BABYMETAL『METAL GALAXY』(2019)
2019年10月11日にリリースされたBABYMETALの3rdアルバム。
前作『METAL RESISTANCE』(2016年)から3年半ぶりの新作は、まさに“待望の”、“満を持して”という言葉がふさわしい1枚。というのも、BABYMETALにとってのこの3年半は決してすべてが順風満帆とは言い切れるものではなかったからです。
『METAL RESISTANCE』は世界的な成功を収め、同作を携えたワールドツアーではRED HOT CHILI PEPPERSやMETALLICA、GUNS N' ROSES、JUDAS PRIESTなどのツアーに参加。ここ日本でも主要大型ロックフェスに多数出演し、2016年9月には初の東京ドーム2DAYS公演も実現するなど、その人気はピークに達しようとしていました。しかし、その後の2018年5月からスタートした新たなワールドツアーには、YUIMETALの姿は見当たりませんでした。残されたSU-METALとMOAMETALは複数のダンサーを迎え、“DARK SIDE”と位置づけられた実験的なスタイルでツアーを敢行。同年秋にはYUIMETAL脱退が正式に発表され、2019年6月のライブ『BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-』にて今回の新作リリースと9月からのワールドツアー開催をアナウンスし、新章突入を告げたのでした。
このような激動の期間を経て届けられ『METAL GALAXY』。海外盤は全14曲入り、日本盤は2枚のCDに各8曲/計16曲が収められた大作で、“メタルの銀河を旅する”をテーマに、過去2作を上回るほどのバラエティ豊かさを誇る傑作に仕上がっています。
とはいえ、正直なことを言いますと……昨年デジタル配信された「Distortion」「Starlight」の2曲を聴いた時点では、来たるニューアルバムの方向性に対して確たる自信を持つことはできませんでした。なぜなら、この2曲はあくまで“DARK SIDE”と呼ばれる当時のスタイルに準じた楽曲という認識があったから。それは今年5月に配信リリースされた「Elevator Girl」もしかり。もちろん、従来のBABYMETALらしさも感じ取ることができたし、今の時代性を反映させたコンパクトで純粋にカッコいい楽曲だと思っていた。だけど、この3曲だけでは「うん、今度も間違いない!」と安心できるだけの“何か”が足りなかったんです。
そんな自分のモヤモヤを解消させてくれたのが、今年6月のライブ『BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-』にあわせてリリースされた新曲「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」。ラガメタルなんて例えがぴったりなこの曲は、明らかにライブでの盛り上がりを想定して制作されたものでしょう。メタルのクールさとパーティチューンならではの能天使さが同列で並び、実際ライブでは観客がタオルを振り回すほどの熱狂ぶりをみせるキラーチューンに、早くも昇華されていたのですから。
また、この曲がライブ初披露された『BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-』では今回のニューアルバムにも収録されている「Shanti Shanti Shanti」も先行披露されました。当時、筆者は「Rolling Stone Japan」ウェブサイトでのライブレポートにてこの曲を「インドや中東を思わせるメロディ&フレージングが耳に残るダンサブルな楽曲。ザクザクと刻まれるギターリフと力強いビート、そこに重なる妖艶なメロディ&ダンスはBABYMETALにとって新境地といえるもので、ライブにおける大きなフックになったことは間違いない。こちらも今後のライブで重要な役割を果たす1曲になるはずだ」と評しています。
そう、「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」同様に「Shanti Shanti Shanti」も“足りない何か”を埋めるパズルのピースだったのだ……アルバム『METAL GALAXY』を通して聴いたことで、改めてそう確信できました。
「Arkadia」のように王道中の王道と呼べるスピードメタルや、BABYMETALのパブリックイメージをそのまま表現したようなダンスメタル「Night Night Burn!」もあるし、SU-METALのシンガーとしての成長を存分に味わえるパワーバラード「Shine」、エレクトロ色の強い「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott Lepage)」、暴力的なエレクトロビートがたまらない狂気性みなぎる「BxMxC」、SEPULTURAやSOULFLYにも通ずるトライバルでパーカッシヴなインスト曲「IN THE NAME OF」など変化球も満載。これだけ多岐にわたるジャンルを包括しながらも、BABYMETALらしさを損なうことなく統一感の強い作品集としてまとまっているのは、制作スタッフの努力の賜物でもあると同時に、SU-METALとMOAMETALのフィルターを通すことでその“らしさ”がより純度の高いものへと昇華されていると捉えることもできる。そのフィルターがあるからこそ、メタルなのにここまでポップで親しみやすい作品になり得るという大切な事実に改めて気づかせてくれた本作の功績は、非常に大きなものがあります。
また、このアルバムには新体制での新たな船出を祝うように、豪華ゲストも多数参加。「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」ではB'zのTak Matsumoto(G)が彼らしいエモーショナルなギターソロを奏で、「Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)」では昨年秋のライブでも共演したSABATONのヨアキム・ブローデン(Vo)が勇ましさとコミカルさが入り混じったボーカルを響かせる。また、「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott Lepage)」ではPOLYPHIAのティモシー・ヘンソン(G)&スコット・ルペイジ(G)がテクニカルなギタープレイを披露し、「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」ではARCH ENEMYのアリッサ・ホワイト=グラズ(Vo)が強烈なスクリームを轟かせ、「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」にはタイの人気ラッパーF.HEROがフィーチャーされている。ゲストプレイヤー/シンガーが各楽曲に華を添えることで、アルバム自体の彩りがより鮮やかさを増したことは間違いありません。
BABYMETALとしての純度を高めると同時に、音楽性の幅をさらに拡散させていく。そういった意味でも、本作は新章という括りにふさわしい内容に仕上がっており、グループを一段高い場所へと導く大きな武器になるはずです。
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