カテゴリー「2019年の作品」の165件の記事

2020年7月11日 (土)

INXS『INXS: LIVE BABY LIVE WEMBLEY STADIUM』(2019)

2019年11月中旬にリリースされたINXSのライブアルバム。

本作は同時期に公開されたINXSのライブ映画のサウンドトラックとして発売されたもので、内容は1991年7月に実施された英ウェンブリー・スタジアムでの模様を完全収録したもの。実は、1991年に同タイトル(こちらはシンプルに『LIVE BABY LIVE』のみ)のライブアルバム&ライブ映像作品が発売されていましたが、1991年版のCDは同時期のワールドツアーからベストテイクを集め、新曲「Shining Star」を追加したコンピ的内容。一方で1991年版の映像作品はウェンブリーでのライブをほぼ完全収録(1曲のみカット)という、同タイトルなのに内容が異なるというややこしいアイテムでした。

その後、『LIVE BABY LIVE』は廃盤となり、唯一のスタジオテイク「Shining Star」はベスト盤などで補完。2014年にはライブ映像作品(1991年版)の21曲にスタジオテイク「Shining Star」を加えた配信アルバム『LIVE AT WEMBLEY STADIUM 1991』として流通することになります。

そこから5年を経て(オリジナルリリースから28年を経て)、今回発売および公開された新たな『LIVE BABY LIVE』は、これまで未公開だった「Lately」が収録されることで、1991年のウェンブリー・スタジアム公演を完全収録する形に。さらに、音源のリマスタリングや映像の4Kレストア含め、これまで発表されてきたどのバージョンよりも鮮明に、全盛期のINXSのパフォーマンスを堪能することができます。

1991年というと、メガヒット作『KICK』(1987年)に続く意欲作『X』(1990年)リリース直後。セールス的には『KICK』より劣る『X』でしたが、バンドが放つ熱量およびファンの熱量がピークに達した時期でもあり、それがこの7万2000人を動員したウェンブリー・スタジアムでのソールドアウト公演につながったわけです。

セットリストは『X』と前作『KICK』からのナンバーがほぼ網羅されており、それ以前のヒットナンバーは「Original Sin」「I Send A Message」(『THE SWING』収録)と「What You Need」『LISTEN LIKE THIEVES』収録)の3曲のみと少々寂しいところですが、それでもこれは当時のINXSベストセレクトと言える内容ではないでしょうか。ハードロック的なカタルシスをはらみつつも、そのバンドアンサンブルはブラックミュージックからの影響が強いニューウェイヴ経由のロック。THE ROLLING STONES的スタジアムロック感全開のサウンドと、聴いているだけで自然と体が動くダンサブルなパフォーマンスは、この時期ならではと言えるでしょう。

ライブアルバムとしてはもちろんパーフェクトな作品ですが、本作はできれば映像で楽しんでもらいたいと思う1枚。幸い日本盤Blu-ray&DVDがこの7月24日にリリースされるようですので、ぜひこのタイミングにチェックしてみてください。

 


▼INXS『INXS: LIVE BABY LIVE WEMBLEY STADIUM』
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2020年7月 5日 (日)

VENOM PRISON『SAMSARA』(2019)

2019年3月中旬にリリースされたVENOM PRISONの2ndアルバム。日本盤未発売。

VENOM PRISONは紅一点のラリッサ・ストゥーパー(Vo)を擁する、サウス・ウェールズ出身の5人組ハードコア/デスメタル・バンド。2014年結成と歴史は比較的浅く、2015年に2枚のEPを発表したのちに1stアルバム『ANIMUS』(2016年)をリリース。今作は約3年ぶりのニューアルバムとなります。

1作目を発表後にドラマーが交代。新編成で制作に臨んだ本作は、デスメタルというよりはハードコアやグラインドコアを思わせるスタイルと、ラリッサの女性声によるスクリームが目立った前作から一変し、非常に重心の低いヘヴィで(演奏面およびアレンジ面で)テクニカルさが目立つスタイルへと進化。1曲の中に複数の楽曲アイデアが混在するかのような展開の数々は、どこか初期〜中期CARCASSを思わせるものがあります(実際、ラリッサはインタビューでNAPALM DEATHCARCASSをはじめとするUKデスメタル/グラインドコアをルーツに挙げています)。

また、ラリッサのボーカル表現力が急激に向上しているのも本作の特徴でしょう。女性的なハイトーンの金切り声は一切なくなり、厚み/深みが加わったグロウルを軸に、性別を超越したデス声がアルバム全体を包み込む。あのヴィジュアルを知らなければ、音だけ聴くと「長髪で髭面、体格が良くて小汚いバンドTシャツ姿」のバンド像をイメージすることでしょうね(実のところそういうメンバーも含まれているんですけどね。笑)。

輪廻転生を意味する『SAMSARA』というアルバムタイトル同様に歌詞に関しても個性的で、ラリッサの言葉を借りるなら仏教をテーマに「“生”そのものは苦痛であるという考えに基づいた、生と死、生まれ変わりの永遠のサイクルについて」(※『ヘドバン』Vol.26より。このインタビューはVENOM PRISONを知る上でぜひ読んでいただきたい)だそう。と同時に、社会に向けた怒りも随所から感じられ、このあたりからも彼らがNAPALM DEATHやCARCASSといった先駆者たち直系の後継者であることが伺えます。

本作リリース後にはかの『KERRANG!』の表紙をラリッサが飾り、TRIVIUMなどとのツアーを経て急速に人気/注目を高めているVENOM PRISON。日本盤のリリースもなければ(現在の情勢も重なり)来日予定もないバンドではありますが、この2ndアルバムを起点にして、続く3rdアルバムで間違いなく“化ける”はずです。

 


▼VENOM PRISON『SAMSARA』
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2020年5月31日 (日)

LOTUS EATER『SOCIAL HAZARD』(2019)

2019年3月末に配信リリースされたLOTUS EATERの2nd EP。

LOTUS EATERはグラスゴー出身の4人組バンド。グルーヴメタルにジャンル分けされているようですが、2017年に自主制作で発表した1st EP『LOTUS EATER』を聴く限りではデスコアの要素も感じられ、一筋縄ではいかない楽曲進行含めクセになる要素満載です。2018年夏にHopeless Recordsとの契約を発表し、新曲「Break It」「Branded」を配信。これ以降「The Fear」「Mother」と新曲を配信で小出しにしていき、最初のまとまった作品集として今作がデジタルリリースされたのでした。

15分半という非常にコンパクトな本作は、全7曲中2曲が30秒〜1分程度のインスト(インタールード)なので、実質5曲入りということになります。前述4曲にうち、本作に収録されたのは「The Fear」「Mother」のみ。

基本的には1st EP『LOTUS EATER』の延長線上にあるヘヴィな作風ですが、うん、オープニングのインスト「Thg」から「Yuck」へと続く構成は確かにグルーヴメタルのそれっぽい。ですが、「Yuck」を聴いてもらえばわかるように、曲中にインダストリアル・メタルっぽい味付けも登場する。3分に満たない1曲の中で緩急に富んだ展開が矢継ぎ早に繰り返されていき、その情報量の多さに圧倒されるはずです。

ひたすらスクリームするボーカルと変態的なプレイ&サウンドを奏でるギター、地を這うような重さと跳ねるような軽やかさを繰り出すリズム隊。初期SLIPKNOTの変態性と脂が乗った時期のNINE INCH NAILSの危うさ、DEFTONEが持つポストロック的ななまめかしさ、CODE ORANGEに代表される「ヒップホップ以降のエクストリーム・メタル」の先鋭性などが凝縮された楽曲群は、終始不穏な空気を醸し出し、聴き終えたときに残るのは爽快さよりも(よい意味での)“気持ち悪さ”や不快感。なのに、「そうそう、こういう音を待ってたんだよ!」と膝を叩いてしまうほどの充実度も感じられる。

この感覚って、ホラー映画を見終えた後のそれに似ているんじゃないかと思いました。理解してもらえるかな? この“食後感”に惹かれるというリスナーはきっと多いのではないでしょうか。そんなLOTUS EATERを、かのBRING ME THE HORIZON最新EPで彼らをフィーチャーしたというのも、なんとなく納得するものがあります。

ぶっちゃけ、この5曲(と前述の1st EP)を聴いただけでは、このバンドの本性を見抜くのはちょっと難しいかもしれません。なぜなら、彼らにはまだまだいろんな武器が隠されているんじゃないか……そう予感されるに十分な余白を、本作は与えてくれるから。LOTUS EATERは今作リリース後、昨年秋から今年初頭にかけて「Second To None」「Narco」と、デジタルで随時新曲を小出しに発表しています。フィジカルでの作品リリースを行わず、これまでフルアルバムの発表もなし。この制作スタイルもイマドキらしさなのかもしれませんね。

 


▼LOTUS EATER『SOCIAL HAZARD』
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2020年5月10日 (日)

LITURGY『H.A.Q.Q.』(2019)

2019年11月12日に予告なしでデジタルリリースされたLITURGYの4thアルバム。フィジカルでは日本盤が2020年5月13日に先行発売、続いて5月15日に海外でも発売されるとのことです。

2010年代前半にDEAFHEAVENALCESTとともに、新世代ポスト・ブラックメタル/ブラックゲイズの代表的バンドとして紹介されることの多かったLITURGY。前作『THE ARK WORK』(2015年)ではエレクトロニカ色を前面に打ち出したことで賛否両論となりましたが、本作では従来のアグレッシヴかつアヴァンギャルドな路線に回帰し、多くのリスナーに歓迎されました。

個人的には前作のテイストも嫌いじゃなかったのですが、確かにあのままのスタイルで2作、3作と続いたらちょっとキツいかな?と思っていたので、今回の路線は歓喜ものでした。オープニングの「Hajj」からして最高で最狂ですし、前作ではクリーンボイスが多用されていたものの今作では首尾一貫してスクリームしまくり。なおかつ、デジタルエフェクトなどを随所に取り入れたアレンジからは、前作での経験をしっかり踏まえつつ進化していることが伺えます。

このデジタルエフェクトに関しては、日本盤ライナーノーツでも触れられていますが……ちょうど同タイミングに発表されたCODE ORANGEの新作『UNDERNEATH』(2020年)と共通するものがある。ただヘヴィ一辺倒なわけではなく、軸がブレずにさまざまな要素を取り込むことで表現の豊かさを感じさせる技は両者に共通するところであり、ただその手法が2組とも異なるというだけなのかな。

ポストハードコアから新たなメタルを構築しようとするCODE ORANGEは、ダブステップ以降のヒップホップまでもを飲み込んで進化を続けている。一方で、LITURGYはアヴァンギャルドやエクスペリメンタル・ロックを拠点にブラックメタル経由、エレクトロニカや環境音楽(あるいは宗教音楽)までもを経由し、再びブラックメタルへと回帰することでオリジナリティを確立させた。その結果が本作であり、新しい世代のヘヴィメタル/ヘヴィミュージックのお手本的作品が完成したわけです。

クワイアなどのボーカルワーク、ピアノやハープ、ビブラフォン、グロッケンシュピール、ひちりき、竜笛といったアコースティック楽器をフィーチャーすることで、激しさの中にも美しさや優しさが散りばめることに成功した本作は、間違いなく前作があったからこそたどり着いた境地であり、過去最高の内容だと思います。ブラックメタル的な演奏スタイルで轟音を鳴らしながら、ここまで儚い世界観を見せてくれる本作。間違いなくCODE ORANGEの『UNDERNEATH』と並ぶ“2020年を代表する1枚”と断言させてください(正確には2019年末のリリースだけどね)。

 


▼LITURGY『H.A.Q.Q.』
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2020年3月20日 (金)

DAVID ELLEFSON『SLEEPING GIANTS』(2019)

MEGADETHのベーシスト、デヴィッド・“ジュニア”・エレフソンが2019年7月中旬に発表した初のソロアルバム。日本ではボーナストラックを多数追加して、2020年3月下旬に発売されました。

これまでもF5やMETAL ALLEGIANCEといったプロジェクトへの参加、ANTHRAXのフランク・ベロ(B)とのバンド・ALTITTUDES & ATTITUDEなどがありましたが、純粋なソロアルバムはMEGADETHとして『KILLING IS MY BUSINESS… AND BUSINESS IS GOOD!』(1985年)でデビューして以来初めてのこと。大佐(デイヴ・ムステイン)の咽頭がん発症などもあって、2019年は年初にALTITTUDES & ATTITUDEのアルバム『GET IT OUT』、夏にこのソロアルバムと活発な課外活動が続きました。

ですが、ジュニアのビジネス・パートナーであるトム・ハザートとの共同作業で完成した本作は、実は純粋なオリジナルアルバムというわけではありません。本作のために制作されたスタジオ録音新曲(リミックス含む)やそのデモ音源、そしてF5の未発表デモ音源から構成されたもので、完成度や音質の違いこそあれど、ジュニアのカラーが色濃く表れた、非常に聴き応えのある内容に仕上がっています。

ジュニアは本作のスタジオ音源では歌っておらず、ベースとソングライティングに専念。基本はトム・ハザートが歌っていますがが、曲ごとにさまざまなゲストボーカルもフィーチャーされており、例えば「Sleeping Giants」ではRUN D.M.C.のDMCが、「Hammer (Comes Down)」ではエリック・A.K.(FLOTSAM AND JETSAM)の歌声も聴くことができます。また、これらの楽曲ではアディショナル・ボーカルとしてロン・“バンブルフット”・サール(SONS OF APOLLO、ex. GUNS N' ROSES)やコリー・グローヴァー(LIVING COLOURULTRAPHONIX)の名前も見つけることができます。

さらにデモ音源ではありますが、「If You Were God」ではジョン・ブッシュ(ARMORED SAINT、ex. ANTHRAX)がそのパワフルな歌声を響かせており、ALTITTUDES & ATTITUDEに続いてここでも“MEGADETH meets ANTHRAX”なコラボレーションを堪能できます。このほかにもデヴィッド・グレン・アイズレー(Vo/ex. GIUFFRIAなど)やマーク・トレモンティ(G/ALTER BRIDGE、CREED)、デイヴ・マクレイン(Dr/SACRED REICH、ex. MACHINE HEAD)、そしてMEGADETHの初代ギタリストでもあるクリス・ポーランドなどといった豪華な布陣との共演を楽しむことができるはずです。

ELLEFSON名義によるオリジナル曲は、どこか初期〜中期(90年代前半)のMEGADETHを彷彿とさせる曲調、スタイルで懐かしさと新鮮さを同時に楽しめるものばかり。ここ最近のMEGADETHにはない“何か”が確実にここには存在しており、その違いは何なのかといろいろ考えるきっかけにもなりそうです。と同時に、あのMEGADETHのスタイルは何も大佐だけのものではなく、ちゃんとジュニアの中にも脈々と受け継がれている(あるいは血として流れている)ということがはっきり確認できます。ぶっちゃけ、これらの曲を今のMEGADETHでやってくれてもいいのに……なんて思っちゃったりもしますが、けどそれも違うんでしょうね。

F5のデモ音源は音質的にまちまちですが、楽曲的には2000年代のモダン・ヘヴィネスの延長線上にあるものばかり。ぶっちゃけ、ソロ名義の楽曲と並んだときに違和感覚えるんじゃないかと不安でしたが、まったくそんなこともなく、むしろジュニアのソングライターとしての一貫性を再確認できるいい素材となりました。これ、ちゃんとスタジオレコーディングしてあげればよかったのにね。勿体ない。

日本盤のみ、初CD化となる「Vultures」「If You Were God」のライブテイクも収録。「If You Were God」ではトム・ハザートとジュニアのデュエット(笑)も楽しむことができる、貴重なテイクとなっておりますので、ぜひチェックしてみてください(全19曲と海外盤よりも4曲多いですし、「Vultures」のスタジオテイクはマックス・ノーマンMIXに差し替えられていますしね)。

でも、海外盤は海外盤で特別感のある2枚組仕様となっており、ジュニアが所属するレーベル・EMP / Combat RecordsのスペシャルサンプラーCD(全18曲入り)がDISC 2として付属。何気にこっちも聴き応えがあって、興味深い内容なのですよ(マーク・スローターのソロや、ジョー・ペリーがゲスト参加したCO-OPなど面白いテイク満載)。ジュニアの曲だけ聴きたいって人は少々お高い日本盤を、おまけが欲しいって人は輸入盤を購入してみてはいかがでしょう。

 


▼DAVID ELLEFSON『SLEEPING GIANTS』
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2020年3月 5日 (木)

ISSUES『BEAUTIFUL OBLIVION』(2019)

2019年10月初頭にリリースされたISSUESの3rdアルバム。日本盤未発売。

日本ではメジャー(ワーナー)から発表された前作『HEADSPACE』(2016年)から約3年半ぶりとなる本作は、バンドにとって大きな転換期となる1枚。なぜなら、ISSUESの武器のひとつであったスクリーム/アンクリーン・ボーカルの役割を一手に担ってきたマイケル・ボーンが脱退(事実上の解雇)というバンドの根幹を揺るがすメンバーチェンジが生じたからです。

マイケルは前作ではクリーン・ボーカルも一部担当しており、バンドとしてもさらなる進化が期待されていた中での脱退、しかも新メンバーを迎えることなくバンドは4人(とシンセ/プログラミングのタイラー・アコード)で活動を継続するとなり、ISSUESの行く末を不安視する声も少なくなかったと思います。

しかし、ISSUESはそんなネガティブな要素を払拭するほど個性的な新作と携えて、シーンへのカムバックを果たしました。

新作のプロデューサーはモダン・メタルやオルタナ・メタル界隈でおなじみのハワード・ベンソン(MY CHEMICAL ROMANCEHOOBASTANK、P.O.D.など)。もともとニューメタルの中にR&Bの要素をにじませた個性的なサウンドが特徴だったISSUESですが、本作ではそのR&B/ソウルの側面をより強化させた“ラウドなソウル/ファンク”アルバムに仕上がったと言えるのではないでしょうか。

昨年春に先行発表されたリード曲「Tapping Out」こそタイラー・カーター(Vo)とAJ(G)がスクリームも兼務した、非常に“らしい”ラウドナンバーに仕上がっていますが、アルバムを聴くと冒頭の「Here's To You」の質感にいきなりひっくり返るんじゃないでしょうか。非常にモダンなR&Bのテイストが前面に打ち出され、スクリームも一切なくソフトに歌われるこの曲……メタルやラウドといった枠から完全にはみ出した異色作だと思います。

もちろん、アルバムはこういったテイストで統一されているわけではありませんが、この手のカラーが色濃く加わったことで逆に従来のラウドなバンドアンサンブルが異色なものとして響いてくるのですから、本当に不思議な作品です。「Downfall」なんて序盤こそ昨今のヒットチャートに入っていそうなソウル風ですが、後半はラウドロックのテイストにシフトしているわけですからね。まあ、これこそがISSUESの醍醐味と言えばそれまでですが、それにしても今回は“振り切ったな”と思うわけです。

この感覚、何かに似ているな……と頭をフル回転して思い浮かんだのがINCUBUS。ISSUESが彼らのような変貌を遂げるのかは次作以降の展開にもよりますが、少なくとも本作で展開されているサウンド/テイストは僕、嫌いじゃありません。いや、むしろ大好物だし、過去2作よりも好きかも。「Get It Right」や「Flexin」の気持ち良さは何ものにも変えがたい魅力がありますしね(ホント、本作は後半の流れが最高なんですよ)。

残念ながらチャート的には大惨敗となってしまった本作ですが(全米181位と、1stアルバム『ISSUES』の9位、次作『HEADSPACE』の20位から大幅に順位を落とす結果に)、そういった数字だけでは計り知れない魅力がぎっしり詰まった意欲作として、僕は前向きに受け取りたいと思います。

 


▼ISSUES『BEAUTIFUL OBLIVION』
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2020年3月 1日 (日)

DIRTY HONEY『DIRTY HONEY』(2019)

2019年3月に発表されたDIRTY HONEYの1st EP。日本盤未発売(2020年3月上旬現在)。

DIRTY HONEYは2017年に結成されたロサンザルス出身の4人組ロックバンド。2018年に配信シングル「Fire Away」を発表し、これに続く自主制作音源として配信限定でリリースされたのがセルフタイトルの本作となります。

EPには全6曲を収録。先の「Fire Away」は未収録ですが、どれも懐かしさと新鮮さを混在させた“オールドスクールなイマドキのロックンロール”に仕上がっています。

数年前に登場したGRETA VAN FLEETが、LED ZEPPELINなどのロッククラシック、THE BLACK CROWES以降や最近のRIVAL SONSにも通ずるロッククラシック・リバイバルの流れにあるバンドとして注目されましたが、このDIRTY HONEYもある意味ではその傾向がかなり強い。もちろんロッククラシック・リバイバルの恩恵を受けているでしょうけど、それよりもアメリカの片田舎にずっと存在し続けた土着的なルーツミュージックを若者が奏でた結果がこれ、という見方もできるんじゃないかなと。そんな音を奏でているんです。

バンドアンサンブルには確かにツェッペリンやAC/DCAEROSMITHあたりの匂いが漂っていますが、個人的にはそれよりもHUMBLE PIEやFREE、あるいはTHE ALLMAN BROTHERS BANDやジャニス・ジョプリンからの影響が強く感じられる気がします。もっと言うと、GRETA VAN FLEETがシンガーと同じくらいにバンドアンサンブル/演奏を前面に打ち出すスタイルだったのに対して、このDIRTY HONEYは“歌”を聴かせることに主軸を置いている印象を受けるのです。そのへんがスティーヴ・マリオットやジャニス、ポール・ロジャースを思い浮かべた理由だったのかもしれません。

あ、あとアクセル・ローズ(GUNS N' ROSES)っぽさもありますよね、マーク・ラベル(Vo)というフロントマンの声質。特に高音で張り上げたときが似ているなと。AC/DCよりもガンズなんじゃないかな。そこも“あの時代の生き写し”だったGRETA VAN FLEETとの違いかな。60年代からテン年代まで全部地続きみたいな。

リードトラック「When I'm Gone」がBillboardのMainstream Rock Songsチャートで1位を獲得したそうですが、まだまだ「これ!」という突き抜けた1曲は生まれていないと思うので、これからの存在であることには違いありません。でも、だからこそ今このタイミングに観ておきたい。3月下旬には『DOWNLOAD JAPAN』出演および代官山SPACE ODDでの単独公演で初来日を果たす予定ですが、すげえ観たいニューカマーのひとつなので新型コロナウイルスの影響で取り止めにならないことを願っております。

 


▼DIRTY HONEY『DIRTY HONEY』
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2020年2月28日 (金)

COUNTERPARTS『NOTHING LEFT TO LOVE』(2019)

2019年11月初頭にリリースされた、COUNTERPARTSの6thアルバム。

彼らは2007年に結成された、カナダ・オンタリオ出身の5人組メタルコア/メロディックハードコア・バンド2010年に1stアルバム『PROPHETS』をリリースして以降、コンスタントにアルバムを発表しており、日本にもすでに何度かライブで訪れた経験を持っています。フロントマンのブレンダン・マーフィー(Vo)以外のメンバーチェンジが著しいですが、昨年初期メンバーのアレックス・リ(G, Clean Vo)が2013年以来の復帰を果たしたばかりです。

本作のプロデュースを手がけたのは、この手のバンドではすでにおなじみのウィル・パットニー(KNOCKED LOOSEAFTER THE BURIALTHY ART IS MURDERなど)。程よい疾走感を備えつつも、重心の低いヘヴィサウンドを存分に楽しませてくれます。

過去の作品と比べると、その突き抜けるような疾走感は若干後退しているかもしれません。が、そのぶんメタルコア的要素が増したことで、メタル耳リスナーにはより親しみやすい内容になったと言えるでしょう。

また、いわゆるメロコア的要素も随所に垣間見え、そちら側のリスナーにも引っかかる可能性も大。そういった点では、意外と日本のラウド系リスナーが入っていきやすいテイスト/方向性の1枚かもしれません。

ボーカルはシャウト中心で、クリーンパートは意外と抑え気味。味付け程度にフッと湧いて出てくるような、その程度の比率です。そのぶん、ギターがメロディアスに“泣き”まくっているので、メロウな要素はすべてギターが背負ってくれている。まあ、この手のバンドにそこまでメロディを求めるのもアレですが。

「Cherished」や「Imprints」のように静と動の対比をうまく用いたアレンジには古き良き時代のメタルコアを思わせるものがあり、個人的にはかなりお気に入り。実はこのへんの曲がもっとも日本人の琴線に触れるものなんじゃないでしょうか(クリーンボイスももっとも良い形で活かされてますしね)。

もちろん、それ以外のアグレッシヴなナンバーもグルーヴィーなナンバーもファストナンバーも、終始気持ち良く楽しめる。全10曲、トータル32分があっという間に過ぎ去っていき、気づけばリピートしている。そんな1枚だと思います。

 


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2020年2月27日 (木)

KNOCKED LOOSE『A DIFFERENT SHADE OF BLUE』(2019)

2019年8月にリリースされたKNOCKED LOOSEの2ndアルバム。

KNOCKED LOOSEは2013年に結成された、ケンタッキー州オールダム出身の5人組ハードコア/メタルコアバンド。シングルやEPのリリースを経て、2016年にPure Noise Recordsより1stアルバム『LAUGH TRACKS』を発表。ウィル・パットニー(THY ART IS MURDERAFTER THE BURIALPIG DESTROYERなど)をプロデューサーに迎えて制作された同作は、さまざまなメディアで高く評価され、EVERY TIME I DIEやPARKWAY DRIVE、THY ART IS MURDERなどのツアーに帯同することで知名度を広めていきました。

前作から3年ぶりとなる新作も、引き続きウィル・パットニーがプロデュースを担当。ゲストボーカルとしてEVERY TIME I DIEのキース・バックリー、DYING WISHの女性シンガー、エマ・ボスターを迎えるなど、前作以上に華やかな内容に仕上がっています。

もちろん、華やかといってもそれはゲストなどの付加要素に関してであって、そのサウンドはゴリゴリのコア。PANTERA以降のグルーヴメタルやHATEBREEDなどのハードコアからの影響を見え隠れしつつ、AT THE GATESや初期IN FLAMESなのメロディック・デスメタルやDYING FETUS、KREATOR、CRAFTなどスラム、スラッシュメタル、ブラックメタルなどからの影響を散りばめた、非常にヘヴィな1枚にまとまっています。

基本的にはミドルテンポのヘヴィかつグルーヴィーなナンバーが中心で、その若干跳ねたリズムはどこか懐かしさも感じさせます。「Trapped In The Grasp Of A Memory」や「A Serpent's Touch」など、要所要所で突進するようなハードコア的スピート感も交え、緩急に飛んだ構成で聴き手を引きつけ続けます。

ギタープレイ的にもPANTERA(ダイムバッグ・ダレル)以降という印象を受けますし、そこにここ10年のメタルコア的フレーズを取り入れて気持ち良さを追求している。ブレイクダウンも随所に登場しますし、単純に聴いていてグイグイ引き込まれます。

ボーカルに関しても、高音のキーキーボイス(リードボーカル)とグロウル(ギタリスト)を織り交ぜたものがメインで、メタルというよりはハードコア的な色合いが強いかもしれません。ちなみに、DYING WISHのエマ・ボスターは「A Serpent's Touch」に参加しているのですが、それとわかる声でいい感じで叫びまくってます。うん、嫌いじゃない(笑)。

意外とオールドスクールな要素も豊富で、いわゆるメタルコアをイメージして聴くと若干違和感を覚えるかも、逆に、昨今のメタルコアは苦手だけど90年代〜ゼロ年代前半のメタル流れのハードコアは好きというリスナーならフィットすると思います。

90年代のアンダーグラウンドシーンを席巻したエクストリーム・ミュージックの残骸をこういう形で現代に受け継ぎ、新たな形に構築したKNOCKED LOOSEの新作。昨年、各誌のベストアルバムにも選出されたようですし、日本にも昨年夏とこの1〜2月と短期間に2度も来日しており、その勢力を日本でもどんどん高めているところです。いい傾向ですね。

 


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2020年2月 6日 (木)

GIUDA『E.V.A.』(2019)

2019年3月末にリリースされたGIUDAの4thアルバム。日本盤は同年4月初頭に発売されています。

「ジューダ」と発音するこのバンド名は、イタリア語で“Judas”を意味するワードとのこと。そのバンド名からもおわかりのようにイタリア出身の彼らは、TAXIというパンクバンドで活躍していたテンダ(Vo, B/当初はVoのみ)とロレンゾ(G, Vo)を中心に2007年に結成し、2010年にアルバム『RACEY ROLLER』でデビューを飾りました。当初はシングルギター編成でしたが、のちに現メンバーのミケーレ(G)が正式加入し、ベーシストの脱退を経てテンダがベースも兼務することに。2012年からはアメリカでも精力的にライブ活動を行うようになり、近年はさまざまなロックフェスにも出演を果たしています。

本作が日本デビュー作となるGIUDAですが、ここで鳴らされている音はパンクとも異なる、ガレージロック色が強めなニューウェイヴ流れのハードポップ(笑)といったところでしょうか。ところどころでサイケデリックなフレイバーも感じられ(ジャケットからしてそれっぽいですし)、またアルバムタイトルの『E.V.A.(Extra-Vehicular-Activityの意)』やその邦題『2019年宇宙の旅』という某映画のパロディ感からもその雰囲気が伝わってきます。

ギターもファズを効かせたサウンドのみならず、空間系をはじめとするエフェクトを多用しており、いい感じで浮遊感を漂わせています。また、ドラムとベースが生み出す“良い意味でのスカスカ”感もたまらない。ギターが2本入っているはずなのに、不思議と厚みを感じさせないのですから、本当に面白い。

で、歌のほうも非常にポップなメロディとわかりやすいシンガロングパートを用いることで、一度聴いたら耳から離れないキャッチーさが備えられている。そのポップ感は、例えば初期のKISS(ボーカルの歌唱法がポール・スタンレーの中音域にも似ているような)やCHEAP TRICKあたりにも通ずるものがあり、さらにSWEETやSLADEあたりのバブルガムポップ風グラムロックとの共通点も見受けられる。随所にフィーチャーされたハンドクラップやアナログシンセも、そういったオールドスクール感を増長させているところがあり、『2019年宇宙の旅』というよりもタイムスリップをしているような錯覚すら味わせてくれるのですから、本当に面白い1枚です。

しかも、このアルバムがリー・ドリアン(ex. CATHEDRAL、WITH THE DEAD、SEPTIC TANK)主宰レーベルのRise Above Recordsからのリリースというのがまた面白い。そのへんいろいろ含みを持たせている点も込みで堪能したい良作です。

 


▼GIUDA『E.V.A.』
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