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2019年11月28日 (木)

ALCEST『SPIRITUAL INSTINCT』(2019)

2019年11月初頭発売の、ALCEST通算6作目のオリジナルアルバム。今作からNuclear Blast Recordsからのリリースとなります。

前作『KODAMA』(2016年)はその1作前の『SHELTER』(2014年)とも異なる作風で、緊張感を伴う長尺の楽曲が目立ちましたが、本作も基本的にはその延長線上にある1枚なのかなと。ですが、軸にあるものは近しいのですが、その『KODAMA』ともどこか違う印象を受ける。何が違うのでしょう?

これは僕だけの感じ方なのかもしれませんが、今作から「Sapphire」のMVが制作されたこと、そこでの演奏シーンを目にして感じたことが……「ああ、ライブか」と。そこを意識して作ったか、あるいは無視して作品として完結させるか、その意識の違いが2作の差なのかなと思いました。

どちらかといえば、『KODAMA』はスタジオ作品として優れた1枚を完成させようと目論んだのかなと。もちろんライブで演奏することは意識していたとは思います。だって、レコーディングでは実際にプレイしているわけですから。でも、そういう次元ではなく、もっと“作品”として突き詰めたいという思いの強さが表れたのが『KODAMA』という力作だったのではないでしょうか。

一方で、今回の『SPIRITUAL INSTINCT』には初期のブラックメタル臭が戻ってきている楽曲も少なくない。そういった躍動感がライブ感にもつながっているように思えるのです。実際、今回のアルバムを通して聴くと“スタジオで膝を突き合わせて作り込みました”という印象はあまり受けず、むしろ“セッションを重ねに重ねた結果、ここにたどり着いた”、そんな声さえ聞こえてきそうなくらい“生”の息吹が伝わってくるのです。

ALCESTのテーマのひとつは、ネージュ(Vo, G, B, Synth)が子どもの頃に夢で見た「色も形も音もない架空の世界」を音で表現すること。それをいかに“生”の音で表現するか、非常に困難な作業だったと思います。実際、今作の制作に際してネージュは「長く困難だったけど、やりがいのあるプロセスだった」とコメントしています。

今回、あえて“生”という言葉を意図的に使ったのは、先のライブ感のみならず、アルバムの節々から伝わってくる宗教音楽的な香りにもなぞらえています。アルバムタイトルに「Spiritual」というワードを用いているところにも通ずるのでしょうが、人が生きるうえで寄り添ったり敵対したりする宗教、あるいは肉感的なものと相反する精神世界。こういったものを能動的なバンドサウンドで、いかに先鋭的でエモーショナルに表現するか。そりゃあ難しい作業ですわな。

でも、彼らはこのアルバムでそれをしっかり成し遂げたのではないでしょうか。名盤『KODAMA』や『SHELTER』とも異なる、また新たな傑作。できる限り爆音で接したい1枚です。

 


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