから。

KORNらしい危うさはちゃんと残しつつ、どこか整理された楽曲構成・アレンジに初期の無軌道さを求めるのは、もはや死んだ子の歳を数えるようなもの。バンドとしてどんどん進化していく姿を冷静に受け入れつつ、彼らがどこへ進んで行きたいのか、何をしたいのかを当時は冷静に考えたりしたものです。

あ、「全体を通して耳に残る」のは何もキャッチーな側面だけではありません。そういった楽曲を表現するサウンドのえげつなさは、もしかしたら過去イチかもしれません。低音の鳴りやそれらを生々しい感触でパッケージしたミキシングは、初期2作のそれとは異なるものの非常に現代的で、こりゃあ日本人には真似できないは……と驚いたこともよく覚えています。

今聴き返すと、「結局は1stアルバム『KORN』(1994年)や2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)の衝動はもはや取り戻せないものの、その表現方法になるべく近づけつつ、セールス的に大成功を収めた3rd『FOLLOW THE LEADER』(1998年)や4th『ISSUES』(1999年)のスタイルをベースに、5th『UNTOUCHABLES』で試みた実験の成果を詰め込む」という最初の10年の集大成だったのかなと。そう考えると、本作を最後にヘッド(G)が脱退したのも、次作『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)でさらなる変化の時期を迎えたのも納得できるかなと。もちろん、長い歴史を経た今だからこそ言える話ですが。

ちなみに本作、当初の予定よりも前倒しでリリースされたんですよね。というのも、アルバム収録曲がネット上でリークされてしまったので、バンドやレーベル側が慌てて正規品を世に送り出したという。結果、全米チャート初登場19位、最高9位(ミリオンセールス)というこれまでの作品では低調な数字で終了するという不運な1枚となってしまいました。いや、いいアルバムなんだけどね。

 


▼KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』
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