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2020年1月15日 (水)

PINK FLOYD『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』(1987)

1987年9月にリリースされたPINK FLOYDの13thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年10月に発売されています。って、今思えばRUSH『HOLD YOUR FIRE』(1987年)とほぼ同タイミングにリリースされたんですね。それで同じような印象を持ったのかしら。

自分が洋楽ロックを聴き始めて、最初に接したPINK FLOYDの新譜がこれでした。当時高校1年生だった僕は「これがPINK FLOYDか……」と胸をワクワクさせながら、本作と向き合った記憶があります。なにせ、『狂気(THE DARK SIDE OF THE MOON)』(1973年)や『THE WALL』(1979年)といった名作に触れるのは、そのもっとあとになってからですからね。

すでにMTVや『ベストヒットUSA』といった洋楽番組でリードトラック「Learning To Fly」のMVを目にしていたので、そのサウンドがどんな感じかは理解していました。この1曲を聴いた限りでは「あれ、プログレっていうかもっと小難しいと思ってた。めっちゃソフトじゃん」という感想。今思えば、完全にAORと同じ感覚でした。

で、アルバムをレンタルして聴くわけですが(当時、アナログ盤も発売されていたと思いますが、ここはいい音で……という短絡的な理由でCDを借りることに)……「これ、プログレ?」と疑問を感じるわけです。ロジャー・ウォーターズがいない、デイヴ・ギルモア主導だとかCDの解説にも書いてあったと思いますが、ほぼ初心者の僕からすればそういった要素は二の次なわけで、ここで鳴らされている音楽こそがすべて。「なんだか16歳の自分には難しいな……」と思ったのでしょうね。カセットテープにダビングして2〜3回聴いて、放ったらかしにしたと思います。

結局、90年代に入って上京して、自分のお金でCDを自由に購入できるようになってから再びこのアルバムと向き合い、その魅力に気づいたわけです。

HR/HMがメインストリームに躍り出た時代だったからか、質感的には重厚さこそ感じられるものの、本作はプログレッシヴロックというよりはAOR的要素の強い1枚だと思います。要所要所に短尺のインタールードを挟むことでコンセプチュアルな雰囲気を醸し出していますが、ストーリーとしてのトータル性はあまり感じられない。“コンセプチュアルな雰囲気”、これこそがすべての1枚かなと。

歌詞やタイトル(特にアナログM-1〜5のA面)においては、ロジャーなきあと新たに手がけることになった元SLAPP HAPPYのアンソニー・ムーアの手腕によるものが大きいと思います。ニック・メイソン(Dr)&リチャード・ライト(Key)も制作に貢献しているものの、基本的にはギルモアがPINK FLOYDを立て直そうとほぼソロ体制で作り上げた、そんな1枚かもしれません。

だからなのか、『鬱』という邦題のわりにはピースフルでポジティブな空気に満ちている気がします。サウンドのファット感はハードロックやAORが主流だった80年代半ばならではといえばそれまでですが、かなり聴きやすいもので、先鋭的だったプログレの香りは薄いかも。そんな中、デイヴのギターはかなり魅力的なフレーズ/プレイ満載で、「On The Turning Away」や「Sorrow」といった楽曲での“地味なのに印象に残る味わい深い”フレージングはさすがの一言。まあ、そこには高校生の頃はまったく耳が行きませんでしたが(派手さしか求めていなかったので。笑)。

ちなみに今作、全英/全米3位を記録。全米だけでも400万枚以上を売り上げる大ヒット作となり、バンドの健在ぶりをアピールすることに成功しています。よかったね、ギルモアさん。

時代に呼応した“アリーナロック化したPINK FLOYD”と言ってしまえばそれまでですが、これはこれで良いと思うんです。これがあったから、末期の傑作『THE DIVISION BELL』(1994年)が生まれたわけですから。

 


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