WHITESNAKE『RESTLESS HEART』(1997)
1997年3月下旬に日本先行リリースされたWHITESNAKEの9thアルバム。本国イギリスでは同年6月に“DAVID COVERDALE & WHITESNAKE”名義で発表、北米では当時リリースされませんでした。
1990年に『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)を携えたワールドツアーを終えると、WHITESNAKEとしての活動を休止させたデヴィッド・カヴァーデイル。その後、ジミー・ペイジと合流し、COVERDALE・PAGE名義でアルバム『COVERDALE・PAGE』(1993年)を発表するも、ライブは日本公演のみという短命に終わり、翌1994年にはGeffen Records時代の音源をまとめたベスト盤『GREATEST HITS』を携え、エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)、ルディ・サーゾ(B)という旧友に加え、COVERDALE・PAGEで活動をともにしたデニー・カーマッシ(Dr/ex. HEART)、そしてウォーレン・デ・マルティーニ(G/RATT)という意外な布陣でヨーロッパおよびジャパンツアーに臨みます。
WHITESNAKEとしてツアーがひと休止すると、カヴァーデイルはWHITESNAKEとしてではなくソロ名義でのアルバム作りに挑みます。ここでのパートナーは『SLIP OF THE TONGUE』では曲作りこそ一緒に進めたものの、腱鞘炎のためレコーディングには参加できなかったヴァンデンバーグ。1987年のWHITESNAKE加入から10年、満を辞しての本格的タッグです。
レコーディングにはヴァンデンバーグ(G)のほか、ガイ・プラット(B/PINK FLOYD、ゲイリー・ムーア、ROXY MUSICなど)、デニー・カーマッシ(Dr)、ブレット・タグル(Key/デヴィッド・リー・ロスなど)という所謂職人プレイヤーが多数参加。これだけで、本作が80年代後半の“派手なスタイル”のWHITESNAKEとは異なることが想像できることでしょう。
実際、我々の手元に届けられたアルバムもそういった内容で、70年代〜80年代初頭のWHITESNAKEを思わせるブルース/ソウルをベースにしたハードロック/ブルースロックをたっぷり楽しむことができます。
オープニングの「Don't Fade Away」の落ち着いた雰囲気は、高音でキーキー叫びまくっていた『WHITESNAKE』(1987年)や『SLIP OF THE TONGUE』とはまったく異なり、さらには『SLIDE IT IN』(1984年)ともかけ離れた世界観。タイトルトラック「Restless Heart」冒頭の低音ボイスや、AOR調のミディアムバラード「Too Many Tears」で聴かせる中音域など、どれも心地よく響くものばかり。かと思えば、女性ソウルシンガーのロレイン・エリソンの名曲カバー「Stay With Me」では途中からハイトーンでシャウトしまくり(苦笑)。もちろん、これはこれで悪くないんですけどね。
楽曲的には先にも書いたように、全体的に落ち着いた雰囲気。そりゃそうでしょう、ソロアルバムとして制作されたものなんですから。とはいえ、カヴァーデイルのキャリアを総括するように、ハードブルース「Crying」や軽快なロックンロール「You're So Fine」、セクシーなスローブルース「Take Me Back Again」、COVERDALE・PAGEの延長線上にあるブルージーなハードロック「Woman Trouble Blues」といった楽曲も用意されている。このへんはカヴァーデイルがというよりも、MANIC EDENを経てヴァンデンバーグがこういった世界観にどっぷり浸かっていたことも大きいのかな、という気がします。
結局、所属レーベル(EMI)側の要請により、日本ではWHITESNAKE名義で先行リリース。本国では最初に書いたように、“DAVID COVERDALE & WHITESNAKE”というまどろっこしい名義で世に放たれることになった本作。ソロ作として考えれば満足のいくムーディな1枚ですが、WHITESNAKEというハードロックバンドとして捉えるとインパクトに欠けてしまうのは否めません。
それもあってか本作、ここ10数年にわたり日本では廃盤状態。デジタル配信もされていません。ストリーミングサービスも海外ではSpotifyでは確認できるものの、Apple Musicでは見当たらない状況です。2000年代以降の諸作品よりも優れた“隠れた良盤”なだけに、本当に勿体ないったらありゃしません。
▼WHITESNAKE『RESTLESS HEART』
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