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2019年10月

2019年10月31日 (木)

2019年7月〜8月のアクセスランキング

今年1月から3ヶ月間隔で更新を始めたアクセスランキング。今回から2ヶ月区切りに変えてみました。そのほうが時事ネタから反映された動きがわかりやすいと思ったので。

というわけで、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いたトップ30ランキング。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2019年4〜6月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:2019年上半期総括(ベストアルバム10)(※2019年7月1日更新/NEW!)

2位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日更新/Re)

3位:SALEMS LOTT『MASK OF MORALITY』(2018)(※2018年8月9日更新/Re)

4位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新/→4位)

5位:VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)(※2017年3月24日更新/↓1位)

6位:NIRVANA『NEVERMIND』(1991)(※2017年8月14日更新/↑22位)

7位:KISS THE FAREWELL TOUR JAPAN 2001@東京ドーム(2001年3月13日)(※2001年3月25日更新/↑25位)

8位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/Re)

9位:SLAYER『REIGN IN BLOOD』(1986)(※2018年3月8日更新/↓6位)

10位:DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』(2019)(※2019年5月13日更新/↓5位)

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2019年10月のお仕事

2019年10月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※10月31日更新)

 

[WEB] 10月31日、「リアルサウンド」にてfripSideインタビューfripSide「only my railgun」から積み重ねた10年 南條愛乃と八木沼悟志が互いの変化を語るが公開されました。

[紙] 10月24日発売「TV Bros.」2019年12月号にて、MONO NO AWARE『かけがえのないもの』、Rei『SEVEN』、柴田聡子『SATOKO SHIBATA TOUR 2019 "GANBARE! MELODY" FINAL at LIQUIDROOM』safeplanet『Safeboyz』の各ディスクレビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 10月23日、「リアルサウンド」にてGALNERYUSインタビューGALNERYUSが究める、ヘヴィメタル×ポップスの融合「最新作が最強というバンドでありたい」が公開されました。

[WEB] 10月23日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにてPassCodeの南菜生&大上陽奈子インタビューPassCodeの変化を促す「感情」の重みが公開されました。

[WEB] 10月20日、「FLYING POSTMAN PRESS」オフィシャルサイトにてWANIMAインタビューが公開されました。紙面に掲載されているものと同じ内容になります。

[紙] 10月20日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2019年11月号にて、WANIMAのインタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 10月17日、「リアルサウンド」にてTHE PINBALLSのライブ評「THE PINBALLS『WIZARD』リベンジ果たした新宿LOFTワンマン 希望に満ちた新しい旅の始まり」が公開されました。

[WEB] 10月9日、「リアルサウンド」にて上白石萌音のインタビュー「上白石萌音に聞く、新曲「一縷」での野田洋次郎との“タッグ” 「自分が真っ白になれる」」が公開されました。

[WEB] 10月9日、「リアルサウンド」にて眩暈SIRENのアーティスト評「眩暈SIREN×しづ『spinoid』の世界観はリスナーに何を与える? 主題歌「滲む錆色」MVから考察」が公開されました。

[WEB] 10月6日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載「Korn、Tool、Baroness、Opeth……独自のスタンスで“ヘヴィ”を表現するHR/HM新譜6選」が公開されました。

[紙] 10月4日発売「日経エンタテインメント!」2019年11月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆しました。(Amazon

[WEB] 10月2日、「リアルサウンド」にて日向坂46のライブ評「日向坂46はアイドル界の頂点へ向かう SSA公演で見せた、けやき坂46から現在に至る最強&最高の姿」が公開されました。

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また、9月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、Apple Musicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1900号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

BACKSTREET GIRLS『NORMAL IS DANGEROUS.』(2019)

ノルウェーのロックバンド、BACKSTREET GIRLSが2019年9月に発表したオリジナルアルバム。

今となってはなんともふざけた名前ですが、彼らの結成は1984年にまでさかのぼるので、世の中的に知られている“路地裏の少年たち”よりも歴史の長いバンドということになります(知名度的には圧倒的に“少年たち”のほうが上ですが)。

RAMONESとROSE TATTOOから強い影響を受けたという彼らは、その2組から想像できる“男臭くて疾走感に満ち溢れた、シンプルでパンキッシュなロックンロール”を展開。本作でもRAMONES顔負けの1曲2〜3分程度のショートチューンを次々に繰り出しています。

ボーカルのやさぐれた歌声はまさにROSE TATTOOのそれ。曲によってはROSE TATTOOと同郷のAC/DCを彷彿とさせるハードロック色も感じられ、そのへんのバリエーションはまあこの手のバンドにありがちなものなのですが、ここまでストレートに演奏されるともはやパクリだの単調だのという物言いが馬鹿らしくなってきます。

疾走感の強い楽曲もひたすらカッコいいのですが、個人的にはアンガス・ヤングにも匹敵するクールなギターリフを持つミドルチューン「Phenomenal」「Goat」のような楽曲がお気に入り。こういった楽曲をブライアン・ジョンソンみたいなハイトーンで表現するのではなく、がなるような野太いボーカルで歌うことで別のカッコよさが生まれている気がします。

かと思えば、スライドバーを用いたリフとMOTÖRHEAD(軍服ファッションもレニーへのリスペクトが感じられる)的疾走感が気持ち良い「Status Quolity」(タイトルも馬鹿げてる。笑)とか、気の利いた楽曲も含まれていて、実は意外と(この手にしては)幅を持っているんじゃないか、という気がしてきました。

まあ、あれです。これまでに挙げてきたバンド名で引っかかった人。間違いないです。“ハードロックに転向したRAMONES”、“ハイトーンで歌うことをやめたAC/DC”、“B級感が最高潮にまで達したMOTÖRHEAD”などいくらでも例えようはありますが、まずは“百聞は一見に如かず”。爆音にて、無心で楽しんでいただけたらと。

僕はこのアルバムで初めて彼らに触れたのですが、本作を機に過去作も掘り起こしてみたいと思います。きっと延々と同じことをやり続けているはずなので、そこもハズレはないはずなので(笑)。

 


▼BACKSTREET GIRLS『NORMAL IS DANGEROUS.』
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2019年10月30日 (水)

THE SONICS『THIS IS THE SONICS』(2015)

2015年3月にリリースされた、THE SONICS正真正銘のニューアルバム。

THE SONICSは60'sガレージロック/ガレージパンクを語る上では欠かせないレジェンド的存在で、2012年に日本のTHE BAWDIESが招聘して一緒にツアーを行ったことでその存在を知ったという邦楽リスナーも少なくないのでは。60年代に発表した2枚のオリジナルアルバム『HERE ARE THE SONICS!!!』(1965年)と『BOOM』(1996年)は“ガレージパンクの教科書”的作品として、今でも多くのロックファンに愛聴されています。

彼らのオリジナルアルバムは本当に少なく、ほかには再録曲を含む『INTRODUCING THE SONICS』(1967年)と、80年代にジェリー・ロスリー(Vo, Organ)を軸に変則的メンバーで制作された『SINDERELLA』(1980年)があるのみ。2010年には新録4曲にライブテイク4曲から構成されたEP『8』(日本盤はさらにボートラ2曲を追加した全10曲入りのアルバムボリューム)が発表されており、このとき「約40年ぶりの新録スタジオ音源」と声高に騒がれましたが、2010年から40年を逆算すると1970年前後……つまり、『SINDERELLA』は“なかった”ことにされているんですね。

ちなみに、今作『THIS IS THE SONICS』が発表されたときも「48年ぶりのニューアルバム」との触れ込みだったので、以下同文。そう考えると、本作は通算4作目のスタジオアルバムということになるんでしょうか。

本作はジェリーのほか、ラリー・ペリパ(G)、ロブ・リンド(Sax)というオリジナルメンバー3人のほか、フレディ・デニス(B, Vo)、ダスティ・ワトソン(Dr)という編成で制作。リリース後もこの布陣でライブを行っていたようですが、2016年にはジェリーとラリーがツアーからの引退が宣言され、現在オリジナルメンバーはロブのみという状況のようです。

全12曲で32分というトータルランニング、しかもモノラル録音という徹底されたスタイルの作り込み。そして、オリジナル曲とカバーがほぼ半々という構成も、初期2作に習ったもので、こういった文字情報だけだと「THE SONICSのオリジナルメンバーがTHE SONICSを“模倣”して現代によみがえらせた」と穿った受け取り方もできるかもしれません。

し・か・し。聴いていただけばおわかりのとおり、ここで展開されているハイテンションなガレージロックサウンドはTHE SONICS以外の何者でもなく、オープニングトラックの「I Don't Need No Doctor」(ご存知、レイ・チャールズのカバー)が始まった瞬間「あ、THE SONICSだ!」と確信するはずです。

脳天から血が吹き出るんじゃないかってくらいに高いテンションは、初期の作品にも匹敵するものがあるかな。2015年のレコーディングということで、モノラルとはいえかなり整理された録音となっているので、そこに初期の破壊的なアグレッシヴさは感じられず、そこだけが残念かな(こればかりはね)。とはいえ、そんな中で最善を尽くしたプロデューサーのジム・ダイアモンド(THE WHITE STRIPES、THE VON BONDIES、THE DIRTBOMBSなど)の手腕は現代においては素晴らしいものがあるとは思います。実際、尖っているのにめちゃめちゃ聴きやすいですからね。

初期2作は別格として、そこと比較すれば確かに聴き劣りするかもしれない。だけど、ロックアルバムとしては文句なしの完成度なのは間違いない事実。ああだこうだ言う前に、純粋に楽しみたい1枚です。

 


▼THE SONICS『THIS IS THE SONICS』
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2019年10月29日 (火)

TORO Y MOI『SOUL TRASH』(2019)

2019年10月下旬リリースの、TORO Y MOI最新作。

キャリア中もっともポップな最新作『OUTER PEACE』(2019年)から間髪を入れず発表された本作は、今年1月にフリーダウンロードで発表されたミックステープの“ハイファイ”バージョン。CDでのリリース予定はなし、デジタルおよびストリーミングのみで発表されました。

作品の性質上、実験的要素はいつも以上に突出したものがありますが、その自由度の高さのみに焦点を当てれば至高の1枚と言えるのではないでしょうか。

と同時に、制作時期の近さもあり『OUTER PEACE』との共通点も垣間見える。そう考えると、本作は『OUTER PEACE』って実は対で語られるべき2作品なのでは?と思えるほどの近しさも見えてくるはずです。

 

※本作は雑誌用に執筆したディスクレビュー原稿を、本サイト用に加筆したものです。

 


▼TORO Y MOI『SOUL TRASH』
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THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY『A NEW MORNING, CHANGING WEATHER』(2001)

THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACYが2001年10月にリリースした、通算2作目のオリジナルアルバム。日本盤は1年遅れの2002年9月に、1stアルバム『SURVIVAL SICKNESS』(2000年)とあわせて発売されました。

THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACYは、1997年にREFUSEDを解散させたデニス・リクセゼン(Vo)が新たに結成した5人組ガレージロック/ガレージパンクバンド。REFUSED同様にヨーロッパではBurning Heart Records、北米ではEpitaph Recordsと契約し、日本盤はBurning Heart流れでビクターからリリースされています。

2001〜2年というのは時期的に、ここ日本でTHE HIVESをはじめとした北欧ガレージロック/ガレージパンクに注目が集まり始めていた頃。広義ではMANDO DIAOCAESARSあたりもこのへんに含まれるのかな。そんな中、かのREFUSEDのフロントマン(と解散時のサポートベーシストであるインゲ・ヨハンソン)が新たに結成、しかもそれがガレージロック/ガレージパンクとあって、かなり注目が集まったのではないでしょうか。

とはいえ、僕自身は完全なる後追いで、この2作目からTHE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACYに触れることになり、オープニングトラックの「A Northwest Passage」1曲で完全にノックアウト。どツボにハマったわけです。

楽曲/サウンド自体はオルガンプレイヤーを含む60'sモッズ流れの、トゲトゲしたガレージロック。パンキッシュな側面ももちろん随所から感じられるのですが、それ以上にビリビリと伝わってくるテンションの高さに圧倒されてしまう。デニスのボーカルパフォーマンスの素晴らしさについては言うまでもなく、それを取り囲む緩急に富んだバンドアンサンブルの素晴らしさは特筆に値するものがあります。

冒頭2曲のストロングスタイルからの、サックスをフィーチャーした隙間の多いアンサンブルの「Bigger Cages, Longer Chains」や逆にノイズで隙間を埋める「Breakout 2001」の対比、終始テンション高めの6分強にわたる「Last Century Promise」、エンディングを飾るにふさわしいタイトルトラック「A New Morning, Changing Weather」と、全11曲/46分があっという間に感じられるのもこのアルバムの特徴でしょうか。THE HIVESあたりの30分前後をひたすら突っ走る作風も大好きですが、この“濃厚なのに体感数秒”的な作りも嫌いじゃない。このへんは、特に(解散前の)REFUSEDにも通ずるものがあるのかなと。

あと、このバンドに関しては特に歌詞に注目して聴いてほしいなと。そういう意味では、すでに廃盤状態ですが対訳の付いた日本盤にてチェックしていただきたい。彼らが当時起こそうとしていた“革命”の意味を、各楽曲から感じてもらいたいと思います。

バンド自体は2009年に解散しており、現在デニスはREFUSEDやINVSNといったバンドで活躍中。せっかくですし、忘れた頃にまた復活させてほしいな。

 


▼THE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY『A NEW MORNING, CHANGING WEATHER』
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2019年10月28日 (月)

REFUSED『WAR MUSIC』(2019)

REFUSEDが2019年10月半ばに発表した、通算5作目のスタジオアルバム。再結成第1弾アルバム『FREEDOM』(2015年)から4年半ぶりの新作となります。

前作はEpitaph Recordsからのリリースでしたが、本作では新たにUniversal Records傘下のSpinefarm Records / Search And Destroy Recordsに移籍。8月にリードトラックとして「Blood Red」を公開後、9月に「Rev001」、10月に「Economy Of Death」と新曲を小出しにしていきました。

Martin Ehrencrona(メタル系のTRIBULATION、ポスト・パンク系のVIAGRA BOYSなどスウェーデンのバンドを多数手がける)をプロデューサーに迎えて制作された本作、『WAR MUSIC』というタイトルのわりにポップでスルスル聴き進められる内容です。もちろん全体を覆う質感はハードでアグレッシヴなものなのですが、楽曲自体はREFUSEDが時折見せてきたポップサイドに焦点を絞ったものが多く、3分前後の楽曲中心で全10曲34分というトータルランニングもあって、かなり聴きやすいという印象を受けます。

「Turn The Cross」のような疾走ハードコアナンバーもあるにはあるのですが、むしろ本作は「Blood Red」や「Rev001」で聴けるような(彼らにしては)キャッチーさ……過去の楽曲で言えば「New Noise」や「Françafrique」あたりの、シンプルなリフやフレーズが反復されることで生み出される高揚感にスポットを当てた楽曲が軸になっている気がしました。それが先の「聴きやすさ」につながっていると思うのです。

もちろん、タイトルからも伺えるREFUSEDらしい反骨精神は歌詞を含め、至るところに反映されていると思います。しかし、英語圏外の日本からすると(しかも日本盤すら発売されていない状況もあり)本作をただ聴く限りでは「REFUSEDのわりに、ずいぶんと聴きやすくなったなあ」とネガティブな感想を持つかもしれません。事実、僕も先行トラックを最初に聴き、このアルバムに初めて接した際には「良い意味で整理された、隙のないポップよりの1枚だな。好きになれるかなあ」とマイナス評価を下したくらいですから。

しかし、発表されてからしばらく聴き込んでいくと、このシンプルさが快感に変わっていくんですよね。で、気づいたんですが……前作『FREEDOM』もそれ以前のアルバムから進化はしていたものの、まだまあ「以前のREFUSED」を引きずっていたのかなと。それと比べて本作は思いっきり前進した、新しいフェーズへと突き進んだということなのかな……そう解釈しました。

新しいことを始めれば、従来のリスナーから賛否が上がるのは仕方ないこと。事実、僕も過去の彼らと比較してマイナス評価をしようと思ってしまいましたから。でも、気づけば繰り返し聴きまくっているという事実が、この新作の本当の評価を示しているんじゃないか。今はそう思っています。クセになる1枚。早くナマで聴きたいです。

 


▼REFUSED『WAR MUSIC』
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2019年10月27日 (日)

CANDLEMASS『THE DOOR TO DOOM』(2019)

2019年2月に発表された、CANDLEMASSの12thアルバム。前作『PSALMS FOR THE DEAD』(2012年)から6年半ぶりの新作に当たります。

前作はリリース当時、バンドにとって最後の作品になると噂されていました。リリース後にはアルバムに参加していたロバート・ロウ(Vo)が脱退するなど、二度目の終焉に向けて崩壊が始まったのかと思っていたところ、なんと過去にTREAT、イングヴェイ・マルムスティーン、THERIONなどで活躍したマッツ・レヴィン(Vo)が加入。バンドは噂を払拭するがごとく活動を継続し、2016年にはマッツが参加したEP『DEATH THY LOVER』を発表、同年秋には『LOUD PARK 16』にて初来日も実現しました。

しかし、2018年にはマッツが脱退。そんな彼に代わり、新たにバンドに加わったのは1stアルバム『EPICUS DOOMICUS METALLICUS』(1986年)のみ参加の初代ボーカリスト、ヨハン・ラングクイスト(Vo)でした。こうして1stアルバム以来32年ぶりの邂逅となった新作が完成したわけです(アートワークも、1stアルバム・リスペクトなテイストですし)。

展開されているサウンド、楽曲はどこからどう聴いてもCANDLEMASS以外の何者でもない、叙情的な深みを持つドゥームメタル。ヨハンのボーカルは前任や歴代のシンガーと比較するとクセも弱いし派手さも皆無ですが、味わい深さという点においては一級品で、成熟しきった今のCANDLEMASSサウンドには持ってこいの適任者だと思いました。特に、「Bridge Of The Blind」のように静の面を強調したスローナンバーではその魅力が存分に発揮されており、本作中盤のハイライトのひとつに挙げられると思います。

と同時に、BLACK SABBATHばりにうねりを上げるメタルチューンでも、彼なりのヘヴィさが表現されており、地味ながらもジワジワとボディブローのように効いてくる魅力が備わっていると思いました。個人的には序盤3曲や「Death's Wheel」みたいな曲、めっちゃツボですし。

そうそう。サバスといえばこういったドゥームメタルの始祖的存在として知られているわけですが、本作3曲目の「Astorolus - The Great Octopus」にはご本家のトニー・アイオミ(G)がギターソロでゲスト参加しております。聴けばアイオミとわかるその粘っこいプレイはさすがの一言。もちろん、当のCANDLEMASSのリードギタリスト、ラーズ・ヨハンソン(G)も負けじと、個性的でストロングスタイルなソロを聴かせてくれるのでご安心を。

オジー・オズボーン時代のサバスのドゥーミーな部分と、ディオ時代のサバスが持っていたドラマチックさを兼ね備え、かつ王道HR/HMの伝統芸とモダンなヘヴィさを併せ持つ、非常にバランスが良くて聴き応えのある1枚。11月には本作を携えた単独来日公演も予定されているので、ぜひ本作の濃厚な世界観を生でも体験してほしいところです。僕も都合つけて、どうにか足を運びたいな。

 


▼CANDLEMASS『THE DOOR TO DOOM』
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2019年10月26日 (土)

DISTURBED『BELIEVE』(2002)

DISTURBEDが2002年9月にリリースした、通算2作目のオリジナルアルバム。日本では1ヶ月遅れの、同年10月に発売されました。

デビューアルバム『THE SICKNESS』(2000年)はチャート的には全米29位という“中ヒットよりちょっと上”くらいの成績でしたが、セールス面では全米のみで現在までに500万枚を超えるメガヒット作に。「Down With The Sickness」や「Stupify」「Voices」といったラジオ/MTVでのヒット曲も生まれました。

そんなデビューヒットを受けて制作された2作目。基本的には前作の延長線上にある作風で、ヘヴィさが際立った1stアルバム以上にグルーヴ感が冴えた1枚に仕上がっています。

KORN以降のラップメタル/グルーヴメタルからヒップホップの音楽的要素を取り除き(あくまで技術・手法としてのヒップホップ感を残しつつ)、よりヘヴィメタル感を強めるとこうなるのかな……という印象を受けたデビューアルバム以上にメタリックで、メロディアスさも際立つ。特にデヴィッド・ドレイマン(Vo)の跳ねるようでカーカッシヴな歌声が、ときどき哀愁を帯びた繊細なボーカルを聴かせるんですね。そこがまた味わい深くて、前作以上の深みを感じさせてくれます。

そういった点においては、派手さの目立った1stアルバムよりも地味に聴こえてしまうかもしれません。が、スルメ度という点においては本作のほうが一歩リードしているのではないでしょうか。そりゃあ、かのオジー・オズボーンが彼らのことを「メタルの未来」なんて言うわけだ。

オープニングを飾る「Prayer」(全米58位)や、哀愁味に満ちたタイトルトラック「Believe」、チェロやピアノをフィーチャーしたバラード「Darkness」など、とにかく聴きどころの多い1枚。大半のこの手のバンドがそうであるように、全体的にミドルテンポ中心でファストチューン皆無なところに、ある一定層は退屈さを感じるかもしれません。事実、僕も初めて聴いたときは似たり寄ったりのテンポ/リズムに「ちょっと厳しいかも」と思った覚えがありますが、やはり曲の良さには勝てないというか、気づけばいつのまにかリピートしまくっていました。ラストのバラード「Darkness」まで到達すると、なぜかホッとするんですよね(笑)。

ちなみに本作、Billboard 200(アルバムチャート)で全米初登場1位を獲得。デビュー作に次いで200万枚以上を売り上げる大ヒット作となりました。昨日取り上げたSTONE SOURといい、こういった歌心を大切にする新世代ヘヴィロック/メタルバンドが2002年にヒットを飛ばしているという事実、非常に興味深いですね(その決定打である、翌2003年のEVENESCENCEへとつながるわけですが)。

 


▼DISTURBED『BELIEVE』
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2019年10月25日 (金)

STONE SOUR『STONE SOUR』(2002)

2002年8月にリリースされた、STONE SOURのデビューアルバム。

STONE SOURはコリィ・テイラー(Vo)がSLIPKNOT加入前(1992〜1997年)にジェイムズ・ルート(G/現在はSTONE SOUR脱退済み)に在籍していたHR/HMバンドで、コリィとジェイムズのSLIPKNOT加入を機に一度解散。しかし、『IOWA』(2001年)の活動がひと段落する頃に再結成し、SLIPKNOTが所属するRoadrunner Recordsと契約することになります。

デビューアルバムの参加メンバーはコリィとジェイムズのほか、ジョシュ・ランド(G)、ショーン・エコノマキ(B)、ジョエル・エクマン(Dr)という解散前の布陣。バンドとトム・タットマンのプロデュース、トビー・ライト(ALICE IN CHAINSKORNSLAYERなど)のミキシングにより完成した本作は全米46位を記録、売り上げ50万枚を突破する、デビュー作としては上出来な結果を残しました。

また、本作収録曲の「Bother」が映画『スパイダーマン』(2002年)のサウンドトラックにも収録、シングルカットされた結果全米56位のヒットとなりました。この曲は今でもライブで必ず歌われる、彼らにとって代表曲のひとつと言えるでしょう。

そして、本作での活動をもってコリィやジェイムズが素顔を公開。「マスクの下はこうなっていたんだ! コリィ、イケメソじゃん!」と瞳をキラキラさせたお嬢さん方も少なくなかったようです。

内容に関してですが、SLIPKNOTで聴くことができたコリィの歌唱力の高さが存分に発揮された、メロディアスなHR/HMアルバムに仕上がっています。ヘヴィさもしっかり楽しめるのですが、SLIPKNOTのそれとは異なる質感で、あくまでHR/HMの範疇にあるヘヴィさといいますか。要するに、エクストリーム・ミュージックのそれとは相反するヘヴィさなんです(SLIPKNOTが「エクストリーム/ヘヴィの中に、ほんのちょっとのメロウさ」だとしたら、STONE SOURは「メロディアスさの中に、味付けとしてのヘヴィさ」。要するにスタート地点が真逆なのです)。

と同時に、伝統的なHR/HMにこだわったというだけではなく、しっかり彼のルーツ……グランジ以降のオルタナティヴロックのカラーもしっかりと感じられる。王道のメタルとは一線を画するものかもしれませんが、間違いなくこれは“90年代以降のHR/HMのそれ”以外の何ものでもありません。かつ、コリィが歌えばどれもSLIPKNOTとの共通点が自然と感じられています。特に、本作を経て制作されたSLIPKNOTの3rdアルバム『VOL.3 : (THE SUBLIMINAL VERSES)』(2004年)はこのSTONE SOURでの経験がなければ到達できなかった作品だったのではないでしょうか(事実、『IOWA』以降の不和がコリィをSTONE SOURへと突き動かしたわけですし、下手したらそのまま解散しても不思議じゃなかったわけですから)。

今やサイドプロジェクトなんて目で見る人はいないほど、SLIPKNOTと交互で動くコリィのメインバンドのひとつ。その完成度は作品を追うごとに高まっていますが、SLIPKNOTとのつながりという意味では本作の重要性は非常に高いですし、その後の“歌モノ・ヘヴィロック/ニューメタル”を語る上でも重要な1枚ではないでしょうか。

 


▼STONE SOUR『STONE SOUR』
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2019年10月24日 (木)

MUDVAYNE『LOST AND FOUND』(2005)

2005年4月発売の、MUDVAYNE通算3作目のオリジナルアルバム。

「Dig」MVでの、青髪に銀色肌のチャド・グレイ(Vo)、顔中にトゲが生えた赤鬼という姿のグレッグ・トリベット(G)、黒塗り・スキンヘッド・鬼のツノという出で立ちのライアン・マルティニー(B)、辮髪に顔が白黒のストライプ(笑)というマシュー・マクドノウ(Dr)という奇抜なルックスの印象のみが先行していた彼らですが、そのサウンドはテクニカルな演奏を前面に打ち出した、非常に変態チックなヘヴィロック。僕自身嫌いではなかったのですが(むしろ好きなジャンル)、どうしても初見のイメージが邪魔をして素直に接することができなかったバンドのひとつでした。

そんなイメージのまま2ndアルバム『THE END OF ALL THINGS TO COME』(2002年)をスルーしてしまっていたのですから、初めて本作『LOST AND FOUND』からの楽曲に接したときには「えっ? これMUDVAYNEなの?」とびっくりしたものです。

たぶん、最初に「Happy?」のMVを観たのかな。だから、リリースからはちょっと時間が経っていたんじゃないかと思います。このキャッチーさ、ハマらない理由がない。で、アルバムに手を伸ばしてみたら、オープニングの「Determined」の時点でノックアウト状態。聴き進めていくと、「IMN」のような楽器隊の高等テクニックが見事に反映された楽曲も含まれており、変態さも健在(過去作と比べたらだいぶ落ち着きましたけどね)。

EVANESCENCE『FALLEN』(2003年)『THE OPEN DOOR』(2006年)を手がけたことで知られる元UGLY KID JOEのギタリスト、デイヴ・フォートマン(SLIPKNOTGODSMACKなど)を新たなプロデューサーに迎えたことも、このキャッチーさにつながっているのかもしれません。とにかく全体的に隙が感じられないし、いわゆる“ニューメタル(揶揄ではなく文字通りの意味での)”以降のヘヴィメタル/ヘヴィロックという視点で見れば完璧な1枚だと断言できます。

また、そういった作品が全米2位というキャリア最高の数字を残していること、現在までに100万枚を超えるセールスを記録しているという事実が、本作のポピュラリティを物語っているのではないでしょうか。

全体的にヘヴィだけど、適度なポップさと適度なサイケさ、そして程よい変態加減(と楽器隊のテクニカルさ)が、このアルバムを絶妙なバランスで構築している。どれかひとつが過剰すぎてもダメだったんだなと、その前後の作品を聴くにつれて実感させられる、奇跡の1枚です。

 


▼MUDVAYNE『LOST AND FOUND』
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2019年10月23日 (水)

LAMB OF GOD『WRATH』(2009)

LAMB OF GODが2009年2月に発表した、通算5作目のスタジオアルバム。前身バンドBURN THE PRIEST時代の作品を含めると、6枚目のオリジナルアルバムとなります。

前々作『ASHES OF THE WAKE』(2004年)で一気に知名度を高め、続く前作『SACRAMENT』(2006年)ではついに全米TOP10入り(最高8位)を果たした彼らでしたが、本作ではその記録を更新。初登場2位という、現時点における最高記録を残しています。

本作では、以降長くタッグを組むことになるジョシュ・ウィルバー(TRIVIUMCROSSFAITHSONS OF TEXASなど)にプロデューサーを交代。これが功を奏したのか、前作までの殺傷力を維持しつつ、より“わかりやすい”作風へと見事なバージョンアップを遂げています。

オープニングの「The Passing」から「In Your Words」への構成は、もはやHR/HMの古典的伝統芸といえるもの。ドラマチックさを際立たせるという意味でも、本作でこのアレンジ/構成を用いたのは大正解だったと思います。

で、実質的なオープニングトラック「In Your Words」で聴ける“90年代以降のモダンメタルの集大成”的サウンド。もちろん前作までの延長線上にあるのですが、不思議と聴きやすくなっているんですね。ボーカルのちょっとした歌メロによるものなのか、あるいはギターのフレージングの工夫によるものなのか。あるいはそれ以外の要素によるものなのか。実際にはいろんな実験の組み合わせの結果だとは思いますが、メジャーから発表された過去2作以上の“メジャー感”がひしひしと伝わってきます。

以降も、どこからどう聴いてもLAMB OF GOD以外の何者でもないのですが、どこか新しさも感じられる。と同時に、彼らが守ろうとしているヘヴィメタルの歴史の重みもしっかりと伝わってくる……「Grace」のような楽曲で聴ける、ちょっとした工夫からもそういった思いは確実に伝わるはずです。特にこの曲、ソロを含むギタープレイが圧巻なので、ぜひ一度聴いてもらいたい!

あと、曲が何回でもカッコいいと思えるバンドって、ドラミングがとにかく素敵なんですよ。テクニカルなプレイをここぞとばかりにブッこんでくるのに、それを「難しいことやってますよー」とまったく感じさせない、ナチュラルなプレイといいますか。本作で聴けるクリス・アドラー(Dr)のプレイはまさにそれで、彼にとっても真骨頂と言えるものなんじゃないでしょうか(だからこそ、今年発表された彼の脱退は残念でなりません……)。

LAMB OF GODの本質を知るという意味での入門盤には前作『SACRAMENT』がオススメですが、すでにLAMB OF GODというバンドのことを知っていて若干の苦手意識を持っている方には、ぜひこの『WRATH』を聴いていただきたい。そう断言したくなる、すべてにおいてバランスの整った1枚です。

 


▼LAMB OF GOD『WRATH』
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2019年10月22日 (火)

MACHINE HEAD『THE MORE THINGS CHANGE...』(1997)

1997年3月にリリースされた、MACHINE HEADの2ndアルバム。

レコーディング参加メンバーはロブ・フリン(Vo, G)、ローガン・メイダー(G)、アダム・デュース(B)、デイヴ・マクレイン(Dr/ex. SACRED REICH)。デビュー作『BURN MY EYES』(1994年)からドラマーのみ交代した編成で、前作から引き続きコリン・リチャードソン(CARCASSFEAR FACTORYNAPALM DEATHなど)をプロデューサーに迎え制作されました。

基本的な方向性は前作の延長線上にあるものですが、良い意味で荒削りだった前作と比較すると、よりバンドとしの輪郭がくっきりした印象を受けます。ギタープレイにおける“MACHINE HEADらしさ”はデビュー時点で確立されていたものの、楽曲面に関してはロブが過去に在籍したVIO-LENCEの流れを汲むスラッシュメタルの色合いを若干残しつつ、当時主流になりつつあったMETALLICA『ブラックアルバム』(1991年)や“PANTERA以降”のグルーヴメタル/モダンヘヴィネス路線を軸にした、どこか“借りもの”的なイメージは否めませんでした。

しかし、本作ではそこから一歩踏み込んだサウンドといいますか。スラッシーなカラーを極力薄くし、モダンヘヴィネス色にKORN以降の、ヒップホップを通過した“跳ねた”リズムをミックスし……って書くと「また借りものじゃん!」とツッコまれそうですが、いえいえ、それだけじゃないカラーがしっかり存在しているんです。すでに前作の時点でも存在していましたが、1曲の中でミドルを軸にテンポチェンジを繰り返すアレンジは、まさにこのバンドならではと言えるのではないでしょうか。特に今作ではその特徴がより際立ったものに確変しており、ダークで不穏な雰囲気を醸し出したスラッジ風の要素を取り入れた序盤から徐々に変化を繰り返す「Down To None」や「Blood Of The Zodiac」などは、まさにその真骨頂といえます。

かと思えば、「Struck A Nerve」や「Bay Of Pigs」のようなハードコア寄りの疾走チューンも含まれている。スラッシュメタルというよりは完全にパンク側のファストチューンですよね。そういえば、本作の楽曲群の多くからはメタルというよりもハードコア側の香りが強く感じられる。そういった意味でも、彼らが当時ほかのモダンメタル勢とは一線を画する個性的な存在だったことが伺えるはずです。

しかも、冒頭から「Ten Ton Hammer」や「Take My Scars」という、この手のバンドにしては異常にキャッチーなナンバーが並ぶわけですから。本作で初めて全米TOP200入り(最高138位)を果たしたのも納得です。

が、ここで早くも完成の域に達してしまったその個性を、次作『THE BURNING RED』(1999年)で(悪い方向に)ぶち壊すことになり、バンドは早くも迷走期に突入することになります。

 


▼MACHINE HEAD『THE MORE THINGS CHANGE...』
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2019年10月21日 (月)

TESTAMENT『LOW』(1994)

1994年9月末に発売された、TESTAMENTの6thアルバム。日本では1ヶ月遅れの、同年10月末にリリースされました。

もともとその素養はあったとはいえ、前作『THE RITUAL』(1992年)にてスラッシュ路線からJUDAS PRIESTにも通ずる正統派ヘヴィメタル路線へと舵を切ったTESTAMENT。チャート的には全米55位と過去最高の数字を残すものの、同作のツアー中に凄腕ギタリストのアレックス・スコルニックが脱退してしまいます。さらに、ドラマーのレイ・クレメンテも相次いで脱退。バンドは窮地に立たされてしまいます。

そんなTESTAMENTを救ったのが、ex. DEATH〜ex. OBITUARYのジェームズ・マーフィ(G)とex. EXODUSのジョン・テンペスタ(Dr)という新メンバー。才能、技術ともに申し分のない面々が加入したことで、バンドは前作から一転、時流に乗ってか非常にヘヴィな方向へと舵を切り直します。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINERED HOT CHILI PEPPERSSICK OF IT ALLなど)を迎えて制作された本作は、アレックス・スコルニックに負けず劣らずの変態さが備わった(笑)ジェームズ・マーフィのクールなギタープレイと、リズムがヨレることで定評のある(苦笑)レイ・クレメンテとは相反して芯の通った重々しさが魅力のジョン・テンペスタのドラミングが1994年というあの時代を反映させたサウンドを作り上げています。

つまり、今作で聴けるヘヴィさは初期のスラッシュ路線とは異なる、グルーヴメタルやモダンヘヴィネス寄りのヘヴィさなのです。この音に合わせて、チャック・ビリー(Vo)の歌唱法にも変化が生じ、本作から初めて“デス声”を導入します。普通に歌い、がなっても十分に個性的なチャックでしたが、デス声導入によって没個性期に突入……といっては言い過ぎでしょうか。

まあとにかく、TESTAMENTとしての個性は若干薄らぎつつあるものの、この時代を象徴するヘヴィメタルという点においては非常によくできた1枚だと思います。「Low」といい「Dog Faced Gods」といい、爽快すぎるほどのヘヴィさが随所から感じられるし、彼らならではのメロウなバラード「Trail Of Tears」もある。日本の成人コミック『超神伝説うろつき童子』を題材にした「Urotsukidōji」なんていうテクニカルなインストナンバーも含まれており、実は聴き応えという点に関しては非常に充実度の高い1枚だと思います。

チャート的には全米122位と前作を大きく下回ってしまい、本作をもってメジャーのAtlantic Recordsとの契約も終了してしまいますが、その結果彼らの“激化”は続く『DEMONIC』(1997年)で最初のピークを迎えることになります。

 


▼TESTAMENT『LOW』
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2019年10月20日 (日)

SACRED REICH『AWAKENING』(2019)

2019年8月下旬にリリースされた、SACRED REICHの5thアルバム。

90年代後半に一度解散し、2006年からライブを中心に活動再開させたSACRED REICHにとって、本作は再結成後初のオリジナルアルバムにして、解散前最後のアルバム『HEAL』(1996年)から実に23年ぶりの新作。時空が歪むとはまさにこのことですね(笑)。

参加メンバーはフィル・リンド(Vo, B)、ワイリー・アーネット(G)のオリジナルメンバー2人に、1995年にSACRED REICHを脱退後にMACHINE HEADに加入、昨年SACRED REICHに再加入したデイヴ・マクレイン(Dr)に、今年加入した弱冠22歳のジョーイ・ラジヴィル(G)の4人。ジョーイに関しては、SACRED REICHがオリジナルアルバムを出していた時期にはまだ生まれていないという事実に衝撃を受けます。

90年代に発表された2作(1993年の『INDEPENDENT』と、1996年の『HEAL』)は“PANTERA以降”のヘヴィサウンドからの影響をにじませた作風で、初期からのファンには不評でしたが、今作では80年代の彼ら……つまり1stアルバム『IGNORANCE』(1987年)や2ndアルバム『THE AMERICAN WAY』(1990年)や、その2作の間に発表されたEP『SURF NICARAGUA』(1988年)の時代を彷彿とさせるスラッシュメタル路線へと回帰しています。

ただ、フィルのボーカルは『INDEPENDENT』以降のスタイルで、多少がなってはいるもののしっかり歌を“歌って”いる。しかも、その表現力や破壊力は解散前とは比にならないほどの説得力があり、再結成後のライブ活動で培ったものがしっかり形として残されているのかなと。

また、楽曲自体はテクニカル・スラッシュという形容詞がぴったりな、複雑な展開を随所に絡めたアレンジが特徴的なオールドスクールなメタルサウンドなのですが、デイヴという凄腕ドラマーと若さはちきれんばかりにギターを弾きまくるジョーイの加入が功を奏し、単にオールドスクールの一言では片付けられないフレッシュさも散りばめられています。

そして、歌詞の面においてもこのバンドらしさが際立っており、“覚醒=Awakening”と題された作品にふさわしく、現代社会の問題点がさまざまな側面から切り取られています。

全8曲で31分半というトータルランニングはCD主流となった90年代以降の作品としては非常に短く、捉え方によっては「ミニアルバム?」と解釈することもできるでしょう。しかし、配信主流となった今ではこれくらいのボリュームでちょうどいいような気もします。そもそも、彼らの1stアルバムも全9曲でこれくらいの長さでしたしね。

せっかく最高の1枚とともに完全復活を宣言してくれたのですから、来春に控えた2つのメタルフェスでの来日にも期待したいところです。

 


▼SACRED REICH『AWAKENING』
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2019年10月19日 (土)

ANTHRAX『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』(1998)

1998年7月に発表された、ANTHRAX通算8作目のオリジナルアルバム。日本盤は海外よりも1ヶ月早い、同年6月初旬にリリースされています。

ジョン・ブッシュ(Vo/当時ex. ARMORED SAINT)加入後3作目となりますが、前作『STOMP 442』(1995年)まで所属していたElektra Recordsとの契約は2作で終了。今作はインディーズレーベルのIgnition Recordsから発表されました(日本盤はビクターからの初リリース作品)。

プロデュースを手がけたのは、前作でゲストプレイヤーとして参加したポール・クルック(G)とバンド自身。ポールは本作でも「Killing Box」など4曲でソロを披露しています。また、前作にも参加したPANTERAのダイムバッグ・ダレル(G)が「Inside Out」「Born Again Idiot」の2曲でソロを弾いたほか、同じくPANTERAのフィル・アンセルモ(Vo)も「Killing Box」でバッキング・ボーカルとしてゲスト参加しています。

作風としては、前作『STOMP 442』の延長線上にあるモダンヘヴィネス路線+ストレートなスラッシュ路線を推し進めたもの。ただ、前作にあった地味な印象が若干払拭されており、オープニングの「Crush」から派手さが目立つプレイを聴かせてくれます。

とにかく「Crush」のトライバルなリズムがカッコいいったらありゃしない。これ1曲でKOされたというリスナー、当時も少なくなかったはずです。かと思えば、いかにもANTHRAXなド直球疾走チューン「Catharsis」や、モダンヘヴィネスに特化した「Inside Out」とバラエティに富んだ3曲が冒頭を飾るわけですから、そりゃあ派手ですわな。

そこからロックンロール調の「P & V」や30秒程度のハードコア・ショートチューン「604」、カントリー風の朗らかさが際立つ異色作「Toast To The Extras」、軽快なスラッシュチューン「Born Against Idiot」、トライバルなリズムとモダンなアレンジが新鮮な「Killing Box」、枯れたアメリカンロック風な序盤からダイナミックなアレンジへと変化する「Harms Way」、グルーヴィーな「Big Fat」、グラインドコアと呼ぶにふさわしい「Cupajoe」などなど……良くも悪くもANTHRAXらしい無秩序さが際立つ内容なのです。そりゃ派手になりますわ。

統一感という点においては、オリジナルアルバムの中では一番薄いですし、ちょっと企画盤っぽくも思えてしまうくらい“非メタル”な楽曲も含まれています。が、この悪ノリ感もANTHRAXなわけでして。全14曲(ベースのフランク・ベロが歌うシークレットトラック「Pieces」を含めると15曲)で60分を超える内容は散漫とも受け取れますが、ここまでいろいろやれたのもジョン・ブッシュというシンガーありきな気も。賛否分かれるところかと思いますが、印象が薄いよりはマシなんじゃないかな。諸手を挙げて絶賛する気にはなれないけど、そこまで嫌いになれない1枚でもあります。

 


▼ANTHRAX『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』
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2019年10月18日 (金)

KORN『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005)

KORNが2005年12月に発表した、通算7作目のスタジオアルバム。

前作『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003年)では、新曲音源がリリース前にネット上にリークされてしまったことで、急遽当初の発売日から前倒しで発表。そういった事情も災いしてか、チャート的には2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)以降でもっとも低い全米9位(100万枚)という数字で落ち着いてしまいました。

また、同作を携えたツアーを終えた2005年にメンバーのヘッド(G)がバンドを脱退。さらに、デビュー以来10年近くにわたり在籍してきたレーベルEpic Recordsを離脱と、この時期はネガティブな要素が相次いて起こり、バンドにとって危機的状況だったのではないでしょうか。

そんな中、KORNは新たにEMI / Virgin Recordsと契約。新ギタリストを補充することなく、ニューアルバム制作に突入します。プロデューサーにはジョナサン・デイヴィス(Vo)とアッティカ・ロス(『WITH TEETH』以降のNINE INCH NAILSおよびトレント・レズナーの相方的存在)、そしてアヴリル・ラヴィーンやブリトニー・スピアーズ、クリスティーナ・アギレラなどを手がけてきたTHE MATRIXという異色のプロデュース・チームを迎え、KORN史上もっともバラエティに富んだ1枚が完成します。

初期のゴリゴリしたヘヴィ路線へと回帰した前作でしたが、今作では全前作『UNTOUCHABLES』(2002年)で実践した実験の延長線上にあり、さらにモダンなテクノロジーを駆使したエレクトロ/インダストリアル要素を導入することにより(このへんはアッティカの仕事かな)、ヘヴィロックやメタルの枠では収まりきらない自由度の高い楽曲が揃いました。

オープニングを飾る「Twisted Transistor」のポップさ含め、このアルバムには良くも悪くも「わかりやすい」楽曲が並んでいるような印象を受けます。いや、サウンド的にはかなり遊んでいますし、ところどころでゴリっとした音像やジョナサンのグロウルやスクリームもフィーチャーされています。が、整理されたサウンドのせいもあって、非常に聴きやすいのです。そこが『UNTOUCHABLES』との大きな違いかな(まあ、あのアルバムも今となっては非常に聴きやすいですが)。

5、6分ある楽曲も複数含まれているものの、全体的には3分適度のコンパクトな楽曲が多いのも印象的。このへんもTHE MATRIXというヒットメイカーの手腕によるものなんでしょうか。初期の“跳ねた”リズムとヘヴィさが好きだったというリスナーには受け付けられない路線かもしれませんが、本作を起点に現在まで続いているスタイルもあるわけで、そういった意味では初期メンバーをひとり欠いた彼らが新たな戦いに挑んだ“KORN第二章”の幕開けにふさわしい力作だと思います。個人的にもお気に入りの1枚です。

ただ、本作は内容以上の大きな問題をはらんでいます。そう、悪しきCCCDの存在です。最初に触れたネット上への音源リークやファイル交換ソフトなどの影響(と言われていますが)から、国内外のレコード会社の多くが「コピーコントロールCD(=CCCD)」と呼ばれる“パソコンでリッピングできなCD”が市場に出回ることになります。特に大手レコード会社のEMIは海外のみならず日本でもこのシステムを導入し、本作は初出時CCCDでのリリースでした。

しかし、このCCCDというのもかなり脆い存在でして、Windows PCではNGでもMacではコピーできてしまう、同じ作品でも国によって通常のCD(CD-DA)が出回るなど抜け道がいくつもあったのです。本作も日本盤やはCCCD仕様でしたが、確か一部の海外盤はCD-DA仕様。なので、僕自身はAmazonを通じて輸入盤を購入して本作を楽しみました。その後、CCCD自体が撤廃されたことで、海外盤の新品でCCCD仕様にかち合うことはほぼなくなりましたが、本作の日本盤はCD-DA仕様での再発は過去に一度のみ。しかも、現在は廃盤状態なので、ぜひとも来年の来日に合わせて過去作の廉価版再発に踏み切ってもらいたいところです。

最後に。本作は全米3位(100万枚)と数字的には前作以上の成功を収め、「Twisted Transistor」(全米64位)、「Coming Undone」(同79位)と珍しくシングルヒットも連発しています。

 


▼KORN『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』
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2019年10月17日 (木)

ANGEL WITCH『AS ABOVE, SO BELOW』(2012)

ANGEL WITCHが2012年3月に発表した通算4作目のオリジナルアルバム。

ANGEL WITCHは70年代末にケヴィン・ヘイボーン(Vo, G)を中心に結成された、NWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)シーンにおける代表的存在のひとつ。1980年にアルバム『ANGEL WITCH』をリリース後、80年代半ばまでに計3枚のオリジナルアルバムを発表しています。が、その後は活動が停滞。デモ音源を含むコンピ盤やライブアルバムのリリースこそあったものの、オリジナル作品の発表は20年以上途絶えていました。

今回紹介する『AS ABOVE, SO BELOW』はオリジナルアルバムとしては、1986年の『FRONTAL ASSAULT』以来26年ぶりの新作。一部メディアでは『RESURRECTION』(2000年)以来12年ぶりと報じられていましたが、同作は未発表のデモ音源を寄せ集めたものなので、純粋な新作としては26年ぶりが正しいのでしょう。

本作リリース時のメンバーはケヴィン、ウィル・パーマー(B)、アンディ・プレスティッジ(Dr)にビル・スティアー(G)という4人。ビルはご存知、CARCASSやFIREBIRD、GENTLEMANS PISTOLSでおなじみの方。ただ、のちの明らかになるのですが、ビルはレコーディングには不参加でライブのみの参加だということです(ただ、明らかにビルらしいギターフレーズも確認できるそうなので、実際のところどこまでが本当かは不明)。

楽曲そのものは、これぞANGEL WITCH!と言えるダークなHR/HMが中心で、オープニングの「Dead Sea Scrolls」こそ“枯れた”ハードロックで若干の不安を覚えますが、2曲目「Into The Dark」以降のアップダウンを繰り返す展開にホッと胸をなでおろすオールドファンは少なくないはず。とにかく「あのANGEL WITCH」そのものですよ、これは。

現代的なプロダクションで制作されたことで、デビューアルバム『ANGEL WITCH』にあったチープさが払拭され、間違いなく2000年代の音/バンドとしてここに存在する。僕自身、2作目も3作目も聴いておらず、完全に『ANGEL WITCH』との比較になってしまうのですが、そこから32年という長い時間を一気に飛び越してここに存在するこの音、間違いなく『ANGEL WITCH』からの“続き”なんですよ。そう確信できるほど、王道中の王道。もはや職人技と言いたくなるくらいの変わらなさと(制作面での技術的)進化を楽しめる1枚。聴かない理由はありません。

ちょうど同作を携え行われた来日公演(2012年6月)にも足を運び、さらにはANGEL WITCHの一員として来日したビル・スティアーへのインタビューまで実現してしまった(掟ポルシェさんがインタビュアーを務め、僕が原稿をまとめるという形で)。このアルバムを聴くと、7年前のあの頃のことを鮮明に思い出すことができる……そんな個人的な思い出が詰まった1枚です。

 


▼ANGEL WITCH『AS ABOVE, SO BELOW』
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2019年10月16日 (水)

CHELSEA WOLFE『BIRTH OF VIOLENCE』(2019)

2019年9月中旬に発表された女性シンガーソングライター、チェルシー・ウルフの6thアルバム。

『HISS SPUN』(2017年)から2年ぶりの新作となる今作は、ダークでノイジーかつスラッジ的要素の強かった前作から一転、彼女の歌とアコースティックギターを軸にしたフォーキーな作風。ただ、単なる「フォークギターによる弾き語り」とは異なり、そこにエレクトロ的な味付けが施されたり歪んだミキシングによるバンド演奏が加わることで、浮遊感の強い独特な世界観が展開されています。

全体的にかなりどんよりとしていて、言ってしまえばゴッシック要素の強いダークさが目立つ作風なんですが、そこにはよくある“情念的なアレ”は一切感じられない。むしろ淡々と歌うことで、静をベースにしたサウンドスケープ上に現れては消える蜃気楼のような存在感を放っている。そんな不思議な音世界が楽しめる1枚となっています。

いわゆるダーク/エクストリームサイドの人間が急にフォーキーなサウンドに目覚めるケースは多々ありますが、彼女の場合はもともとこのスタイルが軸にあったわけで、ドゥーミーな前作の次にこんなにも内省的で“閉じた”アルバムが届けられたとしても実はそこまで驚かないわけでして。

とはいえ、過去には『UNKNOWN ROOMS: A COLLECTION OF ACOUSTIC SONGS』(2012年)というコンピ盤も発表しているものの、ここまで本格的にフォーキーさを主軸に置いたオリジナル作品は初めてだったので、逆に「おお、このタイミングで!」と驚きを通り越して喜んだりしたものです。

穏やかな歌声で紡がれる歌詞は叙情的とは相反する、物事をどこか俯瞰で見ているかのような詩的なものばかり。古き良き時代のブルースやフォークにも通ずる物語性があって、そういった楽曲をこの淡々とした歌唱スタイルと少ない音数で表現するからこそ、他人事のようにも聞こえるのに、気づけばど真ん中に響いている。そんな作品集に『BIRTH OF VIOLENCE』というタイトルを付けるあたりにも、この人らしいセンスが感じられます。

そういう不思議な魅力を放つ、クセになる1枚。異色作ではあるものの、個人的には年間ベスト候補に入れたい良作でもあるわけでして。プレスリリースには比較対象としてPJハーヴェイの名前が挙げられていましたが、そのへんが好きな人はもちろん、昨今のオルタナ系女性アーティスト、そしてMYRKURあたりのラウド&ダーク寄り女性アーティストのリスナーにも響いてほしい1枚です。

 


▼CHELSEA WOLFE『BIRTH OF VIOLENCE』
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2019年10月15日 (火)

MYRKUR『MARERIDT』(2017)

MYRKURが2017年9月にリリースした2ndアルバム。

MYRKURとはデンマーク出身で現在ニューヨークを拠点に音楽活動を続ける女性アーティスト、アマリエ・ブルーンによるブラックメタル/ダークフォーク・プロジェクト。浮遊感のあるヨーロッパ民謡の要素とギターのトレモロリフが印象的なブラックメタルの要素を掛け合わせた独創的なサウンドの上に、透明感の強いソプラノボイスが乗るというスタイルで、そこにときどき絶叫も飛び込んでくるという……まあとにかく、ダークでゴシックでフォーキーで、それでいてブラックメタルという「好きな人にはたまらない」世界が展開されているわけです。ここ日本でも、この『MARERIDT』がリリースされた頃に一部で話題になりましたよね。

本作のプロデュースを担当したのは、MASTER MUSICIANS OF BUKKAKEのメンバーでSUNN O)))やEARTH、WOLVES IN THE THRONE ROOMなどを手がけてきたランダル・ダン。アマリエはボーカルのほかピアノ、ギター、バイオリンなどに加えスウェーデンの民族楽器ニッケルハルパ(フィドルやハーディガーディに似た擦弦楽器)をプレイしており、ドラムにはプロデューサーつながりなのか、WOLVES IN THE THRONE ROOMのアーロン・ウェーバーが参加しています。また、ゲストアーティストとしてチェルシー・ウルフが「Funeral」と「Kvindelil」(こちらはデラックス盤のみ収録)の2曲でボーカリストとしてフィーチャーされております。

ブラックメタルというよりも、ブラックゲイズやダークサイドなドリームポップにケルト民謡などの要素をミックスするとこうなる……と表現したほうがわかりやすいかな(そもそもアンチクライスト的な退廃感ゼロですし)。とにかくダークはダークだけど想像以上にメロディアスで、なおかつ民族音楽や宗教音楽のような幻想的、耽美な世界観が展開される楽曲の数々は、かろうじてメタルの範疇に入るものの、視点を変えたらケイト・ブッシュをダークでラウドなサウンドスケープで表現したらここまでたどり着くんじゃないか?なんていう地平線も見えてきそうな。いや、ちょっと違うかな。

何にせよ、ありそうでなかったジャンルだなと思いました。けど、まったく新しいとは思わない。なんとなく聴いたことがある気がするけど、実は初めて耳にするくらい。でも、そこがいいんでしょうね。この、若干既視感がある空気感が。なので、僕自身はスッと入っていけました。

……って、急に思い出した。あれだ、80年代のゴス(ポジパン寄り)だ。あの感覚に近いんだ。そこに北欧ブラックメタル的なひんやりした熱(反語)とヒーリングミュージックという水と油がものすごい回転数でミキサーにかけられたような。だから80年代に青春時代を過ごし、V系を通過したメタラーには当たり前のように受け入れられるんだね。納得です。

ちょっと心がささくれ立っていて、癒しよりも混沌が欲しいとき、僕はこのアルバムをよく聴いています。むしろ、そのほうが本当の意味での平穏が感じられるから。間違ってないですよね?

 


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2019年10月14日 (月)

HELLYEAH『WELCOME HOME』(2019)

HELLYEAHが2019年9月末に発表した、通算6作目のスタジオアルバム。

前作『UNDEN!ABLE』(2016年)から約3年4ヶ月ぶりの新作となりますが、その間にバンドの今後を左右する大きな出来事が起こりました。2018年6月22日、バンド創設者であるヴィニー・ポール(Dr/ex. PANTERA、ex. DAMAGEPLAN)が54歳という若さで急逝。バンドは前年秋から新作の準備に突入しており、突然の出来事にショックを隠せなかった様子でした。しかし、HELLYEAHは活動を止めることなく、ヴィニーの残したドラムトラックをもとにレコーディングを続行。過去2作から引き続きケヴィン・チャーコ(オジー・オズボーンDISTURBEDFIVE FINGER DEATH PUNCHなど)をプロデューサーに迎え、本作を完成させています。

オープニングを飾る「333」のパンチの効いたサウンドに「おおっ!」と唸らせられるものの、全体的にダークさが漂っており、なんとなく薄っすらと霧に包まれた雰囲気が伝わってきます。それがヴィニーの死を引きずってのものなのか、それともバンドとしての停滞感がそのまま表れてしまったのか、理由は定かではありませんが。

決して悪いアルバムではないと思います。ですが……ストリングスを導入したヘヴィかつスローな1曲「Welcome Home」はかなり上出来だと思いますが、アルバム3曲目に持ってくるにはちょっと早いのでは?とも感じます。この曲が序盤に設置されることで、全体のダークさ、どんより感を強調してしまっているのではないでしょうか。そこから同系統の「I'm The One」や「Black Flag Army」へと続ける構成も、悪くはないんだけど、必要以上に“負の要素”を引きずり出されてしまうというか……。「Skyy And Water」のような穏やかな楽曲で締めくくる構成も、いかにもですし。

そのほかの楽曲に関しても、良くも悪くも「ニューメタル、モダンヘヴィネス止まり」という印象が。10年前にこれをやっていたら「新しい!」と喜んでいたんでしょうけど、う〜ん。

とはいえ、チャド・グレイ(Vo)のメロウな要素が効果的に用いられており、ボーカルに関して言えば過去イチのような印象も受けます。ギタリスト2人の仕事ぶりもまずまずだと思いますし。となると、やっぱり楽曲の詰め方がもう一歩だったのかな。やはり、重要なブレインを失った代償は大きかったのでしょう……。

そういったことも反映されてか、本作は全米57位と過去5作と比べて非常に低調な数字(過去5作はすべてTOP20入り)。ヴィニー亡き後の1枚なだけに、もうちょっといい数字を残してもいいはずなのに。

なお、バンドは本作リリース前に新たなドラマーとしてSTONE SOURのロイ・マイヨルガがツアーに参加することを発表しています。今のところツアーのみのようですが、今後パーマネントメンバーとなるのか気になるところです。

 


▼HELLYEAH『WELCOME HOME』
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2019年10月13日 (日)

STEEL PANTEHR『HEAVY METAL RULES』(2019)

2019年9月下旬発売の、STEEL PANTHER通算5作目のスタジオアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年10月下旬にリリース予定です。

前作『LOWER THE BAR』(2017年)から2年半ぶりの新作に当たりますが、本作から自主レーベルのSteel Pantehr Inc.からのリリース。視点を変えれば、デビューアルバム『FEEL THE STEEL』(2009年)から前作までの4枚をメジャーのUniversalから発表できていた事実に驚くわけです。こんな下品な(略

残念ながら初めてBillboard 200のトップ100入りを逃してしまいましたが(最高131位)、楽曲とサウンド自体はこれまでと変わらずカッコいいものばかり。そう、「楽曲とサウンド」はね。80年代のヘアメタルを地でいくスタイルはデビュー以来一貫しており、あの時代の“あの”サウンドが好きなリスナーにはたまらないものがあるはずです。だって、グランジの「グ」の字すら感じさせない、潔い軽やかさ&ヘヴィさが堪能できるのですから。

ですが、先にも書いたように最高なのは「楽曲とサウンド」のみ。曲名や歌詞は真逆の最低一直線なのですから(苦笑)。だって、オープニングトラック(SEの「Zebraman」を除く)のタイトルが「All I Wanna Do Is Fuck (Myself Tonight)」ですから……。

そのほかにも「I'm Not Your Bitch」やら「Fuck Everybody」やら「Sneaky Little Bitch」やら「Gods Of Pussy」やら……って自分でタイプしていて苦笑いしてきましたよ(笑)。

曲自体はめっちゃカッコいいのに、サビで歌われるタイトルが「I'm Not Your Bitch」ですし、「Fuck Everybody」なんて聴き取れる限りの歌詞がもう最低でしかない(笑)。〈Fuck〉を連呼するだけでなく、サビの歌詞が〈Fuck everybody! Everybody can suck my motherfuckin' dick!〉ですからね。閉口するってこういうことを言うんですね。

タイトルトラックの「Heavy Metal Rules」もシリアスな曲調で〈Gene Simmons said it, Rock and roll is dead〉と歌うものの、最終的には〈Heay metal rules, And everybody else can suck my dick〉ですから(苦笑)。ここまでくると、もう泣けてきますね……。

チャートがすべてではないものの、海外では評価もかなり低いという話が伝わってくる本作。何度も言いますが、曲と音“だけ”は最高なので、歌詞を無視しつつ死んだ目で(笑)楽しんでもらいたい1枚です。意外とパーティでうっすら流すのもアリかもね。その際には、周りに英語圏のお友達がいないことを確認してくことをお忘れなく(笑)。

 


▼STEEL PANTEHR『HEAVY METAL RULES』
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2019年10月12日 (土)

THE DARKNESS『EASTER IS CANCELLED』(2019)

2019年10月初頭にリリースされた、THE DARKNESS通算6作目のスタジオアルバム。再結成して早くも4作目のスタジオ盤となります。

4thアルバム『LAST OF OUR KIND』(2015年)以降の彼らは非常に精力的にリリースを続けています。5thアルバム『PINEWOOD SMILE』(2017年)までの間隔は2年4ヶ月、前作から今作の間隔はまる2年ですが、その間には初のライブアルバム『LIVE AT HAMMERSMITH』(2018年)も発表されていますし。思えば『LAST OF OUR KIND』の制作中に現メンバーのルーファス・テイラー(Dr/QUEENのロジャー・テイラーの実子)が正式加入してからなんですよね、このペースって。それだけ現編成での活動が充実しているってことなんでしょうか。

さて、早くも届けられた今作は、バンド史上初となるコンセプトアルバム。オープニングを飾るリードシングル「Rock And Roll Deserves To Die」からして仰々しさ満載で、いかにも彼ららしい“QUEEN風コーラス”も健在。1曲の中に数曲分のアイデアが含まれているあたりもQUEEN的ですが、その後に続く数々の楽曲群がとにかくてんでバラバラなタイプばかり。悪く言えば散漫な内容かもしれませんが、いえいえ、意外とスルスル聴き進められてしまうんですよ、これが。

スケール感の大きなリズムによる「Heart Explodes」やムーディーなスローナンバー「Deck Chair」、アルバムを象徴する豪快なロックンロール「Easter Is Cancelled」、そのタイトルからは想像できないオープニングにギョッとする(笑)「Heavy Metal Lover」(中盤からのアレンジ、最高すぎ!)、枯れ具合が心地よいミディアムバラード「In Another Life」など、とにかく1曲1曲のクセが強いったらありゃしない。これだけバラエティに飛んだ楽曲が並んでいるのに、実は統一感が強い。それってつまり、THE DARKNESSというバンドの個性の強さやジャスティン・ホーキンス(Vo, G)が歌えばすべてTHE DARKNESSの楽曲になってしまうという強みの表れなんじゃないでしょうか。

オープニングこそ5分半と長尺気味ですが、以降は3〜4分台とコンパクトな楽曲が並ぶあたりも聴きやすさにつながっているのかな。全10曲で40分欠けるトータルランニングも程よいしね。

ただ、本作は海外デラックス盤と日本盤のみ5曲のボーナストラックが追加されたバージョンで流通。デジタル版もこちらの長尺版なので、通常の10曲と15曲バージョンとでは印象がガラッと変わるはず。正直、僕はM-10「We Are The Guitar Men」で潔く終わる構成がお気に入りです。曲が増えると、そのぶんアルバムの印象がボヤけてきますし。

かといって、ボートラ5曲の出来も決して悪いものではないので、まあこっちは余裕があるときにあわせて聴くといいよ、くらいの感覚で。もし点数をつけるとしたら、ボートラなしバージョンが90点、ボートラ追加バージョンで80点かな。この10点の差、大きいと思います。

 


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2019年10月11日 (金)

W.A.S.P.『THE HEADLESS CHILDREN』(1989)

1989年4月中旬にリリースされた、W.A.S.P.の4thアルバム。日本では半月遅れの同年5月上旬に発売されました。

デビュー時のインパクトのせいもあって、楽曲よりもそのショッキングなヴィジュアルにばかり目が行きがちだったW.A.S.P.。本作はのちにブラッキ・ローレンス(Vo, G)のソロ作品としてスタートした『THE CRIMSON IDOL』(1992年)の片鱗が見え隠れする、非常に音楽性の高い1枚に仕上がっています。

本作制作時のメンバーはブラッキー、クリス・ホルムス(G)、ジョニー・ロッド(B)の3人。脱退後にL.A. GUNSへ加入したスティーヴ・ライリー(Dr)に代わり、本作ではゲストプレイヤーとしてフランキー・バネリー(QUIET RIOT)が参加しています。また、ケン・ヘンズレー(元URIAH HEEP)がキーボードプレイヤーとして、リタ・フォードなど多数の仲間が「Thunderhead」のコーラスのレコーディングに加わりました。

L.A.メタル(ヘアメタル)の延長線上にある“セックス、ドラッグ&ロックンロール”的な世界観から離れ、よりリリカルで深みのある歌詞と、HR/HMバンドとしての起承転結が色濃く表れたサウンド/アレンジを本格的に導入することで、前作までに混在したパーティ路線が完全に払拭。7分を超えるエピカルな「The Heretic (The Lost Child)」でオープニングを飾ると、THE WHOのカバー「The Real Me」を挟みつつ「The Headless Children」「Thunderhead」という5〜6分台の壮大なメタルナンバーが続きます。ここまでの流れ、本当にシリアスでメタリック。歌詞に関しては「Animal (Fuck Like A Beast)」「I Wanna Be Somebody」「Blind In Texas」なんて歌っていたバンドと同じバンドとは思えないほどです。

もちろん「Mean Man」や「Rebel In The F.D.G.」のようなストレートなハードロックもあるのですが、メロディアスなバラード「Forever Free」や疾走メタル「Maneater」、ツーバス連打のメタルシャッフル「The Neutron Bomber」などを聴いてしまうと、かつてのいかがわしさはどこへやら……ただただカッコいいHR/HMバンドの姿がイメージできてしまうのですから不思議なものです。

初期3作のスタイルももちろん素晴らしいのですが、非常に完成度の高い『THE CRIMSON IDOL』を愛してやまないというリスナーにはぜひ続けて今作も聴いていただきたいものです。初期3作と『THE CRIMSON IDOL』以降をつなぐ、非常に重要な1枚ですから。

なお、現在流通している盤(配信バージョン含む)はボートラを多数含む仕様となっており、JETHRO TULLのカバー「Locomotive Breath」やアルバム未収録曲、「L.O.V.E. Machine」や「Blind In Texas」のライブテイクが追加されています。こちらの6曲はアルバム本編の流れとは若干毛色が異なりますし、むしろ本編10曲の完成度が異常に高いのでオマケ程度の気持ちで接してもらえると。

 


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2019年10月10日 (木)

VANDENBERG『VANDENBERG』(1982)

オランダのハードロックバンド、VANDENBERGが1982年9月に発表した1stアルバム。

エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)を中心に結成された4人組バンドで、メンバーはエイドリアンのほかバート・ヒーリンク(Vo)、ディック・ケンパー(B)、ジョス・ズーマー(Dr)という編成。結成から程なくしてAtlantic Recordsと契約し、このアルバムを発表しています。

ちなみにエイドリアンはVANDENBERG結成前にTHIN LIZZYWHITESNAKEのギタリスト・オーディションを受けて、ともに落選したとのこと。この時点ですでにオランダから外に出ていきたいという思いが強かったのでしょうね。本作はアメリカでも最高65位という好成績を残しており、さらに本作からシングルカットされた「Burning Heart」も全米39位のスマッシュヒットを記録。異国からの新人がデビューでここまでの成績を残すのは異例のことですし、そもそも1982年というとLAメタル勢を中心とするHR/HMブーム前夜。アメリカ国内ではVAN HALENがヒットを飛ばし続ける中、NIGHT RANGERといった気鋭の新人が登場し、オジー・オズボーンと活動を共にしたランディ・ローズ(G)が飛行機事故で亡くなったタイミング。ブーム前夜ではあるものの、新たなヒーローが求められていた時期であったことは間違いありません(日本のLOUDNESSが海外でウケ始めたのも、そういった理由からでしょうし)。

そんな中登場したVANDENBERG。北欧のバンドらしい湿り気の強いメロディを持つ楽曲のみならず、VAN HALENにも通ずるカラッとしたハードロックナンバーも含まれており、そのへんのバランス感が新しさとして受け入れられたのかもしれません。思えばこの頃ってSCORPIONSくらいでしたものね、イギリス以外のヨーロッパのHR/HMバンドがアメリカで成功していたのって。

オープニングの「Your Love Is In Vain」の軽快さって、今聴くとちょっとVAN HALENっぽくもあれば、オジーっぽくもあるのかなと。そこに流麗なアコギソロを冒頭に用意した「Wait」のような楽曲や、泣きのバラード「Burning Heart」、豪快なギターリフ&ソロを含む疾走感の強いファストチューン「Ready For You」、ブギーのリズムなのに不思議とヨーロッパのバンドらしい勇ましさと繊細さが混在した「Too Late」など個性的な楽曲が複数含まれている。正統派マイナーハードロック「Nothing To Lose」も、勢いのみで突進する「Out In The Streets」も文句なしのカッコよさを放っている。そりゃ売れるしウケるわけだ。

そして、この感覚ってのちのDOKKENにもつながっていくのかな、と改めて思いました。DOKKENの1st〜2ndあたりの雰囲気と本作の空気感って、非常に近いものがありますよね?

あと、こういった豪快さと繊細さを併せ持つスタイルって、意外と日本人が好きなんじゃないかな。派手になりすぎず、ちゃんと侘び寂びを感じさせる要素が含まれている。そりゃ日本でもウケるわけですね。納得です。

僕自身はリアルタイムだと3rdアルバムにしてラスト作となった『ALIBI』(1985年)からの後追い組ですが、完成度的には次作『HEADING FOR A STORM』(1983年)と『ALIBI』のほうが上かもしれないけど、未完成ならではのデビュー作らしい勢いは本作が圧倒的。なんだかんだで一番聴くのもこの1stアルバムかもしれません。

 


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2019年10月 9日 (水)

WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)

WHITESNAKEの問題作『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)が今年でリリース30周年。Geffen時代の音源権利がRhino Recordsに移ったこともあり、『WHITESNAKE』(1987年)『SLIDE IT IN』(1984年)に続いて最新リマスタリング&未発表音源をたっぷり追加したアニバーサリーエディションが2019年10月4日に発売されました(日本盤は少々遅れて、10月23日発売とのこと)。

『SLIP OF THE TONGUE』というアルバム自体に関しては、過去にこちらで執筆済み。そちらでは2009年に海外で発表された20周年エディションについても触れていますが、その際にはオリジナル盤からの改悪(曲順の変更)が加えられていましたが、今回の30周年盤も『WHITESNAKE』『SLIDE IT IN』同様にオリジナルとも20周年盤とも異なる新たな改悪(笑)が加えられており、さすがに頭を抱えております。

基本的にはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とその側近によるアイデアなんでしょうけど……うん、アメリカかぶれしたイギリス人の考えることはわからない!とちゃぶ台をひっくり返したい気持ちです。

さてさて、30周年バージョンについてここからたっぷり書いていきますよ。本作はCD1枚モノの通常盤、CD2枚組のデラックスエディション、CD6枚+DVDからなるボックスセット(スーパーデラックスエディション)の3仕様が用意されていますが、今回ここで触れるのは未発表音源が豊富なボックスセット関して。それぞれのディスクの中身について触れていきたいと思います。

 

まずはDISC 1。こちらは最新リマスタリングを施した『SLIP OF THE TONGUE』本編に当時のシングルのみに収録された別テイクなどを追加したもの。全17曲入りで、こちらが基本となるのでしょうか。収録曲は下記のとおり。

<2019年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Kittens Got Claws
03. Cheap An' Nasty
04. Now You're Gone
05. The Deepr The Love
06. Judgment Day
07. Sailing Ships
08. Wings Of The Storm
09. Slow Pork Music
10. Fool For Your Loving 1989
11. Sweet Lady Luck (Single B-Side)
12. Now You're Gone (Chris Lord-Alge Single Remix)
13. Fool For Your Loving 1989 (Vai Voltage Mix)
14. Slip Of The Tongue (Alternate Intro & Breakdown)
15. Cheap An' Nasty (Alternate Solo & End)
16. Judgment Day (Alternate & Extended Solos)
17. Fool For Your Loving 1989 (Alternate AOR Mix With CHR Intro)

アルバム本編がM-1〜10なのですが、なんですかこの味わい深さもへったくれもない流れは……頭3曲の流れはまだいいとしても、M6「Judgment Day」〜M7「Sailing Ships」の構成は疑問しか残らない。長尺の大作を2曲並べたかったんだろうけど、アルバムの締め用に作られた壮大なアレンジの「Sailing Ships」のあとにまだ3曲も残っていて、「Sailing Ships」の余韻をぶち壊すかのように「Wings Of The Storm」が始まる。さらにエンディングが「Fool For Your Loving」て……正気ですか?

ちなみにこちら、リマスタリングといいながらも「Kittens Got Claws」がオリジナルからいじられていたりします。スティーヴ・ヴァイ(G)によるオープニングの“猫ギター”がカットされたのは明らかな変化ですが、ほかにもイントロのリフの裏で鳴っていたヴァイのソロが若干前に押し出されているような。あと、オリジナル盤では軽く感じられたドラムの音も2009年リマスター盤よりもさらに硬質にミキシングされている印象も受けました。これはこれで悪くないね(曲順を除けば)。

M-11〜13は2009年バージョンにも収録されていたもの。M-12「Now You're Gone (Chris Lord-Alge Single Remix)」は「U.S. Single Mix」として親しまれてきたものですね。さらに今回は初出の別バージョンを追加収録。M-14「Slip Of The Tongue (Alternate Intro & Breakdown)」はいきなりブラスシンセから始まるイントロ縮小&ギターソロ後のブレイクパートに変なソロ(笑)が追加されたバージョンです。いや、あの緊張感のあるブレイクにそれ入れちゃう?っていうヴァイのセンスよ……。M-15&16は文字どおり、ギターソロを差し替えたもので、M-17はM-10のミックス違い。M-14〜16に関してはオリジナルバージョンに30年慣れ親しんだこともあり、ちょっと違和感があるかな。

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2019年10月 8日 (火)

THE WiLDHEARTS『DIAGNOSIS』(2019)

2019年10月初頭にリリースされた、THE WiLDHEARTSの最新ミニアルバム。

今年5月に前作『¡CHUTZPAH!』(2009年)から10年ぶりの新作にあたる『RENAISSANCE MEN』(2019年)を発表したばかりの彼ら。そこから5ヶ月ぶりに届けられた新作は、その『RENAISSANCE MEN』収録曲の「Diagnosis」をタイトルトラックに、未発表の新曲5曲を加えた計6曲入りミニアルバム(EP)となります。

思えば前作『¡CHUTZPAH!』のときもライブ会場限定作品として、のちにEP『¡CHUTZPAH! JNR.』(2009年)がリリースされましたが、今回も感覚的には近いものがあるのでしょうか。そういえばこれらの新曲、新たに録り下ろしたものなのか、はたまた『RENAISSANCE MEN』制作時に残しておいたものなのかも今のところ不明ですし。

特に今作は日本盤リリースの予定もなさそうで(今年7月の来日時に、国内レーベルとあれこれモメましたしね。まああれはジンジャーが悪い気がしますが……)、そういった前情報が少ない中与えられた音源のみを聴いてあれこれ判断しますと……うん、傑作『RENAISSANCE MEN』の延長線上にあるエネルギッシュな“THE WiLDHEARTSらしい”楽曲が揃っていると思います。

「Diagnosis」については言うまでもなく、初期の良さを兼ね備えた良曲ですし、新曲「God Damn」はジンジャー以外のメンバー(おそらく主にCJ)がメインで歌っている“いかにも”な1曲。2分少々の「A Song About Drinking」はそのタイトルからも想像できるように、酩酊状態を表現したかのようなファストナンバーで、「The First Time」と「That's My Girlはキャッチーなメロディが備わった疾走チューン」。どれも聴けば「これぞTHE WiLDHEARTS!」と言いたくなるような仕上がりで、『RENAISSANCE MEN』に収録されていてもおかしくないものばかりです。きっと新作や初期の彼らがお気に入りというリスナーには問題なく受け入れられるはずです。

しかし、ラストナンバー「LOCAC」のみこれまでの流れを断ち切るような楽曲スタイル、音の質感、録音状況が伝わってきます。つうかこれって、確実に問題作(いや、個人的には傑作)の3rdフルアルバム『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)で試したことを20数年の時を経てここで再び試しているだけだろ!と思わず突っ込みたくなるテイストなんですわ。いやあ、痛快ったらありゃしない。

そういう意味では、“どこまでもTHE WiLDHEARTSらしい”1枚。全6曲で20分強という物足りなさは否めないものの、このレベルの作品を定期的に届けてくれるのなら6曲入りでも構わない……そう断言したくなるほど、『RENAISSANCE MEN』から良い流れを作った好作品だと思います。

ですが、ここ日本での状況はなかなか完全が難しいのかな……しばらくは国内盤のリリースも難しそうだし、なんなら来日に関しても厳しいのかな。そもそもこのEPも最新ツアーにあわせてリリースされたようなものですし。相変わらずのトラブルメイカーぶりを発揮しまくりのジンジャー、この先どうなっていくのやら……。

 


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2019年10月 7日 (月)

GATECREEPER『DESERTED』(2019)

2019年10月初頭にリリースされた、アメリカ・アリゾナ州出身の5人組バンドGATECREEPERの2ndアルバム。

2013年に結成され、単独EPや数々のスプリット作品をA389やClosed Casketといったアンダーグラウンドの名門から発表したのちに、大手Relapse Recordsと契約。2016年に1stアルバム『SONORAN DEPRAVATION』をリリースして以降は、精力的なツアー&フェス出演でファンベースを拡大し続けてきました。

彼らの魅力は、80年代のUSデスメタル・オリジネーター(OBITUARYなど)や90年代の北欧デスメタル勢、そしてBOLT THROWERに代表される初期UKデスメタルバンドのエッセンスを取り入れつつも、XIBALBAなどデスメタルやスラッジの要素を取り入れ始めたハードコアバンドとも並列で語れるようなスタイルを維持し続けているところでしょう。

チェイス・H・メイソン(Vo)のグロウルやスクリームはデスメタルそのものですが、バックで鳴らされているサウンドはデスメタルをベースにしつつも、ハードコアの疾走感や先鋭さも散りばめられている。そこには、単なる懐古主義とも異なる“ナウ”な感覚が息づいているように思います。

そう思わせてくれる強い要因のひとつに、本作のサウンドメイキングが挙げられると思います。実は彼らのアルバム2作品でミックスを手がけているのが、CONVERGEのカール・バルー(G)その人。とてつもなくヘヴィなのに音の分離が良く、塊としての殺傷力はもちろんのこと、楽器1つひとつがえげつないくらいの存在感を放っているのですから。そりゃ病みつきになりますわな。

まだまだメタルやエクストリームミュージックの範疇で語られることの多いかれらですが、実はこの2作目で本格的なブレイクスルーを果たすのではないか。この隙が一切感じられない傑作を前にしたら、誰もがそう思うはずです。

なお、レーベルからのプレスリリースには下記のような文言が添えられています。

「メタルを基調としながらジャンルを超えていくインパクトを放つという意味で、DEAFHEAVENやPOWER TRIPに通じるものを持ち、実際その2バンドのブレイク・スルーと非常に近い注目の浴び方をしている。」

上記2バンドの浸透の仕方に興味を覚えた方、悪いことは言いません。今すぐチェックしてみることをオススメします。

 


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2019年10月 6日 (日)

MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』(2003)

マイケル・モンローが2003年1月に発表した、通算5枚目のオリジナルアルバム。JERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.名義のアルバムを含めると、通算7作目のソロ作品ということになります。

前作『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999年)発表前後から、再び運気が上昇し始めたマイケル。その勢いはそのままソロに注ぎ込まれるのかと思いきや、なんと2001年にHANOI ROCKS再生(=事実上の再結成)。オリジナルメンバーはマイケルとアンディ・マッコイ(G)のみでしたが、現代的にアップデートされたオリジナルアルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(2002年)をリリースするなど、精力的な活動が展開されました。

今回紹介するソロアルバムは、マイケルがハノイ再生期間に唯一発表したソロアルバム。タイトルの『WHATCHA WANT』は、その再生ハノイの第1弾アルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』の同名収録曲から取られたもの。そもそも、この「Whatcha Want」という曲、ソロ用に作られたものだったみたいですね。

そういう事情もあるのかどうか不明ですが、アルバムは全13曲中オリジナルナンバーが5曲と非常に少ないんです。それ以外はEDDIE & THE HOT RODS、UK SUBS、THE DEAD BOYS、X-RAY SPEX、デイヴ・リンドルム、THE BOYS、レオナード・コーエンとバラエティに富んだアーティストのカバー曲を収録。アルバムとしての勢いは十分に伝わってくるものの……なんとなくですが、雰囲気的には3作目『PEACE OF MIND』(1996年)にも近いものを感じます。ただ、あのときほどネガティヴさは感じられず、むしろ再生ハノイで感じた“違和感”を放出するような“アク抜き”役割の1枚なのかなと。

まあとにかく。カバー曲は文句なしに良いです。当たり前か、原曲が良いんだから。EDDIE & THE HOT RODS「Do Anything You Wanna Do」のパワーポップ感は初期ハノイにも通ずるものがあるし、おなじみTHE DEAD BOYS「What Love Is」は「まだこれやってなかったんだ!」と驚かされるし。アルバムラストを飾るアコースティックナンバー「Hey, That's No Way To Say Goodbye」も、レオナード・コーエンのくどさがまったく感じられない(笑)、非常にさらっとした仕上がりで、このアルバムにぴったりの1曲だと思いました。

また、オリジナルナンバーも同時期のハノイ作品に収録されていたとしても、何ら違和感のない楽曲ばかり。「Right Here, Right Now」の疾走感、どこか後期THE CLASHを思わせる「Stranded」のエモさ、湿り気の強い「Rumour Sets The Woods Alight」や「Life's A Bitch And Then You Live」のセンチメンタルな泣きメロなど、どれもなかなかの出来。それもそのはず、レコーディングにはティンパ(B)&ラク(Dr)といった当時の再生ハノイのメンバーが参加しているんですから(笑)。

前作同様、この時期のソロ作品は日本でもあまり良い扱いを受けていない印象があり、現在もCDは廃盤状態。デジタル配信も行われておりません。せっかくバンド形態のMICHAEL MONROEがここまでちゃんと続いているんだから、(もはやライブでこれらの楽曲を披露しないにしても)ぜひ形として残し続けてほしいものです。

 


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2019年10月 5日 (土)

SUPERGRASS『I SHOULD COCO』(1995)

1995年5月にリリースされた、イギリスのトリオ(当時の正式メンバーは3人、のちに4人組に)ロックバンドSUPERGRASSのデビューアルバム。日本では同年4月末に、2週間ほど早く先行発売されています。

1994年にシングル「Caught By The Fuzz」でデビューを果たした彼ら。同曲は当時全英43位という、新人のわりには好成績を残していますが、続く「Mansize Rooster」は20位、翌1995年発表の「Lenny」でついに初のTOP10入りを果たし、その後の代名詞的1曲となる「Alright」で全英2位という記録を樹立することになります。

これを受けて、アルバム自体も全英1位を獲得。世界中でのトータルセールスは100万枚を超え、まさに時代の寵児と呼ぶにふさわしい存在へと成長していきます。

オープニングを飾る「I'd Like To Know」を筆頭に、彼らは若さはち切れんばかりの勢いとキラキラしたポップさ、そして随所に散りばめられた“Very British”なひねくれ感が魅力。デビューしたタイミングもあり、ブリットポップ・シーンにおける代表格のひとつとカウントされていますが、もしデビューしたタイミングが異なれば純粋に「非常にイギリスらしいポップバンド」と評されたのかもしれません。ただ、その際にはここまでのヒットを飛ばしたのかどうかはわかりませんが。

大半の楽曲が2〜3分程度とコンパクトで、1曲1曲に複数のフックが用意されている。それは流麗なメロディラインであったり、耳障りの良いコーラス&ハーモニーであったり、あるいは疾走感あふれるバンドサウンドであったり、よくよく聴けば非常に寝られていることが伺えるアレンジであったり……シンプルなくせに、とにかく情報量が多いんですよ(笑)。

だからなのか、リリース当時このアルバムを初めて聴いたとき、妙に疲れたことをよく覚えています。聴きやすくてカッコいいのに、トータル13曲で40分程度なのに、それでもぐったりするこの感覚。それもあって、当時はアルバム全体を通して聴き込むよりも、好きな曲だけをピックアップして聴いていた記憶もあります。

今聴くとこの“ラフに聴こえるようで、実は緻密”なサウンドがたまらなくクセになるのですが、あの頃はあの頃でそういう思いがあったと……それもいい思い出です(笑)。

そんな彼らが2010年の解散から約10年を経て、再結成を果たします。すでにTHE POLICEのカバー「Next To You」をデジタルリリースしていますが(同曲は来年リリース予定のベストアルバムにも収録予定)、大人になっても抑えることを知らず突っ走ることを忘れない彼ら、大好きです。

 


▼SUPERGRASS『I SHOULD COCO』
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2019年10月 4日 (金)

SUEDE『COMING UP』(1996)

1996年9月にリリースされた、SUEDE通算3作目のオリジナルアルバム。

前作『DOG MAN STAR』(1994年)完成直前にバーナード・バトラー(G)が脱退し、同作のツアーには当時若干18歳のリチャード・オークスを起用。そのまま正式加入すると、バンドは新たにニール・コドリング(Key)を加えた5人編成でレコーディングに突入。過去2作を手がけたエド・ビューラーを迎えて完成されたのが、このキャリア最大ヒット作となった3rdアルバムです。

本作からは先行シングル「Trash」がまず全英3位と過去最高位を記録。これを受けて、アルバムもデビュー作『SUEDE』(1993年)に続く2作目の全英1位を獲得しました。その後も「Beautiful Ones」(同8位)、「Saturday Night」(同6位)、「Lazy」(同9位)、「Filmstar」(同9位)と計5曲ものTOP10ヒットを生み出し、アルバム自体もキャリア初となるプラチナムに認定されました。

過去2作にあったダークさや、淫らで危うい影の部分が払拭された本作は、突き抜け感がハンパなく、まばゆいほどの光を放っているポジティブな1枚。〈We're the trash you and me〉と歌われるリード曲「Trash」は、このフレーズを筆頭に歌われている内容は過去2作を踏襲したものと言えますが、今作ではそのネガティブさを肯定し、受け入れ、それでも前に進もうとするポジティブさが伝わってきます。

つまり、精神性は何ら変わっていないのに、それらを表現する手段がマニアックなものからポピュラリティの高いものへとシフトしたことで、それまで見向きもしなかった人までもを巻き込むことに成功した。これが彼らの大ブレイクの理由だったのかなと。確かにリリース当時、初期のいなたさを愛好するバーナード派からはそっぽを向かれました。しかし、そういったネガティブ要素を払拭するほどの勢いが当時に彼らに備わっていたのもまた事実です。

とにかく、どの曲もよく作り込まれていてキャッチー。そりゃあアルバム収録曲の半分がシングルカットされても不思議じゃないわ。しかも、時代はブリットポップ最盛期。彼らもその流行にうまく乗ることができたわけです。

初期2作の完成度も捨てがたいですが、本作の無敵感もまた何物にも変えがたいものがある。どれが一番好きかと問われると本当に悩みますし、日によって変わってくるとは思いますが、やっぱりアンセミックなロックチューン「Trash」から始まり、再びアンセミックなバラード「Saturday Night」で幕を下ろす本作はタイミングや心情を選ばず、いつ聴いてもベストだと思います。

そういった意味では、もっとも初心者にオススメしやすい1枚かもしれません。

 


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2019年10月 3日 (木)

IGGY POP『FREE』(2019)

2019年9月リリースの、イギー・ポップ通算18作目のスタジオアルバム。

前作『POST POP DEPRESSION』(2016年)ではプロデュースにQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・オムを迎え、そのジョシュとQOTSAやTHE DEAD WEATHERで活動をともにするディーン・フェルティータ、そしてARCTIC MONKEYSのマット・ヘルダース(Dr)とでバンドを組む形でレコーディング。ポストロック通過後のガレージロックという質感の、70年代後期のイギーを彷彿とさせる内容でした。

続く本作では前作の路線を踏襲することなく、また新たなスタイルに取り組んでいます。プロデューサーにはジャズトランペッターのレロン・ローマス、さらに「Post Pop Depression Tour」のオープニングに起用されたNYベースに活動する女性ギタリスト、サラ・リプステイトのプロジェクトNOVELLERを起用。彼らとレコーディングに取り組んだ結果、非常に大人びた、だけどどこか淫靡さが漂う世界観が構築された作品に仕上がりました。

ポストロックとも異なるそのスタイルは、むしろジャズ側に寄っていると言ってもいいかもしれません。そこにイギーがこれまでに取り組んできたアダルト路線のロックが融合することで、これまであったようでなかったタイプの楽曲/サウンドが奏でられている。新境地ともいえる「James Bond」や「Dirty Sanchez」「Glow In The Dark」ではイギーは楽曲制作に携わっておらず、レロンの楽曲をイギーが歌う……イギー自身の言葉を借りれば「他のアーティストが俺に変わって表現したものなんだ……俺は、ただ声を貸しただけなんだ」ということのようです。

が、その“貸した”声の存在感が非常に大きすぎるんですね。これはもう表現者として、新たなステージに到達したと言ってもいいかもしれません。そういえばイギー、本作の前にはUNDERWORLDとのコラボEPも制作していましたね。思えばあれも、声を使った新たな表現方法の模索だったのかもしれません。

イギー自身、前作を経てそれまでのさまざまな呪縛やしがらみから解放されたと、インタビューなどで発言していました。そのあとに制作されたアルバムのタイトルが『FREE』というのも、なんとも頷けるものがあるといいますか。

そう考えると、本作ってイギーが、デヴィッド・ボウイルー・リードなどの盟友たちを先に失い(そういえば本作にはルー・リードが残した詞を使った「We Are The People」というポエトリーリーディング・ナンバーも収録されています)、人生の最終コーナーに入った彼が「最後にやれる“まだやっていないこと”」を探し求めた結果、たどり着いた場所なのかもしれませんね。アートワーク含め、この悟りきった感にはどこか寂しさも伴います。

もう散々暴れたんだもん。今しかできな表現として、これもアリだよね。僕はこのアルバム、全面支持したいです。大好き。

 


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2019年10月 2日 (水)

NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』(2006)

2006年7月下旬に発表された、NEW YORK DOLLSの3rdアルバム。日本盤もほぼ同タイミングでリリースされています。

彼らがスタジオアルバムをリリースするのは『TOO MUCH TOO SOON』(1974年)以来、実に32年ぶりのこと。とはいえ、黄金期メンバーのジョニー・サンザース(G)もジェリー・ノーラン(Dr)も90年代前半に亡くなっているし、アーサー・ケイン(B)も2004年夏に白血病で亡くなっており、前作から残っているのはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のみ。

そんな彼らをサポートしたのが、元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)、日本では菅野よう子とのコラボレーションでも(一部で)知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)という編成。この6人で新生NEW YORK DOLLSとして本格的活動再開を果たしたわけです。

このアルバムのプロデュースを手がけたのは、AEROSMITHCHEAP TRICKなどでおなじみのジャック・ダグラス。さらにゲストアーティストとしてイギー・ポップやマイケル・スタイプ(当時R.E.M.)、トム・ゲイブル(AGAINST ME!/のちのトランスジェンダーを告白し、現在はローラ・ジェーン・グレイスと改名して女性として生活)といったシンガーや、ボ・ディドリー(G)などがプレイヤーとして参加。NEW YORK DOLLSの復活に華を添えています。

さて、気になる内容ですが……うん、ちゃんとNEW YORK DOLLSです。デヴィッド・ヨハンセンの声が年相応の老け方をしており、往年のグラマラスさはもはや見る影もありませんが、この年齢じゃないと醸し出せない渋みがこの音楽スタイルと見事に合致し、より説得力の強い音楽を生み出すことに成功しています。

楽曲的には初期の彼らにすでに備わっていたソウルやR&B……要するにモータウンの要素が強いロック/ポップスが中心で、オープニングを飾るハードドライヴィングな「We're All In Love」こそゴリゴリ感が若干強いですが、それでも彼らならではのしなやかさもにじみ出ており、最初から好感触。その後も時代を超越したスタンダードナンバー/ロックンロールが続いていきます。

無駄にスキャンダラスな要素がなくなったぶん、楽曲と演奏で勝負するしかないわけですが、本来このバンドはそっち側で戦うべき存在だったのではないでしょうか……そう思わずにはいられないほどに、32年の空白を感じさせない“つながり”が見出せる素晴らしい内容です。

恐らくですが、本作においてはオリジナルメンバーからしたらガキンチョでしかないサミやスティーヴの演奏面&ソングライティングでの活躍が非常に大きかったと思うのです。そしてそれは、続く4thアルバム『CAUSE I SEZ SO』でさらに強くなります(だからこそ、2人の脱退がバンドの寿命を縮めてしまったとも言えるわけですが)。

 


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2019年10月 1日 (火)

MYLES KENNEDY『YEAR OF THE TIGER』(2018)

ALTER BRIDGEスラッシュGUNS N' ROSES)のソロバンドSLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSでも活躍するシンガー、マイルズ・ケネディが2018年3月に発表した初のソロアルバム。

意外にも初のソロ名義作品となるこのアルバムは、彼の父親が亡くなった1974年を中心に、当時5歳前後だったマイルズの幼少期を題材としたコンセプチュアルな内容となっています。

実は2009年頃から計画されていたこのアルバムですが、完成させるまでに9年もの歳月を要することとなってしまいました。まあ、計画し始めた直後にスラッシュのソロバンドに参加したり、売れっ子バンドALTER BRIDGEが忙しかったりというのもあったのでしょう。ですが、まもなく50歳になろうとするこのタイミングに本作を完成させられたのは、ある意味では運命だったのかもしれません。

レコーディングにはジア・ディン(Dr, Per)、ティム・トゥルニエ(B)といった少数精鋭で臨み、マイルズはボーカルとギター以外にもマンドリンやバンジョー、ラップスティールなどを披露しています。相変わらず多才ですね。

楽曲自体はコンセプトもコンセプトなので、どこか内省的で落ち着いた雰囲気を醸し出しています。アコースティック主体で展開されるサウンドですが、マイルズのエモーショナルなボーカルと相まって、アコースティックならではの「枯れた」感は皆無。「The Great Beyond」のような楽曲ではむしろドラマチックさやダイナミズムすら感じられ、本作が単なる“バンド活動の合間の息抜き”とは異なるものであることがうかがえるはずです。

南部色の強いトラディショナルなアメリカンフォーク色もありつつ、どこか異国情緒を感じさせる音色があったり、また全体的には内向的なのに開放感のあるアレンジも散りばめられていたりと、改めてこの人の偉才ぶりを存分に味わえる1枚ではないでしょうか。

なんとなくですが、本作の軸はクリス・コーネルSOUDNGARDEN解散後、AUDIOSLAVEを立ち上げる前に出したソロ1作目『EUPHORIA MORNING』(1999年)にも近い気がします。ただ、この『YEAR OF THE TIGER』に関してはデジタル要素皆無で生々しさが際立っているので、装飾のある/なしでここまで変わるのかと改めて驚かされます。

スラッシュのソロも素晴らしいし、もちろんALTER BRIDGEは言うまでもなく。だけど、ここにはそれら2作品にもない輝きがあるので、両バンドのファン必携の1枚だと思います。年間ベストには選ばなかったけど、この先もずっと聴き続けるであろうスルメ的良作。

 


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