DIO『STRANGE HIGHWAYS』(1993)
1993年10月にヨーロッパと日本、翌1994年1月に北米でリリースされたDIOの6thアルバム。
当時18歳だったローワン・ロバートソン(G)を新ギタリストに迎え制作した『LOCK UP THE WOLVES』(1990年)がセールス的に失敗。その後BLACK SABBATHへと再加入し、『DEHUMANIZER』(1992年)という当時問題作扱いされた異色ヘヴィ作を制作、ツアーも行ったもののアルバム1枚で再脱退。自身のメインバンドDIOを再始動させます。
新たなギタリストとして迎えられのは、WWIIIといったバンドで活動していたトレイシー・Gという人物。DIO加入により一躍名を挙げた人物です。そのほかのメンバーは、BLACK SABBATHからそのままスライドしてきたヴィニー・アピス(Dr)と、DOKKEN解散後にMcAULEY SCHENKER GROUPやWAR & PEACEといったバンドで活動していたジェフ・ピルソン(B)と名うてのプレイヤーばかりで、マイク・フレイザー(AC/DC、AEROSMITH、THUNDERなど)をプロデューサーに迎え満を辞して完成したのがこの『STRANGE HIGHWAYS』という問題作(笑)でした。
ディオ・サバスがモダンヘヴィネス寄りになったことで、当時は誰もが「こんなの、僕たちの求めるディオ・サバスじゃない!」と否定的な意見を寄せたと記憶しています。実際、僕自身も「『HEAVEN AND HELL』はどこに?」と完全否定したものです(その後、完全肯定派に鞍替えしましたが。笑)。『DEHUMANIZER』という「やるべきではなかった」アルバムを経て、古巣に戻ったディオが再び様式美の世界へと舞い戻った……と、本作を手に取ったときは安心したものです。
けど、オープニングを飾る「Jesus, Mary & The Holy Ghost」の冒頭数分でCD再生を止めてしまう自分……「なんだ、このヘヴィロック版KING CRIMSONは!?」と動揺を隠せず、しばらく再生ボタンを押すことができずにいました。
……モダンヘヴィネス化の戦犯はお前だったか、ディオよ(苦笑)。
CDを購入したものの、しばらくはフルで聴くことがなかったこのアルバム。1曲1曲が重すぎるし難解だし、なによりも通して聴くには非常に体力を要するんです。例えば、METALLICAのブラックアルバムやMOTLEY CRUEのセルフタイトルアルバムも最初は同じように「通して聴くのに体力を要する」アルバムでした。しかし、慣れるとそのポップさや要所要所に用意されたフックが気持ちよく、自然とリピートできるようになっていたんです。ところが、このDIOの『STRANGE HIGHWAYS』に関してはいつまで経ってもそうならない……なぜなんでしょう。
要するにこれ、ディオ御大が歌っているからこそDIOの作品として成立しているものの、バックトラックやメロディに関してはDIOである必要のないものばかりなんです。良くも悪くも“振り切れている”楽曲群が揃った本作は、今の耳で聴けば全然スルスルと聴き進めることができる、ダーク&ヘヴィの佳作なのですが、王道メタルバンドのモダンヘヴィネス化やオルタナメタル化に対して心を広く持てきれていなかった1992〜3年の自分にはハードルの高い1枚だったわけです。
まんまKING CRIMSONなアレンジのヘヴィロック「Jesus, Mary & The Holy Ghost」を筆頭に、確かにキャッチーさや親しみやすさは皆無な楽曲ばかり。ですが、トレイシー・Gのリフワークやソロプレイは当時のモダンメタルとしてはかなり非凡なものがありますし、ディオのボーカルも必要以上にアグレッシヴかつヒステリックで、これはこれでアリと思えてしまう。「Hollywood Black」や「Evilution」「One Foot In The Grave」あたりのグルーヴ感は2020年の今も通用するものがありますし、アップテンポの「Here's To You」やヘヴィバラードの「Give Her The Gun」にはなんだかんだいってDIO節が感じられるし、結果としては「あれ、意外と良いかも?」と思えてしまう。時間の経過によって評価が大きく変わった1枚ではないでしょうか。
もちろん、80年代前半のDIOこそがすべてというリスナーもいらっしゃることでしょう。その意見は否定しませんし、それもまた正しいと思います。だけど、ちょっと視野を広げるだけで「こんな表現方法もあるんだ。こんな側面も持っているんだ」と新しい扉が開くこともある。サバスの『DEHUMANIZER』もこの『STRANGE HIGHWAYS』も歴史上スルーされることの多い作品かもしれませんが、だからこそ不意に出会ったときの「見つけた」感はより強いものがあるのではないかな。そんな「切り捨てるには勿体ない」1枚です。
▼DIO『STRANGE HIGHWAYS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)
« BLACK SABBATH『DEHUMANIZER』(1992) | トップページ | SUICIDE SILENCE『BECOME THE HUNTER』(2020) »
「Dio」カテゴリの記事
- DIO『THE LAST IN LINE』(1984)(2024.04.11)
- BLACK SABBATH『MOB RULES』(1981)(2023.02.07)
- BLACK SABBATH『LIVE EVIL』(1982)(2022.02.11)
- V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』(2014)(2020.05.02)
- HEAVEN & HELL『THE DEVIL YOU KNOW』(2009)(2020.05.02)
「1993年の作品」カテゴリの記事
- 「#プリンス三昧」プリンス全スタジオアルバム解説③(1991〜1995年)(2026.07.09)
- サブスクに存在する音源を通して1980年〜1994年のHR/HM(およびそれに付随するハード&ヘヴィな音楽)の歴史的推移を見る(2024.11.10)
- U2『ZOOROPA』(1993)(2023.02.20)
- LITTLE ANGELS『JAM』(1993)(2023.02.09)
- ARCADE『ARCADE』(1993)(2022.11.04)