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2019年11月

2019年11月30日 (土)

2019年11月のお仕事

2019年11月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※11月27日更新)

 

[紙] 11月27日発売「VOICE BRODY」vol.6にて、「新サクラ大戦」佐倉綾音、山村響×福原綾香の各インタビュー、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」岩田陽葵インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月26日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにてBABYMETALライブレポートBABYMETAL、イギリスからの盟友BMTHと繰り広げた「奇跡の共演」が公開されました。

[紙] 11月25日発売「CONTINUE」Vol.62にて、TRIGGER特集内「キルラキル」6話・12話・20話レビューと「キズナイーバー」解説を執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月22日、「リアルサウンド」にてオーディション企画『ONE in a Billion』制作スタッフインタビュー坂道オーディションやNizi Projectも制作 ソニーミュージック新人開発スタッフに聞く、今求められるアーティストの条件が公開されました。

[紙] 11月22日発売「TV Bros.」2020年1月号にて、のろしレコード『OOPTH』、佐藤千亜妃『PLANET』、TORO Y MOI『SOUL TRASH』の各ディスクレビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 11月20日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2019年12月号にて、THE YELLOW MONKEYインタビューおよびディスコグラフィー作成、BBHF尾崎雄貴インタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 11月12日、「ぴあアプリ」にて乃木坂46秋元真夏インタビュー乃木坂46新キャプテン・秋元真夏が語る、WOWOWドラマの裏側と後輩たちへの想いが公開されました。

[WEB] 11月8日、「リアルサウンド」にてTHE PINBALLS古川貴之インタビューTHE PINBALLS 古川貴之の人生に影響を与えた4作品とは? ルーツから浮かぶ根底にある想いが公開されました。

[紙] 11月2日発売「日経エンタテインメント!」2019年12月号にて、=LOVE齊藤なぎさ、≠ME冨田菜々風の各インタビュー欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」構成を担当しました。(Amazon

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また、10月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1910号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

SLAYER『THE REPENTLESS KILLOGY (LIVE AT THE FORUM IN INGLEWOOD, CA)』(2019)

2019年11月に発売された、SLAYERの最新ライブアルバム。

オフィシャルな形で単体のライブアルバムが発売されるのは、名盤『DECADE OF AGGRESSION』(1991年)以来28年ぶり(!)。思えば『LIVE INTRUSION』(1995年)や『WAR AT THE WARFIELD』(2003年)、『STILL REIGNING』(2004年)などライブ映像は豊富にリリースされているんですよね。今作もライブアルバムと同じ公演がDVD/Blu-rayでも発売されますし、彼らの場合は音源よりも映像で楽しんでほしいっていうことなんでしょうかね。

それはさておき。今回は現地時間で本日11月30日、このライブ作品と同じLAのThe Forumでのライブを最後にツアー活動を停止させます。バンドのマネージャーは直近のインタビューで「ツアーがこれで終わりなだけで、バンドが終わるという意味ではない」と発言しているので、今後レコーディング作品として何かしらの予定が控えているのか、あるいはアーカイブ的な過去音源がどっさり発表されるのか、あるいは単発でのライブ活動があるのか……そこは悲観的にならないようにしておきたいと思います(とはいえ、今年3月の最後の来日公演では感傷的になってしまいましたが)。

さてさて。このライブ作品について触れておきましょう。本作は2017年8月5日のThe Forum公演をまるまる収めたもので、タイミング的にはフェアウェル・ツアーが発表される前のもの。同年10月には『LOUD PARK』で来日もしているので、セットリスト的にはほぼ同一となっています(ライブアルバムで演奏された「Hallowed Point」に替わり、日本では「Fight Till Death」というレア曲を披露)。現時点での最新オリジナルアルバム『REPENTLESS』(2015年)からの楽曲も程よく含まれた、グレイテストヒッツと呼ぶにふさわしいセットリストではないでしょうか。

上記のとおり、これからSLAYERに触れようというビギナーとっては現時点での入門編的1枚と言えるでしょう。が、いかんせん音質がイマイチなんですよね。なんていうか、軽すぎるんです。ボーカルが前にで過ぎていて、ギターが若干後ろに退いている、そしてドラムの音に重量感が一切感じられない。せっかくヘヴィで狂気的な演奏を繰り広げているのに、それが最良な形で伝わらないのは残念でなりません。これ、ライブ映像作品用のミックスをそのままCDにも流用したんでしょうね。

要するに、この点においても彼らがライブアルバムというアイテムをそこまで重視していないことが伺えます。おかげで、聴いても感傷的な気分に陥らずに済みました(笑)。あと、不思議とYouTubeに上がっている映像音声のほうが、実際のアルバムよりも音に厚みがある気がするのですが、これは気のせいなんでしょうか……。

初期の楽曲に限定してしまえば、バランス的には『DECADE OF AGGRESSION』が最高の1作ですし、オールキャリアを振り返りたい人には今作が最適(ただ、音質に難あり)。一長一短ありますが、まずはストリーミングサービスで聴き比べて、自分に合った作品を選んでみてはいかがでしょう。

肝心の映像作品に関しては、後日別枠でたっぷり触れたいと思います。

 


▼SLAYER『THE REPENTLESS KILLOGY (LIVE AT THE FORUM IN INGLEWOOD, CA)』
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2019年11月29日 (金)

NILE『VILE NILOTIC RITES』(2019)

2019年11月初頭にリリースされた、NILEの9thアルバム。

言わずと知れた、アメリカ・サウスカロライナ州出身のテクニカル・デスメタルバンドNILEですが、実は僕自身ここまでちょっと避けてきたバンドでした。理由は特にないのですが、なんとなく経験していたといいますか。聴けば絶対にハマることはわかっていたのに……要するに、入りどきを見失っていたんでしょうね。彼らが登場した90年代末から2000年代初頭、ちょっとこの手の新しい音楽と距離を置いていたタイミングもあったし、そこを外してしまってからは新作が出るたびになんとなく手が伸びなかったり。

で、各種ストリーミングサービスが始まってから自分の中で「新譜を貪欲に聴いていこう」と意識を変え、これまで触れてこなかったバンドにも積極的に手を出すようにしていたのもあり、今回ようやくNILEについて触れるタイミングが訪れたわけです。

予備知識としては「とにかくブルータルでテクニカルなデスメタル」「中近東などワールドミュージックの要素を導入」「トリプルボーカル」程度しかなく、そんな自分が初めて聴いたNILEのアルバム。うん、カッコいいじゃん(笑)。もっと早くに聴いておけよ!と自分にツッコミを入れておきます。

痙攣気味に手数の多いドラミングが心地よいのと、中近東を彷彿とさせるフレージング、次々と変化を繰り返す曲展開、と同時に「Seven Horns Of War」のように9分近くにもわたる大作では映画のサウンドトラックのようなドラマチックさを演出するアレンジ力。どれを取っても最高峰だと思いますし、2分程度のショートチューンから先の大作まで、とにかく1曲1曲をちゃんと聞かせよう、惹きつけようとする工夫が随所に用意されていると思いました。

正直、トリプルボーカルの聴き分けは軽く触れた程度ではわからない部分も多いですが(笑)、きっとちゃんとした役割分担があるのでしょう。ここに関しては素人でゴメンなさい。

あと、この手のバンドの音源としては非常に聴きやすいミックスバランスで、そこにも単なるオナニーで終わらない、ちゃんと作品を届けようとするバンドの姿勢が垣間見える気がします。とにかく聴きやすい! これ、この手のバンドとしては異例じゃないかな。この手のバンドならあえて聴きにくくすることで難解さを増す、あるいは聴き手に違和感を与える手法だってできるはずなんです。でも、それをしない。しっかり“作品”というものと向き合っているし、もっと言えば芸術性の高いデスメタルだと思うんですよ。自分で書いてみて、「芸術性の高いデスメタル」ってかなりアレだとは思いますが(笑)。

あえて過去の作品に触れてからではなく、いきなりこのアルバムから入ったことでNILEというバンドに素直に興味が持てたし、ここから過去作をさかのぼって聴いてみようと思えたので、自分的には良い出会いだったと思います。無心になりたいときにヘッドフォンで、ひたすら爆音で楽しみたい1枚です。

 


▼NILE『VILE NILOTIC RITES』
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2019年11月28日 (木)

ALCEST『SPIRITUAL INSTINCT』(2019)

2019年11月初頭発売の、ALCEST通算6作目のオリジナルアルバム。今作からNuclear Blast Recordsからのリリースとなります。

前作『KODAMA』(2016年)はその1作前の『SHELTER』(2014年)とも異なる作風で、緊張感を伴う長尺の楽曲が目立ちましたが、本作も基本的にはその延長線上にある1枚なのかなと。ですが、軸にあるものは近しいのですが、その『KODAMA』ともどこか違う印象を受ける。何が違うのでしょう?

これは僕だけの感じ方なのかもしれませんが、今作から「Sapphire」のMVが制作されたこと、そこでの演奏シーンを目にして感じたことが……「ああ、ライブか」と。そこを意識して作ったか、あるいは無視して作品として完結させるか、その意識の違いが2作の差なのかなと思いました。

どちらかといえば、『KODAMA』はスタジオ作品として優れた1枚を完成させようと目論んだのかなと。もちろんライブで演奏することは意識していたとは思います。だって、レコーディングでは実際にプレイしているわけですから。でも、そういう次元ではなく、もっと“作品”として突き詰めたいという思いの強さが表れたのが『KODAMA』という力作だったのではないでしょうか。

一方で、今回の『SPIRITUAL INSTINCT』には初期のブラックメタル臭が戻ってきている楽曲も少なくない。そういった躍動感がライブ感にもつながっているように思えるのです。実際、今回のアルバムを通して聴くと“スタジオで膝を突き合わせて作り込みました”という印象はあまり受けず、むしろ“セッションを重ねに重ねた結果、ここにたどり着いた”、そんな声さえ聞こえてきそうなくらい“生”の息吹が伝わってくるのです。

ALCESTのテーマのひとつは、ネージュ(Vo, G, B, Synth)が子どもの頃に夢で見た「色も形も音もない架空の世界」を音で表現すること。それをいかに“生”の音で表現するか、非常に困難な作業だったと思います。実際、今作の制作に際してネージュは「長く困難だったけど、やりがいのあるプロセスだった」とコメントしています。

今回、あえて“生”という言葉を意図的に使ったのは、先のライブ感のみならず、アルバムの節々から伝わってくる宗教音楽的な香りにもなぞらえています。アルバムタイトルに「Spiritual」というワードを用いているところにも通ずるのでしょうが、人が生きるうえで寄り添ったり敵対したりする宗教、あるいは肉感的なものと相反する精神世界。こういったものを能動的なバンドサウンドで、いかに先鋭的でエモーショナルに表現するか。そりゃあ難しい作業ですわな。

でも、彼らはこのアルバムでそれをしっかり成し遂げたのではないでしょうか。名盤『KODAMA』や『SHELTER』とも異なる、また新たな傑作。できる限り爆音で接したい1枚です。

 


▼ALCEST『SPIRITUAL INSTINCT』
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2019年11月27日 (水)

TYGERS OF PAN TANG『RITUAL』(2019)

2019年11月リリースの、TYGERS OF PAN TANG通算13作目のオリジナルアルバム。

バンド名を冠した前作『TYGERS OF PAN TANG』(2016年)がその年の年間ベスト候補に入ってもおかしくないくらいの良作で、1年遅れで聴いた僕は「もっと早くに聴いていれば……」と肩を落としたくらい。今聴いても本当に優れた、良質のブリティッシュ・ハードロックアルバムだと思うんですね。

で、前作から3年を経て届けられた本作。バンドメンバーは2013年から変わっていないようですが、ギタリストの表記が「ミッキー・クリスタル」から「マイケル・マクリスタル(Michael McCrystal)」に変わっています。おそらくメンバーチェンジではなく、同じ方のはず。そういう安定感もあってか、本作も前作に劣らぬ完成度の1枚となっています。

オープニングトラック「Worlds Apart」のリフからして鬼気迫るものがあり、そのまま勢いで押すのかと思いきや、実はミディアムとアップの中間くらいの程よいテンポ感。この適度な疾走感が気持ち良いったらありゃしない。ヤコボ・メイレ(Vo)の歌声も適度な湿り気とねっとり感があり、こういった泣メロの楽曲にピッタリ。その後も「Destiny」「Rescue Me」とミディアムテンポのマイナーチューンが続き、いい感じの流れとなっています(後者のリフは完全に過去の焼き直しですが。笑)。

全体的にはミドルテンポ中心の作風ですが、中には古き良き時代のファストナンバー「Raise Some Hell」、後半のパワフルなアレンジが好印象なメタルバラード「Words Cut The Knives」、ヘヴィなリズムが気持ち良いアップチューン「Damn You!」のような変化球も用意されており、バランス的にも良好じゃないでしょうか。

ミディアムナンバーにしても、すべてが似たり寄ったりというわけでもなく、「Love Will Find A Way」のような“これこれ!”と膝を叩きたくなるような王道ナンバーも、「Art Of Noise」みたいにグルーヴィーなリズムを持つ楽曲も含まれているので、決して飽きることはないかなと。

しかも、アルバムラストを飾るのが7分半におよぶ大作バラード「Sail On」。この曲がまた良いんですよね。ブルースベースのハードロックとは異なる、NWOBHM通過組だからこそ生み出せる唯一無二のHR/HM感。新鮮さは皆無ですが、だからといって無視できない存在感はさすがの一言だと思います。前作が気に入った方なら間違いなく、本作もお気に入りの1枚になるはずです。全11曲で50分強(日本盤ボーナストラック除く)というトータルランニングもベストですしね。

 


▼TYGERS OF PAN TANG『RITUAL』
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2019年11月26日 (火)

DOWN 'N' OUTZ『THIS IS HOW WE ROLL』(2019)

DEF LEPPARDのジョー・エリオット(Vo)が中心となり2009年に結成されたバンド、DOWN 'N' OUTZが2019年10月に発表した3rdアルバム。過去2作はMOTT THE HOOPLEやBRITISH LIONS、イアン・ハンターのカバーが中心だったのに対し、今作は全12曲中11曲がオリジナル曲。過去の作品と作風が逆転した、初のオリジナルアルバムとなります。

DOWN 'N' OUTZはジョーのほか、THE QUIREBOYSのポール・ゲリン(G)&ガイ・グリフィン(G)、元VIXENのジェア・ロス(B)、WAYWARD SONS、元TOKYO DRAGONSのフィル・マティーニ(Dr)、そしてキース・ウェア(Key)という6人からなる、いわゆる“スーパーバンド”のひとつ。もともとは先に挙げたMOTT THE HOOPLE周りのアーティストのカバーを楽しむためのサイドプロジェクトで、これまでに発表した2枚のアルバム(2010年の『MY REGENERATION』、2014年の『THE FURTHER ADVENTURES OF…』)も肩の力が抜けた歌と演奏を楽しむことができ、個人的にも気に入っていた2作品でした(これらは2016年に日本盤もリリース)。

前作から5年ぶりに制作された3rdアルバムは、こういった“カバーする対象”からの影響を色濃く表したオリジナルナンバーで占められており、ちょっと聴いただけでも「70年代のブリティッシュロックバンドの、隠れた名盤」的な匂いを感じ取れるはず。それくらいよく作り込まれた正統派ブリティッシュロック/グラムロックの後継作品なのです。

ジョーが歌っていることで、至るところからDEF LEPPARDとの共通点も見つけることができますが、あそこまで神経質な作り込みは皆無。ロックバンドならではのラフさを残しつつ、そこにQUEENやMOTT THE HOOPLEなど70年代中盤のブリティッシュバンドの優雅さや上品さ(または、ある意味での下品さ)を散りばめた楽曲の数々はさすがの一言です。「Last Man Standing」のような楽曲を聴くと、思わず涙が込み上げてくる……なんていうリスナーも少なくないのでは。

すべてが“ロック”というわけではなく、中には「Music Box」のようなトラディショナルなインスト曲も含まれているし、ゴスペルを思わせるコーラスが印象的な「Walking To Babylon」もある。そして、本作唯一のカバー曲である「White Punks On Dope」(過去にはMOTLEY CRUEもカバーしたTHE TUBESのカバー)があったりと、非常にバラエティに富んだ内容なのです。アメリカ産グラムロックのTHE TUBESですが、DOWN 'N' OUTZの手にかかれば違和感なくブリティッシュの流れで楽しむことができる。この流れも非常に面白かったです。

DEF LEPPARD周りの新作というよりは、古き良き時代のブリティッシュロックの後継者が発表した普遍性の高い1枚として気楽に向き合ってほしい良作。きっとこの先も暇さえあれば引っ張り出して聴きたくなる1枚だと思います。

 


▼DOWN 'N' OUTZ『THIS IS HOW WE ROLL』
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2019年11月25日 (月)

DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』(2018)

2018年11月末にリリースされた、DEF LEPPARDの最新グレイテスト・ヒッツ・アルバム。2枚組仕様とDISC 1のみの単品、同時期にデジタルリリースされたオリジナルのクリスマスソング「We All Need Christmas」を加えたアナログ盤の3形態が発売されました。

DEF LEPPARDのグレイテストヒッツ・アルバムはこれまでにも複数発表されておりますが、世界共通の収録内容という点においては本作が初めて。最初のベスト盤『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)は北米とヨーロッパで一部収録内容が異なりましたし、ヨーロッパ&日本向けの『BEST OF DEF LEPPARD』(2004年)と北米向けの『ROCK OF AGES: THE DEFINITIVE COLLECTION』(2005年)もリリース時期および内容が異なるものでした。

そこから13、4年ぶりに制作された新たなグレイテストヒッツ・アルバムは、2005年以降に発表された新録曲……カバーアルバム『YEAH!』(2006年)、オリジナル作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)、新曲入りライブアルバム『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)、最新オリジナルアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)、Spotify限定シングル『SPOTIFY SINGLES』(2018年)を加えた全35曲にて構成されています。

CD単品(1枚もの)および2枚組仕様のDISC 1は従来のグレイテストヒッツ同様、おなじみのシングルヒットをまとめたもの。そこに『SPOTIFY SINGLES』から「Personal Jesus」(DEPECHE MODEカバー)のリミックス・バージョンを追加した内容で、正直新鮮さは皆無。「Pour Some Sugar On Me」や「Rocket」がMV用に編集されたバージョンではなく、アルバム『HYSTERIA』(1987年)のテイクという点は過去のベストとは異なるところでしょうか。

となると、注目すべきは2枚組仕様のDISC 2ということになるわけでして。「Personal Jesus」以外の“2005年以降に発表された新録曲”はすべてこちらにまとめられており、というか“大ヒットしなかった曲”の総決算的な1枚とでも言えばいいのでしょうか(苦笑)。個人的にはこちらのディスクの内容が新鮮味を持って楽しむことができました。

実験作『SLANG』(1996年)からの楽曲をはじめ『DEF LEPPARD』からのシングル曲、「Promises」や「Bringin' On The Heartbreak」「Tonight」「Stand Up (Kick Love Into Motion)」といったDISC 1から漏れた80〜90年代の中ヒット曲、一般的には駄作として扱われる『X』(2002年)から唯一選ばれ佳作「Now」など、いわゆる“隠れた名曲”が満載なわけです。DISC 1が誰もが知る“DEF LEPPARDのパブリックイメージ”だとしたら、DISC 2は“DISC 1を通過した人に向けた、DEF LEPPARDのディープサイド”とでも言えばいいのかな。とにかく、これまで発表されたグレイテストヒッツ・アルバムの中では一番新鮮味を持って向き合えた1枚でした。

ちなみに、単曲配信された新曲「We All Need Christmas」はアコースティックベースの、シンプルなバラード。昨年よりDEF LEPPARDの過去作がデジタル配信開始となったことで、このように新曲を気軽に配信できるようになったのは、彼らのようにアルバム1枚に5〜10年近くかけてしまうバンドにとっては良い傾向なんじゃないでしょうか。「Two Steps Behind」の延長線上にあるこの曲、ストリングスをフィーチャーした美しいメロディは非常にリラックスして楽しめるもので、今後この季節になったら聴いておきたい1曲になるといいですね。

なお、本作のストリーミングバージョンは、『DEF LEPPARD』からの3曲を除いた全32曲入り。これはリリース元が異なったり契約上のあれこれが原因なんでしょうけど、今や個人でプレイリストを作れる時代。ここに改めて「We All Need Christmas」を含む全36曲の完全版を用意しましたので、こちらでお楽しみいただけたらと。

 


▼DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』
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2019年11月24日 (日)

KISS『LICK IT UP』(1983)

1983年9月に発表された、KISS通算11作目のオリジナルアルバム。日本盤は『地獄の回想』という邦題で、オリジナルの“被せジャケット”付きで同年11月にリリースされています。90年代に復活する“地獄”シリーズ、ひとまず本作で一度完結したようです。

当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ヴィニー・ヴィンセント(G)、エリック・カー(Dr)。オープニングトラック「Exciter」のリードギターでリック・デリンジャーがゲスト参加しています。「Lick It Up」(全米66位/全英31位)、「All Hell's Breakin' Loose」がシングルカットされ、アルバム自体は全米24位、全英7位という好成績を残しています。

本作で初めてメイクを落とし、素顔で活動を始めたことも話題となり、そのままセールスに反映されたようですね。と同時に、1983年というとQUIET RIOT『METAL HEALTH』DEF LEPPARD『PYROMANIA』とったHR/HMメガヒット作が誕生した記念すべき年。前作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)でHR/HM化したKISSにとってこのムーブメントは“満を辞して”と言えるものだったはずです。先見の明があったのか、ただ商売っ気が強かっただけなのか(主にジーンの)。

作風的には『CREATURES OF THE NIGHT』の延長線上にあるハード路線ですが、かっちりしすぎ&重すぎた前作よりも軽やかさ、しなやかさが増しているのが本作の特徴かな。また、先に挙げた「Lick It Up」のように“本来のKISS”らしいポップ&キャッチーな楽曲が含まれていることも、アルバム全体のバランスに良い作用を与えています。

全10曲中、ポールとジーンのリードボーカル曲の割合は半々。特にアナログA面(M-1「Exciter」からM-5「Gimme More」)はポールとジーンのボーカル曲が交互に置かれているので、素直に“楽しい”と思えるのでは。

一方で、アナログB面(M-6「All Hell's Breakin' Loose」からM-10「And On The 8th Day」)ポール曲2曲、ジーン曲3曲とまとめて置かれており、CDで考えると「Gimme More」からポール曲3曲、「Fits Like A Glove」からジーン曲3曲とかたまってしまっているのがちょっと……エゴなんですかね(笑)。ただ、ヘヴィメタル的なファストチューン「Gimme More」とロックンロール的ファストチューン「Fits Like A Glove」とそれぞれの色や姿勢の違いが楽しめるという点においては非常に興味深い内容。なにより、1曲1曲の出来が非常にクオリティ高いですしね。

また、ヴィニーのギタープレイも前作以上に自由度が高い(まあ前作はエース・フレーリーの影武者的存在でしたしね)。ソングライターとしても非常に優れておりましたし、本作をもってバンドを脱退してしまうのは非常に勿体ないと改めて思います。

ロックを聴き始めた時点で、すでにKISSはノーメイク期だったわけで、そんな自分にとってこのへんの作品はど定番中の定番なわけです。今となっては“70年代のロックンロール期こそKISS”と声高に言われ続けていますが、いえいえ。これこそ自分にとってのKISS原体験ですから。忘れちゃいけない良盤のひとつです。

 


▼KISS『LICK IT UP』
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FREDDIE MERCURY『NEVER BORING』(2019)

2019年10月上旬に発表された、フレディ・マーキュリーの最新ベストアルバムおよびボックスセット。CD単品のベストアルバムは6曲の最新リミックス&リマスター音源と「Time Waits For No One」未発表バージョンを含む全12曲から構成。ボックスセットはこのベスト盤に加え、フレディの初ソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)の最新リミックス&リマスター、『BARCELONA』(1988) の2012年オーケストラ・エディション、ミュージックビデオなどを収めたBlu-ray/DVD『NEVER BORING』と写真集にて構成されています。

今回はこのうち、最新ベストアルバム『NEVER BORING』について述べていきたいと思います。

フレディのベストアルバムは3年前にも『MESSENGER OF THE GODS: THE SINGLES』(2016年)がリリースされていますし、さらにさかのぼれば『LOVER OF LIFE, SINGER OF SONGS: THE VERY BEST OF FREDDIE MERCURY SOLO』(2006年)、『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』(1992年)といったコンピレーションアルバムも発表されています。オリジナルソロアルバムを『MR. BAD GUY』と『BARCELONA』の2枚と考えると、いかに編集盤が多いかに気づかされるはずです。

どれが決定版か、というのは視点によって異なると思います。例えば、シングルカットされた楽曲にこだわれば前回の『MESSENGER OF THE GODS: THE SINGLES』がベストですし、トータルバランスで言えば最初の『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』に対する思い入れが強い。語り手が変われば、それだけ異なる答えがあるわけですが、そこを踏まえても今回の『NEVER BORING』は『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』にも匹敵するバランスに優れた1枚ではないかと思います。

「The Great Pretender」から始まり「Made In Heaven」で締めくくる構成も良かったですし、何よりもフレディの歌とマイク・モーランのピアノのみで構成された「Time Waits For No One」未発表バージョンが素晴らしいのなんの。新たにリミックス&リマスタリングされた『MR. BAD GUY』からの打ち込み主体の楽曲(特に「I Was Born To Love You」とか)も「あれ、今までそんな音入ってた?」と驚かされるはずですし、これまでフレディの作品に散々接してきたリスナーにとっても新鮮な気持ちで向き合える1枚ではないでしょうか。

フレディ逝去後にQUEENを知ったリスナーにはソロバージョンの「I Was Born To Love You」はチープに聞こえるかもしれませんが、僕にとってはこっちこそが真の「I Was Born To Love You」。ノエビア化粧品のCMが脳内で再生できるくらいには思い入れが強いんです(笑)。

フレディが亡くなってからあと2年でまる30年。きっと2021年にはもっといろんなQUEENやフレディの秘蔵音源集や焼き直しベストアルバムが発表されるのかもしれませんが、もちろん“新曲”や“新作”が発表されることは二度とありません。こういう編集盤には生前のアーティストの意向が反映されているとは考えられませんが、悲しいかな、ファンはそういう作品が発表されるたびに手を出し、二度と叶わない“新作”に思いを馳せるわけです。

でも、こういう形で編集された既存の楽曲には何の罪もない。いろいろ複雑な思いはあれど、今日この日だけは素直な気持ちでこのアルバムと向き合いたいと思います。

 


▼FREDDIE MERCURY『NEVER BORING』
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2019年11月23日 (土)

POISON『POISON'D!』(2007)

2007年6月にリリースされた、POISONのカバーアルバム。スタジオ作品としては本作が、現時点での最新アルバムとなります(残念ながら、現在まで日本盤リリースはなし)。

1996年にC.C.デヴィル(G, Vo)がバンドに復帰し、新録5曲を含むライブアルバム『POWER TO THE PEOPLE』(2000年)、オリジナルアルバム『HOLLYWEIRD』(2002年)をそれぞれインディーズレーベルから発表。ライブ活動を精力的に続けることで動員を伸ばし続け、2006年にはデビュー20周年を記念した新録曲「We're An American Band」(GRAND FUNK RAILROADのカバー)を含むベストアルバム『THE BEST OF POISON: 20 YEARS OF ROCK』をリリースして全米17位という好記録を残しています。

そんな好状況を受け、先のベストアルバムから立て続けに制作されたのが本作。全13曲(デジタル盤のみ14曲)すべてが新録とはいかず、5曲(KISS「Rock And Roll All Nite」、THE WHO「Squeeze Box」、ジム・クロウチ「You Don't Mess Around with Jim」、LOGGINS AND MESSINA「Your Mama Don't Dance」、そして先の「We're An American Band」)が既発テイクとなりました。なので、カバー・コンピレーションという呼び方が正しいのかもしれませんね。

新録はデジタル盤のみ収録のジャスティン・ティンバーレイク「SexyBack」を含む全9曲。SWEET、デヴィッド・ボウイアリス・クーパー、TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERS、THE MARSHALL TUCKER BAND、THE ROMANTICS、THE ROLLING STONESTHE CARSと、2000年代のジャスティンの除けばすべて70年代の楽曲(THE ROMANTICSのみ1980年とギリですが)。つまり、POISONというバンドのルーツナンバー/アーティストということになるのでしょうね。既発の5強もすべて70年代前半の楽曲ですし、そういう意味ではトータル性の高い選曲だと思います。

POISONらしいという点においてはボウイやアリス・クーパー、SWEETといったグラマラスなバンドの存在が挙げられるでしょう。既発のKISS含め、これらのアーティストはバンドのパブリックイメージまんまなので、選曲含めまあ納得かな。

TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERSやTHE MARSHALL TUCKER BAND、あるいはジム・クロウチやLOGGINS AND MESSINAはバンドのフォーキーでソウルフルなパートを担っていると捉えることができるでしょう。特に、本作における「Can't You See」は3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)や4thアルバム『NATIVE TONGUE』(1993年)での路線に通ずるものがありますしね。

意外性という点においては、THE ROMANTICSやTHE CARSの存在が挙げられるのではないでしょうか。ニューウェイヴ流れのバンドですが、バブルガム・ポップ的立ち位置で考えると、実は意外とPOISONとの親和性も高い気がしますし。あ、ストーンズやTHE WHOはとりあえずやっておかないと、くらいのポジションでいいんじゃないでしょうか(笑)。

で、本作における最大の聴きどころって実はボーナストラック的立ち位置の「SexyBack」なんですよね。この曲の出来が非常に素晴らしくて、僕はリリース当時よくこの曲を自分のDJ時に使用したものです。思えばPOISONってHR/HMがラウド&ヘヴィやインダストリアル勢に押しつぶされそうになった時期も、一貫として自身のスタイルを崩さなかった珍しい存在なんですよ。そんな彼らが、いわゆるモダンなサウンドと融合したときどうなるのか……その答えがこの1曲に込められているような気がするんです。POISONらしさは皆無かもしれませんが(笑)、僕はこのカバー大好きなんですよね。

さて。そんなPOISONは本作以降、新曲や新録曲を一切発表していません。ブレット・マイケルズ(Vo)はソロ作を発表しているのですが……もはやバンドは集金ツアーのために必要不可欠な存在に成り下がってしまったのかな。それはそれでいいんだけど……1曲くらいは。ね?

 


▼POISON『POISON'D!』
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2019年11月22日 (金)

MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』(1998 / 2009)

MOTLEY CRUE、約4年ぶりにライブ活動再開。オフィシャルにて正式に、過去のツアー活動停止に関する契約書を“爆破にて破棄”したことがアナウンスされています(笑)。噂によると、2020年にDEF LEPPARDPOISONとともに北米ツアーを行うんだとか。

はい、予想通りの展開ですね(笑)。HR/HM系とプロレスの“辞めた/解散した/引退した”を真に受けてはいけません。特にこのオッさんたちの場合は、余計にね。

そもそも、2019年の流れ(自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』公開と、それに伴う新曲4曲入りサウンドトラックアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』リリース、1989年の大ヒット作『DR. FEELGOOD』のリリース30周年エディション発売など)を考えれば、いずれライブ活動も再開させるだろうことは予想の範疇内。そもそも、映画と新曲を制作している時点で、ライブのスケジュールも調整していただろうしね。わかります。

たぶんこの映画経由で初めてMOTLEY CRUEに触れたというビギナーも少なくないと思うんです。そんな人たちが今、ストリーミングサービス経由でまず最初にどのアルバムから手を出せばいいのか。もちろん、映画のサウンドトラックから入るのが筋でしょう。そこから、1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)から順々に聴くのか、あるいは最大のヒット作『DR. FEELGOOD』から入るのか、聴き方はそれぞれだと思います。

ただ、このバンドの場合、アルバムごとにスタイルを変えていますし、90年代に入ってからはその方向性がさらに激化していると思うのです。あれです、デヴィッド・ボウイQUEENでまず最初に聴くべきオリジナルアルバムで迷うのと一緒。だったら、最初にベストアルバムから入っていこう……そう思われる方も少なくないと思います。

MOTLEY CRUEは現在までに、ベストアルバムを3タイトル“正式”リリースしています。“正式”と付けたのは、バンド側が意図して発表したという意味で、レーベル側がバンドの意図せぬところで発表したタイトルも複数あるので、ここではそれらは省くことにします。

その3タイトルというのが、1988年リリースの初のグレイテストヒッツ・アルバム『GREATEST HITS』と、“オリジナル4”の再々結成を記念した2枚組ベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』(2005年)、そして2009年に発表された『GREATEST HITS』。このうち現在ストリーミングサービスで試聴できるのは2009年版の『GREATEST HITS』となっています。

『RED, WHITE & CRUE』に関しては過去に本サイトで取り上げているので、今回は『GREATEST HITS』と題した“内容の異なる”2つのグレイテストヒッツ・アルバムについて紹介したいと思います。

 

 

①1998年バージョン

モトリーはそれ以前、結成10周年を記念したコンピレーションアルバム『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991年)を発表していますが、これは純粋なベストアルバムではないので、Elektra Recordsを離脱した1998年の時点で廃盤扱いになっています。それに代わるように同年秋、新たに設立された自主レーベルMötley Recordsからの第1弾アイテムとしてリリースされたのがこのベストアルバム。ヴィンス・ニール(Vo)在籍時(『TOO FAST FOR LOVE』から『DR. FEELGOOD』までの5作と、『DECADE OF DECADENCE '81-'91』収録の新録曲、1997年の最新作『GENERATION SWINE』)の既発曲に、ボブ・ロックがプロデュースを手がけた新曲2曲「Bitter Pill」「Enslaved」を追加した全17曲入りとなっています。

ただ、グレイテストヒッツと謳いながらも「Live Wire」や「Too Young To Fall In Love」といった初期のMV制作楽曲は含まれておらず、代わりに当時からライブで再び演奏するようになった「Too Fast For Love」、インダストリアル調にリテイクした「Shout At The Devil '97」、『GENERATION SWINE』収録曲「Glitter」のリミックスバージョンなどを聴くことができます。

正直、当時はこの選曲に「いかにもアメリカ人が作った感覚」と思った記憶があります。それは新曲2曲から始まり、その後は年代などめちゃくちゃで、構成とか考えてるのかな?と感性を疑いたくなるような曲順にも表れているんじゃないかな。まあ、慣れるとこれはこれで嫌いじゃないんだけどね。

肝心の新曲2曲は、直前に『GENERATION SWINE』みたいにインダストリアル風アレンジなしの、どストレートなハードロック。ボブ・ロックを交えて制作したということは『DR. FEELGOOD』よ再び、という気持ちがあったのかもしれないけど、『GENERATION SWINE』を通過した当時のモトリーにはすでに戻れない過去となっていたようで。若干ダークさを残しつつも適度な爽快感を表現した「Bitter Pill」も、いかにも彼ららしいグルーヴィーなミドルチューン「Enslaved」も決して悪くはないけど、特別素晴らしいとも言い難い“アルバムの中の1曲”というつなぎ曲の印象。今思えば、このスタイルが10年後の『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)につながっていたのですね(この際『NEW TATTOO』のことは忘れよう)。

 


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2019年11月21日 (木)

OPETH『IN CAUDA VENENUM』(2019)

2019年9月末にリリースされた、OPETHの13thアルバム。前作『SORCERESS』(2016年)からちょうど3年ぶりに発表されており、前作の成功には及びませんでしたが本国スウェーデンで12位、ドイツで5位、イギリスで13位、アメリカで59位という数字を残しています。アメリカではここ4作でTOP30入りを果たしていただけに、最近の“ロック離れ”がこういった形で影響するとは……。

いや、これって単にアメリカ人がロックから離れているというよりは、アメリカ人には難解な内容だったのではないか? そんな気がしてきました。というのも、本作は英詞で歌われたオリジナル盤に加え、母国語であるスウェーデン語で歌ったバージョンの2形態を用意(バックトラック自体は一緒)。バンド結成30周年を前に、OPETHの面々……というより、フロントマンのミカエル・オーカーフェルト(Vo, G)が自身のルーツに立ち返った結果、こういった“濃い”作風になったのかもしれません。

ここ数作では初期のデスメタル的要素を排除し、70年代のプログレッシヴロックを彷彿とさせるメランコリックかつドラマチックな作品を発表してきた彼ら。本作も基本的作風は前作の延長線上にあるものの、ヘヴィさがここ数作の中ではもっとも高まっている印象を受けます。そういった意味では、特にこの2作(2014年の『PALE COMMUNION』、前作『SORCERESS』)でのオールドスクールなプログレッシヴロック路線を苦手としていたリスナーには入っていきやすい1枚と言えるでしょう。

こういった原点回帰……といってもデスメタル期まで戻るのではなく、現在の彼らの原点的1枚である『GHOST REVERIES』(2005年)を起点とした回帰路線は、まもなく結成30周年を迎える彼らが自身のキャリアを総括する意味も込められているのかもしれません。かつ、原点回帰を経て次の10年へ新たな橋を渡す。そういった意味も込められた、非常に重要な役割も用意されているのではないでしょうか。

それは、母国語で歌われた別バージョンが初めて用意されたことに象徴的です。同バージョンの制作は、本作制作に入る前にミカエルが子どもたちを学校に連れて行く間、バイリンガルのアルバムを作るとうアイデアを急に思いたし、即行動に移したことから実現したもの。英詞で歌われたオリジナルバージョンのわかりやすさは言うまでもありませんが、一方で耳慣れないスウェーデン語で表現された別バージョンもまた、このバンドが持つ神秘性を一気に高めることに成功しています。ストリーミングサービスでは両バージョンが個別配信されているので、言語の違いから受ける印象の変化含め、ぜひ2枚あわせて楽しんでもらいたいところです。

主にここ10年ほどのOPETHの集大成と言える、知的でメランコリックで攻撃的で神秘性が強くてトリッピーな側面の強い1枚。彼ららしさてんこ盛りの傑作。大半の楽曲が6〜8分と長尺ですが、緊張と緩和をうまく使い分けることで聴き手を決して飽きさせることのない、その技量の素晴らしさを存分に味わってみてください。繊細な音楽を楽しむことに長けた、日本人にこそ触れていただきたい1枚ですからね。

 


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2019年11月20日 (水)

VOLBEAT『REWIND, REPLAY, REBOUND』(2019)

2019年8月初頭に発売されたVOLBEATの7thアルバム。日本では数週遅れて、同年8月末に3曲のボーナストラックを追加した形でリリースされています。

本国デンマークで1位、アメリカでも最高4位という好成績を残した前作『SEAL THE DEAL & LET'S BOOGIE』(2016年)からほぼ3年ぶりの新作に当たる今作は、デビューから一貫して制作に関わってきたヤコブ・ハンセン(DIZZY MIZZ LIZZYPRETTY MAIDSAMARANTHEなど)がプロデュースを担当。それだけで、従来の彼ららしい“メタル+パンク+ロカビリー”なサウンドが期待できそうですが、今作ではバンドとして新境地を迎えています。

従来のロカビリー・メタル要素はそのまま維持されているものの、各曲ともスケール感が急激に大きくなっており、それに伴いメロディのキャッチーさも過去イチで親しみやすいものに進化しています。

それこそ、オープニングを飾る「Last Day Under The Sun」の“真っ当なロック”然としたスタイルに、従来の彼らを知る者なら誰もが驚くはず。続く「Pelvis On Fire」もその系統に含まれますし、特にアルバム序盤はそういう新境地が続くことから、人によっては拒絶反応を起こすかもれませんね。

とはいえ、そのポップさの中にはメタルの枠を飛び越えた普遍性が感じられ、全体的にルーツロック的な色合いがより強くなっている。いえ、もっと言ってしまえばゴスペルやソウルなど、ロック以前のルーツミュージックからの影響すら感じさせるものも多く、そういった挑戦はバンドが新たな周回に突入したことをうかがわせます。

とはいえ、USストーナーロックの雄CLUTCHのニール・ファーロン(Vo)をゲストに迎えつつ、ピアノやサックスをフィーチャーしたシンプルなロックンロール「Die To Live」や、EXODUSSLAYERでおなじみのゲイリー・ホルト(G)がダークでメタリックなソロを披露する「Cheapside Sloggers」など、ヘヴィロックファンが唸りそうな共演も収録された本作。一見さんのみならず従来のリスナーもしっかり囲い込もうとする姿勢、さすがです。そりゃあ嫌いになれないわな。

もはやメタルの枠では語りきれない大きな存在となったVOLBEAT。だからこそ、本作はこれまで彼らに触れてこなかったリスナーにこそ届いてほしい、新たな入門編的1枚になるはずです。

日本には2013年8月の『SUMMER SONIC』、翌2014年2月の単独公演で二度来日している彼らですが、今のところそれっきりなんですよね。本作で久しぶりに日本盤もリリースされたことですし、ぜひ本作を携えた再来日を来春あたりに期待したいところです。お待ちしております。

 


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2019年11月19日 (火)

PRETTY MAIDS『UNDRESS YOUR MADNESS』(2019)

PRETTY MAIDSが2019年11月初頭にリリースした、通算16作目のスタジオアルバム。

前作『KINGMAKER』(2016年)から3年ぶりの新作に当たりますが、前作制作中にバンドに正式加入したクリス・レイニー(G, Key)を初めて迎えた、ロニー・アトキンス(Vo)、ケン・ハマー(G)、レネ・シェイズ(B)、アラン・ソーレンセン(Dr)、クリスという5人編成での最初で最後の作品となります(というのも、リズムトラック録音後にドラムのアランがバンドを脱退してしまったため)。

ここ10年ほど、アルバム制作に携わっているヤコブ・ハンセン(DIZZY MIZZ LIZZY、VOLBEAT、AMARANTHEなど)がプロデュースを担当していることもあり、安心・安定のPRETTY MAIDS節炸裂しまくりの1枚。彼らに一度でもハマったことがあるリスナーなら、間違いなく楽しめる良作だと思います。

老いを感じさせないロニー・アトキンスのパワフルなボーカルと、その彼が歌うからこそ映えるグッドメロディ、ケン・ハマーのメロディアスでフラッシーな“らしい”ギタープレイ、キーボード兼セカンド・ギタリストを正式に迎えたことで、アレンジ含めて深みが加わったような印象を受ける、とにかく聴きどころの多い1枚。アルバム中盤に「If You Want Peace (Prepare For War)」といったアップテンポのメタルアンセムが1曲あるのみで、本当にミドルテンポの楽曲中心ですが、不思議と飽きが来ないのは各曲の完成度の高さがすべてを物語っているような気がしませんか?

個人的にはメジャーキーの「Firesoul Fly」や「Will You Still Kiss Me (If I See You In Heaven)」「Shadowlands」のような楽曲から受けるポジティブなイメージが、今このバンドが良好な状態にあることの象徴のように受け取れます(とかいって、ドラム抜けちゃったけど)。

あと、バラードが良いですね。先の「Will You Still Kiss Me (If I See You In Heaven)」や本編ラストを飾る「Strength Of A Rose」のような楽曲を説得力をしっかり持たせて表現できるのは、今の彼らならでは。もはや誰も、今の彼らに「Please Don't Leave Me」の幻影を求めたりはしないでしょう(はい僕ですね)。

ちなみに、日本盤にはオープニングトラック「Serpentine」のオーケストラ・バージョンをボーナストラックとして追加収録。こっちを本編に入れたらよかったのに……と思うほど良好な仕上がりなので、ぜひ聴き比べてみてはいかがでしょう。

これといって新鮮さもないし斬新な新境地も見受けられない、オールドスクールな正統派ヘヴィメタルですが、こういうバンドが30年以上にわたり活動を続けてくれているからこそ、今もシーンが続いており、血気盛んな若手が好き放題やれる。すべてはバランスなんですよね。これを素直に「良いね」「好き」と言い切れる自分でよかった。

2019年を代表する1枚……とは言わないまでも、ひたすら大音量で楽しみたい極上のヘヴィメタル作品です。

 


▼PRETTY MAIDS『UNDRESS YOUR MADNESS』
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2019年11月18日 (月)

ESKIMO CALLBOY『REHAB』(2019)

2019年11月初頭にリリースされた、ESKIMO CALLBOYの5thアルバム。前作『THE SCENE』(2017年)から約2年ぶりの新作となります。

前作での整理整頓された“進化”は本作でも拍車がかかっており、順調な形でバンドとして成長を重ねていることが伺えます。特にこのバンドは初期の頃、チャラさを売りにしていたところもあったと思うのですが、そのへんが前作あたりで希薄になりはじめ、本作では影を潜めているように思います。そこを良しと取るか否かで、このバンドに対する評価も少し変わってくるのかもしれませんね。

個人的には、前作でそのチャラ要素を消し始めたことで、このバンドならではの“絶対的な個性”が薄らいだ印象を受けたんですね。メロディセンスは相変わらず抜群ですし、そこで戦っていこうという前向きな意思も感じられたのですが、逆にそこだけで戦うにはロックバンドとして没個性すぎるんじゃ……とも思ったわけです。

では、この『REHAB』というアルバムでそこが完全に解消されたのかと言われると、答えはYESでもありNOでもあるのかな。

メロディセンスに磨きがかかり、またバンドアンサンブルの方向性的にも脱メタルコア、脱ポストハードコアを図ることで、よりメインストリーム寄りのサウンド/楽曲へと近づいた。ここに彼らがどこで戦おうとしているのか、その強い意思が感じ取れるはずです。実際、その完成度の高さはかなりのものがありますしね。

そう、アルバムとしての完成度は前作以上なんですよ、このアルバム。EDMを通過したメタル/ラウドロック、さらにそこからメインストリームのポップシーンへと接近した作品としては一級品だと思うんです。1曲1曲のコンパクトさ、スルスルと聴き進めてしまう“聴きやすさ”は過去イチですし。

では、そういった高品質なクオリティを維持することで、彼らは新たなバンドのコア……“これ”という個性を見つけ出すことができたのか。残念ながら、このアルバムを聴く限りではESKIMO CALLBOYならではの“これ”に、今回も気づくことができませんでした。ちょっと言い方は悪いですが……優等生すぎて、ぶっちゃけ「これ、誰がやっても良くないかい?」と思ってしまうわけです。ゴメンなさい、言い過ぎですね。

きっと、ほんのひとひねりだと思うんですよ。それができるかできないか、すべてはそこで決まってくる。だけど、彼らはまだそこを模索している最中……だけど、このままクオリティの高いアルバムを作り続けることで、彼らは必ず“これ”というものを見つけてくれるはず。だって、これだけ最高なアルバムを作ってくれたんですから。

常にこれだけ期待させてくれるという意味では罪作りなバンドですが、この先現状よりも大きなブレイクを果たすことで、間違いなくさらに上を目指せるバンドだと信じているので、今はこの良作を素直に楽しんで、彼らの“爆発”を今か今かと待ちたいと思います。

 


▼ESKIMO CALLBOY『REHAB』
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2019年11月17日 (日)

SODOM『AGENT ORANGE』(1989)

1989年6月に発売された、SODOMの3rdアルバム。本作が日本デビュー盤にあたり、本国発売から4ヶ月遅れの同年10月に前作『PERSECUTION MANIA』(1987年)と併せてリリースされています。

KREATORDESTRUCTIONとともに“ジャーマン・スラッシュ三羽ガラス”なんて呼ばれてきたSODOMですが、ほかの2組と比べると日本ではマニアックな印象が強いイメージがあります(って、自分が勝手に持っているだけかしら)。

とはいえ本作はリリース当時、西ドイツ(ええ、東西ドイツ統一前の作品ですから)のナショナルチャート37位にランクインし、10万枚以上のセールスを記録。この手のバンドとしては破格の成功を収めています。

当時のメンバーはトム・エンジェルリッパー(Vo, B)、フランク・ブラックファイア(G)、クリス・ウィッチハンター(Dr)という布陣。ファミリーネームがブラックメタルチックといいますか……実際、本作における彼らのサウンドはスラッシュメタル的に変幻自在なアンサブルと、トムのメロディを無視して吐き捨てるようなボーカルが特徴なわけで、特に後者はブラックメタルのそれにも通ずるものがあります(というか、ごく初期のSLAYER的ともいいますが)。

アルバムタイトルの“エージェント・オレンジ”とはベトナム戦争で米軍が用いた枯葉剤のことで、猛毒を含んでいたことから化学兵器と捉えることもできます。実際、本作のタイトルトラックは同枯葉剤や地上攻撃機AC-47に魅せられたトムが書き下ろしたもので、サウンドの攻撃性と相まってSLAYER「Angel Of Death」にも通ずる残虐さや冷徹さが伝わってきます。うん、80'sスラッシュメタルの名曲中の名曲。

そのほかの楽曲もとにかくアグレッシヴで、ミドルテンポでまったりした印象の「Magic Dragon」ですら途中からいきなりアホほどテンポアップしますから(しかもなんの予兆もなく、いきなり)。かと思えば、MOTÖRHEADを彷彿とさせる爆走ナンバー「Ausgebombt」があったり(思えばベースボーカルのトリオ編成はMOTÖRHEADまんまだし)、TANKのカバー「Don't Walk Away」があったりと終始飽きさせない構成。知的に計算されたアレンジのようで、実はそこまで考えられていない唐突さ。勢いのみで作っちゃった感が強いのに、実はいろいろ細かなところまで考えられている。そんな不思議な魅力を放つ本作は、間違いなくSODOMの代表作と断言できる1枚です。

サウンドプロダクション的には90年代以降、もしくはここ10年くらいの作品が数歩勝りますが、この狂気にはそれ以前の作品もそれ以降も叶わないし超えられない。KREATOR『EXTREME AGGRESSION』(1989年)、DESTRUCTION『RELEASE FROM AGONY』(1988年)と並ぶジャーマンスラッシュの名盤です。

 


▼SODOM『AGENT ORANGE』
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2019年11月16日 (土)

FATES WARNING『PERFECT SYMMETRY』(1989)

1989年8月中旬リリースの、FATES WARNINGの5thアルバム。本作が日本デビュー作となり、海外から1ヶ月遅れの同年9月下旬に発表されました。

彼らの所属レーベルであるMetal Blade Recordsが当時、日本ではポニーキャニオン流通だったこともあり、その後しばらくは同社から日本盤が販売されていましたが、のちに流通先がMercury Recordsに移ったことで日本盤もマーキュリー・ミュージック(のちにユニバーサル・ミュージック)へと発売元が移籍しております。僕が購入したのは、このマーキュリー盤のようです。

最初に聴いたアルバムは次作『PARALLELS』(1991年)で、思い入れが強いのもそちらになるのですが、前回、前々回と1989年リリースのプログレッシヴ・メタルが続いていたので、無理くり探してこちらをピックアップ(笑)。いや、これも好きなんですけどね。

実は彼ら、先の『PARALLELS』でダークさが増すなど若干路線変更することになります。まあ、言っちゃえば当時流行っていたQUEENSRYCHEあたりの路線に近くことになるわけですが、よくよく聴くと本作の時点でそのダークさが至るところから感じ取れる。つまり、この時点で進化はスタートしていたわけです。

とはいえ本作は、それ以前の『NO EXIT』(1988年)までに近いテクニカルメタル路線が軸にあるのも事実。変拍子を要所要所にぶち込んだアンサンブルはどこか数学的でもあり、そこにかっちり作り込まれたフレージングとレイ・アルダー(Vo)によるメタル的ハイトーンボイスが絡んでくる。つまり、80年代と90年代の要素をつなぐ橋渡し的な1枚。言っちゃえば、過渡期的作品であるわけです。

しかし、そう書くと「じゃあ本作は名盤の影に隠れた中途半端な出来なのでは?」という声が挙がりそうですが、全然そんなこともなく。前回のDREAM THEATERや前々回のVOIVODが好きな人ならなんとなく気に入ってもらえるんじゃないかというテクニカルなメタルとフュージョン的なバンドアンサンブルが同時に楽しめる良作に仕上がっています。

それは『WHEN DREAM AND DAY UNITE』でDREAM THEATERが試みたシンフォニック系のノリは似て非なるもので(どちらかというと3rd『AWAKE』に近いかも)、冷たさという点においてはVOIVODの『NOTHINGFACE』にも通ずるものがあるけどちょっと違う。つまり上記2組とも、あるいはQUEENSRYCHEとも異なる個性を放っているわけです。彼らにしてはストレートな「The Arena」みたいな楽曲もあれば、センチメンタルな序盤からひたすらひねくれた展開へと続く長尺曲「At Fate's Hands」もある。まあとにかく、しのごの言わずい聴いてみることをオススメします。

あ、本作には当時DREAM THEATERのメンバーだったケヴィン・ムーア(Key)がゲスト参加しているので、そのへんはドリムシっぽさを醸し出していると言えるかも(ほんの少々ですが)。

 


▼FATES WARNING『PERFECT SYMMETRY』
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2019年11月15日 (金)

DREAM THEATER『WHEN DREAM AND DAY UNITE』(1989)

1989年3月に発売された、DREAM THEATERのデビューアルバム。日本では1ヶ月遅れ、同年4月上旬に発表されています。

昨日紹介したVOIVOD『NOTHINGFACE』(1989年)同様、MCA Records傘下のMechanic Recordsから唯一リリースされた本作は、現在も在籍するジェイムズ・ラブリエ(Vo)加入にチャーリー・ドミニシ(Vo)が唯一参加した作品でもあります。

プロデュースはバンドとテリー・デイト(PANTERASOUNDGARDENOVERKILLなど)が担当。ミックスもテリー・デイトが手がけており、それもあってか次作『IMAGES AND WORDS』(1992年)以降の作品と比較すると線が細く、迫力が足りない印象を受けます。

また、ケヴィン・ムーア(Key)のシンセの音色が前時代的といいますか、若干シンフォニックメタル系のそれに近く、そこも次作以上との違い(というか違和感)となっているのかな。

ただ、楽曲自体は以降の“らしさ”にも通ずる要素が見え隠れし、ここでの実験をブラッシュアップすることでのちの『IMAGES AND WORDS』へとつながっていったことは、聴けば容易に想像できると思います。

とはいっても、そこはDREAM THEATERのこと。6分近いスリリングなインストゥルメンタル・ナンバー「The Ytse Jam」は最高にカッコいいですし、2ndアルバム以降もライブで披露される機会が少なくなかった「A Fortune In Lies」や約9分におよぶ組曲「The Killing Hand」、スラッシーかつグルーヴィーな「Afterlife」など、今聴いても存分に楽しめる楽曲は少なくありません。うん、逆にこっちのほうが好きってリスナーも少なくないんじゃないでしょうか。

ラブリエのヘヴィメタルシンガー的歌い上げは苦手(自分含む)だけど、ゲディ・リー(RUSH)を彷彿とさせる“ハイトーンだけど、どこか淡々としている”チャーリー・ドミニシの歌唱は許せるっていうリスナー、少なくないのでは。自分もそうですから。

この軽くてペタペタしたドラムのサウンドプロダクションだけスルーできれば(いや、かなりハードル高いけど)、かなり楽しめる1枚だと思います。これはもはやリマスターの次元ではなく、今すぐリミックスしてもらいたい作品1位ですね(これまでも国内リマスター盤は発売されていますが、元の音質が音質なのでどうにもね)。

 


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2019年11月14日 (木)

VOIVOD『NOTHINGFACE』(1989)

1989年10月リリースの、VOIVOD通算5作目のオリジナルアルバム。MCA Records傘下のMechanic Recordsから(ドイツのみNoise Recordsから)発表され、日本盤は同年12月にワーナーミュージックから発売されました(その後、MCAの権利がワーナーから離れ、現在はユニバーサルミュージックから発売されています)。

3rdアルバム『KILLING TECHNOLOGY』(1987年)あたりから一気に評価を上げていたVOIVODが、満を辞してメジャーレーベルから発表した第一弾作品は、2000年代以降も彼らの作品を手がけることになるグレン・ロビンソン(ANNIHILATOR、GWAR、NASHVILLE PUSSYなど)を新たなプロデューサーに迎え制作されたもの。過去のスラッシー&ノイジーな諸作と比較すると非常に整理されたサウンドが印象に残り、テクニカル・スラッシュメタルやプログレッシヴ・メタルの範疇に属するのも納得の仕上がりです。

僕が最初に触れたVOIVODのアルバムも本作でした。が、初めて聴いたのはリリースから1年以上経ってから、次作『ANGEL RAT』(1991年)発売タイミングだったと記憶しています(確か『ANGEL RAT』を買いにCDショップに向かったら売っておらず、前作『NOTHINGFACE』を購入した気が)。けど、結果としてこのアルバムから入って正解だったかなと思っています。

今聴くと(メジャーのわりに)チープさが否めないサウンド・プロダクションではありますが、緊張があってタイトな演奏&アンサンブルと、どこかひんやりしたボーカルと音の質感は当時の自分にはかなり好みでした。ちょっと例えが正しいかわかりませんが、“RUSHを通過した『…AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)期のMETALLICA”みたいな。そういう印象を受けたんです(そもそも当時、『…AND JUSTICE FOR ALL』自体が当時RUSHと比較されていた気がするので、いろいろ間違えている気がしないでもないですが)。

あと、プログレッシヴな楽曲が大半にも関わらず、どの曲も6分を超えていないのも聴きやすさにつながっているのかな。ほぼ6分という楽曲(「The Unknown Knows」や「Missing Sequence」)もあるものの、基本的には4〜5分台で比較的コンパクトにまとめられていますし。全9曲で45分というトータルランニングは、当時としても至極まっとうなものだと思いました。

初期PINK FLOYDのカバー「Astronomy Domine」など注目ポイントは多数ありますが、オープニングの「The Unknown Knows」からラストの「Sub-Effect」までのすべてがピークだと思っているので。緊張感を持続させながら、至高の45分を楽しんでいただけたらと思います。

その前に、MCA時代の3作品……『NOTHINGFACE』と『ANGEL RAT』、そして『THE OUTER LIMITS』(1993年)を早く国内でもストリーミング解禁していただけたらと。

 


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2019年11月13日 (水)

MICHAEL SWEET『TEN』(2019)

2019年10月上旬にリリースされた、マイケル・スウィートSTRYPER)の8thソロアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて、同年11月上旬に発売されています。

タイトルは10作目を表すってことで『TEN』なのかな。ジョージ・リンチとのSWEET & LYNCH名義の2作を含めると10作目ですしね。にしてもこの人、2013年から毎年何かしらアルバムを発表しているんですよね。2013年はSTRYPERで2作(リメイクアルバム『SECOND COMING』とオリジナルアルバム『NO MORE HELL TO PAY』)、2014年はソロアルバム『I'M NOT YOR SUICIDE』、2015年はSWEET & LYNCHで『ONLY TO RISE』とSTRYPERで『FALLEN』、2016年はソロ名義の『ONE SIDED WAR』、2017年がSWEET & LYNCHでの2作目『UNIFIED』、2018年はSTRYPERの最新作『GOD DAMN EVIL』、そして今年はこのソロアルバム。老いてなお盛ん。

さて、今回のソロアルバムですが、全12曲中11曲にフィーチャリングアーティストとしてゲストプレイヤーを迎えて制作しています。その内訳もジェフ・ルーミズ(G / ARCH ENEMY)、Marzi Montazeri(G / EXHORDER、ex. PHILIP H. ANSELMO & THE ILLEGALS)、ガスG.(G / FIREWIND)、ジョエル・ホークストラ(G / WHITESNAKE、ex. NIGHT RANGER)、トレイシー・ガンズ(G / L.A. GUNS)、リック・ワード(G / FOZZY)、トッド・ラ・トゥーレ(Vo / QUEENSRYCHE)、ウィル・ハント(Dr / EVANESCENCE)などと、とにかく豪華なメンツ。思えば前作『ONE SIDED WAR』にもウィル・ハントやジョエル・ホークストラは参加していたので、おなじみのメンツって感じですかね。

本作、元々は10曲入りの構成が基本で、「With You Till The End」と「Son Of Man」の2曲がボーナストラック扱いだったので、本来は10曲入りだから『TEN』って意味だったのかな。今となってはどうでもいい話ですが。

気になる中身ですが、2曲を除いてすべてマイケル・スウィート単独で書き下ろしたオリジナル曲。残り2曲もマイケルとジョエル・ホークストラとの共作なので、まあ全曲マイケルのオリジナルと言い切っても間違いではないでしょう。なので、従来のソロ作品の延長線上にある“メタリックで、かつポップで親しみやすいHR/HM路線”をキープしています。ファストナンバーやミドルヘヴィ、バラードとバランスよく配分されており、どの楽曲もツボを心得た作風です。が、最近のSTRYPERよりもシンプルさが際立つ楽曲が多い印象も。そこで好き嫌い(いや、嫌いはないな。好みから外れるくらいか)が分かれるかも。

ゲストプレイヤーに関しては……正直、“らしい”ものもあるし、別にクレジットがなければ気づかないといったものもある。セールスのための打ち出し方としては正しいんでしょうけど、個人的にはおまけ程度かな。とにかく曲が良くて、マイケルが力強く歌ってくれたらそれでよし。

そういった意味では、マイケルが関わる作品はどれも好きという人には間違いなく引っかかる1枚だし、STRYPERのように豪華なコーラスを重視するメロハー好きにはちょっと違うかな?と感じるんでしょうか。それはそれとして、純粋によく作り込まれたメロディアスハードロック作品のひとつであることには違いありません。うん、今回も力作でした。

 


▼MICHAEL SWEET『TEN』
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2019年11月12日 (火)

STRYPER『SOLDIERS UNDER COMMAND』(1985)

1985年5月にリリースされた、STRYPERの1stフルアルバム。日本では同年8月に発表されました。

デビュー作となった『THE YELLOW AND BLACK ATTACK』(1984年)は当初6曲入りのミニアルバム形式でしたが、のちに「My Love I'll Always Show」「Reason For The Season」などを追加した形で再発。こちらを1stアルバムと捉える方も多いようです。

とはいえ、STRYPERの人気や存在を決定づけたという点においては、本作『SOLDIERS UNDER COMMAND』に軍配が上がるのではないでしょうか(セールスなどトータル面では続く『TO HELL WITH THE DEVIL』なんでしょうけど)。

マイケル・ワグナー(ACCEPTDOKKENMETALLICAなど)をプロデューサーに迎えて制作された本作は、Enigma Recordsという当時さほど大きくなかったインディーズレーベルの制作にわりにはかなり完成度の高いヘヴィメタルアルバムに仕上がっています。彼らは次作『TO HELL WITH THE DEVIL』でミドルテンポの楽曲が軸の作風にシフトしてしまうのですが、本作に関しては疾走感の強いアップチューンも複数用意されており、メタルアルバムとしてはとてもバランス感に優れた構成/内容と言えるでしょう。

とにかく、オープニングを飾るタイトルトラック「Soldier Under Command」からしてパーフェクト。彼ら特有の美しいハーモニーもしっかり用意されており、メロディ自体は非常にキャッチーで親しみやすいものなのですが、ギターリフやソロプレイなどを含む演奏面でのアグレッシヴさが適度に保たれていることから、ヤワに感じることはゼロ。その流れから美メロ&美ハモの「Makes Me Wanna Sing」へと続いても違和感なしで、この爽快感こそがSTRYPERの醍醐味だと改めて実感することができるはず。

「First Love」や「Together As One」のような美しいバラードもあれば、メタリックで前のめりな「The Rock That Makes Me Roll」もポップな「(Waiting For) A Love That's Real」も軽やかな「Reach Out」もあるし、マイケル・スウィート(Vo, G)のハイトーンが印象的なミドルヘヴィ「Surrender」もある。ラストの「Battle Hymn Of The Republic」まで本当に捨て曲なし、完成度の高い美メロHR/HMアルバムだと断言できます。

確かに歌詞の面ではキリスト賛歌と呼べるような内容ばかりですし、「Soldier Under Command」にしても〈俺たちは神の使命を受けた兵隊だ〉って内容ですからね。普段ヘルやサタンだって歌詞にばかり触れてきた輩には敷居の高さを感じてしまうでしょうけど(笑)、これはこれで全然アリ。僕自身はクリスチャンでもなんでもありませんが、歌われている内容含めてスッと入ってくる、理解できるものなのでノー問題です。

とにかく、メロディックHR/HM作品として非常に高品質な1枚なので、偏見を捨てて一度触れてみてはいかがでしょう?(って言いながら、実は日本ではストリーミング配信されてないのですが。残念)

 


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2019年11月11日 (月)

IRON MAIDEN『POWERSLAVE』(1984)

IRON MAIDENが1984年9月にリリースした、通算5作目のオリジナルアルバム。全英2位、全米21位という成績を残しており、本作からは「2 Minutes To Midnight」(全英11位)、「Aces High」(同20位)というヒットシングルが生まれています。

ブルース・ディッキンソン(Vo)加入後3作目、そしてブルース、スティーヴ・ハリス(B)、エイドリアン・スミス(G)、デイヴ・マーレイ(G)、ニコ・マクブレイン(Dr)という黄金期の布陣が揃ってからは2作目となる本作は、プログレッシヴな大作志向に拍車がかかった最初の1枚。当時アナログでA面に5曲、B面に3曲でトータル51分強というトータルランニングで、確かそれまでの作品は46分テープを使っていたのに今作から54分テープを使うようになった記憶が強く残っています(今やどうでもいい話ですが。苦笑)。

本作というと、やはりオープニングを飾る名曲中の名曲「Aces High」と、それに続くキラーチューン「2 Minutes To Midnight」という2大シングルの存在感の強さにより、アルバムとしても名盤という印象が強く持たれているような気がします。というか、この2曲の完成度が突出しすぎていて、そこにアルバム全体の評価がボカされてしまっている印象も無きにしも非ず、と言いますか。僕自身、実はこの“マジック”に長い間翻弄され続け、本作に正当な評価を下せずにいたんです。

確かに良いアルバムなんですよ。サウンドの質感も前作『PEACE OF MIND』(1983年)までと異なり、一気に向上したイメージがありますし、80年代後半に彼らが歩むことになる大作志向の第一歩としてはかなり上出来な内容だとも思うんです。けど、すべての楽曲が本当に「Aces High」や「2 Minutes To Midnight」と並ぶ完成度の高さを誇る1枚なのか……そこに関しては、聴くタイミングによってYESでもあり、NOでもあったのは確か。

名曲2曲に続くのがインスト曲「Losfer Words (Big 'Orra)」という構成も当時は謎でしたし、それに続くアップチューン「Flash Of The Blade」も彼らにしては非常にシンプルで薄味に感じられた。続く「The Duellists」も然り。アナログA面に関しては冒頭2曲の出来が突出していたがために、その後の3曲のインパクトがどうしても薄味に思えて仕方なかったんです。これに関しては、正直異論はないんじゃないでしょうか。

ですが、6曲目以降……アナログB面の評価によって、本作の楽しみ方は大いに変わってくるんですよね。僕は前半のインパクトのせいで、正気後半をそこまで真剣に聴き込んでこなかったのも事実でして。だって、3曲で26分という構成は気軽に聴けるものではないですものね(苦笑)。

とはいえ、改めてちゃんと聴くと「Back In The Village」はキャッチーさがしっかり備わったアップチューンで、「Aces High」ほどではないものの、以降のメイデンらしさはしっかりここで確立されていたことに気づかされる。そして7分強におよぶタイトルトラック「Powerslave」と、約14分にわたる大作「Rime Of The Ancient Mariner」。この2曲はガキの頃こそ長尺すぎて(その濃ゆさに)追いつけなかった自分がいたわけですが、余裕を持って音楽を楽しめる年代になればなるほど、その奥深さや作り込みのこだわりに圧倒されることになるわけです。

で、幼い頃は全体としての評価は低かったこのアルバム。気づけば自分内でどんどん評価は高まっていき、今や上位クラスに入るお気に入りの1枚となっているわけです。確かに、その後の『SOMEWHERE IN TIME』(1986年)『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』(1988年)に比べたら一歩劣る出来かもしれませんが(いや、『SOMEWHERE IN TIME』とはどっこいどっこいかな)、それでもこの3作の並びは彼らの80年代中盤から後半を語る上でかなり重要なのではないかと。

頭2曲と後半3曲の完成度はかなりのものがある、今に至る“ディッキンソン's メイデン”の真の意味での幕開けを飾る1枚。2020年5月に控える4年ぶりの来日公演を前に、ぜひじっくり楽しんでほしいところです。

 


▼IRON MAIDEN『POWERSLAVE』
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2019年11月10日 (日)

GAMMA RAY『HEADING FOR TOMORROW』(1990)

1990年2月にリリースされた、カイ・ハンセン(ex. HELLOWEEN)率いるGAMMA RAYの1stアルバム。日本盤は数週遅れて同年3月に発売されています。

健康上の問題もあり「これ以上長期のツアーに加わるのは厳しい」という理由からHELLOWEENを1989年1月に脱退したカイ。それから1年でこのGAMMA RAYのアルバム発売まで漕ぎ着けていることを考えると、脱退自体はもう少し前から計画されていたこと、当初はソロアルバムの予定だったこの『HEADING FOR TOMORROW』の準備(曲作り)もその頃から手がけていたのでしょう。

事実、このアルバムの日本盤は当初KAI HANSEN名義のソロプロジェクト第1弾アルバムとしてリリースされていますし(カイとフロントマンのラルフ・シーパースが映ったジャケットの上に箱型のケースを被せ、そこに“KAI HANSEN / HEADING FOR TOMORROW”としっかり書いてしまっているという)。そのほうが売り出しやすい(HELLOWEENファンにも伝わりやすい)でしょうし。

結果としてはパーマネントバンドとなったGAMMA RAYですが、確かに本作レコーディングの時点ではプロジェクト色の強いものだったと思うんです。事実、レコーディングにはウヴェ・ヴェッセル(B)、マティアス・ブルヒャルト (Dr)が参加していますが、その後のツアーではウリ・カッシュ(Dr)に交代していたり、アルバムにはゲスト名義だったディルク・シュレヒター(G)もツアーから正式参加していますしね。

そんなアルバムの中身ですが、これがもう『守護神伝』シリーズにおけるHELLOWEENの正統的後継作品なわけです。いわゆる“ジャーマンメタル のパブリックイメージ”をそのまま継承しつつも、より純度の高い王道ヘヴィメタル路線を極めているといいますか。しかも、そういった楽曲をラルフ・シーパースというロブ・ハルフォードにも似た歌声/歌唱スタイルを持つシンガーが歌うわけですから、悪いわけがない。カイもさぞ制作が楽しかったんじゃないかな。それが伝わってくる内容ですしね。

「Lust For Life」や「Heaven Can Wait」などといった『守護神伝』タイプの楽曲もあれば、「Money」のように初期HELLOWEENを思わせる楽曲もあるし、「Silence」みたいなピアノバラードも存在する。さらには14分におよぶ大作「Heading For Tomorrow」もしっかり用意されており、それまでのHELLOWEENファンやジャーマンメタル愛好家、さらには正統派HR/HMファンにまでアピールする内容になったのではないでしょうか。

GAMMA RAYは作品を重ねていくごとに、その音楽性をより濃厚で、カイのルーツに立ち返った作風へと昇華させていきます。それは4作目『LAND OF THE FREE』(1995年)からカイ自身が再びボーカルを担当するところも大きかったのでしょう。それ以降の作品も悪くはないのですが、個人的にはラルフが歌っていた時代が非常に好きでして。思い入れでは3rdアルバム『INSANITY AND GENIUS』(1993年)までなんですよね……。

 


▼GAMMA RAY『HEADING FOR TOMORROW』
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2019年11月 9日 (土)

HELLOWEEN『PINK BUBBLES GO APE』(1991)

HELLOWEENが1991年3月にリリースした通算4作目のオリジナルアルバム。日本では契約の関係上、1年遅れの1992年3月にようやく発売されています。

前作にあたる『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』(1988年)発表後、オリジナルメンバーのカイ・ハンセン(G, Vo)がバンドを脱退。1989年に行われたジャパンツアーには後任のローランド・グラポウが参加した新体制にて実施されました。

また、『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』リリース前後からバンドを取り巻く状況が好転します。IRON MAIDENなどを手がけるマネジメントSanctuaryと新たに契約、その流れからメジャーのEMIとのレーベル契約も獲得し、新体制による次作制作に取り組むことになります。

プロデューサーにクリス・タンガリーディス(BLACK SABBATHJUDAS PRIESTTHIN LIZZYなど)、アートワーク担当にHIPGNOSISの一員だったストーム・トーガソンを迎えて制作された今作は、そういった要素からも伺えるメジャー感の強い1枚。そのメジャー感は良くも悪くも“世間一般のジャーマンメタル のイメージからの脱却”という形に表れており、多くのHR/HMファンを困惑させることになるのでした。

カイ・ハンセンというバンドのソングライティング面における支柱のひとつを失ったHELLOWEENは、当然のようにマイケル・キスク(Vo)&マイケル・ヴァイカート(G)の2頭体制になるわけですが、特に本作に関してはキスクが全11中8曲のソングライティングに関わっており(うち4曲は単独名義での制作)、ヴァイカートは2曲のみ制作に関与(単独制作は「Number One」1曲のみ)。と同時に、ローランド・グラポウが4曲の制作に関わっており(うち2曲が単独制作)、早くもその個性をバンドに反映させ始めています。

確かに本作はヘヴィメタルアルバムだと思います。が、その向かう先が過去2作の『守護神伝』シリーズやカイ・ハンセンが歌っていた初期とは異なるもので、もっと広い地平を目指していることが伺えます。それがシンプルでソリッドな作風に反映されることで、従来の“ジャーマンメタル HELLOWEEN”を愛するリスナーから反感を買うわけです。

また、キスク自身がポップな作風を好む人間であること、どうやらステレオタイプのHR/HMから距離を置こうとしている人間であることなどが、このへんから表出し始めます。それが「Mankind」や「Your Turn」のような新しいタイプの楽曲ににじみ出ているわけです。アルバム自体はスピードメタル的ナンバーが数多く含まれているものの、特に後半に進むにつれて実験的な楽曲が増え始めます。そこに僕はPINK FLOYD、あるいはQUEENSRYCHE的な香りを感じるのですが……それはアートワークだけの問題ではないと思いますし、実際ソロになってからのキスクの作風を考えると(今となっては)それも頷けるものがあるではないでしょうか。つまり、メジャー化したHELLOWEENを普遍性と知的さを持つ、さらに一段上のバンドに仕立て上げようとしたんじゃないか。それが“脱ジャーマンメタル”であり、さらに言えば“脱ヘヴィメタル”だったのかなと。そのへんは続く『CAMELEON』(1993年)でより明確になるわけですが。

当時はいろいろ言われた1枚ですが、今聴くとそこまで悪いか?と感じる“隠れた良作”。確かに80年代半ばのHELLOWEENをイメージして接すると痛い目を見ますが、これはこれでよく作り込まれたHR/HMアルバムだと思います。

なお、先に書いたように本作は日本盤が発売されるまでに約1年を要しているのですが、これは1991年のリリース直前に前所属レーベルのNoise Rocordsが契約違反だと裁判を起こしたため、イギリス以外でのリリースにストップがかかってしまったため。確か1991年3月頃の『BURRN!』誌ではHELLOWEENが表紙を飾り本作について誌面で語っていましたし、アルバム発売の広告も載っていた記憶があります。が、上記のような理由で一部で出回ったUK盤を先に購入せざるを得ない状況になってしまったわけです(ちなみに、日本のみならずドイツやアメリカなど、イギリス以外の国では1992年3月に一斉リリース)。

それも影響してか、本作はチャート的に芳しい記録を残していません。『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』の独5位/英24位/米108位に対し、今作は独32位/英41位止まりでアメリカにいたってはチャートインせず。せっかく状況が良かったのに結果を出せなかった不運な1枚でもあるわけです。

 


▼HELLOWEEN『PINK BUBBLES GO APE』
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2019年11月 8日 (金)

UGLY KID JOE『AMERICA'S LEAST WANTED』(1992)

UGLY KID JOEが1992年9月にリリースした1stフルアルバム。

前年秋に6曲入りEP『AS UGLY AS THEY WANNA BE』をインディーズから発表していた彼らですが、年明け1991年春に同作からのシングル「Everything About You」が全米9位の大ヒットに。同作も最高4位、200万枚を超えるヒット作になったことから、そのままメジャーのMercury Recordsと契約を交わし、猛スピードでフルアルバムを完成させます。

マーク・ドッドソン(ANTHRAXMETAL CHURCHSUICIDAL TENDENCIESなど)をプロデューサーに迎えて制作された本作は、良くも悪くも“1992年という時代性”が反映された興味深い1枚となっています。

そもそもUGLY KID JOEはHR/HMバンドなのか、あるいはグランジと並列で語られるべきオルタナティヴ・ロックバンドなのか。当時はHR/HMの枠で語られていましたが、そのヴィジュアルはスラッシュメタル以降グランジ未満といった過渡期的なもので、実は“グランジ/モダン・ヘヴィネス以降”の枠で語るべき存在なのではと個人的には思っています。明らかにSOUNDGARDENALICE IN CHAINSからの影響が伺える楽曲も含まれていますしね。

また、グルーヴィーなリフ&リズムを重視した楽曲群は明らかにモダン・ヘヴィネス以降のそれだし、跳ねたリズムを用いたファンクロック的アレンジはレッチリ以降のそれ。中にはサイケ色が感じられる楽曲も複数あり、そのへんは『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)以降の流れを汲むものなのかなと。

そう、実はこのアルバムって『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』以降の作品でもっともあの空気感を体現した“HR/HMサイドからの回答”なんじゃないかという気がするんです。このユルさはメタルのそれではなく、確実にレッチリ以降のそれなんじゃないかなって。いかがでしょう?

とはいいながらも、プロデューサーの人選によるものなのか、「Goddamn Devil」にはロブ・ハルフォードがフィーチャーされていたり、SUICIDAL TENDENCIESのディーン・プレザンツ(G)がゲスト参加していたりと、鋼鉄要素も存分に味わえます(と同時に、JANE'S ADDICTIONのスティーヴ・パーキンスもゲスト参加しているので、その流れで考えても先の“レッチリ以降”につながるのかなと)。

全米6位の大ヒットとなったハリー・チェイビンのカバー「Cats In The Cradle」や、MVも制作されたグルーヴメタル「Neighbor」「So Damn Cool」、前EPからの流用となる「Everything About You」など初期の代表曲はここでほとんど楽しめるので、まずはこれを聴いておけば問題ないかと。むしろ、これ以外に聴くべき作品があるのかというと(以下略)。

当時は時代の徒花的存在として相当バカにされたバンドですが(もちろん今も重要視されていませんが)、上に書いた“『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』のHR/HMサイドからの回答”という観点で触れると違った見方ができる、今となっては歴史的価値の高い1枚だと思っています。

 


▼UGLY KID JOE『AMERICA'S LEAST WANTED』
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2019年11月 7日 (木)

STEVE STEVENS『ATOMIC PLAYBOYS』(1989)

1989年秋にリリースされた、スティーヴ・スティーヴンス(G)初のリーダーアルバム。

ビリー・アイドルの相方として3rdアルバム『WHIPLASH SMILE』(1986年)およびシングル「Mony Mony」(1987年)まで活動をともにし、個人としても映画『トップガン』(1986年)のサウンドトラックで「Top Gun Anthem」をプレイしたり、マイケル・ジャクソンのメガヒットアルバム『BAD』(1987年)で個性的な演奏を披露したりと活躍した彼ですが、ビリーとのコンビを解消して初めて制作されたアルバムは完全なるソロ作品ではなく、ATOMIC PLAYBOYSというバンド形態として発表されたものでした。

レコーディングに参加したのはスティーヴのほかペリー・マッカーティ(Vo)、フィル・シュレー(Key)、トミー・プライス(Dr)、アントン・フィグ(Dr)、カシム・サルトン(B)などといった“知る人ぞ知る”名手ばかり。フィル・アシュリーやトミー・プライスはビリー・アイドルでのバンドで活動をともにした旧知の仲。ペリーは本作のプロデューサーであるボー・ヒル周りの人選でしょう(クレジットには当時すでにWINGERでデビューしていたキップ・ウィンガーや、当時ボー・ヒルの嫁だったフィオナの名前も)。

さて、本作の内容ですが……ハードロック寄りの派手なギタープレイを信条としたスティーヴらしく、非常に派手な楽曲が揃った1枚に仕上がっています。ビリー・アイドル自体はハードロックというよりはパンク以降のニューウェイヴを通過した若干ハードなロック/ポップスという音楽性でしたが、本作はそこに加えてハードロック色を強めた楽曲も多数含まれているので、HR/HMリスナーの耳にも十分に耐えうる内容となっているはずです。

事実、MVも制作されたオープニングトラック「Atomic Playboys」を初めて聴いたとき、誰もがリリース当時「そうそう、スティーヴ・スティーヴンスにこういう曲をプレイしてほしかった!」と思ったのではないでしょうか。1989年という時代性を反映させたハードロックサウンドと、ビリー・アイドルとの経験が反映されたクールさが共存するこの曲は、あの時代のステーヴにしか表現できないものだと思います。

が、2曲目にはブラスをフィーチャーしたAOR寄りのポップロック「Power Of Suggestion」、3曲目にはのちにDEF LEPPARDもカバーしたSWEETの名曲「Action」が飛び出したりと、一筋縄ではいかないバラエティに富んだ内容で、そのへんもスティーヴ・スティーヴンスらしいといいますか。

以降も“いかにもHR/HM”なアップチューン「Soul On Ice」や、ビリー・アイドルっぽいんだけどキーや歌メロはハードロック的な「Crackdown」、アダルトな空気を漂わせたファンクロック「Evening Eye」、スティーヴが唯一ボーカルを担当するLAメタル・チックな「Woman Of 1,000 Years」、スティーヴのテクニカルかつメランコリックなアコースティックギター演奏を堪能できるインスト「Run Across Desert Sands」など、多彩な楽曲群を楽しむことができます。

アルバムのアートワークにはスティーヴとペリーの2名しか載っていませんが、同作を携えたツアーはバンド形態で行われていたので、スティーヴ自身は本作以降もバンドとして続けていくつもりはあったんでしょうね。しかし、気分屋のスティーヴらしく(笑)、バンドは1年と経たずに空中分解。その後、スティーヴはマイケル・モンローJERUSALEM SLIMを結成するもアルバム発売前に脱退し、MOTLEY CRUEを脱退したヴィンス・ニールのバンドに加わり『EXPOSED』を完成させます。

ATOMIC PLAYBOYSとしては1989年末に行われた東京ドームでのカウントダウンイベント(ここにはマイケル・モンローも出演)で来日予定でしたが、直前にキャンセル(代わりにLOUDNESSが出演)。その後解散しているので、ATOMIC PLAYBOYSでの来日は一度も叶いませんでした。生で観てみたかったなぁ……。

 


▼STEVE STEVENS『ATOMIC PLAYBOYS』
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2019年11月 6日 (水)

THUNDER『THE GREATEST HITS』(2019)

2019年9月下旬に発表された、THUNDER結成30周年を記念したベストアルバム。2枚組仕様の通常盤とボーナスディスク付き3枚組特別仕様、アナログ盤の3形態が用意されており、今年1月発売の新作『PLEASE REMAIN SEATED』同様に日本盤のリリースは今のところ予定されておりません。

THUNDERのベストアルバム/コンピレーションアルバムはこれまでも多数リリースされていますが、その大半がEMI在籍時(1989年〜1995年頃)のアルバム3作品を中心にしたもの。かつ、最初のベスト盤『THEIR FINEST HOUR (AND A BIT)』(1995年)以外はバンドの意図とは別に、レーベル側が勝手に制作・発表していたものでした。

もちろん、THUNDERはEMIから離れた4thアルバム『THE THRILL OF IT ALL』(1997年)以降もレーベルをいくつか変えながらアルバムを多数発表しています。特にここ日本では『THE THRILL OF IT ALL』から二度目の解散時ラスト作となった9thアルバム『BANG!』(2008年)までがビクターからのリリースでしたので、その時期の作品をまとめようと思えばまとめられるはずなのですが、なかなかこの頃の音源をまとまった形で聴くことは叶いませんでした。

そこで、今回のベスト盤です。先にも書いたとおり、結成30周年を記念して発表されたものですので、その内容もキャリアを総括したものとなっており、EMI時代+4thアルバム『THE THRILL OF IT ALL』&5thアルバム『GIVING THE GAME AWAY』(1999年)と最初の解散前までの楽曲をまとめたDISC 1、2000年代の再結成、および二度目の再結成以降の楽曲を総括したDISC 2にて構成されています。基本的には既発曲ばかりで、特にDISC 1は過去のベストアルバムと被りまくりの選曲なので、すべてのオリジナルアルバムを所有しているリスナーにとっては購入にまで及ばない1作かもしれませんが、「Love Worth Dying For」や「Living For Today」「Just Another Suicide (You Wanna Know)」といった90年代の隠れた名曲、および2000年代の楽曲を手軽に楽しめるという点においては非常に便利なコンピレーションアルバムではないでしょうか。

そんな中、オリジナル作をすべて聴いているようなファンをも唸らせるのが、本作が初CD化となる「Your Time Is Gonna Come」。ご存知LED ZEPPELINのカバーですが、これは『PLEASE REMAIN SEATED』制作時にレコーディングされたアウトテイクとのことで、それもあってか非常にリラックスした空気感が伝わってくる今の彼ららしい仕上がりとなっています。

また、特別仕様にのみ付属のDISC 3には『PLEASE REMAIN SEATED』リリースを記念して今年1月18日に行われたアコースティックライブから、計6曲が収められています。「Bigger Than Both Of Us」「She's So Fine」「Blown Away」「River Of Pain」「Stand Up」は『PLEASE REMAIN SEATED』にも収められたリアレンジバージョンとなりますが、「Serpentine」(『WONDER DAYS』収録曲)のみ同作にも未収録となる貴重なアレンジ。このライブディスクは当然のように配信もされていないので、ぜひともフィジカル(CD)で購入していただきたいところです。

何度か解散/活動休止をしているバンドではありますが、この30年を振り返るとスタジオアルバムを12枚も発表しているロックバンドってそう多くないと思うんです。そんな勤勉なTHUNDERだからこその、バンドの成長/進化ぶりが伝わってくるこのベストアルバムはぜひいろんな人に聴いてほしいな。けど本作、残念ながらストリーミングサービスでは未配信。Spotifyのみ数曲欠けたプレイリスト形式で聴くことができますが、可能ならば盤として一家に1枚用意していただけたらと(笑)。

 


▼THUNDER『THE GREATEST HITS』
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2019年11月 5日 (火)

IN FLAMES『COLONY』(1999)

IN FLAMESが1999年5月に発表した、通算4作目のオリジナルアルバム。自国スウェーデンで初めてチャートイン(最高34位)した記念すべき1枚で、アメリカでも当時2万枚以上のセールスを残しています。

前作『WHORACLE』(1997年)がここ日本でも成功を収めた彼ら(僕も同作から本格的に彼らを聴くようになりました)。同作発表後にはその後長きにわたり在籍することになるピーター・イワース(B)が加入し、1998年初頭には念願の初来日公演も実現しましたが、帰国後にニクラス・エンゲリン(G)が解雇され、結成時からドラムを務めてきたビョーン・イエロッテがリードギタリストに転向。代わりにダニエル・スヴェンソンが加わり、アンダース・フリーデン(Vo)、イェスパー・ストロムブラード(G)ビョーン(G)、ピーター(B)、ダニエル(Dr)という黄金期ラインナップが完成します。

基本的には前作『WHORACLE』で掴んだひとつのスタイルをさらに推し進めたものですが、次作以降につながっていく「メロディック・デスメタルという枠からの離脱」の幕開けを飾った1枚とも言えます。もちろん、オープニングトラック「Embody The Invisible」などからもおわかりのように、メロディアスなツインリードギターを多用し、正統派ヘヴィメタル的な“わかりやすさ”を基盤に置いたアレンジはメロデスのそれなのですが、本作の楽曲はその“わかりやすさ”に拍車がかかり、当時我々がイメージしたメロデスの枠から少しはみ出し始めたのではないか……そんなことも思ったりしました。

その理由として、いわゆるクリーントーンで歌うパートが効果的に、かつ自然な形で取り入れられていることも大きいのではないでしょうか。前作ではDEPECHE MODEのカバーをしていましたが、その影響ではないでしょうけどちょっとゴシック調な「Ordinary Story」での感情を押し殺したような低音ボーカルや、「Coerced Coexistence」でのエモさが際立つクリーンボイス、さらには「Insipid 2000」のサビで飛び込んでくるメロウなボーカル……もうこれ、普通に歌っちゃえばいいじゃん!とツッコミを入れたくなるほど、自然と溶け込んでいるんです。

あとね、結果論になってしまいますが、本作での試みは多くのフォロワーたちを生み立つ結果につながったのではないでしょうか。それは、メロデス界隈への影響ではなく、そこを起点とした新たな波……ニューメタル以降のNew Wave Of American Heavy Metalへと脈々と受け継がれていくわけです。そして、当のIN FLAMES自身も『CLAYMAN』(2000年)を挟んで、続く『REROUTE TO REMAIN』(2002年)や『SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE』(2004年)でNWOAHMへと接近し、その完成形として『COME CLARITY』(2006年)を生み出すまでに至ります。

そういった意味での“産声”の1枚がこのアルバムなんじゃないかなと。過渡期の1枚と言えなくもないですが、この完成度は過渡期で済ませるには高すぎ。今の彼らみたいな終始歌メロ豊かな内容ではありませんが、2000年代中盤のUSメタルコアやモダン・ヘヴィメタルにこそ改めて触れていただきたい傑作です。

 


▼IN FLAMES『COLONY』
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2019年11月 4日 (月)

CYHRA『LETTERS TO MYSELF』(2017)

2017年10月にリリースされた、CYHRAのデビューアルバム。

CYHRAとは、AMARANTHEでクリーンボーカル・パートを担当していたジェイク・E(Vo)と元IN FLAMESのイェスパー・ストロムブラード(G)が新たに結成したバンド(プロジェクト)で、もともとジェイクはAMARANTHE在籍時からソロアルバムを計画しており、イェスパーもIN FLAMES脱退後にソロアルバムを制作しようとしていたところ、久しぶりに会った2人はそれぞれのソロについて話し合ったところ「じゃあ、一緒にやればいいじゃん」ということになったんだとか。やろうとしていたことが一致したわけですね。

結果、ジェイクは正式にAMARANTHEを脱退。イェスパーとのプロジェクトを本格化させ、ドラマーにアレックス・ランデンバーグ(ANNIHILATOR、LUCA TURILLI'S RHAPSODYなど)、ベーシストにIN FLAMES時代の盟友ピーター・イワースを迎え、この4人を軸にアルバム制作を開始。楽曲はジェイク&イェスパーが手がけ、イェスパーはギターのベーシックパートとメロディパート(ソロではなく)を中心にプレイし、ソロパートに関しては当時SHININGのメンバーだったオウゲ・ヴァロヴィルタがゲストプレイヤーとして演奏しています(その後、オウゲは正式メンバーとしてバンドに加入)。

AMARANTHEのメロディアスパートを担うフロントマンと、IN FLAMESのメンバー2人が参加していること、またアルバムジャケットの禍々しいアートワークから、聴く前は何となくメロデスからデスメタルの要素を差し引いたスタイルを想像したリスナーは少なくなかったはず……ってそれ、メロデスじゃなくてメロディアスなヘヴィメタルじゃんってツッコミはなしね(笑)。事実、僕も試聴するまではメロデスな方向を想像していたので。

で、公開されたリードトラック「Karma」はまさにその想像どおりの音。いや、純粋にカッコいい。ただ、バックトラックにメロデス的な要素は思ったよりもないよね。むしろ、後期IN FLAMESに寄ってるのかな。

アルバムを購入して、いざほかの楽曲も聴き進めていくと……あれ、めちゃめちゃカッコいいじゃん、これ。「Heartrage」も「Here To Save You」もすげえいい曲。だけどこれ、イェスパーの存在意義はどこにあるんだろう……と正直思ってしまいました。メロディにしろアレンジにしろ、明らかにAMARANTHEの流れを汲むものだし、ソロに関してはすべてオウゲが弾いているわけで。リフメイカーぶりは……うん、まあ確かにね。そこのみなのかなあ。抜群に優れた、モダンなメロディック・ヘヴィメタル作品だけにどこか歯がゆさが残ります。

長期的なツアー生活から距離を置きたくて始めたこのプロジェクト。イェスパーにとってこのCYHRAは安息の地になったのかなあ……なんてことを思いながら聴いていると、リリース半年後にピーターが脱退。ライブではベーストラックを同期で流していたそうですが、そのうちに今度はイェスパーがツアーを離脱。30数本程度のツアーでもダメだったか。

CYHRAはまもなく2ndアルバム『NO HALOS IN HELL』をリリース予定ですが、イェスパーはレコーディングに参加しているので、バンド脱退自体はまだのようです。が、ライブに関しては……ちょっと期待できないかも。もう一度、彼の勇姿を日本でも観てみたいんだけどねえ。

 


▼CYHRA『LETTERS TO MYSELF』
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2019年11月 3日 (日)

MICHAEL MONROE『ONE MAN GANG』(2019)

2019年10月中旬にリリースされた、マイケル・モンローの同名バンドによる4thオリジナルアルバム。マイケル個人としては通算9枚目のソロアルバムに当たります(JESUSALEM SLIMDEMOLITION 23.を含むと11枚目)。

前作『BLACKOUT STATES』(2015年)発表後、ソロキャリア20周年を記念した2枚組ベストアルバム『THE BEST』(2017年)を挟んだことで、オリジナル作品としては珍しく4年ものインターバルが空きましたが、メンバーは『BLACKOUT STATES』制作時と変わらずマイケル、スティーヴ・コンテ(G)、リッチ・ジョーンズ(G)、サミ・ヤッファ(B)、カール・ロックフィスト(Dr)の5人で完成させています。バンド編成になってから初めて、同じラインナップで2作制作できたことで、なんとなくアルバム自体にも前作以上の安定感が備わっているように感じられます。

プロデュースはマイケル、スティーヴ、リッチの3人で担当。これも先の安定感に強く影響を与えており、どの曲でも“適度にパンキッシュ、適度にポップ”という従来のマイケル・モンローらしい黄金比を保つことに成功。もちろんHANOI ROCKS時代からの個性もしっかり備わっており、ベスト盤で総決算したからといって新しいことを始めるのではなく、かといってマンネリ感満載の焼き直しでも終わっていない、最高を更新し続ける姿勢がしっかりと貫かれています。

また、楽曲の幅も過去3作以上に広く、非常にバラエティに富んだ楽曲群が揃ったのも本作最大のポイント。これまでもその非凡な才能を各アルバムで見せてきたスティーヴと、前作でもその片鱗を感じさせたリッチのソングライティング力が遺憾なく発揮されています。スティーヴ&リッチの才能は今のマイケルにとって欠かせないものであり、ようやくジュード・ワイルダー以来のパートナーシップを完璧な形で再構築できたのではないでしょうか。

また、本作にはゲストプレイヤーとしてTHE DAMNEDのキャプテン・センシブルが「One Man Gang」で、HANOI ROCKSやDEMOLITION 23.での盟友ナスティ・スーサイドが「Wasted Years」でそれぞれギターソロを披露しています。ナスティを哀愁味と男臭さがみなぎる後者に割り当てるあたりに、マイケルのセンスが伺えますね。

パンクありハードコアあり、ロックンロールあり、ポップスあり、バラードありとマイケル・モンローというシンガーを最高の楽曲群で表現した本作は、間違いなくキャリア最高峰の1枚。57歳にして到達した新たな高みも、最高のパートナーたちの協力あってこそですね。脂が乗りまくった“今が最高”の彼らを、ぜひ12月の来日公演にてたっぷり味わいたいところです。

 


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2019年11月 2日 (土)

THE HIVES『TYRANNOSAURUS HIVES』(2004)

2004年7月に発売された、THE HIVESの3rdアルバム。本作からメジャーのInterscope / Universal Recordsでのリリースとなります。

初期2作のアルバムから代表曲を抜粋したコンピレーションアルバム『YOUR NEW FAVOURITE BAND』(2001年)がイギリス(最高7位)を筆頭にバカ売れし、一躍“時の人”となった彼ら。日本にも2002年にはサマソニでの初来日も実現しております。その流れから、彼らがメジャーに移籍したのは納得のいく流れかなと。

世の中的な良い流れが影響し、本作は本国スウェーデンで初の1位を獲得。イギリスでも最高7位、アメリカでも最高33位とキャリア最高位を記録するヒット作となりました。

メジャーに移籍したからといって急にポップになったり(もともとポップですが)安っぽくなったり(もともと安っぽいですし)というセルアウト感は皆無。プロデュースも前作同様にPelle Gunnerfeldtが手がけているので、そのへんは安心要素かなと。

冒頭を飾る1分半のショートチューン「Abra Cadaver」は相変わらずのTHE HIVES節を醸し出していますし、続く「Two-Timing Touch And Broken Bones」も然り。シングルカットもされた「Walk Idiot Walk」も従来から持ち合わせていたカラーではあるものの、シングルに適したポップさ、軽快さを持つミディアムチューンは“これからのTHE HIVES”を強く宣言するような1曲と言えるのではないでしょうか。

その後も2分前後のショートチューンが次々と繰り出されますが、後半に入ると「Diabolic Scheme」のような異色スローナンバーが登場します。ストリングスをフィーチャーしたこの曲は、バラードというよりは“THE HIVESなりのブルース”と受け取ることがでいる、これぞ“これからのTHE HIVES”の象徴となりうる1曲。個人的に先の「Walk Idiot Walk」ともども、驚きを隠せなかったナンバーです。

全12曲で29分というトータルランニングだけ目にすればいつもどおりなのですが、随所から感じられる変化の片鱗は、やはりメジャーに行ったことで予算が潤沢になり、それまでできなかったことにチャレンジできるようになった表れなのでしょうか。なんにせよ、今までどおりでありながらも過去作になかったような新境地も見受けられ、そこがのちの進化につながっていくことになるのかな。本作はその予兆を感じさせる、ある種の過渡期的1枚かもしれません。

ということもあって、彼らのオリジナルアルバムの中ではもっとも印象の薄かった1枚。聴く頻度も一番低かったのですが、久しぶりに聴いたら当時の記憶以上に良かったので、人の記憶って当てになりませんね、というお話でした。

 


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2019年11月 1日 (金)

ROYAL REPUBLIC『CLUB MAJESTY』(2019)

スウェーデンのロックバンド、ROYAL REPUBLICが2019年5月にリリースした4thアルバム。同年9月末には日本デビュー盤として、国内リリースも実現しています。

彼らは2004年にスウェーデンのマルメで結成された4人組バンドで、日本リリースに際して制作されたプレスリリースには「60年代のソウルフルなサウンドと、70'Sのクラシック・ロック、更にはパンク・ロックにも通じるビート、グラム・ロックに通じる華やかさ、ロックに必要な要素を全て備え」ていると記されています。

無理やり括れば、北欧ガレージロック/ガレージパンクシーンから誕生したバンドのひとつと捉えることができるでしょう。メンバー全員が赤いジャケット着用で刈り込まれていたり七三分けで整えられた髪型、口ひげを蓄えたルックスはどこかTHE HIVESを思わせるものがありますが、サウンド的にはあそこまで疾走感に満ち溢れていたり、ガリガリと尖った音を聴かせるわけでもない。むしろゼロ年代半ばに流行したFRANZ FERDINANDあたりのポストパンク/ディスコパンクにも似た、グルーヴィーなリズムとキャッチーな歌メロから成る親しみやすさが備わっているように思います。

とにかくこのアルバム、終始ご機嫌なダンスロックナンバーで構築されており、70年代末のファンク/ディスコブームを思わせる無駄に軽快で軽薄なサウンドがクセになります。そこにグラムロックからの影響が散りばめられていたり、「Like A Lover」みたいなミディアムナンバーではそれこそ70'Sクラシックロック(主にハードロック側)のテイストが感じられたりと、まったく2019年という時代を無視した(笑)悪ノリ感に満ち溢れている。しかも、どの曲も2〜3分程度と非常にコンパクトなので、全11曲で34分というトータルランニングも聴きやすさに拍車をかけている。うん、この手のバンドはこれくらいがちょうどいいよねと、改めて実感させられます。

「Blunt Force Trauma」みたいに時代錯誤な楽曲は本気なのか、それともオフザケなのか。「Can't Fight The Disco」や「Flower Power Madness」というタイトル&楽曲の脱力感は何を意味するのか……考えるだけバカバカしくなるので、このバンドの場合は焦点の合わない目で頭を空っぽにして楽しむくらいがベストなんでしょうね(笑)。

トリックスター感がハンパないですが、これはこれでよくできた1枚。先に挙げたTHE HIVES(メジャー移籍後)やFRANZ FERDINAND、あるいは往年のディスコパンク勢がお気に入りだった世代にこそ触れてほしい異色作かな。もちろん、あの時代を通過していない世代にも新鮮な気持ちで接していただけたらと。僕は好きですよ、こういう雑なやつ。むしろ日本的な気がするし。

 


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