ALTER BRIDGE『AB III』(2010)
ALTER BRIDGEが2010年10月初頭に発表した3rdアルバム。日本盤は1ヶ月強遅れて同年11月下旬にリリースされています。
前作『BLACKBIRD』(2007年)がアメリカでTOP20入り、イギリスでは初のTOP100入り(最高37位)を果たすなど、着実にバンドとしての知名度を高めていたALTER BRIDGEでしたが、2009年にマーク・トレモンティ(G)、スコット・フィリップス(Dr)、ブライアン・マーシャル(B)が古巣のCREED再結成に参加、残るマイルズ・ケネディ(Vo, G)もスラッシュのツアーに帯同するなど、ALTER BRIDGEの存続を危ぶむ声がちらほら聞こえるようになります。が、バンドは2010年初頭には3rdアルバム制作に着手しており、秋には満を辞して本作をリリースしたのでした。
前作で初タッグを組み、以降2019年の最新作『WALK THE SKY』まで制作に携わるマイケル・“エルヴィス”・バスケット(TRIVIUM、RATT、coldrainなど)をプロデューサーに迎えた本作は、正統派ヘヴィメタル色を強めた前作とは異なり、どちらかというと1stアルバム『ONE DAY REMAINS』(2004年)でみせたポスト・グランジ以降のモダンヘヴィネス路線に近い印象を受けます。しかし、1stアルバムの焼き直しという印象は一切受けず、むしろ大成功を収めた『BLACKBIRD』を現代的なサウンド/手法で表現したらどうなるか?という前向きさすら感じられ、バンドとしての真価が問われるこのタイミングに勝負に出たことが伺えるのではないでしょうか。
また、マーク・トレモンティの低音を効かせたリフワーク&ソロプレイが本当に素晴らしく、この点においては全キャリア中最高峰と言えるのではないでしょうか。それに伴い、楽曲自体も非常によく練り込まれており、実はメロディの作りは前作の延長線上にあることにも気づかされるはず。また、そのメロディを効果的に盛り上げるドラマチックなアレンジからは、往年のハードロック的手法も感じられる。
つまり、軸足は前作から一切変えることなく、“ガワ”のみを時代に合わせた……と捉えることもできるのかなと。結果、それが好意的に受け捉えられ、全米17位/全英9位という好成績を残すわけですから、彼らの勝負はしっかり勝利を収められたということなのでしょう。
全14曲(日本盤はさらに1曲追加)で約65分というトータルランニングは、過去2枚をはるかに超えるもの。もっとコンパクトにすることもできたはずなのに、ここまで詰め込んだということは、それだけ「みんなに聴かせたい」という自信の楽曲が揃っていたという表れなんでしょうね。確かに長い作品集ですが、緩急に富んだ楽曲群はどれも絶品なので、迷わずオススメできる1枚です。個人的には前作よりもお気に入りですし、なんなら彼らのキャリア中もっとも好きな1枚です。
▼ALTER BRIDGE『AB III』
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