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2020年2月

2020年2月29日 (土)

2019年11月〜12月のアクセスランキング

ここでは2019年11月1日から12月31日までの各エントリーへのアクセス数から、上位30エントリーを紹介します。

内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いたトップ30。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2019年9〜10月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)(※2019年9月30日更新/→1位)

2位:TOOL『FEAR INOCULUM』(2019)(※2019年9月13日更新/→2位)

3位:KISS THE FAREWELL TOUR JAPAN 2001@東京ドーム(2001年3月13日)(※2001年3月25日更新/↑20位)

4位:CRY OF LOVE『BROTHER』(1993)(※2019年6月19日更新/Re)

5位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)(※2019年10月9日更新/↑8位)

6位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日更新/↓4位)

7位:11月24日、エリック・カーを偲んで。(※2005年11月25日更新/Re)

8位:NIRVANA『NEVERMIND』(1991)(※2017年8月14日更新/↑10位)

9位:SLAYER『REIGN IN BLOOD』(1986)(※2018年3月8日更新/↓6位)

10位:MICHAEL MONROE『ONE MAN GANG』(2019)(※2019年11月3日更新/NEW!)

 

11位:VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)(※2017年3月24日更新/↑13位)

12位:MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』(1998 / 2009)(※2019年11月22日更新/NEW!)

13位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新/↓11位)

14位:MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)(※2019年9月11日更新/↓3位)

15位:THE CULT『ELECTRIC』(1987)(※2017年9月22日更新/↑19位)

16位:ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』(2017)(※2018年4月12日更新/↓5位)

17位:WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)(※2018年5月16日更新/↓7位)

18位:DONNIE VIE『BEAUTIFUL THINGS』(2019)(※2019年5月13日更新/↑25位)

19位:IN FLAMES『COLONY』(1999)(※2019年11月5日更新/NEW!)

20位:BLOOD INCANTATION『HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE』(2019)(※2019年12月1日更新/NEW!)

 

21位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓15位)

21位:BLACK VEIL BRIDES『VALE』(2018)(※2018年2月4日更新/Re)

23位:UGLY KID JOE『AMERICA'S LEAST WANTED』(1992)(※2019年11月8日更新/NEW!)

24位:IRON MAIDEN『POWERSLAVE』(1984)(※2019年11月1日更新/NEW!)

25位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/Re)

25位:UFO『WALK ON WATER』(1995)(※2017年8月10日更新/↓14位)

25位:FLYING COLORS『THIRD DEGREE』(2019)(※2019年12月12日更新/NEW!)

28位:THE OFFSPRING『AMERICANA』(1998)(※2018年9月7日更新/Re)

29位:THE WiLDHEARTS『DIAGNOSIS』(2019)(※2019年10月8日更新/↓25位)

29位:WHITESNAKE『FLESH & BLOOD』(2019)(※2019年5月11日更新/Re)

29位:U2『THE UNFORGETTABLE FIRE』(1984)(※2019年6月25日更新/Re)

29位:PRETTY MAIDS『UNDRESS YOUR MADNESS』(2019)(※2019年11月19日更新/NEW!)

29位:2019年総括:④楽曲編&印象的なライブ編(※2019年12月31日更新/NEW!)

29位:PRINCE『BATMAN』(1989)(※2019年2月13日更新/↓9位)

2020年2月のお仕事

2020年2月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※2月26日更新)

 

[WEB] 2月26日、「リアルサウンド」にてfripSide八木沼悟志インタビューfripSide 八木沼悟志が語る、『とある科学の超電磁砲T』OP曲で挑戦した“原点回帰”が公開されました。

[紙] 2月25日発売「GIRLS CONTINUE」Vol.1にて、内田雄馬1万字ロングインタビューと全楽曲レビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月18日、「ENTAME next」にて前島亜美インタビュー『バンドリ!』声優としてブレイク 前島亜美「キャラクターの人生を背負っているから2倍感動できる」が公開されました。

[WEB] 2月17日、「Billboard Japan」にて和楽器バンドのライブ評和楽器バンド、エヴァネッセンスのエイミーをゲストに迎え一夜限りのコラボ オフィシャルレポート到着が公開されました。同様の記事はBARKSSPICECDジャーナルなどにも掲載中。

[WEB] 2月12日、「リアルサウンド」にてLittle Glee MonsterインタビューLittle Glee Monsterが語る、“輪”を広げるための新しい挑戦「今年もリトグリを好きって人たちをもっと増やしたい」が公開されました。

[WEB] 2月10日、「リアルサウンド」にてONE OK ROCKライブ評ONE OK ROCK、親密な空気感とアグレッシブなパフォーマンス 『Eye of the Storm』ツアー最終公演を徹底レポートが公開されました。

[WEB] 2月9日、「リアルサウンド」にて氷川きよしライブ評氷川きよしはシンガーとして新たな地平へと向かうーー”自分らしく”踏み出した21年目のコンサートツアーレポが公開されました。

[WEB] 2月8日、「NET ViVi」にて乃木坂46遠藤さくらインタビュー齋藤飛鳥とあだ名で呼び合う仲!乃木坂46・遠藤さくらが経験した濃厚な出来事が公開されました。

[WEB] 2月6日、ソニー・ミュージックレーベルズのイチオシ新人コンベンションイベントに個性あふれる有望株が勢揃い!が公開されました。

[紙] 2月4日発売「日経エンタテインメント!」2020年3月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 2月2日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載LOVEBITES、Sons Of Apollo、BMTH……2020年もメタル/ラウドシーンの盛り上がりを期待させる新作8選が公開されました。

[WEB] 2月1日、「Rolling Stone Japan」公式サイトにてBABYMETALライブレポートBABYMETAL、光と闇を体現した幕張ライブ完全レポが公開されました。

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また、1月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2001号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』(2016)

2016年4月末にリリースされたDIZZY MIZZ LIZZYの3rdアルバム。日本盤は海外よりも2週間先行で発表されています。

1996年5月の2ndアルバム『ROTATOR』を経て、1998年にはバンド解散を発表したDIZZY MIZZ LIZZY。以降はフロントマンのティム・クリステンセン(Vo, G)がソロで活動を続けておりましたが、2009〜2010年の期間限定で再結成を遂げ、再来日公演も実現しております。そして、2014年には期間を設けない本格的な再結成を発表。パーマネントな活動再開を遂げたことで、この新作制作も実現したわけです。

前作『ROTATOR』からまるまる20年を経て届けられた新作ですが、そんな長期間のインターバルがあったことを感じさせないくらいに、本作には『ROTATOR』からの連続性を感じさせるテイストが含まれています。と同時に、ティムがソロ活動で経験した音楽的成長もしっかり落とし込まれており、単なる“焼き直し”で終わらないバンドとしての進化も感じられる1枚に仕上がっています。

同じメンバー、同じソングライターが再びDIZZY MIZZ LIZZY名義で新作を作るわけですから、そこには1stアルバム『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994年)や続く『ROTATOR』のテイストが散りばめられているのは当然の結果。むしろ、ティムがこのシンプルなバンド編成でテクニカルかつハードなロックを奏でれば、それは自然とDIZZY MIZZ LIZZYの音になる。ここに関しては、最初の再結成で過去の楽曲を何度も演奏しているので、自然とそういった身に付いたものが表出した結果と言えるでしょう。「そう、DIZZY MIZZ LIZZYってこうだよね」と。

そんな彼ららしい要素は、冒頭の「Forward In Reverse」や「Terrified In Paradise」といったパンチの効いた楽曲から感じ取ることができるはず。ただ、もちろんこれらは過去の焼き直しではなく、『ROTATOR』から進化・成長したDIZZY MIZZ LIZZYの姿も浮き彫りにしている。そして、「Something So Familiar」のような穏やかな楽曲も過去のDIZZY MIZZ LIZZYにありそうと言えば確かにそれっぽいものの、このへんはティムのソロ活動の延長線上にある楽曲なのかな。そういった経験がしっかりバンドにも持ち込まれたこの曲は、個人的に「ティムにとってDIZZY MIZZ LIZZYとソロ活動は地続き」という事実を再認識するよいきっかけになりました。うん、本当にいい曲。

「Love At Second Sight」や「Made To Believe」のような“らしい”アンサンブルの楽曲が中盤に置かれているのも、興味深いポイントかな。前半で“らしさ”よりも“新しさ”を強調した楽曲を用意し(アルバムを「Phlying Pharaoh」というインスト曲から始めるあたりも、まさにそこだと思う)、中盤に過去を彷彿とさせる楽曲を並べ、アルバムの流れにワンクッション置く単尺曲「Frey」を経てヘヴィな「Mindgasm」から再び新しいDIZZY MIZZ LIZZYを提示する。この「Frey」「Mindgasm」という2つのインスト構成も、ミュージシャンとしての20年分の成長をまとめて落とし込んだような力作で、個人的にはアルバム後半のハイライトだと思っています。

そこから「Fly Above The Rader」「I Would If I Could But I Can't」とガッツのある楽曲が続き、ラストをムーディかつドラマチックな長尺曲「Say It To Me Anyway」で締めくくる。完璧なまでに“古き良き時代の、アルバムらしいアルバム”と断言できる仕上がりです。

ここまでの力作を携えて本格復活したDIZZY MIZZY LIZZY。まもなく4年ぶりの新作『ALTER ECHO』をドロップしますが、こちらも『FORWARD IN REVERSE』以上に気合いの入った“ミュージシャンズ・ミュージシャン”らしい傑作(ひと足先に聴かせてもらいました)。90年代の彼らこそベストと過去にしがみつくことを否定しませんが、だからといって今を否定するのはナンセンス。こんなに時代に合った(と同時に、時代の流れを無視した)最高な作品を無視することは、罪以外の何ものでもありません。どうか、もっといろんなところに行き届きますように。

 


▼DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』
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2020年2月28日 (金)

COUNTERPARTS『NOTHING LEFT TO LOVE』(2019)

2019年11月初頭にリリースされた、COUNTERPARTSの6thアルバム。

彼らは2007年に結成された、カナダ・オンタリオ出身の5人組メタルコア/メロディックハードコア・バンド2010年に1stアルバム『PROPHETS』をリリースして以降、コンスタントにアルバムを発表しており、日本にもすでに何度かライブで訪れた経験を持っています。フロントマンのブレンダン・マーフィー(Vo)以外のメンバーチェンジが著しいですが、昨年初期メンバーのアレックス・リ(G, Clean Vo)が2013年以来の復帰を果たしたばかりです。

本作のプロデュースを手がけたのは、この手のバンドではすでにおなじみのウィル・パットニー(KNOCKED LOOSEAFTER THE BURIALTHY ART IS MURDERなど)。程よい疾走感を備えつつも、重心の低いヘヴィサウンドを存分に楽しませてくれます。

過去の作品と比べると、その突き抜けるような疾走感は若干後退しているかもしれません。が、そのぶんメタルコア的要素が増したことで、メタル耳リスナーにはより親しみやすい内容になったと言えるでしょう。

また、いわゆるメロコア的要素も随所に垣間見え、そちら側のリスナーにも引っかかる可能性も大。そういった点では、意外と日本のラウド系リスナーが入っていきやすいテイスト/方向性の1枚かもしれません。

ボーカルはシャウト中心で、クリーンパートは意外と抑え気味。味付け程度にフッと湧いて出てくるような、その程度の比率です。そのぶん、ギターがメロディアスに“泣き”まくっているので、メロウな要素はすべてギターが背負ってくれている。まあ、この手のバンドにそこまでメロディを求めるのもアレですが。

「Cherished」や「Imprints」のように静と動の対比をうまく用いたアレンジには古き良き時代のメタルコアを思わせるものがあり、個人的にはかなりお気に入り。実はこのへんの曲がもっとも日本人の琴線に触れるものなんじゃないでしょうか(クリーンボイスももっとも良い形で活かされてますしね)。

もちろん、それ以外のアグレッシヴなナンバーもグルーヴィーなナンバーもファストナンバーも、終始気持ち良く楽しめる。全10曲、トータル32分があっという間に過ぎ去っていき、気づけばリピートしている。そんな1枚だと思います。

 


▼COUNTERPARTS『NOTHING LEFT TO LOVE』
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2020年2月27日 (木)

KNOCKED LOOSE『A DIFFERENT SHADE OF BLUE』(2019)

2019年8月にリリースされたKNOCKED LOOSEの2ndアルバム。

KNOCKED LOOSEは2013年に結成された、ケンタッキー州オールダム出身の5人組ハードコア/メタルコアバンド。シングルやEPのリリースを経て、2016年にPure Noise Recordsより1stアルバム『LAUGH TRACKS』を発表。ウィル・パットニー(THY ART IS MURDERAFTER THE BURIALPIG DESTROYERなど)をプロデューサーに迎えて制作された同作は、さまざまなメディアで高く評価され、EVERY TIME I DIEやPARKWAY DRIVE、THY ART IS MURDERなどのツアーに帯同することで知名度を広めていきました。

前作から3年ぶりとなる新作も、引き続きウィル・パットニーがプロデュースを担当。ゲストボーカルとしてEVERY TIME I DIEのキース・バックリー、DYING WISHの女性シンガー、エマ・ボスターを迎えるなど、前作以上に華やかな内容に仕上がっています。

もちろん、華やかといってもそれはゲストなどの付加要素に関してであって、そのサウンドはゴリゴリのコア。PANTERA以降のグルーヴメタルやHATEBREEDなどのハードコアからの影響を見え隠れしつつ、AT THE GATESや初期IN FLAMESなのメロディック・デスメタルやDYING FETUS、KREATOR、CRAFTなどスラム、スラッシュメタル、ブラックメタルなどからの影響を散りばめた、非常にヘヴィな1枚にまとまっています。

基本的にはミドルテンポのヘヴィかつグルーヴィーなナンバーが中心で、その若干跳ねたリズムはどこか懐かしさも感じさせます。「Trapped In The Grasp Of A Memory」や「A Serpent's Touch」など、要所要所で突進するようなハードコア的スピート感も交え、緩急に飛んだ構成で聴き手を引きつけ続けます。

ギタープレイ的にもPANTERA(ダイムバッグ・ダレル)以降という印象を受けますし、そこにここ10年のメタルコア的フレーズを取り入れて気持ち良さを追求している。ブレイクダウンも随所に登場しますし、単純に聴いていてグイグイ引き込まれます。

ボーカルに関しても、高音のキーキーボイス(リードボーカル)とグロウル(ギタリスト)を織り交ぜたものがメインで、メタルというよりはハードコア的な色合いが強いかもしれません。ちなみに、DYING WISHのエマ・ボスターは「A Serpent's Touch」に参加しているのですが、それとわかる声でいい感じで叫びまくってます。うん、嫌いじゃない(笑)。

意外とオールドスクールな要素も豊富で、いわゆるメタルコアをイメージして聴くと若干違和感を覚えるかも、逆に、昨今のメタルコアは苦手だけど90年代〜ゼロ年代前半のメタル流れのハードコアは好きというリスナーならフィットすると思います。

90年代のアンダーグラウンドシーンを席巻したエクストリーム・ミュージックの残骸をこういう形で現代に受け継ぎ、新たな形に構築したKNOCKED LOOSEの新作。昨年、各誌のベストアルバムにも選出されたようですし、日本にも昨年夏とこの1〜2月と短期間に2度も来日しており、その勢力を日本でもどんどん高めているところです。いい傾向ですね。

 


▼KNOCKED LOOSE『A DIFFERENT SHADE OF BLUE』
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2020年2月26日 (水)

SUICIDE SILENCE『BECOME THE HUNTER』(2020)

SUICIDE SILENCEが2020年2月中旬に発表した6thアルバム。

ミッチ・ラッカー(Vo)の急逝後、ALL SHALL PERISHのエディ・ヘルミダが加入して奇跡の復活作『YOU CAN'T STOP ME』(2014年)で全米16位という過去最高記録を打ち出したSUICIDE SILENCE。しかし、続く5thアルバム『SUICIDE SILENCE』(2017年)ではクリーン・ボーカル中心のメロウな作風が賛否(というよりも、主に否の声)を呼び起こし、最高163位と大きく失速してしまいます。

あれから3年。ようやく届けられた新作は、前作でのロス・ロビンソンからスティーヴ・エヴェッツ(EVERY TIME I DIE、THE DILLINGER ESCAPE PLANなど)をプロデューサーに、ジョシュ・ウィルバー(LAMB OF GODGOJIRAなど)をミックスエンジニアに迎えて制作。再びデスコア路線へと路線を戻した、アグレッシヴな1枚に仕上げられています。

オープニングのインスト「Meltdown」にワクワクしつつ、続く「Two Steps」でのスクリーム&グロウルに「そうだよ、これこれ!」と膝を叩くこと連発。ミドルテンポの中にブラストビートなどを織り込むことで、疾走感はそこまで強くないもののなぜか高揚感だけは増し続けるという不思議な現象を起こし続けてくれます。

とにかく、グルーヴィーなドラミングとそれにシンクロするギターリフのザクザク感が気持ち良いナンバーが終始続く1枚。アグレッションに関しては前作の比ではないですし、個人的には前々作『YOU CAN'T STOP ME』よりも好きな作風かもしれません(『YOU CAN’T STOP ME』は新ボーカリストを迎えた様子見の1枚という趣もありましたしね)。

エディのボーカルワークも本領発揮と言わんばかりに、首尾一貫して叫びまくり。個人的にALL SHALL PERISHのアルバム『THIS IS WHERE IT ENDS』(2011年)が大好きで当時よく聴きまくった1枚だったので、なんとなくあの頃のデスコアが戻ってきてくれたような錯覚に陥り、うれしくてたまりません。

しかし、ALL SHALL PERISHもそうですし、過去のSUICIDE SILENCE(ミッチ時代)と比べるとスピード感に少々物足りなさを感じるかもしれません。その突進するファストさこそが醍醐味と思っていた人には、本作も前作同様に「捨て作」になってしまうんでしょうか……しかし、このグルーヴ感こそが2020年的と解釈すれば、本作は現在のシーンにおいてかなり高品質な1枚に入るのではないでしょうか。

現時点では『THE BLACK CROWN』(2012年)など過去の名盤と肩を並べたとは言い難いかもしれない。けど、これはこれで間違いなく今の感覚にフィットしている。またも賛否を呼びそうな内容ですが、個人的には(特に今回は)高く評価したいと思います。

 


▼SUICIDE SILENCE『BECOME THE HUNTER』
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2020年2月25日 (火)

DIO『STRANGE HIGHWAYS』(1993)

1993年10月にヨーロッパと日本、翌1994年1月に北米でリリースされたDIOの6thアルバム。

当時18歳だったローワン・ロバートソン(G)を新ギタリストに迎え制作した『LOCK UP THE WOLVES』(1990年)がセールス的に失敗。その後BLACK SABBATHへと再加入し、『DEHUMANIZER』(1992年)という当時問題作扱いされた異色ヘヴィ作を制作、ツアーも行ったもののアルバム1枚で再脱退。自身のメインバンドDIOを再始動させます。

新たなギタリストとして迎えられのは、WWIIIといったバンドで活動していたトレイシー・Gという人物。DIO加入により一躍名を挙げた人物です。そのほかのメンバーは、BLACK SABBATHからそのままスライドしてきたヴィニー・アピス(Dr)と、DOKKEN解散後にMcAULEY SCHENKER GROUPやWAR & PEACEといったバンドで活動していたジェフ・ピルソン(B)と名うてのプレイヤーばかりで、マイク・フレイザー(AC/DCAEROSMITHTHUNDERなど)をプロデューサーに迎え満を辞して完成したのがこの『STRANGE HIGHWAYS』という問題作(笑)でした。

ディオ・サバスがモダンヘヴィネス寄りになったことで、当時は誰もが「こんなの、僕たちの求めるディオ・サバスじゃない!」と否定的な意見を寄せたと記憶しています。実際、僕自身も「『HEAVEN AND HELL』はどこに?」と完全否定したものです(その後、完全肯定派に鞍替えしましたが。笑)。『DEHUMANIZER』という「やるべきではなかった」アルバムを経て、古巣に戻ったディオが再び様式美の世界へと舞い戻った……と、本作を手に取ったときは安心したものです。

けど、オープニングを飾る「Jesus, Mary & The Holy Ghost」の冒頭数分でCD再生を止めてしまう自分……「なんだ、このヘヴィロック版KING CRIMSONは!?」と動揺を隠せず、しばらく再生ボタンを押すことができずにいました。

……モダンヘヴィネス化の戦犯はお前だったか、ディオよ(苦笑)。

CDを購入したものの、しばらくはフルで聴くことがなかったこのアルバム。1曲1曲が重すぎるし難解だし、なによりも通して聴くには非常に体力を要するんです。例えば、METALLICAブラックアルバムMOTLEY CRUEセルフタイトルアルバムも最初は同じように「通して聴くのに体力を要する」アルバムでした。しかし、慣れるとそのポップさや要所要所に用意されたフックが気持ちよく、自然とリピートできるようになっていたんです。ところが、このDIOの『STRANGE HIGHWAYS』に関してはいつまで経ってもそうならない……なぜなんでしょう。

要するにこれ、ディオ御大が歌っているからこそDIOの作品として成立しているものの、バックトラックやメロディに関してはDIOである必要のないものばかりなんです。良くも悪くも“振り切れている”楽曲群が揃った本作は、今の耳で聴けば全然スルスルと聴き進めることができる、ダーク&ヘヴィの佳作なのですが、王道メタルバンドのモダンヘヴィネス化やオルタナメタル化に対して心を広く持てきれていなかった1992〜3年の自分にはハードルの高い1枚だったわけです。

まんまKING CRIMSONなアレンジのヘヴィロック「Jesus, Mary & The Holy Ghost」を筆頭に、確かにキャッチーさや親しみやすさは皆無な楽曲ばかり。ですが、トレイシー・Gのリフワークやソロプレイは当時のモダンメタルとしてはかなり非凡なものがありますし、ディオのボーカルも必要以上にアグレッシヴかつヒステリックで、これはこれでアリと思えてしまう。「Hollywood Black」や「Evilution」「One Foot In The Grave」あたりのグルーヴ感は2020年の今も通用するものがありますし、アップテンポの「Here's To You」やヘヴィバラードの「Give Her The Gun」にはなんだかんだいってDIO節が感じられるし、結果としては「あれ、意外と良いかも?」と思えてしまう。時間の経過によって評価が大きく変わった1枚ではないでしょうか。

もちろん、80年代前半のDIOこそがすべてというリスナーもいらっしゃることでしょう。その意見は否定しませんし、それもまた正しいと思います。だけど、ちょっと視野を広げるだけで「こんな表現方法もあるんだ。こんな側面も持っているんだ」と新しい扉が開くこともある。サバスの『DEHUMANIZER』もこの『STRANGE HIGHWAYS』も歴史上スルーされることの多い作品かもしれませんが、だからこそ不意に出会ったときの「見つけた」感はより強いものがあるのではないかな。そんな「切り捨てるには勿体ない」1枚です。

 


▼DIO『STRANGE HIGHWAYS』
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2020年2月24日 (月)

BLACK SABBATH『DEHUMANIZER』(1992)

1992年6月末にリリースされたBLACK SABBATHの16thアルバム。日本盤は約1週間遅れの、同年7月上旬に発売されました。

トニー・アイオミ(G)にトニー・マーティン(Vo)、コージー・パウエル(Dr)を中心とした布陣で14thアルバム『HEADLESS CROSS』(1989年)を制作し、同作のツアーからニール・マーレイ(B)が加入。その編成で15thアルバム『TYR』(1990年)を制作したBLACK SABBATHは、ロニー・ジェイムズ・ディオ時代の名盤『HEAVEN AND HELL』(1980年)を思わせる様式美スタイルでリスナーを喜ばせてくれました。

しかし、この布陣は長くは続きませんでした。「ロニー時代のサウンドに挑むなら、せっかくだし当の本人呼んじゃえよ!」ってことで(いや違うけど)、トニー・マーティンに代わりロニー御大を呼び戻したアイオミ。さらにベーシストをオリメンのギーザー・バトラーに交代し、ディオ/アイオミ/ギーザー/コージーという夢のような編成が実現します。

ところが、コージーが落馬により骨折。バンド離脱を余儀なくされ、後任にヴィニー・アピスが加わることになります。これにより10thアルバム『MOB RULES』(1981年)の編成が復活することになり、いわゆる“ディオ・サバス”としての3作目『DEHUMANIZER』が生まれるわけです。

アルバム発売前に、映画『ウェインズ・ワールド』のサウンドトラックに新曲「Time Machine」を提供。『HEAVEN AND HELL』に収録されていしょうなアップテンポのハードロックで、我々の期待を煽ってくれましたが、いざ届けられたアルバムは『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』とも、それこそ直近の『TYR』とも異なる、現代的なヘヴィさが強調された異色作でした。

様式美を意識した作風というよりは、当時流行り始めていたモダンヘヴィネス系を彷彿とさせる、リフでグイグイ引っ張り続けるダークなミドルチューンが中心。そこにディオのボーカルが乗ることで“らしさ”は若干維持されているものの、歌メロの抑揚が過去の名作ほど起伏に富んだものではない。この平坦さ(今聴くとそこまで平坦でもないけど)こそ1992年という時代ならではで、ディオにしろアイオミにしろ「過去の焼き直し」ではなく「今のシーンと対峙する」ことを念頭に置いたアルバム作りに臨んだことが伺えます。

アイオミのリフワークはさすがの一言だけど、オジー・オズボーン在籍時のヘヴィさとも異なる新たなダークさ、ヘヴィさを表現している。かつ、そこに従来らしさもにじませているもんだから、リリース当時は非常に複雑な新曲になったものです。「あれ、アイオミ先生……トニー・マーティンをクビにしてまでやりたかったことがこれなの?」と。

ところが。ディオ・サバスはこの1枚で再び頓挫。アイオミ先生は再びトニー・マーティンを呼び戻し、『HEADLESS CROSS』路線を推し進めた傑作『CROSS PURPOSES』(1994年)を完成させ、一方のディオ御大はモダンヘヴィネス路線に特化した『STRANGE HIGHWAYS』(1993年)をリリースするのでした……はい、戦犯が誰かおわかりですね(笑)。

でもね。本作のリリースから30年近くを経た今、このアルバムとしっかり向き合うと……めっちゃ良いんですよ。ディオらしさもしっかり表現できているし、アイオミのリフメイカー/ソングライターとしての才能も際立っている。むしろ、グランジやモダンヘヴィネス系が台頭し始めたタイミングに、HR/HMのオリジネイターとしてちゃんと“今”と向き合い、そこで自分ができることを提示してくれている。退屈な曲がゼロとまでは言いませんが、全体を通して普通に楽しめる1枚だと思います。

個人的にはイントロで異彩さを放つ「Master Of Insanity」や、途中での展開がいかにもな「Computer God」、サイケなメロディラインが新鮮な「Sins Of The Father」、もっともディオ・サバスらしい「Too Late」などお気に入り多数。まあ、ここでの経験がさらに10数年後にHEAVEN AND HELLという変名ディオ・サバスへとつながっていくわけですが、それはまた別の機会に。

 


▼BLACK SABBATH『DEHUMANIZER』
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2020年2月23日 (日)

コンテイジョン(2011)

あらすじ
香港出張からアメリカに帰国したベスは体調を崩し、2日後に亡くなる。時を同じくして、香港で青年が、ロンドンでモデル、東京ではビジネスマンが突然倒れる。謎のウイルス感染が発生したのだ。新型ウイルスは、驚異的な速度で全世界に広がっていった。
米国疾病対策センター(CDC)は危険を承知で感染地区にドクターを送り込み、世界保健機関(WHO)はウイルスの起源を突き止めようとする。だが、ある過激なジャーナリストが、政府は事態の真相とワクチンを隠しているとブログで主張し、人々の恐怖を煽る。その恐怖はウイルスより急速に感染し、人々はパニックに陥り、社会は崩壊していく。国家が、医師が、そして家族を守るごく普通の人々が選んだ決断とは──?

マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、ケイト・ウィンスレットなどそうそうたる面々が一堂に会した、スティーブン・ソダーバーグ監督によるパンデミック系パニックムービー。冒頭10数分の感染する流れが、新型コロナウイルスを通じた今年1月末〜2月上旬の世界情勢と重なることから「予言では?」なんて噂され、公開から10年近く経ったこのタイミングに妙な形で注目を集めることになりました。

もちろん、映画の中で発症するウイルスと現実のコロナウイルスはまったく別モノですし、その拡散スピードや死者の数も映画の中では現実離れしたものがありますが、どこか他人事とは思えない部分も多く、興味深く最後まで観ました。

パニック映画としての側面よりも、ウイルスとどう向き合い感染経路を特定させるか、どうやってワクチンを生成するかに焦点が当てられた作品で、その過程で主要登場人物の一部が感染して死亡するというパンデミックの恐怖を表現する。また、現代的なのがネットを通じて、いわゆるYouTuber的存在が発言力を高めることで、どこか新興宗教じみたものへと進化していったり、完成したワクチンをまず“どの国”の“誰”に、“どういう順番”で投与するか、それによる国同士のやりとりなども描かれており、単なるホラーやパニック作品とは異なる醍醐味が感じられるはずです。

ここ日本で生活していると、日々伝わってくる最悪な現実と重ねて観てしまうため、どうしても娯楽作品として楽しむことができなくなってしまいがちですが、この時期だからこそ観ておいて損はない作品かなと。

個人的に胸糞悪かったのは、最初にベス(グウィネス・パルトロー)が不倫によってウイルスを別の土地にも広め、それによってワクチン生成に翻弄したエリン医師(ケイト・ウィンスレット)がウイルスに感染してしまう流れ。彼女がどうなったかは、ぜひ劇中で確認してもらいたいと思います。

(*78点)

 


▼コンテイジョン
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BLACK SABBATH『13』(2013)

BLACK SABBATHが2013年6月に発表した、通算19作目にして最後のオリジナルアルバム。

オジー・オズボーン(Vo)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)のオリジナルメンバー3人が揃ってのレコーディングは、1998年リリースのライブアルバム『REUNION』に収められたスタジオ新録曲「Psycho Man」「Selling My Soul」以来15年ぶり、フルアルバムとしては1978年の8thアルバム『NEVER SAY DIE!』以来実に35年ぶり。残念ながらビル・ワード(Dr)は不参加となりましたが(そもそも「Psycho Man」「Selling My Soul」もクレジットこそされているものの、実際のレコーディングはリズムマシーンを使用したものでした)、代わりにRAGE AGAINST THE MACHINEのブラッド・ウィルク(Dr)が参加しています。

プロデュースを手がけたのはリック・ルービン(RED HOT CHILI PEPPERSLINKIN PARKMETALLICASLAYERなど)。その組み合わせかぁ……とうれしさ半分、残念さ半分でしたが、実際に完成したアルバムは“オジー・サバス”の良き時代を40年後に見事に復活させた、非常に“らしい”1枚に仕上がっていると思います。

本作は全8曲で構成されたスタンダード仕様と、ボーナストラック3曲を加えたCD 2枚組のデラックス仕様の2形態を用意。スタンダード盤が8曲と昨今の作品としてはボリューム的に弱い印象を受けますが、実際には1曲1曲が長尺なものばかり(4〜5分台が3曲、7分が3曲、8分台が2曲)なので、トータル約54分と満足のいくボリュームかと言えます。

「End Of The Beginning」「God Is Dead?」と長尺のリードトラック2曲が続くオープニングからして、“あのオジー・サバスが戻ってきた!”感の強いもので、特に初期4作の彼らをなぞったリフ、アレンジ、メロディは新しさこそ皆無ながらも、オジーらしさとトニーらしさ(もちろんギーザーらしさも)が見事にミックスされた“ナウなサバス”に仕上げられているんじゃないでしょうか。

続く「Loner」もそれらしい1曲ですし、冒頭にオジーの笑い声がフィーチャーされたサイケデリックなアコースティックナンバー「Zeigeist」も2ndアルバム『PARANOID』(1970年)期を思わせるテイスト。後半の「Age Of Reason」もトニーらしいギターリフを楽しめるし、「Live Forever」も冒頭の一音(というか、バンドが一斉に出す音)からしてサバスそのもの(途中からの展開含め、らしさ全開)。全8曲、比較的ドゥーミーなミドル/スローナンバーばかりで構築されているため、若干気怠く感じてしまうかもしれませんが、好きな人にはたまらない流れなんじゃないでしょうか。

一方、DISC 2にはオジーのソロ作に比較的近いアップテンポな「Methademic」や、グルーヴィーなリフを持つ「Pariah」みたいに、アルバム本編に入れたらフックとなるような曲が用意されている。あれ、なんでこっちを本編に入れなかったの?と不思議に感じてしまうほど、曲の出来は悪くない。きっと、プロデューサーが初期サバスにこだわりすぎた結果、こういった楽曲はボーナストラックに回されてしまったんでしょうかね。日本盤ボーナストラックとして用意されたアップチューン「Naivete In Black」も然り。ああ、勿体ない。

最初の8曲だけ聴いたら「ああ、これで最後なの……なんだか歯切れ悪い最後だな」と消化不良で終わりそうですが、「Methademic」や「Pariah」「Naivete In Black」みたいな曲のおかげでなんとか気持ちを持ち返すことができた。これはもう、プロデューサー(と、その意見に従ったバンド側)の采配ミスですね、完全に。

アルバム本編から長尺曲をひとつ間引いて、ボーナストラック扱いの4曲から2曲付け加えることで、もうちょっと完成度の高い“スワン・ソング”が生まれたんじゃないかな……1つひとつのパーツが素晴らしいだけに、そこだけが残念でなりません。

 


▼BLACK SABBATH『13』
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2020年2月22日 (土)

OZZY OSBOURNE『ORDINARY MAN』(2020)

2020年2月下旬にリリースされたオジー・オズボーンの11thオリジナルアルバム。カバー曲で構成されたアルバム『UNDER COVER』(2005年)を含めると、通算12作目のスタジオアルバムということになります。

前作『SCREAM』(2010年)が2010年6月発売だったので、ほぼ10年ぶりということになりますが、その10年の間にはBLACK SABBATHとしてのラストアルバム『13』(2013年)もあったので、実質7年ぶりの新作ということになるのかな。ま、どちらにせよオジークラスのリリース間隔としてはだいぶ空いたことには違いありません。

ここ数年、新作に向けた噂はいろいろ上がっては消え、上がっては消えを繰り返していました。個人的に記憶に残っているところではスティーヴ・スティーヴンス&ビリー・モリソン(ともにビリー・アイドルBANDのギタリスト)と共作しているなんて話もありました。しかし、新曲は一向にリリースされる気配はなく、2年前には『NO MORE TOURS』と題した最後のワールドツアーを行うことが発表され、日本にも昨年3月に『DOWNLOAD JAPAN』のヘッドライナーとして来日することが決まっていました。が、実際にはご存知のとおり。2015年秋の『OZZFEST JAPAN 2015』を最後に、オジーの来日公演は実現しておりません。

もともと、オジーはこの10年でスタジオ入りにだいぶ消極的だったようで、前作『SCREAM』は完成までに約1年半もの歳月を要したとのこと。これがあって、長期間スタジオにこもるのを嫌がったみたいなんです。ところが、ポスト・マローンとの共演曲「Take Me What You Want」で出会ったプロデューサー/マルチプレイヤーのアンドリュー・ワットにけしかけられ、ついに重い腰を上げアルバム制作に突入。ザック・ワイルド(G)をはじめとする現在のバンドメンバーではなく、アンドリュー側がお膳立てしたレコーディングメンバー……ダフ・マッケイガン(B/GUNS N' ROSES)とチャド・スミス(Dr/RED HOT CHILI PEPPERS)、そしてギターはアンドリュー自身という布陣で曲作りを含む制作を実施。さらには、スラッシュ(G/GN'R)やトム・モレロ(G/RAGE AGAINST THE MACHINE)、エルトン・ジョン(Vo, Piano)という豪華ゲストまで迎え、これまでの躊躇が嘘みたいに待望のオリジナルアルバムは1年かからずして我々の手元に届けられたわけです。

昨年11月にリードトラック「Under The Graveyard」がまず配信されましたが、ぶっちゃけた話をすると僕、この曲に対してはまずネガティブな感情が溢れ出てしまいました。「ああ、なんだかわかんねえ若造プロデューサーにそそのかされて、ソロでもサバスみたいなことやらされて……10年待った結果がこれか」と。

ところが、その2週間後に発表された2ndシングル「Straight To Hell」を聴いて、気持ちを改めることになります。路線的には確かにサバス以降の流れにあるものでしたが、しっかりオジーのソロワークスらしさも感じられる。ポップさやキャッチーさは薄いものの、確かにこれはオジーのソロ曲だわ、と。

さらに年が明け、1月初頭には3rdシングル「Ordinary Man」も配信。エルトン・ジョンとのデュエットという話題もありましたが、何よりこれが“いかにも”なオジー流スローバラードで一聴して心を持っていかれたわけです。うん、これは期待できそうだなと。

あれから約1ヶ月。リリースより少々先にアルバムをまるまる聴く機会を得たのですが、最初の「Under The Graveyard」に対するネガティブな感情がまるでなかったかのように本作を全面的に受け入れる自分がいました。うん、どこからどう聴いてもオジー・オズボーンのニューアルバムだと、そう素直に思えたのです。

確かに、テイスト的にはソロよりもサバス時代に寄った作風かもしれません。しかし、リリースタイミング的にもBLACK SABBATHのレコードデビュー50周年(2020年2月13日)とかぶっていたり、ここ最近のオジーの体調面での問題なども相まって、「もしかしたらこれが最後かもしれない……」という不安も少なからず感じていた。だからこそ、本作をもっと前向きに捉えようと気持ちを持ち直したのかもしれませんね。

けど、作品への評価とそういった個人的感情はできるだけ切り離して楽しみたい。そう思って何度かリピートしてみましたが……やっぱりどうしても感傷的な気持ちは切り離すことはできませんでした。できなかったんだけど……それでも「ああ、オジーの新作カッコいい!」と思える自分が存在するのもまた事実。もうそれでいいじゃん!

スラッシュらしいギターソロがフィーチャーされた「Straight To Hell」から始まる本作は、序盤こそ8thアルバム『DOWN TO EARTH』(2001年)以降の流れを汲む、“21世紀のオジー”らしいアルバムかと思いきや、ところどころに6thアルバム『NO MORE TEARS』(1991年)のテイストも散りばめられているし、もちろんサバスらしさもあるし、もっと言えばオジーのルーツであるビートルズからの影響もしっかり残されている。そこまで含めて、従来のオジーのソロらしいんですよね。しかも、その“らしさ”がセルフ・パロディで終わっていないし、しっかり新しいオリジナル作品にまで昇華されている。きっとザックを含むイツメンで作っていたら、セルフ・パロディとまでは言わないまでも焼き直し感を残したまま消化不良で終わっていたのかもしれない。だからこそ、スタジオワークに無駄な時間がかかりすぎてしまうのかな……いや、わからないけど。

アルバムの流れで聴くと、不思議と「Under The Graveyard」も悪くない。いや、むしろ「Ordinary Man」のあとにこの曲が続く必然が感じられるし、「Under The Graveyard」のあとに「Eat Me」が並ぶ意味も理解できる。個人的にはこの「Eat Me」以降のアルバム後半の流れがめっちゃツボで、トム・モレロらしいソロをフィーチャーした「Scary Little Green Men」、アンドリュー・ワットの素晴らしいギターソロと美しいメロディ&アレンジがオジーソロ史上ベストワークと思えるほどの「Holy For Tonight」、ポスト・マローンがゲスト参加したパンキッシュな「It's Raid」と、“らしさ”と“斬新さ”が共存する構成なのです。そこからボーナストラックの「Take What You Want」、日本盤ボーナストラックとなる短尺曲「Darkside Blues」へと続くエンディングまで含めて、しっかり楽しめました。

『NO MORE TEARS』でひとつの極みへと到達し、続く7thアルバム『OZZMOSIS』(1995年)以降は試行錯誤の繰り返しだったオジーでしたが、ようやく“やりたかったこと”を全うすることができたんじゃないか。こんなこと書いたら不吉だって思われるかもしれないけど、この集大成的な1枚はオジー流“辞世の句”であり、昨年12月に71歳になったばかりのアーティスト:オジー・オズボーンにとっての“スワン・ソング”なのかなと。そんな重みと凄みと説得力を感じずにはいられない、会心の1枚だと思います。

 


▼OZZY OSBOURNE『ORDINARY MAN』
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2020年2月21日 (金)

LOVEBITES『GOLDEN DESTINATION』(2020)

2020年2月下旬にリリースされたLOVEBITESの最新EP。

今年1月末に3rdアルバム『ELECTRIC PENTAGRAM』をリリースしたばかりのLOVEBITES。アルバムから1ヶ月と間隔を空けずに連続ドロップされる本作は、『ELECTRIC PENTAGRAM』収録曲「Golden Destination」をリードトラックに、アルバム未収録曲3曲を加えた全4曲、トータル約23分におよぶ聴き応えのある1枚に仕上がっています。

「Golden Destination」は6分超えのアップチューンですが、その長さを感じさせない流麗なメロディを持つ完成度の高い1曲。改めて『ELECTRIC PENTAGRAM』というアルバムに収録された楽曲群はどれをリードトラックとしてリカットしても通用する、強力な1枚だなと気づかされます。

さて、ここで特筆すべきはアルバム未収録の3曲についてですよね。完全未発表の新曲は2曲、残り1曲はアルバム『ELECTRIC PENTAGRAM』収録曲の別バージョンとなっています。

M-2「Spellbound」はシンセのリフが耳に残る、アルバムにそのまま収められていても不思議ではない世界観の美メロナンバー。メロディのキャッチーさ以上にアレンジ面での凝った作りが印象的で、途中で登場するギターソロのフレーズ含めとにかく“わかりやすい”1曲だなと。

M-3「Puppet On Strings」はミドルテンポ寄りながらもノリの良いナンバー。バスドラに合わせたストリングス隊の“刻み”が気持ちよく、そこにわかりやすいメロディが乗ることで独特のキャッチーさを生み出している、まさに『ELECTRIC PENTAGRAM』で体現したスタイルの流れにある良曲です。若干派手さに欠けるかなと思うものの、それはあくまで『ELECTRIC PENTAGRAM』という作品の中においてのこと。仮にアルバムに収録されていたとしても、箸休め的な役割を果たしてくれていたはずです。

M-4はアルバム『ELECTRIC PENTAGRAM』の幕開けを飾った「Thunder Vengeance」のオーケストラ・バージョン。ストリングスによるドラマチックなオープニング&エンディングを付け加えた本バージョンは、「実はこっちのほうがアルバムの1曲目っぽくない?」と思えてしまうような仕上がり。どこかSLAYER「Raining Blood」を思わせる雰囲気もあり、曲中に加わったストリングスにより壮大さは原曲以上にスケールアップ。ですが、結果としては現在アルバムに収録されているバージョンが正式採用されたわけですね。まあ、この曲だけストリングスを強調しても全体的に浮いてしまうかも……という懸念もあったのかしら。なんにせよ、こういうトライがあってこそ、あのアルバムが現在の形に落ち着いたという経緯を垣間見ることができた気がします。

未発表の2曲はどれもアルバムに負けず劣らずの完成度ですし、「Thunder Vengeance」の別バージョンも仕上がりとして興味深いし、LOVEBITESに少しでも興味を持っているリスナー、アルバムは持ってるけどEPまでは手を出さなくてもいいかなと迷っているファンにもぜひ聴いてもらいたい必携盤です。

 


▼LOVEBITES『GOLDEN DESTINATION』
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2020年2月20日 (木)

BLACK SWAN『SHAKE THE WORLD』(2020)

BLACK SWANが2020年2月中旬に発表したデビューアルバム。日本盤は海外に数日遅れでリリースされています。

BLACK SWANはロビン・マッコーリー(Vo/MICHAEL SCHENKER FEST、ex. MCAULEY SCHENKER GROUPなど)、レブ・ビーチ(G/WINGERWHITESNAKEなど)、ジェフ・ピルソン(B/FOREIGNER、ex. DOKKENなど)、マット・スター(Dr/MR. BIG、エース・フレーリーなど)という80年代以降のHR/HMシーンにてたびたび名前を目にする名手たちが一堂に会した“スーパーバンド”のひとつ。昨年の今頃、ジェフがこのバンドについて言及する場面があったそうで、もともとはロビン、レブ、ジェフの3人で進めていたプロジェクトからマットに声がかかり、その数日後にはレコーディングに参加したとのこと(すでにドラム以外のパートはレコーディング済みだったそう)。

ソングライティングは上記のようにマット以外の3人で進めたのでしょう。一体この3人でどんな曲/音が作れるのか……要はMSGとWINGERとDOKKENですからね。80年代的なスタジアム・ハードロックを想像した人、ある意味正解です。けど、思ったよりも湿り気の強いメロディの正統派HR/HMだったのは、良い意味で予想を裏切ってくれてうれしかったな。

ロビンの哀愁味が強い歌声を前面に打ち出しつつ、メジャー感の強いHR/HMを表現する。もちろん、親しみやすい歌メロを備えつつ、楽器隊(主にギター)の派手さを見せることも忘れない。BON JOVIやWHITESNAKE、DEF LEPPARDなどがヒットチャートを席巻した80年代後半のUSメタルシーンを彷彿とさせる楽曲群はどれもクオリティが高いもので、ぶっちゃけ2020年の今これをやる必要があるのか?と疑問を感じることもゼロではありませんが、“やれる”人たちが“やるべきこと”をやっただけのこと。逆に、“やれる”人たち今これをやっていないから、彼らがやったと考えればいいわけで、こういったバンドが今誕生してこういうアルバムを世に放ったことは必然だったのです。

マイナーキーのミドルナンバー中心ながらも、シャッフルビートが心地よい「Big Disaster」、疾走感の強い「Shake The World」や「Unless We Change」、HEARTにも通ずるポップバラード「Make It There」、じっくり聴かせるスローナンバー「Divided/United」など楽曲も緩急に富んでいる。全11曲(日本盤ボーナストラック除く)で約57分と決して短くなないトータルランニングながらも、最後まで飽きずに楽しめるのは1曲1曲の完成度の高さや個性が際立っているからこそ。さすが職人!と納得してしまう高品質の1枚です。

ロビンはMSFではゲイリー・バーデンやグラハム・ボネットに次ぐ3番手だし、レブはWHITESNAKEでは常に2番手的扱いで、ジェフは現在のFOREIGNERでも裏方的印象が強い。マットもMR. BIGではパット・トーピーのサポートという意味合い濃厚だったので、全員が現在のシーンの中で“日陰”的存在なわけです。そういった人たちがBLACK SWAN(=黒い白鳥、コクチョウ。「予測できないことが出来事が起こる」の意)という名前で再び日陽に飛び出していく。そりゃ応援したくなりますよね。各メンバーとも自身のメインバンドでの活動が忙しいので、ツアーや来日公演などは今のところ望めそうもありませんが、ぜひ機会があったら一度ライブを観てみたいものです。きっとそのときは、各バンドのカバーもあるでしょうしね(笑)。

 


▼BLACK SWAN『SHAKE THE WORLD』
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2020年2月19日 (水)

【振り返り記事】ROLLING STONES STEEL WHEELS JAPAN TOUR 1990@東京ドーム(1990年2月19日)

さて、振り返りライブ記事第2弾は今から30年前の記憶を掘り返そうというもの(笑)。ぶっちゃけ、かなり曖昧なところもありますが、なんとなく当時の思い出をよみがえらせて、ここに書き残してみたいと思います。

1990年2月14日から27日にかけて、全10公演という前代未聞の東京ドーム連続公演を成し遂げたTHE ROLLING STONES初来日公演。初めて実現した日本公演であると同時に、ストーンズにとっても1982年のヨーロッパツアー以来7年ぶりに実現した本格的なツアーとあって、1989年8月末にスタートした時点で世界中からかなりの注目が寄せられていました。

また、一時はミック・ジャガーキース・リチャーズの仲が修復不能とまで言われたあとだけに、同時期にリリースされた最新アルバム『STEEL WHEELS』も久々のヒット作となり、日本でも(来日効果もあり)かなりのヒットを記録しています。

実はこの東京ドーム公演、当初は9公演のみで、あとから2月19日の追加公演が発表されています。僕は当時高校3年生で、受験勉強まっただ中というタイミング。来日時期も大学受験シーズンとまるかぶりで、その1ヶ月後(1990年3月)に予定されていたポール・マッカートニー初来日のほうに心が動いたのですが、受験勉強でやさぐれた時期にストーンズばかり聴きまっくっていたこともあって、最終的にはストーンズのほうを選んだわけです。

しかし、当初の9公演は田舎に住む高校生にとってはプラチナ中のプラチナチケット。当時はネットが存在しいのはもちろんのこと、地元にもチケットぴあが存在しなかったので、新聞に載っていた特電にリダイアルしまくり。結局、一度もつながることなくソールドアウト。ところが、後日急遽決まった追加公演だけは30分もかからずして電話がつながり、見事チケットを確保できたのでした。

僕にとって生涯初の東京ドームは野球ではなく、ストーンズの初来日だったのです。

記憶では、確か1週間にわたる東京滞在の最終日、つまり最後の受験日が2月19日だったはず。それまでホテル住まいだったのですが、19日はもともと受験が終わったら電車で地元に帰る予定だったから宿もなく、親に頭を下げて親戚の家に一泊させてもらうことになりました。

都心からだいぶ離れた場所で受験を終え(結果は散々たるものでした。苦笑)、初めて水道橋へ……いや、ウソウソ。後楽園球場には行っているし、後楽園ゆうえんちにも行った経験があるから初めてではないんだけど、東京ドーム目的での水道橋下車はこれが初めて。周りにはストーンズグッズに身を包んだオッサンオバサン(18歳の自分にはそう見えたんだけど、今思えば30代前後が中心だったのかな)ばかり。たぶん高校生は自分だけなんじゃないか?と不安を抱えて入場するわけですが……実はこのとき、生涯初のドームアリーナを経験しています。そう、特電でアリーナ取れちゃったんですよ。中央から若干上手寄り、最前ブロックで19列目だったと記憶しています。

会場に入ってまず驚いたのが、そのセットのバカデカさ。最近のライブではまず考えられなほどのスケールのデカさに、思わず口があんぐり。当時の映像を見返してみても、やっぱりその大きさには驚かされます。イマドキ、ここまでセットに使うアーティストいないもんね(当のストーンズですら、どんどんシンプルになってますから)。

確か18時半スタートだったと思いますが(チケットの半券、当日購入したパンフレットと一緒に実家で保管しているはずです)、『STEEL WHEELS』収録のオリエンタルな異色ナンバー「Continental Drift」の後半パートがSEとして流れ始めると、これがライブが始まる合図。曲のクライマックにあわせてパイロ(音玉)が爆発すると、キースによるあの印象的なギターリフが……「Start Me Up」からライブがスタートしたわけです。

ハードロックやメタルに慣れた耳で聴く、初めての生ストーンズは……ぶっちゃけ下手クソに思えました(苦笑)。音はスカスカだし、ミックのボーカルも調子っぱずれで決して上手ではない。ドラムもところどころで走ったりもたったりと、正確無比なメタルを愛聴し続けた自分には厳しかったし、それこそAEROSMITHとも、RED WARRIORSのような日本のバンドとも全然演奏力が違う。すごく微妙な気持ちになりながら、「Start Me Up」を一緒に歌ったことだけは、非常に強い記憶として今も残っています。

ところが、続く「Bitch」でブラスセクションが加わると音の華やかさが一気に増す。そっか、厚みが足りなかったんだ……と、今になって振り返ると、そう思えてくるのですよ。それくら、全然違ったんですよ。もうね、このあたりからはあんまり記憶が……ただ楽しかった!ということしか覚えてないんです(笑)。のちに日本テレビで放送された2月26日の映像(2015年には別編集でDVD/Blu-ray化されましたね)を見返して「ああ、そうだそうだ、こんなだった!」と記憶が少しずつ蘇ってくるのですが……初めてドームで聴くロックサウンドの迫力のなさ(笑)と、放送やソフト化されたものがまったく異なることに戸惑う自分もいたり。それくらい、CDやレコードで聴いていたストーンズとのギャップがありすぎたんですよね。

バラード曲やキースの歌唱曲が公演日によって異なっていたようですが、僕が観た日は「Ruby Tuesday」と「Angie」だったりで、「Almost Hear You Sigh」がなかったり、キースは「Can't Be Seen」と「Happy」を歌ったりというオーソドックスな1日でした。「Angie」はちょっとグッと来たなあ。ミックの歌はボロボロだったけど(笑)。

「Honky Tonk Women」ではいかがわしい女性の巨大風船が膨らんだりというスタジアムクラスならではの演出もあって、そのケバケバしさに18歳の自分は苦笑い。けど、続く「Midnight Rambler」で空気が一変。これこそ自分が観たかったストーンズだったのです。ビル・ワイマンを含む“5人のストーンズ”にチャック・リーヴェル(Key)など可能な限りの最小編成で臨んだこの10分にもおよぶブルースナンバーは、僕が憧れたストーンズそのものだったのです。結局、ここまで来てようやく「ウマい下手じゃないんだ、味なんだ」とわかったような気になり始める自分。チョロいわ(笑)。(とはいえ、スカスカのアレンジの妙や、チャーリーの走ったりもたったりするリズムがグルーヴのゆらぎだと気づくのは、もっとあとになってからなんですけどね)

でもさ、それくらい「Midnight Rambler」でのミック(ブルースハープが最高!)やキース、ロニー、チャーリー、そしてビルがカッコよすぎたんです。「ああ俺、あのストーンズを今、肉眼で観てるんだ!」とアリーナ19列目から実感できた初めての瞬間だったんですよ。そこから「You Can't Always Get What You Want」へと続く構成といい、キースVo曲2連発といい、文句なしの流れでした。

キースのアコギをフィーチャーした、異様にキーの低い「Paint It Black」にキョトンとしつつ、サイケな「2000 Light Years From Home」、いろんな意味で狂気じみた「Sympathy For The Devil」や「Gimme Shelter」に発狂し、最後は定番のロックンロールナンバー連発。本編は「(I Can't Ge No) Satisfaction」、アンコールは「Jumpin' Jack Flash」というお約束で2時間半以上におよぶ初ストーンズ、初東京ドームは幕を降ろしました。終わったあとはどうやって親戚の家の最寄駅まで行ったか、記憶がおぼろげ。それくらい、終わったあとの充実感と「伝説を観た!」感が強かったのかも。そんな思いをしたの、初めて観たMETALLICAガンズ、そしてこのときのストーンズぐらいかもしれません。

結局、ここから数年後にビルがバンドを脱退。僕は受験した大学をすべて落ち、浪人生活を経て専門学生へ。ストーンズは1995年、1998年、2003年とその後も定期的に来日するのですが、95年と98年に関してはまったく行こうと思えなかったんです。理由はビルがいないストーンズだったから。「俺はビル・ワイマンのいるストーンズを観たんだ!」と優越感に浸りたかったんでしょうね(苦笑)。ただ、2003年のときは初の日本武道館公演が含まれていたので、このライブだけ抽選に申し込んだ記憶があります(当然のように外れましたが)。

そこから紆余曲折あり、2006年から音楽ライターとして再び東京で生活することになり、同年3月の東京ドーム公演で実に16年ぶりの生ストーンズを体験。「やっぱり、観れるときに観ておくべき!」という考えに変わり、次の2014年は3回の東京ドーム公演のうち2回観ることになったわけです。

年齢的には今の自分よりも若い46歳だったミックとキース。18歳の自分からしたら完全に親世代で、実年齢よりもおじいちゃんに見えた1990年のストーンズでしたが、2020年の今、あの頃の映像を見返すとその動き一つひとつが実に若々しいんですよね。ぶっちゃけ、ドーピングしてるんじゃないかって思えるほどにアクティブ(笑)。7年ぶりのツアー、しかもスタジアムクラスのバカでかいステージであんなに動き回れるなんて……今の自分なら絶対に無理(苦笑)。そう考えると、ものすごいことを成し遂げていたんだと改めて気づかされます。

選曲やアレンジ、演奏スタイルなどは1990年の来日よりも直近の2014年のほうが好みではあるものの、あの時代ならではのハイエナジーなストーンズも今となっては一周回ってカッコいい。あんなストーンズ、あとにも先にもあれ一回のみでしたしね。

結局、あのツアーを日本公演の映像で楽しめる2020年、最高かもしれない(笑)。

【セットリスト】
SE. Continental Drift
01. Start Me Up
02. Bitch
03. Sad Sad Sad
04. Harlem Shuffle
05. Tumbling Dice
06. Miss You
07. Ruby Tuesday
08. Angie
09. Rock And A Hard Place
10. Mixed Emotions
11. Honky Tonk Women
12. Midnight Rambler
13. You Can't Always Get What You Want
14. Can' Be Seen
15. Happy
16. Paint It Black
17. 2000 Light Years From Home
18. Sympathy For The Devil
19. Gimme Shelter
20. It's Only Rock 'N' Roll (But I Like It)
21. Brown Sugar
22. (I Can't Ge No) Satisfaction
<アンコール>
23. Jumpin' Jack Flash

 


▼THE ROLLING STONES『FROM THE VAULT: LIVE AT THE TOKYO DOME, TOKYO 1990』
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IHSAHN『TELEMARK』(2020)

2020年2月中旬にリリースされた、イーサーンEMPEROR)の最新EP。日本盤未発売。

7thアルバム『ÁMR』(2018年)からほぼ2年ぶりの新作にあたる今作は、今年発売が予定されているEP二部作の第1弾。彼が現在も生活しているノルウェーの故郷・テレマルク(Telemark)をタイトルに冠し、自身の音楽ルーツの根本のあるブラックメタルからの影響を表現した作品集に仕上げられています。

イーサーンは今回のEP二部作に関して、OPETHの『DELIVERANCE』(2002年)と『DAMNATION』(2003年)を例に挙げて「ノルウェーの音楽が持つふたつの側面」を表現したいと発言しており、今作では『DELIVERANCE』的なブルータルさ(=“動”)を前面に打ち出したスタイルに挑んだと考えられます。となると、続く次作では『DAMNATION』にも通ずるドラマチックな側面(=“静”)を表現するのかしら。あえて1枚のアルバムという形にまとめるのではなく、テーマが異なるふたつの小作品でまとめるというのは、作り手側としても偏った側面に集中することができるでしょうし、聴き手側にも心の余裕を与えてくれるので、現在のようなサブスク全盛の音楽シーンに合ったやり方かもしれませんね。

聴いてもらえばおわかりのように、本作に収録された5曲では大々的に部落セクションがフィーチャーされています。前半3曲(「Stridig」「Nord」「Telemark」)がオリジナル曲で、各曲とも至るところからEMPERORにも通ずるブラックメタルらしいブルータルさ、そしてプログレッシヴ・ロック的な曲展開を楽しむことがでます。かつ、ブラスがフィーチャーされることで全体的に柔らかさも加わっており、不思議と聴きやすくなっている印象も受けます。ブラックメタルが持つ特有の冷たさと、管楽器の温かみがミックスされたこの不思議な感覚、クセになりますね。それと、この手の音楽にブラスがミックスされると前衛的な方向に進みがちですが、こうやってキャッチーさを与えてくれる要因にもなるんだと、その意外さにも驚きを隠せません。

また、歌詞の面でも今回は初めてノルウェー語で書き下ろされており、デス声で歌っているからなんとなく聴き取りにくいものの(笑)、そういった点でもイーサーンが本作に対して込めた故郷への思いが伝わってきます。そういった要素も、本作が持つ温かみにつながっているのかもしれませんね

後半2曲はカバー曲で、レニー・クラヴィッツ「Rock And Roll Is Dead」とIRON MAIDEN「Wrathchild」という異色のセレクト。ともに原曲に忠実なアレンジで、このブラスを含む編成にぴったりな選曲となっています。特に前者はイーサーンの音楽性を考えると異色中の異色かもしれませんが、もしかしたらこの曲をやりたいがためにブラス導入したんじゃ?なんて探ってしまうほどにぴったりな1曲。しかも、このご時世に「ロックンロールは死んだ」なんて彼が歌うのもまた痛快ですし。こういったカバー曲を収録できるのも、フルアルバムではなくEPというスタイルならではこそ、うん、やっぱり今回のリリース形態は間違っていないと思います。

EP第2弾がどのタイミングで発表されるのかはわかりませんが、前作『ÁMR』リリース時(そもそも国内盤未発売でした……)には叶わなかった来日公演をぜひ2作揃った時点で実現させてほしいものです。今はEMPERORよりもソロアーティストのイーサーンを観たいんですよ、ええ。

 


▼IHSAHN『TELEMARK』
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2020年2月18日 (火)

MARK MORTON『ETHER』(2020)

2020年1月中旬にリリースされた、マーク・モートン(G/LAMB OF GOD)の最新EP。配信限定で、日本盤未発売。

昨年2月に初のソロアルバム『ANESTHETIC』を発表したマーク。同作はLAMB OF GODでは表現しきれないアーティスティックな側面、ソングライターとしての貪欲さを追求し、楽曲ごとに多彩なシンガーを迎えて表現するという手法が取られました。

続く今作も同じく、楽曲ごとに異なるシンガーをフィーチャーした作風。しかし、前作と異なるのはそのサウンドメイキングの手法で、今回はアコースティックギターをベースにした楽曲作り/アレンジが全面的に施されています。

全5曲中、マーク・モラレス(SONS OF TEXAS)が2曲、ハワード・ジョーンズ(LIGHT THE TORCH、ex. KILLSWITCH ENGAGE)、リジー・ヘイル(HALESTORM)、ジョン・カーボン(MOON TOOTH)がそれぞれ1曲ずつ参加。マーク・モラレスはMARK MORTON BANDのツアーでもフロントマンを務めたこともあり、今回2曲歌うことになったんでしょうね。

全編アコースティックがメインといいつつも、楽曲によってはエレクトリックギターもふんだんに使用されています。が、それはあくまで味付け程度。エレキがメインになることはなく、あくまで前面に打ち出されるのはアコギの音色とシンガーの歌声なわけです。

一方で、スクリームと歌い上げるイメージが強いハワードは「Love My Enemy」という楽曲でファルセットを取り入れた強くも優しい歌声を聞かせてくれます。あ、この曲のみエレキが大活躍していて、派手なギターソロも楽しめます。これは例外中の例外ですね。

ジョンが歌う「The Fight」は打ち込みリズムをフィーチャーした穏やかな1曲。アルバムの中でいうと、箸休め的な楽曲かな。けど、こういった地味めの楽曲が不思議とアメリカではヒットするからあなどれない。

そして、本作で注目してほしいテイクのひとつがリジー歌唱による「She Talks To Angels」。THE BLACK CROWESが90年代初頭にヒットされた楽曲で、原曲に比較的近いアレンジが施されています。リジーのボーカルもしゃリジーのボーカルもしゃがれた低音からパワフルな高音まで幅広く楽しめ、かつマークのスライドプレイも堪能できる、本作の肝かなと。

さらに、マーク・モラレスは適材適所という言葉がぴったりで、どんな楽曲もそつなく歌いこなす印象かな。適度なスモーキーさが良い味を出しています。オリジナル曲「All I Had To Lose」もさすがの一言ですが、ラストを飾るPEARL JAMのカバー「Black」も歌とアコギのみというシンプルなアレンジが功を奏し、曲の良さとシンガーの魅力を最大限に引き出しているんじゃないかな。

にしても、「She Talks To Angels」と「Black」という1990〜1991年の楽曲を選ぶあたり、さすが自分と同年代と思わずにはいられません。フルアルバム『ANESTHETIC』がソングライターとしての主張だとしたら、今回のEPはプレイヤー/ミュージシャンとしての主張が込められているのかな?なんて、この作風とカバーの選曲から感じ取ってしまいまいた。うん、ナイスな企画盤だと思います。

 


▼MARK MORTON『ETHER』
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2020年2月17日 (月)

GREEN DAY『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』(2020)

GREEN DAYが2020年2月初頭に発表した、通算13作目のオリジナルアルバム。なんて素敵なタイトルなんでしょう(笑)。そこだけで評価が上がります。

パワーポップやガレージロック色が強かった3部作(『¡UNO!』『¡DOS!』『¡TRÉ!』)を経てパンクロックへと原点回帰した前作『REVOLUTION RADIO』(2016年)から3年4ヶ月を経て届けられた本作。結局、前作を携えた来日は実現しませんでしたが、このニューアルバムリリースから2ヶ月経たずして久しぶりのジャパンツアーが実現します。ということは、このニューアルバムからの楽曲が中心になるわけですよね……。

さて、その待望の新作。今回も見事にそのスタイルを変化させています。ビリー・ジョー・アームストロング(Vo, G)はこのアルバムを表現する際、ソウルやモータウン、グラムというキーワードを用いています。と同時に、パンクやアンセム(anthemic)というワードも忘れていません。

間違いなく、ここで表現されているサウンドはパンクロックでしょう。しかも、GREEN DAYらしいポップパンクであると。しかし、そのテイストに上記の要素がミックスされることで、過去のポップパンク風作品……例えば代表作のひとつである『DOOKIE』(1994年)とは異なる歪さを見せているわけです。

ブラックミュージックからの強い影響、サウンドの質感や音使いが非常に現代的で昨今のモダンポップと比較してもなんら違和感がないこと、ミックスでひと昔前の北欧ガレージロック的な雰囲気を醸し出していることから、THE HIVESCAESARSあたりとの共通点も見つけられることでしょう。

ですが、この要素って急にポッと現れたものでしたっけ? 僕、本作を聴いたときに最初に思い浮かべたのが『AMERICAN IDIOT』(2004年)だったんですよね。思えば、ジャケットのアートワークも『AMERICAN IDIOT』がモチーフになっていますし。もちろん、『AMERICAN IDIOT』で奏でていたサウンドや楽曲を今っぽく焼き直ししているわけではなく、それ以降のアルバムで得た経験も反映させた、新しい形のモダン・ポップパンクが表現されているんじゃないか。そう思わずにはいられません。

よくよく考えてみると、GREEN DAYでもっとも好きなアルバムが『WARNING』(2000年)という人間なので、本作に対して「売れない」とか「駄作」と三行半を突きつける“ファン”と意見が合わないのは当たり前のこと。『¡UNO!』『¡DOS!』『¡TRÉ!』だって嫌いじゃないですし(さすがに3枚はやりすぎだと思ったけど)、この新作も意外とリピートしまくることになるんじゃないか……そんな気がしています。

あと、時代に合わせてなのか、それともパンク本来の形に戻ってなのか、10曲で26分強というトータルランニングも素敵。ますます応援したくなりました。これくらいでいいんだよ。だって、ロックバンドなんだから。

 


▼GREEN DAY『FATHER OF ALL MOTHERFUCKERS』
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2020年2月16日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS『PERDIDA』(2020)

2020年2月上旬にリリースされた、STONE TEMPLE PILOTSの8thアルバム。

前作『STONE TEMPLE PILOTS』(2018年)から加入したジェフ・グート(Vo)参加後2作目にあたる本作は、初の全編アコースティック・アレンジによるフルアルバム。2019年前半には本作の制作に取り組んでいたとのことで、レコーディングはエリック・クラッツ(Dr)所有のBomb Shelter Studioにて行われたそうです。

タイトルはスペイン語で“Loss”(喪失、損失)を意味する言葉ですが、聞こえてくる音色やサウンドからは彼ら特有のネガティヴさや内省的な雰囲気はあまり感じられません。いや、多少内省的な部分はあるんでしょうけど、それはダークさという意味ではなく、むしろ穏やかさや心の平穏さが表現されたものに近い印象を受けるのです。

曲によってはフルートやサックスなどの管楽器、あるいはチェロやバイオリンなどの弦楽器もフィーチャーされ、楽曲の持つ緩やかな世界観をより強調させている。そこに彼ら特有の美しいハーモニーが重なり合うのですが、メジャーキーで軽やかに奏でられるそれらの楽曲群は非常に心地よく響くものばかりで、これまでのアルバムだったら箸休め的に挿入されたトラッド調ナンバーやカントリーテイストの楽曲がアルバムの冒頭から最後まで、ぎっしり詰め込まれているわけです。

なので、ぶっちゃけ突き抜けるような爽快感や開放感を求めると痛い目を見る1枚かもしれません。豪快なギターリフもなければ、バカデカいビートも力強いシャウトも皆無なわけですから。

でもね。最初から最後まで気持ちよく楽しめるのもまた事実。だって、どこからどう聴いてもこれ、STONE TEMPLE PILOTSの音ですから。LED ZEPPLEINでいえば3rdアルバムALICE IN CHAINSでいえばEP『SAP』(1992年)や『JAR OF FLIES』(1994年)……というのは言い過ぎかしら。とにかく、そういう側面も心を広く持って楽しめるというリスナーにはうってつけの1枚です。

あとね。本作を聴いて思ったのは……結局、彼らも“アメリカのバンド”なんだな、と。当たり前っちゃあ当たり前なんですが、やっぱりこういうこともやりたい人たちなんでしょうね。それはお国柄なのか、あるいはミュージシャンとしてのエゴや成長の表れなのかはわかりませんが、これが今後永久に続くわけでもなさそうですし、今はこのモードを素直に楽しみたいと思います。

 


▼STONE TEMPLE PILOTS『PERDIDA』
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2020年2月15日 (土)

DON DOKKEN『SOLITARY』(2020)

DOKKENのフロントマン、ドン・ドッケンが2020年1月末に発表したソロアルバム。日本盤未発売。

ドン・ドッケンはDOKKENの最初の解散(1989年)にソロプロジェクトから派生したバンドDON DOKKEN名義で『UP FROM THE ASHES』(1990年)というアルバムを発表していますが、今作は純粋なる個人名義での1枚となります。

もともとは2008年10月、当時行われたドンのソロツアーにあわせてライブ会場で限定販売された同タイトルの9曲入りアルバムがオリジナル。その後、2016年のDOKKENオリジナルラインナップでの日本公演でも同作品が限定販売されましたが、どちらも一般流通はなし。それが3曲の未発表トラックを追加&ジャケットのアートワークをリニューアルして、急遽一般発売されたわけです。

聴いてもらえばおわかりのとおり、本作はアコースティックサウンドをベースにした、HR/HMとは程遠い内容。もともとテクニックだったり歌唱力の高さが売りのシンガーではありませんでしたが、そこに加えてパワフルさや高音域がてんでダメになってしまった2000年代以降のドンにあわせた、中音域の魅力が存分に楽しめる楽曲が並んでいます。

でね、これがなかなか良いんですよ。パワー不足が否めない今のドンにはこの手のサウンドが本当にぴったりですし、この下手に歌い上げない(悪く言えば抑揚のあまりない)歌唱が隙間の多いアコースティック編成にも合っている。もっと言えば、ピアノとの相性がここまで良いんだと驚かされました。

演奏で参加している面々もなかなかのもので、トニー・フランクリン(B/ex. BLUE MURDERなど)やヴィニー・カリウタ(Dr/フランク・ザッパ、スティングMEGADETHなど)、マイケル・トンプソン(G)など普段の彼の作品からかけ離れた面々ばかり。そこに、『UP FROM THE ASHES』でもタッグを組んだウィン・デイヴィスがプロデュースや楽器演奏でも加わり、ドンの魅力を見事に引き出すことに成功しています。

ビートルズであったり、あるいはアコースティック編成のLED ZEPPELINだったり、いろいろルーツが垣間見える1枚ですが、唯一いただけないのがセリーヌ・ディオンの大ヒット曲カバー「My Heart Will Go On」。

映画『タイタニック』でおなじみの1曲ですが、これに関しては……忘年会の二次会で、酔っ払った上司が自分の歌にうっとりしながら聞かせるジャイアン・リサイタルのようで、ぶっちゃけ興醒めです(笑)。なんでもしっとり表現すればいいってものではないのですよ。特にこの曲に関しては、原曲のイメージおよびパワーが壮絶すぎるので、“歌えない”フロントマンにこういう形でカバーされても……これがパワーバラード調でがっつり歌い上げていたら、また違ったんでしょうね。残念極まりない。

でも、それ以外は平均点以上の出来だと思うので、心や耳を休めたいときにBGMとして楽しむのに最適な1枚です。

 


▼DON DOKKEN『SOLITARY』
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2020年2月14日 (金)

【振り返り記事】MOTLEY CRUE THE FINAL TOUR IN JAPAN: ALL BAD THINGS MUST COME TO AN END@さいたまスーパーアリーナ(2015年2月14日)

Img_0476最後の来日公演を観てから今日でまる5年。実は当時も文字に残そうとは思っていたのですが、本編で起きた“とある出来事”のせいで消化不良気味になり、最終的には「ないわー(白目)」ということでそのまま書かずに終わっていたMOTLEY CRUEの「THE FINAL TOUR」さいたまスーパーアリーナ公演初日。モトリーは1987年の2度目の来日@武道館から何度と観てきていますが、特に直近の10年近くはセトリの内容もほぼ変わらずだったので、最後とはいえ「もういいかな?」という気持ちもあり(だってヴィンス・ニールが……以下自主規制)、結構ギリギリまで悩んだんですよ。

でも、最後の来日ではトミー・リーのドラムセットをそのまま持ち込む……つまり、観客の頭上を移動するローラーコースター型セットが日本上陸することがわかり、「あ、ヤバ。観なきゃ」と心変わり。結局、3万円のいい席(プレミアム・シート/アリーナ前方、別入り口から入場&グッズプレゼント)を即決で購入し、ライブに臨んだわけです。

先に行われた神戸ワールド記念ホール公演、日本ガイシホール公演に続く3公演目。しかも土曜開催ということで、ライブはほぼ完売状態。そういえば、このさいたまスーパーアリーナでモトリーを観るの、ほぼ10年ぶりなのか(オリメン復活でBUCKCHERRYをオープニングに迎えて開催。詳しくはここを参照)。いろいろ感傷に浸りながら会場入り。グッズは安っぽい布製バッグ……うん、使わないよね(苦笑)。そのまますぐにリュックの中にしまい、アリーナへと一歩踏み込むと……。

あ、ホントにあるわ(笑)。レールの話ですね。自分の席を探すと……真ん中より前方で、レールの真下。コースター型ドラムセットに乗りながら移動するトミーを見上げる形になるわけですよ。そりゃあテンション上がりっぱなしですわ。

さ、ここからは手短に(笑)。ライブは「Saints Of Los Angeles」からスタート。トミーのドラミングは相変わらず派手(ドラムセットはシンプル)でカッコいい。ニッキー・シックスは若干ふっくらしたけど、相変わらずカッコいい。ミック・マーズはほぼ定位置で、あのザクザクしたリフと流麗なソロを弾きまくり。うん、カッコいい。

ヴィンスは……言わなくてもわかるよな。うん(笑)。声も相変わらず出てないし、歌詞をはしょりながら歌って、要所要所で客に歌わせまくる、相変わらずのスタイル。そこに関してはもう諦めているしお約束だと思っているからいいんだけど、やっぱりルックスだけは……せめて最後なんだし、もっとちゃんとしてよと思わずにはいられなかったな。

セトリは特に新鮮味のない、王道のグレイテスト・ヒッツ。ここ10年ちょっとで急に定番曲と化した1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)収録曲の「On With the Show」や「Too Fast For Love」があったり、ゲイリー・グリッター「Rock & Roll Part 2」をフィーチャーした「Smokin' In The Boys' Room」、これをやるならもっとほかのオリジナル曲やれよと思わずにはいられなかったSEX PISTOLSカバー「Anarchy in the U.K.」など、まあ2000年代のモトリーらしさをそのまま凝縮した感じです。

中盤のピークは、アルバム同様イントロダクションSEも用意された「Dr. Feelgood」や「Shout At The Devil」。特に後者はリアレンジ版じゃなくてオリジナルバージョンなのもよかったかな。そこから4人の絆を表現したMVがもはや苦笑もの(笑)の「Don't Go Away Mad (Just Go Away)」へと続き、いよいよドラムソロへ。

待ってました! ドラムセットがじわじわと動き出し、そのままレールに沿って上昇し始めるのですが、天井付近まで上がって僕のいるだいぶ手前くらいで動きが止まり……おお、じわじわと焦らすわけですね(笑)。しばらく止まったままドラム叩きまくり、そろそろ動くのかな……と思っていたら、レール付近にテクニカル・スタッフさんが近寄っていき……あれ、これってトラブル!?……トミー、なんか戸惑っている様子。そのまま「Fuck up!」と一言残し、ドラムセットがステージ方向に後退していく……あ、終わり?

すかさず、ミックがステージに登場してギターソロ開始。あ、マジか。本当にトラブってドラムソロ終了かよ……。

当時、僕はSNSにこういった感想を残しています。

「ドラムソロ、機材トラブルで中止。頭上に来ませんでした...」
「いやあ、最後までクソバンドだったなあw」
「ドラムソロに3万円払ったのにね!」
「ドラムソロ、レールの途中で止まったまま。トミー・リー、fuck upと叫んで中断。結局再開なし。レアだけどなんだかなあ。なんのアナウンスもなかったし。」
「以後、テンションだだ下がりで棒立ちでした。最後がこれかあ。まあ、らしいっちゃあらしいけど。」

Img_0474ホントこれ。「Live Wire」が始まろうが何しようが、最後までほぼ棒立ち。本編ラストの「Kickstart My Heart」でさえ、無感情でステージを見つめていた記憶があります。

でも、ちょっとだけ心が動かされ、気持ちが持ち返したのがアンコール。すぐ後ろにあるPA卓のさらに後ろにミニステージがあり、メンバーがそこに登場。ラストナンバー「Home Sweet Home」をここで演奏してくれたわけです。しかも、このミニステージがどんどんせり上がっていくわけです……ああ、そのままローラーコースターのレールを逆走してくれたらいいのに、なんて思ったことはここだけの話(笑)。こうして約100分にわたる僕にとってのMOTLEY CRUEラストステージは幕を降ろしたのでした。こういう終わり方、このバンドらしいよな(笑)。

きっと1万円の席にしていたら、次の日も当日券で入ったんだろうけど、さすがに3万円払ったあとなので……こういう終わり方もいいかな、と思ってしまった自分もまたいて。腐れ縁のバンドの最後としては、こういう最低な終わり方もまた最高かな(笑)。

あれから5年……映画があったり、新曲があったり、ライブ活動再開させたり、すべてが予想通りの流れで進み(笑)。そこも含めてダメで最低で最高。This is MOTLEY fuckin' CRUE!

 

【セットリスト】
01. Saints Of Los Angeles
02. Wild Side
03. Primal Scream
04. Same Ol' Situation (S.O.S.)
05. Looks That Kill
06. On With the Show
07. Too Fast For Love
08. Smokin' In The Boys' Room(feat.「Rock & Roll Part 2」)
09. Mutherfucker Of The Year
10. Anarchy in the U.K.
11. T.N.T. (Terror 'N Tinseltown) 〜 Dr. Feelgood
12. In The Beginning 〜 Shout At The Devil
13. Don't Go Away Mad (Just Go Away)
  〜 Tommy Lee Drum Solo
  〜 Mick Mars Guitar Solo
14. Live Wire
15. Too Young To Fall in Love
16. Girls, Girls, Girls
17. Kickstart My Heart
<アンコール>
18. Home Sweet Home

NIGHTWISH『ONCE』(2004)

NIGHTWISHが2004年6月初旬にリリースした5thアルバム。日本盤は約2ヶ月遅れの同年7月下旬に発表されました。

フィンランド出身の男女混合ボーカルによるシンフォニックメタルバンドの先駆けとして、1997年の本国デビュー(日本デビューは1999年)以降、北欧を中心に人気を高めてきた彼ら。本国や日本ではUniversal傘下のSpinefarm Recordsからのリリース(日本盤はそれまでTOY'S FACTORYから発売)に加え、その他のヨーロッパ諸国ではNuclear Blast Records、北米ではRoadrunner Recordsからの流通となり、全世界的に彼らの音源が行き届き始めます。その結果、リードシングル「Nemo」の大ヒット(フィンランド&ハンガリー1位、ドイツ6位、オーストリア&スウェーデン12位、スイス14位など)の手伝いもあって、アルバム自体も本国やドイツ、ノルウェー、ギリシアで1位を獲得。全世界でトータル230万枚以上を売り上げる、最大のヒット作となりました。

本作のレコーディングには、映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のサントラ参加メンバーを含むロンドン・セッション・オーケストラ(ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、アカデミー室内管弦楽団)をフィーチャー。ターヤ・トゥルネン(Vo)の伸びやかで繊細かつパワフルなボーカルを前面に打ち出しつつ、オペラやクラシックをベースにしつつも現代的なパワーメタル感も随所に取り入れられたメランコリックなシンフォニックメタルが展開されています。

本作はなんといっても名曲「Nemo」の存在が大きく取り沙汰される機会が多い1枚で、事実僕もアルバム日本盤発売前に同曲のMVを観たのをきっかけに、アルバムを予約注文したくらいでしたから。もともとこの手のシンフォニックメタルには苦手意識を持っていたのですが、本作はそんなビギナーにとっても親しみやすい1枚と言えるでしょう。

オープニングを飾る「Dark Chest Of Wornders」や「Wish I Had And Angel」は仰々しさを備えつつも、そこまでクドすぎない。その流れから「Nemo」に突入するので、アルバム冒頭3曲で完全に心を鷲掴みにされるわけです。その後も「The Siren」「Dead Gardens」などノリの良い楽曲や流麗なメロディが続き、スルスルと聴き進めることができます。

かと思えば、「Creek Mary's Blood」や「Ghost Love Score」のような8〜10分台の大作も用意されている。けど、これがまったく飽きることなく最後まで楽しめてしまうんです。それもこれも、冒頭の3曲でうまいこと免疫を付けられたからこそなんでしょうね。

このアルバムをきっかけに、その後もNIGHTWISHの新作は毎回チェックすることになるのですが、初代女性シンガーのターニャは本作を携えたワールドツアー後にバンドを脱退。新たにアネット・オルゾン(Vo)を迎え、さらなる傑作『DARK PASSION PLAY』(2007年)をリリースすることになるのですが、それはまた別の機会に。

NIGHTWISHがどんなバンドかを理解する上で、入門編としても最適。初期NIGHTWISHの最高傑作にしてシンフォニックメタルの教科書的1枚です。

ですが、本作や『DARK PASSION PLAY』がいまだに日本国内でストリーミング配信されていない事実は、どうにかならないものでしょうか。ぜひ早急に改善していただきたいものです。

 


▼NIGHTWISH『ONCE』
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2020年2月13日 (木)

EVANESCENCE『EVANESCENCE』(2011)

2011年10月上旬にリリースされたEVANESCENCEの3rdアルバム。

メガヒットを記録したデビューアルバム『FALLEN』(2003年)のリリースツアー中、ソングライターのひとりであるベン・ムーディ(G)がバンドを脱退。エイミー・リー(Vo, Piano)は新メンバーを迎えることでツアーを継続し、新たな布陣で2ndアルバム『THE OPEN DOOR』(2006年)を完成させます。同作はチャート上ではデビューアルバム(全米3位)を上回る初の全米1位を獲得。セールス的には200万枚程度とデビュー作には及びませんでしたが、メガヒット後の余波を受けつつ成功を持続させることができました。

『THE OPEN DOOR』は『FALLEN』の世界観を踏襲した、良くも悪くも“ディフォルメ感”の強い1枚でした。即効性はかなり強く、リリース当時は良い作品だと感じながらリピートしたのですが、時間が経つと「これを聴くなら別に1作目があればいいんじゃないか?」と思えるようにもなってしまい。要するに、瞬発力やインパクトはある程度あるのですが、深みが足りない作品集だったように思うのです(今になってみれば、ですが)。

特に、ベンというメインソングライターを欠いたことで、エイミーはテリー・バルサモ(G)という新たなパートナーと共作を続けるのですが、2作目の時点では“デビュー作で獲得できたファン層をいかに離さずに1stアルバムらしさを再現するか”に注力することのみに専念。結果、バンドというよりは“エイミー・リーのソロプロジェクト”感が強くなってしまったのかもしれません。

そこから5年という長い歳月を経て、エイミーはEVANESCENCEを“ソロプロジェクト”から“バンド”へと成長させた。だからこそ、このタイミングにバンド名をアルバムタイトルとして用いたのでしょうね。

当初は巨匠スティーヴ・リリーホワイト(U2、XTC、LUNA SEAなど)をプロデューサーに迎えて制作を始めたものの、途中でニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSDEFTONESMASTODONなど)に交代。エイミー、テリー、トロイ・マクロウホーン(G)、ティム・マッコード(B)、ウィル・ハント(Dr)という心強い布陣は演奏やアレンジのみならず、ソングライティング面でも貢献することでよりバンド感を強めることに成功しています。

実際、このアルバムではデビューアルバムの幻影をかなり払拭できているのではないでしょうか。バンドとしての一体感を強め、ソングライティングでも従来のスタイルをただなぞるだけではなくちゃんと進化させている。ゴシックメタルの要素は残しているものの、むしろそれは味付けといった程度に収められており、むしろヘヴィロック/ラウドロックバンドとしての側面を強く確立させているのが本作なのかなと。

シングルカットされた「What You Want」や「My Heart Is Broken」「Lost In Paradise」を筆頭に、「The Other Side」「Never Go Back」、そしてアルバム本編のラストを飾る美しいゴシック&エレポップ風バラード「Swimming Home」など癖になる佳曲が多い。リリースから8年以上経ちますが、意外と何度でもリピートできる1枚です。

 


▼EVANESCENCE『EVANESCENCE』
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2020年2月12日 (水)

SEPULTURA『QUADRA』(2020)

2020年2月初頭にリリースされたSPULTURAの15thアルバム。

7thアルバム『AGAINST』(1998年)から参加したデリック・グリーン(Vo)にとってすでに9作目。デリック、アンドレアス・キッサー(G)、パウロ・Jr.(B)、エロイ・カサグランデ(Dr)という現編成に落ち着いてからも早くも3作目にあたる本作。そうか、すでにマックス・カヴァレラ(Vo, G/現SOULFLY、CAVALERA CONSPIRACY)在籍時よりもデリック在籍後のほうの歴史が長いんですね。それなのに、自分ときたらいまだにデリックを含む編成に苦手意識があって……。

正直な話、『A-LEX』(2009年)を最後に彼らの新譜には触れていなくて。なので、このタイミングにその苦手意識を払拭しょうと思い、リリースされたばかりの新作に手を伸ばしてみたわけです。

で、聴いた結果……良いじゃんか、これ(笑)。

15枚目にして、全部乗せ感ハンパないね。最初期のデスメタルやスラッシュメタルの要素をベースにしつつも、90年代以降のモダンヘヴィネス/グルーヴメタル、名作『ROOTS』(1996年)で確立させたトライバル/プリミティブな側面、プログレッシヴメタル的なアレンジ、シンフォニックなアレンジなど、彼らがこれまでにチャレンジしてきた(であろう)要素がすべて詰まっている。もちろん、近作は聴いていなかったので文字情報で認識していた要素をこうやって新作を通して生で体感することで、「ああ、こうなっていたんだ……すごいな」と再認識したわけです。

アンドレアスは本作で『BENEATH THE REMAINS』(1989年)や『ARISE』(1991年)の頃のようなスラッシュ・フィーリングを復活させたかったようですが、あそこから30年以上もの歳月と経験を経たことにより、まったく同じものにならないのは当然として、それ以上にパワフルなものへと昇華されている。オープニングの「Isolation」なんてまさにそれですよね。かと思えば、それに続くモダンヘヴィネス寄りの「Means To An End」は『CHAOS A.D.』(1993年)などで聴けたあのスタイルですし。そりゃあ悪いわけがない(しかも、この曲で聴けるギターハーモニーがまた素晴らしい!)。

「Last Time」のオープニングでフィーチャーされたアンドレアスの流麗なギターフレーズも素晴らしいし、そこからなだれ込むアグレッシヴな世界観もハンパない。そして、「Guardians Of Earth」でのプリミティブなスタイルとシンフォニックの要素がミックスされた楽曲も気持ちよく楽しめる。そこに「Autem」みたいなハードコアな楽曲もあれば、思いっきりクリーントーンで歌い上げる「Fear; Pain; Chaos; Suffering」で締めくくる。全12曲で約50分というトータルランニングも“ちょうどいい”。いや、完璧でしょう。

正直、この10年の間にも傑作と呼ばれるようなアルバムはあったのかもしれません。なので、この新作を機にここからいろいろさかのぼってみたいと思います。でもね……それを抜きにしても、本作は最高傑作と呼んでも差し支えないんじゃないかな。それくらい“This is SEPULTURA!”な1枚だと断言したい。そう思いませんか?

 


▼SEPULTURA『QUADRA』
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2020年2月11日 (火)

HURRICANE『SLAVE TO THE THRILL』(1990)

1990年にリリースされたHURRICANEの3rdアルバム。日本盤は同年5月下旬に発表されていますが、Wikipediaによると海外盤は同年7月下旬発売。この頃は日本盤がこれだけ前倒しで先行リリースされることも不思議ではありませんでしたが、これ本当に合ってるのかなあ。日本盤のリリース日は間違いないので、もしかしたら海外のリリース日が間違っているのかもしれませんね(当時のこういうデータって曖昧だから)。

さて。本作はスマッシュヒットを記録した前作『OVER THE EDGE』(1988年)に続くアルバムですが、前作を携えたツアー後にロバート・サーゾ(G)が脱退。レコーディングに当時マーク・エドワーズ(Dr)の交通事故で活動継続が難しくなり解散したLIONのダグ・アルドリッチ(G)を迎えて制作しました。

ケリー・ハンセン(Vo)、トニー・カヴァーゾ(B)、ジェイ・シェレン(Dr)にダグという編成で、マイケル・ジェイムズ・ジャクソン(KISSL.A. GUNSARMORED SAINTなど)をプロデューサーに迎えて完成させた本作。ボブ・エズリンが携わることでフックの多かった前作とは異なり、ストレートなアメリカン・ハードロックアルバムに仕上がっています。

これ、ダグの影響なんでしょうかね……と思ったけど、ソングライティング・クレジットに目をやるとバンド以外の名前が曲ごとにたくさん並んでいるんです。インタールードを除く全11曲、バンド単体で書き下ろした楽曲は3曲のみ。ほかはすべて職業ライターが携わった楽曲で、中には前任ギタリストのロバート・サーゾの名前が入った楽曲も(前作からのアウトテイクなのか、脱退前に作っていた未発表曲なのか)。かと思えば、「Next To You」や「Smiles Like A Child」のようにバンドがまったく関わっていない外部ライターの書き下ろし曲も含まれています。

今思うとこれ、レコード会社のテコ入れだったんじゃないかな……前作がBillboardのTOP100入り(最高92位)する中ヒットだったこともあり、もうひと山当ててやろうと意気込んだ結果、BON JOVIAEROSMITHのようにバンドとコライトさせてみた、なんならHEARTみたいにバンドが関わってない曲もやらせてみた、と。

けど、その結果は大外し。正直、バンドの良い面が相当削ぎ落とされてしまっているように思います。もちろん、いい曲もあるんですよ。「Temptation」のような前作の延長線上にあるマイナーキーの佳曲(前作収録の「I'm On To You」を書いたジェフ・ジョーンズとバンドとの共作)や、風変わりな空気感が前作の流れにある「10,000 Years」(これ、ロバート・サーゾが関わった曲なんですよね)とか。それに、カラッとしたメジャーキーの楽曲も、今聴いてみるとそこまで悪いわけではない。だけど、それをHURRICANEっぽいかと言われると……うん。

あと、ダグってこの頃はリフメイカーとしてもソングライターとしても、不器用な人だなと思ったり。正直、本作のギタリストがダグである必然性がまったく感じられないんですよ。そこも勿体ない要素のひとつ。B級からA級へとシフトするために必要な要素として、一流のギタリストだけが足りなかったわけです。セールス的にも前作に及ばず、チャートでも最高125位止まりで終了。残念ですね。

結局、ダグがLION時代の盟友カル・スワン(Vo)とBAD MOON RISINGを結成するために、意外とあっさりとHURRICANEを脱退。残された3人もバンド継続を諦め、1991年に解散を発表しました。2000年にはケリーとジェイがメンバーをギタリスト&ベーシストを一新してHURRICANEを再結成。2001年には唯一のアルバム『LIQUIFURY』をリリースしていますが、数年で再び解散。そして2010年にはロバート&トニーがボーカルとドラムに新メンバーを迎えて再々結成(笑)。こちらの3代目HURRICANEは音源のリリスこそありませんが、Facebookを見る限りでは現在も活動を続けているようです。

 


▼HURRICANE『SLAVE TO THE THRILL』
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2020年2月10日 (月)

LION『DANGEROUS ATTRACTION』(1987)

1987年7月にリリースされたLIONの1stフルアルバム。本作はまず日本のキャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)からリリースされ、追って海外でもScotti Bros. Recordsから発売されています。

当時のメンバーはカル・スワン(Vo)、ダグ・アルドリッチ(G)ジェリー・ベスト(B)、マーク・エドワーズ(Dr)。マークはロン・キール(Vo)やイングヴェイ・マルムスティーン(G)らとともにSTEELERとして活躍したことで知られ、カルはNWOBHM流れのバンドTYTANの一員として活動した経歴の持ち主(TYTAN自体マニアックな存在で、ここ日本ではLIONの知名度が上がったことで知られるようになりました)。また、カルとダグはLION解散後にBAD MOON RISINGを結成し、ここ日本ではそれなりの成功を収めています。

本作は前年に日本限定で発売された6曲入りミニアルバム『POWER LOVE』(1986年)に続く作品で、同作に収録された「Powerlove」はこの1stアルバムでもリメイクされ収録。MVが制作されたこともあり知っているという人も少なくなく、現在に至るまで彼らの代表曲として親しまれています。

いわゆるRATTを中心とするLAメタル流れのミドルテンポ中心なHR/HMに、スコットランド出身のカルによる湿り気の強いボーカルが乗ることで、適度なマイナー感が生まれる。ある種、DOKKENあたりに近い存在ではあるのですが、それもあってか日本ではウケたんでしょうかね。

「Powerlove」はメジャーキーのキャッチーな楽曲ですが、もちろんこれ以上に良い曲はたくさん含まれております。オープニングを飾る「Fatal Attraction」しかり「Hard & Heavy」しかり、マイナーキーのヘヴィナンバーは総じて良いですし、「Never Surrender」や「Shout It Out」のような疾走感の強い楽曲も存在する。ヘヴィバラードと呼べなくもない「In The Name Of Love」も素晴らしいですし、続く「After The Fire」も味わい深いし、「Death On Legs」みたいな能天気なハードロックも悪くない。

そう、良い曲が多いんですよ。けど、名盤には程遠い。それはなぜか……理由は簡単。似たようなテンポ感の楽曲が続くので、途中で飽きてしまう可能性が高いから。もう1曲くらい変化球(思いっきり泣かせるスローバラードとか)があったら、また評価も変わったんでしょうけど、このB級感が良いという声もありまして(主に自分)。うん、あの時代だったから良かったんですよ、これが。

ちなみに、本作はのちに海外でリマスター再発された際、1986年公開のアニメ映画『トランスフォーマー ザ・ムービー』の主題歌として提供した「The Transformers (Theme)」を追加収録。この曲がまた良いんですよね……このバンド、映画に提供した楽曲がすこぶる良くて(ほかにも1984年の『13日の金曜日 完結編』に「Love Is A Lie」、1986年の『処刑ライダー』に「Powerlove」と「Never Surrender」を提供)。そこも含めてどっちつかずというか、不幸というか……。

 


▼LION『DANGEROUS ATTRACTION』
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2020年2月 9日 (日)

REVOLUTION SAINTS『RISE』(2020)

2020年1月下旬にリリースされたREVOLUTION SAINTSの3rdアルバム。日本盤は当初の予定より約1ヶ月遅れ、同年2月後半に発売予定です。

REVOLUTION SAINTSは再結成後のJOURNEYにスティーヴ・スミス(Dr)の後任として加入し5枚のオリジナル作品に参加したディーン・カストロノヴォ(そのほかBAD ENGLISHHARDLINEなどでも活躍)がボーカルを務め、NIGHT RANGERのジャック・ブレイズ(B, Vo)、THE DEAD DAISIESやBURNING RAINに在籍し、過去にはLIONBAD MOON RISINGWHITESNAKEDIOなどでも活躍したダグ・アルドリッチ(G)の3人で2014年に結成したスーパーグループ。これまでに『REVOLUTION SAINTS』(2015年)、『LIGHT IN THE DARK』(2017年)と2枚のアルバムを発表しています。

JOURNEY時代にもアルバムやライブでボーカルを披露し、その“らしさ”と歌唱力の高さでファンを驚かせたディーン。このバンドでは、その素晴らしい魅力が余すところなくフィーチャーされています。

以前もいろんなところで書いてきましたが、80年代から90年代前半にかけて登場したこの手のスーパーバンドって意外と長続きしないんですよね。理由のひとつとして挙げられるのは、過去のバンドで成功したメンバーたちによるエゴのぶつかり合い。あとはお金(笑)。ところが、ここ最近は2枚目、3枚目と長続きするスーパーバンドも増えている。それは、以前のように「1人1バンド」みたいな過去の常識が通用しなくなり、別に複数のバンドに籍を置いてもいいんだという風潮が当たり前になったことも大きいのでしょう。上に書いたように、ジャックは現在もNIGHT RANGERのメンバーですし、ダグに至ってはディーンとTHE DEAD DAISIESとしても活動しているわけですから。

そんなこのバンド。実は影の功労者が存在します。正式メンバーではないものの、レコーディングやツアーには必ず参加し、アルバムのプロデュースまで手掛けるアレッサンドロ・デル・ヴェッキオという人物。実はこれまでのアルバム収録曲すべてのソングライティング・クレジットに彼の名前が記されている(カバー曲を除く)ことから、REVOLUTION SAINTSはむしろ「アレッサンドロが書いたJOURNEYっぽい曲をディーンがスティーヴ・ペリーっぽく歌う」プロジェクトと呼ぶほうが正しいのかもしれません。

そんな本作ですが、オープニングの「When The Heartache Has Gone」から突っ走りまくってます。曲調といいシンセの音色といい、“あの頃のJOURNEY”。ぶっちゃけ、曲の完成度は過去2作より高まっているように感じます。しかも、バラードも含まれているけど基本的にはロックしまくりのスタイル。悪いわけがない。

適度なポップさが伴ったミドルナンバーとアップチューンが交互に飛び出す前半と、らしいピアノバラード「Closer」以降の緩急に富んだ構成。非常に聴きやすいです。しかも、曲によってはディーンとジャックのツインボーカルになっているし(ジャックがNIGHT RANGERのときほど声を張り上げていないのも好印象)、特に今回は曲によってはNIGHT RANGER色が強まっているのも興味深い。先の「Closer」なんて完全にそれですよね。かつ、アルバムラスト(ボートラ除く)のピアノバラード「Eyes Of A Child」がジャック&トミー・ショウの元DAMN YANKEES組による書き下ろし。そのほかにも、それっぽさが至るところに散りばめられているので、聴き込んでみると面白いかもしれません。

それにしても、本作でのダグのギタープレイ、素敵ですよね? THE DEAD DAISIESでもなかなか良いなと思っていたけど、本作におけるプレイはその比じゃないくらいに素晴らしい。実はダグってブルースベースのハードロックよりもこういったタイプのほうが合っているのかしら。

ということで、個人的にも非常のポイントの高い1枚。一回生で観てみたいです。

 


▼REVOLUTION SAINTS『RISE』
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2020年2月 8日 (土)

AVENGED SEVENFOLD『DIAMONDS IN THE ROUGH』(2020)

2020年2月初旬に発表されたAVENGED SEVENFOLDの最新コンピレーションアルバム。アナログ盤およびデジタルのみでのリリースとなります。

本作はもともと、2008年9月に『LIVE IN THE LBC & DIAMONDS IN THE ROUGH』というタイトルで発売された作品集に付属したCDがオリジナルで、2006〜2008年頃に録音された未発表曲およびコンピに提供したカバー曲、4thアルバム『AVENGED SEVENFOLD』(2007年)収録曲の別バージョンの全11曲で構成されたものでした。つまり、大半の未発表曲は『AVENGED SEVENFOLD』からのアウトテイクということになります。

当時聴いた限りでは、クオリティ的にはほかの『AVENGED SEVENFOLD』収録曲に劣るわけではないものの、アルバムの方向性や今後見せたいスタイルとは異なったものだったのかなと感じました。つまり、従来のA7Xらしさを維持した、ファンとしては安心して楽しめる楽曲が目白押し。全体的にも大ヒットした3rdアルバム『CITY OF EVIL』(2005年)と『AVENGED SEVENFOLD』と中間/過渡期的内容といったところでしょうか(これまた“過渡期”って表現すると、完成度的に一歩劣ると捉えられそうですが、まったくそんなことないのでご心配なく)。

また、カバー曲としてIRON MAIDENのカバー「Flash Of The Blade」と、当時よくライブで披露されていたPANTERAのカバー「Walk」も収録。どちらも原曲の良さをそのまま残したコピーに近い仕上がりですが、不思議とA7Xのスタイルにも合っている。さらにアルバム『AVENGED SEVENFOLD』から「Almost Easy」のクリス・ロード・アルジによる別ミックスや「Afterlife」の別バージョンも収録されています。

で、今回改めてアナログ&配信で単独リリースとなった最新バージョンの『DIAMONDS IN THE ROUGH』は最新リマスタリングが施され、既出11曲に5曲追加した全16曲を収録。こちらは『AVENGED SEVENFOLD』以降のアルバム未収録曲やコンピ提供曲……つまり、大半はザ・レヴ(Dr)逝去後の音源となります。

内訳としては「Lost It All」と「4:00 AM」が5thアルバム『NIGHTMARE』(2010年)期の音源で、ドラマーはマイク・ポートノイ(ex. DREAM THEATERSONS OF APOLLOなど)。ともに既出音源です。

そして「St. James」と「Set Me Free」が6thアルバム『HAIL TO THE KING』(2013年)期の音源で、ドラマーはアリン・アイルジェイ。さらに、ラストに収められた「Paranoid」はご存知BLACK SABBATHのカバーで、2009年3月に発売されたコンピレーションアルバム『COVERED , A REVOLUTION IN SOUND』に提供した1曲。タイミング的には「Flash Of The Blade」などと同時期に録ったものだと思われるので、ドラマーはザ・レヴ。この中で完全なる未発表曲は「Set Me Free」のみで、こちらは先月から先行配信されていたのですでに耳にしていた方も少なくないでしょう。いかにも彼ららしいパワーバラードで、ネットリしたギターソロがいい味を出しております。

特に大きな驚きのないコンピかもしれませんが、現時点での最新オリジナルアルバム『THE STAGE』(2016年)に続くフルアルバムを待つ間の穴埋めとしては……ちょっと物足りないかも(笑)。2017年にはがっつり曲追加した『THE STAGE』デラックスバージョンもあったし、2018年にはアクションゲーム『CALL OF DUTY: BLACK OPS』シリーズに提供した楽曲を集めたEP『BLACK REIGN』も発売されているし、それらと比べたらちょっと……ね。

というわけで、個人的には『NIGHTMARE』を超えるフルアルバムに期待してますよ、A7Xの皆さん。

 


▼AVENGED SEVENFOLD『DIAMONDS IN THE ROUGH』
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2020年2月 7日 (金)

BRITISH LION『THE BURNING』(2020)

2020年1月中旬に発表されたBRITISH LIONの2ndアルバム。

BRITISH LIONはIRON MAIDENのスティーヴ・ハリス(B)がサイドプロジェクトとしてスタートさせた5人組バンドで、メンバーはスティーヴのほかリチャード・テイラー(Vo)、デヴィッド・ホーキンズ(G)、グレアム・レスリー(G)、サイモン・ドーソン(Dr)という編成。2012年にセルフタイトルの1stアルバムを発表し(同作はスティーヴ・ハリス名義でのリリース)、短いながらもツアーも敢行。その後はメイデンの活動にシフトしていきましたが、2018年秋にはアルバムリリースから6年を経て待望の初来日公演も実現しております。

デビュー作から7年を経て届けられた2ndアルバムは、BRITISH LION名義でのリリースという事実のみならず、その内容からもスティーヴのサイドプロジェクトからひとつの独立したバンドに昇格した印象を受けます。

前作の時点でソングライティングにスティーヴ以外のメンバーも積極的に関わっていましたが、それは本作も同様。むしろ、そういったスティーヴ以外の4人のカラーも強く反映された結果、前作にあった“取っ付きにくさ”が解消されています。

基本的には前作の延長線上にある、スティーヴが若い頃に強く影響を受けたクラシックロック……UFOTHIN LIZZYをはじめとするブリティッシュロックバンドを現代によみがえらせたような楽曲を展開しています。が、それらが今作ではよりわかりやすく昇華されているんです。ところどころでスティーヴらしいパーカッシヴなベースプレイを見つけることもできるし、リチャードの節回しも初期メイデンに通ずるものがあるので、メイデンファンの耳にも優しい内容となっているはずです。

また、それは随所にフィーチャーされたツインリードや適度なプログレッシヴロック的アレンジにも表れており、2バンドの共通点を見つけ出すのは容易いことかもしれません。が、アルバムを通して聴き進めていくにつれて、このバンドは良い意味で“後ろ向き”なんだなってことにも気づかされます。

メイデンが伝統を守りながらも現代のシーンと向き合っているのに比べると、BRITISH LIONのこのアルバムは「あの頃の俺よ、もう一度」みたいな“童心に帰って楽しんでいる”感が強く伝わってくる。この“後ろ向き”さをネガティヴに捉えてしまえば、本作は今のリスナーにとってつまらない1枚かもしれません。が、メインのバンドがあるからこそ“わかっている”人が“やるべき”ことを徹底してやった結果がこれなのです。だから全然アリなんですよね。

メイデンファンはもちろんのこと、“古き良き時代のブリティッシュハードロック”に関心のあるリスナーにも手に取ってもらいたい本作。派手さ皆無、本当に地味で音の“隙間”が多い1枚ですが、だからこそ若いリスナーにはその隙間に身を委ねつつディープな音世界に浸っていただきたいものです。

 


▼BRITISH LION『THE BURNING』
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2020年2月 6日 (木)

GIUDA『E.V.A.』(2019)

2019年3月末にリリースされたGIUDAの4thアルバム。日本盤は同年4月初頭に発売されています。

「ジューダ」と発音するこのバンド名は、イタリア語で“Judas”を意味するワードとのこと。そのバンド名からもおわかりのようにイタリア出身の彼らは、TAXIというパンクバンドで活躍していたテンダ(Vo, B/当初はVoのみ)とロレンゾ(G, Vo)を中心に2007年に結成し、2010年にアルバム『RACEY ROLLER』でデビューを飾りました。当初はシングルギター編成でしたが、のちに現メンバーのミケーレ(G)が正式加入し、ベーシストの脱退を経てテンダがベースも兼務することに。2012年からはアメリカでも精力的にライブ活動を行うようになり、近年はさまざまなロックフェスにも出演を果たしています。

本作が日本デビュー作となるGIUDAですが、ここで鳴らされている音はパンクとも異なる、ガレージロック色が強めなニューウェイヴ流れのハードポップ(笑)といったところでしょうか。ところどころでサイケデリックなフレイバーも感じられ(ジャケットからしてそれっぽいですし)、またアルバムタイトルの『E.V.A.(Extra-Vehicular-Activityの意)』やその邦題『2019年宇宙の旅』という某映画のパロディ感からもその雰囲気が伝わってきます。

ギターもファズを効かせたサウンドのみならず、空間系をはじめとするエフェクトを多用しており、いい感じで浮遊感を漂わせています。また、ドラムとベースが生み出す“良い意味でのスカスカ”感もたまらない。ギターが2本入っているはずなのに、不思議と厚みを感じさせないのですから、本当に面白い。

で、歌のほうも非常にポップなメロディとわかりやすいシンガロングパートを用いることで、一度聴いたら耳から離れないキャッチーさが備えられている。そのポップ感は、例えば初期のKISS(ボーカルの歌唱法がポール・スタンレーの中音域にも似ているような)やCHEAP TRICKあたりにも通ずるものがあり、さらにSWEETやSLADEあたりのバブルガムポップ風グラムロックとの共通点も見受けられる。随所にフィーチャーされたハンドクラップやアナログシンセも、そういったオールドスクール感を増長させているところがあり、『2019年宇宙の旅』というよりもタイムスリップをしているような錯覚すら味わせてくれるのですから、本当に面白い1枚です。

しかも、このアルバムがリー・ドリアン(ex. CATHEDRAL、WITH THE DEAD、SEPTIC TANK)主宰レーベルのRise Above Recordsからのリリースというのがまた面白い。そのへんいろいろ含みを持たせている点も込みで堪能したい良作です。

 


▼GIUDA『E.V.A.』
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2020年2月 5日 (水)

AVATARIUM『THE FIRE I LONG FOR』(2019)

2019年11月下旬にリリースされたAVATARIUMの4thアルバム。

AVATARIUMは紅一点のジェニー・アン・スミス(Vo)を擁するスウェーデンのドゥームメタルバンド。もともとはCANDLEMASSのレイフ・エドリング(B)が2012年に立ち上げたプロジェクト・バンドで、翌2013年にセルフタイトルアルバムでデビュー。その後、レイフは健康上の理由でライブ活動から撤退し、現在はソングライティング面などでバンドに関与しています。なので、バンドは現在パーマネントのベーシストが不在。ジェニー、マーカス・イデル(G)、アンドレアス・“ハボ”・ヨハンソン(Dr)、リカード・ニルソン(Key)の4人を中心に活動を続けています(レイフは現在もCANDLEMASSではライブ活動を継続)。

本作でも聴くことができるヘヴィな楽曲群は、オジー・オズボーン在籍時の初期BLACK SABBATHが武器としたドゥーミーなハードロックと、ロニー・ジェイムズ・ディオ期のBLACK SABBATHが得意としたメロウでドラマチックな正統派ヘヴィメタルがミックスされ、かつモダンな味付けで仕上げられたものが中心。もちろん、そこは過去3作同様のスタイルではあるのですが、今作ではこれまでには見られなかった新たな試みも用意されています。

それは、メンバーのマーカス・イデル(G)がインタビューで語るRAINBOWLED ZEPPELINTHE DOORSといったクラシックロックからの影響が色濃く表れている点でしょう。低音を活かしたヘヴィさが際立つものの随所にオールディーズ・テイストが散りばめられた「Rubicon」や、ブルージーかつソウルフルなトラッドバラード「Lay Me Down」、サイケながらも直線的なロックンロール色も強い「Shake That Demon」、アンビエント性も感じられるピアノバラード「Stars They Move」といった楽曲はまさにこういった影響下にあると断言できます。

こういった緩急に跳んだ楽曲群を前にすると、本作が単なる“BLACK SABBATHをベースとしたドゥームメタルの焼き直し”ではないことはご理解いただけるはず。特にマーカスの奏でるアコースティックギターやリカードのピアノ&オルガンをフィーチャーしたムーディなアレンジは、このアルバムにおける大きなフックとなっておりAVATARIUMが数多のドゥームメタルバンドとは一線を画する存在へと進化したことが伺えます。

同郷の大先輩でありレイフという共通人物を持つCANDLEMASSも昨年、バンドをネクストレベルへと導いた力作『THE DOOR TO DOOM』をリリースしていますが、こういった温故知新的ジャンルですらモダンな形へ進化を遂げているあたりに、現在のシーンの面白みを感じ取れるのではないでしょうか。ぜひCANDLEMASSとセットで楽しんでもらいたい良作です。

 


▼AVATARIUM『THE FIRE I LONG FOR』
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2020年2月 4日 (火)

MAMMOTH MAMMOTH『KREUZUNG』(2019)

2019年11月上旬に発売された、MAMMOTH MAMMOTHの5thアルバム。日本盤未発売。

彼らはオーストラリア・メルボルン出身の4ピースバンド。ストーナー・ロックの影響下にある爆走ガレージロックをベースに、ファズの効いたギターと疾走感のあるリズム、吐き捨てるようなボーカルスタイル、そして時に見せるサイケデリックな味付けが魅力で、僕自身も2ndアルバム『VOLUME III: HELL'S LIKELY』(2012年)で初めて彼らの音に触れました。

久しぶりに聴いたMAMMOTH MAMMOTHの新作ですが、過去のイメージから1ミリもズレない、想像どおりのイキのいいロックンロールを聴かせてくれます。

オープニングを飾る「I'm Ready」の冒頭、ハイハットで刻むカウントパートだけで小便チビリそうになるくらいのカッコよさを感じるし、絶妙なヘタウマボーカルも相変わらず。ボーカルの上で泣きまくるギターフレーズにもゾクゾクする。MOTÖRHEADIRON MAIDENをミックスしてガレージにぶち込んだような、そんな音。悪いわけがない。

かと思えば「Wanted Man」では同郷の大先輩AC/DCの初期を彷彿とさせるハードロックを聴かせてくれるし(と同時に、初期のKISSっぽさも感じられる)、タイトルからしてど直球すぎる「Motherfucker」は直線的に突っ走る問答無用の爆走ロケンローだし、アルバムタイトルトラック「Kreuzung」では独特のグルーヴィーさが散りばめられた暗黒ダンスチューンに仕上がっている。

かと思えば、BLACK SABBATHにも通ずるギターリフを持つスモーキーなブギー「Tear It Down」があったり、イントロのアコギにキュンとするのも一瞬、すぐに速度200キロで突っ走り出す「Tonight」もあるし、その狂いっぷりに悪魔も逃げ出しそうな「Mad World」、低音ボーカルがクセになる「Lead Boots」など、ただただスピード違反寸前に疾走するだけではもの足りず、いろいろなフレイバーも用意していく。くそっ、姑息だぞ!(そんなこと全然ないんだけど)

こういうロックンロールを前にすると失語症寸前というか、ぶっちゃけ「言葉はいなら。とっとと聴け!」と思ってしまうわけです。が、それではこのテキストもすぐに終わってしまうので、こうやっていろいろ説明を書いているわけですが……。

ああもう! これ読むの、ここで止めていいから、今すぐ下のリンクからストリーミングサービスに飛ぶか、貼ってあるYouTube動画を再生してください。考える前に跳べ。まさにそんな1枚です。

 


▼MAMMOTH MAMMOTH『KREUZUNG』
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2020年2月 3日 (月)

SONS OF APOLLO『MMXX』(2020)

2020年1月中旬にリリースされたSONS OF APOLLOの2ndアルバム。

ご存知のとおりこの彼らはジェフ・スコット・ソート(Vo)、ロン・“バンブルフット”・サール(G)、ビリー・シーン(B)、マイク・ポートノイ(Dr)、デレク・シェリニアン(Key)というHR/HMシーンで一度は耳にしたことがある名前が一堂に会したスーパーバンド。特にマイクとデレクという元DREAM THEATER組がいることで、そのサウンドもプログレ・メタル的なものが求められたと思います(ビリーもNIACINでそれらしいことやってますしね)。

実際、デビューアルバム『PSYCHOTIC SYMPHONY』(2017年)はその期待に答えつつも、それだけでは終わらないモダンヘヴィネス感も兼ね備えた良作に仕上げられ、同作を携えたワールドツアーも80本以上にわたり敢行。昨年秋にはライブCD&映像作品『LIVE WITH THE PLOVDIV PSYCHOTIC SYMPHONY』(2019年)もリリースし、話題となったばかりです。

スーパーバンドにありがちな「アルバム1枚で終わる短命さ」も不安視された彼らでしたが、前作から2年強という昨今では比較的短いスパンで届けられた本作に喜んだファンも少なくないはず。そんな本作ですが、基本的には前作の延長線上にある1枚だと感じました。ただ、バンドとしてのアグレッションやノリは前作よりも優っており、そこは長期ツアーを経験したことで5人の関係性がより密になった結果なのかな。個々のソロプレイを尊重しつつも、最終的にはバンドとしての一体感を重視している。そんな印象を受ける1枚です。

ジェフのボーカルは相変わらず絶好調で、メロディラインも彼の声質や歌唱スタイルをうまく活かしたものになっていると思います。プログレメタルと表現したものの、本作はモダンヘヴィネス寄りな味付けも強く、バラード風だけどブルースロックをモダンメタル調に昇華した「Desolate July」、比較的ストレートなアレンジが施されているもののギターのフレージングにモダンさが散りばめられた「Fall To Ascend」など、一聴すると単調なようでも実は細部まで練り込まれている。DTでいったら『AWAKE』(1994年)あたりのテイストに近いのかなと感じました。そうか、だから自分は彼らの音が好きなのか。納得です。

1曲1曲は相変わらず長尺なものが多く、トータル58分に対し5分前後の楽曲が3曲、6分前後が2曲、7〜8分台が2曲のほか、ラストには約16分におよぶ超大作「New World Today」が用意されています。特に「New World Today」は評価が分かれるところかもしれませんが、僕個人としては好意的に受け取っています。実際、飽きなかったですし。

各メンバーのファンからすると「あれ、このフレーズって……」と焼き直しを不安視するフレーズも含まれているのかもしれませんが、そこまでディープなリスナーではない自分は終始楽しく聴くことができましたし、昨年試聴サンプルを頂いてから今日まで頻繁に聴き返している1枚。難しいことを考えず、いや考えすぎずにこの音の洪水に身を委ねてみてはいかがでしょう。

あ、ちなみに本作のデラックス盤にはアルバム収録曲のインストバージョンと、ボーカルのみを抜き出したアカペラバージョンを収めたボーナスディスクを付属。こちらもネタとしては面白いので(しかも各ストリーミングサービスにも用意されているので)、アルバム本編を十分に楽しんだあとに触れてみることをオススメします。

 


▼SONS OF APOLLO『MMXX』
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2020年2月 2日 (日)

ANNIHILATOR『BALLISTIC, SADISTIC』(2020)

2020年1月下旬発売の、ANNIHILATOR通算17作目のオリジナルアルバム。

デイヴ・パッデン(Vo, G)の脱退を経て制作された前々作『SUICIDE SOCIETY』(2015年)から再びジェフ・ウォーターズ(Vo, G)がリードボーカルを採る編成に立ち返ったANNIHILATOR。以降、16thアルバム『FOR THE DEMENTED』(2017年)、ライブCD+映像作品『TRIPLE THREAD』(2017年)と順調に作品を重ねており、スタジオ作としては前作にあたる『FOR THE DEMENTED』も切れ味鋭いスラッシュチューンを存分に味わえる力作として、概ね好評を得たのではないかと記憶しています。

続いて届けられた今作『BALLISTIC, SADISTIC』ですが、クレジット上ではジェフのほかアーロン・ホンマ(G)、リッチ・ヒンクス(B)、ファビオ・アレッサンドリーニ(Dr)の4人がメンバーとして名を連ねていますが、レコーディングに参加したのはジェフとファビオの2人のみ。前作ではジェフがドラム・プログラミングまで含めてほぼすべての演奏を手がけましたが(1曲のみアーロンがリードギターを担当)、今作も基本的にそういうノリなんでしょうね。ドラマーが参加してはいるものの、シンバルやハイハットの音色的にどうも生っぽくないので、ファビオ自身がドラマーとしてプログラミングしている可能性もなきにしもあらずですが。

けど、そういった要素がこのアルバムにとってマイナスになっているかと問われると、答えはノー。これ、本当にすごいんですわ。

何がすごいって問われると、非常に言語化に困るのですが……うん、前作までの勢いやアグレッシヴさはそのままなのですが、作風やまとまり方が初期のアグレッションに立ち返っているような印象を受けるのです。モダンなヘヴィメタル、ブルータルメタルの要素よりも、80年代後半から90年代初頭に彼らが持ち合わせていたインテレクチュアル・スラッシュメタル的な緻密さ……もっと言えば、最初期のMEGADETHが得意とし、そこを引き継いだであろう初期のANNIHILATORのスタイルを、デビューから30年経った今のANNIHILATORが表現したらどうなるのか? そんな命題と向き合ったのが本作なのでは……という感じてしまうわけです。

なもんですから、悪いわけがない。ジェフ自身の原点にしてもっとも得意としていたスタイルを見つめ直し、ギタリストとしてはもちろんのこと、シンガーとしてもひと回りもふた回りも大きく成長した今だからこそ、彼がドラム以外のすべての楽器を自由に操り、ボーカルまでもをコントロールしている。そりゃあ最高に違いないわけですよ。

ここまで捨て曲が一切なく、かつ首尾一貫して暴力的で攻撃的な本作は、間違いなくANNIHILATORの代表作と呼ばれることになるでしょうし、なんなら(2020年時点における)最高傑作と言い切ってしまってもいいかもしれません。年明け1ヶ月経たないタイミングに、こんなにも強烈なインパクトを残すANNIHILATOR、おそるべし。ぜひこの編成によるライブも一度体験してみたいものです。

 


▼ANNIHILATOR『BALLISTIC, SADISTIC』
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2020年2月 1日 (土)

FEVER 333 JAPAN D333MONSTRATIONS TWO THOUSAND TWENTY@マイナビBLITZ赤坂(2020年1月29日)

Img_4562FEVER 333は昨年1月に1stフルアルバム『STRENGTH IN NUMB333RS』(2019)を発表した直後の3月、同作を携えたジャパンツアーを行ったばかり。その前の2018年7月にはフジロックで初来日しているので、短期間で3度にもわたる日本公演を行ったことになります。

実際、前回から数えても10ヶ月、アルバム以降も「Kingdom」や「Vandals」といった楽曲を発表しているものの、やはりフルアルバムとEP『MADE AN AMERICA』(2018年)の2枚しかないことを考えると、ライブがマンネリ化しても不思議じゃないですし、実際今回のライブに関しても「果たして、あのバカ度を維持したまま観客を熱狂させ続けることができるのか?」と若干に不安を感じていたのも確か。

ですが、僕自身はフジロックでの初来日をネット中継で観たのみで、実は生で観るのはこれが初めて。不安以上に「どこまでやってくれるんだろう?」っていう期待のほうが上回っていたのも、また事実でした。そんなポジティブなワクワクと、ほんのちょっとのネガティブなドキドキを抱えて、2020年最初の赤坂BLITZ(マイナビBLITZ赤坂って言い方、いまだに慣れない)に向かいました。

Img_4566ライブ開始前から、フロアに集まった血気盛んなオーディエンスが「スリー、スリー、スリー!」コールを連呼。外国人が多いのかと思いきや、実はかなり若い日本のファンが率先してコールしていたことに気づき、それだけで早くも胸いっぱいに。ああ、そうそう。こういうライブが観たかったんだよ……と。

ライブは「Made An America」からスタート。安定感がありつつも、動くことを決してやめないフロント2人。ステファン・ハリソン(G)は曲中盤〜終盤にかけて早くもギターを2回も投げ飛ばす暴れっぷり(いや、あれはストラップが外れて飛んでいったのかな?。けど、2回目は確実にぶん投げていたし。ストラップ外れたことに対するイライラから?)。アリック・インプロタ(Dr)は1つひとつのヒットが非常にヘヴィながらも跳ねまくっているリズムを刻み、ジェイソン・エイロン・バトラー(Vo)はステージ左右へと動き回ったり、跳ねたり、モニタースピーカーに捩り登ったり、フロアに水撒いてその上をスライディングしたり、挙げ句の果てに観客の頭上に仰向けで寝たまま1曲歌い切ったり(笑)。その間も、一切動きが止まることなく、曲に集中するというよりは動きを目で追うので精一杯(笑)。最高じゃないか。

曲間、ジェイソンが笑顔で感謝の言葉を伝えると、フロアからすぐに「スリー、スリー、スリー!」コールが沸き起こり、ジェイソンさらにニヤニヤ。いいなあ、この雰囲気。そして、ジェイソンはMCで日本のオーディエンスや関係者へ向けて、あるいは現在自分たちが置かれている状況に対して感謝の気持ちを述べたりと、とにかくこの空間が多幸感に溢れたもので、不幸になる者が誰もいない。かつ、こういったピースフルな雰囲気が場の空気をひとつにまとめ、ライブの盛り上がりがさらに高まっていく。『STRENGTH IN NUMB333RS』のレビューで〈直接的に特定の誰かを攻撃するわけではなく、誰もが思い浮かべられるであろう共通の仮想敵を歌の中で作り上げ、聴き手との意思疎通を図る。リスナー1人ひとりが脳内でイメージする仮想敵はすべて一緒ではないものの、これらの楽曲を前にしたら誰もが叫びたいことは一緒。そういう意味でも非常に器用だし、ポップシーンでも成功を収められるだけの器量を持っていると思うのです〉って書いたけど、その楽曲で歌われているテーマにしろ、ライブでの雰囲気にしろ、彼らには大勢のオーディエンスを惹きつけ、そしてひとつにまとめあげる能力が備わっているんだなと、このライブで身を以て実感しました。

Img_4567「Am I Here」ではジェイソンが客席2階まで上がり、事前に準備されていたエレピを使って弾き語りしたり、アンコール「Hunting Season」ではジェイソンのみならずステファンまでもが客席へ。ギターを抱えたまま客中を移動し、フロア後方からそのまま2階席へと移動し、2階最前列に座っていた自分の目の前で柵を乗り越えんばかりの勢いでギタープレイ!(笑) 正直、何が起きているのか理解するまでに時間を要し、気づいたら撮影するよりも馬鹿笑いしている自分がいました。隣にいた『ヘドバン』編集長の梅沢さんと顔を見合わせて大爆笑。で、ステージに目をやると、ジェイソンが足元のモニタースピーカーを縦に積み重ねてるし。なにこれ(笑)。結局、ステファンはそのまま2階でギターを弾ききってライブ終了。あっという間すぎた……。

いやあ、最初の不安は1曲目で払拭されてたし、気づくとどんどん惹き付けられている自分がいて、もう最初から最後までニヤニヤ。こんなに一体感が得られて幸せな気持ちになれて、終わったあとにスッキリした気分で会場をあとにできるライブって数えるほどしかないんじゃないか?って思えるほどに最高でした。新年早々、いいライブみたなあ。

これを書いている今日は、名古屋で行われたcoldrain主催フェス『BLARE FEST. 2020』に出演したFEVER 333。ここでもスピーカーや櫓に登ったりと暴れまくりだったようで、ひと安心。きっと、初見のJ-ROCKファンにもビンビン響きまくったことでしょう。こうなると、次は2作目のフルアルバムかな。来日はそれまでお預けでいいと思います。変に小さくまとまることなく、よりバカになってもらいながら、大勢を惹きつけひとつにまとめる才能を活かしきってもらいたいところです。

【セットリスト】
01. Made An America
02. Only One
03. Out Of Control
04. One Of Us
05. Brain Stew [Cover] 〜 Old Time Load [Cover]
06. Inglewood
07. Walking In My Shoes
08. Prey For Me
09. Animal
10. Trigger
11. Am I Here
12. Burn It
<アンコール>
13. We're Coming In
14. The Innocent
15. Hunting Season

LOVEBITES『ELECTRIC PENTAGRAM』(2020)

2020年1月下旬にリリースされた、LOVEBITESの3rdフルアルバム。

過去2作のアルバムはリリースの数ヶ月前にEPを発表し、その流れからアルバムという形を取っていました。ですが、今回は2ndアルバム『CLOCKWORK IMMORTALITY』(2018年)のあとにはライブアルバムおよび映像作品『DAUGHTERS OF THE DAWN - LIVE IN TOKYO 2019』(2019年)を発表したのみ。いや、それでもアルバム間隔が1年2ヶ月と非常に短いんですけどね。というか、それ以前の制作ペースが異常なだけだったのか(苦笑)。

そんなわけで、1年ちょっと間が空いたように見えますが、実はこの新作の制作は前作『CLOCKWORK IMMORTALITY』完成後には始まっており、ドラムのレコーディングが2ndアルバム発売後、海外ツアーに向かう前には済ませていたとのこと(某メンバー談。近日発売の音楽誌でのインタビューより)。おいおい、何やってんだよ(苦笑)。

前作は1stアルバム以上に幅の広がった音楽性に賛否両論の声が上がったようですが、結果としてライブの見せ方も広がったことからバンドとして一段アップしたように映りました。しかも、その5ヶ月前には4曲入りEP『BATTLE AGAINST DAMNATION』(2018年)も発表していましたし(本作の4曲は2ndアルバム未収録)。ここまで制作が続くと、正直“枯れて”しまわないかと心配になるわけです。

ところが、今回のニューアルバム。全12曲の完全新曲で構成されているわけです。前作(10曲)よりも曲数が増えている。しかも、トータルランニングも前作の53分半から一気に70分半に大拡張!(笑) 1stアルバム『AWAKENING FROM ABYSS』(2017年)も12曲入りですが、トータルランニングは61分止まりでしたから、今回は1曲1曲がいかに長いかが伺えます。

実際、4分台以下は皆無で、5分台が7曲、残り5曲が6分台。そりゃあメタルは“長い”です。特に歌よりインスト(ギターソロ)パートが数分ある曲も少なくないので、当たり前っちゃあ当たり前かもしれませんが、ここまで振り切ったのは正直勇気がいったんじゃないかと思います。だって、切ろうと思えば2曲くらい切って、60分前後に収めることだってできるわけですから。でも、それをしない。それだけ聴かせたい曲があったから。

その“聴かせたい曲”たちの完成度ですが……驚いたことに、前作を軽く超えるクオリティなのです。前半はパワーと速さで押す楽曲が続き、その中にもメロディやアレンジで変化を付けている。クサメロナンバーの合間に「Holy War」や「Raise Some Hell」のような変化球もしっかり用意されており、決して聴き疲れたり飽きること皆無。しかも、メロディが非常に素晴らしいと思うのです。

さらに、それらを歌うasami(Vo)の歌唱力・表現力の進化。これにも驚かされます。前作でもかなりの伸びが感じられましたが、本作での歌唱スタイルはそれ以上のものが伝わります。ぶっちゃけ、この新作を聴き終えたあとに1作目のEP『THE LOVEBITES EP』(2017年)を聴き返すと完全に別人ですからね。

で、アルバム後半はさらなる変化球がたくさん用意されており、まったく聴き飽きることがない。「A Frozen Serenade」や「Dancing With The Devil」といったミドルヘヴィナンバー、シャッフルビートを用いた「The Unbroken」、そして超絶スラッシュナンバー「Set The World On Fire」にラストを飾るドラマチックな「Swan Song」。今回は前作における「Epilogue」のようなスローバラードこそありませんが、逆にここまで潔い作風だと「これはこれであり!」と思わされてしまいます。

いやあ、舐めてましたわ。そろそろマンネリ化してもおかしくないよね、1曲くらいそういう曲が入っていても仕方ないよねと保険をかけていた自分をぶん殴りたい。それくらい首尾一貫メタルの塊。おそらく海外でのリリース情報も追ってアナウンスされると思いますが、この強力な新作が世界でどう評価されるのか。早くも日本では前作以上の売り上げを記録しているようですし(祝・オリコンデイリーチャートTOP10入り!)、彼女たちの成功が海外のみならず日本の状況も変えてくれることを信じています。

 


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