カテゴリー「2019年の作品」の176件の記事

2023年2月13日 (月)

HALESTORM『HALESTORM』(2009)

2009年4月28日にリリースされたHALESTORMの1stアルバム。日本盤は『LOUD PARK 10』での初来日にあわせて、2010年10月27発売。

リジー(Vo, G)&アージェイ(Dr)のヘイルきょうだいを中心に1997年から活動を続けてきたHALESTORMですが、ジョー・ホッティンジャー(G)&ジョシュ・スミス(B)が加わった2003〜4年以降に活動が本格化。2005年には現在も所属するメジャーのAtlantic Recordsと契約し、翌2006年春には5曲入りライブEP『ONE AND DONE』をリリースします。

そこから地味なライブ活動を展開していき、ハワード・ベンソン(HOOBASTANKDAUGHTRYIN FLAMESなど)をプロデューサーに迎えてじっくり時間をかけて1stアルバムを完成させます。ミキシングエンジニアにクリス・ロード-アルジ、マスタリングエンジニアにテッド・ジェンセンという一流どころを起用し、ゲストプレイヤーにはのちにBON JOVIに加入するフィル・X(G/「Bet U Wish U Had Me Back」のみ)、楽曲制作のコライトには元EVANESCENCEのベン・ムーディー(G)やSIXX: A.M.のジェイムズ・マイケル(Vo)、現MOTLEY CRUEのジョン・5(G)、SLIPKNOTSTONE SOURコリィ・テイラー(Vo)、AEROSMITHなどとのコラボで知られるマーティ・フレデリクセンなど著名アーティストが顔を揃えており、いかにレーベルがこのバンドに力を入れているかが伺えます。

そのサウンド的には正当的なアメリカンハードロックが下地になっており、スピードよりもグルーヴ感やヘヴィさを重視したテンポからはすでに大モノ感すら伝わります。アメリカ人、基本的にこういったミドルテンポの楽曲が好きですものね。あと、クレジットを確認するとすべての楽曲はリジーを中心に執筆されているものの、どれも単独で書いたものではなく、より良いものへとまとめ上げるために複数のコライターが名を並べている。かなりいろんな思惑の働いた作品ではあるものの、だからこそデビューアルバムにも関わらず異常に完成度が高い。世が世ならHEARTみたいに産業ロック呼ばわりされそうですよね。

そうそう、僕が初めてこのアルバムを聴いたときの印象が、まさに80年代のHEARTだったんです。心地よいテンポ感でまとめられたアメリカンハードロックに、これまた心地よく響くリジーのボーカルが乗る。全体を通してラジオフレンドリーな作風で、ゆっくり時間をかけて丁寧に売っていこうとする、そういう姿勢が見え隠れしたんです。リスナーによってはそういった作風に嫌悪感を示すのかもしれませんが、捻くれ者な自分はこういう力の入った“売れ線”も大好物なので、当時からよく聴いていた記憶があります。

実際、このアルバムから「I Get Off」「It's Not You」「Familiar Taste Of Poison」「Bet U Wish U Had Me Back」といったラジオヒットが生まれ、アルバム自体も全米40位まで上昇。現在までに50万枚以上を売り上げるヒット作になりました。ここでの地道な成功があったから、続く2ndアルバム『THE STRANGE CASE OF...』(2012年)での大成功(全米15位、ミリオン獲得)へとつなげていけたんでしょうね。

 


▼HALESTORM『HALESTORM』
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なお、本作リリースから10年後の2019年12月20日には、10thアニバーサリー・エディションもアナログ&デジタルで発売されています。こちらはCD未発売ということもあり、日本盤も発売されておりません。

本バージョンはアルバム本編11曲に加え、メジャー契約後の2006〜8年に録音された12ものデモ音源をボーナストラックとして収録。その多くが1stアルバム未収録で、音質こそ劣るもののメジャー感の強いアルバム本編とは異なるオルタナメタル/ポストグランジ的なテイストは非常に新鮮に響くはずです。

こうした歴史を踏まえつつこのデモテイクを、時系列に沿って追っていくと、どのような段階を踏んで完成度の高い1stアルバムへと到達していったか、その過程を確認できるはず。本編をしっかり楽しんだあとに、こちらもチェックしてみるといろいろ発見も多いと思いますよ。

 


▼HALESTORM『HALESTORM: THE 10TH ANNIVERSARY EDITION』
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2022年5月 6日 (金)

GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』(2019)

2019年8月19日にリリースされたジンジャー・ワイルドハートの8thアルバム。日本盤未発売。

最初に上記の日程でRound Recordsを通して10曲入りアルバムとしてデジタルリリースされ、翌2020年初頭にCDおよびアナログ盤が限定販売。同年5月21日には「Good Times Are In The Mail」「lil ol Wine Drinker Me」の2曲を追加した全12曲入りアルバムとして、サブスクなどで一般流通しています。

2019年というと、ジンジャー(Vo, G)、CJ(G, Vo)、ダニー(B, Vo)、リッチ(Dr)の“クラシックラインナップ”THE WiLDHEARTSが10年ぶりのアルバム『RENAISSANCE MEN』(2019年)で本格復帰したタイミング。それもあってなのか、ソロ作として直近の2枚……『GHOST IN THE TANGLEWOOD』(2017年)、『THE PESSIMIST'S COMPANION』(2018年)がアメリカーナ風レイドバックした落ち着いた作風だったのに対し、ここでは再び本来の彼らしいエネルギッシュでハード&ヘヴィ、だけどメロウでキャッチーな作品集にまとめられています。

ヘヴィな音像でエフェクティヴ、ミドルテンポ中心の作風は、シンプルなバンドサウンドで疾走感の強いパンク/パワーポップな『RENAISSANCE MEN』からの反動なのでしょうか。ソングライターとしての充実度はもちろん『GHOST IN THE TANGLEWOOD』や『THE PESSIMIST'S COMPANION』からの流れを汲みつつ、多重録音を用いたハーモニーなどの効果もあって、同じような質感のメロディ(「Pound Coins & Kitchen Roll」あたりは前作に入っていても不思議じゃない)でもまったく違って聴こえるから不思議です。

ここで展開されているヘヴィだけどキャッチー、ときどきサイケデリックなテイストも、ジンジャーが元来から持ち合わせている要素のひとつで、バンド時代でいったら名作『P.H.U.Q.』(1995年)、あるいは迷作『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)あたりと通ずるものがあるのかな。特に厚みのあるコーラスワークや「Love Is」から「Saturday Matinee」で試みた曲間なしの組曲風アレンジからは、『P.H.U.Q.』での経験が大いに反映されているように感じます。

もっと言えば、初期のソロ作(2000年代初頭から同年代後半にかけて)でイメージしていた青写真(やりたかったこと)が今は完璧に形にできるようになった。長年の試行錯誤を経て到達した、ソロ・ロックアーティスト=ジンジャー・ワイルドハートのひとつの“ゴール”がこれなのかな。

残念ながら、本作を最後にジンジャーの完全オリジナル新作アルバムは世に出ておりません。しばらくバンド活動が充実していたこと、あるいはコロナ禍に突入したことなどが理由かもしれませんが、アーシーな路線を経て再び“ジンジャーらしさ”に徹した本作の次に、彼がどんな“道”を選ぶのかが非常に気になります。

 


▼GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』
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2022年4月21日 (木)

FONTAINES D.C.『DOGREL』(2019)

2019年4月12日にリリースされたFONTAINES D.C.の1stアルバム。日本盤は同年12月11日発売。

FONTAINES D.C.は2017年に結成された、アイルランド・ダブリン出身の5人組バンド。ダブリンのミュージック・カレッジで出会った彼らは、結成前からビート・ジェネレーションの詩人たちに影響を受けた詩集を発表するなど、創作活動に積極的でした。その創作の手段が音楽へとシフトし始めると、2017年5月のシングル「Liberty Belle」を筆頭に、数々の自主制作音源を発表し続けます。そして、2018年末にPartisan Recordsと契約。ダン・キャリー(BLACK MIDIWET LEG、ケイ・テンペストなど)がプロデュース&ミックスを手がけたこのアルバムで本格的デビューを果たします。

速すぎず遅すぎす、だけど疾走感の強さが伝わる性急なビートと、ポストパンクの影響下にあるサウンド&アレンジ、THE SMITHS以降の抒情性を漂わせた伝統的UKロックサウンドはどことなく懐かしさを感じさせるものがあります。言ってしまえば、新しさは皆無なんです。だけど(いや、だからこそ)惹きつけられる不思議な魅力が伝わる。最初にこのアルバムを聴いたときの感想は、まさにこれでした。

1970年代末以降に登場した歴代のUKポストパンクバンドのあれこれを彷彿とさせつつ、2000年代初頭に続発したポストパンクリバイバル群を思い出させたりと、ルーツをしっかり大切にしつつ自分たちの音を作り上げようとする気概も伝わりますし、新人のデビューアルバムとしては十分すぎるほどの完成度だと思います。ぶっちゃけ、最初はオープニングトラック「Big」や続く「Sha Sha Sha」の2曲を聴いた限りでは、そこまで心動かされなかったんです。でも、3曲目「Too Real」あたりになって少しずつ「おっ? 意外と良いかも!?」と思い始め、M-5「Hurricane Laughter」でようやく前のめりで楽しむことができるようになったのでした。

いわゆる「新人ならではの初期衝動性」という点でも、本作は高く評価できると思います。というのも、続く2ndアルバム『A HERO'S DEATH』(2020年)、そしてまもなくリリースされる3rdアルバム『SKINTY FIA』(2022年)でそのサウンドおよび世界観はさらに進化し、整合性を高めているから。オリジナリティも作品を追うごとに確立されていますが、この1stアルバムにはデビュータイミングにしか出せない“輝き”と“危うさ”が絶妙なバランスで含まれており、そういう意味でもより高く評価されるべき1枚だと確信しております。

日本デビュー直後にコロナ禍に突入してしまい、なかなかその真の姿を生で確認することができずにいましたが、いよいよこの夏の『FUJI ROCK FESTIAVL '22』で念願の初来日が実現。残念ながら彼らの出演する3日目はスケジュール的に無理なので、僕はライブを目にすることはできませんが、ぜひ現地に駆けつける方はその歴史的瞬間を目撃してもらいたいと思います。

 


▼FONTAINES D.C.『DOGREL』
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2022年4月 6日 (水)

REEF『IN MOTION: LIVE FROM HAMMERSMITH』(2019)

2019年2月22日にリリースされたREEFのライブ作品。日本盤未発売。

本作は2018年5月(日本盤は同年10月)に発表された18年ぶりのアルバム『REVELATION』を携え、同年5月6日にロンドン・Hammersmith Apollo(Eventim Apollo)にて開催されたライブの模様を収録したもので、CD+Blu-rayおよびアナログ2枚組+Blu-rayの形態にてリリース(海外では音源のみデジタル&ストリーミングあり)。90年代の全盛期はライブアルバムを一切制作しなかったバンドですが、2010年の再結成以降は『LIFE FROM METROPOLIS STUDIOS』(2013年/配信のみ)、『LIVE AT ST. IVES』(2016年)に続く3作目。また、ライブ映像作品としては2003年のDVD『REEF LIVE』(のちに音源のみデジタル配信)に続く2作目となります。

当時のメンバーはゲイリー・ストリンガー(Vo)、ジェシー・ウッド(G)、ジャック・ベッサント(B)、ドミニク・グリーンスミス(Dr)の4人。ライブにはキーボーディスト、2人の女性コーラスがサポート参加しており、アルバムの世界観に近い形で名曲たちが再現されています。

ライブアルバムには当日披露された全17曲が完全収録(「Summer's In Bloom」と「Naked」が入れ替わり、アンコールに披露された「Revalation」が「Summer's In Bloom」のあとに移動される編集あり)とされていますが(パッケージ裏面のその表記あり)、実際には「Summer's In Bloom」「Revalation」「Yer Old」「End」のラスト4曲は5月25日のMotion Bristol公演からのようです。また、ライブBlu-rayは「Summer's In Bloom」「Revalation」の2曲がカットされています。ライブ映像がフル収録で音源はいくつかカットされるというケースが通例かもしれませんが、Hammersmith Apollo公演での一部楽曲の出来に満足がいかなかった結果なのでしょうか。

選曲的には1stアルバム『REPLENISH』(1995年)から2曲(「Naked」「End」)、2ndアルバム『GLOW』(1997年)から8曲(「Place Your Hands」「I Would Have Left You」「Summer's In Bloom」「Consideration」「Don't You Like It?」「Come Back Bright」「Higher Vibration」「Yer Old」)、3rdアルバム『RIDES』(1999年)から1曲(「I've Got Something To Say」)、ベストアルバム『TOGETHER, THE BEST OF...』(2002年)から1曲(「Stone For Your Love」)、5thアルバム『REVELATION』から5曲(「First Mistake」「How I Got Over」「My Sweet Love」「Precious Metal」「Revelation」)と非常に偏った内容。最大のヒット作『GLOW』から8曲というのはさすがに偏りすぎだし、4thアルバム『GETAWAY』(2000年)からのセレクトなしというのも解せない。そもそも当時の最新作より『GLOW』全曲披露みたいな形になってしまっている点で、当時のバンドの状況や世間から求められるものが透けて見える気がして、ちょっと悲しくなります。

ロニー・ウッドTHE ROLLING STONES)の息子であるジェシー・ウッドはバンドの4分の1に徹し、そつないプレイを披露している印象。そのへんも父親譲りかな。見た目的にモサい長髪&髭のゲイリー&ジャックに押され気味の印象もなきにしもあらずですが、2022年現在もバンドに在籍していることを考えるとそれなりに馴染んでいるのでしょう。よかった。

とにかく、このバンドらしいグルーヴィーでアーシーなロック、クラシカル&ソウルフルなハードロックを堪能できるという点においては、スタジオアルバム以上に最適な作品かな。結果としてオリジナルメンバーのドミニク・グリーンスミスが参加した最後の作品となってしまいましたし(このライブの約2ヶ月後、ドミニクはドラマーからの引退を表明、同時にREEFも脱退)、そういった意味でも貴重なドキュメントかもしれません。

今月末にはアンディ・テイラー(ex. DURAN DURAN、ex. THE POWER STATION)をプロデューサーに迎えた4年ぶりの新作『SHOOT ME YOUR ACE』のリリースも控えているので、クラシックロックファンにこそぜひとも映像と合わせて楽しんでいただきたいところです。

 


▼REEF『IN MOTION: LIVE FROM HAMMERSMITH』
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2021年7月24日 (土)

YONAKA『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』(2019)

2019年5月31日にリリースされたYONAKAの1stフルアルバム。日本盤未発売。

YONAKAは2014年にイギリス・ブライトンで結成された4人組バンド。彼らがその名を広めるきっかけとなったのが、2016年の音楽フェス『Radio 1's Big Weekend 2016』でのBBC Introducingステージのパフォーマス。これを機に、2017年には初のEP『HEAVY』を自主制作で発表し、2018年には英Asylum Recordsと契約して2枚のEP(『TEACH ME TO FIGHT』『CREATURE』)をリリースしたほか、BRING ME THE HORIZONのヨーロッパツアーにFEVER 333とともに帯同します。2019年に入ると新たにFueled By Ramenとワールドワイド契約を果たし、この1stアルバムを発表することとなります。

彼らのバンド名は日本語の「夜中」に由来しているとのことで、深夜が醸し出す独特な空気感やエネルギーはこのバンドにおける大きなモチーフになっているとのこと。また、そういった世界観と並行して、歌詞ではメンタルヘルスについて題材にすることも多く、このアルバムの多くの楽曲もそういったテーマが扱われているとのことです。

サウンド的には2010年代後半以降の主流であるモダンポップを下地にしたロックが軸になっており、要所要所でBMTH『amo』(2019年)以降を思わせるモダンなラウドロック的手法も見受けられます。ボーカル、ギター、ベース、ドラムというシンプルなバンド編成ながらも、音源ではドラムを打ち込みで表現したり、ギターがサウンドエフェクトの役割を果たしていたりと、必ずしもバンドサウンドにこだわっていないことも感じられる。というもの、このバンドの大きな武器となっているのが紅一点テレサ・ジャーヴィス(Vo)の歌声であり、このボーカルを最大限に活かすための良曲を最重要視した結果がこのアルバムなのだと考えたら、こういったテイストも非常に合点がいくわけです。

歌詞にこだわらなければ、意外とスルリと聴き進められてしまうポップな1枚ですが、どうせなら歌っている内容にもこだわっておきたいところ。残念ながら日本盤がリリースされていないことから正式な対訳は存在しませんが、ストリーミンスサービスの歌詞機能を使って、独自に翻訳してみるのもいいかもしれません。事実、どの曲もそれほど難しい表現は使われていないので(解釈の差異は多少あれど)、どんなことが歌われているか意外と理解することが可能かと思います。

なお、YONAKAはこの7月15日にミックステープと称した8曲入り最新作『SEIZE THE POWER』を発表したばかり。こちらもあわせてチェックしてもらいたいところです。

 


▼YONAKA『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』
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2021年6月18日 (金)

HELLOWEEN『UNITED ALIVE IN MADRID』(2019)

2019年10月4日にリリースされたHELLOWEENのライブアルバム。日本盤は同年10月2日に先行発売。

HELLOWEENにとって『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS: THE LEGACY WORLD TOUR 2005/2006』(2007年)に続く、通算4作目のライブアルバム。アンディ・デリス(Vo)、マイケル・ヴァイカート(G)、サシャ・ゲルストナー(G)マーカス・グロスコフ(B)、ダニ・ルブレ(Dr)という2005年からの布陣に創設メンバーのひとりカイ・ハンセン(G, Vo)、そして80年代後半から90年代前半にかけて在籍した2代目シンガーのマイケル・キスク(Vo)を加えた7人編成で行ったワールドツアーから、2017年12月9日のスペイン・マドリッド公演を完全収録した2枚のディスクに、2017〜18年のワールドツアーからの4曲を収めたボーナスディスクが付いた3枚組/2時間40分のボリューミーな内容となっています。

カイやキスクが参加したライブアルバムは、バンド1作目の『LIVE IN THE U.K.』(1989年/日本盤は『KEEPERS LIVE』のタイトルで流通)以来のこと。もっともあれはライブ完全収録盤ではなかったので、一部の楽曲のみしか聴くことができなかったんですよね。そう考えると、2人が参加した『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS』2部作からの楽曲や、『PINK BUBBLES GO APE』(1991年)からのライブテイクを楽しめるのは(キーが下げられているとはいえ)当時からのリスナーとしてはうれしいものがあります。

ボーナスディスク含む全24トラック中、キスク在籍時の楽曲が12トラック(うち1トラックは2曲メドレー)、アンディ加入後の歌唱曲が9トラック、カイ歌唱曲が2トラック(うち1トラックは4曲メドレー)、そして「Pumpkins United」という内訳になります。とはいえ、ライブオープニングを飾る「Halloween」や「A Tale That Wasn't Right」、「Perfect Gentleman」や「Forever And One」ではキスクとアンディがデュエット(笑)を披露しているし、「How Many Tears」ではカイを含むトリプルボーカルが楽しめる。さすがにアンディ歌唱原曲をキスクがひとりで歌ったり、その逆というパターンはゼロですが、原曲をベストな形でお届けしようというバンド側の気遣い(もしくはキスクへの気遣い。笑)は伝わってくるかな。

僕は本ツアーでの来日公演はさまざまな事情で参加できなかったのですが、こういう形で追体験できるのはうれしい限り。しかも、本作はほぼ同タイトルのライブ映像作品(『UNITED ALIVE』)も制作されているので、映像でも堪能できますしね(ただし、こちらは複数公演の映像をミックスしたもの)。選曲的にもベスト中のベストと言えるものだと思いますし(例えば迷作『CHAMELEON』(1993年)からは1曲も採用されていなかったり、最新作『MY GOD-GIVEN RIGHT』(2015年)の曲もゼロだったり)。アンディやキスクのボーカルも比較的良好なほうだと思うので、最後まで安心して楽しめますしね。かつ、演奏面も文句なし。これを聴いたら/観たら、そりゃ“この7人での新作”に過剰な期待を寄せちゃいますよね。

最新アルバム『HELLOWEEN』(2021年)が発売された今となっては、このライブアルバムって来る新作に対する副読本だったのかな?という気がしてなりません。アルバム『HELLOWEEN』をより深く理解する、楽しむために一度は触れておくべき、もうひとつの“HELLOWEEN史の集大成”。このタイミングに改めて聴いてみることをオススメします。

 


▼HELLOWEEN『UNITED ALIVE IN MADRID』
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2021年4月 4日 (日)

NIRVANA『LIVE AT THE PARAMOUNT』(2019)

2019年4月5日にリリースされたNIRVANAのライブアルバム。日本盤未発売。

本作は2011年に発売された同タイトルのライブ映像作品の映像版。アナログ盤およびデジタルのみでリリースされており、CDバージョンは同年発売の『NEVERMIND』スーパーデラックスバージョンに同梱されていました。現在では同バージョンのMP3ダウンロードや各種ストリーミングサービスのほか、『LIVE AT THE PARAMOUNT』単品での配信にて楽しむことができます。

本作で聴くことができるライブは1991年10月31日、シアトルにあるパラマウント・シアターで行われたライブを収録したもの。約2800人収容と、当時の彼らにとってはあなり大きな会場ですが、同年9月24日に2ndアルバム『NEVERMIND』(1991年)でメジャーデビューしたばかりのタイミングのパフォーマンスをたっぷり堪能することができる、貴重な内容となっています。

全19曲、約70分のフルスケールライブは、当時の最新作『NEVERMIND』に加え、1stアルバム『BLEACH』(1989年)からの楽曲も多数披露されているほか、数々の“当時はシングルのみでしか聴くことができなかった”レア曲(大半は1992年に発表されるコンピレーションアルバム『INCESTICIDE』に収録)や、次作『IN UTERO』(1993年)に収録されることになる「Rape Me」もプレイされています。

時期的にはまだNIRVANAがオーバーグラウンド浮上以前ということもあり、地元のローカルヒーロー的な存在だったNIRVANAが力むことなく、また(主にカート・コバーンが)病むことなくライブを満喫している様子が音からも伝わってきます。超代表曲「Smells Like Teen Spirit」ひとつとっても、楽曲と真摯に向き合ってプレイしているのがわかりますし、なによりもデイヴ・グロール(Dr)参加後のNIRVANAが『BLEACH』収録曲を『NEVERMIND』と同じテンション/演奏力で表現している。録音状態など含めチープさが際立った『BLEACH』収録曲の真の魅力に気づける、絶好の機会と言えるのではないでしょうか(もっとも、あのチープさ込みで良かったりもするんですけどね。ここでは良き演奏と良きサウンドで楽しめるという点において、楽曲本来の良さが味わえるはず)。

1992年以降のNIRVANAは、良くも悪くも神格化されてしまい、それが時に奇跡的な瞬間を生み出し、それ以外ではクソみたいなトピックを豊富に提供することになってしまいます。そう考えると、この「1991年後半」という短い期間はバンドにとって(いろんな意味で)最良のシーズンだったのかもしれません。そんな確変の瞬間をぜひ音で、あるいは映像で楽しんでもらいたいところです。

 


▼NIRVANA『LIVE AT THE PARAMOUNT』
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2020年12月27日 (日)

PRINCE『ORIGINALS』(2019)

2019年6月7日にリリースされたプリンスの未発表音源集。日本盤は同年6月21日に発売。

本作はプリンスが他アーティストに提供した楽曲の、プリンスによるオリジナルバージョンを集めたアルバム。全15トラック中14トラックが未発表音源で、プリンスの死後発表された数々の未発表音源の中でも特に本作は非常に興味深い内容と言えるのではないでしょうか。

収録曲の中でもっとも知名度が高いのが、THE BANGLESに提供した「Manic Monday」とシネイド・オコナーのカバーで知られる「Nothing Compares 2 U」でしょう。なにせ前者は全米2位、後者は全米1位という高記録を残しているわけですから。「Manic Monday」はもともとAPOLLONIA 6のためにプリンスが書き下ろしたで、オリジナルバージョンではプリンスとのデュエットが聴けたそうですが、結果として世に出ることなくお蔵入り。のちにTHE BANGLESが取り上げ大ヒットを遂げるわけです。また、「Nothing Compares 2 U」もオリジナルはファンクバンドTHE FAMILYのアルバム収録曲で、原曲のリリースから5年後にシネイドがヒットさせています。

「Manic Monday」のプリンス・バージョンですが、あの印象的なピアノのリフはそのまんま。全体の雰囲気もほぼ一緒でキーも同じ。THE BANGLESバージョンのほうがロックバンドならではの躍動感が強く出ており、プリンス版のほうはアクの強さが印象的といったところでしょうか。

「Nothing Compares 2 U」のプリンス歌唱版のみ既発ですが、改めてシネイド・オコナー版のアレンジのシンプルさと個性的な歌声のおかげでオリジナリティを確立させることに成功したのではないでしょうか。ちょっと大げさな表現になりますが、プリンス版はゴスペル、シネイド版は賛美歌……どうでしょう?

他の楽曲に関しても、どれもプリンスの作品として「実はシングル『○○』のカップリングとして198○年に発表済み」と言われても信じてしまうぐらい、“普通にプリンスのオリジナル曲”。バックトラック的には楽曲提供された歌唱アーティストのバージョンとほぼ一致しますし、当たり前か。それに、他人に提供する楽曲というのもあってか、自身のヒットシングル並みにキャッチーな楽曲が並んでいるんですよね。ここまでキャッチーな楽曲がズラリと並ぶアルバムという点においても、本作は“聴いておくべき1枚”と言えるのではないでしょうか。

とはいえ、先の「Nothing Compares 2 U」以外は世に出す予定はまったくなかったわけですから、きっと彼が亡くならなかったらこの先何年、何十年と聴く機会は生まれなかったんだろうな。彼にとっては「何してくれてんねん」案件でしょうけど、ファンからしたら「ずっと聴きたかったものが聴けた!」といううれしい1枚。複雑な心境にもなりますが、出していただいたからには素直に楽しみたいと思います。

各オリジナルアルバムに付随した未発表曲や未発表テイクも良いですが、やっぱり「余りもの」だったり「作りかけ」という印象が強い。それだったら、こうしたコンセプトのしっかりしたコンピ盤のほうが出す意味が大きいのかな。この先、ここまでコンセプチュアルな未発表曲集やコンピが世に出ることはないんでしょうね。

 


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2020年12月19日 (土)

PEARL JAM『MTV UNPLUGGED』(2019/2020)

2019年11月29日にRecord Store Dayの一環として、アナログ限定でリリースされたPEARL JAMのアコースティックライブアルバム。2020年10月23日にはCDおよびデジタルでの一般リリースがスタートし、日本盤も同年11月9日に限定発売されました。

本作は1992年3月16日に収録された、MTVの名物番組『MTV Unplugged』での音源をまとめたもの。これまでさまざまな形態でブートレッグが発売されてきましたが、昨年アナログ限定、かつ数量限定という形で初めて正式リリースされたわけです。その際、(どうせ1、2年したら正式リリースされるだろうと見込んでいたので)僕はアナログ購入は見送りましたが、やはりという感じですね。

この日はアンコール含めて計10曲が演奏されています。

<セットリスト>
01. Oceans
02. State Of Love And Trust
03. Alive
04. Black
05. Jeremy
06. Porch
07. Even Flow
08. Rockin’ In The Free World [Neil Young cover]
---ENCORE---
09. Garden
10. Leash

アルバムにはこのうち、アンコールの2曲とカバー曲を除く計7曲が採用されており、かつ曲順も最後の2曲(「Porch」と「Even Flow」)が入れ替わっています。アンコールを除く8曲の映像は、YouTubeなどで探せば見つかるはずです(実際に放送されたものとは異なる流出映像かと思いますが、僕も過去に目にしたことがあります)。

タイミング的には1stアルバム『TEN』(1991年)がチャートをグイグイ上昇し始め、「Even Flow」や「Jeremy」といった楽曲のMVがMTVでヘヴィローテーションされていた時期。僕はこの頃海外にいたので、特にNIRVANAとPEARL JAMのブレイクしていく様を間近で感じることができたのは、ある意味ではラッキーだったかもしれません。特にPEARL JAMは日本と海外とでは認知度の高低差が著しく、帰国後にその人気の低さに驚いたものです。

そんな勢いに乗った時期のアコースティックライブ、悪いわけがありません。エディ・ヴェダー(Vo)のボーカルは若さを前面に押し出した一本調子が目立ちますが、それもまた一興といったところでしょうか。そもそも「Oceans」や「Alive」「Jeremy」「Even Flow」などといった1stアルバム収録曲を惜しげも無く披露しまくるライブ自体、今や貴重ですからね、そういった意味でも本作のレア度は高いのではないでしょうか(まあ時期的に1stアルバムの曲しかなかったしね)。

また、次作『VS.』(1993年)以降どんどん捻くれたテイストが加わり、楽曲が難解になり始めるという意味でも、素直なロックを鳴らしていた時代のアコースティックライブはかなり貴重かもしれません。「やっぱりこの頃がよかった……」なんて懐古主義的なことは言いませんが、良い曲をシンプルな編成で披露する本作はやはり彼らの歴史を語る上で欠かせない1枚ではないでしょうか。

 


▼PEARL JAM『MTV UNPLUGGED』
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2020年9月24日 (木)

WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』(2019)

CONVERGEのフロントマン、ジェイコブ・バノン(Vo)による別バンドWEAR YOUR WOUNDSが2019年7月12日にリリースした2ndアルバム。日本盤は2日先行の同年7月10日に発売されています。

アートブックなどミックスメディア・プロジェクトの一環として発表された『DUNEDEVIL』(2017年)を含めれば3作目のアルバムとなる今作(アルバム『DUNEDEVIL』は1stアルバム『WYW』日本盤にボーナスディスクとして付属。サブスクなどでも手軽に聴くことができます)。過去2作はあくまでジェイコブのソロ/サイドプロジェクトとして制作されたものでしたが、『WYW』制作に参加したメンバーを軸にバンド形態として始動。ジェイコブがベースやピアノなどを兼任しつつ、マイク・マッケンジー(G/THE RED CHORD、STOMACH EARTH)、ショーン・マーティン(G/TWITCHING TONGUES、ex. HATEBREED)、アダム・マッグラス(G/CAVE IN、NOMAD STONES)、クリス・マッジオ(Dr/ex. TRAP THEM、ex. SLEIGH BELLS)というUSハードコア界の重鎮たちが一堂に会するスーパーバンドへと進化したわけです。

ですが、ここで展開されているのは現代的なハードコアとは一線を画する、シューゲイザーやスラッジの影響下にあるアートロックのようなサウンド。アッパーなサウンドで攻めたり叫んだりすることはなく、ダウナーなボーカル&サウンドで悲しみや絶望など負の感情が時にメランコリックに、時にエモーショナルに表現されていく……そういった意味では、CONVERGEの最新作『THE DUSK IN US』(2017年)の中で芽生え始めた方向性を一歩推し進めたものと言えるかもしれません。

トリプルギターを用いた音の厚み、ピアノやエレクトロニクスを効果的に用いた叙情性、ボーカルラインやギターが奏でるメロディの多彩さはCONVERGEでは表現できなかった世界観でしょうか。そのサウンドをエンジニアリング&プロデュースするのが当のCONVERGEの一員であるカート・バルーというのも、また興味深いところです。

『WYW』が良くも悪くも実験性の強い1枚であったことを考えると、本作で展開されているのは紛れもなく“バンドのアルバム”だということ。この違いは非常に大きく、特にCONVERGEからの流れでジェイコブのソロに触れるというリスナーには今作のほうがとっつきやすいと言えるでしょう。もちろん、CONVERGEそのものを求めると痛い目を見ることになりますが……。ただ、『THE DUSK IN US』という作品を好意的に受け入れることができたファンには間違いなく響く良作であり、ある意味では『THE DUSK IN US』と表裏一体の1枚と断言できます。

楽曲の良さや世界観、演奏面など、どれを取っても高品質な1枚。今みたいな季節に、深夜に適度な音量で楽しみたいアルバムです。

 


▼WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』
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