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2019年12月

2019年12月31日 (火)

2019年総括:①洋楽アルバム編

2019年もあと半日で終わり。いわゆる「テン年代」が終わるわけですね。さて、毎年恒例となった1年の総括を今年もじっくり書いていこうと思います。

今年からちょっと趣向を変えてみました。まず、①洋楽アルバム編(ジャンルレスでその年リリースのお気に入りアルバム10枚+次点10枚)、②邦楽アルバム編(同アルバム10枚+次点10枚)までは一緒、ここ数年続けてきた「その年の気になったアイドルソング10曲(+次点5曲)」をやめ、昨年から番外編として公開した③HR/HM、ラウドロック編(その年リリースのお気に入りアルバム10枚+次点10枚)と、④楽曲編(洋楽邦楽/ジャンル/リリース年関係なく、その年よく聴いた楽曲20曲)を新たに公開することにしました。

①、②および④に関してはアルファベット順、五十音順に並べており、順位は付けていませんが特に印象に残った作品には「●」を付けて、③には意図的に順位をつけております(③は別媒体で準備を発表しているので、それを転載します)。特にこの結果で今の音楽シーンを斬ろうとかそういった思いは一切ありません。ごく私的な、単純に気に入った/よく聴いたレベルでの「今年の10枚」です。

まずは①洋楽アルバム編です。

 

■洋楽10枚(アルファベット順)

上位10枚を紹介する前に、次点となった10枚をご紹介。

<次点>
・CHELSEA WOLFE『BIRTH OF VIOLENCE』(レビュー
・THE CHEMICAL BROTHERS『NO GEOGRAPHY』
・CIRCA WAVES『WHAT'S IT LIKE OVER THERE?』
・FAYE WEBSTER『ATLANTA MILLIONAIRES CLUB』
・RIDE『THIS IS NOT A SAFE PLACE』(レビュー
・RUSSIAN CIRCLES『BLOOD YEAR』(レビュー
・SHARON VAN ETTEN『REMIND ME TOMORROW』
・TEMPLES『HOT MOTION』
・TORO Y MOI『OUTER PEACE』
・TWO DOOR CHINEMA CLUB『FALSE ALARM』

昨年の年間企画にも書きましたが、自宅で音楽を聴くときってメタル/ラウド系以外はほぼ女性ボーカルのまったりした音楽が中心だったんですね。単に老いただけかもしれませんが(笑)、そういった類の音楽に心地よさ、気持ち良さを求めるようになったのは事実です。が、単にアコースティックでまったりしたものよりは、どこか尖っているほうが惹きつけられるし、何度も聴きたくなるのもまた事実。ここに挙げた次点10枚にはそういった作品が多く含まれている気がしてなりません。

さて、ここからが本編。僕が選んだ2019年洋楽アルバムTOP10です。

 

・BILLIE EILISH『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』(Spotify

・BON IVER『i,i』(Spotify

・BRING ME THE HORIZON『amo』(Spotify)(レビュー

●BRING ME THE HORIZON『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(Spotify)(レビュー

・EX: RE『EX: RE』(Spotify)(レビュー

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2019年総括:②邦楽アルバム編

洋楽アルバム編に続いて、邦楽アルバム編。こちらのエントリーでは2019年もっとも気に入った邦楽アルバム10枚(+次点10枚)を紹介します。順位は付けませんが、特に印象に残った作品には「●」を付けています。

 

■邦楽10枚(アルファベット→五十音順)

こちらも次点の10枚から紹介していきます。

<次点>
・BBHF『Mirror Mirror』
・Eve『おとぎ』
・GALNERYUS『INTO THE PURGATORY』
・INORAN『2019』
・MONO NO AWARE『かけがえのないもの』
・MORRIE『光る曠野』
・PassCode『CLARITY』
・Suspended 4th『GIANTSTAMP』
・ドレスコーズ『ジャズ』
・奮酉『エモーション-モーション』

上半期トップ10に選んでいたEve、ドレスコーズはこちらへ。そのくらい、上位10枚は混戦したんですよ、ええ。

GALNERYUSはメタル/ラウドのほうにも選びたかったんだけど、そちらからはあえて外してみました。むしろ今作に関しては「国内のJ-POPシーンにもっと広まってほしい!」という思いが強いので。あまりメタルの枠で括りすぎると、なんとなく敬遠されそうですものね(そんなことない?)。

Eveをはじめ、MONO NO AWARE、Suspended 4th、奮酉と面白いアーティストと多数出会えたのも2019年印象に残った出来事かなと。特に奮酉はライブをたった2人ですべてこなすところ含めて、めちゃめちゃカッコよかった。音源も音源で完成度が高いですし。2018年に発表された1作目『はじめのセンセーション』もオススメです。

PassCodeの新作も、グループとしての成長ぶりが伺えて本当に素晴らしかった。年明け早々の新木場STUDIO COASTでのライブ、実は個人的に非常に楽しみにしている公演だったりします。

続いては、本編となる今年の10枚です。

 

・AAAMYYY『BODY』(Spotify

・BAROQUE『PUER ET PUELLA』

・LUNA SEA『CROSS』(Spotify

・Maison book girl『海と宇宙の子供たち』(Spotify

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2019年総括:③HR/HM、ラウドロック編

一昨年秋から『リアルサウンド』でスタートした、HR/HMやラウドロックなどエクストリーム・ミュージックの新譜キュレーション記事を連載しているのですが、2019年のまとめ記事となる年間ベスト10紹介エントリー「西廣智一が選ぶ、2019年ラウドロック年間ベスト10 BMTH、Russian Circles、Slipknotなど意欲作が気になる1年に」が12月26日に公開されております。

年明け発売の雑誌『ヘドバン』最新号でも同様の企画にアルバム10選をお送りしているのですが、こちらでは『リアルサウンド』の記事で紹介した10枚に加えて、次点となった10枚とあわせて紹介できたらと思います。

まずは、すでに公開済みの上位10作品について。こちらはあえて記事執筆時と同じままで進めたいと思います。

01. BRING ME THE HORIZON『amo』(レビュー
02. TOOL『FEAR INOCULUM』(レビュー
03. RUSSIAN CIRCLES『BLOOD YEAR』(レビュー
04. LEPROUS『PITFALLS』(レビュー
05. KILLSWITCH ENGAGE『ATONEMENT』(レビュー
06. SLIPKNOT『WE ARE NOT YOUR KIND』(レビュー
07. BARONESS『GOLD & GREY』(レビュー
08. GATECREEPER『DESERTED』(レビュー
09. MAMIFFER『THE BRILLIANT TABERNACLE』(レビュー
10. ALCEST『SPIRITUAL INSTINCT』(レビュー

選出した理由は『リアルサウンド』のエントリーにてご確認を。ちなみに、『ヘドバン』のほうではあるアルバムの代わりにOPETH『IN CAUDA VENENUM』を選出しております(順位は若干の変動あり)。

続いて、選に漏れた次点10作品もご紹介。

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2019年総括:④楽曲編&印象的なライブ編

このエントリーで最後。こちらは印象的なライブ編と新設の楽曲編となります。

昨年まではその年気になった/よく聴いたアイドルソング10曲をピックアップする「アイドルソング編」を公開していましたが、自分自身がそこまで熱心に幅広くアイドルソングを聴かなくなったこと、そのぶんアニソンや声優シンガーの楽曲を積極的に聴くようになったことから、そのへんひとまとめに「洋楽邦楽/ジャンル/リリース年関係なく、その年よく聴いた楽曲20曲をプレイリストで公開」することにしました。

 

■楽曲編(アルファベット→五十音順)

各アーティスト1曲のみ選出、グループ内ユニットやソロ名義は別枠としてカウントしました。特にどれがベストの1曲とは記しません。本年発表以外の楽曲に関しては、曲名の後ろにカッコ付けで発表年を追加しておきます。

・Aqours「WATER BLUE NEW WORLD」(2018年)
・LiSA「unlasting」
・Maison book girl「長い夜が明けて」
・PassCode「ATLAS」
・Roselia「FIRE BIRD」
・Saint Snow「Believe Again」
・shami momo(CV:小原好美・鬼頭明里)「町かどタンジェント」
・THE YELLOW MONKEY「DANDAN」
・如月レオン「珈琲ラプソディ」
・クマリデパート「極LOVE浄土」
・欅坂46「黒い羊」
・スタァライト九九組「Star Diamond」
・中須かすみ(CV:相良茉優)「ダイアモンド」(2018年)
・乃木坂46「図書室の君へ」
・日向坂46「JOYFUL LOVE」
・ヒプノシスマイク 山田一郎(CV:木村昴)「Break the Wall」
・平手友梨奈(欅坂46)「角を曲がる」(2018年発表、リリースは2019年)
・フランシュシュ「徒花ネクロマンシー」(2018年)
・水瀬いのり「Wonder Caravan!」
・宮本浩次「Do you remenber?」

 

再生回数でいったら、欅坂46「黒い羊」がダントツでしょうか。そこに追随するのがSaint Snow「Believe Again」、日向坂46「JOYFUL LOVE」、Aqours「WATER BLUE NEW WORLD」、Roselia「FIRE BIRD」の順かな。まあ、プレイリストの再生回数で20曲決めたら、上位は欅坂46(「黒い羊」や「二人セゾン」)とBRING ME THE HORIZON、あとはブクガやイエローモンキーの過去曲、『ラブライブ!』関連の楽曲になってしまいそうなのでやめておきます(笑)。

もちろん、この20曲がすべてではありません。配信されていなかったりストリーミングで聴けなかったりしたため、今回選外にした楽曲も多数あります。例えばハロプロ関連の楽曲。間違いなく数曲こちらに含まれるはずでしたが、今回はプレイリストで公開することが大前提だったので敢えなく選外に。

また、今年もっとも聴いた曲のひとつである『新サクラ大戦』の「檄!帝国華撃団<新章>」もiTunesでの配信はあるもののApple MusicやSpotifyでは聴けないのでアウト。南條愛乃さんが今年発表した楽曲も、SpotifyにはシングルのみあるけどApple Musicには皆無とか、片方だけの中途半端な形になってしまうので選外に。こういうこともあるんですね。

あとは、ギリギリ最後まで悩んだ蒼井翔太さんとか。「Eclipse」にはライブBlu-rayのオープニングでやられたので、本当は入れたかったんですよ(特にライブテイクのほうを)。

 

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2019年9月〜10月のアクセスランキング

ここでは2019年9月1日から10月31日までの各エントリーへのアクセス数から、上位30エントリーを紹介します。

内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いたトップ30。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2019年7〜8月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)(※2019年9月30日更新/NEW!)

2位:TOOL『FEAR INOCULUM』(2019)(※2019年9月13日更新/NEW!)

3位:MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)(※2019年9月11日更新/NEW!)

4位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日更新/↓2位)

5位:ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』(2017)(※2018年4月12日/↑23位)

6位:SLAYER『REIGN IN BLOOD』(1986)(※2018年3月8日更新更新/↑9位)

7位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)(※2018年5月16日更新/↑16位)

8位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)(※2019年10月9日更新/NEW!)

9位:PRINCE『BATMAN』(1989)(※2019年2月13日更新/Re)

10位:NIRVANA『NEVERMIND』(1991)(※2017年8月14日更新/↓6位)

11位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新/↓4位)

12位:KORN『THE NOTHING』(2019)(※2019年9月21日更新/NEW!)

13位:VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)(※2017年3月24日更新/↓5位)

14位:UFO『WALK ON WATER』(1995)(※2017年8月10日更新/Re)

15位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↑20位)

16位:PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』(1994)(※2017年5月10日更新/↓11位)

17位:2019年上半期総括(ベストアルバム10)(※2019年7月1日更新/↓1位)

17位:BUCKCHERRY『WARPAINT』(2019)(※2019年3月 8日更新/Re)

19位:THE CULT『ELECTRIC』(1987)(※2017年9月22日更新/Re)

20位:KISS THE FAREWELL TOUR JAPAN 2001@東京ドーム(2001年3月13日)(※2001年3月25日更新/↓7位)

21位:RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』(1996)(※2019年9月22日更新/NEW!)

21位:MR.CHILDREN TOUR '99 "DISCOVERY" @国立代々木競技場第一体育館(1999年5月5日)(※1999年5月9日更新/Re)

23位:CINDERELLA『LONG COLD WINTER』(1988)(※2015年4月29日更新/Re)

23位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN』(1984)(※2017年3月2日更新/Re)

25位:WHITESNAKE『WHITESNAKE (1987)』(1987)(※2017年2月3日更新/Re)

25位:DREAM THEATER『AWAKE』(1994)(※2019年9月14日更新/NEW!)

25位:LIKE A STORM JAPAN TOUR 2019@渋谷CLUB QUATTRO(2019年9月15日)(※2019年9月16日更新/NEW!)

25位:THE WiLDHEARTS『DIAGNOSIS』(2019)(※2019年10月8日更新/NEW!)

25位:DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』(2019)(※2019年5月13日更新/↓10位)

30位:「#平成の30枚」(※2019年3月12日更新/Re)

30位:QUEEN『LIVE KILLERS』(1979)(※2018年10月24日更新/Re)

30位:KORN『KORN』(1994)(※2017年12月18日更新/Re)

30位:CATS IN BOOTS『KICKED & KLAWED』(1989)(※2018年7月21日更新/Re)

2019年12月のお仕事

2019年12月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※12月30日更新)

 

[WEB] 12月30日、Maison book girlオフィシャルサイトにてアルバム「海と宇宙の子供たち」インタビューが公開されました。

[WEB] 12月30日、「NIKKEI STYLE」にて≠ME冨田菜々風インタビュー≠ME冨田菜々風 青春ソングを私たちの特徴にしたいが公開されました。

[WEB] 12月29日、「NIKKEI STYLE」にて=LOVE齊藤なぎさインタビュー=LOVE齊藤なぎさ 初センター「強くなるしかない」が公開されました。

[紙] 12月28日発売「mini」2020年2月号にて、Little Glee Monsterインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月27日、「リアルサウンド」にて日向坂46インタビュー日向坂46 佐々木久美&齊藤京子&加藤史帆が語る、『紅白』初出場も決めた2019年の躍進「真の意味で“坂道グループ”になれた」が公開されました。

[紙] 12月27日発売「乃木坂46×週刊プレイボーイ2019」にて、乃木坂46白石麻衣×齋藤飛鳥対談、企画「白石麻衣に100の質問」を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月26日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載西廣智一が選ぶ、2019年ラウドロック年間ベスト10 BMTH、Russian Circles、Slipknotなど意欲作が気になる1年にが公開されました。

[紙] 12月25日発売「日経エンタテインメント!日向坂46 Special」にて、日向坂46小坂菜緒、渡邉美穂、佐々木久美の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月20日、Airots公式サイトにてAirots座談会 ~初ワンマンライブに向けて~が公開されました。

[紙] 12月20日発売「TV Bros.」2020年2月号にて、折坂悠太インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月19日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにてHYDEライブレポートHYDEワールドツアーを締めくくる『ANTI』最終形 その強靭さを支えた信頼関係が公開されました。

[WEB] 12月13日、「リアルサウンド」にてLittle Glee MonsterインタビューLittle Glee Monsterが語る、Earth, Wind & Fireとの共作で得た自信「自分たちが目指すところはこれなんだ」が公開されました。

[WEB] 12月11日、「リアルサウンド」にてTHE YELLOW MONKEYのアーティスト評THE YELLOW MONKEYのライブはなぜ魅力的なのか 現場スタッフが振り返る、再集結から新ドームツアーに至る激動の日々が公開されました。

[紙] 12月4日発売「日経エンタテインメント!」2020年1月号にて、日向坂46小坂菜緒・加藤史帆・齊藤京子インタビュー、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 12月3日、「リアルサウンド」にてTHE YELLOW MONKEYのアーティスト評THE YELLOW MONKEYがライブバンドとして成し遂げた偉業 現場スタッフが明かす、90年代の最盛期~解散までの舞台裏が公開されました。

[WEB] 12月1日、「リアルサウンド」にて飯田里穂インタビュー飯田里穂が語る、芸能活動20年で見出した音楽の届け方と人生哲学「今さら取り繕った私は魅力的に見えない」が公開されました。

[WEB] 12月1日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載Alcest、Mamiffer、Leprous……エクストリームシーンから“個”を確立させたHR/HM5枚が公開されました。

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また、11月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1911号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

BRING ME THE HORIZON『Music to listen (中略) to-GO TO』(2019)

2019年12月27日という年の瀬に、突如配信リリースされたBRING ME THE HORIZONのニューEP『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(タイトル長いので入りきらない。笑)。今のところフィジカル(CD、アナログ盤)での発売予定なし。

今年1月に初の全英1位を獲得した最新アルバム『amo』(2019年)を発表したBMTH。そもそも、その前年2018年夏から同作に含まれる新曲「Mantra」からアクションは始まっていたわけで、『amo』リリース以降もアルバム収録曲のリミックストラックの配信、夏にはSpotify限定でスタジオライブ音源『Spotify Singles』があったり、11月にはPS4用ゲーム『DEATH STRANDING』絡みでトラップ調の新曲「Ludens」を突如公開したりと、とにかく1年以上にわたり常に“動いている”印象を残し続けています。

また、「Ludens」公開に伴うインタビューではオリヴァー・サイクス(Vo)が「今後アルバムを作る予定はない。来年はEPとしていくつか新作を作っていく」という趣旨の発言も残しており、2020年も新曲が聴けるんだとワクワクしていたところ、年末も年末というタイミングに不意を突かれました。

全8トラックでトータル75分超と確実にアルバムなんですけど、NINE INCH NAILS『BAD WITCH』(2018年)を発表した際にトレント・レズナーがこの「全6曲、トータル30分」というEP形式の作品を“アルバム”と呼んだのとは逆の形なのかなと。オリヴァーの意思を無視する形になりますが、個人的には今作はアルバムと捉えたいと思います。

直近の新曲「Ludens」はゲームとの関連性や「『amo』の“次”」という重要な役目を果たしていましたが、実は『amo』と今回の新作の間に「Ludens」を挟むことは非常に大切なトピックなのではないかと、新作を聴いたあと改めて実感しました。それくらい、今回の新曲8曲は“「Ludens」以降のDTMスタイル”をさらに突き進めたものになっているからです。

「ワールドツアーで忙しい中、いつ新曲録ったんだよ!」と不思議に思われるかもしれませんが、メタルコア/ラウドロック的なバンドサウンドから現在のミニマムなDTMスタイルへと移行したことで「PCと歌を録音する環境さえあれば、どこでも新曲制作が可能」になった。と同時に、音楽提供方法もデジタル/ストリーミング主体の現在だからこそ「事前プロモーションなしで、作って即出し」が可能となった。しかも、それを日本にいても時差なく受け取ることができる。2019年の最後の最後に、この強烈な新作によって改めてそのすごさを実感させられたわけです。

全8トラック中、4〜5分台の楽曲は2曲のみ。7分前後の楽曲が3曲に10分台2曲、さらには24分という過去最長の楽曲も用意されています。どれもヒップホップ以降のモダンなトラックをベースに、ギターは聴こえたとしても味付け程度。本来なら曲の軸になるであろう歌も、あくまで「部品のひとつ」としてフィーチャーされるにとどまっています。そういった意味では、本作は非常に実験色濃厚な内容で、『amo』でBMTHに興味を持ったリスナーには若干(いや、かなり)敷居の高い作品かもしれません。

と同時に、ここで展開されているサウンドや楽曲は「2019年だからこそ」の音でもある。これは2020年に入ってからではなく、2019年のうちに出すべきだと思ったのでしょうね。それも納得のいく“旬”な内容となっています。

曲が長くなればなるほど、いわゆる“ボーカルパート”は希薄になっていく。24分におよぶ「Underground Big {HEADFULOFHYENA}」なんて、後半はもはやコラージュでしかないですから。けど、それでもドキドキしながら最後まで聴いてしまう。ダウナーなヒップホップチューン「Steal Something.」からぶった切り的エンディングにキョトンとしてしまうラストナンバー「±ªþ³§」までの75分、ものすごい集中力で楽しむことができました。

さらに、本作には豪華なフィーチャリングアーティストが多数参加。これも、データのやり取りが世界中どこにいても手軽にできるようになった今だからこそなトピックですよね。そのゲスト陣もホールジーやベクシー、LOTUS EASTER、HAPPYALONE.、TORIEL、YONAKAと多ジャンルにわたる面々ばかり。LOTUS EASTERってHopeless Records所属のあのバンドかしら。HAPPYALONE.といいYONAKAといい、ナイスな組み合わせですけど、彼らをフィーチャーしつつもしっかり我を通すあたりが今のBMTHらしくて微笑ましい。ホント最高。

賛否あるかと思いますが、個人的にはもう彼らはHR/HMやラウドの枠で括らなくてもいいと思うし、ジャンルレスの面白バンドってことでいいんじゃないかな。そういう意味では“メタルコアバンドのBMTH”は『amo』で完全に息絶えたってことでいいと思います。

とはいいながらも、本作には過去作のオマージュもしっかり残されている。序盤、インタールードを挟みながら進むシームレスな構成は、どこか3rdアルバム『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)を彷彿とさせるし。実はバンドとしての軸足はブレていないんじゃないか……そう思わずにはいられません。

……興奮してかなり長くなっちゃいましたが、ここ数日それくらい熱を持って接してきた新作。問答無用で2019年度ベストアルバムです。

 


▼BRING ME THE HORIZON『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』
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2019年12月30日 (月)

BONES UK『BONES UK』(2019)

2019年7月中旬に発表された、BONES UKの1stアルバム。日本盤未発売。

BONES UKはその名のとおり、イギリスはロンドン出身の女性2人(ボーカルとギタリスト)からなるロック/インダストリアル・ロックバンド。本作はモダンメタルやメタルコアなどを中心にリリースするUSレーベルSumerian Recordsから発表されています。

実は彼ら、2016年10月には『Red Bull Live on the Road』のゲストとして早くも初来日を果たしており、僕もそのステージを目にしております(当時のレポートはこちら)。ライブではサポートメンバーとして男性ドラマーを迎えていましたが、すでに現在のスタイルは確立されていたと記憶しています。

このときはMIYAVIのアルバム『Fire Bird』にゲスト参加したことをきっかけに来日が実現したようですが、彼らは同時期にジェフ・ベックのアルバム『LOUD HAILER』(2016年)にもソングライター/プレイヤーとして参加したほか、同作のツアーにも帯同したことで名を上げたそうです。

日本にも同名バンドが現存したり(こちらはThe BONEZ表記ですが)、過去にはアメリカにも同名バンドも存在したことから、X JAPANTHE LONDON QUIREBOYSTHE LONDON SUEDEのように、拠点をアメリカに移したことからBONES UK名義で活動することになったようですね(2016年の時点ではシンプルにBONESでしたし。ちなみに、先の来日イベントでは日本のThe BONEZとも競演しています)。

ライブでは生ドラムと同期させたサウンドが印象的でしたが、このアルバムで聴ける楽曲/サウンドは打ち込みのデジタルサウンドに切れ味鋭いギターリフを乗せたインダストリアル調のアレンジが中心。決して個性的とは言い難いものの、曲に合った(どこかセクシーな)ボーカル、時にアグレッシヴに、時にブルージーに泣くギターソロ/フレーズは確かにこのバンドならではのものと言えるかもしれません。

初期のNINE INCH NAILSを彷彿とさせるそのスタイルは、この時代においては斬新とは言えませんが、楽曲のセンスに光るものが感じられるのも確か。そんな楽曲の中には、昨今のモダン・ポップスに通ずるカラーも見受けられ、彼らが単に90年代のオルタナロックを通過したバンドでは片付けられない個性を持っていると言えるのではないでしょうか。1回通して聴いたときは「ふ〜ん、こんなもんか」で終わってしまいそうになりましたが、二度三度繰り返し聴き返すと妙に癖になるものがあるんですよね……不思議な存在です。

なお、本作にはデヴィッド・ボウイのカバー「I'm Afraid Of Americans」も収録。原曲に比較的近いアレンジですが、この曲でボウイがトレント・レズナーと共演していたこと、活動拠点をロンドンからアメリカに移した彼らが今歌うことなどを考えると、いろいろ味わい深いものがあります。

それにしても……彼らがなぜジェフ・ベックに気に入られたのか、このアルバムを聴くとなんとなく理解できる気がします。あのジイさん、当時すでに70歳超えてたのに、そういう千里眼だけはものすごいものがあるんだよねえ……。

 


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2019年12月29日 (日)

LINDEMANN『F & M』(2019)

2019年11月下旬にリリースされたLINDEMANNの2ndアルバム。全11曲入りの通常盤とボーナストラック2曲を追加したデラックス盤の2形態を用意(日本盤は海外デラックス盤に対訳を付けた直輸入盤仕様)。

LINDEMANNは、RAMMSTEINのフロントマンであるティル・リンデマン(Vo)とPAINやHYPOCRISYなどのデスメタルバンドで活躍したスウェーデン人のピーター・テクレン(All Instruments)からなるユニット。2015年に全編英語詞による1stアルバム『SKILLS IN PILLS』はドイツやフィンランドで1位を獲得し、長く待たれていたRAMMSTEINのニューアルバムまでの良いつなぎの役割を果たしてくれました。

あれから約4年を経て、奇しくもRAMMSTEIN待望の新作『(untitled)』(2019年)と同じ年にリリースされたLINDEMANNの2ndアルバムは全曲ドイツ語詞によるコンセプチュアルな1枚。ティル・リンデマンとハンブルグにあるタリア劇場とのコラボレーションによる、グリム兄弟の童話『ヘンゼルとグレーテル』を現代風に解釈した戯曲(2018年上演)からインスパイアされた作品となっています。

プレスリリースによると「恐怖、貧困、裕福、カニバリズム、死など」がテーマになっており、同戯曲からの5曲と新たに制作された6曲から構成されています。ちなみに戯曲に用いられたのはM-3「Allesfresser」、M-4「Blut」、M-5「Knebel」、M-8「Schlaf ein」、M-11「Wer weiß das schon」(実際に使用されたものとは一部アレンジが異なるとのこと)。

もともとは今年4月、文字通り『HÄNSEL UND GRETEL』というタイトルで発表予定でしたが、RAMMSTEINの新作とリリース時期がかぶることから遅れたのでしょうか、それとも新たに制作された楽曲が追加されることになり11月まで持ち越しになったのでしょうか。どちらにせよ、すごく良いタイミングでの発表になったのではないでしょうか。

気になる内容は、前作『SKILLS IN PILLS』の延長線上にありつつも、RAMMSTEINの新作にも通ずるサウンド/テイストが用いられており、非常に聴きやすいものに仕上がっています。デジタル色を適度に含むバンドサウンドを軸に、中には「Schlaf ein」「Wer weiß das schon」のようにクラシカルなバラード、フォーキーなパートを持つ「Knebel」(曲後半から突如ヘヴィに転調)、タンゴ調の「Ach so gern」みたいな楽曲もあり、意外と楽曲の幅は広く感じられます(ボーナストラック「Ach so gern (Pain Version)」はバンド&デジタルなアレンジで、こちらもカッコいい!)。

楽曲の大半をピーターが作曲していることからRAMMSTEINのそれとは多少異なるものの、結局ティルが母国語で歌えば“それっぽく”なることも証明されたのではないでしょうか。RAMMSTEINの新作が気に入った人なら間違いなく一発で受け入れられるはずです。

なお、日本盤は対訳が付いているので(輸入盤よりも少々値が張りますが)オススメです。さらに、こちらのRAMMWIKIなるファンサイトで各曲のテーマを知ると、歌詞の意味合いもより深く感じられるのではないでしょうか。相変わらずゲスいだけじゃなくて、深いことも歌っているので、チェックしてから聴くことをオススメします。

 


▼LINDEMANN『F & M』
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2019年12月28日 (土)

MOTÖRHEAD『OVERKILL』(1979)

1979年3月にリリースされたMOTÖRHEADの2ndアルバム。Discogsで調べると、日本盤は1981年に初めてLPが発表されたようです(1980年の4thアルバム『ACE OF SPADES』のヒットを受けて国内盤発売ということなんでしょうかね)。

MOTÖRHEADは1979年に2枚のアルバムを発表しており、まず3月にこの『OVERKILL』を、10月には早くも3rdアルバム『BOMBER』を立て続けにリリース。前者は全英24位、後者は12位とアルバムを重ねるごとに順位を挙げており、それが続く『ACE OF SPADES』での全英4位、およびライブアルバム『NO SLEEP 'TIL HAMMERSMITH』(1981年)の全英1位につながるのでしょうね。そういった意味では、この『OVERKILL』はブレイクへのきっかけを作った重要な1作ということになります。

オリジナル盤には全10曲を収録。オープニングを飾るタイトルトラック「Overkill」はライブ終盤でお約束として演奏される重要ナンバーのひとつで、特に終盤何度も繰り返されるエンディング(繰り返すごとに、どんどん速くなっていくプレイ)はライブならではの醍醐味としてよく知られています。

このほかにも「Stay Clean」や「No Class」「Damage Case」「Metropolis」など、活動後期までライブで頻繁に演奏された楽曲が多く含まれており、ベストアルバムを除けば彼らのオリジナルアルバムでは入門編として最適な1枚と言えるのではないでしょうか。

改めて聴き返すと、すでにこのアルバムの時点でいわゆる“MOTÖRHEADらしさ”は完成の域に達しています。レミー(Vo, B)の歪みまくったベースリフト“ファスト”・エディ・クラーク(G)の“アグレッシヴさとブルージーさを併せ持つ”ギタープレイの絡み、メタルというよりはパンクロックのような疾走感と破天荒さを持つフィルシー・“アニマル”・テイラー(Dr)のドラミングは奇跡と言わんばかりのバランス感で融合し、ひとつの集合体として成立している。この奇跡を味わいたいから、僕らはロックに夢を見て、ある種の盲信が進行していく……ここまで盲信されてくれる存在がすでに存在しないという事実、非常に悲しいです。

ヘヴィメタルやスラッシュメタルの元祖として消化されることの多い彼らですが、「Overkill」のようなファストナンバーを除けばその大半はロックンロールのマナーに乗っ取った非常にシンプルな構成の楽曲ばかり。その「Overkill」もアレンジこそメタリックですが、曲の構成自体はロックンロールそのまんまですからね。シンプルなものの強み、そしてシンプルな構成でいかに人を惹きつけることが難しいかを理解している彼らだからこそ、この音には説得力がそなわっているわけです。

……なんて書いたものの、やっぱり小難しいことを考えずに、爆音で流しつつ無心で楽しんでもらいたい。結局はそんなそんなシンプルな楽しみ方がお似合いな1枚です。

 


▼MOTÖRHEAD『OVERKILL』
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2019年12月27日 (金)

THE DEVIL WEARS PRADA『THE ACT』(2019)

アメリカ・オハイオ州出身のメタルコアバンド、THE DEVIL WEARS PRADAが2019年10月中旬にリリースした7thアルバム。日本盤未発売。

前作『TRANSIT BLUES』(2016年)でRise Recordsに移籍した彼らでしたが、本作では新たにSolid State Recordsへと移籍。また、それまでセッションメンバーだったドラマーとキーボーディストを正式メンバーに迎え、新たに6人編成のバンドとして制作・完成させたのがこのアルバムです。

本作のプロデュースを中心となって手がけたのが、新メンバーのジョナサン・ゲーリング(Key)。曲作りの時点で、本作に収録される12曲を含む14曲程度に落ち着くまでに60曲以上も廃棄したそうで、練りに練られた12曲が出揃ったことが伺えます。また、マイク・フラニカ(Vo)によると、チェルシー・ウルフのアルバム『HISS SPUN』(2017年)が今作に与えた影響は非常に大きなものがあるそうです。

確かにオープニングの「Switchblade」や続く「Line Of Your Hands」で聴けるヘヴィ&アグレッシヴさで従来の“らしさ”を示していますが、アルバムが進むにつれてドゥーミーさが強まっていくといいますか……確かにそう言われると、不思議とチェルシー・ウルフとの共通項も見えてくる気がするといいますか。

特に「Wave Of Youth」や「Please Say No」「The Thread」あたりに漂うドゥーミーな空気感/作風はどこか『HISS SPUN』にも通ずるものがある……気がします。とはいえ、そこはTHE DEVIL WEARS PRADAのこと。しっかり彼らならではの持ち味も残されており、ヘヴィ&メロウなメタルコアが新たな領域に一歩踏み込んだ進化形と受け取ることもできます。

オルタナティヴ・ロックにも通ずる空気感を持つ「Numb」や「Diamond Lost」(「Numb」は途中からヘヴィなリフが加わることで“らしく”なりますが)、ミニマルなトラックをバックにマイクが叫び歌う「Isn't It Strange?」や「As Kids」など、アルバム後半に進むにつれて本領発揮と言わんばかりに進化した姿が表出します。もちろんこれらは前作までにも包括されていた要素のひとつではあるものの、今作ではそういった個性がどんどん独り歩きを始め進化している。その事実からは7作目という中堅〜ベテランらしい頼もしさすら伝わってきます。

良く言えば「大人になった」、ちょっと穿った味方をすれば「落ち着いてしまった」と受け取れる本作。評価は分かれるかもしれませんが、メタルコアの誕生から10数年経った今、ひとつのジャンルが成熟して新たな領域へと到達し始めた。そう解釈すると、この変化・進化は非常に興味深いものがあるのではなないでしょうか。個人的には成長の度合いが大いに感じられる、面白いアルバムだと捉えています。

 


▼THE DEVIL WEARS PRADA『THE ACT』
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2019年12月26日 (木)

STARSET『DIVISIONS』(2019)

アメリカ・オハイオ州コロンバス出身の4人組バンド、STARSETが2019年9月中旬にリリースした3rdアルバム。日本盤未発売。

過去2作をRazor & Tie Recordsから発表してきた彼らですが、前作『VESSELS』(2017年)のアップデート版『VESSELS 2.0』(2018年)からFearless Recordへと移籍。同タイミングにHYDEのジャパンツアーに帯同(2018年秋)したほか、「Monster feat. HYDE」を配信リリースするなど、ここ日本でも彼らの名前を知るロックファンは少なくないかと思います。

オリジナル作としては2年8ヶ月ぶりに発表された今作『DIVISIONS』は、過去2作同様に60分前後におよぶ壮大かつスペーシーなモダン・メタルアルバム。“シネマティック・ロックバンド”という触れ込みからもわかるように、彼らのサウンドが放つ世界観は非常にコンセプチュアルなものがあり、単にうるさいだけ、単に激しいだけでは片付けられないドラマチックさと、リスニング専門のリスナーにも耐えうるディープな魅力が兼ね備えられています。

メタルコア以降のヘヴィな要素は確かに感じられるものの、このアルバムからはそこだけにこだわっているようにも感じられない。むしろメロディや楽曲の完成度を第一に、味付けとしてのローチューニングやヘヴィな音像が用いられているように感じられます。と同時に、EDM以降のエレクトロやR&Bの要素も同じような感覚で用いられており、主張としてはヘヴィさよりもこちらの要素のほうが強く響く。それゆえ、非常にポップに感じられるのかもしれません。

その上に乗るダスティン・ベイツ(Vo)のボーカルもメロディを大切にし、朗々と歌い上げる。先鋭さや攻撃性は皆無ですし、そちら側を求めるリスナーには物足りなさを感じるものかもしれません。しかし、先にも挙げたように「リスニング専門のリスナーにも耐えうるディープな魅力」という点においては十二分に果たされている。そういった意味では、どこかプログレッシヴ・ロックに似ているとも言えるでしょう。

また、本作はダスティンによる架空の物語をベースにしたストーリー性の強いものになっているのも特徴でしょう。SEなどを用いてシームレスに構成された作風も、そういったコンセプチュアルなスタイルをより強めていますしね。珍しくアルバム単体としてじっくり聴き込みたい、楽しみたい1枚だと思いました。

エクストリーム・ミュージックの多様性について本サイトではたびたび触れてきましたが、こういった過激さとは別の方向に歩みを進めたアルバムも、ある意味ではエクストリーム・ミュージックの進化を表したものなのかもしれません。

余談ですが、本作でドラムを叩いているのはアメリカでYouTuberとして活躍するドラマーのルーク・ホランド。もともと彼はオランダのメタルコアバンドTHE WORLD ALIVEのメンバーだったそうで、この手の音楽には精通していることもあって起用されたのでしょうか。現地ではそういった話題性もある1枚のようです。

 


▼STARSET『DIVISIONS』
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2019年12月25日 (水)

PHIL CAMPBELL『OLD LIONS STILL ROAR』(2019)

MOTÖRHEADのギタリスト、フィル・キャンベルが2019年10月下旬にリリースした初のソロアルバム。

MOTÖRHEAD解散後、自身の実子などを加えて結成したPHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSとして活動していたフィル。同バンドではEP2枚(オリジナル作&ライブ作)とオリジナルアルバム『THE AGE OF ABSURDITY』(2018年)を発表していますが、そこから約2年を経て届けられたのがこの初のソロ作です。

そもそも本作は、MOTÖRHEADが活動していた5年前から制作がスタートしており、レコーディングにはPHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSにも所属する彼の息子3人も参加しています。

と同時に、MOTÖRHEADの活動を通して出会った多数のミュージシャンたちもゲスト参加。そのメンツは錚々たるもので、ロブ・ハルフォード(Vo / JUDAS PRIEST)、ベン・ワード(Vo / ORANGE BOBLIN)、アリス・クーパー(Vo)、ネヴ・マクドナルド(Vo / SKIN)、ダンコ・ジョーンズ(Vo)、ニック・オリヴェリ(Vo, B / ex. KYUSS、ex. QUEENS OF THE STONE AGE)、レイ・ルジアー(Dr / KORN)、ディー・スナイダー(Vo / ex. TWISTED SISTER)、ミック・マーズ(G / MOTLEY CRUE)、クリス・フェーン(Dr / ex. SLIPKNOT)、ウィットフィールド・クレイン(Vo / UGLY KID JOE)、ベンジー・ウェッブ(Vo / SKINDRED)、マット・ソーラム(Dr / ex. GUNS N' ROSES)、ジョー・サトリアーニ(G)など本当に豪華な布陣。これもMOTÖRHEADでの活動があったからこそですね。

フィル自身が歌ったオープニング「Rocking Chair」こそ緩やかでブルージーなアコースティックナンバーですが、続く「Straight Up」(Vo:ロブ・ハルフォード)は歌うロブに合わせたJUDA PRIEST的な1曲。「Faith In Fire」(Vo:ベン・ワード)や「Walk The Talk」(Vo:ダンコ・ジョーンズ&ニック・オリヴェリ)はストーナーロック的だし、「These Old Boots」(Vo:ディー・スナイダー)は豪快なアメリカンロック調。意外と歌う人に合わせた選曲がなされているようです。

かと思えば、ベンジー・ウェッブにマイナー調のピアノバラード「Dead Roses」を歌わせたり、アリス・クーパーにはモダンな質感のロックンロール「Swing It」を与えていたりと、一筋縄でいかない選曲。うん、面白い。あと、本作で久しぶりにネヴ・マクドナルドの歌声を聴いたけど、やっぱりいいですね。彼が歌う「Left For Dead」もSKIN時代を彷彿とさせるものですし。

そういえば、本作はPHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSのときほどMOTÖRHEAD色が強くないのが気になりました(もちろん、曲によってはところどころで“らしさ”は感じられるのですが、あくまでそれがメインではない)。結局、あのカラーはレミー自身の個性だったのかなと。そう思うと、レミーおよびMOTÖRHEADって本当に唯一無二の存在だったんですね。そろそろ彼が亡くなってから4年。またあの喪失感と向き合う季節になりましたね……。

 


▼PHIL CAMPBELL『OLD LIONS STILL ROAR』
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2019年12月24日 (火)

ROB HALFORD WITH FAMILY & FRIENDS『CELESTIAL』(2019)

2019年10月中旬にリリースされた、ロブ・ハルフォードJUDAS PRIEST)のソロアルバム。本作は「ROB HALFORD WITH FAMILY & FRIENDS」名義で発表されており、文字通り彼の家族(弟や甥)や友人たちが演奏に加わっています。

アルバムタイトルの『CELESTIAL』は天空や天空、あるいは神聖さや神々しさを意味するワード。そこからも想像できるかと思いますが、本作はかつてHALFORD名義でリリースした『HALFORD III: WINTER SONGS』(2009年)に続くクリスマス・アルバムなのです。

クリスマス・アルバムというと「ホリデー作品」というイメージからか、非常に朗らかで緩やかな印象をイメージするかと思います。しかし、今作で展開されている世界観はロブ・ハルフォードおよび彼が在籍するJUDAS PRIESTの持つイメージそのもの。つまり、HR/HMのテイストを維持しつつクリスマスの世界観が描かれているわけです。

全12曲(オープニングSE含む)中、オリジナルナンバーは4曲。オープニングを飾る「Celestial」は続く「Donner And Blitzen」への序章にあたるインストなので、実質歌モノ・オリジナル曲は「Donner And Blitzen」「Morning Star」「Protected By The Light」のみとなります。それ以外は純粋なクリスマスソングやクリスマスにまつわるスタンダードナンバーで、中には「Joy To The World(もりびとこぞりて)」みたいな誰もが知る曲も含まれています。

まあとにかく、冒頭の「Donner And Blitzen」からして最近のJUDAS PRIESTや70年代のハードロック時代のプリーストに近い曲調/サウンドなので、クリスマス・アルバムだからといって気構える必要はないかなと。ダーク&スローな「Away In A Manger」のあとにメジャーキーのミディアムバラード「Morning Star」が並ぶ構成は最近のプリーストではまずない流れ/曲調ですが、ロブのソロとして捉えれば全然アリなのではないでしょうか。

かと思うと、続く「Deck The Halls」ではザクザクしたギターリフにタイトなリズムが絡み合い、そこにアグレッシヴなロブのボーカルが乗る。「Joy To The World」もしっかりプリースト調にアレンジされているけど、曲が持つキャッチーさとスタンダード感に思わずニヤリとするはず。これを真顔で真剣に(あるいや楽しげに)歌うロブの姿をイメージするだけで、白米5杯はペロリといける……はず(笑)。

ラストのオリジナル曲「Protected By The Light」は2分にも満たない、オルガンやストリングスをバックに朗々と歌うロブを堪能できます。これもアリだな……と素直に思えるのは、きっと今現在ロブおよびプリーストの状況が良好だからこそ。ここ数日間はもちろんのこと、年の瀬に向けて思いっきり大音量で楽しみたい、メタル流クリスマス・アルバムの傑作です(1年を通して楽しめる内容ではないので、年間ベストには選ばないけど)。

 


▼ROB HALFORD WITH FAMILY & FRIENDS『CELESTIAL』
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2019年12月23日 (月)

OF MICE & MEN『EARTHANDSKY』(2019)

OF MICE & MENが2019年9月末に発表した6thアルバム。日本盤未発売

前作『DEFY』(2018年)から1年8ヶ月という比較的短いスパンで届けられた本作。思えば前作のときもその前の『COLD WORLD』(2016年)から1年4ヶ月というスパンだったので、これが今の彼らの制作ペースなんだと思うとちょっと生き急いでいるような印象も受けます。

しかし、前々作リリース後にフロントマンのオースティン・カーライルが脱退し、アーロン・ポーリー(B, Vo)がリードボーカルを兼任する形で残された4人で活動を継続していることから、現編成としてのスタンスを早く確立させたいという思いも強いのでしょう。

ハワード・ベンソン(MY CHEMICAL ROMANCEHOOBASTANKSEPULTURAなど)から、新たにジョシュ・ウィルバー(LAMB OF GODTRIVIUMSONS OF TEXASなど)へとプロデューサーを交代。それが功を奏したのか、非常に殺傷力の強い、アグレッシヴながらもメジャー感の強いメタルコア・アルバムに仕上がっています。

冒頭の「Gravedancer」で聴かせるギターフレーズがちょっとバイオリンぽくて、思わず「おおっ!?」と驚かされたところで完全に掴みはOK。その後も切れ味の強い、緩急に富んだメタルコア・ナンバーが続きます。ボーカルラインもひたすらスクリームするものから、思いっきりメロウに歌い上げるものまで変幻自在。前作の時点ですでにバンドに馴染んでいたアーロンの歌声にも、すでに「以前からそこに、当たり前のように存在していた」ような錯覚をおぼえます。

いや、にしても本作の強さ、ハンパなくないですか? 正直、これがアメリカでチャートインしない(彼らのキャリア中、初めてBillboard 200にチャートインできず)という事実にも驚くと同時にがっかり。どれだけ今のアメリカでロック(メタル含む)が虐げられているんだよ!と悲しくなります。もちろん、メジャーとインディーズのRise Recordsとではそのプロモーション力も異なるでしょう。にしても、ここまでか……と驚きを隠せません。

もちろん、チャートや売り上げ枚数がすべてではありません。TRIVIUMやBULLET FOR MY VALENTINEが2000年代半ばに築き上げた新たなメタルコア・シーンを現代にまで受け継ぎ、そして未来へと引き継いで行こうという強い意志が感じられる本作は、実はどんなヘヴィ/エクストリームミュージックの新作以上にメタル度の高い1枚なのではないでしょうか。

リリースから3ヶ月近く経ってようやく聴くことができのですが、正直「もっと早くに聴いていたら、年間ベスト企画の上位に入れたのに……」と思わずにはいられないほど、この手の作品としては高品質な1枚。今からでも遅くありません、僕みたいに「そういえば出てたよね」くらいに構えているリスナーの皆様、今すぐチェックしてみることをオススメします。いや、すぐ聴け!

 


▼OF MICE & MEN『EARTHANDSKY』
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2019年12月22日 (日)

QUIET RIOT『HOLLYWOOD COWBOYS』(2019)

2019年11月初頭リリースの、QUIET RIOT通算12作目のオリジナルアルバム。日本のみでリリースされたランディ・ローズ(G)在籍時の2作を含めると14枚目のアルバムに当たります。日本盤は同年11月下旬に発売。

アルバム制作時のメンバーはジェイムズ・タービン(Vo)、アレックス・グロッシ(G)、チャック・ライト(B)、フランキー・バネリ(Dr)。ジェイムズは前作『ROAD RAGE』(2017年)完成後にバンドを脱退したショーン・ニコルズの後任として加入し、すでにショーンが歌った状態で完成していたアルバムを歌い直す形でデビュー。本作が加入後2作目のアルバムとなるのですが、前任に習って(笑)ジェイムズも今作発売前にバンドを脱退。現在はショーンの前任(ややこしい)であるジジー・パール(ex. LOVE/HATE、ex. L.A. GUNS、ex. RATTなど)が加入したそうです。

さらにはフランキー・バネリのステージ4の膵臓癌であることを公表したのもあり、ネガティヴな話題が続くQUIET RIOT。現編成じゃないアルバムを届けられてもねえ……という思いも少なからずあるのですが、なるべく気持ちをフラットに接するようにしました。

楽曲、サウンド的にはここ最近の彼ららしい、良くも悪くも“あの時代”のアメリカン・ハードロックを聴かせてくれます。ケヴィン・ダブロウ(Vo)時代の『METAL HEALTH』(1983年)などをイメージすると「んん? 違くね?」と感じてしまうかもしれませんが、90年代の再結成以降のサウンドに比較的近い……と言えばわかってもらえるかな。

ジェイムズのボーカルは非常にレンジが広く、ケヴィンのアクの強さを想像して接するとあまりに“普通”すぎるかもしれません。そこにオーソドックスなアメリカン・ハードロックですから……そう、全体的に“普通 of 普通”なんです。平均的すぎるとでもいいましょうか。

じゃあ、悪いのかと言われると、実はまったくそんなことはない。逆に欠点を探すほうが難しいんじゃないかな。うん、だからこそ厄介な1枚なんですけどね。

優等生すぎるが故に、突出した個性や魅力が伝わってこない。BGMとして流しておくぶんには非常に気持ちよく楽しめる。ただ、何度も聴き込むほどの面白みには欠ける。これが今のQUIET RIOTの限界……という捉え方もできるのかな。『QR』(1988年)までの80's QUIET RIOTがいかに優れていたかを、改めて証明する結果にもなってしまったわけですが、まあ決して悪いアルバムではないので、“あの時代”を今の空気感で追体験したいというリスナーにはうってつけかもしれません。

あ、ひとつだけ欠点があった。ギターが思ったよりも前に出ていないところ。これは曲によりけりなんですが、特に序盤の「Don't Call It Love」や「In The Blood」みたいにダイナミックなハードロックではもっとバカでかいギターが聴きたかったなあ。それだけでも、このアルバムの印象が大きく変わると思うんですけどね。

 


▼QUIET RIOT『HOLLYWOOD COWBOYS』
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2019年12月21日 (土)

THE HU『THE GEREG』(2019)

モンゴル出身の4人組バンドTHE HUによる、2019年9月中旬リリースの1stアルバム。日本盤未発売(2019年12月現在)。

YouTubeを通じて、一部界隈ではすでに話題となっていた彼ら。僕もメタル系MVをYouTubeサーフしていた際に、たまたま引っかかったことで知ったバンドでした。ヘヴィメタル的手法の楽曲にモンゴル伝統の歌唱法であるホーミーを取り入れ、使用する楽器も馬頭琴やトプショール、チュールといったモンゴルの民族楽器や口琴などが用いられています(レコーディングではドラム&ベース、ライブではさらにギターもサポートとして参加)。

最近ではBABYMETALのUSツアーにサポートアクトとして参加したことで、ここ日本のリスナーにも浸透し始めているようですね。そんな彼らが、MOTLEY CRUEPAPA ROACHFIVE FINGER DEATH PUNCHなどが所属するEleven Seven Recordsと契約。本作で満を辞してのワールドワイドデビューを果たしました。

まあ、とにかく聴いて(あるいはMVを観て)もらえばわかるように……HR/HMの枠で括るには若干苦しさはあると思います。決して速くないし、決してヘヴィでもない。だけど、いわゆるフォークメタルの範疇で語ることはできる。でも、メタル的ギターリフもフラッシーなギターソロは皆無。テンポは基本ミディアで、どこかお経のようにも聴こえてくる。

なのに、妙に癖になるんですよね。それって、結局楽曲としてよく完成されているという証拠なのでしょう。僕が最初にMVを観た「Yuve Yuve Yu」(本アルバムにも収録)のブギービートに東洋の香りとカントリー&ウェスタンをミックスして乗せた不思議な感覚は、最初こそトリッキーに映りましたが、慣れてくると「いい曲だなあ」と素直に思えてくるのですから、不思議なものです。

歌詞はすべてモンゴル語ですし(CDには英訳付き)、シンガロングするのも基本難しそう。実際、2020年3月には初来日公演も決定していますが、会場がどんな雰囲気になるのか非常に気になります(歴史の目撃者として、現地に足を運ぶ予定です)。

民族楽器(生楽器)を使用したメタルバンドというと、最近ではディジュリドゥを取り入れたLIKE A STORMが記憶に新しいですが、彼らは普通のメタルバンドのフォーマットにディジュリドゥを取り入れているので、ライブだとディジュリドゥの良さがうまく活かせていないことも少なくありません。THE HUの場合は……どうなるんでしょうね。そのへんは、すでにアリーナクラスの会場でもライブを行なっているようなので、うまく解消できていると思いますが。

こういった“飛び道具”的存在ってデビューアルバムは高評価を得ることが多いけど、2作目、3作目と失速していく可能性も高い。彼らの場合、楽曲がしっかり作れるバンドなのはわかったけど、果たしてこのスタイルのままで生きながらえることができるのか。そのへんも非常に気になるところです。

 


▼THE HU『THE GEREG』
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2019年12月20日 (金)

STONE SOUR『HELLO, YOU BASTARDS: LIVE IN RENO』(2019)

2019年12月中旬にリリースされた、STONE SOURのライブアルバム。

STONE SOURは2007年夏にiTunes限定の配信ライブアルバム『LIVE IN MOSCOW』を発表していますが、フィジカル(CD)でのライブアルバム発売はこれが初めて。かつ、今作はデビューから在籍してきたRoadrunner Recordsではなく、Cooking Vinylからのリリースという事実に驚かされます。

本作は最新オリジナルアルバム『HYDROGRAD』(2017年)を携え行われたツアーの中から、2018年10月5日のネヴァダ州リノでの公演を収録したもの。setlist.fmで当日のセットリストを調べてみると、アルバム収録内容と完全一致するので、フルスケールでのライブを完全収録したもののようです。

選曲的には全16曲(オープニングSEの「YSIF」を除くと全15曲)中『HYDROGRAD』から7曲(歌モノ6曲)と大半を占め、それ以外は1stアルバム『STONE SOUR』(2002年)から2曲、2ndアルバム『COME WHAT(EVER) MAY』(2006年)から4曲、4thアルバム『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 1』(2013年)から2曲、5thアルバム『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 2』(2014年)から1曲という内訳。なぜか3rdアルバム『AUDIO SECRECY』(2010年)からは1曲もセレクトされていませんが、それ以外の楽曲はほぼシングルカットおよびMV制作された楽曲ばかりなので、いわば2019年時点でのSTONE SOURのグレイテスト・ヒッツ的な1枚と言えるでしょう。

こうやって過去の楽曲を交えたセットリストで現在のコリィ・テイラー(Vo)がSTONE SOURの楽曲を歌うと、やはり完全に“歌モノ・メタル”なんだなと実感させられます。あと、実は楽曲の質感や方向性がデビューから現在まで、ほぼブレていないという事実にも気付かされます。例えば序盤の最新作からの楽曲とそれ以前の楽曲を交えた構成や、中盤における「Bother」「Tired」のメドレー的な流れとそれに続く「Rose Red Violent Blue」というメロウなナンバー、「30/30-150」から始まる怒涛の代表曲の応酬……どれもが自然と連なっており、バンドの方向性がしっかり定まっていることが伺える。改めていいバンドだな、良心的なメタルバンドだなと思います。

コリィのボーカルもベストコンディションですし、バンドも破綻することなく、楽曲も持ち味を活かしたそつないプレイに徹している。悪い言い方をしてしまえば面白みに若干欠けるかなと思わなくもないけど、ここまでやられたら逆に文句言えなくなりそう。それくらい、いい曲をベストなプレイで届けようとする生真面目さが音源から伝わってきます。

現在はSLIPKNOTとしてワールドツアー中のコリィなので、しばらくはSTONE SOURとして活動することもないと思われます。なので、STONE SOURが恋しくなったらこのライブベストを聴いて、来たる次回作に思いを馳せてはいかがでしょう。

 


▼STONE SOUR『HELLO, YOU BASTARDS: LIVE IN RENO』
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2019年12月19日 (木)

ALTER BRIDGE『WALK THE SKY』(2019)

2019年10月リリースの、ALTER BRIGE通算6作目のスタジオアルバム。

前作『THE LAST HERO』(2016年)からまる3年ぶりの新作となりますが、その間に2枚組ライブCDにレアトラック集を追加した3枚組作品『LIVE AT THE O2 ARENA + RARITIES』(2017年)、オーケストラをフィーチャーしたライブCD&映像作品『LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL (FEATURING THE PARALLAX ORCHESTRA)』(2018年)を1年ごとに発表してきたので、実はそんなに間隔が空いているとは思ってなかったんですよね。それに、マイルズ・ケネディ(Vo, G)はこの3年の間に初のソロアルバム『YEAR OF THE TIGER』(2018年)を制作したり、スラッシュとのアルバム『LIVING THE DREAM』(2018年)やそれに伴うツアーや映像作品発売もありましたし(マイルズ以外のメンバーも個々の活動をしていたので、余計にね)。

そんな、常に何かしら音楽活動をしている勤勉なイメージの強い彼ら。旧知の仲であるマイケル・バスケット(TRIVIUM、スラッシュ、coldrainなど)をプロデューサーに迎えて制作されたこのニューアルバムでは従来の彼らをなぞりつつ、新たな一面を感じさせる実験も見受けられる意欲作を完成させることに成功しています。

これまでの作品と比べるとアップテンポの楽曲が比較的少なく、ミドル中心という“いかにもアメリカのアリーナロックバンドにありがち”な作風へとシフトしていますが、これは曲作りの過程がこれまでとは異なる方法で進められたことも大きく影響しているのかなと(今作ではマイルズとギターのマーク・トレモンティが互いの曲のアイデアをシェアして、ある程度固めたところにほかの2人が加わって曲を固めていったとのこと)。ポスト・グランジ的な楽曲はグランジ寄りというよりはモダンヘヴィネス以降のダーク&ヘヴィにより近づいている印象を受けますし、そこに乗る歌メロももはやグランジ云々では語りつくせない、完全にALTER BRIDGE節が確立されている。そういう意味では、彼らなりのオリジナリティで埋め尽くされた1枚と言えるでしょう。

また、ギターのリフワークも今作は過去作とはちょっと違った印象を受けるかもしれません。これも過去の曲作りとやり方を変えたことが大きいのかな(前作まではマイルズ&マークが、プロデューサーのマイケルと一緒にリフを固めていったようなので)。今作ではもっと変幻自在というか、かっちり固めるというよりも、どこか自由度の高さが伺えるんですよね。

初期のオルタナ・メタル路線とも違うし、前作で得た大衆性を引き継いではいるものの、よりヘヴィさが増しているし。メジャーもどメジャーでシーンのど真ん中にいるんだけど、気を抜いていると至るところに用意された棘がチクリと刺してくる。そんな攻めの姿勢が感じられる本作は、バンドが新たなフェーズに突入したことを宣言するような第2のデビュー作なのかもしれませんね。従来のリスナーからは評価が大きく分かれるような声が聞こえてきますが、僕は「これこそが今のアメリカン・ハードロックのど真ん中」と捉え、好意的に評価したいと思います。

 


▼ALTER BRIDGE『WALK THE SKY』
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2019年12月18日 (水)

SHARK ISLAND『BLOODLINE』(2019)

SHARK ISLANDが2019年11月11日に、フィジカル(CD)1,111枚限定でオフィシャルサイトでリリースしたニューアルバム(通算3作目かな?)。日本盤化されていませんが、デジタルリリースやストリーミングサービスにて聴くことができます。

1989年にEpic Recordsからアルバム『LAW OF THE ORDER』(通算2作目)でメジャーデビューを果たし、フロントマンのリチャード・ブラック(Vo)がマイケル・シェンカーやトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)、ボビー・ブロッツァー(RATT)ら同じ事務所に所属するメンバーによるスーパーバンド・CONTRABANDに参加(1991年)して話題となったSHARK ISLAND。その後、90年代前半に空中分解していますが、2006年には過去のデモ音源を再録した企画アルバム『GATHERING OF THE FAITHFUL』を発表するなど、不定期ながらも活動は続いていたようです。

今回発表された『BLOODLINE』は、名盤『LAW OF THE ORDER』以来となる純然たるオリジナルアルバム。奇しくも前作から30年ぶりという節目にリリースされました。

GUNS N' ROSESのブレイク以降、数々の“第二のガンズ”がさまざまなレーベルからデビューしましたが、このSHARK ISLANDもある意味ではその流れでデビューしたところがあります。とはいえ、そのサウンドやバンドの方向性はガンズのそれとは異なり、もうちょっと硬質かつダーク&ゴシックな色合いが感じられるものでした。それは、フロントマンであるリチャードのクセの強さ、圧倒的な個性の強さによるものが大きかったと思います(だからこそ、CONTRABANDのようなスーパーバンドのフロントマンにも選出されたわけですしね)。

加齢も影響してか、リチャードの歌声は若干トーンが落ち着いた印象があるものの、中音域を中心としたメロディラインは非常に聴き応えのあるものばかり。オープニングを飾る「Make A Move」こそ80年代の香り漂うアップチューンですが、これって新たにダウンチューニングこそ施されているものの、『LAW OF THE ORDER』日本盤にライブテイクがボーナストラックとして収録されていた楽曲ですよね。まさかこのタイミングに正式レコーディングされるとは、ビックリです(この曲のことを覚えていた自分にもビックリだけど)。

3曲目「Policy Of Truth」……これ、すごくいい曲じゃん。って、なんとなく聴き覚えがあるんだけど、これも再録……かと思ったら、なんてことはない、DEPECHE MODEのカバーでした(笑)。そりゃいい曲なわけだ(過去にはTRAPTもカバーしてましたね)。もともとこの楽曲の路線自体がSHARK ISLAND、いやリチャード・ブラックという表現者に合っていたのもあって、カバーの仕上がりに何の違和感もなし。これは良カバーですわ。

そのほかの楽曲も80年代末に漂っていた排他的な香りを臭わせる、どこか懐かしさを感じさせるものが多い。「Law Of The Order」なんて楽曲も含まれているけど、これも30年前のアウトテイクだったりしてね。

ただ、すべてがすべて『LAW OF THE ORDER』の延長線上にあるとは言い難く、「これこそが今のSHARK ISLAND」という主張が強く伝わってくる楽曲も少なくない。ですが、通して聴くと「あれもこれも、結局はすべてがSHARK ISLAND」と妙に納得させられる魅力が備わっており、新鮮な気持ちで接することができました。だって、久しぶりに『LAW OF THE ORDER』を聴きたくなったもん。

というわけで、こういう再結成は大歓迎。日本で注目される機会はなかなか少ないでしょうけど、ぜひとも地道に頑張っていただきたいものです。

 


▼SHARK ISLAND『BLOODLINE』
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2019年12月17日 (火)

ROXY BLUE『ROXY BLUE』(2019)

90年代前半にメジャーレーベルからデビューアルバム『WANT SOME?』(1992年)1枚のみを残して消えていったアメリカ・テネシー州出身のグラム・メタルバンド、ROXY BLUEが27年ぶり(笑)に2ndアルバムをリリース。海外では2019年8月上旬に、日本では同月下旬に発売されました。

Geffen Recordsがグランジ全盛の中、満を辞して送り出した“最後の大物”ROXY BLUE。デビューアルバムは僕も当時購入しており、そのわかりやすいキャッチーさが当時主流だったグランジのそれとは明らかに異なり、「おいおい、登場が5年遅かったよ……」と悲しくなったりもしましたが、完成度の高さはなかなかのものがあったと思います(個人的にはVAN HALENの影響下にあるハードブギー「Rob The Cradle」が大好きでした)。

まあ時代が時代だったので、彼らはあっけなく解散することになるわけですが、再結成はまだしも27年ぶりに2ndアルバムを発表することになるとは……誰得だよって話ですよね(笑)。

メンバーはトッド・ポール(Vo)、ジョシュ・ワイル(B)、スコッティ・トラメル(Dr)のオリジナルメンバー3人に、新メンバーのジェフ・コーロン(G)を加えた4人。ギタリストが変われば、展開される楽曲のスタイルも変わるのは仕方ない話なのですが……。

……ええーっ、ここまで変わる!?

ダークです。1994年くらいにやっていたら、当時のHR/HMリスナーから叩かれたヤツです。グランジ以降のダーク&ヘヴィなスタイルを軸に、適度にグルーヴィーなミドルナンバーが中心。ポップでグラマラスでわかりやすかった1stアルバムはなんだったの?とツッコミを入れたくなるほどに、27年前とは別のバンドになってしまいました。

27年もあれば人の趣味はここまで変わるんだという、当たり前っちゃあ当たり前の現実を突きつけられ、時の流れって残酷だね……と複雑な気持ちになったりもしましたが、ダークでレイドバックしたハードロックという点においては平均点以上の仕上がりかな。中でも「Collide」や「Blinders」といったバラード調の楽曲が良い味を出しており、ドラマチックな展開の「Blinders」は個人的にとても好み。

ただ、もともとVAN HALENスタイルのバンドだったこともあり、フロントマンの歌唱力/表現力に頼るというよりは、以前は曲のノリで突き進む方向性だったはず。それが新作では、表現力の高さが求められる微妙なスタイル(似たようなテンポ/曲調に対し、いかに変化を与えていくかが求められるスタイル)に変化したことにより、「本当にこのボーカルのままでいいの?」という新たな問題も生じております(フレッシュさ皆無の、ヘヴィロック向きなダミ声になっちゃいましたし)。困ったものです。

80年代を謳歌したHR/HMバンドが“冬の時代”である90年代を通過し、さらに新たなシーンが確立された2000年代を通過するとどう進化するのか。その見本のようなアルバムと言えるかもしれませんね。悪くはないです。ただ、ほかに聴くべき良作はたくさんあるのも事実。この名前にピンときた人は、過剰な期待をせずに手を出してみてはどうでしょう……前作ほどの感動は得られないかと思いますが、これはこれで“アリ”と思えたならみっけものかな。

 


▼ROXY BLUE『ROXY BLUE』
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2019年12月16日 (月)

TOM KEIFER『RISE』(2019)

2019年9月中旬にリリースされたトム・キーファーの2ndアルバム。日本盤未発売。

CINDERELLAのフロントマンが初のソロアルバム『THE WAY LIFE GOES』を発表したのが、2013年4月のこと。CINDERELLA時代最後のスタジオ作品が1994年の『STILL CLIMBING』だったので、実に19年ぶりのオリジナル新作だったわけです。このアルバムではバンド時代の3rdアルバム『HEARTBREAK STATION』(1990年)の延長線上にあるレイドバックしたスタイルが展開され、「ああ、トムはこの枯れた方向で音楽を続けるのか……」とちょっとばかし肩を落とした記憶があります。

しかし、その『THE WAY LIFE GOES』はリリース元が倒産したことで2017年にアートワーク変更&新録曲追加で別レーベルから再発売。こちらにはリジー・ヘイル(HALESTROM)をフィーチャーした名曲「Nobody's Fool」のセルフカバーなどが含まれており、ちょっとだけハードロック路線が復調したような気がしていました。

そこから2年。『THE WAY LIFE GOES』のオリジナルリリースからは6年半もの歳月を経て、ようやく2作目のソロ作品が届けられたわけですが、今回は男女7人編成による#KEIFERBAND名義でのリリースとなるようです。

さて、気になるサウンドですが……前作よりもハードロック色がかなり増しており、CINDERELLA時代の『LONG COLD WINTER』(1988年)を彷彿とさせるヘヴィ・ブルースが随所で展開されています。もちろん、前作で見せたレイドバック路線も健在で、バランス的にも(CINDERELLAでいったら)『LONG COLD WINTER』と『HEARTBREAK STATION』の中間といったところでしょうか。もはや『NIGHT SONGS』(1986年)で聴かせた硬質さは見る影もありませんが、多くのリスナーがイメージする“トム・キーファー像”はしっかりキープされている。うん、これは素直にカッコいいと思います。

サウンドの変化にあわせて、トムのボーカルもジャニス・ジョプリンばりにシャウトしまくっており、往年の輝きが復調し始めている印象を受けます。一時は喉の不調であの歌唱法を断念せざるを得ない時期もあったようですが、ここまで無理なく自然な形で“トム・キーファー節”を楽しめる日が再び訪れるなんて……感無量です。

HR/HMというよりは、THE BLACK CROWESあたりに近い印象も受けますが、そのへんのサウンドが好きなリスナーなら間違いなく気に入るはず。レイドバックしたAC/DCなんて表現もできなくもないかな。とにかく、一度でもCINDERELLAにハマったことがある人にはオススメの1枚です。

 


▼TOM KEIFER『RISE』
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2019年12月15日 (日)

NEW YEARS DAY『UNBREAKABLE』(2019)

2019年4月下旬にリリースされたNEW YEARS DAYの4thアルバム。日本盤未発売。

紅一点のアシュリー・コステロ(Vo)を中心に2005年に結成されたNEW YEARS DAYは、もともとエモやポップパンクの色が強いバンドでしたが、徐々にゴシック色やヘヴィロックテイストを強めていき、現在のスタイルは2ndアルバム『VICTIM TO VILLAIN』(2013年)で開花。前作『MALEVOLENCE』(2015年)は全米45位まで上昇するヒット作となり、日本盤もリリースされています。

前作から3年半というスパンを経て到着した本作。スコット・スティーヴンス(HALESTORMSHINEDOWN、THE WORLD ALIVEなど)、ミッシェル・マーロウ(PAPA ROACH、IN THIS MORMENT、FILTERなど)をプロデューサーに迎え、前作の延長線上にあるモダンテイストのヘヴィロックを楽しむことができます。

EDMなどエレクト調モダンポップスの影響下にあるアレンジを全面的に取り入れた楽曲群は、メタル側からも語ることができるし、昨今のポップ/ロックとして扱うこともできる。オープニングの「Come For Me」なんてDISTURBED以降のニューメタルを現代的に昇華したヘヴィナンバーなので、あの時代を通過したリスナーにも普通に楽しめるはずです。

かと思えば、イマドキのエレクトロからの影響が強い「Unbreakable」や「Shut Up」は、ヘヴィなギターこそ取り入れられているものの、根本にあるのはメタルというよりも最近のR&Bに近いもの。これをモダンヘヴィネス&ゴシックで味付けすれば、しっかりメタルで通用するものになるという成功例ではないでしょうか。

リフやリズムの刻み方がジェント以降の流れにあるものなので、この適度なカーカッシヴさがアシュリー嬢のソウルフル&パワフルな歌唱と相まって気持ちよく響く。「Poltergeist」みたいなダーク&ゴシックなスローナンバーなんて、EVANESCENCE以降という印象を受けますし、これらの先駆者が敷いてきたレールの上を走りながら、ところどころでメタル村の外へと寄り道して独自性を高めていった。本作を聴くと、そんな進化の過程も見えてくるのではないでしょうか。

個人的には“今の耳”にすごくフィットする音/曲が揃っていて、非常にツボ。数々存在する女性ボーカルHR/HMバンドの中でも群を抜いて好みです。アシュリー嬢も不思議な魅力を持つ人ですしね。

 


▼NEW YEARS DAY『UNBREAKABLE』
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2019年12月14日 (土)

KXM『CIRCLE OF DOLLS』(2019)

2019年9月中旬に発表されたKXMの3rdアルバム。日本盤は同年11月上旬にリリース。

ダグ・ピニック(Vo, B/KING'S X)、ジョージ・リンチ(G/LYNCH MOB、ex. DOKKEN)、レイ・ルジアー(Dr/KORN)という異色のトリオバンドも、気づけば結成から6年が経過。デビューアルバム『KXM』(2014年)から次作『SCATTERBRAIN』(2017年/日本未発売)まで3年以上もの歳月を要しましたが、今回は2年で完成までこぎつけています。何事もやる気があるのは良いことです(主にジョージに、でしょうけど)。

さて、このバンド。過去2作は正直曲がそこまで魅力的ではありませんでした。良く言えばジャムセッションをもとに作られたグルーヴ重視の楽曲で固められている、悪く言えば日本人には大味すぎて平坦に聞こえてしまう。ぶっちゃけ、日本人じゃなくても後者の意見のほうが多かったんじゃないかという気がしています(特に1stアルバムはね)。

毎回12〜3曲収録されていて、トータルランニングも60分を超えている。なのに、比較的似たような楽曲ばかりで1枚通して聴くのも疲れる。前作では楽曲のバラエティが少し広がったおかげでだいぶマシになりましたけど、それでも13曲はキツイ、せめて9曲くらいで収めてくれたらというのが本音でした。

さて、本作はどうでしょう。オープニングの「War Of Words」のアッパー感にいきなりノックアウトされ、サイケデリックな「Mind Swamp」に魅せられ、パーカッシヴな「Circle Of Dolls」でノセられる。うん、掴みは成功していると思います。

4曲目「Lightning」の気怠さに少々不安を覚えますが、続く「Time Flies」で息を吹き返す。この曲、ダグの節回しといいジョージの緩急の効いたギタープレイといい、新境地なんじゃないでしょうか(ちょっと日本のV系に近いものがあるサウンドですしね)。

LYNCH MOB meets KING'S Xという表現がぴったりな「Twice」、KORNのビート感にカラフルなKING'S X節を散りばめた「Big As The Sun」など、中盤も聴かせる曲が続くけど、不思議と退屈さを感じることなくスルスル聴き進めてしまう……のですが、やっぱり9曲目「A Day Without Me」あたりからちょっとキツくなり始めます。ラストの「The Border」にちょっとだけ救われますが、正直ここらへんは蛇足感の強い曲も少なくないかなと。うん、過去イチ良かっただけに勿体ない。

やっぱり13曲って多すぎなんですよね。アルバムの輪郭がぼやけてしまっている。せっかくダグのサイケ感&ソウルフィーリングを生かした良曲が増えているだけに、それをミドルテンポの退屈な曲で帳消しにしてしまうのだけは本当にいただけない。ジョージのプレイも激しいものからいぶし銀の味わい深いものまでいろいろ楽しめるんだから、作った曲を全部詰め込むんじゃなくてせめて最長10曲まで絞ってほしいな。

それこそ、「A Day Without Me」「Wild Awake」「Shadow Lover」あたりを削って50分前後のアルバムとしてまとめたらこのバンドの評価、もっと上がると思うんだけどねえ。

 


▼KXM『CIRCLE OF DOLLS』
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2019年12月13日 (金)

DREAM THEATER『DISTANCE OVER TIME』(2019)

2019年2月下旬にリリースされたDREAM THEATERの14thアルバム。前作『THE ASTONISHING』(2016年)から3年ぶり、Inside Out Music移籍第1弾アルバムとなります(流通はソニー)。

2枚組でトータル130分超という大ボリュームだった前作のあとに聴くと、非常にシンプルに感じられるから不思議。いや、前のやつが無駄に長すぎただけか。個人的には前作、ピンと来る曲も少なく、ただ時間だけが流れていくというイメージが強くて、実はトータルで聴いたのは数回のみ。気に入った曲だけをピックアップして、プレイリストで再生していたという……同じ聴き方した人、多いんじゃないでしょうか。

そこと比べたら(って、すでに閾値が低いですが)、本作の聴きやすいことといったら……8〜9分台の楽曲も2曲ありますが、基本的には4〜6分台の楽曲が中心。コンセプトアルバムや組曲のような形ではないし、曲単位で演奏のメリハリもしっかりしているから、1曲ごと気軽に楽しめるのも大きい。今の主流的には3分台になってくるので、そこと比べたら全体的に長尺すぎるっちゃあすぎるんですけど、それでも気軽に聴けてしまうのはありがたい。

でも、全面的に手放しで絶賛できる1枚!……というわけでもないんですよ。

以前も書いたように、僕自身は『IMAGES AND WORDS』(1992年)信者でもないし、むしろその後の『AWAKE』(1994年)のほうが好みっていう変わり者なので、そんなリスナーのいち意見という程度で収めてほしいのですが……。

このバンドって、こんなにメロディが弱かったっけ? というのが、本作最大の問題点なのでは。これって、ジェイムズ・ラブリエ(Vo)の声域が加齢に狭まったことも大きいのかな。近年の来日公演、特に前回の『IMAGES AND WORDS』再現ライブ時にそこは嫌という程実感させられましたが、こうやって新曲でいざその問題にぶち当たるといろいろ考えさせられるところがあります。

狭い声域の中でいかに魅力的なメロディを作り出すか……って、そりゃあ限界がありますよね。特に近年のアルバムではそういった命題と向き合いながら創作活動を続けてきたと思うのですが、そこに関してもそろそろ限界を迎えているのではないでしょうか。演奏面でなんとか標準以上のレベルをキープしているものの、肝心のメロディが平坦だと飽きがくるのも早いわけでして。

なんだかね、一時期のイアン・ギラン(DEEP PURPLE)を見ているようで、ちょっとつらくなるんですよ。うん(もちろん、ギラン以上に歌えているんですけどね、圧倒的に)。

この問題、DEEP PURPLEについては作品を重ねていく中である程度クリアできていると思うのですが、DREAM THEATERの場合はどうすることが正解なんでしょうね。デビュー30周年というこのタイミングに、彼らはすごく難しいフェーズに突入してしまったのかもしれません。

いろんな複雑な思いが交差する、良くも悪くも印象に残る1枚です。

 


▼DREAM THEATER『DISTANCE OVER TIME』
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2019年12月12日 (木)

FLYING COLORS『THIRD DEGREE』(2019)

2019年10月初頭にリリースされたFLYING COLORSの3rdアルバム。日本未発売。

彼らはマイク・ポートノイ(Dr/ex. DREAM THEATERSONS OF APOLLO、THE WINERY DOGSなど)やスティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE、DIXIE DREGS、ex. KANSASなど)を中心に結成された技巧派プログレッシヴロックバンド。メンバーは2人のほか、USプログレ界では知らぬ者はいないニール・モーズ(Key, Vo/TRANSATLANTIC、ex. SPOCK'S BEARDなど)、デイヴ・ラルー(B/STEVE MORSE BAND、ex. DIXIE DREGSなど)、ケイシー・マクファーソン(Vo, G/ALPHA REVなど)という5人編成で、この名前から想像できるテクニカルかつドラマチックなサウンドを武器として2011年頃からコンスタントに活動しています。

オリジナル作品としては前作『SECOND NATURE』(2014年)から5年ぶりとなる本作は、基本路線は過去2作と変わらず。5分台の楽曲が3曲、6分台が1曲、7分台が3曲、10分超の大作が2曲と相変わらずの大作志向で、全9曲で66分という長尺なトータルランニングは、最近のサブスクリプションサービスを中心とした音楽との接し方に慣れてしまった層には少々キツイかもしれませんが、思えば今年はTOOLの新作『FEAR INOCULUM』もあったことですし、意外とこういう作品もフラットに楽しまれているのかもしれませんね。

いかにもアメリカン・プログレという牧歌的なメロディ&空気感は、例えば同系統のメタル寄りプログレと比べるとユルさは否めません。いや、ユルさというか大人しいというか。もちろん、曲によってはスリリングな演奏も楽しめますよ。ですが、「歌モノAORとプログレを同時に楽しめる」くらいの軽い気持ちで接するとがっかりせずに済むかもしれません。

楽曲の持つ世界観は確実にニール・モーズ、そしてスティーヴ・モーズからのインプットが大きいのでしょう。その2人が過去に携わった作品と共通するものが大いに感じられます。個人的には、DEEP PURPLEのスティーヴ・モーズ加入第1弾アルバム『PURPENDICULAR』(1996年)とリンクするものも見つけられた気がして、「あのアルバムが好きなんだから、そりゃあ楽しめるわけだ」と妙に納得したものです。

それに、この緩やかな世界観はケイシーのボーカルのせいもあるんでしょうね。BOSTONをもっとソフトにしたようで、だけどバックがバキバキ演奏しまくるという。それもあって、個人的にツボなのかな。

ポートノイのファンは、DREAM THEATER的メタリックな方向性はSONS OF APOLLOに求めればいいわけですから、この2つのプログレ系バンドが共存できている今はありがたい状況なのでは。個人的には色の異なる2つのバンドで彼のプレイを楽しめるのはうれしい限りです(年明けにリリースされるSONS OF APOLLOの新作、すでに聴いておりますが素晴らしい出来です)。

AORとしても楽しめるし、マニアックなテクニカルロックとしても存分に楽しめる。本当に“痒いところに手が届く”バンドですね。

 


▼FLYING COLORS『THIRD DEGREE』
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2019年12月11日 (水)

LEPROUS『PITFALLS』(2019)

LEPROUSが2019年10月下旬に発表した6thアルバム。日本盤は同年11月初頭に発売。

LEPROUSはノルウェーの5人組バンドで、モダンヘヴィネスやオルタナティブメタルにプログレッシブロックの要素をミックスしたサウンドと、エイナル・スーベルグ(Vo, Syn)の哀愁味を帯びた深みのある歌声とが相まって、唯一無二のスタイルを確立。ここ日本ではEMPERORのフロントマン、イーサーンのソロ来日時にバックバンドを務めたことで注目を集め、2013年のイーサーン再来日時には3rdアルバム『COAL』で日本デビューも果たしています。

前作『MALINA』(2017年)から2年ぶりに発表された今作。日本盤は常にTrooper Entertainmentからリリースされているのであまり気づきませんでしたが、実は海外盤はInside Out Musicからのリリースなんですよね。Inside Out Musicというと、DREAM THEATERが最新作『DISTANCE OVER TIME』(2019年)をリリースしたレーベルであると同時に、SONS OF APOLLOやHAKEN、FROST*あたりが在籍するプログレメタル/テクニカルメタルの専門レーベル。EMPERORやイーサーンのイメージが強い彼らですが、なるほど、こう聞くと納得するものがありますね。

前作から引き続き、デヴィッド・カスティロ(OPETHKATATONIAなど)を共同プロデューサーに、アダム・ノーブル(PLACEBOBIFFY CLYROなど)をミックスエンジニアに迎えて制作した今作は、前作にあったスリリングなアンサンブルが若干影を潜め、穏やかさの中に艶や色気が見え隠れする、ある意味でリスニング向きに舵を切った意欲作に仕上がっています。

初期の彼らに備わっていた、いわゆるHR/HM的要素はかなり減退しており、そちら側を期待するとガッカリするかもしれません。が、アンビエントやポストロック、エレクトロ・ロック色を好むテクニカル志向のリスナーなら間違いなく気に入るはず。ちょっと毛色は違うかもしれませんが、ここ数作のMUSEを受け入れられる方にこそ、まず本作に触れてみることをオススメします。

また、今作の興味深いポイントにトリップホップにも通ずる世界観が感じられることも挙げられると思います。面白いことに、本作の日本盤ボーナストラックにはMASSIVE ATTACK「Angel」のカバーが収録されており、奇しくもトリップホップつながりで奇跡的なシンクロを遂げております(いや、奇跡も何も、MASSIVE ATTACKからの影響があったからこういう路線に進化したんだろうけど。なので、カバーも納得いくわけです)。

ひとつの場所にとどまらず、常に変化を続けていくという強い意志が感じられる本作。上記のバンド/アーティスト名に引っ掛かりを感じた人は、間違いなく気に入るはずです。もっと言えば、本作はSIGUR ROSあたりとの共通点も見受けられるので、ぜひともメタル村の外の人たちにもっと見つかってほしいと願っております。

 


▼LEPROUS『PITFALLS』
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2019年12月10日 (火)

SWEET OBLIVION『SWEET OBLIVION』(2019)

QUEENSRYCHEのフロントマン、ジェフ・テイトが新たに立ち上げたプロジェクト・SWEET OBLIVIONのデビューアルバム。2019年6月発売。

QUEENSRYCHE脱退後、もうひとつの同名バンドを立ち上げ我々を混乱に陥れた張本人ジェフ・テイト。その後、OPERATION: MINDCRIMEとバンド名を変え活動を続けていましたが、ここではイタリアのプログレッシヴ/テクニカル・メタルバンドDGMのシモーネ・ムラローニ(G, B)と新たにタッグを組むことで、メロディアスな(かつ比較的モダンな)王道HR/HMにチャレンジしています。

良くも悪くも、オルタナメタルに特化した『PROMISED LAND』(1994年)以降の路線にこだわり続けたジェフですが、本作では良い意味でそれ以前のサウンドスタイル、特に名作『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)や続く『EMPIRE』(1990年)あたりに存在した魅力が復調しているように感じます。

とはいえ、まったく同じことをやっているわけではなく、そこにはシモーネのメロディセンス、彼と同じDGMのメンバーであるエマニュエル・カサーリ(Key)、ファビオ・コスタンティーノ(Dr)を迎えたことで実現した適度にテクニカルかつモダンな演奏が功を奏し、オルタナ路線には感じられなかったキラメキや艶やかさまで見出すことができるのですから、シモーネ様様といったところでしょうか。

そして、ジェフ・テイトという稀代のシンガーはやはりヘヴィメタルを歌うべき人間なのだということにも、ここで改めて気付かされるはずです。オルタナメタルやらモダンヘヴィネス以降の頭でっかちなHR/HMも決して悪いわけじゃない。だけど、モノには限度があるし、そればかり延々続けられてもお客は飽きてしまうわけです。だって、そこばかりを求めて老舗(=ジェフのもと)を訪れているわけではないのですから。みんな最新のテイストも美味しがってくれるけど、結局一番食べたいのは定番の“あの”なわけですしね。

期せずして、そういった老舗の味が復活することになったSWEET OBLIVIONというプロジェクト。きっと今現在のQUEENSRYCHEのファンも喜んでくれるはず。現QUEENSRYCHEが最新作『THE VERDICT』(2019年)で示した路線にも比較的近く、適度に『EMPIRE』あたりのカラーが含まれている本作は、もしかしたら“あの頃”のQUEENSRYCHEが本来進むべきだった未来の姿なのかもしれませんね。

もし、このプロジェクトが継続的に作品を発表してくれるのなら、きっと次のアルバムはもっと練りこまれたメロディの楽しめる、真の意味での「“あの頃”のQUEENSRYCHEの続き」が見られるのかも……そんな淡い期待をしつつ、このプロジェクトの成功を祈りたいと思います。

 


▼SWEET OBLIVION『SWEET OBLIVION』
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2019年12月 9日 (月)

H.E.R.O.『HUMANIC』(2019)

2019年4月下旬にリリースされた、H.E.R.O.の1stアルバム。日本盤も海外盤とほぼ同時期に発表されています。

H.E.R.O.はクリストファー・スティアネ(Vo, G)、アナス“アンディ”・キルケゴール(Dr)、ソレン・イテノフ(G)からなるデンマーク出身のハードロックバンド。同郷のDIZZY MIZZ LIZZYのサポートアクトを通じて知名度を上げ、日本デビュー前に2018年11月のイベント『HOKUO LOUD NIGHT』で初来日を果たしたほか、2019年1月のスラッシュ来日公演でサポートアクトを経験。耳の早いリスナーの間では、その憂いあるメロディとフレッシュなサウンドが人気を博し、本格的な日本デビューを待ち望む声が高まっていたそうです。

デビューアルバムは、DIZZY MIZZ LIZZYやD-A-Dといった同郷バンドを多数手がけてきたニック・フォスをエグゼクティブ・プロデューサーに迎え制作。もともとメンバー3人とも、本国ではそれぞれキャリアを重ねてきたプロフェッショナルなミュージシャンなこともあり、本作に収められた楽曲はどれも完成度の高いものばかり。サウンド的にはハードロックという狭い枠をすでに超えており、エレクトロの要素を味付けに用いたモダンなポップテイストも至るところに見受けられます。

また、例えばヘヴィさひとつ取り上げても、そこにはクラシックロック的なヘヴィさは皆無で、むしろグランジ以降のヘヴィさやニューメタルを通過したヘヴィさなど、あくまで“90年代を通過したゼロ年代”以降のそれ。しかも、そういったヘヴィさはサウンドの軸にあるわけではなく、こちらもテイストとして取り入れているといった雰囲気で、それよりもさらに深いところにある軸からは「ただ単に、いい曲を作りたい」という強い欲求が透けて見える。

そう、どの曲も本当にメロディがしっかり練り込まれていて、さまざまなテイストのバンドサウンドはあくまでその美メロを最大限に活かすための手段にすぎないのです。そのへんの職人っぽさに好き嫌いが分かれそうな気もしますが、僕は素直に受け入れられました。だって、結局は曲の良さがすべてですから。

もともとシンガーソングライターとして活躍していたクリストファーの歌声もクセが強すぎず、どの曲も無難に歌いこなしている。そのへんの没個性は少々不満と言えば確かに不満なのですが、それを補って余るバンドアンサンブルの妙とグッドメロディがあるので、帳消しになっているところもあります。

でも、ライブであれだけ評価が高まったのだから、きっと生で観たら/聴いたらもっと魅力的なのかもしれませんね。来年1月末〜2月には早くも単独再来日も決定したので、機会があったらそこで確かめてみたいと思います。

 


▼H.E.R.O.『HUMANIC』
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2019年12月 8日 (日)

CROWN THE EMPIRE『SUDDEN SKY』(2019)

2019年7月中旬に発表された、CROWN THE EMPIREの4thアルバム。日本盤未発売。

もともとはツインボーカル体制の5人組だった彼らは、アメリカ・ダラス出身のメタルコア/ポストハードコアバンド。2017年初頭にコ・リードボーカル(スクリーム担当)のデヴィッドが脱退し、アンドリュー・ヴェラスケス(Vo)を中心に置きヘイデン・ツリー(B)がスクリームを兼任する形で活動を継続。2018年にはこの4人編成で来日を果たし、日本のcoldrainとツーマンツアーを行い話題となりました。また、CROWN THE EMPIREは過去にもONE OK ROCKと全米ツアーを行った経験もあり、日本のリスナーには若干馴染みのある存在と言えるかもしれません。

4人編成となり初めて制作した本作は、過去の作品と比べるとさすがにスクリームの比率が低くなっており、アンドリューのクリーンボイスを前面に打ち出した(かつ、効果的に用いた)“わかりやすい”作風にシフトしています。

もちろん、適度なヘヴィさやザクザクした気持ち良いギターサウンドは存分に楽しむことがでいます。ぶっちゃけ、ボーカルがクリーンパート1人に重点を置くことで、ギターの見せ方/聞かせ方は以前よりも前に出たものになっているのではないでしょうか。逆に言えば、それくらい過去の作品は2人のシンガーの個性が強かったわけでもあるのですが。

バンドとしてのグルーヴやアレンジでどうこうより、本作はグッドメロディと伸びやかなボーカルを最良の形で活かした曲を作ることに重点を置いている。結果、キャッチーでコンパクトでわかりやすいアルバムが完成した、と。うん、すごくわかりやすい流れですよね。スクリームも適度な頻度で挿入され、アグレッションを表現するという点において非常によいアクセントとなっている。むしろ、昔からこれくらいの比率で構築されており、このバランスがちょうどいいんじゃないかと思えるほど。

この感じ、誰かに似ているな……とアルバムを聴き進めていたのですが、気づきました。先に挙げたcoldrainです。特にここ最近の彼らですね。「What I Am」や「Red Pills」みたいな曲を聴くと、よりそう感じられるのではないでしょうか。

歌で戦うことに対してちゃんと自信のついた最近のcoldrainは無敵の一言。最新アルバム『THE SIDE EFFECT』(2019年)はもはやメタルだラウドだハードコアだと括るのが馬鹿らしくなるくらいにオリジナリティに長けた内容で、今のCROWN THE EMPIREって実はそこに追いつこうとしているんじゃないか……そんな気すらしてきます。

それくらい歌心を持った今のCROWN THE EMPIRE。すごく優れたアルバムだと思いますが、実はこれもまだ通過点でしかないんでしょうね。そういう意味では、この次に誕生するであろう新作こそ彼らの代表作になるのではないか。そんな気がしています。今はこの変化/進化を前向きに受け入れたいと思います。

 


▼CROWN THE EMPIRE『SUDDEN SKY』
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2019年12月 7日 (土)

BAD OMENS『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME』(2019)

2019年8月初頭にリリースされた、BAD OMENSの2ndアルバム。日本盤未発売。

2016年夏、Sumerian Recordsからアルバム『BAD OMENS』でデビューを飾ったアメリカ産のメタルコアバンド。当時はツインギター編成の5人組でしたが、前任ベーシストが怪我で脱退してからは、ギタリストのひとりがベースに転向し、残された4人で活動を継続。その新体制で制作されたのが、この3年ぶりの新作です。

フロントマンであるノア・セバスチャン(Vo)の過去の発言やそのボーカルスタイルから、BRING ME THE HORIZONと比較されることの多かった彼ら。散々言われたからか、本作からはそういった色合い(特にボーカルスタイルから)は払拭されつつあります。とはいえ、やっぱり好きなんだろうな……と感じさせるポイントも要所要所で残されており、そこを好意的に受け取るか、あるいは単なるフォロワーとして切り捨てるかで、このバンドに対する評価も大きく変わるのではないかと思います。

ですが、本作はそういった穿った見方を悔い改めたくなるくらいよくできた1枚。オープニング「Kingdom Of Cards」での穏やかな歌モノ/ポップ路線には面食らいますが、続く「Running In Cricles」では前作にあった激しさが増し始める。先行公開されたキャッチーな「Careful What You Wish For」のムーディな作りは最近の(無理やり見ようとすれば)BMTHとの共通点も見つけられるものの、4曲目「The Hell I Overcame」から続く数曲で展開されるハードコアなサウンド/アレンジは圧巻の一言。適度なキャッチーさも備わっており、ただ激しく“押す”だけでは終わらない魅力が至るところに散りばめられている。5曲目「Dethrone」のカオスさや6曲目「Blood」でのモダンメタル的味付けなど、とにかく1曲1曲が個性的でまったく飽きがこないんです。

特に印象的なのが、終盤に収められた「Said & Done」と「Burning Out」というムーディな2曲。前者はLINKIN PARKなどモダンメタルコア以前のニューメタル的な香りが強く、後者はそれこそBMTH以降のポストハードコアといったイメージ。同じようなスタイルでも、ルーツの異なる2曲を並べることでその違いを見せつける構成に、思わずニヤリとしてしまいます。

そして、ラストを飾る「If I'm There」。これも穏やかな楽曲なのですが、前2曲からの流れといい非常にニクい構成だなと思います。オープニングのソウルフルな流れとこのエンディング。どこまで計算づくで配置したのか、個人的にも一度メンバーに聞いてみたいくらいです。

確実に前作よりスケールアップを果たした本作は、現在のBMTHほど“外側への開放”は感じられませんが、狭いシーンの中から飛び出そうとする気概は十分に伝わってくる、非常に好感の持てる1枚です。いや、これは年間ベストクラスなんじゃないの?

 


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2019年12月 6日 (金)

CRYPTOPSY『THE BOOK OF SUFFERING』(2019)

CRYPTOPSYが2019年6月中旬にリリースした日本限定アルバム。

全8曲が収録された本作は、同年7月中旬に実現した7年ぶりの来日公演を記念して企画されたもので、もともとはアルバム前半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』(2015年)、後半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』(2018年)が初出という、連作となったシリーズEPをひとまとめにした内容となっています。

現在のメンバーはフロ、マット・マギャキー(Vo)、クリス・ドナルドソン(G)、オリヴィエ・ピナール(B)、フロ・モーニエ(Dr)の4人。ロード・ワーム(Vo)が脱退してからもだいぶ経ちますし、もはやこの4人編成は安定感すら感じられます。

事実、僕も7月13日の代官山UNIT公演に足を運んでいますが、計算され尽くしたプレイの数々と、音数が多いにも関わらずすべての音の粒が感じ取れるほどクリアなサウンドは、この手のバンドとしては異例といえるもので、熱狂的なリアクションを見せるオーディエンスとの相乗効果により、今まで観た彼らのステージの中でも一番と呼べる内容でした。まあとにかく、フロ・モーニエ先生の千手観音ドラミングが圧巻の一言で、あれだけ連打しても音の粒一つひとつが感じられるのは奇跡的だなと思うわけです。観られて本当によかった。

さて、改めてアルバムの話題に戻りましょう。前述のとおり、本作は2つの録音時期が異なるEPをひとつにまとめたもので、2作品の間には3年というタイムラグが生じています。しかし、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』のラストである4曲目「Framed by Blood」と、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』のオープニング曲である5曲目「The Wretched Living」の間にその“3年の差”は一切感じられません。そこには『THE BOOK OF SUFFERING』というひとつのテーマのもとに制作された連作という要素も大きく影響しているのでしょうか。

むしろ、アナログでいうところのA面(『TOME I』)とB面(『TOME II』)という形で、うまく色付けされているとさえ感じられる。つまり、これら8曲は本来収まるべき場所に、収まるべき形で収まったと言えるのではないでしょうか。

メロディやドラマチックさは皆無で、終始無慈悲なまでに轟音で攻めまくり、ときには複雑怪奇な展開で聴き手を驚かせる、CRYPTOPSYならではの個性はどの曲でも健在。むしろ、1曲1曲の際立ちはなかなかのものがあると思います。それはアルバムという形を想定して録音したものではなく、4曲のみというEPとして録音したのも功を奏しているのかもしれませんね。

正式なオリジナルアルバムではありませんし、この形で聴くことができるのは日本のファンのみですが、エクストリームメタルのエクストリームたる所以を存分に味わえる貴重な1枚はぜひとも2019年のうちに触れておいてもらいたいところです。

 


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2019年12月 5日 (木)

ABBATH『OUTSTRIDER』(2019)

2019年7月上旬にリリースされた、ABBATHの2ndアルバム。

ABBATHとはノルウェーの伝説的ブラックメタルバンドIMMORTALのフロントマンとして活躍したアバス・エイケモ(Vo, G)が、バンド脱退後の2015年に自身の名前を冠して結成した4人組バンド。同年秋の『LOUD PARK 2015』ではアルバムリリース前にも関わらず、早くも初来日公演が実現しており、その際にはアグレッシブなステージングとは相反した、アバスの日常におけるお茶目なキャラクターが一部に話題にもなったのは記憶に新しいと思います。

2016年に発表されたデビューアルバム『ABBATH』はIMMORTAL時代からひとつのスタイルにこだわらないアバスらしく、スラッシュメタルやパワーメタルなど正統派ヘヴィメタルからの影響も見え隠れする意欲作でした(ボーナストラックとしてJUDAS PRIESTのカバーも収録されていましたしね)。ということは、本作も前の作品とは若干テイストの異なる興味深い内容に仕上がっているはず……と、僕は聴く前からワクワクしていたわけです。

実際に届いたこのニューアルバムは、ある意味で自分の想像どおり、そしてある意味では想像をはるかに超えた力作に仕上がっていました。

例えば、前作でもそうでしたが、すでにABBATHはブラックメタルという狭い範疇にこだわっていないということ。もちろんブラックメタル的要素も演奏面からふんだんに感じることができるのですが、それ以上にピュアなクラシックメタルからの影響がストレートに表れているのです。そういった点は前作同様、本作にも楽曲に彩りを与えております。

基本的な路線は前作『ABBATH』の延長線上にあると言える内容で、そこに冠しては想像どおりであったわけですが、もう一方の「想像をはるかに超えた」という点……実はこちら、アバスのルーツといえる80年代初頭のオールドスクールなHR/HM、特にブラックメタルの始祖的存在であるVENOMや彼らを生み出したNWOBHMシーン、さらにはスウェーデンのBATHORYなどからの影響が表面化。前作でのドラマチックかつオーソドックスな正統派メタルと、ブラックメタルのルーツがミックスされ、そこに現代的な演奏スタイルが加わる……はい、新しいABBATHの出来上がり、というわけです。

BATHORYからの影響という点に関しては、アルバムのエンディングを飾る「Pace Till Death」は文字どおりBATHORYのカバーでストレートに表現している。一周回ってここまでど直球なブラックメタルを、今のアバスが表現するのはいろんな意味で感慨深いものがあります。と同時に、改めてアバスというアーティストの(ブラックメタルという狭い範疇で括っておくには勿体ないほどの)非凡さを感じさせる仕上がりでもあると思いませんか。

ブラックメタルというと意図的に劣悪な録音状態の作品も少なくないですか、こういった高品質で、かつブラックメタルの進化した姿を表したアルバムが正当な評価を下されることを願ってやみません。

 


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2019年12月 4日 (水)

DESTRUCTION『BORN TO PERISH』(2019)

2019年8月上旬にリリースされた、DESTRUCTIONのニューアルバム。

彼らの歴史って「シュミーア(Vo, B)在籍時」「『CRACKED BRAIN』期」「グルーヴメタル期」の3つに分けられると思うのですが(シュミーア在籍時だけでも3人編成と4人編成で分けられたり、80年代と2000年代以降に分けられたりするのですが、ここでは割愛)、基本的に「グルーヴメタル期」は歴史に含まない派もいるみたいでして……そうなると、今作が一体何作目のオリジナルアルバムになるのかまったく見当がつきませんが、まああれです、10数作目です(適当)。

さて、シュミーア(Vo,B)とマイク(G)を中心に40年近くにわたり活動を続けるDESTRUCTIONですが、シュミーアが1999年に復帰してからはトリオ編成が20年近く続いてきました(その間、ドラマーの交代はありましたが)。常に「3人編成が一番だ」と公言し、80年代末からの4人編成時代を“なかった”こととしてきた彼らが、2019年に入っていきなり若手のダミア・エスキッチ(G)とベテランなランディ・ブラック(Dr/ex. ANNIHILATOR、PRIMAL FEARなど)を新メンバーに迎え再び4人編成に返り咲き。この布陣で完成させたのが、この『BORN TO PERISH』なわけです。

ぶっちゃけ、4人になったことに驚きは隠せませんでしたが、実際にアルバムを聴けばギターでの表現に多彩さが加わり、楽曲アレンジの幅も確実に広がったことが理解できるはずです。比較的ストレートなスラッシュナンバーが多かった近作と比べても、今作での技巧的アレンジはとても新鮮に映るはずです。まあ80年代末のテクニカル路線とは若干異なりますが、ランディ・ブラックが安定感の強いドラミングで地盤を支えるこの“ど直球なパワーゲーム”も悪くないですよね。

オリジナルアルバムも10数作と重ねていけば、バンドとしての新鮮さはどんどん薄れていきますし、実際ここから新しい要素を入れようとするとファンから反感を買ってもおかしくはありません。しかし、DESTRUCITONにおける今回の変化は……過去に経験したさまざまな変化を考慮しても非常にポジティブに受け入れられるものではないでしょうか。うん、これは変化というよりも進化と呼ぶにふさわしいものだと僕は解釈しています。

ただ、ひとつだけ残念なのが「これ!」と言えるキメの1曲が見当たらなかったこと。ここに今作を代表するようなキラーチューンが1曲でも含まれていたら、問答無用の最高傑作になっていたのではないか……そう思わずにはいられません。それでも、ここ数作の中でも高く評価されるべき1枚だと思いますけどね。好きな人にはたまらない、無心で楽しめるスラッシュメタルアルバムですよ。

 


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2019年12月 3日 (火)

MAMIFFER『THE BRILLIANT TABERNACLE』(2019)

2019年11月初旬にリリースされた、MAMIFFERの5thアルバム。

MAMIFFERはマルチプレイヤーでもある才女フェイス・コロッチャ(Vo, Piano, Organ, etc.)と、公私ともに彼女のパートナーであるアーロン・ターナー(G)の2人からなる、アメリカ・シアトルを拠点に活動する男女2人組ユニット。ドローンやアンビエントなどに属する、HR/HMやラウドロックとは距離のあるサウンドを主軸としているものの、ISISやSUMAC、OLD MAN GLOOMなどのエクストリームミュージック系バンドで活躍してきたアーロンが途中から正式加入したことで、ヘヴィな要素が急増。どこかドリーミーながらも重厚さが散りばめられた独特のサウンドは、エスクトリームミュージックやオルタナティヴロック、ポストロックを愛聴するリスナーにも十分にアピールするものとなっています。特にここ数作はヘヴィ系を好むリスナーには親しまれたようで、過去3回行われた来日公演も見事成功を収めています。

前作『THE WORLD UNSEEN』(2016年)から3年ぶりに発表された本作は、通常のアルバムのように一定期間に集中して制作されたものとは異なり、2013年頃(3rdアルバム『STATU NASCENDI』制作時)から2018年にかけて断続的に行われた数々のセッションから、当時制作していたアルバムにはそぐわなかった楽曲を軸に、新たに方向性を絞り込んで完成させた1枚です。

近作で聴けたアーロンのダイナミックなギターサウンドはオープニングトラック「All That Is Beautiful」などでは楽しめるものの、基本的には抑え気味で、MANIFFER=フェイスの原点でもあるピアノとエレクトロニクスに主軸を置いた作風にシフトチェンジ。近年ますます存在感を増しているフェイスのボーカルに焦点を当てた、“静”の要素が強い作品集となっています。ボーカリストとしてのフェイスの表現力が著しく成長している事実は、本作における最大の聴きどころと言えるのではないでしょうか。

また、どこか宗教音楽のような厳かさを伴う楽曲の数々は、方向性的に最近リリースされたチェルシー・ウルフの最新作『BIRTH OF VIOLENCE』との共通点も感じられます。向こうはアメリカのフォーキーなルーツミュージックに回帰した1枚でしたが、こちらは同じルーツミュージックでも、もっとトラッドミュージック的と言いましょうか。しかも、チェルシー・ウルフはアコースティック楽器に主軸を置いたオーガニックな作品でしたが、MAMIFFERはピアノとエレクトロニクスをベースにした近代音楽的な作風。こういった違いはあるものの、向かおうとしている先は実はそう変わらないのではないか。2作を聴くと、そんな印象を受けるのですが、いかがでしょう?

エクストリームミュージックという括りで考えると、こういった試みが同ジャンル進化におけるひとつの到達点、もしくは通過点と捉えることもできるのではないでしょうか。そういった意味でも、このMAMIFFERの新作が2019年の音楽シーンで果たす役割は非常に重要な気がしてなりません。個人的には年間ベストアルバム候補の1枚です。

なお、本作は日本盤のみ20分にもおよぶアンビエントトラック「Salt Marsh」を収めたボーナスディスク付きの2枚組仕様。配信バージョンではこちらのトラックは聴くことができないので、ぜひフィジカル(かつ日本盤)で楽しんでもらいたいところです。

 


▼MAMIFFER『THE BRILLIANT TABERNACLE』
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2019年12月 2日 (月)

ALICE COOPER『BREADCRUMBS』(2019)

アリス・クーパーが2019年9月に発表した6曲入りEP。海外ではアナログで2000枚限定リリースというレアアイテムでしたが、日本では同年11月末にCDとして発売されました。

今年はHOLLYWOOD VAMPIRESとして6月に新作アルバム『RISE』をリリースしたばかりのアリスですが、ソロ名義の新作は2017年のアルバム『PARANORMAL』以来2年ぶり。とはいえ、今作には純粋な新曲は1曲しか含まれておらず、1曲は『THE EYES OF ALICE COOPER』(2003年)収録曲「Detroit City」のリメイク「Detroit City 2020」、残り4曲はカバー(このうち1曲はメドレーなので、正式には5曲のカバー)というバラエティに富んだ構成となっています。

とはいえ、新録曲のみで構成された本作は、『PARANORMAL』およびHOLLYWOOD VAMPIRESでの経験が昇華された聴き応えのある、ポップでパンキッシュなガレージロック集。ドライブ感の強い「Detroit City 2020」や「Go Man Go」やニューヨークパンクの香りがちらつく「East Side Story」(ボブ・シーガーのカバー)、ファンキーさが際立つ「Your Mama Won’t Like Me」(スージー・クアトロのカバー)、ブルージーかつソウルフルな「Devil With A Blue Dress On」(MITCH RYDER & THE DETROIT WHEELSカバー)と「Chains Of Love」(THE DIRTBOMBSカバー)、初期のアリス・クーパーにも通ずる世界観の「Sister Anne」(MC5カバー)と、たった6曲(実質7曲)で21分と短いながらもボリューミーに感じられる“濃い”仕上がりなのです。

カバーで取り上げたアーティストを見ればわかるように、本作はアリスが自身のルーツであるデトロイトのガレージロック/アーリー・パンクロックに回帰したと受け取れる内容。あえて過去のオリジナル曲「Detroit City」をリメイクしたあたりにも、そのへんの熱い意思が感じ取れます。サウンド的には『PARANORMAL』セッションで試みた初期ALICE COOPER BANDの面々との共演、姿勢としてはHOLLYWOOD VAMPIRESでの経験が良い形で反映されており、良い意味で肩の力が抜けた本作はアリスの本領発揮と言わんばかりの良作ではないでしょうか。

また、そういったアリスの意思に華を添えるのが豪華ゲスト陣。マーク・ファーナー(G / GRAND FUNK RAILROAD)、ウェイン・クレイマー(G / MC5)、ミック・コリンズ(Vo / THE DIRTBOMBS)、ポール・ランドルフ(B, Vo / JAZZANOVA)、ジョニー“ビー”バダニェック(Dr / MITCH RYDER & THE DETROIT WHEELS)というデトロイト周辺のハードロック/ガレージロック/ソウルを代表する面々が顔を揃えています。そんな作品を、『PARANORMAL』から引き続きボブ・エズリンがプロデュースを手掛けているというのが、またたまらないですね。

ライブでは相変わらずショーアップされた“あの”世界観を維持しつつ、音源では好き放題かまし続けるアリス。年齢的にもこの先どれだけの新作を残し続けることができるかは神のみぞ知る状況ですが、ぜひこのスタイルを可能な限り維持し続けてもらいたいところです。

 


▼ALICE COOPER『BREADCRUMBS』
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2019年12月 1日 (日)

BLOOD INCANTATION『HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE』(2019)

アメリカ・コロラド州デンバー出身のデスメタルバンド、BLOOD INCANTATIONが2019年11月下旬に発表した2ndアルバム。日本盤は本国から数ヶ月遅れて2020年2月中旬に、本編のインストディスクをつけた2枚組仕様で発売されました(※2020年2月追記)

2011年に結成された彼らは、フレットレスベースを使うベーシストを擁する4人組バンド。2013年にセルフタイトルのデモテープを発表後、地道な活動を続け、2016年にリリースした1stフルアルバム『STARSPAWN』が一部界隈で反響を呼びました。

ブルータルデスメタルやテクニカルデスメタル、プログレッシヴデスメタルなど、オールドスクールなデスメタルからより進化したスタイルが混在する昨今ですが、このBLOOD INCANTATIONの方向性は楽曲こそ複雑な展開を持つものが見受けられるものの、演奏スタイル自体はオールドスタイルなものに近いのではないでしょうか。かつ、本作には「Inner Parths (To Outer Space)」のように単なる残虐性をプッシュしたものとは異なる、(ギターフレーズが)メロウでスペーシーな楽曲も存在する(といっても、味付け程度ですけどね)。オールドスクールの中でもまた新たに派生したスタイルと言えなくもないのかな。

その“新たに派生したスタイル”の中でも彼らが個性的なのは、“コズミック・デスメタル”なるSFや宇宙など神秘性の高いテーマを扱った歌詞を歌っている点。うん、とても2019年の作品だとは信じられないアートワークからも伝わってくるよね(笑)。

アルバムタイトルの「Hidden History Of The Human Race」とうフレーズも、実はアメリカで1993年に出版された書籍『Forbidden Archeology: Hidden History Of The Human Race』から取られたものじゃないか……と。もっとも同著は宇宙云々はあまり関係なく、どちらかというと超常現象寄りなのかな……いや、実際に読んでないのであんまり深くは語れませんが。

それはともかくとして。アルバム自体はすごくカッコいいです。80年代〜90年代初頭のオールドスクール・デスメタルの精神を引き継ぎつつも、2000年代以降のテクニカル路線を通過することで、残虐さの中にもドラマチックさが垣間見れる。1曲1曲は5〜7分台と決して短いものではないのですが、その中に複数のさまざまな要素が凝縮されており、情報量の多さという点においては非常に現代的なのです。

で、その真骨頂と言えるのが、アナログB面……最後のトラックとなる「Awakening: i. Form The Dream Of Existence... / ii. To The Multidimensional Nature Of Our Reality / iii. (Mirror Of The Soul)」。実は本作、全4曲で36分強という「?」な内容なのですが、そのラストトラックはタイトルのみならず楽曲の尺も18分と大変な長さになっています(まあ組曲ですからね、そうは聴こえないんだけど。実は彼ら、1stアルバムの時点で1曲目から13分の大作をぶちかましているんですけどね)。

でもね、これが意外とスルスルと聴き進められちゃうのよ。不思議だね。単調じゃないからこそ18分も楽しめるというのは大きいんでしょうけど、逆に単調じゃないにしてもこの手のジャンルで18分も聴き手を飽きさせずに惹きつけられるのは相当な技量なないと無理なんじゃないでしょうか。そういう意味では、彼らはこの1曲に持てるすべての経験値を詰め込み、そんな自分たちに勝ったのではないか、と。

このアルバムで初めて接したバンドではありますが、これはなかなかうれしい出会いだったな。うん、もしこの「Awakening: i. Form The Dream Of Existence... / ii. To The Multidimensional Nature Of Our Reality / iii. (Mirror Of The Soul)」(長いよ! 「Awakening」でいいじゃん!笑)を生で聴く機会があるのなら……ぜひ一度はライブを観てみたいものです。

 


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