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2020年1月 1日 (水)

PRIMUS『FRIZZLE FRY』(1990)

1990年2月にリリースされた、PRIMUSの1stオリジナルアルバム。日本盤未発売。

前年秋にライブアルバム『SUCK ON THIS』(1989年)をインディーズのCaroline Recordsから発表したPRIMUSでしたが、そこから間髪入れずにこのスタジオアルバムを発表。ライブアルバムにも含まれていた代表曲「John The Fisherman」をはじめ「Groundhog's Day」「Pudding Time」「Harold Of The Rocks」「Frizzle Fry」の計5曲が今作で再レコーディングされています。

そう知ると「なんだよ、ライブ盤の焼き直しかよ」と思われるかもしれませんが、このスタジオアルバム自体が全13曲収録と、CD時代到来に合わせるかのようにボリューミーな内容だったこともあり、すでに『SUCK ON THIS』でPRIMUSに触れていたリスナーにとってもうれしい構成でした。

1989〜90年というと、それ以前の王道HR/HMからオルタナティヴロック、ヒップホップへとジョジョへとシフトをし始めた最初のタイミング。ヘヴィなサウンドを信条とするバンドたちの中からも、HR/HMの枠では括り切れない新世代が次々と登場し始めます。

PRIMUS自体は80年代半ばに結成されており、1990年前後にポッと出というわけではないのですが、それでも時代に呼応した“一筋縄ではいかない”スタイルはその後の次世代を予見していたと言えるでしょう。

HR/HMのカラーも残しつつ(というよりも、ハードコアなどの色合いが強いのかな)、ジャズやファンク、ヒップホップ、オルタナなどさまざまなジャンルがひとまとめにミックスされ、それをギター、ベース、ドラムというシンプルな構成で味付けしていく。跳ね気味にリズムを刻むドラムと時にアグレッシヴに、時に変態的なフレージングで耳を惹きつけるギター、そしてスラップやコード弾きを多用しながら音に厚みと彩りを加えていくベース……そこにヒップホップ以降の歌唱法を取り入れたボーカルは、それまで聴いてきたどんなロックバンドとも異なるものでした。

だけど、周りを見渡すとRAD HOT CHILI PEPPERSFAITH NO MOREJANE'S ADDICTIONのような新世代が次々と台頭し始めている。世間は彼らを従来の枠で括ろうとするも、聴き手側には違和感しか残らない……こういった複数のジャンルが交差する独特のスタイルを前に、いつしかメディアは“クロスオーバー”なる新ジャンルを提唱し始めます。クロスオーバーに括られるバンドは、何もヒップホップとメタルをミックスしたものだけではない。中にはメタルとハードコアパンクをミックスしたものをクロスオーバーと呼ぶこともあった。結局、そういう曖昧さが災いして、ここ日本ではあまり定着しなかった呼び名/ジャンルだったように感じています。

レッチリやFNMはその後シングルヒットを飛ばすことによってメジャー化していきましたが、PRIMUSもシングルヒットこそなかったものの、メジャー移籍後はアルバムも全米TOP10入りするほどの人気を博していました。が、日本では前の2組ほど盛り上がった印象はなく、知る人ぞ知るマニアックな存在というイメージを強めていきました。

そんな敷居の高さを残す彼ら。確かに変態的なプレイとアレンジで聴く者を翻弄させますが、よくよく聴けばどの曲も非常にポップでキャッチー。リリースから30年経った今聴けば、実に現代的なことをやっていたんだ、先走りすぎていたんだと実感するはずです。

個人的オススメは最初期ベスト的内容のライブアルバムですが、インディーズ制作ながらも完成度の高いこの1stアルバムを起点にPRIMUSの歴史をたどっていくのも悪くないと思いますよ? ストリーミングサービスでは90年代の代表作はすべて聴けるので、ぜひ正月休みのこのタイミングにまとめ聴きしてみることをオススメします!

 


▼PRIMUS『FRIZZLE FRY』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

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