IGGY POP『FREE』(2019)
2019年9月リリースの、イギー・ポップ通算18作目のスタジオアルバム。
前作『POST POP DEPRESSION』(2016年)ではプロデュースにQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・オムを迎え、そのジョシュとQOTSAやTHE DEAD WEATHERで活動をともにするディーン・フェルティータ、そしてARCTIC MONKEYSのマット・ヘルダース(Dr)とでバンドを組む形でレコーディング。ポストロック通過後のガレージロックという質感の、70年代後期のイギーを彷彿とさせる内容でした。
続く本作では前作の路線を踏襲することなく、また新たなスタイルに取り組んでいます。プロデューサーにはジャズトランペッターのレロン・ローマス、さらに「Post Pop Depression Tour」のオープニングに起用されたNYベースに活動する女性ギタリスト、サラ・リプステイトのプロジェクトNOVELLERを起用。彼らとレコーディングに取り組んだ結果、非常に大人びた、だけどどこか淫靡さが漂う世界観が構築された作品に仕上がりました。
ポストロックとも異なるそのスタイルは、むしろジャズ側に寄っていると言ってもいいかもしれません。そこにイギーがこれまでに取り組んできたアダルト路線のロックが融合することで、これまであったようでなかったタイプの楽曲/サウンドが奏でられている。新境地ともいえる「James Bond」や「Dirty Sanchez」「Glow In The Dark」ではイギーは楽曲制作に携わっておらず、レロンの楽曲をイギーが歌う……イギー自身の言葉を借りれば「他のアーティストが俺に変わって表現したものなんだ……俺は、ただ声を貸しただけなんだ」ということのようです。
が、その“貸した”声の存在感が非常に大きすぎるんですね。これはもう表現者として、新たなステージに到達したと言ってもいいかもしれません。そういえばイギー、本作の前にはUNDERWORLDとのコラボEPも制作していましたね。思えばあれも、声を使った新たな表現方法の模索だったのかもしれません。
イギー自身、前作を経てそれまでのさまざまな呪縛やしがらみから解放されたと、インタビューなどで発言していました。そのあとに制作されたアルバムのタイトルが『FREE』というのも、なんとも頷けるものがあるといいますか。
そう考えると、本作ってイギーが、デヴィッド・ボウイやルー・リードなどの盟友たちを先に失い(そういえば本作にはルー・リードが残した詞を使った「We Are The People」というポエトリーリーディング・ナンバーも収録されています)、人生の最終コーナーに入った彼が「最後にやれる“まだやっていないこと”」を探し求めた結果、たどり着いた場所なのかもしれませんね。アートワーク含め、この悟りきった感にはどこか寂しさも伴います。
もう散々暴れたんだもん。今しかできな表現として、これもアリだよね。僕はこのアルバム、全面支持したいです。大好き。
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