2019年3月16日 (土)

TESLA『SHOCK』(2019)

2019年3月発売の、TESLA通算8作目のオリジナルアルバム(2007年発売のカバーアルバム『REAL TO REEL』および『REAL TO REEL, VOL.2』を含むと10作目)。前作『SIMPLICITY』(2014年)から5年ぶり、再結成後4作目のオリジナル作品となります。ここ数作は自身の自主レーベルTesla RecordsやFrontiers Recordsから発表されていましたが、今作はメジャーのUMe(Universal Music Group)からのリリース。オリジナルアルバムのメジャー流通はGeffen Recordsから最後の作品となった4thアルバム『BUST A NUT』(1994年)以来、25年ぶりとなります。

プロデュースを手がけたのはDEF LEPPARDのギタリスト、フィル・コリン。フィルは2016年発売のライブアルバム『MECHANICAL RESONANCE LIVE!』に追加収録された新曲「Save That Goodness」のプロデュース&共作でクレジットされており、そこからの流れで今作も手がけることになったのかな。そもそも80年代から同じ事務所だったこともあり、付き合いも長いですからね。気心知れたメンツによる、リラックスした制作現場が想像できますし。

フィルは今作でもソングライターとして活躍(一部ギターやコーラスにも参加)。それも影響してか、どの曲も非常によく練り込まれた、ポップでキャッチーなものばかり。全体を通してバラードやミディアムテンポのメロウな楽曲が目立ち、このへんにフィルのポップセンスが反映されているのか、あるいはプロデューサー目線でそういった方向へと導いたのか気になるところです。

オープニングを飾る「You Won't Take Me Alive」のファンキーなギターワークやキャッチーなメロディは非常に耳障りも良く、なおかつTESLAらしいガッツのあるバンドサウンドも維持されており、なかなかの仕上がり。続く「Taste Like」も適度なレイドバック感のあるロックンロールで、そこからピアノ&ストリングスをフィーチャーしたバラード「We Can Rule The World」へと流れる構成は今までありそうでなかったもので、ハッとさせられます。

この曲を含むバラード調の楽曲に導入されたハーモニー/コーラスはこれまでのTESLAっぽくなく、むしろDEF LEPPARDのそれに近いもの。これも取って付けたものという感じではなく、自然とマッチしているので違和感なし。また、バラードも前半〜中盤にいくつかあるものの、後半はロック色の強い構成となっていて、従来のファンも納得させる内容ではないかと。特に初期を彷彿とさせる「The Mission」からラストの「Comfort Zone」までの流れは絶品だと思います。

良い意味での“80年代の黄金期”を現代的にポリッシュしたのが、この『SHOCK』という作品ではないでしょうか。従来の彼ららしさとは異なる、良い意味での“ショック”なポイントも含まれた良作。2019年にこういう作品がどこまで評価されるのか、楽しみなところです。



▼TESLA『SHOCK』
(amazon:海外盤CD / 海外限定盤CD / MP3


投稿: 2019 03 16 12:00 午前 [2019年の作品, Def Leppard, Tesla] | 固定リンク

2019年3月10日 (日)

ALTITUDES & ATTITUDE『GET IT OUT』(2019)

MEGADETHのデヴィッド・エルフソンとANTHRAXのフランク・ベロというベーシスト2名が中心となり結成されたプロジェクト、ALTITUDES & ATTITUDE。彼らが2014年に発表したデビューEP『ALTITUDES & ATTITUDE』以来となるフルアルバムを、2019年1月に発表しました。

このプロジェクトはトリオ編成で、フランクがボーカル&ギター、エルフソンがベース、フェフ・フリーデル(DEVO、A PERFECT CIRCLEなど)がドラムというのが基本スタイルのようです(曲によってフランクがベース、エルフソンがギターを弾くことも)。アルバムはジェイ・ラストン(ANTHRAX、STONE SOURSTEEL PANTHERなど)がプロデュースを担当し、エース・フレーリー(ex. KISS)やガスG.(FIREWIND)、ニタ・ストラウス(ex. THE IRON MAIDENS)、クリスチャン・マルトゥッチ(STONE SOUR)などがゲスト参加しているとのこと。

フランクのボーカルは時に自身のバンド・ANTHRAXのジョーイ・ベラドナのような節回しをするときがあるものの(オープニングトラック「Get It Out」がまさにそれ)、声質そのものは意外とマイルド。がなるというよりはメロディを丁寧に歌いながら、ときどき激しさを見せるデイヴ・グロール(FOO FIGHTERS)的なカラーがあると思いました。嫌味のない、親しみやすさのある声ですよね。

音楽性自体は、MEGADETHとANTHRAXということでスラッシュメタル的なものをイメージしてしまいがちですが、もっとポップでオルタナティヴロックのようなスタイルと言えばいいのかな。「Leviathan」のようなインストにこそ両バンドのテクニカルなスタイルを重ねることができますが、それ以外の歌モノではパンクともメタルとも違う、ハードロック寄りのオルタナギターロックみたいな世界が展開されています。これもまた嫌味のないスタイルで、万人受けしそうな印象が。

アルバム日本盤にはデビューEP収録曲(「Booze And Cigarettes」「Tell The World」「Here Again」)がリミックスされて収録されていますが、この時点ですでに現在のスタイルは確立されていたんですね。なるほど、こういうことがやりたかったんだ、と。

例えばKISSのようなポップでキャッチーで適度にハードながらも、THE POLICEあたりの70年代末ニューウェイヴ的な色合いもある。結果、FOO FIGHTERSのようなバンドに一番近いという……これが正しい表現かどうかわかりませんが、僕は嫌いじゃないです。

ただ、メタルファンからしたらこの2人が揃っているのにこのスタイルでいいのか、正解なのかという声が上がってきそうですが、当人たちが今これをやりたいというんですから、いいじゃないですか。そのぶん、メインバンドのほうでは相変わらずアグレッシヴなことをやってくれているんですから。

にしても、MEGADETHのこともANTHRAXのことも知らないリスナーがこのアルバムを聴いたとき、果たしてどんなリアクションをするんでしょうね。むしろそっちのほうが気になります。



▼ALTITUDES & ATTITUDE『GET IT OUT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 03 10 12:00 午前 [2019年の作品, Altitudes & Attitude, Anthrax, Megadeth] | 固定リンク

2019年3月 9日 (土)

BACKYARD BABIES『SLIVER & GOLD』(2019)

BACKYARD BABIES待望の8thアルバム。海外では新たにCentury Media Records(ソニー流通)と契約して発表される本作、海外では3月8日にリリース済みですが、ここ日本では4月3日と約1ヶ月遅れての発売となります。日本盤(これまでと変わらずビクターから発売)を待ちきれずに輸入盤を購入してしまったファンも少なくないのではないでしょうか。

今作はプロデューサーにチップ・キースビー(THE HELLACOPTERSMICHAEL MONROEなど)を迎えて制作。さらに、曲作りにはそのTHE HELLACOPTERSやIMPERIAL STATE ELECTRICの一員であるニッケ・アンダーソン(Vo, G)も参加し、「44 Undead」という曲を完成させています。

昨年発表された先行シングル「Shovin' Rocks」でのパーティ感の強いロックンロールにときめき、続くアルバムの完成に今か今かと心踊らせていたファンは自分含めたくさんいたはず。さらに今年に入ってからは、次なるリードトラックとしてアルバムのオープニング曲「Good Morning Midnight」が公開。疾走感に満ち溢れた“らしい”この曲で、次のアルバムも最高に決まってる!……そう実感したのは僕だけではないでしょう。

で、実際に届けられたこのアルバム。前作がリハビリに思えてしまうぐらいに活き活きとした、王道中の王道なBYBらしい1枚に仕上げられています。

前作『FOUR BY FOUR』(2015年)は今でも良作だと思っていますし、非常に“らしい”作品だとも信じています。ですが、こうやって新作を前にすると、前作はニッケ・ボルグ(Vo, G)やドレゲン(G, Vo)のソロアルバムに入ってそうな曲も含まれており、良くも悪くも「様子見感」があったのかなと思えてきます。つまり、今回はそれぐらい従来のBYBらしさが自然な形で戻ってきているのです。

と同時に、やはり2人のフロントマンによるソロ活動の成果もしっかり反映されており、それらが強く主張しすぎることなくBYBというバンドの枠内に絶妙なバランス感で収まっている。そのへんはBYBとしてのツアーを重ねた成果や、ドレゲンがTHE HELLACOPTERS再結成ライブで得た経験によるものも大きいのかなと。

全体的にコンパクトなのは前作同様で、全10曲で35分程度と前作同等なのにはさすがに驚きましたが、ところが通して聴いてみるとそんなこと微塵も感じさせないぐらいに濃厚なんです。無理やり舵を切ってる感がないぶん、自然体でロックンロールを楽しんでいる様子が目に浮かぶし、それがダイレクトに伝わってくる。文句の付けどころがないほど、完璧なまでにBYBしていて、さらに過去を軽々と飛び越えていく。これが結成30周年を迎えたバンドの新作か!と驚くぐらい、エネルギッシュで初期衝動に満ちた1枚です。

日本デラックス盤には、ニッケ&ドレゲンによるアコースティックライブ音源5曲を追加(日本盤はこちらを別ディスクに収めた2枚組仕様)。このリラックスした感じも今の彼ららしくて、非常に好感が持てます。このボーナストラックをプラスして、ようやく51分強(笑)。おまけとしては純分すぎるくらいの内容なので、輸入盤をお持ちの方も改めて日本デラックス盤を購入してみてはどうでしょう。



▼BACKYARD BABIES『SLIVER & GOLD』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD


投稿: 2019 03 09 12:00 午前 [2019年の作品, Backyard Babies] | 固定リンク

2019年3月 8日 (金)

BUCKCHERRY『WARPAINT』(2019)

BUCKCHERRY通算8作目のオリジナルアルバム。前作『ROCK 'N' ROLL』(2015年)から3年半ぶりの新作で、本作から新たにCentury Media Recordsでのリリース(日本ではソニーから発売)。バンド編成も大きな変革があったあとの1作目ということで、ある種“三度目のデビューアルバム”とも言えるでしょう。

ご存知のとおり、前作リリースから2年ほど経った2017年春にジョシュ・トッド(Vo)とともにバンド創世記から活動してきたキース・ネルソン(G)と、再結成後からバンドを支えてきたイグザビエル・ムリエル(Dr)が相次いで脱退。こうして第2期BUCKCHERRYはあえなく解体となってしまうわけです。

その後、ジョシュとスティーヴィー・D(G)は別プロジェクト・JOSH TODD & THE CONFLICTとしてアルバム『YEAR OF THE TIGER』(2017年)を発表。BUCKCHERRYにあったパンキッシュな要素を強めたそのサウンドは、『ROCK 'N' ROLL』での“バック・トゥ・ルーツ”的路線に刺激を感じなかったリスナーには高く評価されたのではないでしょうか。

こういったガス抜きを経て、ジョシュ&スティーヴィーにケリー・レミュー(B)という前作までのメンバーに加え、ケヴィン・レントゲーン(G)&フランシス・ルイズ(Dr)という布陣にて制作されたBUCKCHERRY名義での新作は、原点回帰とも言える“毒々しさ”と“いかがわしさ”が混在した良作に仕上がっています。オープニングの「Warpaint」こそ1曲目にしてはインパクトが弱いものの、以降はヘヴィな「Right Now」やNINE INCH NAILSのカバー「Head Like A Hole」などアクが強い曲や、彼ららしいレイドバックしたバラード「Radio Song」などが続きます。

正直、本作からのリードトラック「Head Like A Hole」が初公開されたときはその選曲センスに「?」となりましたが、こうやってアルバムの中の1曲として聴くと実はまったく違和感なく楽しめるという。しかも、この1曲がアルバム内で非常に重要な役割を果たす“必要不可欠なピース”だったことに気づかされるわけです。

かと思えば、前作での経験もしっかり活かされた「Backdown」やど直球のパンクチューン「No Regrets」もあるし、豪快な「The Devil's In The Details」などとにかく曲者勢揃いといった印象。海外盤は全12曲で44分程度というコンパクトな内容ですが、日本盤のみそこに3曲追加。こちらにはTHE TIMEのカバー「Jungle Love」や、「Kamikaze」と題された疾走チューンなどが含まれており、正直「こっちをアルバム本編に入れたらよかったのに」と思うものもあったり。全15曲、トータル53分と若干ボリューミーとなり1曲1曲のインパクトが薄まる印象が無きにしも非ずですが、このバンドはこれくらいでもいいのかなと。

ただ、問題点がゼロというわけではありません。1曲1曲と取り上げるとアクが強いものの、アルバムとして通して聴くと意外とサラッと聴けてしまう。つまり、アルバムというまとまった形になるとインパクトが弱まるという、不思議な現象が生じているのです。

その理由も何度か聴いて気づいたのですが、これまでの作品に感じられた「ボーカルとギターがグイグイ引っ張る感」のうちギターのパワーが弱まっているからじゃないかなと。ミックスのせいも多少は関係しているでしょうけど、これまでのアルバムの中でもそのパンチが一番弱いんですよね。良い曲が多いだけに、そこだけがすごく勿体ないと思いました。



▼BUCKCHERRY『WARPAINT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 03 08 12:00 午前 [2019年の作品, Buckcherry] | 固定リンク

2019年3月 7日 (木)

QUEENSRYCHE『THE VERDICT』(2019)

QUEENSRYCHE通算15作目のスタジオアルバム(オリジナル作品としては14作目)。トッド・ラ・トゥーレ(Vo)加入後3作目となり、前作『CONDITION HUMAN』(2015年)から3年半ぶりという待望の1枚です。

トッド加入後の2作(2013年の『QUEENSRYCHE』と続く『CONDITION HUMAN』)は、前任シンガーのジェフ・テイト主導期の退屈オルタナ路線(苦笑)から一転、初期(1988年の『OPERATION: MINDCRIME』まで)を思わせるメロディアスなヘヴィメタル路線に回帰し、多くのファンを喜ばせてくれました。

この新作も基本的にはその延長線上にあるのですが、そこからさらに『EMPIRE』(1990年)にあった側面までを包括した力作となっています。つまり、多くのファンが思い浮かべるQUEENSRYCHEのパブリックイメージどおりの内容と言えるのではないでしょうか。

実は本作、ドラマーのスコット・ロッケンフィールドが家庭の事情でレコーディングに参加しておらず、なんとトッドがすべて叩いているとのこと。この事実はリリース直前まで伏せられおり、先行リリースされていた楽曲を聴いただけでは誰かゲストドラマーが叩いているのかと思っていたのですが……そもそもトッドのキャリアはドラマーから始まっているそうですが、にしてもここまで叩けるとは正直驚きです。

だって、フルタイムのドラマー以外が叩くことで、従来のQUEENSRYCHEらしいテクニカルな要素を薄めなくてはいけないのでは?なんて思考になってもおかしくないところを、ちゃんと“らしい”楽曲とアレンジで固めているのですから。とはいえ、前作と比べたら1曲1曲が若干コンパクトになった印象もあるし、なんとなく『EMPIRE』っぽい色合いが増えたのはそういった理由もあるのかな?と邪推したくなったり……まあ考えすぎですかね。

勢いがあってメタリックで、という曲よりも「Bent」や「Inner Unrest」みたいにミドルテンポで凝ったアレンジが加えられた曲のほうに魅力を感じる。そんな自分みたいなひねくれ者なら、ツインリードがあったりダークなメロディ&コーラスがあったりというこの曲にこそ、往年のQUEENSRYCHEを見出してしまう。そういった意味では、「ようやく戻ってきたな」というのがこのアルバムなんじゃないでしょうか。

シンガーが変わってからアルバム2枚出したし、そろそろ変化を加えてもいいタイミングじゃない? だけどそれはリスナーが納得する“らしさ”を残しつつやっていかないとね。なんて話し合いがあったかどうかはわかりませんが、ここ数作の中ではもっともバランス感に優れた1枚だと思いました。全10曲で44分というボリュームもちょうど良いですしね(日本盤はアルバム1枚分のボーナストラックをまとめた特典ディスク付き仕様も用意。こちらは2枚で80分超えなんですが……長ければいいってもんじゃないんですよ、このご時世)。

なんとなくですが、『OPERATION: MINDCRIME』や『EMPIRE』が好きなリスナーは過去2作よりも今回のほうが気に入るんじゃないか……なんて気がするんですが、いかがでしょう。僕はトッド加入後で一番好きです。



▼QUEENSRYCHE『THE VERDICT』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 03 07 12:00 午前 [2019年の作品, Queensryche] | 固定リンク

2019年3月 6日 (水)

BRYAN ADAMS『SHINE A LIGHT』(2019)

ブライアン・アダムス通算14作目のスタジオアルバム。前作『GET UP』(2015年)から3年半ぶりですが、その間には新曲2曲を含むベストアルバム『ULTIMATE』(2017年)があったり、同年1月には久しぶりの来日公演も実現しているので、そこまで空いた気がしないような。そもそも『GET UP』自体がオリジナル作としては7年半ぶりだったので、程よい間隔かなと。

タイトルトラック「Shine A Light」がエド・シーランとの共作との触れ込みで今年1月に先行配信されましたが、これがとにかく良い曲でして。90年代末以降の彼に増えた穏やかな路線ではあるものの、極上のポップセンスは健在で、今年60歳(!)になろうとするブライアンに『RECKLESS』(1984年)の面影を重ねるのは少々酷かな?なんて思いながら「これはこれでアリでしょ!」と同曲を楽しんでいました。

続く2ndシングル「That's How Strong Our Love Is」はジェニファー・ロペスとのデュエット曲で、こちらもより穏やかなR&B路線。ロックサイドからケチをつけようと思えばいくらでもつけられますが、それでもやっぱり曲の良さは抜群。「これもいいよね、うんうん。もういいじゃないのロックとかどうとか……」と自分を言い聞かせながら、アルバムが3曲めに差し掛かると……。

あれっ、ロックしてるじゃん。思いっきりロックンロールしてる(笑)。確かに大人になったぶん落ち着き払っているものの、しっかり成熟したロックンロールを鳴らしまくっている。しかも、どの曲も2〜3分台とコンパクトでキャッチー。『RECKLESS』時代を彷彿とさせるメロディやフレーズも飛び出し、10代で彼に出会った層なら確実にノックアウトされるはず。

よりアダルト路線になったバラードはあるにはあるけど、それも全12曲(日本盤は13曲)のうちほんと数曲。80年代の『RECKLESS』や『INTO THE FIRE』(1987年)でのブライアン青年が大人になり、人生折り返してから晩年をどう過ごすか。その答えがこれなんじゃないか、そんな気がしました。

アルバムの最後をTHIN LIZZYでおなじみの「Whiskey In The Jar」(METALLICAもカバーしたアレ)で締めくくる構成も素晴らしい。アコギとハーモニカというシンプルなアレンジも、今だからこその説得力が強いし。全12曲で35分ちょっとというトータルランニングも今の時代にフィットしてるしね。

ロックが死んだとか言われるこんなご時世だからこそ、ロックを聴かなくなった大人たちに届いてほしい1枚。と同時に、こんな大人もカッコいいかも?と若い子たちに見つかってほしい1枚でもあります。こんな年の取り方を、自分もしたいものです。



▼BRYAN ADAMS『SHINE A LIGHT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 03 06 12:00 午前 [2019年の作品, Bryan Adams] | 固定リンク

2019年3月 5日 (火)

WEEZER『WEEZER (BLACK ALBUM)』(2019)

全編カバー曲で構成された最新作『WEEZER (TEAL ALBUM)』から1ヶ月ちょっとで届けられた、WEEZER通算13作目のスタジオアルバム。今回は全10曲のオリジナルナンバーで構成された純粋な新作で、本来はこっちが『PACIFIC DAYDREAM』(2017年)に続くニューアルバムとしてアナウンスされていたのですが……っていう一連の流れは、『WEEZER (TEAL ALBUM)』のレビューにてご確認ください。

『WEEZER (WHITE ALBUM)』(2016年)の時点で「次の新作は“ブラックアルバム”」だと言われていましたが、その間に異色作『PACIFIC DAYDREAM』を挟んだわけですが、この『WEEZER (BLACK ALBUM)』を聴き終えた今となっては結果としてこのリリース順で正解だったなと思いました。

デイヴ・シーテック(TV ON THE RADIO)をプロデューサーに迎えた本作は、収録曲のすべてがリバース・クオモ(Vo, G)がピアノを使って作曲したものなんだとか。それもあってか、確かにメロディの流れ・構成や質感が以前とは若干異なる印象を受けます。今まで以上に軟らかさを伴うといいますか、ギターポップのそれとはどこか違うといいますか……非常に感覚的なものなので、明確に言葉で伝えるのが非常に難しいのですが、デビュー時からずっとWEEZERを追ってきたリスナーなら聴いた瞬間に「あれ、今回はちょっと違う?」と気づくものがあるんじゃないでしょうか。

アルバムは序盤の「Can't Knock The Hustle」や「Zombie Bastards」こそ『PACIFIC DAYDREAM』と共通する香りがありますが、「Living In L.A.」などは従来のWEEZERらしさを保つもの。特に『WEEZER (WHITE ALBUM)』にあったBEACH BOYS的な色合いを包括するアレンジやメロディも多く、結局はここ数作で試みた実験がここにきて一気に花開いた、そんな1枚になっているのではないでしょうか。

いわゆるギター重視のパワーポップチューンというよりは、もっとルーツ的なもの、それこそ60年代のポップス黄金期を下地にした楽曲群は活動初期の名曲とはまた違った輝きを放っており、どれも即効性とスルメ的な魅力を兼ね備えたものばかり。40分にも満たないトータルランニングは相変わらずですが、だからこそ何度もリピートしたくなる中毒性が高い。2010年代が終わろうとするこのタイミングに、まさかWEEZERが新たな傑作を完成させるなんて誰が想像できたでしょう。いや、これは本当に素晴らしいポップアルバムだと思います。

あと、これは同意してもらえなくてもいいけど、このアルバムは非常に密室性の強い作品でもあるなと。正直、これを絶対にライブで聴きたい、観たいという気にはならないんですよ(もちろん良い意味で)。そういった意味でも、WEEZERは新たな境地に到達してしまったなと。ホント、恐ろしいバンドです。



▼WEEZER『WEEZER (BLACK ALBUM)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 03 05 12:00 午前 [2019年の作品, Weezer] | 固定リンク

2019年3月 4日 (月)

IN FLAMES『I, THE MASK』(2019)

2019年3月発売の、IN FLAMES通算13作目のオリジナルアルバム。プロデューサーは前作『BATTLES』(2016年)から引き続きハワード・ベンソン(MY CHEMICAL ROMANCEPAPA ROACHHALESTORMなど)が担当し、ミックスをクリス・ロード・アルジ、マスタリングをテッド・ジェンセンという大御所たちが手がけています。

前作で初参加だったジョー・リカード(Dr)は前作のツアー途中で離脱。新たにターナー・ウェインが加入し、またベーシストも1997年から在籍したピーター・イワースからブライス・ポールへと交代します。デビューから今年で25周年、すでにオリジナルメンバーはアンダース・フリーデン(Vo)しか残っていませんし、ここ数作はメロデス(=メロディック・デスメタル)から乖離したメロディアスメタル/オルタナメタル路線に進みつつありました。しかし、本作では中期の名作6th『REROUTE TO REMAIN』(2002年)から8th『COME CLARITY』(2006年)あたりに回帰した、ストロングスタイルな1枚に仕上がっています。

まず、全体を通してアンダースのグロウルの比率がここ数作と比べて急増していることに気づくはずです。冒頭の「Voices」からしてそうなのですが、サビではいつもどおりメロディアスに歌い上げているものの、そこに至るまでがグロウルで構成されている。これって、メロウなままで歌い続けるのと大きく違い、曲のメリハリがかなり変わってくるんですよね。

また、楽曲自体がメロデスとメタルコア/ニューメタルの中間にある、それこそ『COME CLARITY』あたりの路線にかなり近いものばかり。タイトルトラック「I, The Mask」みたいに“これぞメロデス!”というタイプもあれば、もっと王道路線寄りの「Call My Name」もある。かと思えばバラードタイプの「Follow Me」やらエモーショナルな「We Will Remember」みたいな楽曲も含まれている。

後半に進むにつれてそのエモさはさらに増していくのですが、だからといってメロデスらしい攻撃性が減退することもない。「Burn」のようにバランスの取れた良曲もあれば、モダンメタル調の「Deep Inside」もあるし、ゴシックテイストの「All The Pain」やら、ラストを飾るにふさわしいアコースティックバラード「Stay With Me」もある。ホント、全体のバランスの良さが『COME CLARITY』あたりに通ずるわけですよ。そりゃ聴きやすいわけだ。

ただ、その聴きやすさというのは前作や前々作『SIREN CHARMS』(2014年)とはまったく異なるもので、このバンドに求める要素のすべてがバランスよく揃っているという意味。うん、文句なしの良作だと思います。

デビュー25周年でここまでたどり着いたか、という感慨深さのある1枚。ここ数作で彼らから離れてしまったというファンにこそ聴いてもらいたい作品です。



▼IN FLAMES『I, THE MASK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2019 03 04 12:00 午前 [2019年の作品, In Flames] | 固定リンク

2019年3月 3日 (日)

ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』(2019)

2019年1月に発表された、ARCH ENEMYのカバーアルバム。バンド初期からシングルのカップリングやアルバムのボーナストラックとして収録されてきた歴代のカバー曲を1枚にパッケージした作品で、その内訳も初期3作のヨハン・リーヴァ時代、ブレイクのきかっけを作ったアンジェラ・ゴソウ時代、現在のアリッサ・ホワイト=グラズ時代と3世代にわたる、ある種のオールタイム“裏”ベストアルバムとなっています。

取り上げられているカバーはIRON MAIDENJUDAS PRIESTEUROPEMEGADETH、MANOWAR、QUEENSRYCHEPRETTY MAIDSSCORPIONSKISSなど彼らのルーツにあるHR/HMバンドからG.B.H.、DISCHARGEといったハードコアバンド、SKITSLICKERS、ANTI-CIMEX、MODERAT LIKVIDATIONという地元スウェーデンのハードコア/クラストコアバンド、マイケル・アモット(G)がかつて在籍したCARCASS、そしてTEARS FOR FEARSやマイク・オールドフィールドといったポップ寄りまで、バラエティに富んだもの。JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、EUROPE、SKITSLICKERSはボーカリスト違いで複数選ばれているものもあります。

全24曲中、M-1「Shout」からM-11「City Baby Attacked By Rats」までがアリッサ時代、M-12「Warning」からM-20「Symphony Of Destruction」までがアンジェラ時代、ラスト4曲がヨハン時代としっかりブロック分けされているので、そこまで違和感を感じることはないかと。特にアリッサ時代はM-5「Nitrad」から「City Baby Attacked By Rats」までのパンク/ハードコアのカバーが続く流れで統一感を作るなど、構成も考えられていますしね。

ARCH ENEMYの活動を追っているリスナーには、すべて既出で所持している音源ばかりでしょう。しかし、こういった“ファン”アルバムは出すことに意味があるので、そこに文句をつけるのは野暮というもの。そんな中、M-1「Shout」は昨年発売されたアナログボックスセット『1996-2017』やアナログ7インチ盤「Reason To Believe」に収録されていたものですが、CD化はこれが初めて。原曲をよりヘヴィにしたアレンジはどことなくツェッペリン「Immigrant Song」に似ていて、DISTURBEDのカバーバージョンとは違った味わい深さがあります。

そのほかのカバーに関しては原曲まんまのものから凝ったアレンジのものまでさまざまですが、基本的には原曲に対する愛情が強いものが多い印象です。個人的にはPRETTY MAIDS「Back To Back」、EUROPE「Wings Of Tomorrow」、CARCASS「Incarnated Solvent Abuse」、IRON MAIDEN「Aces High」がお気に入りです。

ちなみに、CDブックレットにはマイケル・アモットによる各曲の解説入り。残念ながら日本盤はおろか、配信&ストリーミングもなしの本作ですが、特にストリーミングに関しては過去作もゼロなので、これを機に動いてほしいものです。



▼ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』
(amazon:海外盤CD / 海外デラックス盤CD


※国内からは試聴不可ですが、念のため貼っておきますね。

投稿: 2019 03 03 12:00 午前 [2019年の作品, Arch Enemy, Carcass, Europe, Iron Maiden, Judas Priest, KISS, Megadeth, Pretty Maids, Queensryche, Scorpions, Tears for Fears] | 固定リンク

2019年3月 2日 (土)

MARK MORTON『ANESTHETIC』(2019)

2000年代を代表するUSヘヴィロック/ヘヴィメタルバンドLAMB OF GODのギタリスト、マーク・モートンによる初のソロアルバム。全10曲すべてが歌モノで、それぞれ異なるシンガーを迎えて制作されたものとなっています。そういう意味ではギタリストのエゴが前面に打ち出されたものではなく、あくまでソングライター/表現者としてバンドとは異なるアプローチで作り上げた1枚と言えるでしょう。

参加シンガーはチェスター・ベニントン(LINKIN PARK)、ジャコビー・シャディックス(PAPA ROACH)、マーク・ラネガン(ex. SCREAMING TREES)、チャック・ビリー(TESTAMENT)、ジェイク・オニ(ONI)、マイルス・ケネディ(ALTER BRIDGESLASH)、マーク・モラレス(SONS OF TEXAS)、ジョシュ・トッド(BUCKCHERRY)、ネイマー・マドックス、アリッサ・ホワイト-グルーズ(ARCH ENEMY)、そしてLAMB OF GODのフロントマンであるランディ・ブライとマーク自身という豪華かつバラエティに富んだ面々。演奏面ではギターをマークがすべて担当したほか、STONE SOURのロイ・マイヨルガ(Dr)、MEGADETHのデイヴィッド・エレフソン(B)、KORNのレイ・ルジアー(Dr)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)、TRIVIUMのパオロ・グレゴリート(B)&アレックス・ベント(Dr)、CLUTCHのジャン・ポール・ガスター(Dr)、元THE BLACK CROWESのスティーヴ・ゴーマン(Dr)&マーク・フォード(G)といったジャンルの垣根を超えた布陣が顔を揃えています。

アルバムはマークとジェイク・オニ、そしてLAMB OF GODのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバーとの共同制作によるもの。楽曲自体はマークが「いつかバンドとは別の形で発表したい」と長年書き溜めてきたものなのですが、各シンガーの個性が強いこともあってか、それぞれのシンガーに合った手法で書き下ろされたものと錯覚してしまいそうになります(もちろんそういう曲も含まれていますが)。

チェスターが亡くなる数ヶ月前に制作されたオープニングトラック「Cross Off」はLINKIN PARKをよりモダンヘヴィネス寄りにした良曲ですし、ジャコビーが歌う「Sworn Apart」もPAPA ROACHのアルバムに入っていたとしても不思議じゃない1曲。かと思えばマーク・ラネガンが歌う「Axis」ではアーシーさが前面に打ち出されているし、チャック・ビリー&ジェイク・オニによる「The Never」のスラッシュ&王道メタルなノリもひたすらカッコいい。

マイルス・ケネディ歌唱による「Save Defiance」は完全にマイルスのノリだし、マーク・モラレス参加の「Blur」はSONS OF TEXAS寄りのスモーキーさが表出している。ジョシュ・トッドが歌う「Back From The Dead」なんてBUCKCHERRYをヘヴィにさせたノリで好印象だし、ネイマー・マドックスによる「Reveal」はどこかファンキー。マーク本人が歌唱する「Imaginary Days」は正統派ハードロックの香りが感じられ、ラストを飾るランディ&アリッサによる「The Truth Is Dead」は2人の声の対比も良いし、なにより楽曲がLAMB OF GODの延長線上にあるのが良い。

マークのギタリストとしての非凡さも随所に感じられるし、何よりも曲のバラエティ豊かさに驚かされる。このひと、こんなに多才だったんだと驚き連発の1枚です。

LAMB OF GOD本体は、昨年BURN THE PRIEST名義のカバーアルバム『LEGION: XX』を発表したりと若干リラックスモードかもしれませんが、こういったガス抜きを経て次にどんなオリジナルアルバムを届けてくれるのか、今から楽しみでなりません。まずは奇跡の共演が実現した(特に、貴重なチェスターの声が残された)この意欲作をじっくり聴き込みたいと思います。



▼MARK MORTON『ANESTHETIC』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2019 03 02 12:00 午前 [2019年の作品, Alice in Chains, Alter Bridge, Arch Enemy, Black Crowes, the, Buckcherry, Clutch, Korn, Lamb of God, Marilyn Manson, Megadeth, Myles Kennedy, Papa Roach, Slash, Sons of Texas, Stone Sour, Testament, Trivium] | 固定リンク

2019年3月 1日 (金)

PAPA ROACH『WHO DO YOU TRUST?』(2019)

2019年1月リリースの、PAPA ROACH通算10作目のオリジナルアルバム。前作『CROOKED TEETH』(2017年)から1年8ヶ月ぶりの新作で、引き続きニコラス・ファーロングとコリン・ブリッテイン、そしてバンドの共同プロデュース作品となります。

いわゆるミクスチャーロック/メタルコア的作風に回帰した前作では、単なる焼き直しで終わらない成長ぶりを見せた彼らですが、今作はそこからさらに一歩踏み込んだ意欲作/挑戦作となっています。それは音楽的な幅広さはもちろんですが、ここ数作で取り入れていたフィーチャリングシンガー(前作ではスカイラー・グレイとマシン・ガン・ケリー、前々作『F.E.A.R.』ではIN THIS MOMENTのマリア・ブリンクとラッパーのロイス・ダ・ファイブ・ナイン)を排除してすべて自分たちの声と音だけで構築した点からも伺えます。

「お前は誰を信じる?」と問いかけるアルバムタイトルからして象徴的ですが、本作ではバンドの原点であるニューメタルナンバー「The Ending」にとどまらず、どこかTHE PRODIGY的な香りのする「Renegade Music」や、アコギを軸にしたモダンなラウドロック/ポップ「Not The Only One」、RAGE AGAINST THE MACHINEを現代的に昇華させた「Who Do You Trust?」、シンガロングパートが耳に残る新世代アンセム「Elevate」、現代的な味付けを施したパワーバラード「Come Around」など、序盤から同じタイプの楽曲が1曲たりとも存在しません。

さらに後半に進むほどにその方向性はさらに拡散していき、ストレートなオルタナロック「Feels Like Home」、ダウナーなポップロック「Problems」、デジロック的な様相の「Top Of The World」、1分半にも満たないハードコアチューン「I Suffer Well」、グランジを2019年に再生させた「Maniac」、デジタルとバンドサウンドを融合させたダイナミックな「Better Than Life」と、ひたすら個性的な楽曲が続きます。

どの曲も4分以下(「Top Of The World」を除き、すべて3分台)と昨今のポップソングにも似た作りで、アルバム自体も全12曲で38分。そのぶっ飛んだ内容と収録時間含め、非常に現代にフィットした作りと言えるでしょう。もはは1組のアーティストの新作を聴いているというよりも、流行りの楽曲を集めたオムニバスアルバムと言ったほうが合っているような気すらします。

時代に真っ向から対峙するこういった挑戦を良しとするか悪しとするかで、本作の評価は真っ二つに分かれると思います。僕自身は好意的に受け止めていたのですが、世の中的にはそうでもなかったようで、アメリカでは2ndアルバム『INFEST』(2000年)以降で初めてトップ20入りならず(最高73位)。ただ、これという一発が出ないとは限らない内容なので、そのあたりの変動は今後も期待できそうです。個人的には、本作とFEVER 333『STRENGTH IN NUMB333RS』BRING ME THE HORIZON『AMO』は2019年のシーンを占う上で重要な役割な3枚だと思っているのですが……果たしてどうなるのでしょうか



▼PAPA ROACH『WHO DO YOU TRUST?』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 03 01 12:00 午前 [2019年の作品, Papa Roach] | 固定リンク

2019年2月25日 (月)

LUCER『GHOST TOWN』(2019)

デンマーク・コペンハーゲン出身の4人組バンド、LUCERが2019年1月(日本では2月)にリリースした2ndアルバム。『BRING ME GOOD NEWS』(2016年)に続く作品となり、これが日本デビューアルバムになるようです。

ベースボーカル、ギター×2、ドラムという編成の彼らは、過去にWHITE LIONのシンガーだったマイク・トランプのバックバンドも勤めた経験があるそうで、本国では彼らの楽曲がビールのCMに採用されるなど、名実ともに確立されたものがあるみたいですね。

実はこのアルバムから現編成になったようで、それ以前はシングルギターのトリオ編成だったとのこと。プロデュースを手がけたのは同郷の名エンジニア、テュー・マドセン(MESHUGGAHTHE HAUNTEDDIR EN GREYONE OK ROCKなど)。彼が過去に手がけたメンツから、かなり硬派な音をイメージするかと思いますが、聴いてもらえばわかるようにLUCERのサウンドはハードロック、というよりはポップロックの部類に属するもの。上に挙げたバンドの中ではONE OK ROCKあたりにもっとも近いのかな。

資料の中にはこのアルバムに対して「彼らのルーツと言えるNIRVANAOASISRAMONESSEX PISTOLSといったプリミティヴでエナジェティックな影響をうかがわせながら、一方でモータウンやディスコ・ミュージックをはじめとした多種多様な音楽ジャンルのエッセンスを採り込んでいる」との説明がありますが、まあOASISはわかるけど、そのほかは……ポップセンスという意味では納得できますが、いわゆるパンク/ガレージロック的なタイトさ/ワイルドさは感じされる、むしろ昨今のヒットチャートを賑わせるモダンなテイストが強く、要所要所で王道ハードロック的なカラーを取り入れている、と説明するほうが正しいのかなと。

1曲1曲はかなり練られ、作り込まれており、プロデュースのみならずミックスも担当したテュー・マドセンの言葉にある「全曲ヒットする可能性を秘めている」というのもあながち間違いではないなと。

北欧らしい哀愁味は若干薄味。かといって能天気なまでに突き抜けるほどの明るくもなく、どこかくぐもった感覚があるのがデンマーク出身のバンドらしさなのか。80年代中盤、ブライアン・アダムスのヒットを筆頭にこの手のサウンドを持つバンドがカナダやイギリスから続発したなあ……なんてことを急に思い出しました。そういう懐かしさすら感じられる、終始安心して楽しめる極上のポップアルバム。40オーバーはすんなりと楽しめるんじゃないでしょうか。逆に若い世代にはこういった音がどう響くのか、非常に気になるところです。



▼LUCER『GHOST TOWN』
(amazon:国内スペシャルプライス盤CD / 国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 02 25 12:00 午前 [2019年の作品, Lucer] | 固定リンク

2019年2月23日 (土)

KING 810『SUICIDE KING』(2019)

2019年1月にリリースされたKING 810の3rdアルバム。過去2作はかのRoadrunner Recordsから発表されていましたが(といっても2枚とも日本盤未発売)、本作から完全自主レーベルでのリリース。それもあってかCDなどフィジカルでの発売はなし、MP3と各種ストリーミングサービスでの配信のみとなります。

前作『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016年)リリース後にアンドリュー・ビール(G)とアンドリュー・ワークマン(Dr)が相次いで脱退。現在はデヴィッド・ガン(Vo)とユージーン・ギル(B)の2人のみで活動を続けているようです。

デビューアルバム『MEMOIRS OF A MURDERER』(2014年)でのNYハードコア的なオールドスクールサウンド、前作でのモダンヘヴィネス色を強めた方向性と作品ごとに変化を重ねてきた“全米一危険なバンド”ことKING 810ですが、今作もヘヴィなミドルテンポの楽曲が中心で(このへんは過去2作の延長線上)、そこにデジタル/インダストリアルの要素が若干加わったような印象を受けます。これは(おそらくですが)ドラムが生音からマシンビートになったことも大きく影響しているのかもしれません。

また、その変化によるものなのかわかりませんが、どことなくヒップホップ色も強まっているような。「.45」あたりは完全にそれですよね。もともとスポークンワードなども取り入れた、独特なボーカルスタイルを見せてきた彼らなだけに、このシフトチェンジ(?)はなるほどといいますか違和感なく入っていけます。

曲によってはメロウなパートも含まれていたり、ピアノを使った曲や女性ボーカルが含まれたパートがあったりと聴きどころも少なくないのですが、どうにも一本調子な印象も。単調なマシンビートに音数が決して多くはないギターリフが乗り、ラップ調のボーカルが重なるわけですから、まあそうなるわな。

前作の感想で「テンポの上げ下げで抑揚をつけることなく、テンポ感はほぼ一定の中で音数や激しさで強弱をつけて聴き手を惹きつける手法は、メタルやラウドロックというよりも映画のサウンドトラック的な印象も」と書きましたが、その片鱗はここにも多少は残っています。「Black Rifle」で聴けるゴシック調の楽曲もそうですが、ギターをただの歪みものとして終わらせず、ひんやりとダークな世界観をカラフルさを演出するための道具として使っているあたりに新しさを感じつつも、「ああ、同じバンドなんだな」と妙に納得したり。

MARILYN MANSONの近作に似ているのかな。聴き終えたときの後味は近いものがあると思います。もはや“全米一危険なバンド”とは言い難いけど、これはこれで悪くないんじゃないかと。聴き手は相当選ぶことになるかと思いますが。



▼KING 810『SUICIDE KING』
(amazon:MP3


投稿: 2019 02 23 12:00 午前 [2019年の作品, King 810] | 固定リンク

2019年2月17日 (日)

THUNDER『PLEASE REMAIN SEATED』(2019)

THUNDERが2019年1月に発表した、通算12作目のスタジオアルバム。前作『RIT IT UP』(2017年)から2年ぶり、BMG移籍第1弾作品となります。本国イギリスでは2015年の前々作『WONDER DAYS』(全英9位)、前作『RIT IT UP』(同3位)に続いて8位という好記録を残しています。

本作はバンドのデビュー30周年を祝福する企画アルバム的内容で、過去の楽曲をアコースティックテイストでリアレンジ&再構築したものとなっています。これは2017年末に発表されたEP『CHRISTMAS DAY』に収録した「Love Walked In」の再録バージョンがきっかけとなり、そこから発展したもの。アルバムは全12曲収録の通常盤に加え、ボーナストラック7曲を追加したCD2枚組バージョン、アナログ盤(12曲)、デジタル(12曲)が用意されています。

内訳は以下のとおり。

<DISC 1(全仕様共通)>
01. Bigger Than Both Of Us [sg「A Better Man」]
02. Future Train [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
03. Girl's Going Out Of Her Head [1st『BACKSTREET SYMPHONY』]
04. I'm Dreaming Again [7th『THE MAGNIFICENT SEVENTH』]
05. Fly On The Wall [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
06. Just Another Suicide [5th『GIVING THE GAME AWAY』]
07. Empty City [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]
08. Miracle Man [9th『BANG!』(2008)]
09. Blown Away [6th『SHOOTING AT THE SUN』]
10. Loser [6th『SHOOTING AT THE SUN』]
11. She's So Fine [1st『BACKSTREET SYMPHONY』]
12. Low Life In High Places [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]

<DISC 2(デラックス盤CDのみ)>
01. Stand Up [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
02. River Of Pain [3rd『BEHIND CLOSED DOORS』]
03. Like A Satellite [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]
04. Robert Johnson's Tombstone [8th『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』]
05. Higher Ground [1st『BACKSTREET SYMPHONY』]
06. Everybody Wants Her [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]
07. Long Way From Home [2nd『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』]

全19曲中、1stアルバム『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)から3曲、2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』(1992年)から5曲、3rdアルバム『BEHIND CLOSED DOORS』(1995年)から4曲、5thアルバム『GIVING THE GAME AWAY』(1999年)から1曲、6thアルバム『SHOOTING AT THE SUN』(2003年)から2曲、7thアルバム『THE MAGNIFICENT SEVENTH』(2005年)から1曲、8thアルバム『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006年)から1曲、9thアルバム『BANG!』(2008年)から1曲、1993年のシングル「A Better Man」のカップリングから1曲。直近2枚および4thアルバム『THE THRILL OF IT ALL』(1997年)からの楽曲が選外で、やはりメジャーから発表され大きなヒットとなった初期3作からの楽曲が大半を占めています。中でも2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』期の楽曲が一番多い(「A Better Man」は同作からのシングルなので、カップリング曲も同時期に録音されたもの)というのは彼らの中で一番評価が高い作品ということなのか、それとも「もう一度やり直したい」と思っている1枚なのか、そのへんが気になるところです(ちなみにチャート上では最高2位とキャリア中もっとも高い記録を残しています)。

オルガンやピアノ、ブルースハープ、女性コーラス、ゴスペルコーラス隊など曲ごとに多彩なゲストを迎えることで、アコースティックセットながらも重厚なアレンジで再構築されている名曲の数々は、曲によってキーを落とすことでダニー・ボウズ(Vo)の中音域の旨味を見事に活かしたものに生まれ変わり、ある曲ではリズムをシャッフルに変えることで新鮮味が加わり、既発曲の再録音盤ですが完全にニューアルバムとして楽しめるのではないでしょうか。

周年の企画盤なので、今後このスタイルがメインになるということはないでしょうが、これもTHUNDERというバンドのルーツであり、これまでの楽曲に混在してきた要素。そのひとつに特化したこのアルバムは聴く人によっては“ロック”であり、ある人には“ロック”ではないかもしれない。だけど、そんなことはどうでもいいほどに優れた楽曲と優れた演奏と優れた歌が楽しめる。もうそれだけで十分じゃないですか。このバンドに関しては、何度もの解散/活動休止を経て、こうやって30周年までたどり着いたわけですから。

個人的にはぜひボーナストラック7曲を含むフィジカルのデラックス盤で楽しんでほしい1枚。特にボーナスディスクのほうにヒットシングル(「Stand Up」「Rever Of Pain」「Like A Satellite」「Everybody Wants Her」)が多く含まれているし、中でもアコギ1本のみで歌われる「Like A Satellite」の渋みは至高の仕上がりですから。



▼THUNDER『PLEASE REMAIN SEATED』
(amazon:海外盤CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3


投稿: 2019 02 17 12:00 午前 [2019年の作品, Thunder] | 固定リンク

2019年2月16日 (土)

RIVAL SONS『FERAL ROOTS』(2019)

RIVAL SONSが2019年1月に発表した通算6枚目のスタジオアルバム。本作から新たにLow Country Sound / Atlantic Recordsと契約し、晴れてメジャーリリースを飾ることとなりました。プロデュースはこれまで同様、デイヴ・コブが担当。実は新たに契約したLow Country Sound自体がデイヴ主宰レーベルなので、この流れは自然なものだったりするんですね。

ということで、メジャーに移籍しようが制作陣がこれまでと変わらないので、音そのものに及ぼす変化もまったくなし。相変わらず時代錯誤なオールドスクールかつサイケデリックなハードロックを聴かせてくれます。

ジェイ・ブキャナン(Vo)の太くてソウルフルな歌声は、本作でも健在。冒頭の「Do Your Worst」から最高のボーカルを轟かせています。その後もブルースやソウルをベースにした豪快なハードロックが展開されていくのですが、4曲目「Look Away」ではトラッドミュージック的なアコースティックギター&オルガンで序盤を飾り「おっ!?」と驚かされる。が、2分ほどすると本編(バンド演奏によるストロングスタイルのハードロック)が始まりひと安心(笑)。このテイストは続くタイトルトラック「Feral Roots」にも登場し、ある意味ではこのアルバムにおける武器のひとつと言えるのではないでしょうか。

こういうアレンジの幅が広がったことで、よりロックバンドとしての王道感が強まったと感じたのは僕だけでしょうか。このアコースティックアレンジ含め、スコット・ホリデイ(G)のギターワークは過去の作品と比べても特に本作では秀でていると思います。と同時に、デイヴ・ベステ(B)&マイク・マイリー(Dr)によるシンプルで無駄がなく、それでいてぶっとくて耳に残るリズムアンサンブルは昨今のこの手のロックバンドの中でも最強だと断言できます。

中盤以降も最高にソウルフルな「Too Bad」や「Stood By Me」、中期ツェッペリンを彷彿とさせるサイケな「All Directions」、打ち込み同期アレンジながらも他の楽曲から浮いていない「End Of Forever」、ゴスペル調バラード「Shooting Stars」と名曲目白押し。捨て曲皆無の、完全無欠の1枚です。

最近はGRETA VAN FLEETこそのこの手のハードロックの救世主と持て囃されていますが……正直言うと、最初は「ちょっと待て、RIVAL SONSがいるじゃないか?」と思ったんですね。Earache Records所属なのにこの音というアンバランスさ含め、最高に個性的だと思っていたんですが、やっぱり宣伝力の違いなのか……と思っていたところに、Atlantic Recordsとの契約決定。ついにRIVAL SONSが世の中に見つかるときが来た! やったー!と思ったのも束の間、本作は今のところ日本盤のリリースなし。なんだよっ!(苦笑)

頭からケツまで、終始ストロングスタイルの“黒っぽい”王道ハードロックを轟かせるRIVAL SONSのニューアルバム『FERAL ROOTS』。今こそこの傑作とあわせて、バンドとしても再評価されるべきだと思うのですが……ねえ?



▼RIVAL SONS『FERAL ROOTS』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3


投稿: 2019 02 16 12:00 午前 [2019年の作品, Rival Sons] | 固定リンク

2019年2月 9日 (土)

WEEZER『WEEZER (TEAL ALBUM)』(2019)

2019年1月24日に突如リリースされた、WEEZERのカバーアルバム(通算12枚目のスタジオアルバム)。今のところデジタルおよびストリーミングのみのリリースで(一応、3月にはフィジカルリリースの予定もあるようです)、セルフタイトルが冠されたことでシリーズの一環としてジャケットの色から“TEAL(=青緑) ALUBM”と呼ばれているようです。

WEEZERは昨年、TOTOの「Africa」や「Rosanna」をカバーして話題になりましたが、その流れからカバーアルバムの着想が生まれたのでしょうか。それとも来月リリース予定のオリジナルアルバム『WEEZER (BLACK ALBUM)』制作の合間に息抜きとして録音されたものなのでしょうか。その真相は不明ですが、まあとにかく40代の洋楽リスナーには懐かしい楽曲ばかりではないでしょうか。

取り上げられているアーティストはTOTO、TEARS FOR FEARSEURYTHMICS、A-HA、THE TURTLES、BLACK SABBATH、ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA、TLC、マイケル・ジャクソン、ベン・E・キングとバラエティに富んだもの。とはいえ、大半が80年代にヒットした楽曲ばかりで(ベン・E・キング「Stand By Me」も同名映画の主題歌として80年代半ばにリバイバルヒットしましたし)、リヴァース・クオモ(Vo, G)や筆者と同世代のリスナーにはたまらない内容と言えるでしょう。

そのアレンジも原曲に忠実なもので、4人の演奏を軸に再構築されたサウンドは「WEEZERのようでWEEZERとはちょっと違う」印象を受けます。特に「Sweet Dreams (Are Made Of This)」(原曲:EURYTHMICS)や「Take On Me」(原曲:A-HA)から感じるニューウェイヴ感は今までのWEEZERにありそうでなかったもの。前者に関してはアニー・レノックスそっくりな歌声まで再現されており、思わずクスッとしてしまうのではないでしょうか。かと思えば、後者ではどこか頼りない歌声が原曲とは違った味を醸し出しており、これもなかなかの仕上がりと言えます。

WEEZERとしての本領発揮と言えるのが、M-5「Happy Together」(原曲:THE TURTLES)やM-7「Mr. Blue Sly」(原曲:ELO)といったあたり。パワーポップバンドとしてのルーツが垣間見れる良カバーと言えるでしょう。かと思えば、ハードロックバンドとしての側面を「Paranoid」(原曲:BLACK SABBATH)で、昨今のモダンなR&B調ポップサウンドを「No Scrubs」(原曲:TLC)でストレートに表現する……なんて感心していたら、「Billie Jean」(原曲:マイケル・ジャクソン)のボーカルを含む完コピぶりに爆笑させられる。で、最後は若干エレクトリックな香りのする「Stand By Me」で終了。いやあ、最初から最後まで飽きさせないトリッキーな1枚ですね、これは。

原曲が良いんだから、あとは味付け次第。そこでどうWEEZERらしさを出すか……なんて難しいことを考えていた自分が馬鹿らしくなるくらいまっすぐ攻めてくる(いや、まっすぐ進んでいるようで脇道を100キロオーバーで突っ走る)、そんなアルバムです。『WEEZER (BLACK ALBUM)』を前に、良い気分転換になりました(笑)。



▼WEEZER『WEEZER (TEAL ALBUM)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 02 09 12:00 午前 [2019年の作品, Black Sabbath, Eurythmics, Michael Jackson, Tears for Fears, Weezer] | 固定リンク

2019年2月 5日 (火)

METALLICA『HELPING HANDS... LIVE & ACOUSTIC AT THE MASONIC』(2019)

2019年2月リリースの、METALLICA初となるアコースティックライブアルバム。オフィシャルのライブアルバムとしては、限定販売などのEPやアナログ盤を除けば同名映画のサウンドトラックとして発表された『METALLICA: THROUGH THE NEVER』(2013年)以来となるのでしょうか。とはいえ、今作もフィジカルでは今のところアナログ盤のみでのリリースとなり、そのほかはiTunes Storeなどでのデジタル販売、Apple MusicやSpotifyでのストリーミング配信にて聴くことができる“イマドキらしい”形態での発表となります。

このアルバムは、2018年11月3日にサンフランシスコで行われた『All Within My Hands Foundation』設立1周年記念コンサート「Helping Hands Benefit Concert」の模様を収録したもの。『All Within My Hands Foundation』はMETALLCIAが設立したチャリティ組織で、「飢餓と戦い、労働力の教育を通して持続可能なコミュニティを創り出すこと」を目的とした団体とのことで(詳細)、本作の売上はすべて同組織に寄付されるそうです。せっかくなら、ストリーミングだけじゃなくてダウンロード購入、あるいはアナログ盤を購入しておきたいところですね。

さて、気になる内容ですがオールアコースティック編成ということで、METALLICAの楽曲からアコースティック向きのナンバー、意外な楽曲のアコースティックアレンジ、そしてDEEP PURPLE「When A Blind Man Cries」、NAZARETH「Please Don’t Judas Me」、ボブ・シーガー「Turn The Page」、BLUE ÖYSTER CULT「Veteran Of The Psychic Wars」といったカバーからなる全12曲を楽しむことができます。「Please Don't Judas Me」と「Veteran Of The Psychic Wars」はこれが初音源化となる、貴重なテイクと言えるでしょう。個人的には「Please Don't Judas Me」の枯れっぷりと「Veteran Of The Psychic Wars」のサイケ感が気に入っています。

まずファンは冒頭の「Disposable Heroes」から驚かされることでしょう。これ、原曲を知らなかったらこんな曲だと思ってしまうくらいしっくり来るアレンジで、曲名を見なかったら気づかないリスナーも多いんじゃないでしょうか。かろうじて歌詞を追えば「……えっ?」と気づくかもしれませんが、僕はこれをいきなり聴いて(よい意味で)お茶を吹き出しましたから(よい意味で?)。

「The Unforgiven」や「Bleeding Me」「Nothing Elese Matters」といった、ある種こういった企画向きの楽曲はもちろん悪いわけがない。「The Unforgiven」はギターソロに入るところでの盛り上がり(熱の加わり具合)が別の意味で興味深かったなあ。

かと思えば「All Within My Hands」で再び別モノ感を味わい、カントリー調でアーシーに生まれ変わった「Enter Sandman」や「The Four Horseman」に爆笑し、ただギターをアコギに変えただけじゃん!というツッコミすら愛おしい「Hardwired」にニヤニヤする……きっと20年前にこれをやられたら「終わった」とかグチをこぼしていたんでしょうけど、もはやそういった批判もバカバカしくなるくらいの潔さすら感じる。これを毎回ライブでやられたらさすがに呆れるけど、遊びとしては全然アリだと思います。

音を聴いてもわかると思いますが(特にYouTubeでの映像を観れば一目瞭然)、このライブはバンドの4人以外にもキーボードやペダルスティールなどゲストプレイヤーが多数参加しています。以前にも4人だけのアコースティック音源が発表されていますが、それと比べるとクオリティが雲泥の差といいますが。とにかく音の厚みが異なるし、アレンジ含む完成度もかなり高いんじゃないかと思いました。そのへんが、本作を嫌いになれない大きな理由でもあるのかなと。

とはいえ、もはやこのバンドに関しては僕自身、全肯定の域に入ってしまっているのでまともなレビューなんてできない状態なわけでして……なかなかジャパンツアーが決定せずモヤモヤが続く中、こういった作品や過去作のデラックス盤を聴いて無理やり気持ちをつないでいるところですので。早く来てくださいね、マジで(苦笑)。



▼METALLICA『HELPING HANDS... LIVE & ACOUSTIC AT THE MASONIC』
(amazon:アナログ盤2枚組)(iTunes Store / mora


投稿: 2019 02 05 12:00 午前 [2019年の作品, Metallica] | 固定リンク

2019年2月 4日 (月)

SOILWORK『VERKLIGHETEN』(2019)

2019年1月発売の、SOILWORK通算11作目のオリジナルアルバム。前作『THE RIDE MAJESTIC』(2015年)から約3年半ぶりの新作となります。

前作発表後、ドラマーのダーク・ヴェルビューレンがMEGADETHに勧誘されるというサプライズ(ハプニング?)があり、バンドは新たに若手のバスティアン・トゥアスガールド(Dr)を迎えて活動再開。特にここ数作は毎回ラインナップが変更しており、バンドとして安定した活動が送れていませんでしたが、ここでようやく編成が固まったと思いたいものです。

僕自身、随分と久しぶりにSOILWORKの新作を聴いたのですが(テン年代以降の作品はほぼ未聴でした)、本作には自分がハマった6thアルバム『STABBING THE DRAMA』(2005年)の頃の面影もしっかり残っており、よりメロディアスに進化した“ブルータルな北欧メタル”を堪能することができます。

新ドラマー・バスティアンのプレイは非常に手数が多く、どんなにキャッチーでメロウだろうが、その後ろでドコドコと激しいプレイを聴かせてくれる。ボーカルスタイルやメロディに関しては、ビョーン“スピード”ストリッド(Vo)が別プロジェクトのTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAに参加していることも大きいのでしょうか、非常にキャッチーさを増しており、AメロやBメロでグロウルやスクリームをかましてもサビでは力強く歌い上げるスタイルにより拍車がかかり、自信に満ちたボーカルパフォーマンスを楽しむことができるはずです。

楽曲群も、聴けばすぐにそれがSOILWORKだとわかるものばかりで、確実にオリジナリティを確立しています。正直、2000年代後半以降の作品はそのへんが薄くなりつつあり、徐々にこのバンドから離れていったのですが、本作に関しては楽曲の良さ、ボーカル&演奏の素晴らしさが際立っており、平均点以上の仕上がりになっているのではないでしょうか。

もはやこれをメロディックデスメタルと呼ぶべきなのか、あるいは呼べるものなのか、正直僕にはわかりません。しかし、確実にその面影は残っていますし、見方を変えればメロデスの現在進行形/最新型と捉えることもできるでしょう。疾走感もしっかり備わっており、ブラストビートやグロウルなどエクストリームメタルに必要不可欠な要素も、さらにメロディアスな要素も至るところに散りばめられている。うん、確実にメロデスではあるんだけど、僕はこれをそんな狭い枠で括りたくないという気持ちもあって。純粋にヘヴィメタルでいいじゃないか……と思うわけです。

中にはメロデスに対していまだに嫌悪感や拒否反応を示すリスナーも少なくないはず。そんな人にこそ、このアルバムを聴いてほしいなと思うわけです。北欧のバンドが持つ“らしさ”を現代的に昇華させた、全メタルファン必聴の1枚だと断言させてください。

あ、最後に追記。本作の「Needles and Kin」にはAMORPHISのトミ・ヨーツセン(Vo)、「You Aquiver」には元ANNIHILATOR、EXES TO EYESのデイヴ・シェルドン(G)がゲスト参加しているとのこと。当初は「Stålfåge」にARCH ENEMYのアリッサ・ホワイト=グラズ(Vo)が参加しているという話もありましたが、こちらは実現しなかったそうです(ソース)。



▼SOILWORK『VERKLIGHETEN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 02 04 12:00 午前 [2019年の作品, Soilwork] | 固定リンク

2019年2月 2日 (土)

WITHIN TEMPTATION『RESIST』(2019)

オランダのシンフォニックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONが2019年2月に発表した通算7枚目のスタジオアルバム。本国で1位、アメリカでも16位まで上昇した出世作『HYDRA』(2014年)からまる5年ぶりの新作となり、Nuclear Blast Recordsから新たにメジャーのVertigo Records(Universal Music傘下)へ移籍して最初の作品となります。

本来は昨年12月中旬にリリース予定だった本作ですが、制作上の問題から直前になって翌年2月まで延期。実は僕、今作の日本盤ライナーノーツを執筆する都合上、11月の時点でこのアルバムを聴き込んでいたため、個人的にも「ようやく」といいますか「待望の」という言葉がぴったりな1枚となりました。

で、発売までにこれだけ聴き込んだら、作品によっては若干の飽きがきてもおかしくないんですが、本作に関してはその内容のディープさも手伝ってか、最初に聴いてから3ヶ月経った今も新鮮な気持ちで接することができるのですから不思議です。

ライナーノーツや音楽誌でのインタビューで語られているとおり、前作を伴うワールドツアー終了後、シャロン・デン・アデル(Vo)は今作の制作と向き合い始めるのですが、その途中で自身が燃え尽き症候群的な状態に陥っていることに気づきます。これには個人的な不幸なども影響していたそうですが、そういった事情からレコーディングは一時中断。これと代わるように、シャロンは自身の癒しを求めソロプロジェクト・MY INDIGOを始動させます。ここでフォーキーでシンプルなサウンドを追求した彼女は、再び音楽に対する情熱を取り戻し、改めてWITHIIN TEMPTATIONへと向かっていくのです。こうして過去最長となる5年というインターバルを置いて、この『RESIST』というアルバムは完成しました。

聴いてもらえばわかるように、本作で鳴らされている音はエレクトロの色合いを強めた、非常にモダンなものばかり。シンフォニックの要素は残されているものの、過去作と比べたら少しだけ薄まっているように感じるかもしれません。しかし、それこそがこのバンドが新たに試みた挑戦であり、このアルバムのテーマのひとつでもあるわけです。情報社会となった現代に対する“抵抗”が綴られた歌詞と、それらを「今日のポップニュージックに欠けている反抗的なエッジ」の部分を「よりヘヴィでダーティーで、さらに未来的に」表現したサウンド。そう聞くとなるほど、どの曲もヒットチャートを席巻するモダンなヒット曲と並んでも違和感なく聴けるのではないでしょうか。

初期〜中期の楽曲群を好むリスナーにこの挑戦がどう受け取られるのかも気になるところですが、それ以上に新しいファン層を獲得できるかもしれない、そんな淡い期待もこのアルバムを聴いたら捨て切れません。「The Reckoning」にはPAPA ROACHのジャコビー・シャディックス(Vo)、「Raise Your Banner」はIN FLAMESのアンダース・フリーデン(Vo)がゲスト参加。さらに「Endless War」では、シャロンはベルギーのロックバンドARIDのシンガー、ジャスパー・ステヴァーリンクと艶やかなデュエットを聴かせてくれます。前作でも元NIGHTWISHのターヤ、KILLSWITCH ENGAGEの元シンガーであるハワード・ジョーンズ、SOUL ASYLUMのフロントマン、デイヴ・パーナーとかなりバラエティに富んだ面々を迎えていますが、今作はそれ以上に統一感が感じられるものになっている印象を受けます。

いろいろな意味で“攻め”の姿勢が感じられる本作。このトライが吉と出るか凶と出るかは現時点ではわかりませんが、僕は好意的に受け入れたいと思います。こういう作品、売れてほしいなあ。



▼WITHIN TEMPTATION『RESIST』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤2CD+カセット+Tシャツ / MP3


投稿: 2019 02 02 12:00 午前 [2019年の作品, In Flames, Papa Roach, Within Temptation] | 固定リンク

2019年2月 1日 (金)

SKID ROW『SKID ROW (30TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION)』(2019)

1989年1月に発売されたSKID ROWのデビューアルバムにして最大のヒット作(全米6位/500万枚)がリリース30周年を記念して、2019年1月にリマスタリング&ボーナストラック多数追加で再リリースされました。といっても本作、CDでの発売はなしで、デジタルリリースおよびサブスクリプションサービスでの配信のみ。アルバム本編がリマスタリングされたのなら、せっかくですしアナログ盤でも欲しいところですが……。

本サイトでも2年前にオリジナル盤のレビューを公開していますので、アルバム自体の内容についてはそちらに譲るとして。気になるリマスタリングの効果ですが、確かにドラムがふくよかになり、若干硬くなったような印象が。ギターの出音も以前より聴きやすくなったし、全体的に古臭さは減った気がします(あくまでイメージですが)。特に「18 And Life」のように強弱のはっきりした曲だと、そのへんの変化がよりわかりやすいのではないでしょうか。

アルバム本編に続いては、このデビュー盤制作時のアウトテイク「Forever」を収録。こちらは1998年発売のベストアルバム『40 SEASONS: THE BEST OF SKID ROW』にも収録されていたので、特に目新しさはなし。まあアルバム本編の楽曲と比べたら、確かにクオリティ的に一歩劣るかなという気はします。悪くないですけどね。

で、本作最大の収穫は、いわゆるDISC 2(配信なのでディスクもクソもないんですが)のライブ音源。1989年4月28日にカリフォルニア州ウェストミンスターのThe Marqueeで収録された全10曲からなるこの音源は、デビュー間もない彼らのライブフルセットをまるまる収めたものになります。フルスケールのライブアルバムをリリースしていない彼ら(特にセバスチャン・バック在籍時)にとって、たった10曲とはいえこれはありがたいかぎり。

内訳はアルバム収録曲11曲中「Can't Stand The Heartache」「Midnight / Tornado」除く9曲に、KISS「Cold Gin」のカバーを加えたもの。うん、当時の定番セトリですね。ここから3ヶ月後の1989年7月に実現した初来日公演も基本的にこれに近いもので、ここに「Can't Stand The Heartache」「Midnight / Tornado」とSEX PISTOLS「Holidays In The Sun」、RAMONES「Blitzkrieg Bop」などのカバー曲を追加したワンマン仕様でしたから。

そんなSKID ROWの若さあふれる(笑)ライブをじっくり楽しめるこのアニバーサリー盤、悪いわけがない。バズの若々しくて若干息切れも感じられるボーカル含め、2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)以降の彼らが失った“何か”を感じ取ることができるはずです。

まあとにかく曲が良いので、文句なしの内容かと。このライブ盤目当てでダウンロード購入してもいいくらい。2年後にはぜひフルライブの音源&映像をパッケージした『SLAVE TO THE GRIND』デラックス盤にも期待したいところですね。



▼SKID ROW『SKID ROW (30TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION)』
(amazon:MP3


投稿: 2019 02 01 12:00 午前 [1989年の作品, 2019年の作品, Skid Row] | 固定リンク

2019年1月27日 (日)

BRING ME THE HORIZON『AMO』(2019)

BRING ME THE HORIZON通算6枚目のオリジナルアルバム。その音楽的指向の変化に対して賛否両論を巻き起こしながらも全米・全英で2位を記録した前作『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)から約3年半という、彼らとしては非常に長いスパンを経て届けられました。

2016年初頭にキャンセルとなり、以後実現していない“『THAT'S THE SPIRIT』以降”の日本での生パフォーマンス。正直、あの時期のステージを体験できなかったことは、ここ日本のファンおよびメタル/ラウド系リスナーにとっては不幸以外のなにものでもありません。それもあって、続くこのアルバムで遂げられる進化がしっかり受け止められるのか、そこだけがずっと不安でした。

昨年8月、突如届けられた新曲「Mantra」。個人的にはこの1曲だけで次作に対する期待は一気に高まりました。『THAT’S THE SPIRIT』での路線を一歩推し進めたスタイルでしたが、おそらく第一歩としては前作に比較的近いものを選んだのでしょう。事実、当時のインタビューでオリヴァー・サイクス(Vo)は次作について「今までやってきたようなサウンドではない」と発言していましたから。

そして、2ヶ月後の10月には第2弾シングル「Wonderful Life」を発表。CRADLE OF FILTHのフロントマン、ダニ・フィルス(Vo)をフィーチャーしたこの楽曲は「Mantra」の延長線上ではあるものの、ブラスセクションを導入した“無駄にハッピー”な色合いも感じられ、少しずつ「今までやってきたようなサウンドではない」発言の真意が見え始めます。

今年に入ってすぐに、第3弾シングル「Medicine」を発表。前作にもあったスロウでメロディアスな楽曲と同系統ではあるものの、エレクトロ色を強めたモダンなポップソング調のこの曲は“振り切った”感が思い切り伝わるものでした。さらにリリース直前には「Mother Tongue」「Nihilist Blues」の2曲が公開。前者は「Medicine」と同系統のポップチューンで、メロディアスさが際立つ1曲。後者はカナダの女性アーティスト、グライムスをフィーチャーしたエレクトロチューンで、トランシーなトラックだけを聴いたらこれがBMTHの新曲だとは気づかないのではないでしょうか。

このように、少しずつその本性を現し始めた『AMO』(ポルトガル語で愛を意味する)というアルバム。先行トラックで心構えはできていたものの、いざアルバムを通して聴くとさらに驚かされるのですが、と同時に「Mantra」や「Wonderful Life」のようなラウド系ナンバーがまったく浮いていない、必要不可欠な存在であることにも気づかされます。曲順含め、非常に収まりが良いんですよね。しかも、ほかの新機軸ナンバーと同じくらいに作り込みが異常すぎることも見えてくる。なんだ、この徹底さは!?って。

オープニングトラック「I Apologise If You Feel Something」での驚きと、そこから「Mantra」へと流れていく気持ち良さ、ヒップホップ的手法を用いりながらもロックバンドとしての個性を残す「In The Dark」や「Why You Gotta Kick Me When I'm Down?」の新鮮さ、トリッピーな「Fresh Bruises」やシンフォニックな「I Don't Know What To Say」に漂う繊細さと「Sugar Honey Ice & Tea」「Heavy Metal」(後者には元THE ROOTSのMCでヒューマンビートボクサーのラゼール参加)で見せる豪快さ。ここまでバラバラな色を包括しつつも、しっかりとひとつのアルバムの中で散漫になることなく、つながりを見せながら聴かせることができるのは、前作で得た自信によるものが大きいのではないでしょうか。

もはやデスコアだメタルコアだとカテゴライズすることも馬鹿馬鹿しいくらいに“ロック”しているし、こうやってラウドなバンドは進化していくんだってことをちゃんと形として証明し続けている。すごいことだと思いますよ。だって、本当にすごいアルバムだもの。前作以上にスルメ度の高い1枚。今度こそ、これらの楽曲を生で聴きたいな。



▼BRING ME THE HORIZON『AMO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2019 01 27 12:00 午前 [2019年の作品, Bring Me the Horizon, Cradle of Filth] | 固定リンク

2019年1月22日 (火)

FEVER 333『STRENGTH IN NUMB333RS』(2019)

2019年1月18日に世界同時リリースされた、FEVER 333待望の1stフルアルバム。日本では前作にあたるミニアルバム(EP)『MADE AN AMERICA』(2018年)がCD化されましたが、海外では同作はデジタル版およびアナログ版のみでの発売。つまり、このフルアルバムが初のCDリリースとなるわけです。

プロデュースを担当したのは、GODLFINGERのジョン・フェルドマン(DISTURBEDBLACK VEIL BRIDESONE OK ROCKなど)とBLINK-182のトラヴィス・バーカーという前作から参加の面々。ジョンはアディショナル・ギター、トラヴィスはアディショナル・ドラムおよびプログラミングでも貢献しているようです。

さて、『MADE AN AMERICA』の時点では「新世代のRAGE AGAINST THE MACHINE」的な捉えられ方も多かったようですが、今作では「One Of Us」などラップコア的方向性をより推し進めるかと思いきや、「Burn It」や「Prey For Me」などメロディアスでエモーショナルな方向性も強めています。

このへんの楽曲は前作のレビューでも触れたように、TWENTY ONE PILOTS以降のポストハードコア/エモ/ラウド/ポップスの流れを踏襲したものであると同時に、今作ではさらにニューメタルおよびそこを起点にエレクトロ方面へと進化していったLINKIN PARKからの影響も強く感じられ、前作では見せきれなかった多面性がより表面化してきたのではないでしょうか。「Inglewood」や「Out Of Control」のアンセム感なんて、完全にその影響が見えますしね。

思った以上に歌モノとしての即効性が強いことに、最初は面食らったというか驚いたのですが、それも最初だけ。何度も聴き込むうちに、シンプルに「カッコいい!」と思えるのですから、不思議なものです。懐かしさを感じさせつつも、しっかり今の音としてド真ん中を突いてくる。聴きやすさと同時に、しっかりアグレッシヴさも備わっているので、一筋縄ではいかない。このへんの絶妙なさじ加減も、FEVER 333というバンドの魅力のひとつではないでしょうか。

また、メッセージ性の点においても、彼らが「新世代のRAGE AGAINST THE MACHINE」と呼ばれる理由が理解できるものがある。直接的に特定の誰かを攻撃するわけではなく、誰もが思い浮かべられるであろう共通の仮想敵を歌の中で作り上げ、聴き手との意思疎通を図る。リスナー1人ひとりが脳内でイメージする仮想敵はすべて一緒ではないものの、これらの楽曲を前にしたら誰もが叫びたいことは一緒。そういう意味でも非常に器用だし、ポップシーンでも成功を収められるだけの器量を持っていると思うのです。

こりゃ売れますよ。最近、ロック系アーティストがBillboard 200でなかなか1位を獲れずにいるけど、これは久しぶりにやっちゃうんじゃないか……そう強く実感させてくれる、非常に“NOWな”アルバムだと思います。3月に予定されているジャパンツアー、ものすごいことになるんじゃないかな。今のうちにチケットを押さえておいたほうがいいと思いますよ。



▼FEVER 333『STRENGTH IN NUMB333RS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 01 22 12:00 午前 [2019年の作品, Fever 333, the] | 固定リンク