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カテゴリー「2019年の作品」の171件の記事

2021年7月24日 (土)

YONAKA『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』(2019)

2019年5月31日にリリースされたYONAKAの1stフルアルバム。日本盤未発売。

YONAKAは2014年にイギリス・ブライトンで結成された4人組バンド。彼らがその名を広めるきっかけとなったのが、2016年の音楽フェス『Radio 1's Big Weekend 2016』でのBBC Introducingステージのパフォーマス。これを機に、2017年には初のEP『HEAVY』を自主制作で発表し、2018年には英Asylum Recordsと契約して2枚のEP(『TEACH ME TO FIGHT』『CREATURE』)をリリースしたほか、BRING ME THE HORIZONのヨーロッパツアーにFEVER 333とともに帯同します。2019年に入ると新たにFueled By Ramenとワールドワイド契約を果たし、この1stアルバムを発表することとなります。

彼らのバンド名は日本語の「夜中」に由来しているとのことで、深夜が醸し出す独特な空気感やエネルギーはこのバンドにおける大きなモチーフになっているとのこと。また、そういった世界観と並行して、歌詞ではメンタルヘルスについて題材にすることも多く、このアルバムの多くの楽曲もそういったテーマが扱われているとのことです。

サウンド的には2010年代後半以降の主流であるモダンポップを下地にしたロックが軸になっており、要所要所でBMTH『amo』(2019年)以降を思わせるモダンなラウドロック的手法も見受けられます。ボーカル、ギター、ベース、ドラムというシンプルなバンド編成ながらも、音源ではドラムを打ち込みで表現したり、ギターがサウンドエフェクトの役割を果たしていたりと、必ずしもバンドサウンドにこだわっていないことも感じられる。というもの、このバンドの大きな武器となっているのが紅一点テレサ・ジャーヴィス(Vo)の歌声であり、このボーカルを最大限に活かすための良曲を最重要視した結果がこのアルバムなのだと考えたら、こういったテイストも非常に合点がいくわけです。

歌詞にこだわらなければ、意外とスルリと聴き進められてしまうポップな1枚ですが、どうせなら歌っている内容にもこだわっておきたいところ。残念ながら日本盤がリリースされていないことから正式な対訳は存在しませんが、ストリーミンスサービスの歌詞機能を使って、独自に翻訳してみるのもいいかもしれません。事実、どの曲もそれほど難しい表現は使われていないので(解釈の差異は多少あれど)、どんなことが歌われているか意外と理解することが可能かと思います。

なお、YONAKAはこの7月15日にミックステープと称した8曲入り最新作『SEIZE THE POWER』を発表したばかり。こちらもあわせてチェックしてもらいたいところです。

 


▼YONAKA『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』
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2021年6月18日 (金)

HELLOWEEN『UNITED ALIVE IN MADRID』(2019)

2019年10月4日にリリースされたHELLOWEENのライブアルバム。日本盤は同年10月2日に先行発売。

HELLOWEENにとって『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS: THE LEGACY WORLD TOUR 2005/2006』(2007年)に続く、通算4作目のライブアルバム。アンディ・デリス(Vo)、マイケル・ヴァイカート(G)、サシャ・ゲルストナー(G)マーカス・グロスコフ(B)、ダニ・ルブレ(Dr)という2005年からの布陣に創設メンバーのひとりカイ・ハンセン(G, Vo)、そして80年代後半から90年代前半にかけて在籍した2代目シンガーのマイケル・キスク(Vo)を加えた7人編成で行ったワールドツアーから、2017年12月9日のスペイン・マドリッド公演を完全収録した2枚のディスクに、2017〜18年のワールドツアーからの4曲を収めたボーナスディスクが付いた3枚組/2時間40分のボリューミーな内容となっています。

カイやキスクが参加したライブアルバムは、バンド1作目の『LIVE IN THE U.K.』(1989年/日本盤は『KEEPERS LIVE』のタイトルで流通)以来のこと。もっともあれはライブ完全収録盤ではなかったので、一部の楽曲のみしか聴くことができなかったんですよね。そう考えると、2人が参加した『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS』2部作からの楽曲や、『PINK BUBBLES GO APE』(1991年)からのライブテイクを楽しめるのは(キーが下げられているとはいえ)当時からのリスナーとしてはうれしいものがあります。

ボーナスディスク含む全24トラック中、キスク在籍時の楽曲が12トラック(うち1トラックは2曲メドレー)、アンディ加入後の歌唱曲が9トラック、カイ歌唱曲が2トラック(うち1トラックは4曲メドレー)、そして「Pumpkins United」という内訳になります。とはいえ、ライブオープニングを飾る「Halloween」や「A Tale That Wasn't Right」、「Perfect Gentleman」や「Forever And One」ではキスクとアンディがデュエット(笑)を披露しているし、「How Many Tears」ではカイを含むトリプルボーカルが楽しめる。さすがにアンディ歌唱原曲をキスクがひとりで歌ったり、その逆というパターンはゼロですが、原曲をベストな形でお届けしようというバンド側の気遣い(もしくはキスクへの気遣い。笑)は伝わってくるかな。

僕は本ツアーでの来日公演はさまざまな事情で参加できなかったのですが、こういう形で追体験できるのはうれしい限り。しかも、本作はほぼ同タイトルのライブ映像作品(『UNITED ALIVE』)も制作されているので、映像でも堪能できますしね(ただし、こちらは複数公演の映像をミックスしたもの)。選曲的にもベスト中のベストと言えるものだと思いますし(例えば迷作『CHAMELEON』(1993年)からは1曲も採用されていなかったり、最新作『MY GOD-GIVEN RIGHT』(2015年)の曲もゼロだったり)。アンディやキスクのボーカルも比較的良好なほうだと思うので、最後まで安心して楽しめますしね。かつ、演奏面も文句なし。これを聴いたら/観たら、そりゃ“この7人での新作”に過剰な期待を寄せちゃいますよね。

最新アルバム『HELLOWEEN』(2021年)が発売された今となっては、このライブアルバムって来る新作に対する副読本だったのかな?という気がしてなりません。アルバム『HELLOWEEN』をより深く理解する、楽しむために一度は触れておくべき、もうひとつの“HELLOWEEN史の集大成”。このタイミングに改めて聴いてみることをオススメします。

 


▼HELLOWEEN『UNITED ALIVE IN MADRID』
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2021年4月 4日 (日)

NIRVANA『LIVE AT THE PARAMOUNT』(2019)

2019年4月5日にリリースされたNIRVANAのライブアルバム。日本盤未発売。

本作は2011年に発売された同タイトルのライブ映像作品の映像版。アナログ盤およびデジタルのみでリリースされており、CDバージョンは同年発売の『NEVERMIND』スーパーデラックスバージョンに同梱されていました。現在では同バージョンのMP3ダウンロードや各種ストリーミングサービスのほか、『LIVE AT THE PARAMOUNT』単品での配信にて楽しむことができます。

本作で聴くことができるライブは1991年10月31日、シアトルにあるパラマウント・シアターで行われたライブを収録したもの。約2800人収容と、当時の彼らにとってはあなり大きな会場ですが、同年9月24日に2ndアルバム『NEVERMIND』(1991年)でメジャーデビューしたばかりのタイミングのパフォーマンスをたっぷり堪能することができる、貴重な内容となっています。

全19曲、約70分のフルスケールライブは、当時の最新作『NEVERMIND』に加え、1stアルバム『BLEACH』(1989年)からの楽曲も多数披露されているほか、数々の“当時はシングルのみでしか聴くことができなかった”レア曲(大半は1992年に発表されるコンピレーションアルバム『INCESTICIDE』に収録)や、次作『IN UTERO』(1993年)に収録されることになる「Rape Me」もプレイされています。

時期的にはまだNIRVANAがオーバーグラウンド浮上以前ということもあり、地元のローカルヒーロー的な存在だったNIRVANAが力むことなく、また(主にカート・コバーンが)病むことなくライブを満喫している様子が音からも伝わってきます。超代表曲「Smells Like Teen Spirit」ひとつとっても、楽曲と真摯に向き合ってプレイしているのがわかりますし、なによりもデイヴ・グロール(Dr)参加後のNIRVANAが『BLEACH』収録曲を『NEVERMIND』と同じテンション/演奏力で表現している。録音状態など含めチープさが際立った『BLEACH』収録曲の真の魅力に気づける、絶好の機会と言えるのではないでしょうか(もっとも、あのチープさ込みで良かったりもするんですけどね。ここでは良き演奏と良きサウンドで楽しめるという点において、楽曲本来の良さが味わえるはず)。

1992年以降のNIRVANAは、良くも悪くも神格化されてしまい、それが時に奇跡的な瞬間を生み出し、それ以外ではクソみたいなトピックを豊富に提供することになってしまいます。そう考えると、この「1991年後半」という短い期間はバンドにとって(いろんな意味で)最良のシーズンだったのかもしれません。そんな確変の瞬間をぜひ音で、あるいは映像で楽しんでもらいたいところです。

 


▼NIRVANA『LIVE AT THE PARAMOUNT』
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2020年12月27日 (日)

PRINCE『ORIGINALS』(2019)

2019年6月7日にリリースされたプリンスの未発表音源集。日本盤は同年6月21日に発売。

本作はプリンスが他アーティストに提供した楽曲の、プリンスによるオリジナルバージョンを集めたアルバム。全15トラック中14トラックが未発表音源で、プリンスの死後発表された数々の未発表音源の中でも特に本作は非常に興味深い内容と言えるのではないでしょうか。

収録曲の中でもっとも知名度が高いのが、THE BANGLESに提供した「Manic Monday」とシネイド・オコナーのカバーで知られる「Nothing Compares 2 U」でしょう。なにせ前者は全米2位、後者は全米1位という高記録を残しているわけですから。「Manic Monday」はもともとAPOLLONIA 6のためにプリンスが書き下ろしたで、オリジナルバージョンではプリンスとのデュエットが聴けたそうですが、結果として世に出ることなくお蔵入り。のちにTHE BANGLESが取り上げ大ヒットを遂げるわけです。また、「Nothing Compares 2 U」もオリジナルはファンクバンドTHE FAMILYのアルバム収録曲で、原曲のリリースから5年後にシネイドがヒットさせています。

「Manic Monday」のプリンス・バージョンですが、あの印象的なピアノのリフはそのまんま。全体の雰囲気もほぼ一緒でキーも同じ。THE BANGLESバージョンのほうがロックバンドならではの躍動感が強く出ており、プリンス版のほうはアクの強さが印象的といったところでしょうか。

「Nothing Compares 2 U」のプリンス歌唱版のみ既発ですが、改めてシネイド・オコナー版のアレンジのシンプルさと個性的な歌声のおかげでオリジナリティを確立させることに成功したのではないでしょうか。ちょっと大げさな表現になりますが、プリンス版はゴスペル、シネイド版は賛美歌……どうでしょう?

他の楽曲に関しても、どれもプリンスの作品として「実はシングル『○○』のカップリングとして198○年に発表済み」と言われても信じてしまうぐらい、“普通にプリンスのオリジナル曲”。バックトラック的には楽曲提供された歌唱アーティストのバージョンとほぼ一致しますし、当たり前か。それに、他人に提供する楽曲というのもあってか、自身のヒットシングル並みにキャッチーな楽曲が並んでいるんですよね。ここまでキャッチーな楽曲がズラリと並ぶアルバムという点においても、本作は“聴いておくべき1枚”と言えるのではないでしょうか。

とはいえ、先の「Nothing Compares 2 U」以外は世に出す予定はまったくなかったわけですから、きっと彼が亡くならなかったらこの先何年、何十年と聴く機会は生まれなかったんだろうな。彼にとっては「何してくれてんねん」案件でしょうけど、ファンからしたら「ずっと聴きたかったものが聴けた!」といううれしい1枚。複雑な心境にもなりますが、出していただいたからには素直に楽しみたいと思います。

各オリジナルアルバムに付随した未発表曲や未発表テイクも良いですが、やっぱり「余りもの」だったり「作りかけ」という印象が強い。それだったら、こうしたコンセプトのしっかりしたコンピ盤のほうが出す意味が大きいのかな。この先、ここまでコンセプチュアルな未発表曲集やコンピが世に出ることはないんでしょうね。

 


▼PRINCE『ORIGINALS』
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2020年12月19日 (土)

PEARL JAM『MTV UNPLUGGED』(2019/2020)

2019年11月29日にRecord Store Dayの一環として、アナログ限定でリリースされたPEARL JAMのアコースティックライブアルバム。2020年10月23日にはCDおよびデジタルでの一般リリースがスタートし、日本盤も同年11月9日に限定発売されました。

本作は1992年3月16日に収録された、MTVの名物番組『MTV Unplugged』での音源をまとめたもの。これまでさまざまな形態でブートレッグが発売されてきましたが、昨年アナログ限定、かつ数量限定という形で初めて正式リリースされたわけです。その際、(どうせ1、2年したら正式リリースされるだろうと見込んでいたので)僕はアナログ購入は見送りましたが、やはりという感じですね。

この日はアンコール含めて計10曲が演奏されています。

<セットリスト>
01. Oceans
02. State Of Love And Trust
03. Alive
04. Black
05. Jeremy
06. Porch
07. Even Flow
08. Rockin’ In The Free World [Neil Young cover]
---ENCORE---
09. Garden
10. Leash

アルバムにはこのうち、アンコールの2曲とカバー曲を除く計7曲が採用されており、かつ曲順も最後の2曲(「Porch」と「Even Flow」)が入れ替わっています。アンコールを除く8曲の映像は、YouTubeなどで探せば見つかるはずです(実際に放送されたものとは異なる流出映像かと思いますが、僕も過去に目にしたことがあります)。

タイミング的には1stアルバム『TEN』(1991年)がチャートをグイグイ上昇し始め、「Even Flow」や「Jeremy」といった楽曲のMVがMTVでヘヴィローテーションされていた時期。僕はこの頃海外にいたので、特にNIRVANAとPEARL JAMのブレイクしていく様を間近で感じることができたのは、ある意味ではラッキーだったかもしれません。特にPEARL JAMは日本と海外とでは認知度の高低差が著しく、帰国後にその人気の低さに驚いたものです。

そんな勢いに乗った時期のアコースティックライブ、悪いわけがありません。エディ・ヴェダー(Vo)のボーカルは若さを前面に押し出した一本調子が目立ちますが、それもまた一興といったところでしょうか。そもそも「Oceans」や「Alive」「Jeremy」「Even Flow」などといった1stアルバム収録曲を惜しげも無く披露しまくるライブ自体、今や貴重ですからね、そういった意味でも本作のレア度は高いのではないでしょうか(まあ時期的に1stアルバムの曲しかなかったしね)。

また、次作『VS.』(1993年)以降どんどん捻くれたテイストが加わり、楽曲が難解になり始めるという意味でも、素直なロックを鳴らしていた時代のアコースティックライブはかなり貴重かもしれません。「やっぱりこの頃がよかった……」なんて懐古主義的なことは言いませんが、良い曲をシンプルな編成で披露する本作はやはり彼らの歴史を語る上で欠かせない1枚ではないでしょうか。

 


▼PEARL JAM『MTV UNPLUGGED』
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2020年9月24日 (木)

WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』(2019)

CONVERGEのフロントマン、ジェイコブ・バノン(Vo)による別バンドWEAR YOUR WOUNDSが2019年7月12日にリリースした2ndアルバム。日本盤は2日先行の同年7月10日に発売されています。

アートブックなどミックスメディア・プロジェクトの一環として発表された『DUNEDEVIL』(2017年)を含めれば3作目のアルバムとなる今作(アルバム『DUNEDEVIL』は1stアルバム『WYW』日本盤にボーナスディスクとして付属。サブスクなどでも手軽に聴くことができます)。過去2作はあくまでジェイコブのソロ/サイドプロジェクトとして制作されたものでしたが、『WYW』制作に参加したメンバーを軸にバンド形態として始動。ジェイコブがベースやピアノなどを兼任しつつ、マイク・マッケンジー(G/THE RED CHORD、STOMACH EARTH)、ショーン・マーティン(G/TWITCHING TONGUES、ex. HATEBREED)、アダム・マッグラス(G/CAVE IN、NOMAD STONES)、クリス・マッジオ(Dr/ex. TRAP THEM、ex. SLEIGH BELLS)というUSハードコア界の重鎮たちが一堂に会するスーパーバンドへと進化したわけです。

ですが、ここで展開されているのは現代的なハードコアとは一線を画する、シューゲイザーやスラッジの影響下にあるアートロックのようなサウンド。アッパーなサウンドで攻めたり叫んだりすることはなく、ダウナーなボーカル&サウンドで悲しみや絶望など負の感情が時にメランコリックに、時にエモーショナルに表現されていく……そういった意味では、CONVERGEの最新作『THE DUSK IN US』(2017年)の中で芽生え始めた方向性を一歩推し進めたものと言えるかもしれません。

トリプルギターを用いた音の厚み、ピアノやエレクトロニクスを効果的に用いた叙情性、ボーカルラインやギターが奏でるメロディの多彩さはCONVERGEでは表現できなかった世界観でしょうか。そのサウンドをエンジニアリング&プロデュースするのが当のCONVERGEの一員であるカート・バルーというのも、また興味深いところです。

『WYW』が良くも悪くも実験性の強い1枚であったことを考えると、本作で展開されているのは紛れもなく“バンドのアルバム”だということ。この違いは非常に大きく、特にCONVERGEからの流れでジェイコブのソロに触れるというリスナーには今作のほうがとっつきやすいと言えるでしょう。もちろん、CONVERGEそのものを求めると痛い目を見ることになりますが……。ただ、『THE DUSK IN US』という作品を好意的に受け入れることができたファンには間違いなく響く良作であり、ある意味では『THE DUSK IN US』と表裏一体の1枚と断言できます。

楽曲の良さや世界観、演奏面など、どれを取っても高品質な1枚。今みたいな季節に、深夜に適度な音量で楽しみたいアルバムです。

 


▼WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』
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2020年7月11日 (土)

INXS『INXS: LIVE BABY LIVE WEMBLEY STADIUM』(2019)

2019年11月中旬にリリースされたINXSのライブアルバム。

本作は同時期に公開されたINXSのライブ映画のサウンドトラックとして発売されたもので、内容は1991年7月に実施された英ウェンブリー・スタジアムでの模様を完全収録したもの。実は、1991年に同タイトル(こちらはシンプルに『LIVE BABY LIVE』のみ)のライブアルバム&ライブ映像作品が発売されていましたが、1991年版のCDは同時期のワールドツアーからベストテイクを集め、新曲「Shining Star」を追加したコンピ的内容。一方で1991年版の映像作品はウェンブリーでのライブをほぼ完全収録(1曲のみカット)という、同タイトルなのに内容が異なるというややこしいアイテムでした。

その後、『LIVE BABY LIVE』は廃盤となり、唯一のスタジオテイク「Shining Star」はベスト盤などで補完。2014年にはライブ映像作品(1991年版)の21曲にスタジオテイク「Shining Star」を加えた配信アルバム『LIVE AT WEMBLEY STADIUM 1991』として流通することになります。

そこから5年を経て(オリジナルリリースから28年を経て)、今回発売および公開された新たな『LIVE BABY LIVE』は、これまで未公開だった「Lately」が収録されることで、1991年のウェンブリー・スタジアム公演を完全収録する形に。さらに、音源のリマスタリングや映像の4Kレストア含め、これまで発表されてきたどのバージョンよりも鮮明に、全盛期のINXSのパフォーマンスを堪能することができます。

1991年というと、メガヒット作『KICK』(1987年)に続く意欲作『X』(1990年)リリース直後。セールス的には『KICK』より劣る『X』でしたが、バンドが放つ熱量およびファンの熱量がピークに達した時期でもあり、それがこの7万2000人を動員したウェンブリー・スタジアムでのソールドアウト公演につながったわけです。

セットリストは『X』と前作『KICK』からのナンバーがほぼ網羅されており、それ以前のヒットナンバーは「Original Sin」「I Send A Message」(『THE SWING』収録)と「What You Need」『LISTEN LIKE THIEVES』収録)の3曲のみと少々寂しいところですが、それでもこれは当時のINXSベストセレクトと言える内容ではないでしょうか。ハードロック的なカタルシスをはらみつつも、そのバンドアンサンブルはブラックミュージックからの影響が強いニューウェイヴ経由のロック。THE ROLLING STONES的スタジアムロック感全開のサウンドと、聴いているだけで自然と体が動くダンサブルなパフォーマンスは、この時期ならではと言えるでしょう。

ライブアルバムとしてはもちろんパーフェクトな作品ですが、本作はできれば映像で楽しんでもらいたいと思う1枚。幸い日本盤Blu-ray&DVDがこの7月24日にリリースされるようですので、ぜひこのタイミングにチェックしてみてください。

 


▼INXS『INXS: LIVE BABY LIVE WEMBLEY STADIUM』
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2020年7月 5日 (日)

VENOM PRISON『SAMSARA』(2019)

2019年3月中旬にリリースされたVENOM PRISONの2ndアルバム。日本盤未発売。

VENOM PRISONは紅一点のラリッサ・ストゥーパー(Vo)を擁する、サウス・ウェールズ出身の5人組ハードコア/デスメタル・バンド。2014年結成と歴史は比較的浅く、2015年に2枚のEPを発表したのちに1stアルバム『ANIMUS』(2016年)をリリース。今作は約3年ぶりのニューアルバムとなります。

1作目を発表後にドラマーが交代。新編成で制作に臨んだ本作は、デスメタルというよりはハードコアやグラインドコアを思わせるスタイルと、ラリッサの女性声によるスクリームが目立った前作から一変し、非常に重心の低いヘヴィで(演奏面およびアレンジ面で)テクニカルさが目立つスタイルへと進化。1曲の中に複数の楽曲アイデアが混在するかのような展開の数々は、どこか初期〜中期CARCASSを思わせるものがあります(実際、ラリッサはインタビューでNAPALM DEATHCARCASSをはじめとするUKデスメタル/グラインドコアをルーツに挙げています)。

また、ラリッサのボーカル表現力が急激に向上しているのも本作の特徴でしょう。女性的なハイトーンの金切り声は一切なくなり、厚み/深みが加わったグロウルを軸に、性別を超越したデス声がアルバム全体を包み込む。あのヴィジュアルを知らなければ、音だけ聴くと「長髪で髭面、体格が良くて小汚いバンドTシャツ姿」のバンド像をイメージすることでしょうね(実のところそういうメンバーも含まれているんですけどね。笑)。

輪廻転生を意味する『SAMSARA』というアルバムタイトル同様に歌詞に関しても個性的で、ラリッサの言葉を借りるなら仏教をテーマに「“生”そのものは苦痛であるという考えに基づいた、生と死、生まれ変わりの永遠のサイクルについて」(※『ヘドバン』Vol.26より。このインタビューはVENOM PRISONを知る上でぜひ読んでいただきたい)だそう。と同時に、社会に向けた怒りも随所から感じられ、このあたりからも彼らがNAPALM DEATHやCARCASSといった先駆者たち直系の後継者であることが伺えます。

本作リリース後にはかの『KERRANG!』の表紙をラリッサが飾り、TRIVIUMなどとのツアーを経て急速に人気/注目を高めているVENOM PRISON。日本盤のリリースもなければ(現在の情勢も重なり)来日予定もないバンドではありますが、この2ndアルバムを起点にして、続く3rdアルバムで間違いなく“化ける”はずです。

 


▼VENOM PRISON『SAMSARA』
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2020年5月31日 (日)

LOTUS EATER『SOCIAL HAZARD』(2019)

2019年3月末に配信リリースされたLOTUS EATERの2nd EP。

LOTUS EATERはグラスゴー出身の4人組バンド。グルーヴメタルにジャンル分けされているようですが、2017年に自主制作で発表した1st EP『LOTUS EATER』を聴く限りではデスコアの要素も感じられ、一筋縄ではいかない楽曲進行含めクセになる要素満載です。2018年夏にHopeless Recordsとの契約を発表し、新曲「Break It」「Branded」を配信。これ以降「The Fear」「Mother」と新曲を配信で小出しにしていき、最初のまとまった作品集として今作がデジタルリリースされたのでした。

15分半という非常にコンパクトな本作は、全7曲中2曲が30秒〜1分程度のインスト(インタールード)なので、実質5曲入りということになります。前述4曲にうち、本作に収録されたのは「The Fear」「Mother」のみ。

基本的には1st EP『LOTUS EATER』の延長線上にあるヘヴィな作風ですが、うん、オープニングのインスト「Thg」から「Yuck」へと続く構成は確かにグルーヴメタルのそれっぽい。ですが、「Yuck」を聴いてもらえばわかるように、曲中にインダストリアル・メタルっぽい味付けも登場する。3分に満たない1曲の中で緩急に富んだ展開が矢継ぎ早に繰り返されていき、その情報量の多さに圧倒されるはずです。

ひたすらスクリームするボーカルと変態的なプレイ&サウンドを奏でるギター、地を這うような重さと跳ねるような軽やかさを繰り出すリズム隊。初期SLIPKNOTの変態性と脂が乗った時期のNINE INCH NAILSの危うさ、DEFTONEが持つポストロック的ななまめかしさ、CODE ORANGEに代表される「ヒップホップ以降のエクストリーム・メタル」の先鋭性などが凝縮された楽曲群は、終始不穏な空気を醸し出し、聴き終えたときに残るのは爽快さよりも(よい意味での)“気持ち悪さ”や不快感。なのに、「そうそう、こういう音を待ってたんだよ!」と膝を叩いてしまうほどの充実度も感じられる。

この感覚って、ホラー映画を見終えた後のそれに似ているんじゃないかと思いました。理解してもらえるかな? この“食後感”に惹かれるというリスナーはきっと多いのではないでしょうか。そんなLOTUS EATERを、かのBRING ME THE HORIZON最新EPで彼らをフィーチャーしたというのも、なんとなく納得するものがあります。

ぶっちゃけ、この5曲(と前述の1st EP)を聴いただけでは、このバンドの本性を見抜くのはちょっと難しいかもしれません。なぜなら、彼らにはまだまだいろんな武器が隠されているんじゃないか……そう予感されるに十分な余白を、本作は与えてくれるから。LOTUS EATERは今作リリース後、昨年秋から今年初頭にかけて「Second To None」「Narco」と、デジタルで随時新曲を小出しに発表しています。フィジカルでの作品リリースを行わず、これまでフルアルバムの発表もなし。この制作スタイルもイマドキらしさなのかもしれませんね。

 


▼LOTUS EATER『SOCIAL HAZARD』
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2020年5月10日 (日)

LITURGY『H.A.Q.Q.』(2019)

2019年11月12日に予告なしでデジタルリリースされたLITURGYの4thアルバム。フィジカルでは日本盤が2020年5月13日に先行発売、続いて5月15日に海外でも発売されるとのことです。

2010年代前半にDEAFHEAVENALCESTとともに、新世代ポスト・ブラックメタル/ブラックゲイズの代表的バンドとして紹介されることの多かったLITURGY。前作『THE ARK WORK』(2015年)ではエレクトロニカ色を前面に打ち出したことで賛否両論となりましたが、本作では従来のアグレッシヴかつアヴァンギャルドな路線に回帰し、多くのリスナーに歓迎されました。

個人的には前作のテイストも嫌いじゃなかったのですが、確かにあのままのスタイルで2作、3作と続いたらちょっとキツいかな?と思っていたので、今回の路線は歓喜ものでした。オープニングの「Hajj」からして最高で最狂ですし、前作ではクリーンボイスが多用されていたものの今作では首尾一貫してスクリームしまくり。なおかつ、デジタルエフェクトなどを随所に取り入れたアレンジからは、前作での経験をしっかり踏まえつつ進化していることが伺えます。

このデジタルエフェクトに関しては、日本盤ライナーノーツでも触れられていますが……ちょうど同タイミングに発表されたCODE ORANGEの新作『UNDERNEATH』(2020年)と共通するものがある。ただヘヴィ一辺倒なわけではなく、軸がブレずにさまざまな要素を取り込むことで表現の豊かさを感じさせる技は両者に共通するところであり、ただその手法が2組とも異なるというだけなのかな。

ポストハードコアから新たなメタルを構築しようとするCODE ORANGEは、ダブステップ以降のヒップホップまでもを飲み込んで進化を続けている。一方で、LITURGYはアヴァンギャルドやエクスペリメンタル・ロックを拠点にブラックメタル経由、エレクトロニカや環境音楽(あるいは宗教音楽)までもを経由し、再びブラックメタルへと回帰することでオリジナリティを確立させた。その結果が本作であり、新しい世代のヘヴィメタル/ヘヴィミュージックのお手本的作品が完成したわけです。

クワイアなどのボーカルワーク、ピアノやハープ、ビブラフォン、グロッケンシュピール、ひちりき、竜笛といったアコースティック楽器をフィーチャーすることで、激しさの中にも美しさや優しさが散りばめることに成功した本作は、間違いなく前作があったからこそたどり着いた境地であり、過去最高の内容だと思います。ブラックメタル的な演奏スタイルで轟音を鳴らしながら、ここまで儚い世界観を見せてくれる本作。間違いなくCODE ORANGEの『UNDERNEATH』と並ぶ“2020年を代表する1枚”と断言させてください(正確には2019年末のリリースだけどね)。

 


▼LITURGY『H.A.Q.Q.』
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Williams AA= AAAMYYY ABBA Abbath AC/DC Acacia Strain, the Accept Ace Frehley Adam Lambert Adrian Younge Aerosmith AFI After the Burial Afterglow aiko Air (France) AIR (Japan) AKB48 ALAZEA Alcatrazz Alcest Aldious Alice Cooper Alice in Chains Almighty, the Alter Bridge Altitudes & Attitude Amaranthe American Head Charge American Hi-Fi Anaal Nathrakh Anaïs Anchoress, the Anderson .Paak Andrew W.K. 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