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2020年1月

2020年1月31日 (金)

2020年1月のお仕事

2020年1月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※1月31日更新)

 

[WEB] 1月31日、「NET ViVi」にて乃木坂46遠藤さくらインタビュー遠藤さくらが乃木坂46になって変わった、いまの心境を語るが公開されました。

[紙] 1月31日発売「BUBKA」2020年3月号にて、遠山大輔(グランジ)×のり(オテンキ)インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 1月30日発売「月刊エンタメ」2020年3月号にて、前島亜美インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 1月27日発売「VOICE BRODY」Vol.7にて、Roselia相羽あいな×中島由貴、工藤晴香×志崎樺音、RAISE A SUILEN夏芽×小原莉子、Roseliaプロデューサー、RAISE A SUILENプロデューサーの各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 1月24日発売「CONTINUE」Vol.63にて、『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』特集内木村昴ロングインタビューおよびディビジョン別シングル全曲コンプリート解説を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 1月23日発売「ViVi」2020年3月号にて、乃木坂46遠藤さくらインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 1月21日、「NIKKEI STYLE」にて日向坂46インタビュー日向坂46 「ひたむき」に今年はもっと上を目指したいが公開されました。

[紙] 1月11日発売「ヘドバン Vol.25」にて、「時代を変えたメタル・アルバム」ベスト50内のアルバム評を担当・執筆、「35名が選ぶ、俺の/私の2019年のメタル系ベスト・アルバム」企画に寄稿しました。(Amazon

[WEB] 1月9日、「リアルサウンド」にて乃木坂46のコラム白石麻衣が胸に秘めた乃木坂46への熱い思い “グループの顔”として残した功績を振り返るが公開されました。

[紙] 1月4日発売「日経エンタテインメント!」2020年1月号にて、乃木坂46秋元真夏インタビュー、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」構成、日向坂46渡邉美穂の新連載「今日も笑顔で全力疾走」構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 1月3日、「リアルサウンド」にて乃木坂46秋元真夏インタビュー乃木坂46 秋元真夏 1万字インタビュー「後輩グループも背負っているという責任感が芽生えてきた」が公開されました。

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また、12月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1912号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

HIGHER POWER『27 MILES UNDERWATER』(2020)

2020年1月下旬にリリースされた、HIGHER POWERの2ndアルバム。日本盤未発売。

HIGHER POWERはジミー(Vo)&アレックス(Dr)のウィザード兄弟を中心に、2014年に結成された英・リーズ出身の5人組バンド。オールドスクールなハードコアにポストハードコアやメロディックパンク、エモ、グランジ、スラッシュメタルなどをミックスしたクロスオーバーサウンドが大きな武器で、2017年には1stアルバム『SOUL STRUCTURE』をインディーズからリリース。TURNSTILEやNO WARNINGなどのツアーに参加し、2018年には『DOWNLOAD FESTIVAL』のステージにも立っています。

昨年夏に老舗Roadrunner Recordsと契約し、満を辞して発表されて今作。僕は昨年末、今作から先行配信されてた「Seamless」や「Low Season」といった楽曲を通じて彼らに初めて触れたのですが……めちゃくちゃゴリゴリのハードコアなのに、どこか懐かしさを感じらせるものがあったんです。それは決して古臭いとか過去の焼き直しという意味ではなく、ノスタルジックな要素をメロディから感じ取ったという意味だったんです。

このノスタルジックな要素というのが、実は先人たち影響が色濃く表れたものなのかなと。スタイル的には90年代後半のREFUSEDに通ずるものを感じるのですが、そこにDEFTONESHELMET、90年代初頭のTHERAPY?ALICE IN CHAINSJANE'S ADDICTIONあたりのエッセンスを散りばめたらこうなるのかなと。だからなのか、コアな音なのにとてもキャッチーなんですよね。

プロデュースを手がけたのは、かのギル・ノートン。PIXIESFOO FIGHTERS、JIMMY EAT WORLD、FEEDERFUNERAL FOR A FRIENDなどをプロデュースしてきた名手ですが、それも納得の内容です。生々しさの中にも緻密さが感じられるこのバランス感は、彼が過去に手がけた名盤にも匹敵する完成度だと思います。

正直、この手の音楽が今の若年層にどう響くのかまったく想像がつきません。きっと30代後半以上のロックを通ってきたリスナーにはどこかしら引っかかる要素が含まれていると思うのですが、今やロックやハードコア、エクストリーム・ミュージックをこよなく愛するという若年層がどれだけ残っているのか……でも、期待を込めて書かせてください。きっと彼らは1年後、その存在感をさらに高めているはずだと。

日本盤の発売予定は現在ありませんが、フェスなどでの来日を経て一気に盛り上がってもらいたい存在のひとつであり、2020年を代表する名盤になる可能性を秘めた強烈な1枚です。

 


▼HIGHER POWER『27 MILES UNDERWATER』
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2020年1月30日 (木)

DIRTY SHIRLEY『DIRTY SHIRLEY』(2020)

ジョージ・リンチ(G)とディノ・イェルシッチ(Vo, Key)が新たに立ち上げたプロジェクト、DIRTY SHIRLEYが2020年1月下旬に発表したデビューアルバム。日本盤は同年2月中旬リリース予定。

ジョージ・リンチといえば、現在のメインバンド(?)LYNCH MOBのほかKXMTHE END MACHINESWEET & LYNCH、そして今も稼働しているかわからないけどULTRAPHONIX、オリジナルメンバーでのDOKKEN、さらにはソロ名義での活動と、とにかく多岐にわたる活躍をしているアーティスト/ギタリストです。すでに65歳とかなりの高齢にも関わらずこの精力、正直頭が下がります。ですが、どの作品も似たり寄ったりに落ち着いてしまうのが玉に瑕。フロントマンであったり共演者の個性が強ければ強いほど、そっち側にも引っ張ってもらえるので差別化できるものに昇華できているのですが(SWEET & LYNCHとかね)……どうしてもミドルテンポ中心で、ジャムセッションの延長線上にある長尺で単調な楽曲ばかりで、しかもアルバムとなるとそれが10〜13曲も詰まっていて60分を軽く超える作品ばかり。さすがに2、3回聴いてしばらく放置みたいな作品も少なくはありません。

では、今回のDIRTY SHIRLEYはどうなのでしょう? 答えは「YES」でもあり「NO」でもあると。つまり、最高とは言い難いけど、平均点はクリアできているかなというところでしょうか。

楽曲のタイプとしてはブルースやソウルをベースにしたハードロックが軸になっており、ここ20年くらいのジョージ・リンチの方向性そのものかなと。楽曲も大半が5分を超えるもので、ボーナストラックを含む全12曲中6分超えが4曲……あれ、思ったほど多くないかも?

バンドアンサンブルは確かにジャムセッションの延長線上にあるスタイルで、曲によってはそれが良い方向に作用しているものも少なくありません(もちろん、中には退屈なものもありますが)。

で、ここからが本題。歌メロが思った以上に良い。これはディノ・イェルシッチというANIMAL DRIVE、TRANS-SIBERIAN ORCHESTRAなどで活躍する“歌える”シンガーの手腕によるものが大きいのかな。ハスキーで高音もしっかり出る歌唱法はブルースフィーリングとソウルフルさがしっかり備わったもので、それっぽい“なんちゃって”シンガーとはまったく異なるもの。普通に歌ったら単調になりがちなメロディも、この人の声と節回しで歌われることによってどこか特別なものに聞こえてくるのだから、不思議なものです。

ちょっと違うかもしれないけど、デヴィッド・カヴァーデイルとグレン・ヒューズを足して2で割ったような? そんな雰囲気が漂っているんですよね。なもんだから、彼が歌うとどの楽曲も第3期DEEP PURPLEっぽく聞こえてくるという……え、そんなことない?

アルバム中盤の「Siren Song」や「The Voice Of A Soul」といった楽曲の完成度はなかなかのものがあり、バンドとしてのバランス感が非常に整った楽曲だと思いました。あと、本編ラストに収められたアコースティック・サイケナンバー「Grand Master」も良い味を出しています。この曲も完全にボーカリストに助けられていますよね。

うん、ジョージが最近関わったプロジェクトの中では非常に良い部類に入る1枚だと思います。特にここ最近の作品は平均点以上出せているのかなと。ただ、本作はまだ“処女作”という雰囲気も感じられるので、本当の意味でスタイルが固まるのは2作目以降かなと。もちろん、ちゃんとプロジェクトが継続すればの話ですけどね(笑)。最近のジョージは風呂敷を広げすぎて、たたむことまで気が回っていないようなので……うん、継続を希望します!

 


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2020年1月29日 (水)

DESMOND CHILD『DESMOND CHILD LIVE』(2019)

2019年10月末にリリースされた、デズモンド・チャイルドのライブアルバム。日本盤未発売(2020年1月末時点)。

ご存知のとおり、デズモンド・チャイルドは職業作家としてBON JOVIAEROSMITHKISSアリス・クーパーなどに楽曲提供および共作を続けてきたアーティスト。さらにプロデューサー業のほか、自身もシンガーとして70年代にDESMOND CHILD & ROUGE名義で2枚のアルバム、90年代にはソロアルバム『DISCIPLINE』(1991年)をリリースするなど音楽家としても知られています。

その彼が、『DISCIPLINE』以来28年ぶりにソロ名義でのアルバムを発表しました。本作は2018年3月1〜3日にニューヨークで行われた、40年以上にわたるデズモンドのミュージシャン人生を祝すスペシャルライブの模様を収めたもの。当日は彼が過去に手がけた楽曲のほか、DESMOND CHILD & ROUGEの楽曲、さらにはローラ・ニーロ「The Man Who Sends Me Home」、ジョージ・マイケル「Fast Love」といったフェバリット・ナンバーのカバーも披露sれています。

アルバムにはこのうち、デズモンドの作家人生を総括するようなヒットナンバー、隠れた名曲などをピックアップ。彼自身が歌うナンバーもあれば、ハウスバンドのギタリストや女性コーラスが歌うものも含まれており、原曲の良さをできる限りベストな状態で伝えようとする意思が伝わってきます。

内訳的にもBON JOVIから「Livin' On A Prayer」「You Give Love A Bad Name」「(You Want To) Make A Memory」、AEROSMITH「Dude (Looks Like A Lady)」「Angel」、KISS「I Was Made For Lovin' You」、JOAN JETT & THE BLACKHEARTS「I Hate Myself For Loving You」、HANSON「Weird」、マイケル・ボルトン「How Can We Be Lovers?」、シェール「We All Sleep Alone」、リッキー・マーティン「The Cup Of Life」「Livin' La Vida Loca」「Shake Your Bon-Bon」「She Bangs」(以上、4曲メドレー)、そしてDESMOND CHILD & ROUGEの「Love On Rooftop」(のちにシェールもカバー)、ブロードウェイ・ミュージカル『CUBA LIBRE』から「Where Do I Go From You」と実に幅広い選曲。ここにエアロ「What It Takes」「Crazy」やアリス・クーパー「Poison」、BON JOVI「Keep The Faith」あたりも入っていたら最高だったんですけどね(笑)。

まあ、バンドメンバーがハードロック畑の人ではなくAOR流れの人たちなんでしょうか。演奏はエッジが効いた感じではなく心地よさを重視した、悪く言ってしまえば「毒にも薬にもならない」安パイなもの。まあ曲の良さを伝えるという点においては、この形がベストなんでしょうね。それに、デズモンドもすでにいい年齢(この時点で64歳)ですから、これくらいのヌルさがちょうどいいのかもしれませんし。

にしても、本当にいい曲を書くソングライターだなと改めて実感。もちろん、どの曲も彼ひとりで書いたものではなく、それぞれのアーティストとの化学反応あってこそですが、仮に楽曲の骨格をアーティスト自身が作ったものであったとしても、そこにデズモンドが一手間加えることでスペシャルなものになるわけですからね。そのセンス、才能は飛び抜けたものがあるってことなんでしょう。じゃなかったら、ここまで知ってる曲連発のライブアルバムなんて作れないわけですから。

あと、BON JOVIの中でも比較的地味なヒット曲に含まれる「(You Want To) Make A Memory」をアルバムラストに選ぶあたりに、彼のこだわりやセンスが感じられるかも。この曲、派手さは皆無だしジワジワ盛り上がっていく構成といい本当に地味なんですけど、変な中毒性があるんですよね。

以前、こんな職業作家の記事を書きましたが、今回の記事とあわせて読んでいただくことで、デズモンドを含む職業作家の面白さに気づいてもらえたら幸いです。

 


▼DESMOND CHILD『DESMOND CHILD LIVE』
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2020年1月28日 (火)

OZZY OSBOURNE『UNDER COVER』(2005)

2005年11月1日にリリースされた、オジー・オズボーン初のカバーアルバム。日本盤も海外から2週間遅れで発売されています。

本作はもともと2005年3月に発表されたCD4枚組ボックスセット『PRINCE OF DARKNESS』のDISC 4に収録されていた新録9曲を含む10曲入りカバー集『UNDER COVER』を拡張させたリパッケージ盤で、オリジナル版に「ROCKY MOUNTAIN WAY」(オリジナル:ジョー・ウォルシュ)、「Sunshine Of Your Love」(オリジナル:CREAM)、「Woman」(オリジナル:ジョン・レノン)、「Go Now」(オリジナル:ベッシー・バンクス。同曲は THE MOODY BLUESのカバーでおなじみ)を加えた全14曲入り。楽曲追加により、曲順にも手が加えられております。

内訳的にはビートルズストーンズ、THE ANIMALS、BUFFALO SPRINGFIELDといったルーツ的存在から、MOUNTAINやMOTT THE HOOPLEKING CRIMSONなどBLACK SABBATHと同時代を生きたバンドたちの代表曲もピックアップ。そこに唯一の既発曲「Changes」(BLACK SABBATHの楽曲を娘のケリー・オズボーンとデュエットしたもの)が加えられた、選曲的にはまったく目新しさが感じられない、だけどオジーらしさがにじみ出た、非常に肩の力が抜けた企画盤となっております。

興味深いのが、本作のレコーディングメンバー。ハウスバンドとして当時のツアーメンバーだったマイク・ボーディン(Dr / 当時ex. FAITH NO MORE)のほか、ジェリー・カントレル(G / ALICE IN CHAINS)、クリス・ワイズ(B / HOLLYWOOD VAMPIRES、ex. THE CULTなど)といったオルタナ方面のメンツなんです。ゲストプレイヤーとしてイアン・ハンター(Vo)、レズリー・ウエスト(G)といった名前も見つけられますが、この人たちは自身の楽曲にゲスト参加したのみ。このほか、ロバート・ランドルフがペダルスチールで「Sympathy For The Devil」&ギターソロで「21st Century Schizoid Man」に参加したくらい。アディショナル・ミュージシャンとしてグレック・ビソネットやジョー・ボナマッサ、マイケル・ランドゥらの名前もクレジットされています。

なんとなく、クセの強いメタルのスタープレイヤー(例:ザック・ワイルド)を排除して、個性的なんだけどそつない演奏をしてくれるプレイヤーを選んだ印象も無きにしも非ず。考えすぎですかね? なので、演奏面/アレンジ面では特筆すべきポイントは少ないかな。原曲に忠実なんだけど、たまに「え〜、そこを省く?」みたいなアレンジもあってギョッとしますが、それが2005年当時の感覚ってことなのですかね。わかりませんが。

「21st Century Schizoid Man」みたいな曲はオジーにぴったりなんだろうなと思っていたけどアレンジのせいもあってか普通だったり、逆にビートルズやジョンのミディアム/バラードナンバーはどハマりしていたりと、一長一短といったところ。まあ、この手の作品は完全にお遊びというかオナニー、あるいはファンサービスですからね。気持ちよく乗っかることにしましょうよ。それに、ここから1年半で次のオリジナルアルバム『BLACK RAIN』(2007年)を届けてくれたわけですから。

選曲的にはどうしても古臭さが否めませんが、これをもしケリーやジャックといったオジーの実子が選曲していたら……かなりモダンで面白いカバー集になったんじゃないかな。そっちバージョンも聴いてみたかったですよね……なんてことを、ポスト・マローンの最新作『HOLLYWOOD'S BLEEDING』(2019年)を聴きながら考えてみたり。

 


▼OZZY OSBOURNE『UNDER COVER』
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2020年1月27日 (月)

OZZY OSBOURNE『LIVE AT BUDOKAN』(2002)

2002年6月下旬にリリースされた、オジー・オズボーンのライブアルバム。日本盤は同年7月上旬に発売されました。

オジーのライブアルバムとしては4作目(1990年の6曲入りEP『JUST SAY OZZY』を含むと5作目。そのほかにも3曲程度のライブEPが存在しますが、ほぼシングルなので対象外)にあたる本作は、1991〜2年の最初の引退ツアーの模様を2枚のCDに収めた『LIVE & LOUD』(1993年)以来9年ぶり、BLACK SABBATHの2枚組新録ライブアルバム『REUNION』(1998年)からも約4年ぶり。とはいえ、『LIVE & LOUD』以降はオリジナルアルバムを2枚(1995年の『OZZMOSIS』、2001年の『DOWN TO EARTH』)しか出してないので(しかも、ツアーでは新曲を2、3曲程度しかやらないので)内容的には『LIVE & LOUD』とそこまで代わり映えしないし、なんなら今回はシングルディスクなので曲数も13曲と物足りなさを感じずに入られません。

収録されたのはタイトルからもおわかりのとおり、2002年2月15日に行われた日本武道館公演。『DOWN TO EARTH』を携えたツアーということで、同作から「That I Never Had」「Junkie」「Gets Me Through」が披露されています。

当時のバンド編成はオジーのほか、『DOWN TO EARTH』制作末期にギターソロのみ参加でバンドに復帰したザック・ワイルド(G, Vo)、このツアー終了後にMETALLICAに加入することになるロバート・トゥルージロ(B)、FAITH NO MORE解散後にオジーバンドに加わったマイク・ボーディン(Dr)、そしてオジーワークスではおなじみのジョン・シンクレア(Key)という布陣。この頃にはオジーの高音が出にくくなっていたこともあり、またザックの当時のプレイスタイルも大きく影響してか、Dまでダウンチューニングしての演奏となっています。なので、おなじみの曲もD#より低くなってるから若干の違和感を覚えます。さすがにそれはオリジナルキーで歌えるだろ?って曲までもがダウンチューニングなのですが、さすがに曲ごとにチューニングの異なるギターを持ち替えるのも面倒か。ザックですしね。

オジーのボーカルは決してベストとは言い難いもので(まあいつものことですが)、歌メロが単調な曲が多い中でのダウンチューニングにより、退屈なものになり下がってしまうという悪影響も見受けられます。「That I Never Had」や「Junkie」のような楽曲はまさにそれですよね。とはいえ、前者はザックとの掛け合いボーカルが個人的には聴きどころだと思っていて、散々「オジーの声に似てる」と言われてきたザックのボーカルも、本人と並べるとそこまでそっくりというわけではないことに気づかされます。まあ、BLACK LABEL SOCIETYの活動もあって歌唱力が成長したというのも大きいんでしょうが。

『DOWN TO EARTH』からの3曲を除けば、残りはおなじみのナンバーばかり。『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)から「I Don't Know」「Mr. Crowley」「Crazy Train」、『DIARY OF A MADMAN』(1981年)から「Believer」、『BARK AT THE MOON』(1983年)から「Bark At The Moon」、『NO MORE TEARS』(1991年)から「No More Tears」「I Don't Want To Change The World」「Road To Nowhere」「Mama, I'm Coming Home」、そしてBLACK SABBATH時代の「Paranoid」……無難すぎません?

ちなみに、アルバムには13曲しか収録されていませんが、実際のライブではもう1曲「Suicide Solution」が披露されています。なんだ、CDの容量的に収録可能だったのでは?とお思いでしょうが、この曲のエンディングからザックの長尺ギターソロに突入するので、10分は超えるはず。事実、同ライブの完全版となるDVDバージョンは84分なので……ね?

そうか、2000年代に入ってからのオジーのライブってすでに90分程度だったんですね。そりゃ演奏される楽曲数は限られるし、ひとつ前のアルバム『OZZMOSIS』の曲(ザックは同作のレコーディングにしか参加してなかったので、ライブで聴いてみたいんだけどね)やザックのデビュー作『NO REST FOR THE WICKED』(1988年)、オジーが毛嫌いする『THE ULTIMATE SIN』(1986年)からの楽曲は期待できるわけないか……。

何を差し置いて先に聴くべき、という1枚ではありませんし、これを聴くなら1993年時点でのグレイテスト・ヒッツ的内容の『LIVE & LOUD』や、ランディ・ローズ在籍時のライブアルバム『TRIBUTE』(1987年)などオススメすべきライブ盤はたくさんあります。が、現時点ではこれが最新のライブ作品なので……今はこれをリピートしてオジーの帰還を待ちたいと思います。

 


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2020年1月26日 (日)

BLACK SABBATH『HEAVEN AND HELL』(1980)

1980年4月に発売されたBLACK SABBATHの9thアルバム。日本盤も同年に発表されており、当時のライナーノーツの執筆日付が「1980年4月」となっていることから、同年6〜7月頃に発売されたのではと推測します。

約10年にわたり、計8作のスタジオアルバムをオジー・オズボーン(Vo)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ビル・ワード(Dr)という編成で作り続けましたが、オジーの脱退によりこの編成も崩壊。一時はギーザーも脱退してしまいますが、最終的にロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo / ex. RAINBOW、ex. ELF)、トニー、ギーザー、ビルという布陣でレコーディングに突入します。

過去2作ではセルフプロデュースに挑んでいましたが、今作ではマーティン・バーチ(DEEP PURPLEIRON MAIDENWHITESNAKEなど)がプロデュースを担当。サポートメンバーにジェフ・ニコルス(Key / ギーザー脱退中にベーシストとして加入。その後、キーボードにシフト)を迎え、新たなサバス像を完成させます。

本作にはオジー期サバスを象徴するような「リフでグイグイと、引きずるように引っ張るヘヴィでスローなメタルチューン」とは異なり、ディオがRAINBOWから持ち込んだ「ドラマチックな展開を持つ様式美的展開」と「高低の幅が広いメロディを歌い上げる高性能シンガー」という要素が良いスパイスとなり、「サバスのようでサバスではない、RAINBOWのようでRAINBOWではない何か」を完成させています。

とにかく、冒頭の疾走ナンバー「Neon Knight」からして文句なしの仕上がりですし、続くミドルテンポのヘヴィチューン「Children Of The Sea」も圧巻の構成。この2曲だけで掴みは完璧なんです。トニーのリフワークも冴えているし、かつソロプレイも充実度が高い。「Children Of The Sea」での粘っこいソロはメタル史に残したい名プレイのひとつだと断言します。

RAINBOW時代を思わせるロックチューン「Lady Evil」があったり、名曲中の名曲「Heaven And Hell」、軽快さとスリリンスさが共存する「Wishing Well」、ドラマチックなファストナンバー「Die Young」、「Lady Evil」と同じ流れにある「Walk Away」、そしてアルバムラストを飾るヘヴィな「Lonely Is The Word」。全曲が同じレベルで優れているとは言い難いかもしれませんが、前作『NEVER SAY DIE!』(1978年)で到達したポップなハードロック路線も残しつつ、それらを“歌える”シンガーに歌唱させることで完成度を高める。さらに、“ディオらしい”ドラマチックさが加わったことで、ヘヴィはヘヴィでも初期のテイストとは若干質の異なるヘヴィさを生み出すことに成功。イギリスで新たなHR/HMの潮流が散見され始めたタイミングに、若手に負けじと新たなチャレンジに挑み、その勝負に見事勝利した……そんな奇跡の1枚が本作と言えるでしょう。

初期サバス原理主義者からは敬遠される1枚かもしれませんが、個人的には本作を“サバスとして認め”ない人は信用できないし、信用しません。だって、『HEAVEN AND HELL』を否定することは、『HEADLESS CROSS』(1989年)も『CROSS PURPOSES』(1994年)も否定することと同義になってしまいますから。良いものは良い、それを素直に受け止める世代を信じたいと思います。

 


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2020年1月25日 (土)

BLACK SABBATH『NEVER SAY DIE!』(1978)

1978年9月にリリースされたBLACK SABBATHの8thアルバム。日本盤も同年に発表されているようですが、当時のライナーノーツの日付が「1978年9月」となっていることから、2ヶ月くらい発売時期は遅れたのかなと。当時の日本盤はそれくらいのインターバルがあるのは普通だったので、意外でもないですけどね。

前作『TECHNICAL ECSTASY』(1976年)で若干ポップなハードロック路線へと移行したサバスでしたが、翌1977年11月にオジー・オズボーン(Vo)が一度脱退するとうハプニングが発生。後任にデイヴ・ウォーカーというシンガーを迎え、短い間ですがライブ活動を続けていたものの、結局1978年1月にオジーが復帰。そのまま今作の制作に突入します。

オープニングのタイトルトラックが醸し出す軽快さ(ちょっとTHIN LIZZY「The Boys Are Back In Town」っぽい)に、いきなり肩透かしを食らうこのアルバム。どうしてもこの1曲目のインパクトが強すぎて、そこまで真剣に聴いてこなかった作品集ですが(ていうか、若い頃は本当に1曲目を聴いて再生をストップさせてたし)、全体的にもいわゆる初期のおどろおどろしいメタリックな要素は払拭され、軽やかさ/しなやかさが際立つ新境地を見せてくれます。前作も悪くなかったけど、むしろ前作でやろうとしたことの完成形がここには存在しているのかなと。

初期から備わっていたジャジーな色合いが別のベクトルを持ち始めた「Juior's Eyes」や「Air Dance」、イントロのシンセサイザー(ドン・エイリーによるもの)に度肝を抜かれるものの、続く疾走感の強いアレンジに心を奪われる「Johnny Blade」、軽やかなブギーサウンドに乗ったサイケデリックなメロディが新鮮な「A Hard Road」、ピアノをフィーチャーした華やかな「Over To You」など、改めて聴き込むと佳曲の多さに気づかされる1枚ではないでしょうか。うん、思ったほど悪くない。

ところが、終盤に入って「Iron Man」ばりのヘヴィなバンドアンサンブルにゴージャスなブラスセクションとサックスソロが乗っかったインスト「Breakout」に腰を抜かすことに。さすがにこれはやりすぎだろ!とツッコミを入れたくなりますが、その流れのまま強引に突入する「Swinging The Chain」ではビル・ワード(Dr)がリードボーカルをとるという謎のエンディングに。あれ、こんな終わり方?(苦笑)

間違いなくバンドとして過渡期に突入していることが伺えるし、結局本作を携えたツアー終了後にオジーが再脱退→ソロ活動に突入することに。サバスは新たに元RAINBOWロニー・ジェイムズ・ディオをフロントマンに迎え、さらなる新境地となる傑作『HEAVEN AND HELL』(1980年)を完成させることになるのでした。

好き嫌い分かれる1枚かと思いますが、ポップさ/わかりやすさという点においてはのちのオジーソロへとつながっていく点も少なくなく、逆にトニー・アイオミ(G)のメタル・リフマスターとしての仕事ぶりに不満が残る(その点は次作で解消されるのですが)、ひとつの時代の終焉を感じさせる内容となっています。にしても、オジー期がこれで終わりっていうのもね(まあ、これだったから終わったんだろうけど)……と80年代、90年代と長らく感じていたのですが、本作から35年後にオジー、トニー、ギーザー・バトラー(B)が揃った編成での新作『13』(2013年)を聴ける日が来るとは。長生きはするものですね(笑)。

というわけで、本作のタイトルおよびタイトルトラックをオジー・オズボーンに捧げます。Never Say Die!

 


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2020年1月24日 (金)

CAVE IN『FINAL TRANSMISSION』(2019)

2019年6月にリリースされたCAVE INの6thアルバム。

本作はもともと1枚のアルバムとして制作されたものではなく、2017〜18年にリハーサルスサジオにて録音されたテイクを中心に、メンバーが1枚のアルバムとしてまとめ上げたもの。ご存知のとおり、メンバーのケイラブ・スコフィールド(B, G, Vo)が2018年3月28日、不慮の事故でこの世を去ったことから、本作はケイラブの遺作としてこの世に産み落とされることとなりました。

本作完成は残されたメンバー3人の(リハ音源を元に完成まで到達させた)尽力あってこそ。ケイリブのプレイやボーカルと向き合う作業は相当な精神力が求められたと思いますが、こうやって我々の手元に完成品が届けられたことは素直に喜び、感謝を伝えたいと思います。

とはいえ正直、このアルバムが発表して以来、何度かアルバムをフルで聴こうと本作と向き合ってみたのですが、どうしてもオープニング曲「Final Transmission」の途中で止めてしまったり、そこから聴き進めても数曲で断念してしまうということが多かったんです。僕自身、そこまで彼らに思い入れが強いわけではないのですが、それでも『JUPITER』(2000年)や『ANTENNA』(2003年)というアルバムはよく聴いていたので、交通事故で亡くなったケイリブのことを思うと……なんとなくまっすく向き合うことができなかったといいますか。勝手な言い分ですよね、ディープなファンでもないくせに。

しかし、バンドは新たなベーシストとしてCONVERGEのネイト・ニュートンを迎えて活動を継続することをアナウンス。今年1月末には新たな編成での来日公演および年イチのヘヴィ系イベント『leave them all behind』にヘッドライナーとして出演することも決まっています。自分もぜひ足を運ぼうと決心したこともあり、ようやくこのアルバムと真剣に向き合うことになるわけです。

リハーサル音源を元にしているとのことですが、そのサウンドは非常に生々しくてクリアなものばかり。むしろ、リハーサルの段階でここまで完成度の高いサウンド/アンサンブルを作り上げていたんだという事実に驚かされます。特に前作『WHITE SILENCE』(2011年)あたりに顕著だった、空間系エフェクトを多用したサイケ色濃厚なヘヴィサウンドがここでも全開に生かされており、その仕上がり具合には舌を巻くばかり。

そんな完成度の高いサウンドの中で、オープニングとラストに放り込まれた「Final Transmission」と「Led To The Wolves」という2曲。後者は本作でもっとも古い2020年の録音で、前作『WHITE SILENCE』制作時のセッションから。2チャンネル録音なので音質的にはほかの楽曲より劣るのですが、逆にこの生々しさがCAVE INらしさをダイレクトに伝えるのにふさわしく、ケイリブ在籍時のラストを飾るにふさわしいテイクだなと思いました。そして、オープニング曲「Final Transmission」は本作の中で最新の録音……ケイリブが亡くなる1ヶ月前、メンバーに送ったボイスメモなんだとか。ダウンチューニングされたアコギ1本で歌うケイリブ。ギターのチューニングも若干甘めで、繊細さの中に訪れるその不協和音っぽさがここから始まるカオスの時間の入り口を表しているよう。まさに「嵐の前の静けさ」と呼ぶにぴったりの1曲です。

この曲がケイリブ生前最後の1曲だと事前に知ってしまっていたからこそ、変に感情的になりまっすぐ向き合えなかったのかもしれませんね……もっとしっかりと、音楽として向き合い楽しむべきなのに。

でも、本作は楽しむとは別の……ヘヴィだけど、どこか“浸りたくなる”要素にも満ち溢れている1枚だと思います。だって、ようやく何度か聴き入っているうちに、自然とそのサウンドスケープの虜になっている自分が今ここにいるのですから……。

冷静になって聴ける今、素直に楽しめた1枚。ライブでは本作からも披露されるのか否か。なんにせよ、バンドの未来に期待を込めて、アルバムを何度もリピートしたいと思います。

 


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2020年1月23日 (木)

BAD OMENS『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME (DELUXE REISSUE)』(2020)

2020年1月中旬に配信限定リリースされた、BAD OMENSの2ndアルバム『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME』のリパッケージ盤。

『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME』のオリジナル盤は昨年8月初頭にフィジカルおよびデジタルリリースされていますが、今回はジャケットのアートワークを一新したほか、新録3曲を追加した全13曲入り/トータル53分のボリューミーな1枚に再構築されています。

アルバムの曲順自体はオリジナル盤に変化は加えておらず、本編10曲が終わったあとに新録3曲が追加されているので、世界観やトータル性云々が改変されているわけではありません。むしろ、本編10曲を終えたあとにアンコールとして新たに3曲加わったくらいの感覚で接するのが正解かなと。

アルバム本編については昨年こちらで触れているので、ここでは割愛。今回は新録曲について触れていきます。

まずは、昨年12月に先行配信されたM-11「Never Know」。アルバム内ソフトサイドの延長線上にある、ミドルテンポのメロディアスな歌モノに仕上がっています。美しさと繊細さ、強さと豪快さがバランスよくミックスされた非常に聴きやすい1曲で、シングル向けに制作されたんじゃないかというほどに“出来過ぎ”な楽曲。アルバムの中にポツンと落とし込まれたとしても何ら違和感のない、『FINDING GOD BEFORE GO FINDS ME』の世界観を踏襲した良曲と言えます。

続いてM-12「Limits」。こちらも曲調、質感含めて『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME』が持つムーディな世界観の延長線上にある1曲で、キャッチーさが際立つ仕上がり。なんとなく歌メロや節回しにTOOLを彷彿とさせるものがあるのですが、単なる真似では終わっておらず、サビに突入するとしっかり“らしさ”が爆発している。タイトル含め、そこはかとなく宗教色を散りばめられていたアルバムの世界観に、実はもっとも地続きな1曲と言えるかもしれません。

そして、ラストとなるM-13「Come Undone」。こちらはDURAN DURANが1993年に発表したアルバム『DURAN DURAN』(通称『THE WEDDING ALBUM』)からシングルカットされ大ヒットしたミディアムバラードで、BAD OMENSバージョンは豪快なヘヴィロック風アレンジが施されています。サビで1オクターブ下で歌われてガクッとしてしまうものの、仕上がりとしては上出来ではないでしょうか。

 

で、このカバーを聴いてふと気づくわけですよ……ああ、そうか。彼らはこれをやりたかったのかな、と。DEFTONESあたりが80年代のニューロマンティックにも影響を受けたことは、EPのカップリングに収録されたカバー曲からも伺い知れますが、BAD OMENSは単なるBRING ME THE HORIZONのフォロワーなんかではなく、実はそれ以前のニューメタルやヘヴィロックを現代版に昇華させたバンドなのだと。先のTOOL風しかり、アルバムの至るところから感じられるLINKIN PARKからの影響しかり。1作目『BAD OMENS』(2016年)こそモダンなメタルコアの延長線上に存在したものの、この2作目では自身のルーツと向き合った。その結果がこれなのかなと……なんていうのは考え過ぎでしょうか?

なんにせよ、このリパッケージ盤を機にBAD OMENSへの注目がさらに集まることを期待しております。

 


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2020年1月22日 (水)

GENESIS『DUKE』(1980)

GENESISが1980年3月に発表した10thスタジオアルバム。日本盤も同タイミングにリリースされています。

前作『...AND THEN THERE WERE THREE...』(1978年)でトニー・バンクス(Key)、マイク・ラザフォード(B, G)、フィル・コリンズ(Vo, Dr)の三頭体制になったGENESISは、それ以前のプログレッシヴロック路線からポップ色の強いスタイルへと移行し始めます。

本作『DUKU』は作風自体がコンセプチュアルなもので、それまでのインスト重視なプログレ的アレンジを効果的に用いながらも、“当代きってのポップシンガー”フィル・コリンズのカラーを強めており、結果としてGENESISとしては最後のプログレ路線重視作品となっています(もちろん、これ以降もその要素は要所要所に散りばめられているものの、プログレ・テイストがアルバムの主になることはありませんでした)。

オープニングの「Behind The Lines」からして、いきなりスリリングなバンドアンサンブルが楽しめるし、歌に入るまで約2分半要するというのもその手のバンドらしい構成(笑)。かつ、歌に入ってからのポップさも際立つものがあり、続く「Duchess」しかりそのバランス感は非常に絶妙なものがあります。

特にプログレ風味でいうと、アルバム終盤に配置された組曲「Duke's Travels」〜「Duke's End」の流れが最高なんですよ。8分を優に超える大作「Duke's Travels」と、オープニング曲「Behind The Lines」のインストパートを流用したエンディング曲「Duke's End」という流れ、それぞれ緊張感と華やかさが備わったアンサンブル。その勢からは、今がバンドとしても絶頂期なんじゃないかと思えるほどのものがあります(実際、本当の絶頂期はここから6年後に迎えるわけですが)。

一方で、この頃にはポップサイドにも磨きがかかり始めており、フィルが単独で書いた「Misunderstanding」はシングルとしても全米14位と初のTOP20入りを記録。また、「Turn It On Again」はアメリカでは58位止まりながらも本国では全英8位のヒットに。「Turn It On Again」は後年まで演奏され続け、1999年発売のベストアルバム『TURN IT ON AGAIN: THE HITS』のタイトルに用いられるなど、バンドにとってもターニングポイントになった1曲であることが伺えます。

個人的にも本作と『WE CAN'T DANCE』(1991年)は、GENESISの中で特に好きな作品。フィル・コリンズらしさが強く感じられるものの、それが嫌味として前に出過ぎていない、奇跡のバランスで成立した良作だと思っています(逆に、出過ぎてしまったのがメガヒット作『INVISIBLE TOUCH』。あれはあれでまた良いんですけどね)。

フィルのソロ作はちょっと苦手という人でも、本作は意外と楽しめるのではないか……そんな優れた“ロック”アルバムです。

 


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2020年1月21日 (火)

LoveLive! Series 9th Anniversary ラブライブ!フェス@さいたまスーパーアリーナ(2020年1月18日)

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ラブライブ!フェス、行ってきたよ。仕事でレポを残す形ではなかったので、ここに雑感程度のメモを残しておこうかと。まあ、あれです。形として残しておきたいくらい、自分の中で“クる”ものがあったと。そういうことです。

 

Aqours
 オープニング映像後に突如Aqoursからスタート。気を抜いてたので心の準備できてないまま「未体験HORIZON」フルコーラス。あっという間に終了。最高のオープニングアクトでした。

 

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
 ニジガクは先月2DAYS観たばかりなので、特に目新しさなし。やっぱりソロで1曲ずつ攻めていくのね。もちろんそうだろうとは思っていたけど、実はメドレーで9人つなぐのかと思ってました。でも、実際には1人ずつフルコーラス。ラブライブ!周りはメドレーをやらない限り、基本的にフルコーラスで披露してくれるのでありがたい。前半4人終わりMCに入ったと思ったら、再度MCへ。全員揃って「次で最後の曲です」。ズコーッ(笑)。後半は明日ってことね。

 

CYaRon!、AZALEA、Guilty Kiss
 ニジガクのソロターンに続いては、Aqoursユニット連発。シングル曲と未発売の特典曲の組み合わせ。映像にはスクスタ未公開のやつもあり、今後の配信に期待。また、CYaRon!が最後にAZALEAのポーズで終わり、次のAZALEAはGuilty Kissのポーズという具合に、次のユニットを紹介していくパターンなので、次の流れが読める。やっぱりギルキスから一気に熱量高くなる。正直言えば「Strawberry Trapper」でブチ上がりたかったけど、意表をついた「コワレヤスキ」もよかった。ギルキスはこのニューメタル/ゴシックメタル調の楽曲をもっと欲しいところ。このブロックは2日目、曲の入れ替えありそう。むしろそうなるはず。

 

Saint Snow
 そこからのSaint Snow。鉄板の2曲。やっぱり「Believe again」が強すぎる。ギルキスでひとつ温度が上がり、「Believe again」でさらに一段高まったかな。ていうか、会場を見渡す限りではニジガクやSSへの声援も非常に大きなものがあり(とはいえAqoursやμ'sよりは小さいですが)、

 

Aqours
 Aqoursはいきなり「届かない星だとしても」から勢いよくスタート。最新型Aqoursシップで登場。東京ドーム行けなかったので追体験できた点で涙腺緩む。そのままシップが花道をたどって進み「MIRAI TICKET」。完全に東京ドームの再現やん。シップから降りて自己紹介&コーレス。

 その後の「青ジャン」「恋アク」「君ここ」と鉄板の流れ。明日はミラチケ→ WBNW、恋アク→HPTかな。外した……。何にせよ、Aqoursのストロングスタイルを楽しめたので満足。そりゃもっと長い時間観ていたかったけど、今日はユニット含めると半分近くがAqoursのターンだったので、これはこれで充実感が高いものだったと思います。頭の「未体験HORIZON」やユニットもあったしね。

 

μ's
 で、μ's。登場したあとのシルエットだけで涙腺緩む。あ、これはヤバイ。生で観たことあるのって、南條さんが膝でお休みしていた時期なので、実は8人編成でしか観たことがなくて。結局ドームも外れて行けなかったし。なので、念願叶っての9人μ's。もう実現しないと思っていたので。夢でしかない。それで1曲目が「ぼららら」だもん。泣いてたよね。間違いなく。

 パフォーマンスやMCはもちろんなんだけど、顔つきが完全に当時に戻ってたのも印象的でした。やっぱりスイッチが入ったんだなと。持ち曲115曲なのでメドレーで6曲、いわゆるテレビサイズで披露。これだけでも相当ボリューミー。基本的にトロッコに乗っての歌唱なのでフォーメーションはないけど、各人踊ったりしてた。尊い。ラストは「スノハレ」。泣くよね。スクリーンには右側にテレビ2期、左側にMV、中央に今パフォーマンスしてる姿。いろいろフラッシュバック。落ちサビで会場が白→オレンジに変わる瞬間は何度観ても絶景で、そこに新田さんの歌が乗るだけで自然と涙が。もうね、無言でずっと涙流してた。

 まる3時間。アンコールなし。いや、付け加えるものないだろと。各チーム代表が挨拶。伊波さんがただのヲタに戻って「スノハレに感動しました」と号泣。ありがとう、ヲタ代表。

 2日目は後半のAqours→μ'sがμ's→Aqoursに交代。セトリはμ'sとSSは変わらずで、ニジガクは残りのソロ曲、Aqoursユニットも曲入れ替え、Aqoursは上記の予想どおりの曲差し替え。ディレイビューイングもスケジュール的に行けなさそうなので、これはもう映像化を待つことにします。きっと、何度観ても泣くんだろうな……うん。

 

【セットリスト】
<Aqours>
01. 未体験HORIZON

<虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会>
02. TOKIMEKI Runners
--自己紹介--
03. 夢への一歩 [上原歩夢 (CV.大西亜玖璃)]
04. ドキポピ☆エモーション [天王寺璃奈 (CV.田中ちえ美)]
05. 眠れる森に行きたいな [近江彼方 (CV.鬼頭明里)]
06. Starlight [朝香果林 (CV.久保田未夢)]
07. Love U my friends

<CYaRon!>
08. 元気全開DAY! DAY! DAY!
09. P.S.の向こう側

<AZALEA>
10. GALAXY HidE and SeeK
11. LONELY TUNING

<Guilty Kiss>
12. コワレヤスキ
13. Guilty!? Farewell party

<Saint Snow>
14. SELF CONTROL!!
--自己紹介--
15. Believe again

<Aqours>
16. 届かない星だとしても
17. MIRAI TICKET
--自己紹介--
18. 青空Jumping Heart
19. 恋するAQUARIUM
20. 君の心は輝いてるかい?

<μ's>
21. 僕らのLIVE 君とのLIFE
--自己紹介--
22. μ'sアニメメドレー
  ・僕らは今のなかで
  ・No brand girls
  ・START:DASH!!
  ・それは僕たちの奇跡
  ・ユメノトビラ
  ・KiRa-KiRa Sensation!
23. Snow halation

 

RUSH『RUSH』(1974)

1974年3月にリリースされたRUSHの1stアルバム。日本盤は発売日時こそ不明ですが、当時のマーキュリー・レコード(日本フォノグラム)から『閃光のラッシュ』の邦題で1975年に発売されたようです(解説の執筆日付が1975年1月なので、発売は同年3月以降かなと。となると、海外でのオリジナル盤発売から1年のタイムラグがあったことがわかります)。

当時はニール・パート(Dr)加入前で、メンバーはゲディ・リー(Vo, B)、アレックス・ライフソン(G)、ジョン・ラトジー(Dr)の3人。音楽性もニール加入後のプログレッシヴロック路線とは異なり、ゲディのハイトーンボーカルを前面に打ち出した、ギターリフ主体のハードロックが中心です。

オープニングの「Finding My Way」からして、我々の知るRUSHとは異なり……「あれ、LED ZEPPELINのCDと間違えた?」と勘違いしてしまうほど、ストレートなブルースロック/ハードロックが展開されています。ただ、ツェッペリンほどアレンジに凝った様子もなく、若干ストレートさが目立つかなと。それを「デビュー作らしい直球さ」と受け取るか「ツェッペリンやCREAMの亜流」と受け取るかで、判断は大きく異なるのではないでしょうか。

8曲中7曲がゲディ&アレックスによるもの(「In The Mood」のみゲディ単独)。なので、歌詞もこの2人によるものなので、次作『FLY BY NIGHT』(1975年)以降の作風とは大きく異なります。つまり、“我々が知るRUSH”という視点では、次作こそがRUSH本来のデビューアルバムと受け取ることもできるのかなと。

となると、本作の存在って……いやいや、これはこれで素晴らしいんですよ。「In The Mood」みたいな能天気なロックンロールはさすがに微笑ましいけど、先の「Finding My Way」や「What You're Doing」「Before And After」のハードロックぶりや、アルバムラストを飾る「Working Man」のカッコよさは以降のRUSHにはないものだと思いますし、比較してどっちが優れているとかそういう話ではない魅力が感じられますし。

ニール・パート逝去以降、RUSHのカタログをずっと聴き漁っていましたが、20年ぶりくらいに聴いたこのアルバム、やっぱり良いんです。何を差し置いても先に聴くべき1枚とまでは言いませんが、RUSHというバンドにハードロックの香りを感じて、そのルーツって何だろう?と疑問に思った人にはぜひ触れてもらいたい1枚。90年代以降のモダンはハードロック感とはまた異なる、剥き出しな表現がここで感じられるはずなので。

「Working Man」は、活動後期にも演奏されていたのがいいですよね。しかも、ちゃんと“この3人”らしく味付けされて。本当、生で観たかったです……。

にしても、上に挙げた「Finding My Way」「What You're Doing」「Before And After」は本当に格別ですね。これ、ツェッペリンあたりだけじゃなくて、初期BLACK SABBATHを好むリスナーにも手を伸ばしてほしい名盤かもしれません。

 


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2020年1月20日 (月)

IT BITES『ONCE AROUND THE WORLD』(1988)

IT BITESが1988年3月にリリースした2ndアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年4月下旬に発売されています。

ASIAのマネジメントが契約、レーベルもVirgin Records(北米以外)&Geffen Records(北米)と確実に“第二のASIA”を目論んでメディアに売り込もうとされていたIT BITES。確かにその意図もわからなくないですが、むしろこのバンドはもう少しハードロック的な香りが強かったこともあり、良い意味で当時のHR/HMムーブメントに乗ろうとしたところもあったのではないでしょうか。

全英チャート35位まで上昇したデビューアルバム『THE BIG LAD IN THE WINDMILL』(1986年)から2年ぶりに発表された本作は、前作の延長線上ではあるものの、適度なプログレ感と適度なニューウェイヴ感(時代的にもニューロマ以降やTEARS FOR FEARSあたりのそれ)、そして適度はハードロック感が備わった高性能ポップメタル作に仕上がっています。

シングルヒットもした「Kiss Like Judas」(全英76位)や「Midnight」のようなキャッチーでコンパクトな楽曲もあれば、同じくシングルカットされたけどプログレ感満載の長尺曲「The Old Man And The Angel」(全英72位)や「Once Around The World」も含まれている。前者は9分半、後者は約15分という容赦なさ(笑)。思えば前作『THE BIG LAD IN THE WINDMILL』の時点では長尺曲って6分台が最長だったので、ここで一気にプログレ度が増したんですね。むしろ僕、リアルタムではこのアルバムから入っていたので、当時は「ああ、こういうバンドなんだ」と自然と納得していましたけど。

メロディの憂いは完全にブリティッシュバンドのそれで、例えば昨日紹介したCUTTING CREWあたりにも通ずる繊細さやセンチメンタリズムが存在する。これは絶対にアメリカのバンド、あるいはほかのヨーロッパ諸国のバンドにも真似できないものだと思います。「Yellow Christian」のメロディ&アレンジのひねくれ具合なんて、絶対にイギリス産だなってわかるものですし。これ、好きな人にはたまらないですよね。

シンセの音色に時代を感じるのは仕方ないとはいえ、フランシス・ダナリー(Vo, G)のテクニカルなギタープレイや、安定感のある(と同時に軽やかな)リズム隊のプレイ、80年代らしいキラキラ感に満ちたキーボードなど、とにかく華やかさに満ちた1枚だと思います。

日本や海外での評価を決定づけた代表作ではあるものの、本国でのチャート的には前作より若干劣るんですよね(全英43位)。もちろん、そんなのは数字上だけのもので、本作の完成度を測るものではありません。捨て曲なし、文句なしの傑作。IT BITESの入門編としてぜひ手にとってみてください。

なお、本作は現在ストリーミングサービスではアルバム単体での配信は行われておらず、数年前にリリースされた“初期オリジナルアルバム3作+ライブアルバム+シングルC/W曲網羅”の4枚組CD『WHOLE NEW WORLD (THE VIRGIN ALBUMS 1986-1991)』(2014年)の中で聴くことができます。僕もこの4枚組を購入しましたが、手頃な価格でオリメン時代の音源を楽しめるのでオススメです。

 


▼IT BITES『ONCE AROUND THE WORLD』
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2020年1月19日 (日)

CUTTING CREW『BROADCAST』(1986)

イギリスのロック/ポップバンドCUTTING CREWのデビューアルバム。本国ではVirgin Records傘下のSiren Recordsから1986年11月に発売され、その後Virgin Recordsを通じて1987年7月にアメリカなどで再リリース。日本では「(I Just) Died In Your Arms」の全米No.1にあわせて1987年12月に初リリースされています。

イギリス人のニック・ヴァン・イード(Vo, G, Key)とカナダ人のケヴィン・マクマイケル(G)を中心に1985年に結成されたバンドですが、そう考えると結成後すぐにレーベル契約を手にしているんですね。それも、ニックが70年代後半からソロやTHE DRIVERSといったバンドでの活動があったからこそ(THE DRIVERSはカナダで小ヒットを残しており、そのカナダツアーを通じてニックとケヴィンは出会っています)。2人はロンドンでデモを制作し、見事レーベル契約を獲得。リズム隊の2人が加わるのは、そのあとの1986年に入ってからだそうで、そういった意味ではバンドというよりも「ニック&ケヴィンのソングライティング・プロジェクト」といった趣が強いかもしれません。

アルバムのプロデュースを手がけたのはRUSHなどで知られるテリー・ブラウン(10曲中9曲)と、のちにGUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)METALLICA『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)のエンジニアリングで名をあげるマイケル・バルビエロ&スティーヴ・トンプソン(「I've Been In Love Before」のみ)という豪華な面々。ミックス・エンジニアにはティム・パーマー(KAJAGOOGOO、GOO GOO DOLLS、HIM、オジー・オズボーンなど)の名前も見つけられます。

サウンドプロダクション的には当時主流だった“(レコーディングスタジオの)Power Stationサウンド”的といいますか、あるいはTHE POLICEフィル・コリンズ以降のヒュー・パジャム的といいますか。まあ、序盤のサウンドはそういった印象が強く、今聴くと若干の古臭さを感じます。が、楽曲自体は非常によく練られたポップ/AOR風で、ポップ寄りのハードロックやハードポップと呼ばれるジャンルが好きなリスナーにはたまらないテイストだと思います。実際、大ヒットした「(I Just) Died In Your Arms」や「I've Been In Love Before」の出来は突出したものがありますしね。

一方で、当時ポンプと呼ばれた新世代プログレッシヴロック的なカラーも見え隠れします。アルバム序盤の構成も組曲風ですし、特にラスト3曲(「Sahara」「It Shouldn't Take Too Long」「The Broadcast」)にはその要素が強く感じられるはずです。シングルヒットの印象が強いバンドですが、実はアルバムのトータルにもこだわったアーティスト集団だったんだということに今さらながら気づかされます。

旧世代のプログレがニューウェイヴやニューロマンティックを通過するとこうなるという、IT BITESあたりとはまた違った道をたどった存在だったんでしょうね。「(I Just) Died In Your Arms」のバカ売れによって一発屋的イメージもありますが、もしあの当時に正当な評価が下されていたら(何をもって「正当」かは判断に委ねますが)、次作以降の展開もまた変わっていったのかな……そう思うと、ちょっとかわいそうになってきました。

 


▼CUTTING CREW『BROADCAST』
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2020年1月18日 (土)

ROBERT PLANT『FATE OF NATIONS』(1993)

1993年5月にリリーされた、ロバート・プラント通算6作目のオリジナルアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年6月に発売されています。

80年代後半のHR/HMブームの延長で、LED ZEPPELINに再評価が集まり、カタログのCD廉価盤リリース(日本において)、Atlantic Recordsの周年イベントでの再結成ライブ、さらにはジミー・ペイジ初のソロアルバム『OUTRIDER』(1988年)やプラントの4thソロアルバム『NOW AND ZEN』(1988年)のリリースおよび両作にお互いゲスト参加するなどのトピックもあり、『NOW AND ZEN』はアメリカで300万枚を超える大ヒットに。続く『MANIC NIRVANA』(1990年)も全英15位/全米12位のスマッシュヒットを記録するなど、個人としても非常に充実した時期を迎えていた90年代前半、プラントはこの『FATE OF NATIONS』で新たな試みに挑戦します。

それは、打ち込み主体だった過去2作(『NOW AND ZEN』『MANIC NIRVANA』)から打って変わって、バンドサウンドを軸にしたアルバムを制作すること、バンドメンバーに名うてのミュージシャンを迎えることでした。

クリス・ヒューズ(TEARS FOR FEARSピーター・ガブリエルポール・マッカートニーなど)を共同プロデューサーに迎えた本作では、曲ごとに多彩なゲストプレイヤーが参加。そこで気に入なったメンバーが、おそらくその後のツアーにも参加することになったのではないかと想像しますが、そのメンツはフランシス・ダナリー(G/ex. IT BITES)、ケヴィン・スコット・マクマイケル(G/ex. CUTTING CREW。2002年逝去)、マイケル・リー(Dr/ex. LITTLE ANGELS)といった新しいところから、ダグ・ボイル(G)、チャーリー・ジョーンズ(B)、クリス・ブラックウェル(Dr)、フィル・ジョンストン(Key)など過去のアルバム/ツアーにも参加した面々も見つけることができます。

プラントはこのアルバムについて「本作を制作する前に、MOBY GRAPEやJEFFERSON AIRPLANE、ティム・ハーディン、QUICKSILVER、TRAFFICなど自分のルーツを振り返った」とコメントを寄せていますが、これがすべてなんでしょうね。つまり、LED ZEPPELINに参加する前、音楽を始めた頃の気持ちにまで一度立ち返って、改めて音楽を作ろうとした。そのために気心知れた仲間だけじゃなくて、新しい血も加えることで化学反応を期待したと。

その結果、「Calling To You」や「Memory Song (Hello Hello)」「Promised Land」などずっと避けてきたツェッペリン的ハードロックに堂々とチャレンジしているわけです。まあ、過去2作でその助走はできていたので、今作でそれに挑むことはそう難しくなかったと思います。環境的にも追い風が吹いていましたしね。

かと思えば、トム・ハーディンのカバー「If I Were A Carpenter」含めトラッド調の楽曲もいくつか含まれておるし、「29 Palms」のようなAOR風ポップロック、「Great Spirit」というソウルナンバーも用意されている。全編でツェッペリンしまくっているわけではなく、自身のルーツに忠実にさまざまなタイプの楽曲に挑戦する。ある意味ではバンド時代〜ソロ活動の集大成とも言える作風ではないでしょうか。そういう意味では雑多と言えなくもないですが、自分は前時代的な打ち込みポップ主流だった近作よりも好きな1枚です。

にしても、ここでの試みがそのままツェッペリンのセミ再結成……PAGE AND PLANTへとつながるとは、このときは考えてもみませんでしたが(またこの締めかよ。笑)。

 


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2020年1月17日 (金)

FRANCIS DUNNERY『WELCOME TO THE WILD COUNTRY』(1991)

IT BITESフランシス・ダナリーが1991年11月に発売した初ソロアルバム。当初はVirgin Japanを通じて日本のみのリリースでしたが、のちに海外でも発表されたようです(2001年には彼自身のプライベートレーベルから、リマスター&ボーナストラック追加で再発されています)。

1990年夏にバンドを脱退したフランシスはイギリスからLAに渡り、「テクニカル・バンドの枠に収まりたくない」という思いからネオ・プログレッシヴロック=ポンプとは異なるバンド結成を画策。マイケル・リア(B/アルバムクレジットではヴェガス・レアと記載)、エディ・バッダー(Dr/同、ナン・バッダーと記載)をオーディションで迎え、IT BITESの4thアルバムを一緒に制作する予定だったデヴィッド・ヘンツェル(GENESIS、マイク・オールドフィールド、BRAND Xなど)とともにレコーディング。まだバブルの余韻が残っていたのでしょうか、日本のVirgin Japanのバックアップでここまでのデビューアルバムを完成させたわけです(今の時代じゃ考えられないことですが)。

本作はプログレッシヴロックというよりもハードロックやブルースロックの色合いが強い、自由度の高い内容に仕上がっています。それは、きめ細かに作り込まれた楽曲が目立ったIT BITESとは相反し、スタジオセッションでのナマ感がそのまま採用された作風に強く表れていると思います。

オープニングの「Jack Won’t Let You Go」、続くタイトルトラック「Welcome To The Wild Country」のカッコよさたるや。“Very British”な作風だったIT BITESを愛するファンからしたら、このアメリカナイズされた楽曲&サウンドは絶望を覚えるレベルかもしれませんが、ことIT BITESに関しては完全に後追いだった僕からしたら本作は「純粋にカッコいいハードロックアルバム」の1枚でしかありませんでした。

アンチ・テクニカルを掲げてIT BITESを脱退したフランシスですが、本作でのギタープレイはかなりの技巧派で、テクニカルの範疇に含まれるものだと思います。が、それらのプレイが設計図どおりに作られたものではなく、その場の感情・思いつきによって奏でられたものであることは、このアルバムを聴けばご理解いただけるはず。つまり、テクニックの使い方の違いが大きいわけです。僕はIT BITESでの表現も(今となっては)大好きですが、本作で表現されているスタイルもお気に入り。つまり、いろんな引き出しを持つフランシス・ダナリーってカッコいいと思うわけですよ(単純な話ですが)。

「Kiss Me」みたいなブルースロックもたまらないし、どこかIT BITES時代にも通ずる空気感を持つ(だけど良い意味でアメリカナイズされた)9分近い大作「Jackal In Your Mind」も素敵。「Heartache Reborn」のようなポップチューンも、「All I Ever Wanted Was You」という豪快なロックナンバーも、皮肉に満ちた歌詞が最高なアコースティックバラード「Another Day」も、どれを取っても最高の一言。女性コーラスが加わることでゴージャスさが増している点も、本作を良い方向に導いていますし、個人的には90年代の名盤のひとつに挙げたい「もっと知られるべき」1枚だと確信しています。

だけど、このアルバム発表後にまさか彼がロバート・プラントのツアーバンドに加入することになるとは、さすがに想像もしてなかったけどね(笑)。

 


▼FRANCIS DUNNERY『WELCOME TO THE WILD COUNTRY』
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2020年1月16日 (木)

LED ZEPPELIN『IN THROUGH THE OUT DOOR』(1979)

1979年8月にリリースされたLED ZEPPELINの8thアルバム。

前作『PRESENCE』(1976年)から3年5ヶ月という、もっとも長いスパンを経て届けられた本作。もちろんその間には2枚組ライブアルバム『THE SONG REMAINS THE SAME』(1976年)の発売もありましたが、1977年夏のツアー中にロバート・プラント(Vo)の息子が亡くなったり、ジョン・ボーナム(Dr)が暴行事件で逮捕されたりと災難が続き、ツアーも途中でキャンセルに。一時代を築いたロックバンドは長きに渡り沈黙することになります。

その合間にはイギリスでのパンク・ムーブメント勃発もあり、ツェッペリンは完全に「過去のもの」として見なされるように。しかし、約1年の休止期間を経てバンドは再集結し、今後の方針をミーティング。秋にはついにレコーディングに突入することになります。

ジミー・ペイジ(G)完全主導で制作されたキーボードレスの“ギターアルバム”『PRESENCE』に対して、本作ではジョン・ポール・ジョンズ(B, Key)が大活躍。当時の最新鋭シンセサイザーを導入するなど、全曲でジョンジーのピアノやキーボードがフィーチャーされています。

また、作曲面でも全7曲中ジョンジーは6曲にクレジット。ペイジ&プラント単独で書かれたのは朗らかなカントリーロック「Hot Dog」のみ。全体的にもペイジのカラーは希薄で、初期〜中期のバンドが持っていた鋭角的なブルース・ハードロック色は完全に払拭されています。

それに取って代わったのが、サンバに加えて当時流行り始めていたテクノポップという、新境地的な要素。オープニングの「In The Evening」こそ多少エッジの効いたギターを楽しむことができますが、続く「South Bound Saurez」ではメインのリフを刻むのはピアノですし、続く「Fool In The Rain」もしかり。そこに先の「Hot Dog」が続くわけですから、緊張感みなぎる『PRESENCE』とはある種対極にある作風と言えるでしょう。

アルバム後半には10分を超えるテクノポップ的リフを持つ「Carouselambra」でバンドとしての新境地を見せつけ、プラントが亡き息子について歌ったバラード「All My Love」、ソウルフルなボーカル(特に終盤が圧巻!)が際立つ「I'm Gonna Crawl」と“大人になったツェッペリン”を全面的にアピール。パンク・ムーブメントと来たる新たなHR/HMムーブメントの間にこうした新機軸を打ち出したのは、バンドとしてもかなりの冒険だったのではないでしょうか。

結果的には翌年ボンゾが急逝したことで、本作が最後のオリジナルアルバムとなってしまいましたが、当時はここで終わるなんてこと誰も考えていなかったと思います。しかし、結果として「All My Love」や「I'm Gonna Crawl」のような“エモさ”で締めくくることになってしまった本作は、ボンゾの遺作という意味において冷静な判断を下し難い、非常に厄介な1枚となってしまいました。サウンド面での変化なども含めて、本作には手を出しにくいと思っている(いた)リスナー、少なくないんじゃないでしょうか(実際、僕もツェッペリンのカタログを聴き進める際、本作に手を伸ばしたのは本当に最後でしたから)。

正真正銘のラスト作として、数年後に未発表曲集『CODA』(1982年)を発表しているものの、やはりツェッペリンはここで終わった。本来ならジョンジーの新たな才能が開花した本作を経て、ここで抑えた分のペイジのアイデアも炸裂した、正真正銘の“LED ZEPPELIN第2章”が次作でスタートするはずだったんでしょうね……。たられば話を今さらしても後の祭りですが、実際どんな化学反応が起きたのか……我々の想像を絶するものになったかもしれないし、あるいは本作の延長でお茶を濁したのか。本当にどうなっていたんでしょうね?

 


▼LED ZEPPELIN『IN THROUGH THE OUT DOOR』
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2020年1月15日 (水)

PINK FLOYD『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』(1987)

1987年9月にリリースされたPINK FLOYDの13thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年10月に発売されています。って、今思えばRUSH『HOLD YOUR FIRE』(1987年)とほぼ同タイミングにリリースされたんですね。それで同じような印象を持ったのかしら。

自分が洋楽ロックを聴き始めて、最初に接したPINK FLOYDの新譜がこれでした。当時高校1年生だった僕は「これがPINK FLOYDか……」と胸をワクワクさせながら、本作と向き合った記憶があります。なにせ、『狂気(THE DARK SIDE OF THE MOON)』(1973年)や『THE WALL』(1979年)といった名作に触れるのは、そのもっとあとになってからですからね。

すでにMTVや『ベストヒットUSA』といった洋楽番組でリードトラック「Learning To Fly」のMVを目にしていたので、そのサウンドがどんな感じかは理解していました。この1曲を聴いた限りでは「あれ、プログレっていうかもっと小難しいと思ってた。めっちゃソフトじゃん」という感想。今思えば、完全にAORと同じ感覚でした。

で、アルバムをレンタルして聴くわけですが(当時、アナログ盤も発売されていたと思いますが、ここはいい音で……という短絡的な理由でCDを借りることに)……「これ、プログレ?」と疑問を感じるわけです。ロジャー・ウォーターズがいない、デイヴ・ギルモア主導だとかCDの解説にも書いてあったと思いますが、ほぼ初心者の僕からすればそういった要素は二の次なわけで、ここで鳴らされている音楽こそがすべて。「なんだか16歳の自分には難しいな……」と思ったのでしょうね。カセットテープにダビングして2〜3回聴いて、放ったらかしにしたと思います。

結局、90年代に入って上京して、自分のお金でCDを自由に購入できるようになってから再びこのアルバムと向き合い、その魅力に気づいたわけです。

HR/HMがメインストリームに躍り出た時代だったからか、質感的には重厚さこそ感じられるものの、本作はプログレッシヴロックというよりはAOR的要素の強い1枚だと思います。要所要所に短尺のインタールードを挟むことでコンセプチュアルな雰囲気を醸し出していますが、ストーリーとしてのトータル性はあまり感じられない。“コンセプチュアルな雰囲気”、これこそがすべての1枚かなと。

歌詞やタイトル(特にアナログM-1〜5のA面)においては、ロジャーなきあと新たに手がけることになった元SLAPP HAPPYのアンソニー・ムーアの手腕によるものが大きいと思います。ニック・メイソン(Dr)&リチャード・ライト(Key)も制作に貢献しているものの、基本的にはギルモアがPINK FLOYDを立て直そうとほぼソロ体制で作り上げた、そんな1枚かもしれません。

だからなのか、『鬱』という邦題のわりにはピースフルでポジティブな空気に満ちている気がします。サウンドのファット感はハードロックやAORが主流だった80年代半ばならではといえばそれまでですが、かなり聴きやすいもので、先鋭的だったプログレの香りは薄いかも。そんな中、デイヴのギターはかなり魅力的なフレーズ/プレイ満載で、「On The Turning Away」や「Sorrow」といった楽曲での“地味なのに印象に残る味わい深い”フレージングはさすがの一言。まあ、そこには高校生の頃はまったく耳が行きませんでしたが(派手さしか求めていなかったので。笑)。

ちなみに今作、全英/全米3位を記録。全米だけでも400万枚以上を売り上げる大ヒット作となり、バンドの健在ぶりをアピールすることに成功しています。よかったね、ギルモアさん。

時代に呼応した“アリーナロック化したPINK FLOYD”と言ってしまえばそれまでですが、これはこれで良いと思うんです。これがあったから、末期の傑作『THE DIVISION BELL』(1994年)が生まれたわけですから。

 


▼PINK FLOYD『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』
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2020年1月14日 (火)

RUSH『HOLD YOUR FIRE』(1987)

1987年9月にリリースされたRUSHの12thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年10月に発売されています。

『MOVING PICTURES』(1981年)から本格化した“ラジオ・ライク”なショートチューン路線。シーケンサーを導入したシンセサウンドが加わったことで、それ以前のプログレッシヴロック的な作風からニューウェイヴ的スタイルへと移行したことで、RUSHはよりポップで親しみやすい作品を極めていくことになります。

本作はその“80年代のシンセポップ路線”の集大成といえるような内容で、ドラムのカラフル&メロディアスなタムタムの音色や、ギターよりもシンセが際立つアレンジ、どこか憂いの感じられる切ないメロディからは、職人技ともいえる極みが感じられます。

時代的にもYESが「Owner Of A Lonely Heart」で全米1位を獲得し(1983年)、GENESISは「Invisible Touch」という極上のポップソングで全米No.1に輝いた(1986年)あとに、RUSHもついに究極のポップ路線を完成させた。上記の流れを顧みると、この進化は非常に納得いくものがあるのではないでしょうか。

ただ、残念ながらRUSHの場合こういった試みがシングルヒットにまでは結びつかず、さらにアルバム自体も『MOVING PICTURES』を最後にセールスが失速。本作はしばらく続いた全米TOP10入りを逃し(最高13位)、売り上げも50万枚止まり。思えばこのバンドの場合、歌詞を書いているのはニール・パート(Dr)ですものね。知的すぎたのかな……そりゃフィル・コリンズとは違いますよ。

まあ冗談はさておき。どの曲も非常によく作り込まれており、ぶっちゃけ隙が見つからない。かといって、それが息苦しさを与えるのかというとそんなこともなく、一流のポップソングとしても成立している。なのに、よく聴き込むと各々のプレイ/アレンジが非常にテクニカルで凝っている(だから「隙が見つからない」んですけどね)。しかも今作は、「Time Stand Still」と「Prime Mover」にコ・リードボーカルとしてエイミー・マンが参加しているのも大きな特徴。RUSHのアルバムに女性シンガーがフィーチャーされるのはこれが初めてだったんじゃないかな。ドラムやシンセの音色/エフェクトに時代を感じてしまうものの、楽曲の質は80年代の作品で最高のものと言えるでしょう。

RUSHはこの傑作のあと、ポップ路線のまとめとしてライブアルバム『A SHOW OF HANDS』(1989年)をリリース。その後、さらなる混沌への入り口として13thアルバム『PRESTO』を1989年11月に発表します。ギリギリ80年代の作品ではあるものの、すでにここで『COUNTERPARTS』(1993年)への布石が感じられるのですが、それについてはまた別の機会に。

 


▼RUSH『HOLD YOUR FIRE』
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2020年1月13日 (月)

RUSH『MOVING PICTURES』(1981)

RUSHが1981年2月にリリースした、通算8作目のスタジオアルバム。日本盤は同年4月、当時にEPIC SONYから発売さてました(当然アナログ盤で)。

最初期のハードロック路線から徐々に大作路線へと移行したRUSHでしたが、前作『PERMANENT WAVES』(1980年)制作時に「ラジオで好まれる、短くキャッチーな曲を用意しろ」とレーベルから急かされたことで、その路線をさらに変化させていきます。

そんな中で生まれたこの『MOVING PICTURES』という作品は、ラジオで好まれる4分台の楽曲を中心にしつつも、「YYX」のようにテクニカルなインスト曲、「The Camera Eyes」といった10分超の大作も用意されており、バンドとしてのそれ以前のアイデンティティを残しつつも新たなフィールドへと挑もうとする野心がバランスよく混在する、まさに傑作と呼ぶにふさわしい1枚に仕上がっています。

シンセを導入した“ラジオ・ライク”な(それでいて、このバンドらしい小難しさもしっかり備わっている)「Tom Sawyer」といい、軽快なノリを持つ「Red Barchetta」といい、どれも本当にキャッチーでポップなんですよね。だけど、演奏面だけでいうと実はものすごくテクニカルなことをやっている。良い意味で気を抜けない楽曲が冒頭から並ぶのですが、その気の抜けなさにおける極め付けが先のインスト「YYZ」という……この曲の超絶さ、圧巻です。

かと思えば、再びキャッチーなロックンロール「Limelight」が登場したり、プログレバンド的な神秘性が前面に打ち出された11分にわたる組曲「The Camera Eye」があったり、それに続く「Witch Hunt」で大作の余韻をさらに味あわせてくれたりする。で、ラストに再びシンセポップ調の「Vital Signs」で締めくくる。中盤〜後半にかけてプログレッシヴな側面をこれでもかと提示していますが、アルバム序盤とラストはポップ路線で固めるこの構成、「初心者の皆さんも安心して楽しめます」と導入しておいて、先に進むと「あれ、話が違うじゃん……でも、これもいいな?」とどんどん小難しさに慣れていく。そんな仕掛け(ある種の罠)が非常に心地よいんですよね。

「RUSHの最高傑作は?」と質問されたとき、きっとどのアルバムから入ったかによって(あるいはどのアルバムが好きかによって)挙げる作品は異なるかと思いますが、この『MOVING PICTURES』には大作路線ファンや80年代のポップ路線リスナー、90年代のグランジ/ヘヴィ路線ファンもを唸らせる魅力を持っているのではないでしょうか。記録的にも本国カナダで初めて1位を獲った作品であり、アメリカでも最高3位、400万枚以上というキャリア最高セールスを誇る1枚ですし。個人的には90年代の傑作『COUNTERPARTS』(1993年)とあわせて「初心者にオススメしたい入門盤」に挙げたいと思っています。

既報のとおり、ドラマーのニール・パートが今年1月7日に脳腫瘍のため逝去したことが1月11日にアナウンスされました。2018年のインタビューでゲディ・リー(Vo, B)がニールの音楽家としての引退を明かしていたため、バンド復活の道は絶たれていたわけですが、その時点ですでに療養中であり、先が長くないことはわかっていたんでしょうね……。残念でなりません。

 


▼RUSH『MOVING PICTURES』
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2020年1月12日 (日)

祝ご成人(1999年4月〜2000年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今年で6回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、前回(1998年4月〜1999年3月)から当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)と被っていることもあり、選出時いろいろ感慨深いものがあったりするのですから、長く続けてみるものですね。

さて、企画説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1999年4月〜2000年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちらです)

 

AC/DC『STIFF UPPER LIP』(2000年2月発売)(Spotify)(レビュー

ATARI TEENAGE RIOT『60 SECOND WIPE OUT』(1999年5月発売)(Spotify)(レビュー

BUCKCHERRY『BUCKCHERRY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』(1999年6月発売)(Spotify)(レビュー

CIBO MATTO『STEREO☆TYPE A』(1999年6月発売)(Spotify

D'ANGELO『VOODOO』(2000年1月発売)(Spotify

THE DILLINGER ESCAPE PLAN『CALCULATING INFINITY』(1999年9月発売)(Spotify

DISTURBED『THE SICKNESS』(2000年3月発売/US)(Spotify)(レビュー

THE FLAMING LIPS『THE SOFT BULLETIN』(1999年5月発売)(Spotify

FOUNTAINS OF WAYNE『UTOPIA PARKWAY』(1999年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

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MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』(1992)

1992年7月にリリースされた、MINISTRYの5thアルバム。

MEGADETHの来日公演(1991年初頭)の開場SEとして『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989年)が使用されたことで注目を集め、同作が1991年11月にようやく日本盤化。同時期には海外でニューシングル「Jesus Built My Hotrod」がリリースされ、このスラッシュメタル化した楽曲を通じて同ユニットにさらなる注目が集まり始めます。

こうして翌年に届けられたニューアルバムは、『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』での「Thieves」「Burning Inside」、そして先の「Jesus Built My Hotrod」を気に入ったリスナーなら一発でハマる内容に仕上げられました。

アルバム冒頭の「N.W.O.」から5曲目「Jesus Built My Hotrod」までの流れはとにかく圧巻で、メタル化したMINISTRYの真骨頂といえる内容です。スラッシーなギターリフを軸に、時に生ドラムに近いリズム、時に「Thieves」「Burning Inside」路線のマシンビートを用いて展開される楽曲群は、スラッシュメタルとハードコアパンクの中間といったところでしょうか。「TV II」での曲調や、それに乗せたアジテートはメタルというよりもハードコアのそれですしね。それに続く「Hero」なんて完全にメタルマナーですから、そりゃニヤニヤものでしょう。

圧巻は、アルバム中盤に置かれた「Jesus Built My Hotrod」。この曲の殺傷力と中毒性はリリースから30年近く経った今も衰えることなく、2020年の今聴いてもクセになる魅力を放ち続けています。ちなみに、この曲でボーカルを担当しているのはBUTTHOLE SURFERSのギビー・ヘインズ。この組み合わせも最高ですね。

……と、前半5曲でインダストリアル・メタルの真骨頂を楽しめる本作。ところが、続く6曲目「Scare Crow」で空気が一変します。BPMをグイッと落とし、引きずるようなミディアムヘヴィなリズムの上で単調なギターリフとボーカルが繰り返されるのみ……これが8分半も続くのですから(笑)。続く「Psalm 69」もシンフォニックなサウンドを用いつつも単調に繰り返されるフレーズ、途中でテンポチェンジしてヘヴィメタル的な展開を見せますが、再びスローに戻り、またテンポチェンジして……の反復。「Corrosion」は若干BPMが上げ気味ですが、メタルというよりはインダストリアル側に思いっきり寄った作風。ラストの「Grace」もヘヴィさを保っていますが、楽曲というよりはコラージュと呼ぶに近い作風。こうして前半の高揚感とは相反する、カオスな展開でアルバムは幕を降ろすのでした。

前作の「Thieves」「Burning Inside」や、シングル「Jesus Built My Hotrod」でMINISTRYに興味を持ったライト層をアルバム前半で惹きつけて、後半のダウナー4連発で地獄の底に落とし込む(笑)その悪意こそ、MINISTRYの本領発揮といったところでしょうか。傑作度という点においては前作のほうがはるかに上ですが、リスナーを挑発する作風という点では本作の右に出るものはないのではないか。そう思わずにはいられない快作です。

 


▼MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』
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2020年1月11日 (土)

ゾンビスクール!(2015)

あらすじ
小説家を目指しNYに出たが、パッとしないクリントは早々に夢を諦め、母校の小学校で臨時職員として勤め始める。出勤初日から、生意気な子供たちには舐められ、個性的すぎる教師たちとはイマイチそりが合わない。しかし、小学校教師になっていたかつての同級生、ルーシーと再会し思い出話と共に淡い恋心を募らせる。
給食の時間。子供たちは大好きなチキンナゲットを頬張り、賑やかな時間が過ぎていく。
そして、午後の時間が始まる。ツインテールの少女、シェリーにいつものようにちょっかいを出すいじめっ子、ペイトリオットだが、シェリーの様子がおかしい。ペイトリオットが髪を引っ張ると、毛束が皮膚ごと剥がれ落ち、そのまま倒れこむや否やシェリーはペイトリオットの顔に噛みつく。
何が起きたか分からないまま、学校中はパニック! 次々とゾンビ化していく子供たち相手に、楽器やスポーツ用品で武装した教師たちが立ち向かう。キッズゾンビVSイカれた教師の戦いの火蓋が切って落とされた!

小学校を舞台にしたゾンビ/パンデミック映画。給食のチキンナゲットに含まれた病原菌からひとりの少女が感染、そこから次々にほかの生徒へと感染していくという流れなんですが、なんとゾンビ化するのは“子供”のみ(どこまでが“子供”かは本編にて確認を)。大人は噛まれたり傷つけられても下痢、嘔吐止まりという、なんともご都合主義(笑)。しかし、そういった条件が物語を面白くしているのは確かで、無軌道に暴れまくる子供たちを前に本気で立ち向かう大人(教師)たちの姿が滑稽なのもまたよし。

そういったコメディタッチのストーリーながらも、血生臭さやスプラッター要素は適度に用意されており、大人たちが内臓むき出しにされたり、腕を千切られたり、目玉を抜き取られたり……(苦笑)。途中で挿入されるイメージシーンでは、内臓(腸?)で縄跳びをする子供の姿も用意されており、もはやここまでくるとクスッとしてしまうのも確か(苦手な人には笑えないシチュエーションですが)。

『ゾンビランド』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』的な作風で亜流っちゃあ亜流かもしれませんが、本作を面白いものと昇華させているのは製作総指揮および主演をイライジャ・ウッドが務めていること。しかも、イライジャは小説家として芽が出ず、ニューヨークから田舎に出戻りというパッとしない臨時教員役を見事に演じきっているのですから、最高ったらありゃしない。『コマンドー』をパロッた終盤の決闘シーンといい、ヒロインとのネチネチした三角関係といい、どれを取ってもアホらしくて最高。クライマックスのやっつけ方含め大人がここまで子供をいたぶるのは、コンプライアンス的に問題ないのかという点は気になりますが(苦笑)。

(*80点)

 


▼ゾンビスクール!
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NINE INCH NAILS『HESITATION MARKS』(2013)

2013年9月初頭にリリースされた、NINE INCH NAILS通算8作目のオリジナルアルバム。

前作『THE SLIP』(2008年)を携えたワールドツアーの終了(2009年秋)をもって活動を終了することを発表。以降は妻とのユニットHOW TO DESTROY ANGELS、アッティカス・ロスとタッグを組んで映画『ソーシャル・ネットワーク』のサウンドトラックなどを手掛けるにとどまりました。もちろん、その間にはNIN名義での新曲「Theme From TESTUO: The Bullet Man」を映画『鉄男 THE BULLET MAN』(2010年)のために書き下ろしたり、1stアルバム『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)のリマスター盤発表(2010年)、U2の名盤『ACHTUNG BABY』(1991年)のトリビュートアルバム『AHK-toong BAY-bi Covered』(2011年)に「Zoo Station」のカバーを提供したりなどの動きもあり、完全に“終わった”わけではないことを匂わせ続けました。

そして2013年に入り、ついに活動再開を宣言。ニューアルバム発表前の7月末には『FUJI ROCK FESTIVAL '13』の初日ヘッドライナーとして4年ぶりの再来日も実現しました。このライブはネット中継もされたので、現地に行けなかったけど中継で観たというファンも少なくなかったはずです。僕は幸い現地で観ることができたのですが、2009年に続いてまた雷雨という……(苦笑)。しかし、いきなり未発表の新曲「Copy Of A」から始まり、ミニマルにリアレンジされた「Sanctified」、そして直前に配信リリースされた先行シングル「Came Back Haunted」という冒頭3曲の流れに(その演出含め)圧倒されたことを、今でもよく覚えています。当日のライブ音源はその後、オフィシャルサイトを通じて無料配信されたので、こちらで耳にしたというリスナーも少なくないです。

結局このフジロックでは、アルバムリリース1ヶ月前に「Copy Of A」「Came Back Haunted」「Find My Way」という3つの新曲を聴くことができましたが、いざ届けられたアルバムは想定の範囲内であると同時に、事前の想像を超える内容という構成でした。

まず、「想定の範囲内」というのは、「Copy Of A」や「Came Back Haunted」から想像できた路線であるということ。“らしさ”を残しつつも、よりミニマムな方向へとシフトしていくんだろうなという予想にかなり近い作風だったと思います。それゆえに、聴き方によっては淡白に感じられるかもしれません。

で、もうひとつの「事前の想像を超える」というのは、ブラックミュージック的解釈のアレンジを持つ楽曲が多い点。ファンクミュージックからの影響は過去数作にも散りばめられていましたが、今作におけるそれは直接的なものではなく70年代末〜80年代のニューウェイヴが持っていたブラックミュージックの色合いが強くにじみ出ているんじゃないか。そんな印象を受けました。

そういった意味では、先のミニマムかつシンプルな作風と相まって、NINの作品の中でもかなり聴きやすい1枚と言えるでしょう。初心者向けという点においては、『WITH TEETH』(2005年)にも近いかなと。しかし、作品の方向性としては実は傑作『THE FRAGILE』(1999年)に似ている……そんな「意図的に“らしさ”に照準を合わせた」ような作品なのかな。結局、この路線を軸にのちのEP三部作(『NOT THE ACTUAL EVENTS』『ADD VIOLENCE』『BAD WITCH』)も制作されているような印象を受けますし。

安心感は与えてくれるものの、90年代に受けたあの衝撃はもはや過去のもの。どこに焦点を置いて語るかによって、評価が大きく二分する1枚かもしれませんね。

 


▼NINE INCH NAILS『HESITATION MARKS』
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2020年1月10日 (金)

新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)

あらすじ
ソウル発プラン行きの高速鉄道KTXで突如起こった謎の感染爆発。列車内で凶暴化する感染者たち―乗り合わせたのは、妻のもとへ向かう父と幼い娘、出産間近の妻と夫、そして高校生の恋人同士…彼らは終着駅にたどり着くことができるのか―?目的地まであと2時間、絶体絶命のサバイバルが今はじまる!

韓国発のゾンビ映画。ゾンビといってもロメロ直系のスタンダードスタイルではなく、『28日後...』『バイドハザード』に習ったスピーディな動きをするヤツ。しかも、劇中ではソンビというワードは一切登場せず、化学薬品の汚染→感染という経路で感染者のアクションを“暴動”と捉えているところは『28日後...』に近いかもしれません。

ただ、本作の面白かったポイントは非感染者が高速鉄道という、行動範囲が限られた密室空間で物語の大半が進行するという点でしょう。密室系パニックアクション映画はこれまでにもたくさんありましたが、そこにゾンビものを混ぜ込んだことで、パニック度が過剰に盛り上がり、かつ銃社会ではない韓国を舞台にしているところもリアリティが感じられる。終始ダレることなく楽しめました。

実はこの作品最大の敵はゾンビ/感染者ではなく、同じ人間だという風刺(かな?)じみたところはどことなくロメロっぽいかも? そんなこともないか。コン・ユ演じる主人公の「自分さえよければ」というマインドや、最初から最後まで自分勝手さが際立った高速バス会社の常務、老姉の博愛心を嫌悪する老妹、ほかの車両から逃げてきた主人公たちを「感染しているかもしれない」という不確定な理由で排除しようとする他の生存者たち……そんな中で、子供ならではのピュアさをみせる主人公の娘と、妊娠中の女性の発言/行動は最初から最後まで安心していられたし、物語の救いになったところも大きかったと思います(結末的にも納得ですしね。悲しいエンディングだったけど)。

ゾンビ映画として接すると点数はかなり低めだけど、パンデミック系パニック映画として楽しめば十分に完成度は高いのではないでしょうか。事実、韓国内でもかなりのヒット作となり、続編の制作も決定しているようですし、アメリカでのリメイクも決まっているんだとか。欧米映画にありがちなネタを逆輸入するとどうリメイクされるのか、そちらも気になるところです。

(*84点)

 


▼新感染 ファイナル・エクスプレス
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DAVID BOWIE『EARTHLING』(1997)

1997年2月初頭にリリースされたデヴィッド・ボウイ通算20作目のオリジナルアルバム。前作『1. OUTSIDE』(1995年)から1年5ヶ月という非常に短いスパンで制作・発表されました。

当初、『1. OUTSIDE』を筆頭にブライアン・イーノとタッグを組んだ5部作の制作を予定していましたが、同作が思った以上のヒットを果たせず(その前の『BLACK TIE WHITE NOISE』が全英1位を獲得したのに対し、次作は8位止まり。セールス的にも半減しています)、次回作の制作は無期延期に。代わりにボウイは、自身がプロデュースの中心となり新たな方向性を模索します。

ナイル・ロジャースと10年ぶりのタッグが実現した『BLACK TIE WHITE NOISE』、イーノとも10数年ぶりに共演した『1. OUTSIDE』と、過去のパブリックイメージから解放されたボウイは自由奔放に音楽制作と向き合い始めた時期でしたが、このセルフプロデュース作(共同プロデューサーにバンドのギタリストであるリーヴス・ガブレルスと、ニューヨークで活躍するマーク・プラティの名も)では当時クラブシーンで盛り上がっていたドラムンベースやジャングルを基盤に、『1. OUTSIDE』を携えたワールドツアーの充実感を表すバンドサウンドをミックスさせた意欲的な楽曲を聴かせてくれます。

1997年というと、その年の春にはTHE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』を発表し全英1位/全米14位のヒットを記録、THE PRODIGYも同年夏に『THE FAT OF THE LAND』が全米/全英1位を記録するなど、最新のダンスミュージック/クラブミュージックが一気にメジャー化したタイミング。そういった意味ではボウイ、先見の明があったのかもしれません(単純に流行りものが好きなだけという話もありますが)。

しかし、ボウイ流にドラムンベースを解釈した楽曲群は、決してそれらをまんま模倣したわけではなく、リーヴスのギターがうねりを上げ、マイク・ガーソンのピアノがジャジーな雰囲気を作り上げたりと、良い意味での違和感を残す作風となっている。打ち込みビートに生のリズム隊を重ねて人力ドラムンベース化していたり、またある曲では普通にハードロックのフォーマットの上にドラムンベースのリズムが乗っていたりと、ボウイらしい工夫は至るところから感じることができます。

とはいえ、実は本作はリリース当時、あまり評価が高くなかった印象があります。「またボウイが流行りに乗った」「せっかく『1. OUTSIDE』でイーノとタッグ組んだのに、次がこれか……」とか。実際、チャート的には全英6位止まり、セールス面でも前作とほぼ同等となかなか伸び悩みましたが、「Little Wonder」(全英14位)、「Dead Man Walking」(同32位)とヒットシングルも生まれております。あ、アメリカでは「I'm Afraid Of Americans」がリカットされ、最高66位を記録。同作のMVにはトレント・レズナー(NINE INCH NAILS)が出演して話題にもなりました(同曲のリミックスも手掛けていますしね)。

 


▼DAVID BOWIE『EARTHLING』
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2020年1月 9日 (木)

POWER TRIP『MANIFEST DECIMATION』(2013)

2013年6月に発売されたPOWER TRIPの1stアルバム。日本盤未発売。

POWER TRIPはアメリカ・テキサス州ダラス出身の5人組バンドで、古き良き時代のスラッシュメタルやハードコアパンク、それらが融合し80年代後半に生まれた“クロスオーバー”と呼ばれるジャンルを現代によみがえられたサウンドが好評を博しています。

彼らのリリース元であるSouthern Loud Recordsは、SUNN O)))やSLEEP、EARTHなどが在籍するドゥームメタル、ストーナーロック、ドローンメタルなどを中心とした名門レーベル。いわゆるエクストリーム・メタル専門レーベルからのデビューということで、その特殊性にも注目が集まるわけですが……正直、ここまで真っ当でストレート(しかもB級色が濃厚)なスラッシュメタルバンドがテン年代にデビューしたことに驚かされることになるわけです。

“B級色が濃厚”と書きましたが、そこは名門レーベルが携わっているわけですから、レコーディングやミックスに関しては超A級。アーサー・リツクがプロデュースを担当しているのですが、彼はのちにSACRED REICH、CAVALERA CONSPIRACY、CRO-MAGSなどスラッシュ/クロスオーバーバンドを多数手がけることになるので、POWER TRIPでの功績が評価されたんでしょうね。

アルバムで展開されているサウンド、楽曲はぶっちゃけ……「80年代にこういうバンド、たくさんいたよね?(笑)」と言いたくなるような、まるで2013年という時代を無視した世界観。しかも、スラッシュといってもMETALLICASLAYERのようなメジャー感の強いバンドとは異なる、メジャーの一歩手前にいるB級インディバンドのそれなもんですから、懐かしくて思わずにやけてしまうという。でも、当時のバンドと大きく違うのは……リフやアレンジなど含め、非常に練り込まれたB級であるということ。すごく矛盾しているかもしれませんが、あの当時のB級感を意図的に演出しつつも、楽曲の殺傷力は非常に強いものが仕込まれている。だから、何度も繰り返し聴きたくなるし、何度飽きないわけです。これ、めちゃめちゃ恐ろしいことですよ?

そういった計算ができる(あるいは本能でそれができてしまう)バンドだからこそ、高く評価されているわけですよね。しかも、単なる80年代の焼き直しで終わっておらず、ちゃんと90年代以降の音楽のフィルターも通過しつつ、その結果としてあえて80年代のこのスタイルを選んでいるわけですから。最強以外の何ものでもないわけです。

彼らは2017年に日本デビュー作にあたる2ndアルバム『NIGHTMARE LOGIC』をリリース後、2018年9月には初来日も実現。これを機に、ここ日本でも高い評価を受けることになります。この2月には人気イベント『leave them all behind』出演のため再来日も決定しているので、ぜひこの機会に生の彼らに触れていただきたいものです(って僕が書くまでもありませんが)。

 


▼POWER TRIP『MANIFEST DECIMATION』
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2020年1月 8日 (水)

KVELERTAK『KVELERTAK』(2010)

ノルウェー出身の6人組HR/HMバンド、KVELERTAKが2010年6月に本国でリリースした1stアルバム。北米では6曲のボーナストラックを追加した形で、翌2011年3月に発売されています。日本盤未発売。

僕が彼らのことを知ったのは、続く2ndアルバム『MEIR』(2013年)からで(同作で日本デビュー)、後追いでこの1stアルバムまでたどり着きました。で、「うわーっ、もっと早くに出会っていたかった!」と実感させられることになるわけです。

トリプリギター編成でサウンドはストレートなロックンロール/爆走ハードロックと聞くと「それ、3人も必要?」と思ってしまうわけですが……この分厚さを出すには3人必要! 絶対3人じゃなきゃダメなわけですよ。

彼らが体現しているのは“Black 'N' Roll”と呼ばれる“ブラックメタル+ロックンロール”というエクストリーム・メタルの一種で、MOTÖRHEAD直系のハードドライヴィングなロックンロールに、ブラックメタル調のスクリームを乗せたスタイルは決して馴染みやすいとは言い切れないもの。しかし、アルバムを聴き進めていくと不思議とクセになってくるのです。

ギタリスト3人は無駄じゃないか?と先に書きましたが、このうち1人はピアニストも兼任。曲によってはTHE HELLACOPTERSにも通ずるピアノプレイも聴かせてくれます。これがね、いいんですよ。例えば「Blodtørst」のサビで聴けるアンサンブル……ひとりがリフを刻み、もうひとりが泣きまくりのギターソロを乗せる。そして3人目はギターを弾かずにシンプルなピアノリフを刻み続ける……そうそう、俺たちが好きな北欧ロケンローバンドってみんなこうだったじゃん!っていう事実を思い出させてくれるのです。

にしても、メロディの役割を流麗なギターソロ/フレーズで代用してくれるところは、メロデスにも通ずるものがあるのかな。言語は非英語(1曲だけ英語詞)ですが、スクリームでほぼ何を歌っているか判別できないので、特に問題ないかなと(笑)。そのへんのブラックメタルやデスメタルが好きで、かつ北欧の爆走ロケンローバンドが好きというリスナーなら間違いなく受け入れられるはずです。

あと、リミッターを外したかのような生々しい録音状態も最高の一言。実は本作(と続く『MEIR』)ではプロデュース&ミックスをCONVERGEのカート・バルーが担当しているんです。ね、納得でしょ?

現在流通しているCDおよびストリーミング版は、USリリース同様6曲追加された全17曲バージョン。こちらでは2010〜2011年のBBCセッションズ4曲と2009年のデモ音源2曲を楽しむことができます。

 


▼KVELERTAK『KVELERTAK』
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2020年1月 7日 (火)

DEFTONES『DIAMOND EYES』(2010)

2010年5月にリリースされた、DEFTONESの6thアルバム。

2006年に前作『SATURDAY NIGHT WRIST』を発表した彼らは、2008年にテリー・デイトとともに『EROS』と題された次作の制作に着手しました。しかし、同年11月にチ・チェン(B)が交通事故に遭い、意識不明の重体に。バンドはチェの意識が戻るのを待ち続けますが、一向に回復の兆しが見えず、2009年1月末にセルジオ・ベガ(QUICKSAND)を一時的に迎えて活動することを宣言。同年4月に新ラインナップによる初ライブを実施します。

そして6月、『EROS』の制作はチェが回復するまで保留することを宣言し、新たにニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSHALESTORMMASTODONなど)をプロデューサーに迎えて別のアルバムを制作。こうして3年半ぶりの新作はよくやく完成したわけです。

デビューから4thアルバム『DEFTONES』(2003年)まで一貫してテリー・デイトとタッグを組み続けたDEFTONESが、前作『SATURDAY NIGHT WRIST』で初めて新しいプロデューサー(ボブ・エズリン&ショーン・ロペス)を迎えたわけですが、ニックは次作『KOI NO YOKAN』(2012年)も続投したことから、当時やろうとしていたことにフィットしていたと言えるでしょう。

当初予定していた『EROS』は、怒りを表現したダークでヘヴィな作品になると言われていました。しかし、代わりに作られた『DIAMOND EYES』は“Optimistic(=楽観的)”な作風を意識したと言われています。これは、チェの事故によりバンドを取り巻く状況が悲劇的に捉えらえることを危惧し、あえてそうした作風を意識したのでしょう。

また、本作では過去数作で用いられたPro-Toolsといったデジタル編集を一切使わず、初期2作(『ADRENALINE』や『ADROUND THE FUR』)のようにメンバーが膝を突き合わせて演奏して曲を完成させていく手法を取っています。これはベーシストがセルジオに交代したことも大きかったのではないでしょうか。

さて、“Optimistic”な作風と言われる本作ですが、ヘヴィさとソフトさのバランスが非常に絶妙で、メロディラインも叫びよりセクシーさや気怠さが強く感じられるものが多い、非常に聴き応えが強い内容となっています。オープニングトラック「Diamond Eyes」から3曲目「CMND/CTRL」までの流れは、どこか『ADROUND THE FUR』時代を思わせる雰囲気で、バンドとしての躍動感が強くアピールされています。

かと思えば、「You've Seen The Butcher」や「Beauty School」のように3rdアルバム『WHITE PONY』(2000年)にも通ずるムーディさが強調された楽曲も用意されている。中盤になると再び「Rocket Skates」のようなヘヴィな楽曲も登場しますが、やはり後半のヤマとなるのは「Sextape」や「976-EVIL」といったメロディアスかつエモーショナルなナンバーでしょう。この2曲の存在は本作にとって非常に大きなものがあり、このアルバムを単なるヘヴィ/ラウドロックでは片付けきれないものへと昇華させています。

本作はある種、1stアルバム『ADRENALINE』から前作『SATURDAY NIGHT WRIST』までの集大成と言えなくもありません。しかし、これは新体制になったことでバンドを新たに立て直す意味でも必要な作業だったのでしょう。不慮の事故により、意図せず第二のデビュー作を作る羽目に陥ったわけですから。

なお、本作は全11曲のオリジナルナンバーで構成された通常盤に加え、「Do You Believe」(原曲:THE CARDIGANS)、「Ghosts」(原曲:JAPAN)、「Caress」(原曲:DRIVE LIKE JEHU)のボーナストラック3曲を加えたiTunes限定デラックスエディションも用意。ストリーミングバージョンではこのうち、「Do You Believe」と「Ghosts」が追加された13曲バージョンが配信されています。ただ、3曲とも翌2011年に限定リリースされたカバー曲集『COVERS』で聴けるので、基本的には11曲のみのCDバージョンでも問題ないと思います。

 


▼DEFTONES『DIAMOND EYES』
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2020年1月 6日 (月)

QUEENS OF THE STONE AGE『RATED R』(2000)

2000年6月にリリースされた、QUEENS OF THE STONE AGEの2ndアルバム(メジャー1作目)。日本盤は海外から少々遅れて、同年9月に発売されています。

USストーナーロック界で人気が高かったKYUSSのギタリストだったジョシュ・ホーミ(ジョシュ・オム)が、1995年のバンド解散を経て2年後にQOTSAを結成。PEARL JAMのストーン・ゴッサードが設立したプライベートレーベルLoosegroove Recordsから、セルフタイトルの1stアルバムを1998年に発表したのを経て、2000年にUniversal Music傘下のInterscope Recordsから本作にてメジャー進出を図ることとなります。

そのメジャー1作目のオープニングを飾る「Feel Good Hit Of The Summer」を初めて聴いたときの衝撃たるや……だって、歌い出しから〈Nicotine, valium, vicodin, marijuana, ecstasy and alcohol〉の連呼ですから(笑)。そのインパクトの強いフレーズを、タガが外れたかのようなガレージロックサウンドに乗せてジョシュが歌うわけですよ……そりゃ一発で好きになるでしょ?

時代的にはニューメタルからラップメタル、メタルコアと次々に新世代メタルが台頭し始めていたタイミング。そんな中、古臭い(いや、ある種カビ臭い)ハードロックサウンドをベースに、ストーナーロックと呼ばれるコアなジャンルをよりわかりやすい形に咀嚼し、より現代的なものへと昇華させようとしたQOTSTの果たした役目はかなり大きなものがあったと思います。

単なるストーナーロックの廉価版では終わらず、90年代以降のオルナタティヴ・ロックやグランジからの影響もしっかり見え隠れするし、それ以前のクラシックロックからの影響も忘れていない。しかも、先の「Feel Good Hit Of The Summer」や続く「The Lost Art Of Keeping A Secret」、中盤に登場する「Monsters In The Parasol」や「In The Fade」など、どの曲もメロディが非常にキャッチーなんですよね。演奏/アレンジ面ではグランジ的なサイケデリック感を存分に漂わせつつも、歌メロ自体はNIRVANAや……もっと初期のパンク、それこそRAMONESにも通ずるポップさを併せ持つわけですから。そりゃあ、どんどん支持を集めることになるわけですわ。

ところが、このアルバムって当時Billboard 200(アルバムチャート)にランクインしていないんですよね。インディーズからの1stアルバムですら最高122位まで上昇しているというのに。結局、彼らは続く3rdアルバム『SONGS FOR THE DEAF』(2002年)でいきなり全米17位を記録し、人気バンドの仲間入りを果たすわけです(同作ではドラムをFOO FIGHTERSのデイヴ・グロールが叩いたのも大きかったのでしょう)。

一般的なヒットこそしなかったものの、シーンに残したインパクトという点においては間違いなく大きなものがあった。20年前の夏、ロック系クラブイベントで「Feel Good Hit Of The Summer」がガンガンかかりまくっていたこと、僕は忘れません。

 


▼QUEENS OF THE STONE AGE『RATED R』
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2020年1月 5日 (日)

RAGE AGAINST THE MACHINE『RENEGADES』(2000)

2000年12月に発表されたRAGE AGAINST THE MACHINE唯一のカバーアルバム。現時点(2020年1月)におけるラストアルバムでもあります。日本盤は海外に数日先駆け、11月末にリリースされました。

RATMは同年10月、ザック・デ・ラ・ロッチャ(Vo)のバンド脱退により事実上解散状態に。今作のレコーディングは同年春に終えていたことから、アルバムは当初の予定どおり無事リリースされることとなりました。つまり、バンドが事実上存在しないタイミングでの“最後の置き土産”となったわけです。

カバー集ということで、その選曲はある種バンドのルーツと呼べるようなものばかり。選出時期も最古はボブ・ディランの「Maggie's Farm」(1965年)、最新のものでもブルース・スプリングスティーンの「The Ghost Of Tom Joad」(1995年)と選曲の幅が30年という面白いことになっています。

AFRIKA BAMBAATAAやERIC B. & RAKIM、CYPRESS HILLなどヒップホップ方面でのルーツもあれば、MC5やTHE STOOGESといったパンクのオリジンたち、MINOR THREATなんていうハードコアでのルーツもある。そこにTHE ROLLING STONES、ディラン、スプリングスティーンというロック/フォークなどの先駆者の楽曲も名を連ねますが、これらは“プロテスト・ソング”という意味での影響が多いいのでしょう。そんな中、ニューウェイヴに属するDEVOの楽曲が含まれているのが非常に興味深いところです。

そういった多ジャンルにわたる楽曲群を、いかにもRATMらしい味付けでリフォーム&リメイクしているわけですが……これがカッコイイのなんの。カバー集と知らずに聴いたら、確実に「RATMの新しいアルバム」もしくは「RATMの未発表曲集」と勘違いしてしまうのではないでしょうか。それくらい、どの曲でもザックのラップ、トム・モレロ(G)やリズム隊の主張がハンパないんです。

アレンジ力という点においても、オープニングの「Microphone Fiend」(原曲:ERIC B. & RAKIM)から完全にオリジナルなものだし、原曲の雰囲気を最大限に生かした「Kick Out The Jams」(原曲:MC5)や「Down On The Street」(原曲:THE STOOGES)みたいにストレートな楽曲もある。すでにライブではおなじみだったスプリングスティーンの「The Ghost Of Tom Joad」なんて、ある意味別の曲ですからね。さらに、ストーンズの名曲「Street Fighting Man」でのタガの外れ方や、原曲は疾走感が強い「Beautiful World」(原曲:DEVO)をシンプル&スローなバラードに変えてしまうアレンジ力はさすがの一言。特に後者では、あのザックが朗々と“歌って”いるのですから。いろんな意味で驚きと新鮮さが感じられる1枚です。

SpotifyやApple Musicではこれらの原曲も手軽に聴くことができるので(アルバムリリース当時は、それぞれ探すのが面倒だったんだよなあ。笑)、こちらで作成したプレイリストを参考にしてみてください。ね、聴き比べると面白いでしょ?

ストリーミング版ではカットされていますが、CDですとこの12曲のあとに「Kick Out The Jams」と「How I Could Just Kill A Man」のライブテイクが追加されていますが、これらはのちにリリースされたライブアルバム『LIVE AT THE GRAND OLYMPIC AUDIORIUM』(2003年)にも収録されているので、気になる方はこちらもチェックしてみてはどうでしょう。

 


▼RAGE AGAINST THE MACHINE『RENEGADES』
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2020年1月 4日 (土)

SYSTEM OF A DOWN『HYPNOTIZE』(2005)

2005年11月に発表された、SYSTEM OF A DOWNの5thアルバムにして2020年1月4日時点での最新作。って、リリースからもう14年も経つんだ。びっくりだね(笑)。

本作は、2005年春に発売された4thアルバム『MEZMERIZE』との連作となっており、殺傷力や重量感が強かった前作と比較すると若干落ち着いた雰囲気で、メロディアスさやセンチメンタリズムが前面に打ち出されている印象を受けます。

とはいっても、アルバム冒頭から「Attack」や「Dreaming」といったファストチューンが連発されるので、一聴するとそういう印象は受けないかもしれません。だけど、そのあとには「Kill Rock 'N Roll」や「Hypnotize」といった楽曲が続くのですから……アルバムトータルで、もしくは2作品を通して聴くことによって、そういったセンチメンタリズムが終盤に進むにつれて強まっていくことが実感できると思います。

「Stealing Society」や「Tentative」あたりには、初期の彼らが持ち備えていた変態チックなコード感も含まれていますし、中でも「U-Fig」での歌い回しやフレージングは完全にSOADならではのオリジナリティに満ち溢れている。どう考えても真似できないよね?っていう緩急に富んだ技の応酬に、ただ聴いているだけのこちら側はあんぐりと開いた口が閉じないまんま。

けど、変態度や中毒性という点においては、実は彼らの作品中もっとも抑え気味な1枚でもあると思うのです。つまり、毒は適度に散りばめられているけど、その毒が突出することもない。とてもバランス感に優れた1枚と捉えることができるのではないでしょうか。そういった点から、本作を「『MEZMERIZE』よりもインパクトが薄い」と評することもできるかもしれません。しかし、あくまで“2枚でひとつの作品”であることを謳っているわけですから、前半パート(『MEZMERIZE』)に過激さや即効性の高さを詰め込んだのだとしたら、後半パート(『HYPNOTIZE』)では何度か噛みしめることでより味が染みわたるディープさを表現したかった……そう受け取ることはできないでしょうか。

だからこそ、この『HYPNOTIZE』はアルバム後半、「Holy Mountains」以降こそが真髄なのだと断言したい。何気にアレンジの奥深さも、歌メロの美味さもどんどん強まっていくんですから。特にラスト2曲……「Lonely Day」「Soldier Side」の美しさは、SOADのキャリア中最高峰と断言したいです。その「Soldier Side」で静かなエンディングを迎えると……そのまま『MEZMERIZE』のオープニングトラック「Soldier Side - Intro」へと続く、ループする構成になるわけです。これこそが彼らのやりたかったことであり、“2枚でひとつの作品”が意味するものだと。『HYPNOTIZE』をじっくり味わったあとに、再び『MEZMERIZE』へと戻ることで、実は2作がメロディの節回しやアレンジ面でもつながっていることがより深く理解できるはずです。

こんなすごい2作品を世に送り出したSOADは、本作リリース後の2006年5月に行われたライブをもって活動休止。2011年の活動再開まで5年待たされることになります。しかし、その後も定期的にツアーやフェス出演などライブは行なっているものの、新作リリースに関しては……ご存知のとおり。レコーディングをしている様子はInstagramなどを通じて伝わってくるのですが……今年こそはものすごい新譜の誕生に期待したいところです(ってことをここ数年、決まってこの時期に発言しているんですけどねえ……)。

 


▼SYSTEM OF A DOWN『HYPNOTIZE』
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2020年1月 3日 (金)

TMQ-WEB: 2019年の年間アクセスランキングTOP50

2019年後半から始めたアクセスランキング公開。せっかくなので、2019年前半を含めた年間アクセスを集計してみようと思い、年始の空いた時間に調べてみました。

集計期間は2019年1月1日から同年12月31日まで、内訳はトップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位50エントリーです。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日)」の表記は、更新日(記事公開日)を表しています。

 

1位:ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)(※2019年9月30日)

2位:VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)(※2017年3月24日)

3位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日)

4位:TOOL『FEAR INOCULUM』(2019)(※2019年9月13日)

5位:KISS THE FAREWELL TOUR JAPAN 2001@東京ドーム(2001年3月13日)(※2001年3月25日)

6位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日)

7位:2019年上半期総括(ベストアルバム10)(※2019年7月1日)

8位:SLAYER『REIGN IN BLOOD』(1986)(※2018年3月8日)

9位:NIRVANA『NEVERMIND』(1991)(※2017年8月14日)

10位:「#平成の30枚」(※22019年3月12日)

 

11位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN』(1984)(※2017年3月2日)

12位:ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』(2017)(※2018年4月12日)

13位:RED HOT CHILI PEPPERS『ONE HOT MINUTE』(1995)(※2017年7月21日)

14位:QUEEN『LIVE KILLERS』(1979)(※2018年10月24日)

15位:DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』(2019)(※2019年5月13日)

16位:UFO『WALK ON WATER』(1995)(※2017年8月10日)

17位:PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』(1994)(※2017年5月10日)

18位:浜田麻里 The 35th Anniversary Tour Gracia@日本武道館(2019年4月19日)(※2019年4月22日)

19位:VOIVOD『THE WAKE』(2018)(※2018年12月9日)

20位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)(※2018年5月16日)

 

21位:BLACK VEIL BRIDES『VALE』(2018)(※2018年2月4日)

22位:JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』(1992)(※2017年4月10日)

23位:BUCKCHERRY『WARPAINT』(2019)(※2019年3月8日)

24位:IHSAHN『ÁMR』(2018)(※2018年6月27日)

25位:ALTER BRIDGE『THE LAST HERO』(2016)(※2017年3月6日)

26位:PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION(1996 / 2016)(※2016年12月24日)

27位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日)

28位:GUNS N' ROSES『USE YOUR ILLUSION I & II: WORLD TOUR -1992 IN TOKYO』(1992)/『WELCOME TO THE VIDEOS』(1998)(※2005年4月19日)

29位:POISON『NATIVE TONGUE』(※2017年6月22日)

30位:MR. BIG『HEY MAN』(1996)(※2017年5月29日)

 

31位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)(※2019年10月9日)

32位:MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)(※2019年9月11日)

33位:THE CULT『ELECTRIC』(1987)(※2017年9月22日)

34位:WHITESNAKE『WHITESNAKE (1987)』(1987)(※2017年2月3日)

35位:CINDERELLA『LONG COLD WINTER』(1988)(※2015年4月29日)

36位:EXTREME『WAITING FOR THE PUNCHLINE』(1995)(※2018年4月20日)

37位:11月24日、エリック・カーを偲んで。(※2005年11月25日)

38位:KORN『ISSUES』(1999)(※2019年1月26日)

39位:SKID ROW『SKID ROW (30TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION)』(2019)(※2019年2月1日)

40位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日)

 

41位:MOTLEY CRUE『TOO FAST FOR LOVE』(1981 / 1982)(※2018年3月11日)

42位:PRINCE『BATMAN』(1989)(※2019年2月13日)

43位:元METAL CHURCHのデヴィッド・ウェイン、死去。(※2005年5月13日)

44位:EUROPE『WALK THE EARTH』(2017)(※2017年10月28日)

45位:電気グルーヴ『DRAGON』(1994)(※2004年12月15日)

46位:ANDY TAYLOR『THUNDER』(1987)(※2017年9月28日)

47位:SALEMS LOTT『MASK OF MORALITY』(2018)(※2018年8月9日)

48位:KORN『KORN』(1994)(※2017年12月18日)

49位:WHITESNAKE『FLESH & BLOOD』(2019)(※2019年5月11日)

50位:RAMMSTEIN『REISE, REISE』(2005)(※2005年10月14日)

 

以上になります。意外と2019年のエントリーが多くて驚きました(50エントリー中14本)。本サイトって過去のエントリーが検索でひっかかってたどり着くケースが多いと思うんです。もともとそういう(ジャンル的にかなり偏った)アーカイヴ性を重視したいと考えて作ったサイトだったので、20年以上経ってそういう役割が多少は果たせているのかなと思うと、ちょっとうれしかったりもします。

やっぱりアクセス上位にカウントされたエントリーって、毎日更新を始めた2017年以降のものが多いんですよね。それだけいろいろ書いてきたっていうの証明でもあるんでしょうけど……反面「まだまだ足りたいな」と思うこともあります。こればかりは一生かかっても網羅できないでしょうけど、体力・精神力ともに可能な限りは更新を続けていけたらと思います。

EMINEM『THE SLIM SHADY LP』(1999)

1999年2月にリリースされたエミネムのメジャー1stアルバム(通算2作目)。日本盤は同年4月に発売。

リードシングル「My Name Is」が全米36位/全英2位というヒットを記録し、アルバム自体も全米2位/全英10位まで到達。アメリカのみで400万枚を超える大ヒット作となりました。

のちのエミネムのアルバム、特に次作『THE MARSHALL MATHERS LP』(2000年)以降って負の感情や怒りを前面に打ち出した作風という印象が強く、僕のようなヒップホップ・ライト層にはアルバムによっては1枚聴くのにかなり体力を使うものも少なくありません。そんな中で、本作『THE SLIM SHADY LP』って意外と気軽に聴ける1枚なんですよね。

もちろん本作にも怒りの要素は含まれているし、全体的にも(ポジティブというよりは)ネガティブな要素が強めです。が、オープニングを飾る「My Name Is」のシニカルさ、その後続いていく“どこか哀愁味の漂う”楽曲群と、中二(というよりも厨二かな)感覚で楽しめる世界観がとても気持ちよく響く。だから、僕のような「ヒップホップをメインで聴く」というよりは「ラップメタルの延長で触れる」リスナーにも優しいのかもしれません。

最初の出会いは、1999年春にクラブイベントで耳にした「My Name Is」でした。ラップメタルやBEASTIE BOYSなどの合間に流れたこの曲に一気に惹きつけられた自分は、その後アルバムを購入するわけです。

エミネムのラップが技術的に非常に優れていることは、素人の僕にも「My Name Is」1曲を聴いただけで一“耳”瞭然でした。アルバムを通しても強弱の効いたすごく聴きやすいフロウはすごく耳に残ったし、何よりも聴いていて気持ちいい。そのバックで鳴るシンプルなトラックも、適度にメロウで低音の効いた気持ち良いものが多く、そりゃ聴きやすいわけだと納得するわけです。

特にクラブのような爆音で、しかも低音を強調した環境でこのアルバムの楽曲を聴くと、改めてそのすごさが理解できるわけです。そういう意味では、CDやネットからではなく、クラブという特殊な環境でエミネムに出会ったことが自分にとって非常に大きかったのかもしれません。そうじゃなければ、毎回アルバムを楽しみにしていたり、初来日となった2001年のフジロックを心待ちにしませんから。

最近、仕事の関係で改めてこのへんのヒップホップをよく聴くのですが、リリースから20年経った今聴いても本当に素晴らしい、後世に伝えたい傑作のひとつです。

 


▼EMINEM『THE SLIM SHADY LP』
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2020年1月 2日 (木)

banned songs of US radio after 9.11

つい先日、今年の9月11日に配信されたKERRNG!の記事「HERE ARE THE 164 SONGS THAT WERE BANNED FROM AMERICAN RADIO AFTER 9/11」がTwitterで流れてきたんですね。このリスト自体、これまでも完全版・不完全版問わずさまざまな形で流出していたと思いますし、実際僕も学生時代に湾岸戦争をテーマに「表現の自由」や「自主規制」について卒論を書いていたので、常に気になってチェックしていました。今回の記事も特別目新しさはなかったのですが、急にふと「そういえば、卒論書いてた90年代前半は実際にそういう曲を全部聴くのに相当苦労したけど、今ってストリーミングサービスがあるし、もしかしてこのリストの曲全部聴けるんじゃないかな……」と思ったんですね。

で、実際にプレイリストを作ってみようと思い、検索を開始……始めたのが明け方だったのですが、気づいたら1、2時間でプレイリスト完成。記事中に登場する曲名やアーティスト名に多少の間違いがあったので、ネット上で公開されている同様の記事(結局Wikipediaが一番便利でした)とも照らし合わせつつ、完全なるプレイリストを完成させました。

さすがに全曲ありました。すごいですね、Spotify(今回はApple Music版は作成せず。だって2つも作るの時間かかるし)。RAGE AGAINST THE MACHINEのみ全曲放送禁止だったので、本来なら彼らの楽曲はすべて入れるべきなんでしょうけど、それだと埒が明かないので各アルバムから主要ナンバー1曲ずつ、計4曲を入れることにしました。そこに「Knockin' On Heaven's Door」のみボブ・ディラン版とGUNS N' ROSES版の2曲を用意して、全168曲/11時間14分というアホほど長いプレイリストが完成したわけです(笑)。

一応、アーティスト名アルファベット順、複数の曲がリストにあるアーティストに関しては曲名もアルファベット順で並べてあります。なので、AC/DCみたいにいきなり7曲も続いてしまうこともありますが、シャッフル再生すると普通にラジオ感覚で楽しめるのではないでしょうか……しかも、いい曲ばかりですし。

こんなご時世だからこそ、こういった楽曲を手軽に楽しめる自由をかみしめつつ、今の生活に感謝したいと思います。またいつ、これらの楽曲やほかのヒット曲が放送禁止になるか、本当にわかりませんしね(しかも、あの当時よりも状況的には最悪ですから)。

 

METHODS OF MAYHEM『METHODS OF MAYHEM』(1999)

1999年12月にリリースされたMETHODS OF MAYHEMの1stアルバム。

METHODS OF MAYHEMはMOTLEY CRUEトミー・リー(Dr)が1999年春、バンド脱退後にスタートさせたプロジェクト。トミーはドラムのみならず、ボーカルやギターなども披露しており、現BON JOVIのフィル・X(G)やNINE INCH NAILSとの仕事で知られるダニー・ローナー(G)、元JANE'S ADDICTIONのクリス・チェイニー(B)などそうそうたるメンバーがレコーディングに参加しております。

当時のトミーの趣味が全面的に反映された本作は、いわゆるラップメタルをヒップホップ側により近づけた内容となっており、当時は「こんなことがやりたいがためにモトリーを辞めたのかよ!」と総スカンを食らったことをよく覚えております。けど、もともと時代の流れを読むのがうまかったトミーのこと、当時の主流を考えれば彼がこういったサウンドに惹かれていくのは至極自然な流れ。それに、この頃のトミーは私生活での離婚やら何やらでかなり荒れていましたし、派手にロックスターを気取るよりは身内と一緒にミニマムな音楽を作っていくことで癒されたのかもしれませんしね。

プロデュースを手がけたのはトミー自身と、直近のモトリーのアルバム『GENERATION SWINE』(1997年)にも携わったスコット・ハンフリー(ロブ・ゾンビPOWERMAN 5000ANDREW W.K.など)。スコットはその後もMETHODS OF MAYHEMの2作目『A PUBLIC DISSERVICE ANNOUNCEMENT』(2010年)やトミーのソロアルバム『NEVER A DULL MOMENT』(2011年)、『TOMMYLAND: THE RIDE』(2005年)にも関わっているので、モトリーにスコットを連れてきたのってトミーだったのかもしれませんね。

1999年というと、LIMP BIZKITの2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)が全米1位を獲得し、RAGE AGAINST THE MACHINEが待望のニューアルバム『THE BATTLE OF LOS ANGELES』(1999年)をドロップ、さらにはエミネム「My Name Is」および『THE SLIM SHADY LP』(1999年)でいきなり大ブレイクを果たしたタイミング。ラップ(およびラップメタル)やヒップホップがシーンのど真ん中にあった時代であり、80年代に一斉を風靡したHR/HMシーンはニューメタルに取って代わられてしまっていた時期。そりゃあモトリーやっているよりもヒップホップやったほうが楽しいわな。

今聴くと若干古臭く感じるテイストですが、だからといって当時もこれが最新かといったらまったくそんなことはなく(苦笑)。けど、素直にカッコいいとも思えたんですよ。トミーのボーカルも古典的なHR/HMよりはモダンなラウドロックのほうが似合っているし。そういった意味では、事情に己のことがわかっていたのかもしれません。

本作はゲストも豪華でして、フレッド・ダースト(LIMP BIZKIT)やキッド・ロック、スヌープ・ドッグ、リル・キム、ジョージ・クリントン、マイク・マスター・マイク、スコット・カークランド(THE CRYSTAL METHOD)など、“いかにも”なメンツが名を連ねております。そんな中でも、フレッド、リル・キム、ジョージ・クリントンがボーカルでフィーチャーされた「Get Naked」は今聴いても本当にゾクゾクする。たまらんですね。

どうやらトミー、昨年のモトリー復活にあわせてなのかMETHODS OF MAYHEMのほうも復活させ、この春には10年ぶりとなる3rdアルバムをリリース予定なんだとか。オルタナ・メタル側にすり寄った前作『A PUBLIC DISSERVICE ANNOUNCEMENT』を経て一体どんなサウンドを聴かせてくれるのか、楽しみなような怖いような……。

 


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2020年1月 1日 (水)

PRIMUS『FRIZZLE FRY』(1990)

1990年2月にリリースされた、PRIMUSの1stオリジナルアルバム。日本盤未発売。

前年秋にライブアルバム『SUCK ON THIS』(1989年)をインディーズのCaroline Recordsから発表したPRIMUSでしたが、そこから間髪入れずにこのスタジオアルバムを発表。ライブアルバムにも含まれていた代表曲「John The Fisherman」をはじめ「Groundhog's Day」「Pudding Time」「Harold Of The Rocks」「Frizzle Fry」の計5曲が今作で再レコーディングされています。

そう知ると「なんだよ、ライブ盤の焼き直しかよ」と思われるかもしれませんが、このスタジオアルバム自体が全13曲収録と、CD時代到来に合わせるかのようにボリューミーな内容だったこともあり、すでに『SUCK ON THIS』でPRIMUSに触れていたリスナーにとってもうれしい構成でした。

1989〜90年というと、それ以前の王道HR/HMからオルタナティヴロック、ヒップホップへとジョジョへとシフトをし始めた最初のタイミング。ヘヴィなサウンドを信条とするバンドたちの中からも、HR/HMの枠では括り切れない新世代が次々と登場し始めます。

PRIMUS自体は80年代半ばに結成されており、1990年前後にポッと出というわけではないのですが、それでも時代に呼応した“一筋縄ではいかない”スタイルはその後の次世代を予見していたと言えるでしょう。

HR/HMのカラーも残しつつ(というよりも、ハードコアなどの色合いが強いのかな)、ジャズやファンク、ヒップホップ、オルタナなどさまざまなジャンルがひとまとめにミックスされ、それをギター、ベース、ドラムというシンプルな構成で味付けしていく。跳ね気味にリズムを刻むドラムと時にアグレッシヴに、時に変態的なフレージングで耳を惹きつけるギター、そしてスラップやコード弾きを多用しながら音に厚みと彩りを加えていくベース……そこにヒップホップ以降の歌唱法を取り入れたボーカルは、それまで聴いてきたどんなロックバンドとも異なるものでした。

だけど、周りを見渡すとRAD HOT CHILI PEPPERSFAITH NO MOREJANE'S ADDICTIONのような新世代が次々と台頭し始めている。世間は彼らを従来の枠で括ろうとするも、聴き手側には違和感しか残らない……こういった複数のジャンルが交差する独特のスタイルを前に、いつしかメディアは“クロスオーバー”なる新ジャンルを提唱し始めます。クロスオーバーに括られるバンドは、何もヒップホップとメタルをミックスしたものだけではない。中にはメタルとハードコアパンクをミックスしたものをクロスオーバーと呼ぶこともあった。結局、そういう曖昧さが災いして、ここ日本ではあまり定着しなかった呼び名/ジャンルだったように感じています。

レッチリやFNMはその後シングルヒットを飛ばすことによってメジャー化していきましたが、PRIMUSもシングルヒットこそなかったものの、メジャー移籍後はアルバムも全米TOP10入りするほどの人気を博していました。が、日本では前の2組ほど盛り上がった印象はなく、知る人ぞ知るマニアックな存在というイメージを強めていきました。

そんな敷居の高さを残す彼ら。確かに変態的なプレイとアレンジで聴く者を翻弄させますが、よくよく聴けばどの曲も非常にポップでキャッチー。リリースから30年経った今聴けば、実に現代的なことをやっていたんだ、先走りすぎていたんだと実感するはずです。

個人的オススメは最初期ベスト的内容のライブアルバムですが、インディーズ制作ながらも完成度の高いこの1stアルバムを起点にPRIMUSの歴史をたどっていくのも悪くないと思いますよ? ストリーミングサービスでは90年代の代表作はすべて聴けるので、ぜひ正月休みのこのタイミングにまとめ聴きしてみることをオススメします!

 


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