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2019年11月 9日 (土)

HELLOWEEN『PINK BUBBLES GO APE』(1991)

HELLOWEENが1991年3月にリリースした通算4作目のオリジナルアルバム。日本では契約の関係上、1年遅れの1992年3月にようやく発売されています。

前作にあたる『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』(1988年)発表後、オリジナルメンバーのカイ・ハンセン(G, Vo)がバンドを脱退。1989年に行われたジャパンツアーには後任のローランド・グラポウが参加した新体制にて実施されました。

また、『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』リリース前後からバンドを取り巻く状況が好転します。IRON MAIDENなどを手がけるマネジメントSanctuaryと新たに契約、その流れからメジャーのEMIとのレーベル契約も獲得し、新体制による次作制作に取り組むことになります。

プロデューサーにクリス・タンガリーディス(BLACK SABBATHJUDAS PRIESTTHIN LIZZYなど)、アートワーク担当にHIPGNOSISの一員だったストーム・トーガソンを迎えて制作された今作は、そういった要素からも伺えるメジャー感の強い1枚。そのメジャー感は良くも悪くも“世間一般のジャーマンメタル のイメージからの脱却”という形に表れており、多くのHR/HMファンを困惑させることになるのでした。

カイ・ハンセンというバンドのソングライティング面における支柱のひとつを失ったHELLOWEENは、当然のようにマイケル・キスク(Vo)&マイケル・ヴァイカート(G)の2頭体制になるわけですが、特に本作に関してはキスクが全11中8曲のソングライティングに関わっており(うち4曲は単独名義での制作)、ヴァイカートは2曲のみ制作に関与(単独制作は「Number One」1曲のみ)。と同時に、ローランド・グラポウが4曲の制作に関わっており(うち2曲が単独制作)、早くもその個性をバンドに反映させ始めています。

確かに本作はヘヴィメタルアルバムだと思います。が、その向かう先が過去2作の『守護神伝』シリーズやカイ・ハンセンが歌っていた初期とは異なるもので、もっと広い地平を目指していることが伺えます。それがシンプルでソリッドな作風に反映されることで、従来の“ジャーマンメタル HELLOWEEN”を愛するリスナーから反感を買うわけです。

また、キスク自身がポップな作風を好む人間であること、どうやらステレオタイプのHR/HMから距離を置こうとしている人間であることなどが、このへんから表出し始めます。それが「Mankind」や「Your Turn」のような新しいタイプの楽曲ににじみ出ているわけです。アルバム自体はスピードメタル的ナンバーが数多く含まれているものの、特に後半に進むにつれて実験的な楽曲が増え始めます。そこに僕はPINK FLOYD、あるいはQUEENSRYCHE的な香りを感じるのですが……それはアートワークだけの問題ではないと思いますし、実際ソロになってからのキスクの作風を考えると(今となっては)それも頷けるものがあるではないでしょうか。つまり、メジャー化したHELLOWEENを普遍性と知的さを持つ、さらに一段上のバンドに仕立て上げようとしたんじゃないか。それが“脱ジャーマンメタル”であり、さらに言えば“脱ヘヴィメタル”だったのかなと。そのへんは続く『CAMELEON』(1993年)でより明確になるわけですが。

当時はいろいろ言われた1枚ですが、今聴くとそこまで悪いか?と感じる“隠れた良作”。確かに80年代半ばのHELLOWEENをイメージして接すると痛い目を見ますが、これはこれでよく作り込まれたHR/HMアルバムだと思います。

なお、先に書いたように本作は日本盤が発売されるまでに約1年を要しているのですが、これは1991年のリリース直前に前所属レーベルのNoise Rocordsが契約違反だと裁判を起こしたため、イギリス以外でのリリースにストップがかかってしまったため。確か1991年3月頃の『BURRN!』誌ではHELLOWEENが表紙を飾り本作について誌面で語っていましたし、アルバム発売の広告も載っていた記憶があります。が、上記のような理由で一部で出回ったUK盤を先に購入せざるを得ない状況になってしまったわけです(ちなみに、日本のみならずドイツやアメリカなど、イギリス以外の国では1992年3月に一斉リリース)。

それも影響してか、本作はチャート的に芳しい記録を残していません。『KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II』の独5位/英24位/米108位に対し、今作は独32位/英41位止まりでアメリカにいたってはチャートインせず。せっかく状況が良かったのに結果を出せなかった不運な1枚でもあるわけです。

 


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