KATATONIA『CITY BURIALS』(2020)
2020年4月下旬にリリースされたKATATONIAの11thアルバム。日本盤は少々遅れ、同年6月5日に発売予定。
スウェーデン・ストックホルム出身の彼らも、来年で結成30周年。前作『THE FALL OF HEARTS』(2016年)発表から4年の間には1年間の活動休止期間などもありましたが、無事本作を完成させます。現編成では2作目となる本作は、ヨナス・レンクス(Vo)によると「前作同様、実験性を孕みながら、より直接的なサウンドにアプローチした」とのこと。そのカラーはリードトラック「Lacquer」にも色濃く表れており、ポストロックにも通ずる質感とゴシック調のサウンドメイクはメタルの枠を飛び越えた独自性が感じられます。
かと思えば、その前にはエキゾチックなギターフレーズにグッと心を掴まれる、ダークながらもエモい「Behind The Blood」があったり、不思議な浮遊感が伝わる「Rein」、DEPECHE MODEなどのゴス風エレポップにも通ずるテイストの「The Winter Of Our Passing」、気怠さの中にどうしようもない悲しみが落とし込まれたスローナンバー「Vanishers」のように個性的な楽曲が豊富。特に女性ボーカルがフィーチャーされた「Vanishers」からは、後期PINK FLOYDにも通ずる要素が感じられ、彼らがどこを目指しているのかがなんとなく伝わってくるのではないでしょうか。
アルバム後半も粒ぞろいで、バンドサウンドの隙間で鳴り響くエレピが良い味出している「City Glaciers」や「Flicker」、ボーカルの重ね方にこだわりを感じる単尺曲「Lachesis」、絶望的なまでに悲しみに暮れたラストナンバー「Untrodden」など、1曲1曲が非常に強い個性を持っていることに気づかされます。で、聴き終えて初めて「……そういえばボーカル、一切“叫んで”ないな」と気づくという。
個人的には初めて聴いたKATATONIAが『THE GREAT COLD DISTANCE』(2006年)だったし、そこから過去作をさかのぼって聴いていたので、その印象が強いんですよ。もちろん、ここ数作は現在のスタイルなので当たり前っちゃあ当たり前なんですが、彼らをそこまで真剣に聴いてきたわけではなかったので、改めて驚かされたといいますか。うん、良いじゃないですか。もっと真面目に過去作も聴きます。
という、新たな気づきを与えてくれた本作。個人的には非常に好みな1枚です。激しさは皆無ですが、聴いているだけで気持ちをどん底に突き落とし、その行為の気持ち良さを教えてくれる本作は、こんなご時世にこそじっくり浸りたい力作です。
▼KATATONIA『CITY BURIALS』
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