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2019年10月 9日 (水)

WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)

WHITESNAKEの問題作『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)が今年でリリース30周年。Geffen時代の音源権利がRhino Recordsに移ったこともあり、『WHITESNAKE』(1987年)『SLIDE IT IN』(1984年)に続いて最新リマスタリング&未発表音源をたっぷり追加したアニバーサリーエディションが2019年10月4日に発売されました(日本盤は少々遅れて、10月23日発売とのこと)。

『SLIP OF THE TONGUE』というアルバム自体に関しては、過去にこちらで執筆済み。そちらでは2009年に海外で発表された20周年エディションについても触れていますが、その際にはオリジナル盤からの改悪(曲順の変更)が加えられていましたが、今回の30周年盤も『WHITESNAKE』『SLIDE IT IN』同様にオリジナルとも20周年盤とも異なる新たな改悪(笑)が加えられており、さすがに頭を抱えております。

基本的にはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とその側近によるアイデアなんでしょうけど……うん、アメリカかぶれしたイギリス人の考えることはわからない!とちゃぶ台をひっくり返したい気持ちです。

さてさて、30周年バージョンについてここからたっぷり書いていきますよ。本作はCD1枚モノの通常盤、CD2枚組のデラックスエディション、CD6枚+DVDからなるボックスセット(スーパーデラックスエディション)の3仕様が用意されていますが、今回ここで触れるのは未発表音源が豊富なボックスセット関して。それぞれのディスクの中身について触れていきたいと思います。

 

まずはDISC 1。こちらは最新リマスタリングを施した『SLIP OF THE TONGUE』本編に当時のシングルのみに収録された別テイクなどを追加したもの。全17曲入りで、こちらが基本となるのでしょうか。収録曲は下記のとおり。

<2019年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Kittens Got Claws
03. Cheap An' Nasty
04. Now You're Gone
05. The Deepr The Love
06. Judgment Day
07. Sailing Ships
08. Wings Of The Storm
09. Slow Pork Music
10. Fool For Your Loving 1989
11. Sweet Lady Luck (Single B-Side)
12. Now You're Gone (Chris Lord-Alge Single Remix)
13. Fool For Your Loving 1989 (Vai Voltage Mix)
14. Slip Of The Tongue (Alternate Intro & Breakdown)
15. Cheap An' Nasty (Alternate Solo & End)
16. Judgment Day (Alternate & Extended Solos)
17. Fool For Your Loving 1989 (Alternate AOR Mix With CHR Intro)

アルバム本編がM-1〜10なのですが、なんですかこの味わい深さもへったくれもない流れは……頭3曲の流れはまだいいとしても、M6「Judgment Day」〜M7「Sailing Ships」の構成は疑問しか残らない。長尺の大作を2曲並べたかったんだろうけど、アルバムの締め用に作られた壮大なアレンジの「Sailing Ships」のあとにまだ3曲も残っていて、「Sailing Ships」の余韻をぶち壊すかのように「Wings Of The Storm」が始まる。さらにエンディングが「Fool For Your Loving」て……正気ですか?

ちなみにこちら、リマスタリングといいながらも「Kittens Got Claws」がオリジナルからいじられていたりします。スティーヴ・ヴァイ(G)によるオープニングの“猫ギター”がカットされたのは明らかな変化ですが、ほかにもイントロのリフの裏で鳴っていたヴァイのソロが若干前に押し出されているような。あと、オリジナル盤では軽く感じられたドラムの音も2009年リマスター盤よりもさらに硬質にミキシングされている印象も受けました。これはこれで悪くないね(曲順を除けば)。

M-11〜13は2009年バージョンにも収録されていたもの。M-12「Now You're Gone (Chris Lord-Alge Single Remix)」は「U.S. Single Mix」として親しまれてきたものですね。さらに今回は初出の別バージョンを追加収録。M-14「Slip Of The Tongue (Alternate Intro & Breakdown)」はいきなりブラスシンセから始まるイントロ縮小&ギターソロ後のブレイクパートに変なソロ(笑)が追加されたバージョンです。いや、あの緊張感のあるブレイクにそれ入れちゃう?っていうヴァイのセンスよ……。M-15&16は文字どおり、ギターソロを差し替えたもので、M-17はM-10のミックス違い。M-14〜16に関してはオリジナルバージョンに30年慣れ親しんだこともあり、ちょっと違和感があるかな。

続いてDISC 2。「The Wagging Tongue Edition」と題したこちらは1曲ごとにカヴァーデイルの解説を挿入した“Track by Track”バージョン。1989年当時、アナログのみで発売されたいたものがここで初CD化されたもので、曲順はオリジナルバージョンに準じたもの。ですが、曲によってはイントロにデヴィッドのトークが被っていたり、曲のイントロが直前のトークのトラックに含まれていたりと、いろいろ難ありな構成。ただ、こちらの音源自体はオリジナルバージョンのようなので、まあ雰囲気だけでも……ってところでしょうか。

DISC 3はスタジオでのデモや(おそらく)エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)によるプライベートデモ音源をまとめたもの。ヴァンデンバーグによるホームデモやドラムマシーンを使ったリズムトラックにギターリフやシンセを乗せた簡易なもの。ですが、これを聴いてヴァイはオリジナルに忠実に弾いたんだなってことも伝わってくるので、「なんだ、意外と良い奴じゃん」と思えてくるから不思議です(笑)。また、ホームデモとスタジオデモが自然な形でミックスされており、曲が進むにつれてその楽曲がホームでもからどのように進化していったかが伺えるのも、非常に面白いんじゃないでしょうか。個人的には「Sailing Ships」のプログレッシヴなオリジナルデモがお気に入りです。ここでは「Kill For The Cut」「Parking Ticket」という2つのボツ曲も楽しむことができます。

DISC 4は「Monitor Mixes」と題した、世に発表されたCDバージョンの一歩手前の仮ミックス。例えば「Kitten Got Claws」イントロのギターリフにソロが被さっていなかったり、「Slip Of The Tongue」のギターリフがその後のバージョンと少し違っていたり、曲によってはドラムのカウントが入っていたりカヴァーデイルの鼻歌やつぶやきが含まれていたりと、完成には程遠いもののレコーディングの雰囲気が伝わってくるのではないでしょうか。また、ここでは当時レコーディングが噂されたVANDENBERGの名曲「Burning Heart」のWHITESNAKEバージョンや、初期スネイクの「Ain't Gonna Cry No More」「We Wish You Well」の再レコーディングバージョンが正式に初お披露目。「Burning Heart」は大げさなアレンジが加えられていますが、これはこれで好きかも、が、デヴィッドが真面目に歌おうとせず、2コーラス以降は歌ナシ……確かに彼が歌うにはキーが高すぎもんね。「Ain't Gonna Cry No More」は歌が入る前のバージョンですが、イントロのアコギがシンセに差し替えられたモダンなアレンジ。これ、正式に再レコーディングしていたらどんな仕上がりになったのかなあ。そして「We Wish You Well」はほぼ原曲どおり。これはいじりようがないですもんね。でも、確かにアルバムのテイストには合わなかったよね。そりゃあ外されるわけだ。

DISC 5は「A Trip To Granny's House Sessions Tapes, Wheezy Interludes & Jams」と題した、レコーディングの一歩手前に制作したスタジオセッション音源。ギターはヴァイひとりですが、この生々しさ嫌いじゃないです。「Slip Of The Tongue」のイントロでVAN HALEN「Jamp」を弾きそうになるところは思わず苦笑いですが。「We Wish You Well」はキーを上げたバージョンで制作しようとした痕跡があったり、ちょっとしたスタジオセッションも含まれていたりと、これはこれでまあ面白いんじゃないでしょうか。

DISC 6は1990年夏にイギリス・ドニントンパークで開催された『MONSTERS OF ROCK』でのヘッドライナー公演より抜粋したもの。2011年に『LIVE AT DONINGTON 1990』と題してCD2枚組/CD2枚組+DVDで発売されたものは全17曲入りでしたが、ここではヴァンデンバーグのソロパート「Adagio For Strato」「Flying Dutchman Boogie」、ヴァイのソロパート「For The Love Of God」「The Audience Is Listening」がカットされ、「Crying In The Rain」はトミー・アルドリッジ(Dr)のドラムソロがカットされた編集バージョンに差し替えられた全13曲入りとなっています。CD1枚に収めるための苦肉の策でしょうけど、まあWHITESNAKEの楽曲だけを聴きたいリスナーにはちょうど良い長さかな。なお、DISC 7のDVDではこのドニントン公演のフルバージョンを楽しめるので、カットされた音源が気になる人はそちらをチェックしてみてください。

以上、駆け足ながらもかなり長尺になってしまった全ディスク解説。参考になりましたでしょうか。完全未発表音源はDISC 3〜5の3枚で、CD2枚組のデラックス・エディションDISC 2はボックスセットのDISC 4「Monitor Mixes」となっているので、「Burning Heart」や「We Wish You Well」などの未発表テイクも手軽に楽しめるようになっています。ボックスはさすがに……という方にはこちらがオススメかも。ちなみに、ストリーミングサービスではシングルディスクの通常盤とボックスセットの2バージョンを配信中。CDを買うほどではないというリスナーにはこちらがオススメかもしれません。

CDだとディスク6枚で全103トラック、トータル7時間半というアホほど時間を無駄にする(笑)作品集ですが、これだけ浸ったら問題作と言われる『SLIP OF THE TONGUE』のことも愛をもって接することができるようになる……はず。少なくとも自分は(もともと嫌いになれない1枚でしたが)、より好きになれましたよ。

 


▼WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
(amazon:日本盤CD / 日本盤2CD / 日本盤6CD+DVD / 海外盤CD / 海外盤2CD / 海外盤6CD+DVD / MP3

 

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