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2020年2月19日 (水)

IHSAHN『TELEMARK』(2020)

2020年2月中旬にリリースされた、イーサーンEMPEROR)の最新EP。日本盤未発売。

7thアルバム『ÁMR』(2018年)からほぼ2年ぶりの新作にあたる今作は、今年発売が予定されているEP二部作の第1弾。彼が現在も生活しているノルウェーの故郷・テレマルク(Telemark)をタイトルに冠し、自身の音楽ルーツの根本のあるブラックメタルからの影響を表現した作品集に仕上げられています。

イーサーンは今回のEP二部作に関して、OPETHの『DELIVERANCE』(2002年)と『DAMNATION』(2003年)を例に挙げて「ノルウェーの音楽が持つふたつの側面」を表現したいと発言しており、今作では『DELIVERANCE』的なブルータルさ(=“動”)を前面に打ち出したスタイルに挑んだと考えられます。となると、続く次作では『DAMNATION』にも通ずるドラマチックな側面(=“静”)を表現するのかしら。あえて1枚のアルバムという形にまとめるのではなく、テーマが異なるふたつの小作品でまとめるというのは、作り手側としても偏った側面に集中することができるでしょうし、聴き手側にも心の余裕を与えてくれるので、現在のようなサブスク全盛の音楽シーンに合ったやり方かもしれませんね。

聴いてもらえばおわかりのように、本作に収録された5曲では大々的に部落セクションがフィーチャーされています。前半3曲(「Stridig」「Nord」「Telemark」)がオリジナル曲で、各曲とも至るところからEMPERORにも通ずるブラックメタルらしいブルータルさ、そしてプログレッシヴ・ロック的な曲展開を楽しむことがでます。かつ、ブラスがフィーチャーされることで全体的に柔らかさも加わっており、不思議と聴きやすくなっている印象も受けます。ブラックメタルが持つ特有の冷たさと、管楽器の温かみがミックスされたこの不思議な感覚、クセになりますね。それと、この手の音楽にブラスがミックスされると前衛的な方向に進みがちですが、こうやってキャッチーさを与えてくれる要因にもなるんだと、その意外さにも驚きを隠せません。

また、歌詞の面でも今回は初めてノルウェー語で書き下ろされており、デス声で歌っているからなんとなく聴き取りにくいものの(笑)、そういった点でもイーサーンが本作に対して込めた故郷への思いが伝わってきます。そういった要素も、本作が持つ温かみにつながっているのかもしれませんね

後半2曲はカバー曲で、レニー・クラヴィッツ「Rock And Roll Is Dead」とIRON MAIDEN「Wrathchild」という異色のセレクト。ともに原曲に忠実なアレンジで、このブラスを含む編成にぴったりな選曲となっています。特に前者はイーサーンの音楽性を考えると異色中の異色かもしれませんが、もしかしたらこの曲をやりたいがためにブラス導入したんじゃ?なんて探ってしまうほどにぴったりな1曲。しかも、このご時世に「ロックンロールは死んだ」なんて彼が歌うのもまた痛快ですし。こういったカバー曲を収録できるのも、フルアルバムではなくEPというスタイルならではこそ、うん、やっぱり今回のリリース形態は間違っていないと思います。

EP第2弾がどのタイミングで発表されるのかはわかりませんが、前作『ÁMR』リリース時(そもそも国内盤未発売でした……)には叶わなかった来日公演をぜひ2作揃った時点で実現させてほしいものです。今はEMPERORよりもソロアーティストのイーサーンを観たいんですよ、ええ。

 


▼IHSAHN『TELEMARK』
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