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2019年9月

2019年9月30日 (月)

2019年9月のお仕事

2019年9月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※9月30日更新)

 

[紙] 9月30日発売「月刊エンタメ」2019年11月号にて、乃木坂46賀喜遥香インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 9月27日発売「OVERTURE」No.020にて、欅坂46原田葵インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月26日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterインタビュー「Little Glee Monsterが語る、『ECHO』で追求した“力強さ”と5周年迎えるグループのこれから」が公開されました。

[紙] 9月25日発売「CONTINUE」Vol.61にて、蒼井翔太に関するコラム「蒼井翔太とはテン年代を象徴する“J-POP界の申し子”である。」、およびエンタメコラム「CNTエンタテインメント!」を執筆しました。(Amazon

[紙] 9月25日発売「Rolling Stone Japan」Vol.8にて、BABYMETAL『METAL GALAXY』に関するコラム「新章告げる『METAL GALAXY』のすべて」を執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月24日、「リアルサウンド」にてPassCodeのアーティスト分析「PassCodeの歌声から感じる“人間味”とグループの個性 新曲「ATLAS」を聴いて」が公開されました。

[紙] 9月24日発売「TV Bros.」2019年11月号にて、PEDRO『THUMB SUCKER』、リーガルリリー『ハナヒカリ』、!!!『WALLOP』の各ディスクレビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月19日、「MTV JAPAN」ポータルサイトにて『MTV VMAJ 2019 -THE LIVE-』ライブレポートが公開されました。その他の媒体でも同様の記事が公開中です。

[WEB] 9月17日、「ドワンゴジェイピーnews」にてレポート記事「乃木坂46・賀喜遥香、“ひとり全国キャンペーン”完遂に万感!「(最後は)思わずウルっとしちゃいました」」が公開されました。その他の媒体でも同様の記事が公開中です。

[WEB] 9月15日、DIR EN GREYニューシングル「The World of Mercy」特設サイトにてコメントを提供しました。

[WEB] 9月12日、「ドワンゴジェイピーnews」にてレポート記事「乃木坂46賀喜遥香 新曲ひとりキャンペーン福岡編、公開生放送は大盛況」が公開されました。その他の媒体でも同様の記事が公開中です。

[WEB] 9月6日、「リアルサウンド」にてシド インタビュー「シドが全曲新録の『承認欲求』と17年目で目指す先「“引き算できるような音楽”がキーワード」」が公開されました。

[紙] 9月4日発売「日経エンタテインメント!」2019年10月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月4日、「ドワンゴジェイピーnews」にてレポート記事「乃木坂46賀喜遥香 地元・栃木で最新シングルをPR「帰ってこられるのはうれしい」」が公開されました。その他の媒体でも同様の記事が公開中です。

[WEB] 9月4日、「リアルサウンド」にて乃木坂46賀喜遥香&筒井あやめインタビュー「乃木坂46 賀喜遥香×筒井あやめが語る、加入から初選抜までの怒涛の日々と4期生の成長」が公開されました。

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また、8月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、Apple Musicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1908号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)

2019年9月末にリリースされた、元HANOI ROCKSアンディ・マッコイによるソロアルバム。ここ数年、ソロ名義でシングルやデジタルリリースが続いていましたが、ようやくフルアルバムというまとまった形での発売にまでこぎつけました。

純粋なソロ名義でのオリジナルアルバムとなると、自身2作目のソロアルバムにあたる『BUILDING ON TRADITION』(1995年)以来、実に24年ぶりということになるのでしょうか。特に2000年代以降はHANOI ROCKS再生やGREASE HELMET、ハノイ前に参加していたPELLE MILJOONA OYの再結成などもありましたが、アンディがメインで曲を書き、ギターを弾き、歌う純粋な“ロック”アルバムは随分と久しぶり……いつ以来だよ?って感覚ですよね。

さて、気になる内容ですが、以前ここでも紹介したデジタルシングル「The Way I Feel」(2016年)にも通ずる、「どこかいなたさがあって、哀愁味があふれんばかりの切ないメロディ」がどの曲にも詰め込まれており、ラフなロックンロール「21st Century Rocks」「Bible And A Gun」からポップでキャッチーな「Undertow」、これぞアンディという泣きメロの「The Hunger」、センチメンタルなバラード「Give A Minute, Steal A Year」、ディスコ色の強い「Seven Seas」、お得意のレゲエロック「Love It Loud」、ロックを飛び越えた完全なるラテンナンバー「Maria Maria」まで、とにかくバラエティに富んだ楽曲をたっぷり楽しむことができます。

これだけ読むと、アルバムとしてはかなり雑多でまとまりがないように感じるかもしれません。が、そこはアンディ・マッコイのこと。かれが歌い、プレイすればアンディ・マッコイ印のオリジナリティあふれる楽曲へと昇華される。なので、ラストの豪快なロックンロールナンバー「This Is Rock 'n Roll」までなんの違和感も感じることなく、スルスルと聴き進められるはずです。

なお、かつての盟友サミ・ヤッファ(B/現MICHAEL MONROE)が「Maria Maria」のみ、レコーディングに参加しているとのこと。かつてのファンには、これもうれしいサプライズですね。

マイケル・モンローがMICHAEL MONROEというバンド名義で、精力的にパンク道を追求し続ける中、アンディはこの10年マイペースで音楽活動を続けてきました。その肩の力の抜け具合はこのアルバムからも十分に伝わるはず。うん、彼はこのくらいでちょうどいいんだな。実は再生ハノイ時代よりも今のほうが、彼にとっては幸せなのかも。そう思わずにはいられない、なかなかの快作です。

なお、本作は今のところ日本盤リリース予定なし(もはや、日本盤がリリースされる海外アイテムなんてたかが知れていますが)。海外でも本国でCDが流通しているようですが、日本ではAmazonやタワーなどでの取り扱いなし。ただ、iTunesやAmazonなどでデジタルで購入できますし、Apple MusicやSpotifyにてストリーミング配信もされているので、まずはこちらでチェックしてみてはどうでしょう。

さらに、このアルバムを携えてアンディの単独来日が2020年4月に決定したとのこと。会場は新宿LOFTとこれまたえらく狭いハコですが、呼び屋があそこなので……本当に来日するのかどうか……すごく観たいんだけど、あそこが呼ぶと知っただけで萎えた自分がいます。残念だけど、今回は見合わせようかなと思います。

 


▼ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』
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2019年9月29日 (日)

CHEAP TRICK『IN COLOR』(1977)

1977年9月にリリースされた、CHEAP TRICKの2ndアルバム。

デビュー作『CHEAP TRICK』が1977年2月に発表されているので、約半年でアルバムをもう1枚完成させたことになりますね。しかも、彼らは続く3rdアルバム『HEAVEN TONIGHT』も1978年5月にリリースしているので、初期3作はものすごいペースで増産されたことになります。当時のリリースペースとしても異常に早すぎですし、それだけ創作意欲がハンパなかったという表れなんでしょうね。

プロデューサーをジャック・ダグラス(AEROSMITHNEW YORK DOLLSジョン・レノンなど)からトム・ワーマン(MOTLEY CRUEPOISONDOKKENなど)へと交代した本作では、基本的な路線は前作の延長線上にありながらも、楽曲のポップさ、キャッチーさはさらに増しているという冴えっぷりを発揮。1曲1曲がとにかくコンパクトで、オープニングのショートチューン「Hello There」こそ1分40秒程度ですが、そのほかの楽曲はどれも2〜3分程度。一番長い「Downed」ですら4分10秒程度ですからね。その結果、トータルで31分程度という聴きやすさ。最高です。

のちに武道館でのライブテイクが全米TOP10入りするヒット曲となる「I Want You To Want Me」はライブバージョンとは異なる、非常に落ち着いた雰囲気の小洒落たポップチューンだし、かと思えば「Big Eyes」や「You're All Talk」みたいにハード&ヘヴィな楽曲もある。前作にもあったサイケ路線の「Downedや学校のチャイムをモチーフにしたギターリフ?が印象的な「Clock Strikes Ten」、口ずさみやすいキャッチーなロックナンバー「Come On, Come On」まである。とにかく、すべてにおいて捨て曲なしなんです。

1stアルバムがのちのオルタナティヴロックやグランジに大きな影響を及ぼしたとすると、本作はグランジはもちろんのこと、のちのパワーポップ勢にとっての教科書的1枚になったのではないでしょうか。本質的には1枚目も2枚目も何も変わっていないのですが、プロデューサーの手腕によるものが大きいのでしょうか、ジャック・ダグラスならではの生感覚とトム・ワーマンらしいシュガーコーティングが及ぼす影響が、そういった後続たちにとっての道しるべとなったのは、今となっては非常に興味深いところです。

ロビン・ザンダー(Vo)の歌唱法もあってか、ハードロックの範疇で語られることの多い彼らですが、実はそういった方向性に直接的に歩み寄ったのは80年代半ば以降のことなんじゃないでしょうか。だって、4人のあのファッションセンスは少なくともHR/HMのそれとはまったく異なるし、このアルバムに関しては(今でいうところの)パワーポップ以外の何物でもないわけですから。

 


▼CHEAP TRICK『IN COLOR』
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2019年9月28日 (土)

THE CARS『HEARTBEAT CITY』(1984)

THE CARSが1984年3月に発表した5thアルバム。全米3位まで上昇し、アメリカだけでも当時200万枚以上、現在までに400万枚以上を売り上げた代表作のひとつです。

デビューからの4作をロイ・トーマス・ベイカー(QUEENJOURNEYMOTLEY CRUEなど)とタッグを組んで制作し、どれもバカ売れさせてきたTHE CARSですが、この5作目では当時DEF LEPPARD『PYROMANIA』(1983年)AC/DC『BACK IN BLACK』(1980年)FOREIGNER『4』(1981年)などでトップ・プロデューサーの仲間入りを果たしていたジョン・マット・ラングを新たなプロデューサーに起用。THE CARSならではのニューウェイヴ色の強いポップロックと、マット・ラングならではの分厚いサウンドメイキング&コーラスが不思議な相乗効果を生み出し、結果としてバンドにとって新たな武器を手に入れることとなります。

オープニングの「Hello Again」からして、DEF LEPPARDファンはニヤッとするんじゃないでしょうか。このコーラスの重ね方、まんまですからね。その後はニューウェイヴ仕込みのシンセポップへと展開していくわけですが、今の耳で聴くとチープに聞こえるものの、当時はかなり斬新でカッコよく思えたわけです。

本作からはシングルヒットも多数生まれており、MVでのリック・オケイセック(Vo, G)のドアップが印象的な「You Might Think」(全米7位)といい、ベンジャミン・オール(Vo, B)が歌う名バラード「Drive」(同3位)といい、「Magic」(同12位)や先の「Hello Again」(同20位)、「Why Can't I Have You」(同33位)と計5曲がリカットされています。

「Stranger Eyes」や「It's Not The Night」のアレンジもどこかLEPPSっぽいし、「Looking For Love」のリズムメイクはのちのLEPPS「Love Bites」にも通ずるものがあるし、アメリカのバンドなのにどこかUKっぽさを感じさせる「Heartbeat City」とか……って完全にこじつけでしかないですが(笑)、すでにあの頃自分はLEPPS耳でこのアルバムを聴いていたんだってことに、今更ながら気づきました(苦笑)。そういえば、これ以前のオリジナルアルバムってちゃんと聴いてないもんな、自分(ベストアルバム以外では)。

ちなみに、数年前にリリースされたリマスター&エクスパンデッド盤には「Drive」や「Heartbeat City」のデモ音源、「Hello Again」のリミックスバージョン、のちの『GREATEST HITS』(1985年)に新曲として収録された「Tonight She Comes」が追加されています。デモバージョンとスタジオ正規音源を聴き比べると、マット・ラングがプロデューサーとしてどこまで介入したかがなんとなく伺えたので、個人的には面白かったです。

あと、「Tonight She Comes」はマット・ラング仕事ではないですが、『HEARTBEAT CITY』をミックスしたマイク・シップリー(マット・ラングとDEF LEPPARDの諸作品でタッグを組んでいます)がバンドとの共同プロデューサーとしてクレジットされているので、まあ『HEARTBEAT CITY』の延長線上と言えなくもないのかなと。

サウンド的にはHR/HMではないですし、ギターの比重もそこまで高くないのかもしれません。が、マット・ラング仕事が好きな人なら絶対に引っかかるものがある、“そういう”リスナーにこそ触れてほしい名盤のひとつです。

最後に。ベンジャミン・オール(2000年没)に続いて、最近リック・オケイセックまで亡くなってしまいましたね。WEEZERブルーアルバム(1994年)やBAD RELIGION『THE GRAY RACE』(1995年)などのプロデューサーとしても活躍した彼のご冥福をお祈りいたします。THE CARS、一度は生で観てみたかったな。

 


▼THE CARS『HEARTBEAT CITY』
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2019年9月27日 (金)

BIFFY CLYRO『PUZZLE』(2007)

2007年6月発売の、BIFFY CLYRO通算4作目のスタジオアルバム。日本盤は少々遅れ、同年10月にリリースされています。

それまで名門インディレーベルBeggars Banquetから3作のアルバムを発表してきた彼らですが、チャート的にはTOP50に入るのが精一杯。ところが、Roadrunner Records移籍第1弾アルバムに当たる今作は、全英2位という大成功を収め、「Saturday Superhouse」(全英13位)、「Living Is A Problem Because Everything Dies」(同19位)、「Folding Stars」(同18位)、「Machines」(同29位)、「Who's Got A Match?」(同27位)と計5作ものシングルヒットを生み出すことになります。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINE、MELVINS、SKUNK ANANSIEなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANASLAYERHELMETなど)というアメリカでの売れっ子を起用した本作は、文字通りワールドワイドな活躍を目標として制作された1枚。アートワークなんて、かのストーム・ソーガソンですからね。ポスト・グランジ的手法のハードロックサウンドをベースに、時にエモ、時に古典的ブリティッシュロック、時にプログレ、時に正統派ポップスなど、さまざまな要素を器用に取り入れることで、ひとつの枠に収まりきらない変幻自在なサウンドを繰り出しています。

まあ、このアルバムはオープニングの「Living Is A Problem Because Everything Dies」を聴いた時点で「優勝!」と思わずにはいられないのでは。ストリングスをフィーチャーしたスリリングなイントロといい、オペラ調のコーラスを散りばめたアレンジといい、そのあとに続く疾走感の強いハードロックサウンドといい、キャッチーな歌メロといい、すべてが高品質で緻密に作り込まれているわけです。

その後も、上に書いたようなテイストを含む楽曲群が続くわけですが、これがどれも捨て曲なし。歌メロは本当にポップで親しみやすいものばかりだし、サウンドもヘヴィすぎない適度なハードさが備わっており、HR/HMが苦手なリスナーにも取っ付きやすい魅力的なものに仕上げられている。

そうそう、これってアメリカのFOO FIGHTERSがやっていたことをイギリス(正確にはスコットランドですが)というフィルターを通すとこうなりますという、ひとつの回答ではないのかなと。もちろん、BIFFY CLYROはここからアルバムを重ねるごとにその音楽性をどんどん進化させていき、結果として国民的バンドへと成長を遂げるわけです。

もちろん、それ以前の3作からここで大きく方向性が変わったわけではないですし、Beggars Banquet時代のアルバムも今聴いてもイカしてると思います。が、世界規模で通用する“垢抜けた”感は確実にこの『PUZZLE』から始まっており、この転換期がなかったら彼らはイギリスでの大成功も得られていなかったと思います。

残念ながらアメリカでの成功はいまだに収めることができていませんが、現時点での最新オリジナルアルバム『ELLIPSIS』(2016年)はスコットランド&UKで1位を記録したほか、ドイツやスイス、アイルランドでも1位を獲得。オーストリアで5位、フィンランドで10位、オランダで13位とヨーロッパ圏ではそれなりの結果を残せているわけですから、彼らの選択は間違っていなかったんだと思います。

 


▼BIFFY CLYRO『PUZZLE』
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2019年9月26日 (木)

HEART『DESIRE WALKS ON』(1993)

1993年11月に発売された、HEART通算11作目のオリジナルアルバム。日本盤は同年10月末に前倒しで先行リリースされています。

『HEART』(1985年)を筆頭に、『BAD ANIMALS』(1987年)『BRIGADE』(1990年)と産業ハードロック路線を突き進んできた彼女たちですが、ちょうどシーンがHR/HMブームからグランジ/ヒップホップ主体へと移行し始めたこともあり、HEART自身もここで軌道修正が入ります。

まず、外部ソングライター主体の楽曲群が、アン(Vo)&ナンシー(Vo, G)のウィルソン姉妹が中心になって書き下ろされた楽曲へとシフト。とはいえ、曲によっては外部ライターがサポートで入っており(あるいは、外部ライターが書いたものをアン&ナンシーが手を加える)、過去3作の“らしさ”は良い意味で損なわれていません。

ですが、そこまで産業ロック臭がしないんですよ、このアルバム。それは「アン&ナンシーがやりたいことをやった、趣味に走った」楽曲が中心になっているからかもしれません。

アルバムはカナダのDALBELLOが1985年に発表した「Black On Black」をリアレンジした「Black On Black II」から激しくスタート。原曲はシンセポップ色の強いアレンジですが、本作では名曲「Barracuda」を彷彿とさせるアグレッシヴさが際立つハードロックチューンへと生まれ変わっています。うん、良いオープニング。

かと思えば、トラッド色が際立つアコースティックチューン「Back To Avalon」があったり、産業ロック路線のミディアムバラード「The Woman In Me」もある。LED ZEPPELINの影響下にあるオリエンタルなハードロックナンバー「Rage」もあれば、美しいピアノバラード「In Walks The Night」、ハードロック調バラード「My Crazy Head」といった聴かせる曲もしっかり用意されている。

ボブ・ディランのカバー「Ring Them Bells」には同郷のALICE IN CHAINSからレイン・ステイリー(Vo)がゲスト参加し、DEF LEPPARDブライアン・アダムスでおなじみのプロデューサー、ジョン・マット・ラング書き下ろしの「Will You Be There (In The Morning)」では従来のHEARTらしさとマット・ラングらしさが融合した新境地を見せてくれる。「Voodoo Doll」や「Anything Is Possible」といったミディアム/アコースティック曲を挟みつつ、最後は再び「Desire Walks On」というハードロックナンバーで締めくくる。

「ロックバンドHEARTが帰ってきた!」と言ってしまえばそれまでですが、この方向転換はバンドをこの先も続けていく上で、このタイミングにやるべきことだった。そう、旧来のHR/HMバンドが死滅し始めたこのタイミングに。チャート的には全米48位と過去3作に及びませんでしたが、それでも50万枚以上は売り上げている。「Will You Be There (In The Morning)」も全米39位のヒットにつながりましたしね。

時代が変わろうがHEARTはまだまだ続いていくんだ……このアルバムは、そんな力強い宣言のような1枚だったのかもしれません。とはいえ、彼女たちが再びHEART名義でオリジナルアルバムを発表するのは、ここから11年も先のことになってしまうのですが……。

 


▼HEART『DESIRE WALKS ON』
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2019年9月25日 (水)

BRING ME THE HORIZON『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010)

2010年10月にリリースされた、BRING ME THE HORIZONの3rdアルバム。日本デビュー作となった前作『SUICIDE SEASON』(2008年)から2年ぶりの新作で、本国イギリスでは最高13位、アメリカでも最高17位という好記録を残し、ブレイクのきっかけを作った1枚となりました。

前作にて初期のデスコア路線が薄れ、その軸にあるメタルコア色が濃厚に表出し始めた彼らでしたが、名プロデューサーのフレドリック・ノルドストロームが引き続き手がけた本作ではその軸足はそのままに、よりプログレッシヴな展開と楽曲のバラエティ豊かさで勝負を挑むことになります。

まず、楽曲自体のエモーショナルさが格段と増し、残虐性や無機質さが際立った初期2作とは新たに違う高みへと到達しつつあることが伺えます。このへんは続く『SEMPITERNAL』(2013年)、そして『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)で本格的に開花することになるのですが、そういった意味では本作は初期のアグレッシヴさとその後のエモ路線とをつなぐ橋渡し的重要作と言えるでしょう(そう、過渡期的作品ではなく、ね)。

オープニングを飾る「Crucify Me」や続く「Anthem」など、1曲1曲の中に複数曲のアイデアが詰め込まれたアレンジ/展開はどこか昨今のJ-ROCK的でもあり、非常に興味深いものがあります。しかも、曲間が短いシームレスな構成なこともあり、すべての楽曲がつながっているようにも受け取れ、このへんがプログレッシヴな展開に拍車をかけています。

オリヴァー・サイクス(Vo)もただスクリームする/グロウルするのではなく、エモく響くスクリームを心がけているし、なんならメロディが浮き上がってくるような“歌”も聴こえてくる。叫び一辺倒のようで、実は緩急に富んだアレンジが施されていることで、以前よりも取っ付きにくさがなくなり、これだけ複雑怪奇なことをやっているにも関わらずとても聴きやすい。徹底して作り込まれた完成度の高さが成せる技なのでしょうか。

また、本作にはカナダの女性シンガー・ライツ(「Crucify Me」「Don't Go」)、YOU ME AT SIXのジョシュ・フランチェスキー(Vo)(「Fuck」)、THE CHARIOT(当時)のジョシュ・スコジン(Vo)、スクリレックス(「Visions」のトラックメイク&ボーカル)などバンドの盟友たちが多数ゲスト参加しているのも特徴。さらに、ピアノやストリングスなどの装飾が加わることで、たんなるメタルコアでは終わらない彩り豊かさが楽しめます。こういった要素も本作の聴きやすさにつながっているのかもしれませんね。

ここ数作のサウンドに慣れてしまっていると、本作ですら激しすぎて聴こえてくるのですから、慣れって恐ろしいものです。捨て作なしの彼らですが、初期ほどエグくなく、最新作『AMO』(2019年)ほどポップでもない、程よいバランス感は全キャリア中最高峰ですので、入門編として手に取るのもありかもしれません。

 


▼BRING ME THE HORIZON『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』
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2019年9月24日 (火)

REFUSED『FREEDOM』(2015)

2015年6月末にリリースされた、REFUSEDの4thアルバム。ここ日本では3ヶ月遅れの2015年9月下旬に発表されています。

前作に当たる3rdアルバム『THE SHAPE OF PUNK TO COME』(1998年)をリリース直後、バンド解散を発表したREFUSED。メンバーはTHE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY、INVSN、TEXT、AC4.などといったバンドで音楽活動を続けましたが、2012年に期間限定で再結成。このときはフジロックでも来日しており、相当話題になりました。

そして、2015年に本格的再始動。2012年の再結成時に参加したジョン(G)が不参加で、デニス(Vo)、クリストファー(G)、マグナス(B)、デヴィッド(Dr)の4人でスタジオ入りし、ニック・ローネイ(YEAH YEAH YEAHS、ニック・ケイヴ、PUBLIC IMAGE LTD、KILLING JOKE、GANG OF FOURなど)をプロデューサーに迎え完成させたのが本作です(「Elektra」「366」のみ、楽曲共同制作者であるシェルバック(エド・シーラン、テイラー・スウィフト、PiNKなど)がプロデュース)。

REFUSED休止中もそれぞれがミュージシャン/表現者として常に活動を続けていたとはいえ、REFUSED名義のアルバムは実に17年ぶり。その間にポストハードコアやミクスチャーシーンはどんどん進化していきましたし、ぶっちゃけ当時は革新的だった『THE SHAPE OF PUNK TO COME』も今の耳で聴けば“新しすぎる”なんてこともなくなっています。

しかし、この『FREEDOM』というアルバムで展開されている世界観、サウンド、ボーカル……そのすべてが『THE SHAPE OF PUNK TO COME』から地続きであると同時に、古臭さを一切感じさせない「2015年の音」に仕上がっているのですから、不思議ったらありゃしない。

『THE SHAPE OF PUNK TO COME』もかなりソリッドで殺傷力の強い1枚でしたが、本作の殺傷力もハンパないものがあります。しかし、そのやり方(殺り方?)がちょっと違う。前作が切れ味抜群の刃物だとしたら、今作は数百キロはあるであろうハンマー。そこが経験や知識の蓄積によるものなのか、あるいは単純に表現者として成熟したということなのか。なんにせよ、再結成後のアルバムでがっかりさせられずに済んだだけでなく、あの当時並みの興奮を再び味わえるとは思っていなかったので、これにはびっくりです。

とはいえ、本作で鳴らされている音はポストハードコアそのものかといえば、実はちょっと違う……いわば『THE SHAPE OF PUNK TO COME』で見せた“パンクの未来”のさらに先を進むものなのかもしれません。例えば「Françafrique」は前作の流れを汲むものの、しっかりモダンな色合いが加えられている(リリース時期的に、BRING ME THE HORIZON「Happy Song」とイメージが重なった人も多いのでは。しかし、あちらがニューメタル以降だとしたら、こちらはもっとポストハードコアなんですよね)。「Destroy The Man」や「Servants Of Death」にはソウルミュージックなどブラックミュージックの香りも感じられるし(これは確実にTHE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACYからの流れでしょう)、ラストのエピックナンバー「Useless Europeans」まで本当に一瞬たりとも気が抜けない。いや、本当に力作(というか激作)ですよ、これ。

リリース元のEpitaph Recordsの日本流通先が当時のソニーからワーナーに移ったため、現在は日本盤が廃盤のようですが、10月には待望のニューアルバム『WAR MUSIC』の発売が控えているので、ぜひ解散前の3作とあわせて再発を願いたいところです(とはいえ、『WAR MUSIC』はユニバーサル系のSpinefarm Recordsからのリリースなので難しそうですが)。

 


▼REFUSED『FREEDOM』
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2019年9月23日 (月)

STONE TEMPLE PILOTS『PURPLE』(1994)

1994年6月にリリースされた、STONE TEMPLE PILOTSの2ndアルバム。

グランジ・ムーブメントの後押しもあり、デビューアルバム『CORE』(1992年)は1993年に入ってからバカ売れ。全米3位まで上昇し、800万枚を超えるメガセールスを記録しました。

ブレンダン・オブライエン(PEARL JAMAEROSMITHRED HOT CHILI PEPPERSなど)がプロデュース&ミックス、ニック・ディディア(INCUBUSRAGE AGAINST THE MACHINEAUDIOSLAVEなど)の黄金コンビが再びタッグを組んだ本作は、基本的には前作の延長線上にある内容。かっちり作り込まれた1stアルバムと比較すると少々肩の力が抜けた感があり、その恩恵もあってかグルーヴ感は前作以上ではないかと思います。

バンドとしての安定感も前作以上に増しており、終始安心して楽しめる1枚だと思います。『CORE』を気に入った人なら間違いなく楽しめる内容ですしね。

……で終わってしまいそうですが(苦笑)。本当にこれ以上書きようがないくらい、STONE TEMPLE PILOTSらしい1枚なんですよね。

だからなのかわかりませんが、リリース当時はこのアルバム、僕はそこまでハマれなかったんですよ。良いのはわかるんです。聴いていて体が反応しますし。だけど、「だったら、前のやつ聴くからいいや」と思ったのもまた事実でして。それくらい前作を踏襲しすぎていて引っかからなかったという。

思えば、アルバム発売の1年前に、映画『クロウ/飛翔伝説』のサントラに提供した新曲「Big Empty」の時点で、「ん?」と感じていたんですよ。「いやいや、周りが絶賛するほどすごい曲か?」って。彼らにしては普通の出来ですし、平均点をクリアしてるんでいいでしょ?くらいの意気込みしか感じられないというか。

でも、思えばそれって、すでに始まっていたスコット・ウェイランド(Vo)のドラッグ癖の影響だったのかもしれませんね。

「Vasoline」や「Interstate Love Song」といったシングル曲、後期にも通ずるアコースティックチューン「Pretty Penny」、パーカッシヴな「Lounge Fly」など特筆すべき楽曲は確かにいくつもあるんだけど、アルバムとして通して聴いたときにピンとこない。なぜなんでしょうね。

そういったモヤモヤ感を、まさか続く3rdアルバム『THE MUSIC... SONGS FROM THE VATICAN GIFT SHOP』(1996年)が払拭してくれることになるとは、この『PURPLE』がリリースされた当時は思いもしませんでしたが。

ちなみに本作、前作からの勢いを引き継ぎ、初の全米1位を獲得。セールス的にも前作に匹敵する600万枚以上を売り上げています。

 


▼STONE TEMPLE PILOTS『PURPLE』
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2019年9月22日 (日)

RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』(1996)

1996年4月にリリースされたRAGE AGAINST THE MACHINEの2ndアルバム。

デビュー作となったセルフタイトルアルバム(1992年)から3年半の歳月を経て届けられた本作ですが、彼らの人気・知名度を急激に上昇させる重要な役割を果たしました。というのも、前作が話題のわりに全米45位という数字で終わったのに対し、本作は初登場1位を獲得。イギリスでも最高4位を記録し、本国アメリカでは300万枚以上を売り上げる大ヒット作となったのです(1作目も最終的には300万枚以上のヒットとなりましたが)。

プロデューサーには新たにブレンダン・オブライエン(STONE TEMPLE PILOTSPEARL JAMAEROSMITHRED HOT CHILI PEPPERSなど)、ミックスには前作から引き続きアンディ・ウォレス(NIRVANAHELMETSLAYERLIMP BIZKITなど)という豪華なメンツを迎えた今作は、RATMの持つ軽やかな躍動感が見事な形で凝縮された力作に仕上げられています。ヘヴィさであったり即効性の強い1音1音の重さは前作に譲りますが、この『EVIL EMPIRE』ではファンクミュージック直系のグルーヴ感が全キャリア中でもっとも強く打ち出されているように感じます。

正直、初めて聴いたときは冒頭3曲……「People Of The Sun」「Bulls On Parade」「Vietnow」のインパクトに全部持っていかれました。いや、特に頭2曲かな。リリース当時はこの2曲ばかりを狂ったようにリピートしていた記憶があります。前作は軽やかさよりも重さを重視した作風でしたが、今回はこの2曲からも伝わるようにファンク〜ヒップホップといったブラックミュージックのダンサブルな面がすべてと言ってしまいたくなるほど、気持ちグルーヴが全編を通して支配しているのです。

もちろん、その後の「Revolver」も(空耳アワーの「エッチをしているよ」でお馴染みの。笑)「Snakecharmer」もカッコいいし、アップテンポで攻める「Tire Me」も良い。前作の延長線上にあるサイケな音使いの「Down Rodeo」も、冒頭のトム・モレロ(G)のギターフレーズに驚かされる「Without A Face」もほかには真似できない個性を放っている。だけど、その後の2曲(「Wind Below」「Roll Right」)はちょっとインパクトが弱いかなという印象も。ラストの「Year Of The Boomerang」はエンディングとしては最適だと思いますけど、このへんの一部の弱い曲のせいで、リリース当時は「アルバム後半がイマイチ」と認識していたんです。ということもあり、しばらくは「全体としての完成度は前作に劣るかな」と思い込んでいました。

でも、上に挙げた2曲も今聴くとそこまで悪いとは思わないし、まあ確かに並の仕上がりかもしれないけど、決してアルバムの足を引っ張るほどではない。むしろトータルで聴いたときにRATM全キャリア中もっともよくできたアルバムは本作なんじゃないか、と思えるほど。ファーストインパクトのデビュー作と、人気加熱後の1枚だった3rdアルバム『THE BATTLE OF LOS ANGELES』(1999年)の間に挟まれると影が薄い気がしないでもないですが、実はもっともバランス感に優れた作品が本作ではないかと思っています。それに、1997年の初来日もこのアルバムあってこそですしね。

そうそう。やっぱり本作はフジロック初年度の記憶とペアになっているので、そういう意味でも個人的に重要な1枚なんです。思い入れでは一番かも。

 


▼RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』
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2019年9月21日 (土)

KORN『THE NOTHING』(2019)

2019年9月13日に全世界同時リリースとなった、KORN通算13作目のオリジナルアルバム。

前作『THE SERENITY OF SUFFERING』(2016年)から3年ぶりの新作となりますが、昨年初夏にジョナサン・デイヴィス(Vo)が初のソロアルバム『BLACK LABYRINTH』を発表していたので、実はそこまで“空いた”感も飢餓感もなかったんですよね。ですが、いざリリースが決まるとなるとその仕上がりが楽しみになるのもまた本音でして。

特に、昨年8月にジョナサンの奥さんが亡くなったこともあり、そこから短期間で本作完成にこぎつけたことで、そういった出来事が作品にどのような影響を及ぼしたのかとゲスな考えも湧いてくるわけです。ホント最低ですね。

前作から引き続きニック・ラスクリネクツ(HALESTORMALICE IN CHAINSMASTODONなど)をプロデューサーに器用した本作ですが、基本的な作風は近作の延長線上にあるもの。特段驚きはないのですが、ひんやりとしたシリアスさの奥底にある熱力が過去数作とは異なるもののようにも感じられます。それをジョナサンを襲った不幸と結びつけるのはまた違うのかもしれませんが……。

それでも、冒頭のイントロダクション「The End Begins」の終盤に挿入されるジョナサンの嗚咽は否が応でもそういった現実を思い浮かべさせますし、その意味深なタイトルを冠した単尺曲から「Cold」というこれまた意味深なタイトルの楽曲へとつながる構成には、やはりハッとさせられます。

初期3作にあったようなヒップホップ的要素こそもはや感じられませんが、それでも「Idiosyncrasy」や「Gravity Of Discomfort」「H@rd3r」「This Loss」あたりからはそことも異なるグルーヴ感が伝わってくる。むしろ、そういった80年代以降のブラックミュージックからの影響というよりも、そのルーツといえるソウルやファンク、ブルースからの直接的影響が色濃く表れた作風にシフトしているような印象も受けます。

その象徴的な1曲と言えるのが、終盤に登場する「This Loss」かなと。この曲では後半、3連ビートの上にブルースにも通ずるエモーショナルなボーカルを聴かせてくれます。前半こそひんやりとした中に青い炎を灯していたろころ、最後にこうした“エモさ”が直接的に表れるのはKORNの作品として考えても非常に興味深いなと。そこからラストナンバー「Surrender To Failure」へと続いてアルバムは幕を降ろすわけですから……そして、再びオープニングの「The End Begins」へとリピートさせると、まるで明けない悪夢を見ているような、そんな感覚に落ち入れるはずです。さらに言えば、「This Loss」の前に終盤ブルータルさを増す「H@rd3r」が配置されているのも計算なのかなと。本当に面白いアルバムです。

近作の中でもっとも強い主張が感じられながらも、何気に一番聴きやすい(集中して楽しめる)作風というのも非常に面白いですよね。うん、ここ10年の彼らの作品の中では、実験的な内容だった10thアルバム『THE PATH OF TOTALITY』(2011年)にも匹敵する傑作だと断言させてください。久しぶりにチャート上でも大健闘するんじゃないでしょうか。

 


▼KORN『THE NOTHING』
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2019年9月20日 (金)

SONS OF APOLLO『LIVE WITH THE PLOVDIV PSYCHOTIC SYMPHONY』(2019)

マイク・ポートノイ(Dr/THE WINERY DOGS、ex. DREAM THEATER)、デレク・シェリニアン(Key/ex. DREAM THEATER、ex. PLANET X)、ロン・“バンブルフット”・サール(G/ART OF ANARCHY、ex. GUNS N' ROSES)、ビリー・シーン(B/MR. BIG、THE WINERY DOGS)、ジェフ・スコット・ソート(Vo/SOTO)といった豪華メンバーにより結成されたSONS OF APOLLO。今回紹介するのは彼らがデビューアルバム『PSYCHOTIC SYMPHONY』(2017年)に続いて、2019年8月末(日本では同年9月中旬)にリリースしたライブ作品です。

本作は3枚組CD(日本盤のみ)、3枚組CD+DVD、Blu-ray単品(海外盤のみ)、3枚組CD+DVD+Blu-rayのボックスセット(海外盤のみ)といった複数仕様が用意されていますが、ここではデジタルリリースもされている3枚組CDの音源パートについて触れていきたいと思います。

本作は2018年9月22日、ブルガリア・プロヴディフの由緒ある古代ローマ劇場にて開催された、一夜限りのスペシャルライブの模様を収めたもの。ちょうど同年9月上旬に来日公演が行われており、その直後のライブ収録ということになります。

ライブは『PSYCHOTIC SYMPHONY』収録曲を中心にメンバー5人のみで進行する第1部(M-1〜11)と、地元のオーケストラとの共演からなる第2部(M-12以降)という2部構成となっており、CDではDISC 1にあたる第1部は2018年9月の来日公演を彷彿とさせるテクニカルかつエモーショナルなプレイを堪能することができます。また、このパートではDREAM THEATER「Just Let Me Breathe」、QUEEN「The Prophet's Song」「Save Me」といったカバー曲もフィーチャーされています(「ピンク・パンサーのテーマ」もカバーされていますけど、ここでは割愛)。特に後者はジェフによるディレイを多用したボーカルワークが楽しめるので、オススメです。

で、問題は第2部(DISC 2以降)。いきなりLED ZEPPELIN「Kashmir」から始まり、RAINBOW「Gates Of Babylon」、AEROSMITH「Dream On」(DVD/Blu-rayには未収録)、オジー・オズボーン「Diary Of A Madman」、PINK FLOYD「Comfortably Numb」(DVD/Blu-rayには未収録)、QUEEN「The Show Must Go On」、DREAM THEATER「Hell's Kitchen」「Lines In The Sand」、VAN HALEN「And The Cradle Will Rock」といったロッククラシックスの数々がカバーされています。バンドの演奏も原曲をベースに、らしいフレーズが挿入されており、しっかりSONS OF APOLLOらしさを表現できているように思います。

と同時に、ジェフが各曲を器用に歌い分けており、「Gates Of Babylon」でディオが憑依したかと思えば、続く「Dream On」ではスティーヴン・タイラーを降ろすイタコっぷりを発揮(笑)。また、元DTメンバーが2人いることもあってか、DTの楽曲を演奏すると客席から大歓声が湧くのが興味深いですね。個人的ツボは「Dream On」と「Diary Of A Madman」かな。前者はエアロがMTVの授賞式か何かでオーケストラと共演したときの名演を思い出させてくれる、素晴らしいコラボだと思います。そこから自然な流れで「Diary Of A Madman」へと続いていく構成/アレンジも参考で、本作のハイライトのひとつと言えるのではないでしょうか。

SONS OF APOLLOのオリジナル曲自体かなり長尺のものが多いですし、本作としても映像版は約150分、音源版は約170分とかなりの長尺な内容になっているので、時間的に余裕がないと存分に楽しめない作品かと思いますが、だからこそ余裕を持ってじっくりと浸っていただきたい内容です。改めて「最高のテクニックを持った人たちが最高の楽曲を演奏すると、ここまですごいことになる」という事実を、イヤというほどに思い知らされると思いますよ(笑)。

 


▼SONS OF APOLLO『LIVE WITH THE PLOVDIV PSYCHOTIC SYMPHONY』
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2019年9月19日 (木)

OPETH『SORCERESS』(2016)

2016年9月末にリリースされたOPETHの12thアルバム。前作『PALE COMMUNION』(2014年)から2年ぶりの新作にあたり、本国スウェーデンでは最高7位、全米24位/全英11位という好成績を残しています。

前作でペル・ヴィベリ(Key)からヨアキム・スヴァルベリに交代し、ミカエル・オーカーフェルト(Vo, G)、フレドリック・オーケソン(G)、マーティン・メンデス(B)、マーティン・アクセンロット(Dr)との現編成で2作目となる今作では、10thアルバム『HERITAGE』(2011年)で迎えた“脱デスメタル”路線をさらに推し進め、60〜70年代的なプログレッシヴ・ロックのスタイルをより強めることに成功しています。

『PALE COMMUNION』でのスタイルが気に入った人なら十分に受け入れられる作風だと思いますが、8thアルバム『GHOST REVERIES』(2005年)までのゴリゴリしたサウンドが好みだったリスナーにはちょっと退屈に聴こえるかもしれません。とはいえ、過去2作と比較するとメタル度はかなり高く、『HERITAGE』でOPETHから離れてしまったリスナーにも存分にアピールするものがあるはずです。

には若干メタリックなカラーが残されていますが、全体的にはアシッドフォーキーにも通ずる穏やかな作風がより強まっているんじゃないかなと。かと思えば、そこからの揺れ戻しのようにプログレメタル的なヘヴィさも随所に用意されており、その緩急の巧みさは過去2作以上。メタリックなカラーが強く反映されたタイトルトラック「Sorceress」や、ギター&キーボードによるソロバトルがフィーチャーされた「Chrysalis」なんて、DREAM THEATERあたりが好きな人にもピンとくるものがあるのではないでしょうか。

ミカエルのボーカルも完全に脱デス声しており、ノーマルなクリーントーンで淡々と歌い上げられている。ソロプレイを含むフレドリック・オーケソンによるギターフレーズもメタルのそれというよりは、どことなくフュージョン的な方向に寄っており、それが80年代以降の末期PINK FLOYD的な空気を作り上げています。そりゃあ嫌いになれるわけ、ないわな。

オープニングとエンディングにそれぞれ1〜2分程度の単尺インストを用意しているものの、それ以外の楽曲のほとんどが5分以上。7分前後以上の長尺ナンバーは3曲含まれていますが、意外とそこまで長いとは感じさせない工夫がしっかり施されているので、全11曲56分がスルスル聴き進められるはずです。

なお、本作のCD2枚組限定盤には本編未収録の新曲2曲と、オーケストラをフィーチャーしたライブテイク3曲を追加収録。アルバム本編とは一線を引いたように別ディスクに収録されていますが、こちらも方向性的には『SORCERESS』の延長線上にあるので、続けて楽しめるのではないでしょうか。

もはや5thアルバム『BLACKWATER PARK』(2001年)でのスタイルは再び望めませんが、今作の完成度の高さはそういった好みとは別のところにあると思っているので、そこはちゃんと評価していただきたいところです。

 


▼OPETH『SORCERESS』
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2019年9月18日 (水)

PINK FLOYD『THE DIVISION BELL』(1994)

『対(TSUI)』の邦題で知られる、PINK FLOYDの14thアルバム。海外では1994年3月末に、日本では同年4月中旬にリリースされました。

デヴィッド・ギルモア(Vo, G)、ニック・メイソン(Dr)、リチャード・ライト(Key, Vo)体制になって正式な1作目(リチャード・ライトは1987年発売の前作『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』制作時は参加せず、同作のツアーにサポートミュージシャンとして参加)。『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』はロジャー・ウォーターズ(Vo, B)との裁判で揉めたりなど、すったもんだあったあとの作品でしたが、本作はそこから7年もの歳月を経て届けられた、新生フロイドとしては安定期に入ってからの1枚となります。

ということもあってか、作風的には非常にゆったり&まったりとした内容で、全体的にAORの香りが漂っています。もはや往年の緊張感を求めるのは酷かもしれませんね。

とはいえ、それでも70年代のプログレッシヴロック路線に回帰しようとする意思はあるようで、音楽的に組曲などで聴かせる手法ではないものの、歌詞のテーマ的には「コミュニケーションの欠如による対立」を軸にしたコンセプトアルバムに仕上げられています。

ギルモアの歌も板に付いてきた感があり、「What Do You Want From Me」あたりでは女性コーラスをフィーチャーした非常にソウルフルなボーカルを聴かせてくれます。また、サックスがアダルトな空気を醸し出す「Wearing The Inside Out」ではリチャード・ライトも歌声を披露しています。

実はこのアルバム、めちゃめちゃ好きなんですよね。プログレか否かと問われると非常に答えに困るのですが、今みたいな時期は深夜に、少し音量を落として流すと非常にハマるといいますか。ギルモアの味わい深いギタープレイと相まって、本当に気持ちよく楽しめるのです。

「それって、毒にも薬にもならないじゃないか」と突っ込まれたらそれまでですが、20代前半で出会ったリリース当時よりも大人になった今のほうが偏見なく、純粋に堪能できる1枚じゃないか。そんな気がしています。

全11曲、トータルで70分近い大作ですが、ラストの「High Hopes」までまったりと、リラックスしてその世界に浸ってほしい。歌詞の世界観を味わうのはそのあとからでも十分だと思うので、まずはこのサウンドと楽曲を楽しんでもらいたいと思います。この頃のフロイドも悪くないですから、ホントに。

 


▼PINK FLOYD『THE DIVISION BELL』
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2019年9月17日 (火)

KING CRIMSON『THRAK』(1995)

1995年4月上旬にリリースされた、KING CRIMSONの11thアルバム。日本では1ヶ月前倒しの同年3月初頭に発売されています。

前年秋にダブル・トリオ編成では初音源となるミニアルバム『VROOOM』(1994年)を発表し、その新たな実験を世の音楽ファンに知らしめた新生クリムゾン。とはいえ、『VROOOM』はあくまで処女作/テスト作であり、本当のデビュー作はこのフルアルバムなのです。

このアルバムを聴く際、まずはスピーカーを通さずにヘッドフォンもしくはイヤフォンで聴いてもらいたいんです。要するにこれ、左右それぞれにトリオ編成の演奏を振っているわけです。

わかりやすいのが、オープニングの「VROOOM」〜「Coda Marine 475」かな。リズムだけ取り出すと、L(左)がシンプルにリズムキープをしていて、R(右)のドラムはオカズを入れまくっている。これ、片方ずつ聴くだけでも新鮮な気持ちでそれぞれの楽曲に向き合えると思います。

そういった演奏面・録音面のみならず、本作は楽曲自体も非常に興味深いものが多い1枚でもあります。いわゆる“メタル・クリムゾン”の代表作『RED』(1974年)と、『DISCIPLINE』(1981年)をはじめとする“ニューウェイヴ・クリムゾン”3部作のいいとこ取りといった内容で、先の「VROOOM」「Coda Marine 475」はメタル・クリムゾンの延長線上、「Dinosaur」はメタルとニューウェイヴの掛け合わせ、「Walking On Air」はニューウェイヴ期の進化系とそれぞれ言えるんじゃないでしょうか。

と同時に、本作の歌モノ楽曲群からはビートルズの影響が見え隠れするんですよね。「Dinosaur」のAメロや「Walking On Air」、あるいは「One Time」といったメロウなナンバーからは、ジョン・レノンの幻影が浮かび上がってきますし。特に「One Time」はリズム感やアレンジこそ現代的ですが、メロディが持つ切なさは初期のエモーショナルさにも通ずるものがあるのでは? そう言ってしまいたくなるほど、過去のクリムゾンのいいとこ取りな1枚なわけです。

しかし、この時期のクリムゾンの良さを本当に知りたいのなら、このスタジオ作品だけでは十分に伝わらないかもしれません。そう、本当に凄みはライブにこそあるのですから。当時は『B’BOOM』(1995年)と題した2枚組ライブアルバムもリリースされており、こちらではアルバム収録曲に加え「Frame By Frame」や「Elephant Talk」、さらには「Red」や「Larks' Tongues In Aspic Part II」も披露されているので、気になる人はぜひ中古盤などでチェックしてみてください(ストリーミングサービスでは配信されていないので……)。

 


▼KING CRIMSON『THRAK』
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2019年9月16日 (月)

LIKE A STORM JAPAN TOUR 2019@渋谷CLUB QUATTRO(2019年9月15日)

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今年3月の『DOWNLOAD JAPAN』での初来日に続いて、半年ぶりの再来日で初の単独日本公演が実現したLIKE A STORM。大阪と東京で行われたジャパンツアーのうち、ファイナルとなる東京公演に行ってきました。

開演ギリギリに会場入りしたのですが、客入りは6〜7割といった感じで、後ろから観て形になっていたと思います。最新作『CATACOMBS』(2018年)の日本盤リリースからすでにまる1年経っていますし、タイミング的には決してベストとは言い難いものの、それでもこれだけ集まったのは正直上出来だと思います。

ステージ上には中央のマイクスタンドを挟むように、Vの字に組まれたディジュリドゥが2セット。これは初来日時と同じですが、クラブクラスでのライブということで、より間近にディジュリドゥを目にできるのは非常にラッキーといいますか(笑)。なんか「うん、観てやった!」感が強かったな。不思議と。

ステージ中央にクリス・ブルックス(Vo, G, Didgeridoo)、向かって右にマット・ブルックス(G, Vo)、左にケント・ブルックス(B, Key)、そして後方にザック・ウッド(Dr)という立ち位置。オープニングからクリスがディジュリドゥを吹き(?)まくるのですが、ちょっと音が小さくてイマイチ低音が伝わってこない。これ、全体的に音が小さかったんですよね。このへんは、2曲目以降徐々に改善されていくのですが。

冒頭3曲は『CATACOMBS』からで、『DOWNLOAD JAPAN』に近い構成。既視感があったけど、良い曲は何度聴いて良いので問題なし。観客の盛り上がりも大人し過ぎず、かつ騒ぎ過ぎずといったバランスでしたが、それでも熱は十分に伝わってきました。

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今回はヘッドライナーショーということで、日本未発売の前作『AWAKEN THE FIRE』(2015年)からの楽曲も多めにプレイ。これによって、改めてこのバンドの非凡さ、楽曲のバラエティ豊かさが伝わりやすかったと思います。特にパワーバラード系の楽曲が意外と多いことを再確認できたのは大きな収穫だったかなと。

さらにカバー曲(『AWAKEN THE FIRE』に収録されたクーリオ「Gangster's Paradise」や、マットがチェスター・ベニントンに捧げたLINKIN PARK「Crawling」、アンコールでAC/DC「TNT」のカバーまで)が多めに披露され、バンドのルーツを垣間見ることもできました。特に「Crawling」ではケントがピアノ、クリスがギターを弾き、マットはギターを置いて歌に専念するという力の入れっぷり。これは前曲「Southern Skies」でマットがケントの弾くピアノのみをバックに歌った流れからだったので、必然的にこうなったのでしょう。このパート、すごく良かったです。

正直なところ、CDで楽曲を聴いたときは「ありきたりなニューメタル、ポストグランジバンドかな」と思っていたところもあったのですが、こうやってライブで通して彼らの楽曲を聴くと、実はよく練り込まれた楽曲群であることに気づかされます。あれ、思っていたよりも良くないか、これ?って。もちろん、まだまだ突出した個性は見つけられていないかもしれません(ディジュリドゥを使っているって点ぐらいか)。それでも、同クラスのバンドと比べたら頭ひとつ抜きん出ているし、可能性は大いに感じられる。そういう気づきのあった、非常に意義のあるステージだったと思います。

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RUSH『COUNTERPARTS』(1993)

1993年10月にリリースされた、RUSH通算15枚目のアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて同年11月に発売されました。

リアルタイムでは初めてハマったRUSHのアルバムがこれ。『PRESTO』(1989年)からタイトなハードロック路線に回帰した彼らの、もっとも当時の流行を反映させた1枚ではないかと思います。

当時、オープニングの「Animate」を初めて聴いたとき、きっと誰もが「あれ……PEARL JAMじゃね?」と思ったんじゃないでしょうか。そうなんです、良い意味でグランジを独自に解釈した結果、過去2作以上にダークさが目立つハード路線を極めております。カッコいいったらありゃしない。

ギター&ベースのシンプルなリフを組み合わせるアレンジ(ユニゾンプレイ多め)は、彼らにしては若干ストレートで薄味に映るかもしれません。が、よく聴き込めばちゃんと計算されていることが理解できるし、そのへんの作り込みが当時の若手グランジバンドにはないものだったのも確か。だからこそ、グランジど真ん中世代にも響いたし、それ以前のオールドウェイヴ世代にも響いたんじゃないでしょうか。「Stick It Out」や「Cut To The Chase」なんて、まさにそういう1曲ですものね。

かと思えば、「Nobody's Hero」のようにセンチメンタリズムを前面に打ち出したミディアムバラードも含まれている。この曲は生ストリングスを導入していることもあり、ドラマチックさは本作中随一ではないでしょうか。

「Between Sun & Moon」のAC/DCチックなリフ、「Alien Shore」の豪快さ、ひんやりとしながらもポップさをキープする「The Speed Of Love」のスタイルなど、とにかく聴きどころ満載。80年代後半から目立ち始めた、どの曲も4〜5分程度のコンパクトさを重視するのも、時代を意識したものなんでしょうか。

70年代後半から80年代前半にかけての大作志向もオススメですが、そういったスタイルを「頭でっかち」と拒否してしまう輩にこそ聴いていただきたい1枚。例えば、この頃のDREAM THEATERQUEENSRYCHEが好きだって人は、絶対にハマると思いますよ。あ、もちろんPEARL JAMあたりが好きな人もね。

いわゆる旧時代のHR/HMバンドが死滅していく中、彼らは90年代前半も安定したセールスを残していました。もっとも、そこまで爆発的なヒットを飛ばしたバンドではありませんでしたが、本作はキャリア最高の全米2位を獲得。アメリカのみで50万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

 


▼RUSH『COUNTERPARTS』
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2019年9月15日 (日)

QUEENSRYCHE『PROMISED LAND』(1994)

昨日紹介したDREAM THEATER『AWAKE』と時同じく、1994年10月にリリースされたQUEENSRYCHEの5thオリジナルアルバム。

全米だけで300万枚を超える大ヒット作となった前作『EMPIRE』(1990年)で、モダン・プログレッシヴロック/メタルの新たな道しるべを築き上げたQUEENSRYCHEですが、本作はその『EMPIRE』の路線をさらに推し進めた内容に仕上がっています。

『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)、『EMPIRE』と2作立て続けに手がけたピーター・コリンズ(RUSHBON JOVIアリス・クーパーなど)から、新たにジェイムズ・ジンボ・バートン(ゲイリー・ムーアスティーヴ・ペリーLITTLE ANGELSなど)へとプロデューサーを交代。アコースティックギターを多めに使ったアレンジもあってか、きめ細やかな繊細さが際立つ質感で、若干ダークな楽曲群と相まってひんやりとした印象を受ける1枚でもあります。

DREAM THEATER然り、このQUEENSRYCHEもダーク&ヘヴィな作品がもてはやされていた当時の流行が多少なりともアルバムに反映されており、それが『EMPIRE』が持っていたモダンさとミックスされることで、より社会派バンドとして見られるようになってしまった。これは、この頃までは大きな武器となりましたが、その後自らの首を締める負の要因にもなる“諸刃の剣”としてバンドの前に立ちはだかることになります。

また、前作から少しずつ進んでいた“脱メタルバンド”的な作品作りは本作でも拍車がかかり、「I Am I」や「Damaged」「Promised Land」などヘヴィさを感じさせる楽曲はあるものの、その“ヘヴィさ”は必ずしもHR/HMのそれとは限らない。むしろPINK FLOYDなどのプログレッシヴロックや、同じシアトル出身の後輩たち……ALICE IN CHAINSSOUNDGARDENを筆頭とするグランジ勢などに通ずる“ヘヴィさ”へとシフトし始めています。「Bridge」のようなスローナンバーも、HR/HMというよりもオルタナティヴロックのそれに近い印象を受けますしね。

『OPERATION: MINDCRIME』までの彼らの幻影を追うリスナーには、本作は駄作以外の何物でもないのかなと。でも、『EMPIRE』で試みたことに少しでも興味があり、なおかつ1994年という時代の空気を感じたい、あるいはあの時代のロックに対して好意的なリスナーならこの『PROMISED LAND』というアルバムは、とても優れた作品に映るのではないでしょうか。

ちなみに僕、本作や続く『HEAR IN THE NOW FRONTIER』(1997年)、嫌いじゃないです。むしろ初期のメタリックな作風よりもお気に入りかも。昨日の『AWAKE』といい、当時は周りから「なんでこれが良いなんて言い切れるの?」とバカにされたのもいい思い出です(笑)。

なお、本作は全米3位というQUEENSRYCHEのキャリア中最高位を記録。セールスは100万枚と前作には及びませんが、売り上げ的には『OPERATION: MINDCRIME』と同等のヒット作なわけです。

 


▼QUEENSRYCHE『PROMISED LAND』
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2019年9月14日 (土)

DREAM THEATER『AWAKE』(1994)

1994年10月リリースの、DREAM THEATER通算3作目のフルアルバム。

ジェイムズ・ラブリエ(Vo)加入後初のアルバムとなった前作『IMAGES AND WORDS』(1992年)が本国アメリカ以上に、ここ日本で好成績を残したことにより、続く今作への期待は当時、相当高いものがありました。それもあってか、ここ日本(オリコン週間ランキング)では全米チャート(32位)を超える7位を記録。日本だけで20万枚を超える大ヒット作となりました。

で、本作は『IMAGES AND WORDS』で日本のメタルファンを虜にさせたメロディアス・プログレハード/メタル路線を踏襲しているのかと問われると、答えはノー。そう、完全にその手のファンの期待を裏切る内容だったのです(笑)。

作風的にはモダンヘヴィネス寄りで、時流に乗ったと言えなくもありません。事実、「Caught In A Web」や「The Mirror」「Lie」といったヘヴィ路線は前作にはなかったものですし、ザクザクしたギターリフは完全にMETALLICAブラックアルバムPANTERA『俗悪』以降のもの。そりゃあ“『IMAGES AND WORDS』パート2”を求めるファンからしたら裏切り行為以外の何物でもないですよね。

では、その裏切り行為の塊(笑)である本作はそんなに悪くて酷い内容なのかと言いますと、全然そんなことはない。むしろ、僕はDREAM THEATERの全キャリア中トップクラスで好きな1枚なんですよね。そう、こういう天邪鬼なリスナーも世の中にはいるんですよ。

モダンでシリアスさの強い「6:00」から始まる構成は、どことなく当時のQUEENSRYCHEにも通ずるものがあるし、ただヘヴィなだけではなくて「Innocence Faded」のようなポップなプログレハードも「The Silent Man」のようなアコースティックバラードも存在する。「Lifting Shadows Off A Dream」で聴かせる穏やかさと繊細さは、ぶっちゃけ大味気味だった『IMAGES AND WORDS』では表現できなかったものだと思いますし、アルバムラストを飾るダークなゴシックバラード「Space-Dye Vest」もひんやり感も捨てがたい。ダークだけどドラマチックさが備わった「Scarred」から「Space-Dye Vest」へと流れるこのラストの構成も、文句なしで素晴らしいと思います。

で、個人的に「Space-Dye Vest」と同じくらいプッシュしたいのが、本作のキモと言えなくもないダークなインストチューン「Erotomania」。このカッコよさと言ったら、もう……痺れますわ。実はこの曲と、続く「Voices」「The Silent Man」は「A Mind Beside Itself」と題した3部作の組曲となっていて、トータル20分という聴き応えのある構成なんです。また、「The Mirror」と「Lie」のヘヴィ2連発も曲間のない組曲的な構成となっていて、全体的にそういうシームレスさがこのアルバムが持つ独特の緊張感を高めている気がします。

世の中的には『IMAGES AND WORDS』は名盤で間違いないですし、入門編としても素晴らしい1枚だと思います。が、DREAM THEATERというバンドがその後も活動を続けていく上でひとつの指針となったのは、実はこの『AWAKE』のほうなんじゃないか。そんな気がしています。これがなければ、続くミニアルバム『A CHANGE OF SEASONS』(1995年)も、一大コンセプトアルバム『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)も、2枚組の大作『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』(2002年)も生まれなかったか、あるいはああいう作品にならなかったんじゃないでしょうか。そう思わずにはいられません。

 


▼DREAM THEATER『AWAKE』
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2019年9月13日 (金)

TOOL『FEAR INOCULUM』(2019)

2019年8月30日。前作『10,000 DAYS』(2006年)から約13年4ヶ月を経て、TOOLのニューアルバムがついに届けられました。

フルアルバムとしては通算5作目のオリジナル作品となる本作は、同日リリースの(TOOLの1週間前リリースでしたね。前週1位を獲っておりました。大変失礼いたしました)テイラー・スウィフトのニューアルバム『LOVER』と接戦を繰り広げ、大半が10分超の長尺トラックだというのにTOOLに軍配が。『LATERALUS』(2001年)から3作連続の全米1位を獲得しています。アメリカではCDに4-inchサイズのHDスクリーン付き動画プレイヤーが同梱された特殊仕様にも関わらず、フィジカルだけで25万枚近くも売り上げたとのこと。残念ながら日本盤のリリース予定は立っておらず、この特殊仕様もAmazonなどで入荷情報が流れ次第、すぐに完売という状態が続いています。

さて、本作ですがフィジカル版とデジタル版で収録内容が異なるのをご存知でしょうか。筆者の手元にあるサンプル盤、実は7曲入りでトータル79分10数秒という内容のもの。ところが、SpotifyやApple Music、あるいはiTunesなどのストリーミング/デジタルリリース版は単尺のインスト3曲(「Litanie contre la Peur」「Legion Inoculant」「Mockingbeat」)が追加された全10曲/約87分というボリューミーな内容なのです。

もっとも、フィジカル版のほうにはMP3ダウンロードカードが付属しており、この追加3曲を別途ダウンロードできるので、最終的にはすべての新曲を聴くことができるんですけどね。要するに、CDの収録内容ギリギリまで詰め込もうとした結果がフィジカル版の7曲ということなんでしょう。

で、僕自身はこの7曲バージョンで慣れてしまっていたので、あとでストリーミングサービスで10曲入りという事実に「えっ?」と驚き、10曲バージョンを改めて聴いて「なるほど、これはこれでありかも……」となったわけです。

まあ、とにかく内容ですよね。前作『10,000 DAYS』がやたらと宗教色が強く、難解さが高まっていた印象を受けたのですが、今作はそれ以前の『LATERALUS』あたりにまで戻ったような空気感で、若干ですが聴きやすくなっているんじゃないでしょうか。もっとも、本編に収められた「Chocolate Chip Trip」含めインスト曲が2〜4分台なところを、歌モノ楽曲はすべて10分台というエクストリームな構成ですし、それに対して「聴きやすい」と言ってしまうのもどうかと思うんですが、本当なんだから仕方ない。いや、スルスル聴き進められるんですよ、本作。

また、メタリックな色合いは過去数作の中ではもっとも薄いと言えるでしょう。そういった点が本作の聴きやすさに影響を及ぼしているのは、少なからずあると思います。それによって、今までTOOLを聴いたことがなかったリスナーにまで届いている事実がまた面白いなと。これもストリーミングサービスへの音源解禁の功績によるものかな。

で、上で「歌モノ」なんて表現しましたけど、実はメイナード・キーナン(Vo)の歌う比率は過去イチで低い1枚でもあるんです。インストパートが大半と言ってもいいくらいの内容で、しかも各曲とも印象的なフレーズやリフが反復され続け、その上にアダム・ジョーンズ(G)のギターソロが乗っかる。特に事実上の本編ラスト曲「7empest」(本作で最長の16分!)でのギタープレイは圧巻の一言。どこか「Tubular Bells」(マイク・オールドフィールドの代表曲。映画『エクソシスト』にも用いられたアレね)のメインフレーズにも似たアルペジオが含まれていたり、緩急巧みなアレンジといい、歌パートは少ないもののしっかり存在感を発揮するメイナードといい、とにかくグレートとしか言いようがない。

個人的には追加インスト3曲がない7曲バージョンのほうがタイトで完成度も高いという印象を受けますが、どうでしょう。ストリーミングでの10曲バージョンに慣れてしまっている人は、ぜひM-3、M-5、M-10をカットしたプレイリストを作って再生してみてください。シリアスさが増して、全体的にもギュッと締まった内容になるはずですから。

まあとにかく、すごいアルバムです。さすがTOOL。これ、ライブはどうなっちゃうんだろうね。来年の春あたり、あのフェスで来てくれないかな?(あるいは来年8月のあちらでもいいんですが)

 


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2019年9月12日 (木)

THUNDER『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006)

2006年10月末にリリースされた、THUNDER通算8作目のスタジオアルバム。ヨーロッパでは同年11月上旬に、日本では少々遅れ2007年2月下旬に発売されております。珍しいですね、THUNDERの日本盤がここまで遅れるのって。

前作『THE MAGNIFICENT SEVENTH!』(2005年)から1年9ヶ月と、再結成後も相変わらず勤勉さが目立つTHUNDERですが、そういった地道な活動も影響してか、今作は前作の全英70位を超える最高56位を記録。「The Devil Made Me Do It」(全英40位)というシングルヒットも生まれています。

本作の制作は、『THE MAGNIFICENT SEVENTH!』ツアー期間中の2005年11月から始動。206年2月のツアーファイナル後に制作が本格化し、ツアーで得た躍動感が良い形に曲作りやレコーディングに反映されたようです。

その結果、本作のサウンドは再始動後の過去2作と比べても非常に躍動感の強いもので、ハードロック然とした楽曲が多いような印象を受けます。それは前作のヘヴィさとはまた違う種類のもので、ライブバンドとして再び脂が乗ってきた感が伝わってきます。これ、過去のキャリアに重ねると2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』(1992年)にとても近いような……そう思いません?

また、タイトルにあるロバート・ジョンソンの名前からも想像できるように、若干ブルース色も強まっているような。もっとも、完全にそれらしいのはオープニングトラック「Robert Johnson's Tombstone」のイントロぐらいなんですけどね。

「A Million Faces」や「My Darkest Hour」のような渋みの増したアコースティックバラードも、「It's All About You」といったピアノバラード(こちらはちょっとビートルズ的な香りもします)もあるんですけど、過去の作品ほど強いインパクトを残すものではない気が。

そのぶん、どこかLED ZEPPELIN的でもある「Last Man Standing」なんていう変化球があったりと、やっぱり本作の軸にあるのはダイナミックでハードなロックナンバーなんですよね。そういった点においては、バラードも珠玉の名曲が多かった『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』ともまた違うのかもしれませんが。

ロックバンドとして完全に息を吹き返した感の強い、生命力に満ちた1枚。だからこそ、ここからさらにバンドは続いていくと誰もが信じていたわけですが、二度目の終わりは意外と早くに訪れるのでした……。

 


▼THUNDER『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』
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2019年9月11日 (水)

MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)

マイケル・シェンカー(G)率いるスーパープロジェクト、MICHAEL SCHENKER FESTの2ndアルバム。CDリリースは2019年9月20日のようですが、Spotifyでは8月下旬からアルバムが先行配信されているので、今回はCD発売に先駆けてこちらを聴いた感想を書いていきたいと思います。

前作『RESURRECTION』(2018年)から1年半強という短いスパンで届けられた本作。参加メンバーは基本的に変わっておらず、ボーカリストはゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーというMSG(MICHAEL SCHENKER GROUPおよびMcAULEY SCHENKER GROUP)組にMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCKからドゥギー・ホワイトを加えた4人編成。ただ、演奏組に変化が生じております。

ご存知のとおり、テッド・マッケンナ(Dr)が今年1月に急逝。これを受けて、レコーディングでは名手サイモン・フィリップス(MICHAEL SCHENKER GROUPの1stアルバム制作に参加)とボド・ショプフ(ex. McAULEY SCHENKER GROUP)の2名がプレイ。もちろん、クリス・グレン(B)とスティーヴ・マン(G, Key)も変わらず参加しております。

また、今回はゲストとして“第5のシンガー”(笑)ロニー・ロメロ(RAINBOW、DESTINIA)が1曲「We Are The Voice」で歌唱。さらに、日本盤のみのボーナストラック「The Beast In The Shadows feat. Akira Takasaki / Loudness」(グラハム・ボネット歌唱曲)でLOUDNESSの高崎晃(G)がギターソロを披露しています。うん、豪華豪華。

楽曲を聴く限りでは、基本的には前作の延長線上にあると言えるでしょう。ただ、前作よりも肩の力が抜けた印象も受けます。それって悪く言えばマンネリ化していると捉えられるところで、僕も1曲目「Rock Steady」(4人歌唱曲)を聴いたときは「あれっ、もしかして今回は……」と不安になりかけたのですが、全体的にはそんなこと全然ありませんでした。

方向性的にはMcAULEY SCHENKER GROUP以降のモダンさを強めたもので、あまり古臭さは感じない……かな? もちろん、昨今のモダンメタルと比べたら幾分年寄り臭いですけど、そこは聴き手の価値観に委ねるとして……僕は前作以上にスルスルと聴き進められました。

ただ、前作では歌い手に合わせて曲をセレクトしていたように感じられたのですが、本作ではそのへんがちょっと曖昧になり始めているかもしれません。そういった意味では、意外性のある1枚とも言えるのかな。これはこれでアリだと思います。

ゲストのロニー・ロメロも“らしさ”全開で好印象。ただ、本家4人の歌が2作目にして早くも馴染み始めているのに対して、ロニーの歌は良い意味での異物感を放っているのが興味深いかな。全体を通して良いアクセントになったんじゃないかと思います。

本編ラストに収められたインスト「Ascension」も非常にアグレッシヴですし、全体的に“攻め”の1枚なのかな。となると、俄然ライブが楽しみになってくるのですが……来日は早くても来年かな。うまくスケジュールを調整してもらって、今度は単独公演で戻ってきてもらいたいですね。

 


▼MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』
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2019年9月10日 (火)

UFO『PHENOMENON』(1974)

1974年5月リリースの、UFO通算3作目のオリジナルアルバム。Chrysalis Records移籍第1弾アルバムであり、初めてアメリカでチャートイン(202位)を果たした、バンドにとって本格的な第一歩となった1枚です。

本作からギターがミック・ボルトンから、ドイツ出身のマイケル・シェンカーに交代。ドイツではSCORPIONSの1stアルバム『LONSOME CROW』(1972年)でレコードデビューを果たしていたものの、世界的にみれば完全に無名の新人だったシェンカー。当時はまだ19歳と早熟でしたが、本作では早くもその才能とセンスをソングライティング&ギタープレイ面で発揮しております。

TEN YEARS AFTERのベーシストだったレオ・ライオンズをプロデューサーに迎えた本作。大半の楽曲をシェンカーとフィル・モグ(Vo)が手がけており、それもあってか、過去2作の雰囲気とは異なるものへと変化・進化しています。オープニング2曲(「Too Young To Know」「Crystal Light」)でこそサザンロック調の緩やかなロックが奏でられていますが(ちなみに「Too Young To Know」はピート・ウェイ(B)とフィルのよるもの)、3曲目「Doctor Doctor」で空気が一変。哀愁漂うスローなイントロから、最高にカッコいいハードロックサウンドとメロディアスなギターフレーズでドラマチックな展開を作り上げていきます。やっぱり何度聴いてもシビれるわ、この曲は。

単なるブルースロックとは一線を画するスローな「Space Child」を経て、アナログA面ラストを飾る「Rock Bottom」で一気にテンション爆上げ。シンプルなギターリフですが、だからこそのカッコよさがあるわけで、そこにフィル&アンディ・パーカー(Dr)のスリリングなリズムが絡む。緩急の付け方も絶妙ですし、短いフレージングの中でもしっかり“泣いて”いるシェンカーのソロプレイも最高の一言。曲が進むにつれて高揚感も増していくアレンジ含め、文句なしの1曲です。

「Doctor Doctor」と「Rock Bottom」という突出した2曲に目が行きがちな本作ですが、後半(アナログB面)も聴きどころが多いんですよ。メンバー4人の曲作による「Oh My」のタイトさ、シェンカーのアコースティックギターを堪能できる「Time On My Hands」、ハウリン・ウルフなどで知られるウィリー・ディクソン作「Built For Comfort」のヘヴィなカバーバージョン、シェンカーのメロウなプレイを思う存分に味わえるインスト「Lipstick Traces」、シェンカーのギターはもちろんですがピートのベースプレイにも注目な「Queen Of The Deep」と、前半以上にバラエティに富んだ良曲が揃っているのですから。

単なるブルースロック/ハードロックとも異なる“泣き”の要素は、ジミー・ペイジLED ZEPPELIN)ともリッチー・ブラックモア(DEEP PURPLE)とも異なるもの。これがシェンカーのドイツというルーツによるものなのかはわかりませんが(いや、そうなんだろうけど)、間違いなくシェンカーの加入がバンドを良い方向に導き始めたことだけは理解できると思います。ライブ作品やベスト盤ではなくスタジオ作品からちゃんと追いたいというリスナーは、まず本作を入門編として手に取ってみてはいかがでしょう。

 


▼UFO『PHENOMENON』
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2019年9月 9日 (月)

BLACK STAR RIDERS『ANOTHER STATE OF GRACE』(2019)

2019年9月6日に世界同時リリースとなった、BLACK STAR RIDERSの4thアルバム。

全英6位と大健闘した前作『HEAVY FIRE』(2017年)から2年半ぶりに発表された本作ですが、ここまでの間にバンド内に大きな変化が訪れました。それは、アルバム発表後のジミー・デグラッソ(Dr)脱退と、ツアー終了後のデイモン・ジョンソン(G)の脱退というアクシデント。前者はチャド・スゼリガー(ex. BREAKING BENJAMIN、ex. BLACK LABEL SOCIETY)を迎えて乗り越えましたが、後者であるデイモン脱退はバンドに大きな影響を及ぼしたはずです(とはいえ、デイモンの離脱は友好的なものであり、以降もTHIN LIZZYやリッキー・ウォリックとのプロジェクトには参加するとのこと)。

結果、その後新たに決定した南米ツアーをTHUNDERのルーク・モーリーがサポート参加することでことなきを得、2019年に入ってから新ギタリストとしてSTONE SOURのクリスチャン・マルトゥッチが加入。リッキー・ウォリック(Vo, G)、スコット・ゴーハム(G)、ロビー・クレイン(B)にチャド&クリスチャンという新編成で制作されたのが、このニューアルバムなわけです。

プロデュースを手がけたのは、2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』(2015年)や前作『HEAVY FIRE』のミキシングを担当したジェイ・ラストン(ANTHRAXSONS OF APOLLOARMORED SAINTなど)。BLACK STAR RIDERSのことを熟知している人間が手がけたこともあってか、非常にナチュラルでリラックスした内容に仕上がっています。

オープニングトラック「Tonight The Moonlight Let Me Down」からして、完全無欠のTHIN LIZZY節。特にこの曲はサビでタイトルを歌い上げることで、サビ入りが同じ〈Tonight〜〉ってことで「Jailbreak」がフラッシュバックするんですよね。曲調的にも非常に近いものがありますし、これはナイスオマージュじゃないでしょうか。

続く「Another State Of Grace」のマイナー調3連ビートも“いかにも”だし、「Ain't The End Of The World」も「そうそう、これこれ!」と言いたくなるくらいの“らしさ”に満ち溢れているし。

かと思えば、ハモンドオルガンをフィーチャーしたファンキーなノリの「Soldier In The Ghetto」や、アコースティック色を強めた「Why Do You Love Your Guns?」「What Will It Take?」などバラエティに富んだ楽曲も含まれている。これまで同様、「単なるTHIN LIZZYのコピー」ではなく「THIN LIZZYをリスペクトし、オマージュしながらもオリジナリティを極めていく」姿勢は変わっていませんし、むしろそれぞれの要素が強まっているのかなという印象を受けました。うん、良き良き。

クリスチャンからソングライティング面でのインプットがあったようですし、新編成による大きな変化は本作以降に訪れるのかなという気がしないでもないですが、これはこれで非常に良くできた新世代クラシックロックアルバム。安心して楽しめる1枚です。

 


▼BLACK STAR RIDERS『ANOTHER STATE OF GRACE』
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2019年9月 8日 (日)

WHITESNAKE『READY AN' WILLING』(1980)

1980年5月にリリースされた、WHITESNAKEの3rdアルバム。

本作からの先行シングル「Fool For Your Loving」が初の全英トップ20入り(13位)を果たし、続く「Ready An' Willing」も最高43位のヒットに。これを受けて、アルバムも最高6位と初めて全英トップ10入りを果たすヒット作となりました。

前作『LOVEHUNTER』(1979年)のリリース後に、元DEEP PURPLEのイアン・ペイス(Dr)が加入。本作でデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)、ミッキー・ムーディ(G)、バーニー・マースデン(G)、ニール・マーレイ(B)、ジョン・ロード(Key)という初期黄金期のメンバーが初めて揃うことになります。

ブルースベースのロック/ハードロックが基調だった彼らのサウンドに、「Ready An' Willing」のようにソウル/R&Bの色合いが強い楽曲が加わることで、バンドの音楽性も彩り豊かになり始めた時期。というか、本作がクライマックスじゃないかと思えるくらいに良曲、名演が詰まった1枚となっています。

のちにスティーヴ・ヴァイ(G)などをフィーチャーして再録される「Fool For Your Loving」も、これくらいのキーで渋くキメてくれたほうがカッコいいし、続くアップチューン「Sweet Talker」も80年代後半の彼らには真似できないものがある。「Carry Your Load」での肩の力が抜けたソウル感からは、すでに貫禄じみたものが伺えるし、名バラード「Blindman」はDEEP PURPLE時代の「Soldier Of Fortune」にも通ずる泣きの要素が満載。

後半(アナログB面)に入っても、アコースティック調でゆったり始まり、徐々に盛り上がる「Ain't Gonna Cry No More」やスローブルース「Love Man」、軽快なロックンロール「Black And Blue」、ジョン・ロードのシンセが大々的にフィーチャーされた豪快なハードロック「She's A Woman」と名曲三昧。改めて聴いてみると、本当によくできたアルバムだなと感心します。

と同時に、今のWHITESNAKEが失ったもの、真似したくても真似できないもの(それはセンス的にもバンドの方向性的にも)を嫌というほど実感させられる1枚でもあります。絶対にカヴァーデイルはこの頃に戻りたいはずなんです。でも、今のプレイヤー陣じゃ絶対にこれを再現できないし、ここに近づくこともできない(近年のライブでも「Fool For Your Loving」や「Ready An' Willing」あたりは演奏されていますけど、原曲には程遠いクオリティですし)。『サーペンスアルバス』以降を軸にしてしまっている以上は、この頃のWHITESNAKEはある意味“なかったもの”に等しいですからね。

だからってわけではないでしょうが、日本ではこの頃の諸作品は一切デジタル配信&ストリーミングサービスで聴くことができません。海外では普通に聴けるのに(念のためリンクを貼っておきますね。日本のアカウントじゃ再生できないけど)。そろそろこういうの、やめてほしいよね……。

 


▼WHITESNAKE『READY AN' WILLING』
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2019年9月 7日 (土)

EUROPE『WAR OF KINGS』(2015)

2015年3月にリリースされた、EUROPE通算10作目のスタジオアルバム。

前作『BAG OF BONES』(2012年)ではプロデューサーにケヴィン・シャーリー(IRON MAIDENAEROSMITHTHE BLACK CROWESDREAM THEATERなど)を迎え、再結成後としては初めてイギリスでトップ50入りを果たすなど好成績を残しました。

続く今作では、プロデューサーをデイヴ・コッブ(RIVAL SONSなど)に交代。再始動後は基本的に毎作プロデューサーを変えているEUROPEですが、このデイヴ・コッブとの出会いは相当手応えがあったらしく、続く最新作『WALK THE EARTH』(2017年)でもデイヴを再起用さいています。

基本的には『BAG OF BONES』で試みた……いや、再結成第1弾アルバム『START FROM THE DARK』(2004年)で実践した、DEEP PURPLEUFOTHIN LIZZYなどを彷彿とさせるルーツロック/クラシックロック路線を推し進めたものなのですが、正直楽曲面では単調でイマイチという感想しか残らなかった『BAG OF BONES』から脱却し、バンドアンサンブル含めかなり高品質な楽曲がずらりと並ぶ1枚に仕上げられています。

ヘヴィさは前作譲りですが、そのヘヴィさが妙に浮くことなく楽曲とマッチしている。また、楽曲自体もバラエティに富み、しっかり練り込まれたアレンジとプレイ/フレーズと相まって「これはこれ」として楽しめるものに昇華されている。もはや「80年代のEUROPE」がどうのこうのとかどうでもよくなるくらい、気合いの入りまくったハードロック/ブルースロックを堪能できる1枚なのです。

しかし、メロディに関しては相変わらずと言いますか、抑揚が足りないジョーイ・テンペスト(Vo)には少々落胆させられます。惜しい、本当に惜しい。

このアルバムまでの時点で、再結成以降5枚のアルバムが制作されているわけですが、メロディアスさや楽曲の強度でいいますと7thアルバム『SECRET SOCIETY』(2006年)がベストで、次点が8thアルバム『LAST LOOK AT EDEN』(2009年)かな?と今でも思っています(ただ、アルバムトータルの完成度で考えると『LAST LOOK AT EDEN』がベストなんですけどね)。

しかし、楽曲の練られ方や演奏力、表現力に関して言えば、実は本作がトップクラスではないか……そう思う自分がいます。だって「Praise You」あたりを聴いてしまったら……ねえ?(ちなみに、この曲のボーカルは悪くないと思います)

ジョーイの声に関しては無いものねだりをしてしまいがちですが、音楽性については(個人的には)この路線は気に入っているので、ここを経て続く『WALK THE EARTH』までよくたどり着けたな、と今さらながらに関心しています。そういった意味では、本作とその前作『BAG OF BONES』は過渡期的作品かもしれませんね。

 


▼EUROPE『WAR OF KINGS』
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2019年9月 6日 (金)

RIVAL SONS『HOLLOW BONES』(2016)

2016年6月に発表されたRIVAL SONSの5thアルバム。Earache Recordsからのラスト作にあたります。

前々作『HEAD DOWN』(2012年)、前作『GREAT WESTERN VALKYRIE』(2014年)と10数曲入りで50分前後の作品を連発してきた彼らですが、今作では原点に戻ってか全9曲で37分という、このご時世にしてはやたらとコンパクトな内容に仕上げてきました。

プロデュースを手がけたのは、これまで同様デイヴ・コッブ(EUROPE、ZAC BROWN BANDなど)。これまでの曲によってはオルガンやウーリッツァーなどがフィーチャーされてきましたが、今作ではキーボードの類が全面的に導入されており、楽曲レンジのうえでかなり効果的な役割を果たしています。また、曲によってはチェロやバイオリンなどの弦楽器も採用され、レイドバックしたクラシックロック/ルーツロック色がこれまで以上に強まったようにも感じられます。

ブルースやソウルを下地にしたハードロックは、やり方次第で現代的にもなり得るのですが、ここではそういった思考は完全に捨て去り、自身のルーツに正直になり、先人たちから受け継ぐ意思を、時代を超えそのまま再現しています(そう、「表現」ではなく「再現」なんですよね)。

前作あたりからこのバンドならではのオリジナリティも確立され始めていましたが、その傾向は本作でも強まり始めています。それが完成の域に達するのは、続く最新作『FERAL ROOTS』(2019年)まで待たねばならないのですが。

にしても、ジェイ・ブキャナン(Vo)のボーカルワークはかなりテクニカルといいますか、表現力が豊かといいますか。アルバムを聴いていると、ときどきポール・ロジャース(FREEBAD COMPANY)あたりと重なる瞬間があるんですよね。そりゃカッコいいわけだ。

かつ、本作ではスコット・ホリデイ(G)のプレイに目を見張るものがあります。ちょっとしたフレージングや、そのフレーズの積み重ねから生まれる絶妙なアンサンブル、ほかのバンドやギタリストには真似できない独特なものがあります。ぶっちゃけ、ジェイとスコットの個性こそがこのバンドの魅力でもあるわけで、その2人が確変したタイミングこそRIVAL SONSが本格的にブレイクするときなのかもしれません。

残念ながら本作以降、彼らの新作は日本盤が発売されていません。そりゃあ日本で全然話題にならないわけだ(苦笑)。せめて夏フェス、フジロックのFIELD OF HEAVENあたりでプレイしてくれたら一気に広まると思うんだけどな。

 


▼RIVAL SONS『HOLLOW BONES』
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2019年9月 5日 (木)

KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD『INFEST THE RATS' NEST』(2019)

オーストラリア出身のサイケデリックロックバンド、KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARDが2019年8月に発表した15thアルバム。4月に発売された『FISHING FOR FISHIES』に続く、今年2枚目のアルバムとなります。

このバンド、名前はなんとなく知っていたという程度で、今年のフジロックで初来日するということで当時の最新作である『FISHING FOR FISHIES』を軽く聴いてからライブに臨んだのですが……。

あれ、イメージと全然違った(笑)。サイケデリックはサイケデリックだったんだけど、どちらかというとガレージロック、いや、ハードロックやストーナーロックの色が強い出音と楽曲で、そのカッコよさに呆然としたこと、今でも忘れられません。間違いなく、今年のフジロックにおけるベストアクトのひとつだったと断言できます。

そもそも、メンバーがMETALLICA『KILL 'EM ALL』ジャケTシャツを着ている時点で信用できたんだけど(笑)。

彼らの歴史的に本作は突然変異的な1枚のようで、これまで薄っすらと表出していたHR/HMからの影響が大々的に打ち出されています。彼らのサウンドを聴けば間違いなくBLACK SABBATHからの影響は理解できるのですが、今作ではそこにMOTÖRHEADであったり、それこそ『KILL 'EM ALL』時代のMETALLICAやNWOBHM期のブリティッシュハードロックバンドあたりをバックボーンに持つハードなサウンドが加わり、我々のようなメタルリスナーにも優しい内容になっております。

確かにね、ライブを観たときにMOTÖRHEADはよぎったんですよ。ああ、好きなんだなって。そこにきてMETALLICAのTシャツですから。うん、仲間仲間って思ったよね(笑)。

全9曲で34分程度というトータルランニングも潔いし、大半の楽曲が3分台というのもわかりやすい。短いものだと2分半、長いものでも7分近く(しかも1曲のみ)ありますが、特にその長短は気になりません。勢いですべてを帳消しにしてくれますから。

速い曲もあれば、ヘヴィなスローナンバーもある。ギターもハードロック的速弾きをしているけど、ボーカルはあくまでガレージロック的なのでハイトーンなし。録音もガレージロック的な生々しさが前面に打ち出されており、何度でも繰り返せるほどに気持ちよく楽しめる。正直、最高以外の言葉が見つかりません。もっと“こっち側”のリスナーに見つかってほしい傑作です。

 


▼KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD『INFEST THE RATS' NEST』
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2019年9月 4日 (水)

PRIMAL SCREAM『XTRMNTR』(2000)

2000年1月末にリリースされた、PRIMAL SCREAM通算6作目のオリジナルアルバム。日本では数週前倒しで発売されています。

前作『VANISHING POINT』(1997年)制作中にバンドへ加入した元THE STONE ROSESのマニ(B)が、本格的に全面参加した1枚で、レコーディングにはケヴィン・シールズ(MY BLOODY VALENTINE)やバーナード・サムナー(NEW ORDER)などがゲスト参加。ケヴィンは本作を携えたツアーからライブにも参加し、以降しばらくPRIMAL SCREAMに在籍することになります。

また、THE CHEMICAL BROTHERSやジャグズ・クーナー、アンドリュー・ウェザーオール、デヴィッド・ホルムズ、ダン・ジ・オートメーターなど豪華プロデューサー/リミキサーも加わり、前作でのダブ/サンプリング路線をさらに推し進めた、ヒップホップ以降のパンキッシュな1枚に仕上がっています。

とにかく、1枚の中にさまざまなジャンルが混在していながらも、不思議と統一感のある内容になっているのが不思議なアルバム。オープニングの「Kill All Hippies」(タイトルからして最高)は完全に前作の延長線上にある1曲ですが、続く「Accelerator」はパンキッシュなガレージロックだし、「Exterminator」はノイジーでゴリゴリのデジロック、ジャグズ・クーナー版「Swastika Eyes」はフロアで大盛り上がり必至のダンスミュージック、「Pills」は浮遊感漂うヒップホップ。ここまでてんでバラバラなのにすべてカッコいいんですから、恐れ入ります。

その後もジャジーなインスト「Blood Money」、ポップなトリップチューン「Keep Your Dreams」を筆頭に、無機質なエレクトロナンバー「Insect Royalty」、前作収録曲「If They Move Kill 'Em」をケヴィン・シールズがリミックスした「MBV Arkestra (If They Move Kill 'Em)」、THE CHEMICAL BROTHERSらしいドーピング感満載の「Swastika Eyes」別バージョン、そして眩いくらいにキラキラした「Shoot Speed / Kill Light」でエンディングを迎える。聴きどころ満載、いや、聴きどころしかない60分。これを傑作と呼ばずしてどうするよ、と。

歌詞に関しても、ボビー・ギレスピー(Vo)の政治的姿勢が強まったことで、より攻撃的になっており、これが続く『EVIL HEAT』(2002年)へとつながっていくわけです。

とにかく、この時期のライブは最高以外の何ものでもなかったなあ。ロックバンドがネクストレベルへ向かう過程でドロップした、異形の名盤。一般的に傑作と呼ばれる『SCREAMADELICA』(1991年)と双璧をなす、PRIMAL SCREAMの代表作だと思います(個人的にはこちらのほうが好みなんですが)。

なお、前年末にバンドが所属したCreation Recordsが閉鎖されることがアナウンスされており、本作が同レーベルからの最後のアルバムとなりました。チャート的には前作から全英3位という好成績を残していますが、シングルとしては「Swastika Eyes」(同22位)、「Kill All Hippies」(同24位)、「Accelerator」(34位)と大きなヒットは生まれませんでした。より政治色を強めた次作を機に本国でのセールスは下降線をたどることになり、バンドにとっては本作までがピークということになるようです。

 


▼PRIMAL SCREAM『XTRMNTR』
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2019年9月 3日 (火)

REEF『RIDES』(1999)

1999年4月にリリースされた、REEFの3rdアルバム。

前作『GLOW』(1997年)が全英1位とバカ売れし、同作から「Place Your Hands」(同6位)、「Come Back Brighter」(同8位)、「Consideration」(同13位)、「Yer Old」(同21位)とヒットシングルが連発。サウンドそのものはオールドスークルなブリティッシュロックでしたが、ブリットポップ末期の波にうまく乗ることができた結果、トップバンドの仲間入りを果たすことができました。

続く本作は、ブレイクした前作の延長線上にありながらもより無駄を削ぎ落とした、“バンドの芯”のみで勝負する意欲作。ポップさよりもハードさが際立つぶん、全キャリア中もっともハードロック色の強い内容に仕上がっています。

まず、オープニングの「New Bird」(全英73位)のヘヴィ&グルーヴィー、かつスリリングな演奏&アレンジからしてハードロック以外の何者でもありませんよね。ゲイリー・ストリンガー(Vo)のボーカルも冴え渡っているし、散々ヘタだと言われてきた(一部でね)ジャック・ベサント(B)のベースもゴリゴリいいながらキラリと光るプレイを聴かせてくれる。ケンウィン・ハウス(G)のギタープレイ/フレージング、ドミニク・グリーンスミス(Dr)のドラミングも文句なしのカッコよさですしね。

かと思えば、2曲目でいきなりレイドバックした「I've Got Something To Say」(全英15位)が飛び出したり、地味ながらもボディブローのようにじわじわ効いてくるミドルチューン「Wandering」「Metro」などがあり、グルーヴィーなドラッドポップ「Sweety」(全英46位)やじっくり聴かせるフォーキーなバラード「Locked Inside」もある。

後半でも「New Bird」にも匹敵するヘヴィな「Back In My Place」に再びノックアウトされ、REEF流ブルースハードロック「Undone And Sober」、本作では珍しいストレートなロックチューン「Who You Are」、じっくり歌を聴かせる「Love Feeder」やファンキーな「Moaner Snap」、ゲイリーのファルセットが心地よい壮大な「Funny Feeling」、アルバムを静かに締めくくるアコースティックナンバー「Electric Sunday」と、とにかくバラエティ豊かな楽曲がずらり。内容の多彩さでいえば前作以上なのですが、トーンが調整されているため統一感が強まっています。そういう意味では、なぜか前作よりも地味なんですよね。

その地味さが災いしてか、大きなシングルヒットが生まれることはなく、アルバム自体も前作の1位には届かず、最高3位止まりでした。それでもヒット作には違いないんだけどね。

ちょうどブリットポップが終焉を迎えたこともあり、その枠で括られていたバンドたちの動向が注目されていましたが、REEFはその翌年に早くも4thアルバム『GETAWAY』(2000年)を発表。2003年初頭(日本では2002年末)には5thアルバム用に制作された新録曲を含むベストアルバム『TOGETHER, THE BEST OF…』を発表してバンドは解散してしまいます。

悪いアルバムではないのですが、“芯”をむき出しにしたことでバンドが傾き始めてしまったという。タイミングも悪かったですけどね。とはいえ、(ブリットポップではなく)ブリティッシュロック/ブリティッシュハードロックとしては非常に優れた作品ですので、クラシックロックファンやハードロックファンに触れてほしい1枚です。

 


▼REEF『RIDES』
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2019年9月 2日 (月)

THE STONE ROSES『SECOND COMING』(1994)

1994年12月にリリースされた、THE STONE ROSESの2ndアルバムにしてラスト作。日本盤も本国発売から10日後くらいに発売されたと記憶していますが、とにかく早く聴きたくて当時店頭に並んでいた輸入盤を真っ先に購入した記憶があります。

1stアルバム『THE STONE ROSES』(1989年)リリースから5年もの歳月を要することとなった本作ですが、それは何も制作にそれだけ時間がかかってしまったということではなく、レーベル移籍に関する面倒な裁判が長引いたことによります。加えて、メンバーのプライベートに関するさまざまな出来事(家庭を持ったり、あるいは信頼できる身近な存在の急逝など)も影響して、気づけば5年ということなんでしょう。

正直、デビューアルバムで奏でられているサウンドは個人的な好みとは少々異なるし、受験前なのに観に行ってしまった初来日公演も心底楽しめたとは言い難い内容でした(むしろ、アルバム後に発売されたシングル「Fools Gold」や「One Love」のほうが好みでした)。なので、この2ndアルバムに関しても過剰な期待はしていなかったのです。

ところが、先行シングルとして発表された「Love Spreads」を聴いて(MVを観て)、その考えを改めさせられることになります。

 

 

「え、これツェッペリンじゃん!」

 

 

間もなくしてアルバムも聴きました。オープニングの無駄に長いSEからじわじわと始まる「Breaking Into Heaven」(11分半ってどういうことよ!)と、そのまま豪快になだれ込む「Driving South」、ある種前作までの流れにあるんだけど、もうちょっと“こっち側”な「Ten Storey Love Song」と、この3曲だけで「ああ、これは好きなやつだ!」と確信しました。

「Daybreak」も「Straight To The Man」も「Good Times」も「Tears」も、ぶっちゃけTHE STONE ROSESのパブリックイメージとは異なる楽曲/サウンドです。が、これが当時の自分にはど真ん中で響いたのです。もちろん、ダンサブルなブルースロック「Begging You」も、緩やかな「Tightrope」も「How Do You Sleep」も。これはうまいこと化けたなあ、と感心したものです。

しかし、世間の評価は真逆でした。「こんなのローゼズじゃない!」ということらしいです。セールス的にも期待されたほどヒットしませんでした(とはいえ、チャート的には全英4位、全米47位と前作超えだったんですけどね)。本作リリース後にはレニ(Dr)が脱退し、そのすぐ後には本作の首謀者でもあったジョン・スクワイア(G)も脱退。新メンバーを加えてライブを続けるものの、それからしばらくしてローゼズは解散を選ぶのでした。

非常にネガティヴ要素の多い作品かもしれませんが、2011年の再結成以降は比較的好意的に受け入れられているんじゃないか。そんな気がします。本作からの楽曲もしっかりライブで披露されていましたしね。決して名作中の名作!とは言いませんが、マッドチェスター〜ブリットポップの間に生まれた“時代の徒花”(笑)だったのかなと。むしろ、ハードロックファンが入っていきやすいブリットポップ/UKギターロック・アルバムとしては、REEFの初期3作とあわせてオススメしたい1枚です。

 


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2019年9月 1日 (日)

OASIS『DEFINITELY MAYBE』(1994)

1994年8月末に発売された、OASISの記念すべき1stアルバム。ここ日本では約1週間遅れて9月初頭にリリースされています。

ここ日本でも同年初夏ぐらいから音楽誌を中心に、その名前を多く目にするようになっていたイギリスの新人バンドOASIS。とはいえ、実際に音を耳にしたのは7月に日本盤リリースされたEP『SUPERSONIC』でのことでした。同作には英シングル「Supersonic」「Shakermaker」収録曲が1枚にまとめられており、僕自身も冒頭2曲(「Supersonic」「Shakermaker」)で惹きつけられ、早くも同年秋に決定していた来日公演のチケットをどうにか手配した記憶があります(すでに複数枚確保していた友人から譲ってもらったんだっけ)。

で、決定打になったのが第3弾シングルの「Live Forever」。確か当時フジテレビで金曜深夜に放送されていた音楽番組『BEAT UK』で同曲のMVを観て、完璧にノックアウトされたのです(これ、アルバムを購入した後だったか来日公演後だったか、それともその前だったかの記憶が曖昧なのですが)。そこからのアルバム〜初来日公演だったので、そりゃあのめり込まないわけがない。

正直、ブリットポップだとかそんな言葉をまだ認識する前の出来事で、BLURに関しては先に発表されていた3rdアルバム『PARKLIFE』も普通に聴いて楽しんでいたし、それより前にデビューしたRADIOHEADSUEDEも普通に楽しんで聴いていた。OASISに関しても「懐古主義っぽいけど、なんだか面白いバンドがマンチェスターから出てきたぞ」くらいの認識だったと思います。

だって、オープニングからいきなり「Rock 'n' Roll Star」ですからね(笑)。同年春にカート・コバーン(NIRVANA)が自殺し、ようやく「アンチ・ヒロイズム」の時代が幕を降ろすのか……そう思っていたタイミングにこれですから(笑)。しかも、そう高らかに宣言するこの曲のドライブ感たるや。最高じゃないですか。

以降もサイケでグルーヴィーな「Shakermaker」、名曲「Live Forever」と続く。この頭3曲だけで完全に勝利ですよね。そこからもアップテンポの「Up In The Sky」があったり(当時の日本盤はその前に「Cloudburst」が入っていたんですよね。その流れがもはや当たり前になっているんですが)、「Columbia」「Supersonic」というズシリと響く曲が並んでいたり(当時の日本盤はその間に「Sad Song」が挿入されており……って、もうこの説明いらない?苦笑)。その後もハードな「Bring It On Down」やドーピング・グラムロック「Cigarettes & Alcohol」があり、軽快な「Digsy's Dinner」があり、泣き曲「Slide Away」があり、最後はリラックスムードの「Married With Children」で締めくくり。

オリジナル盤は11曲で50分ちょいの程よい長さですが、日本初出時のCDはプラス2曲(全13曲)で62分くらいの長尺作だったんですよ。当時はそこまでシングルも追っていたわけではなかったので(結局、「Whatever」以降英国盤シングルまでチェックするようになるわけですが)、曲の多い日本盤を重視していましたが、コンパクトで内容もギュッと締まっている英国オリジナル盤のほうが今は聴きやすいです。ま、日本盤の13曲バージョンも今聴くといろんな思い出がよみがえってきて、それはそれで懐かしいんですけどね。

良くも悪くも、その後の英ロックや日本のインディーロックシーンに多大な影響を与えた1枚(続く2ndアルバム『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』もか)。リリースから25年も経ってしまいましたが、この勢いと衝撃と完成度を超えるデビュー作がその後どれだけ世に送り出されたのか……いや、本当に数えるほどしかないですよね。そういう意味でも、この先も語り継いでいきたい名盤のひとつです。

 


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