CHELSEA WOLFE『BIRTH OF VIOLENCE』(2019)
2019年9月中旬に発表された女性シンガーソングライター、チェルシー・ウルフの6thアルバム。
『HISS SPUN』(2017年)から2年ぶりの新作となる今作は、ダークでノイジーかつスラッジ的要素の強かった前作から一転、彼女の歌とアコースティックギターを軸にしたフォーキーな作風。ただ、単なる「フォークギターによる弾き語り」とは異なり、そこにエレクトロ的な味付けが施されたり歪んだミキシングによるバンド演奏が加わることで、浮遊感の強い独特な世界観が展開されています。
全体的にかなりどんよりとしていて、言ってしまえばゴッシック要素の強いダークさが目立つ作風なんですが、そこにはよくある“情念的なアレ”は一切感じられない。むしろ淡々と歌うことで、静をベースにしたサウンドスケープ上に現れては消える蜃気楼のような存在感を放っている。そんな不思議な音世界が楽しめる1枚となっています。
いわゆるダーク/エクストリームサイドの人間が急にフォーキーなサウンドに目覚めるケースは多々ありますが、彼女の場合はもともとこのスタイルが軸にあったわけで、ドゥーミーな前作の次にこんなにも内省的で“閉じた”アルバムが届けられたとしても実はそこまで驚かないわけでして。
とはいえ、過去には『UNKNOWN ROOMS: A COLLECTION OF ACOUSTIC SONGS』(2012年)というコンピ盤も発表しているものの、ここまで本格的にフォーキーさを主軸に置いたオリジナル作品は初めてだったので、逆に「おお、このタイミングで!」と驚きを通り越して喜んだりしたものです。
穏やかな歌声で紡がれる歌詞は叙情的とは相反する、物事をどこか俯瞰で見ているかのような詩的なものばかり。古き良き時代のブルースやフォークにも通ずる物語性があって、そういった楽曲をこの淡々とした歌唱スタイルと少ない音数で表現するからこそ、他人事のようにも聞こえるのに、気づけばど真ん中に響いている。そんな作品集に『BIRTH OF VIOLENCE』というタイトルを付けるあたりにも、この人らしいセンスが感じられます。
そういう不思議な魅力を放つ、クセになる1枚。異色作ではあるものの、個人的には年間ベスト候補に入れたい良作でもあるわけでして。プレスリリースには比較対象としてPJハーヴェイの名前が挙げられていましたが、そのへんが好きな人はもちろん、昨今のオルタナ系女性アーティスト、そしてMYRKURあたりのラウド&ダーク寄り女性アーティストのリスナーにも響いてほしい1枚です。
▼CHELSEA WOLFE『BIRTH OF VIOLENCE』
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