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2020年5月

2020年5月31日 (日)

2020年5月のお仕事

2020年5月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※5月29日更新)

 

[WEB] 5月29日、「リアルサウンド」にてザ・コインロッカーズ 松本璃奈&船井美玖インタビューザ・コインロッカーズ 松本璃奈&船井美玖に聞く、新体制への本音と再出発「私たちの努力が否定されたみたいで悔しかった」が公開されました。

[WEB] 5月25日、「リアルサウンド」にて×ジャパリ団のコラム×ジャパリ団、HR/HMファンも魅了する会心の一撃 デビューアルバム『×・×・×』への期待が公開されました。

[紙] 5月25日発売「CONTINUE」Vol.65にて、「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!」Zepp Namba追加公演ライブレポート、CNTエンタテインメント!を執筆しました。(Amazon

[WEB] 5月23日、「リアルサウンド」にて神宿 塩見きらインタビュー神宿 塩見きら、作詞に込める“ありのままの自分”と創作への熱量「SNSに可愛い自撮りを上げたから動員が増えるとは限らない」が公開されました。

[WEB] 5月20日、「リアルサウンド」にてCrossfaithインタビューCrossfaith、『SPECIES EP』で感じたセルフプロデュースの魅力 新レーベル設立やヒップホップとロックにおける共通点も語るが公開されました。

[WEB] 5月20日、「リアルサウンド」にてPassCodeのコラムPassCode、“武道館宣言”に込められた新たな旅への決意 攻めの姿勢貫く「STARRY SKY」を聴いてが公開されました。

[WEB] 5月17日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載Liturgy、Trivium、THE冠、Vader……コロナ禍を吹き飛ばすメタル/エクストリームミュージック界必聴の7作が公開されました。

[紙] 5月2日発売「日経エンタテインメント!」2020年6月号にて、映画「映像研には手を出すな!」解説、乃木坂46齋藤飛鳥インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

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また、4月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2004号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

LOTUS EATER『SOCIAL HAZARD』(2019)

2019年3月末に配信リリースされたLOTUS EATERの2nd EP。

LOTUS EATERはグラスゴー出身の4人組バンド。グルーヴメタルにジャンル分けされているようですが、2017年に自主制作で発表した1st EP『LOTUS EATER』を聴く限りではデスコアの要素も感じられ、一筋縄ではいかない楽曲進行含めクセになる要素満載です。2018年夏にHopeless Recordsとの契約を発表し、新曲「Break It」「Branded」を配信。これ以降「The Fear」「Mother」と新曲を配信で小出しにしていき、最初のまとまった作品集として今作がデジタルリリースされたのでした。

15分半という非常にコンパクトな本作は、全7曲中2曲が30秒〜1分程度のインスト(インタールード)なので、実質5曲入りということになります。前述4曲にうち、本作に収録されたのは「The Fear」「Mother」のみ。

基本的には1st EP『LOTUS EATER』の延長線上にあるヘヴィな作風ですが、うん、オープニングのインスト「Thg」から「Yuck」へと続く構成は確かにグルーヴメタルのそれっぽい。ですが、「Yuck」を聴いてもらえばわかるように、曲中にインダストリアル・メタルっぽい味付けも登場する。3分に満たない1曲の中で緩急に富んだ展開が矢継ぎ早に繰り返されていき、その情報量の多さに圧倒されるはずです。

ひたすらスクリームするボーカルと変態的なプレイ&サウンドを奏でるギター、地を這うような重さと跳ねるような軽やかさを繰り出すリズム隊。初期SLIPKNOTの変態性と脂が乗った時期のNINE INCH NAILSの危うさ、DEFTONEが持つポストロック的ななまめかしさ、CODE ORANGEに代表される「ヒップホップ以降のエクストリーム・メタル」の先鋭性などが凝縮された楽曲群は、終始不穏な空気を醸し出し、聴き終えたときに残るのは爽快さよりも(よい意味での)“気持ち悪さ”や不快感。なのに、「そうそう、こういう音を待ってたんだよ!」と膝を叩いてしまうほどの充実度も感じられる。

この感覚って、ホラー映画を見終えた後のそれに似ているんじゃないかと思いました。理解してもらえるかな? この“食後感”に惹かれるというリスナーはきっと多いのではないでしょうか。そんなLOTUS EATERを、かのBRING ME THE HORIZON最新EPで彼らをフィーチャーしたというのも、なんとなく納得するものがあります。

ぶっちゃけ、この5曲(と前述の1st EP)を聴いただけでは、このバンドの本性を見抜くのはちょっと難しいかもしれません。なぜなら、彼らにはまだまだいろんな武器が隠されているんじゃないか……そう予感されるに十分な余白を、本作は与えてくれるから。LOTUS EATERは今作リリース後、昨年秋から今年初頭にかけて「Second To None」「Narco」と、デジタルで随時新曲を小出しに発表しています。フィジカルでの作品リリースを行わず、これまでフルアルバムの発表もなし。この制作スタイルもイマドキらしさなのかもしれませんね。

 


▼LOTUS EATER『SOCIAL HAZARD』
(amazon:MP3

 

2020年5月30日 (土)

SILVERSTEIN『A BEAUTIFUL PLACE TO DROWN』(2020)

2020年3月初頭にリリースされたSILVERSTEINの10thアルバム。日本盤未発売。

SILVERSTEINは今年で結成20周年を迎える、カナダ・オンタリオ州出身の5人組ポストハードコア・バンド。キャリア的にはもはや大御所の部類に入り、2006年には初来日を果たしています。

Victory Records、Hopeless Records、Rise Rocordsとポストハードコア/スクリーモ系の名門レーベルを渡り歩いてきた彼らですが、本作から新たにオーストラリアのパンク/メタルコアレーベルUNFDと契約。流通や宣伝の影響もあったのか、これまで全米トップ50入りすることの多かった彼らも、今作では最高122位と低迷。新型コロナウイルスの影響も多少なりともあるのかな。

昨日のDANCE GAVIN DANCEに続き、「名前はよく知っているけどアルバムにも一度も触れてこなかったバンド」シリーズ第2弾。過去の諸作品には触れず、最新作を聴いて好きか否かを確かめているのですが、SILVERSTEINはさすが大御所といいますか1曲1曲の安定感が強いですね。この手のサウンドで20年も活動していると、あるタイミングでスクリームを排除してしまったり、スピードやヘヴィさを抑え始めたりするものですが、本作は適度なスピード感も重さも備わっており、メロディもしっかり練り込まれ要所要所にスクリームも取り入れている。痒いところに手が届くアルバムとでも言えばいいのかな。ベテランならではのバランスに優れた1枚だと思いました。

ゴリゴリというよりはしなやかさが目立つサウンドメイクは、「All On Me」のようにエレクトロの要素を取り入れるなどモダンさも垣間見え、ちゃんと時代と向き合っていることも伺える(この曲、途中でサックスソロがフィーチャーされているのにはクスッとしてしまいましたが)。こだわり続け守る部分と、時代の流れを読む柔軟さのバランスがしっかり取れているからこそ、ここまで長く続いているんでしょうね。そんなことを強く感じました。

また、本作の興味深いポイントは多彩なゲストをフィーチャーした楽曲が多いこと。オープニングを飾る「Bad Habits」には同じカナダ出身のインスト・プログレメタルバンドINTERVALSが参加。続く「Burn It Down」にはBEARTOOTHのケイリブ・ショーモ(Vo)、「Infinite」にはUNDEROATHのアーロン・ギレスピー(Vo, Dr)、「Madness」には女性ラッパーのプリンセス・ノキア、「Take What You Give」にはSIMPLE PLANのピエール・ブーヴィエ(Vo)がそれぞれフィーチャリング・シンガーとして名を連ねています。20周年&10作目のお祝いにふさわしい豪華さですね。もちろん、こういったゲストがなくても楽曲自体の出来はどれも優れているので、ちょっとしたおまけ感覚で(あるいはスパイスとして)楽しめたら最高ですよね。

全体を覆うキャッチーさと“ウェル・メイド”な安定感もあってか、ポストハードコアというよりはエモやメロディックパンクのカラーが強いアルバムかな。全12曲で37分というトータルランニングもあって、非常に聴きやすい内容だと思います。ほかのアルバムを聴いていない分際で断言するのも気が引けますが、このバンドの入門編に打ってつけな1枚ではないでしょうか。それくらい初心者にも優しい内容だと思います。

 


▼SILVERSTEIN『A BEAUTIFUL PLACE TO DROWN』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年5月29日 (金)

DANCE GAVIN DANCE『AFTERBURNER』(2020)

2020年4月下旬にリリースされたDANCE GAVIN DANCEの9thアルバム。デジタル先行で発表されたようで、フィジカル(CD、アナログ)リリースは7月10日予定のようです。今のところ日本盤は未発売。

全米15位まで上昇した前作『ARTIFICIAL SELECTION』(2018年)から2年ぶりの新作は、ひとつ順位を上げた全米14位と高記録を残しています。ロックが売れない、かつ新型コロナウイルスの影響でCDセールスがほとんど期待できないこのご時世にデジタルのみでここまで結果を残しているのは、さすがの一言と言えるでしょう。

DANCE GAVIN DANCEは名前こそ知っていたものの、実はしっかり音源に触れるのは今回が初めて。ストリーミングサービスで面白そうな新作を漁りまくっていた中、ここにたどり着き……アルバムをひと通り聴いたあとには、AmazonでMP3音源を購入していました。それくらいどハマりし、「なんで今まで聴いてこなかったんだろう」と反省しているところです。

サウンド的にはポストハードコアをベースにしつつ、ポストロックやマスロックなどからの影響が強いサウンドメイキング/アレンジで一風変わった世界観を構築。ニューウェイヴ期KING CRIMSONのポストハードコア版なんて安直な言い方をしてしまうのはアレですけど、まあわかりやすく説明したらこうなるのでしょうか。あるいは、PERIPHERYがポストロックに目覚めるとこういう感じになるとか。適度なヘヴィさと軽やかさが共存し、メロディアスさも比較的成分多めで、かつ難解な要素も随所に散りばめられている。そりゃ大好物ですよ、こういうの。

オープニングの「Prisoner」からして浮遊感の強いギターワーク&メロディで惹きつけるあたり、ほかのポストハードコア/スクリーモ・バンドとは一線を画する個性が伝わってくるし、続く「Lyric Lie」なんて日本のギターロックファンが喜びそうな要素が詰まった1曲なんじゃないでしょうか。かと思えば、「Calentamiento Global」ではトライバルかつダンサブルなテイストと不穏さを残すメロディ&コードワークで、聴き手を別次元まで誘い、ミディアムスロウの「Three Whishes」ではリスナーを穏やかな気持ちにさせる。ヘヴィなギターワークやスクリームも随所に用意されているものの、最終的に耳に残るのはクリーントーンで爪弾かれるギターフレーズと、適度にハスキーなクリーンボーカルのメロディアスな歌唱。こりゃあ一度聴いたらやみつきになるわけですわ。

個人的にツボだったのが、ラストナンバーの「Into The Sunset (feat. Bilmuri)」。8分の6拍子で進行するスローナンバーなのですが、高音を強調した伸びやかなメロディライン&ハーモニーと、曲中突然飛び込んでくるエレクトロな味付けやヘヴィなアレンジは、浮遊感がどんどん強まることで双方が次第と乖離していく……この空気感、たまらんです。

まだまだ勉強不足だなと実感させられた今回の出会い。少し気が早いですが、今年のベストアルバム候補のひとつに挙げさせていただきます。そして、これを機に過去のアルバムも掘り返してみたいと思います。もっといろいろとアンテナ張らねば。

 


▼DANCE GAVIN DANCE『AFTERBURNER』
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2020年5月28日 (木)

AUGUST BURNS RED『GUARDIANS』(2020)

2020年4月初頭にリリースされたAUGUST BURNS REDの9thアルバム。日本盤未発売。

デビュー時から所属したSolid State Recordsから名門Fearless Recordsへと移籍して、本作が3作目。前作『PHANTOM ANTHEM』(2017年)から2年半ぶりの新作となりますが、今回も日本盤リリースは見送られたようです。契約上の問題ですかね。

プロデューサー陣は過去3作と変わらぬお馴染みの面々ということもあり、本作でお安心安定のメタルコア・サウンドを展開。終始ドスの効いたスクリーム、シンコペーションを活かしたシンクロプレイやブレイクダウンは本作でも健在で、過去1作でも彼らの魅力に触れたことがあるリスナーなら満足できる内容に仕上がっています。

実は僕自身、彼らの新作を聴くのは前々作『FOUND IN FAR AWAY PLACES』(2015年)だったのですが、そんな筆者が聴いても「うんうん、これだよね」と口にしてしまうような完成度で、最後まで爆音で楽しく聴くことができました。ヘヴィさはもちろん、スピード感もしっかり備わっているから、スルスルと聴き進められるというのもあるのでしょうね。

ギターのリフワークもさすがの一言で、マンネリ感は皆無。「Paramount」や「Bloodletter」などではメロディアスな泣メロギタープレイも存分に味わえるし、「Lighthouse」や「Empty Heaven」にはこのバンドにしては珍しいメロディアスなボーカルパートも登場します。このパート、ジェイク・ルアーズ(Vo)が歌っている姿がまったく想像できないので、おそらくバックボーカルを担当することが多いダスティン・デヴィッドソン(B)によるものかなと。轟音の中に突如飛び出す泣きメロ、いいアクセントになっています。

本作を通して聴いて感じたのですが、全体的にどことなくダークというか泣き/悲しみなどのネガティブさで覆われている印象があります。それは救いを求める悲痛の叫びのようでもあり、すべてを諦めて傍若無人となった者の最後のあがきのようでもあり。特に「Three Fountains」のような泣きの要素を強めたミディアムナンバーで余韻を残して終わる構成もあって、そう感じさせるのかもしれませんね。6分半と長尺だけど、すげえグッと刺さるんですよ、このラスト。

ヘヴィさは相変わらずなんだけど、そのヘヴィの質がいつもと異なる。だからこそ、随所に散りばめられたメロディアスな要素がより際立つこととなった。王道なんだけどどこか異色さも目立つ、そんな攻めの1枚。繰り返し聴いても疲れませんし、聴けば聴くほどクセになる良作だと思います。

 


▼AUGUST BURNS RED『GUARDIANS』
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2020年5月27日 (水)

THE USED『HEARTWORK』(2020)

2020年4月下旬にリリースされたTHE USEDの8thアルバム。

ロス・ロビンソン(KORNLIMP BIZKITSLIPKNOTなど)をプロデューサーに迎えた前作『THE CANYON』(2017年)はCD2枚組、トータル79分にもおよぶ超大作ながらも初期からのファンには不評を買うことに。あれから2年半を経て届けられた今作は、果たしてどんな内容なのかといざ蓋を開けてみると……。

うん、意外と良いじゃない。初期のスクリーモ/エモ/ポスト・ハードコアらしさが復調しつつ、ちゃんとモダンな要素も取り入れている。すべてにおいて初期からのファンを満足させることは難しいかもしれませんが、これはこれで良い仕上がりだと思います。

今作のプロデュースを担当したのはジョン・フェルドマン。『THE USED』(2002年)や『IN LOVE AND DEATH』(2004年)、『LIES FOR THE LIARS』(2007年)といった初期3作を手がけた、気心知れた相手との再タッグということで、バンドも従来の“らしさ”と成長した部分、今ならではの表現を素直に形にすることができたのかもしれませんね。それを見事に引き出したジョンの手腕もさすがだと思います。

グランジ経由のオルタナロック色の強いオープニング曲「Paradise Lost, a poem by John Milton」に一瞬「あれっ?」と不安を覚えるものの(これはこれでカッコいい!)、続く「Blow Me」ではまごうことなきTHE USED節を展開。この曲にはFEVER 333のジェイソン・エイロン・バトラー(Vo)がゲスト参加しており、彼ならではのシャウト/スクリームを随所で響かせています。カッコいいったらありゃしない。

かと思えば、「BIG, WANNA BE」では昨今のエモに通ずる、ビッグビートなモダンポップを展開し、「Wow, I Hate This Song」では浮遊感の強いエモーショナルなオルタナロックを披露。インタールード的な1曲ですが、「My Cocoon」でのクールダウンしたテイストも嫌いじゃない。それに続く「Cathedral Bell」は今流行りのダークポップにも通ずる仕上がりで、しっかり“今”に対応できることも証明しています。

ゴシックテイストを内包する「1984 (Infinite Jest)」や「Gravity's Rainbow」には思わず最初こそ「おおっ!?」と驚きを隠せませんが、楽曲自体はTHE USEDそのもの。味付けが多彩なのも本作の特徴かもしれませんね。なんてびっくりしていると、EDMを流用したダンサブルな「Clean Cut Heals」まで飛び出す始末。なんでもありだな、おい!(笑)

終盤にはマーク・ホッパスやトラヴィス・バーカー(ともにBLINK-182)、ケイリブ・ショーモ(BEARTOOTH)をフィーチャーした楽曲も用意。とにかく1曲1曲のクセが強くて、最後まで飽きずに楽しむことができました。

バンドとしてようやくネクストレベルへ到達できた。そんな印象を受ける良質な1枚だと思います。前作での経験がしっかり活かされているのかどうかはわかりませんが、前々作『IMAGINARY ENEMY』(2014年)あたりが好きなリスナー(筆者含む)なら問答無用で楽しめる良作だと思います。

 


▼THE USED『HEARTWORK』
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2020年5月26日 (火)

HAYLEY WILLIAMS『PETALS FOR ARMOR』(2020)

PARAMOREのフロント・ウーマン、ヘイリー・ウィリアムスが2020年5月中旬に発表した初のソロアルバム。

ヘイリーの外仕事としてもっとも有名なのは、おそらくフィーチャリング・シンガーとして参加したゼッドの「Stay The Night」(2013年/全米18位)やB.o.Bとの「Airplanes」(2010年/全米2位)になるのでしょうか。成績やセールス的には後者のほうが上ですが、ゼッドというアイコンとタッグを組んだという点においては、間違いなく前者の知名度は高いはずです。

実はそれ以外にも、さまざまなアーティストの楽曲にゲスト参加した経験を持つ彼女。過去にはWEEZERとの「Rainbow Connection」(2011年)やNEW FOUND GLORY「Vicious Love」(2015年)、CHVRCHES「Buy It」(2016年)、AMERICAN FOOTBALL「Uncomfortably Numb」(2019年)などといった楽曲で彼女の名前を見つけることができます。

そんなヘイリーがPARAMOREの5thアルバム『AFTER LAUGHTER』(2017年)以来3年ぶりに届けてくれた新作が、初のソロアルバムということで多くのファンが「バンドはどうした? え、活動休止?」と心配するかもしれませんが、心配ご無用。このソロアルバムのプロデュースを担当したのが、当のPARAMOREメンバーであるテイラー・ヨーク(G)。曲作りはヘイリーとテイラーが中心となり、中にはPARAMOREサポートメンバーのジョーイ・ホワード(B)の名前も見つけることができます。さらに、演奏面でもテイラーやザック・ファロ(Dr)といったバンド名と、ジョーイなども参加。PARAMOREとしてすべてを解決させるのではなく、バンドという枠を離れて表現したいことがあったというだけなんでしょう。アク抜きですね、要するに。

今年に入って5曲入りEPを2作立て続けに発表してきましたが、本作はそのEP2作の10曲にさらなる5曲入りEPを追加した、全15曲で構成。意外と各EPごとのカラーもしっかり色分けされており、配信だとあえてEP3枚組という形で表記されるあたり、本作に対する彼女の強いこだわりが見えてきます。

サウンド的には、バンドの最新作『AFTER LAUGHTER』で展開されたモダンポップ……バンドサウンドやエモといったジャンルなどの枠を取っ払い始めた新機軸……の延長線上にあるもので、エレクトロ色が強めに出ています。また、近作に見受けられたニューウェイヴ色も濃厚で、最近のヒップホップやR&Bからの影響も強く、ロックという枠に収めたくない多彩な魅力が感じられます。先鋭的な刺激こそ皆無ですが、安定感のあるボーカルとメロディ、それを若干ダークながらもカラフルに演出するサウンドメイクはさすがの一言。『AFTER LAUGHTER』よりも突き抜けた感が伝わる本作は、個人的にもかなりお気に入りです。

歌詞も非常にパーソナルな面が描かれており、このへんもバンドとの間に一線を引いた理由なのでしょう。こちらは対訳が用意された日本盤にてぜひ確認してもらいたいところです。

とにかく、非常によく作り込まれたダークポップのおもちゃ箱と呼びたくなるくらい、聴き応えのある1枚。いろんな意味で2020年らしい作品と言えるのではないでしょうか。と同時に、ここでのアク抜きを経て、次にPARAMOREとしてどんな作品を制作するのかも、今から楽しみになってきました。こんなご時世で難しいとは思いますが、可能なら彼女のソロライブも観てみたいものです。

 


▼HAYLEY WILLIAMS『PETALS FOR ARMOR』
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2020年5月25日 (月)

SR-71『NOW YOU SEE INSIDE』(2000)

2000年6月にリリースされたSR-71の1stアルバム。日本盤は同年10月に発売。

SR-17はアメリカ・メリーランド州バルティモア出身の4人組バンド。ミッチ・アラン(Vo, G)を中心に1998年に結成され、2005年の解散までに3枚のアルバムを残しています。

プロデュースを手がけたのはギル・ノートン(PIXIESFOO FIGHTERSFEEDERなど)。彼はHONEYCRACKTERRORVISIONのようなバンドも手がけていますし、それを思えば適任かな。また、「Right Now」のみデヴィッド・ベンデス(BRING ME THE HORIZONBEARTOOTHCrossfaithなど)、「Empty Spaces」のみジョン・シャンクス(BON JOVI、GOO GOO DOLLS、WESTLIFEなど)がプロデュースを担当。メジャー(RCA Records)なりにお金も期待もかけて制作していたことがわかります。

また、本作は海外盤と日本盤(初出時)とではジャケットが異なります。海外盤は黒地に黄色いバンドロゴ、おもちゃのロボットをあしらったモノクロのアートワークですが、日本盤はメンバー4人をフィーチャーした明るめのデザインで、どこかBACKSTREET BOYSなどの男性アイドルを彷彿とさせるものがあります。そういう打ち出し方をしたかったんだろうな、そっち側の層も掴みたかったんだろうなというのが伺えますね。

とはいえ、サウンドそのものはオルタナティヴロック経由のポップパンク。シンプルなギターリフとキャッチーな歌メロ&シンガロングという、この頃には日本でも定着していたメロコア層にもアピールする楽曲は、確かに日本の洋邦ロックリスナーには十分にアピールするものがあります。曲によってはパワーポップと言えなくもないですが、どちらかといえばハードロック寄りと言えるかもしれません。なので、当時は僕のようなHR/HM側の人間も普通に楽しんでおりました(まあHi-STANDARDGREEN DAYに対して耐性のあるリスナーなら問題ないと思いますが)。

このアルバムからは「Right Now」(全米102位)というヒットが生まれており、この曲は日本でもタイアップが付いたりしたので覚えているという人もいるのでは。この曲のみ、メンバーのミッチとかのブッチ・ウォーカーとの共作。楽曲の大半はミッチが中心となり制作されていますが、クレジットでは他の3人の名前も見つけることができ、それぞれ単独で書いた楽曲も1曲ずつ用意されています。個人的には先の「Right Now」以上に、アルバム後半に用意された「Alive」や「Go Away」「Paul McCartney」といったじっくり聴かせるナンバーや、「Fame (What She's Wanting)」のような豪快なパワーポップチューンがお気に入りです。

今聴くと、以降のJ-ROCKに与えた影響も見つけられます。それくらいしっかり作り込まれた良質の作品であり、あまり時代の経過を感じさせない内容だと思いました。そこまで派手ではないけどギターソロもしっかりフィーチャーされているし、ハードロック寄りリスナーも存分に楽しめる1枚だと断言できます。

 


▼SR-71『NOW YOU SEE INSIDE』
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2020年5月24日 (日)

AMERICAN HI-FI『AMERICAN HI-FI』(2001)

2001年2月にリリースされたAMERICAN HI-FIの1stアルバム。日本盤は同年7月に発表されています。

このバンドは元VERUCA SALT、LETTERS TO CLEOのドラマーだったステイシー・ジョーンズが結成したもので、ステイシーはボーカル&ギターを担当。ジェイミー・アレンゼン(G)、ドリュー・パーソンズ(B)、ブライアン・ノーラン(Dr)を加えて1998年から活動を開始し、メジャーのIsland Recordsと契約して本作にてメジャーデビューを飾りました。

プロデュースを手がけたのは、かのボブ・ロック(METALLICAMOTLEY CRUEBON JOVIなど)。そういえば、VERUCA SALTも2ndアルバム『EIGHT ARMS TO HOLD YOU』(1997年)でボブ・ロックとタッグを組んでいるので、この2枚は共通点も見つけられるのではないでしょうか。

サウンド的にはFOO FIGHTERS以降の「グランジを通過したUSハードロック」をベースに、ルックスの良いステイシーが適度に甘くしゃがれた声で歌う良質のロックチューンを楽しむことができます。どうしてもシングルヒットをした「Flavor Of The Weak」(全米41位)の印象が強い作品ではあるものの、個人的にはパワーポップ調の「I'm A Fool」やアコギをフィーチャーしたミディアムバラード「Another Perfect Day」などがお気に入りかな。

オープニングを飾る「Surround」や疾走感の強い「A Bigger Mood」は完全に90年代後半以降のポスト・グランジですし、「Hi-Fi Killer」なんてメロディラインが完全にNIRVANAですからね(苦笑)。でも、ダークでネガティブな印象を受けないのは、きっと彼らが鳴らす音の根底にあるのが古き良き時代のハードロックだからかもしれません(「Flavor Of The Weak」のMVからもその影響は伺えますが)。それもあってか、彼らは本作を携えたワールドツアーをBON JOVIやMATCHBOX TWENTYSUM 41などと回っています。うん、いろいろ共通するものが見えてきますよね。

ポップパンクに括ることもできればポスト・グランジとして解釈することもできるし、なんならハードロックの範疇で語ることもできる。本作の時点ではまだ明確な個性は確立できていないかもしれませんが、ロックバンドのデビューアルバムとしては上出来すぎるほどの完成度だと思います。久しぶりに引っ張り出してみたけど、今聴いても古びていませんしね。

ちなみに、彼らは現在もオリジナルメンバーで活動中(ドラムは一時期脱退などの交代劇がありましたが)。2016年にはこのデビュー作をアコースティックで再録した『AMERICAN HI-FI ACOUSTIC』をリリースしています。

 


▼AMERICAN HI-FI『AMERICAN HI-FI』
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2020年5月23日 (土)

CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』(1985)

1985年に発表され、LA出身の4人組バンドCANDY唯一のオリジナルアルバム。

日本でも『ウィークエンドでファン・ファン』の邦題でアナログ盤がリリースされ、表題曲「Whatever Happened To Fun...」が結構な頻度で当時のMTVなどでオンエアされたので、記憶に残っている40代半ばのリスナーも少なくないのでは。かくいう僕も、同曲のMVを目に耳にしたことでアルバムをレンタル。カセットにダビングしたアルバムをリピートしたものです。

大きなヒットもなく、アルバム1枚で解散してしまったバンドではありますが、彼らは80年代末から90年代にかけて再び(小規模ながら)注目を浴びることになります。

アルバム制作時のメンバーはカイル・ヴィンセント(Vo)、ギルビー・クラーク(G)、ジョナサン・ダニエル(B)、ジョン・シューベルト(Dr)。ギルビーはKILL FOR THRILLSやGUNS N' ROSESの一員として名を上げ、ジョナサン&ジョンはライアン・ロキシー(G)らとELECTRIC ANGELSを結成。カイルもソロ・アーティストとして90年代後半から活動が活発化します。そういったメンバーの活躍時にちょくちょくCANDYの名前を目にすることになり、「あれ、CANDYって『ウィークエンドでファン・ファン』の?」と気づくわけですが、アルバムは廃盤状態。なんなら、CD化すらされていません。

こういったメンバーの活躍によって、CANDYはバブルガムポップ/グラムポップ/パワーポップ界隈では半ば伝説化。アルバムは高値で取引されるようになりますが、2012年にRock Candy Recordsから再発(初CD化)され手軽に楽しめるようになるわけです。

当然、CDを即購入した筆者ですが、アルバムを聴き始めてすぐに違和感を覚えます。「あれ、曲順違くない?」と。そうなんです、US盤と日本盤とでは収録曲順が異なっていることに、ここで初めて気づくわけです。

ちなみに、当時の日本盤の曲順は下記のとおり。

A-1. Whatever Happened To Fun...
A-2. Turn It Up Loud
A-3. American Kix
A-4. Last Radio Show
B-1. Kids In The City
B-2. Weekend Boy
B-3. First Time
B-4. Electric Nights
B-5. Lonely Hearts

ところが、US盤(現行CD含む)はM-1「Whatever Happened To Fun…」とM-3「American Kix」が入れ替わっています。シングル曲「Whatever Happened To Fun…」から始まる日本盤を親しんできたので、すぐにその違いに気づくわけですよ。

まあ、そんな違和感もCDを聴き返すうちにすぐ慣れるわけですが。

さて。今回のレビューは現行CDに沿って話を進めます。軽快なアメリカンロック「American Kix」からスタートするアルバムは、全体的に音の軽さとカラッとした質感がポップな曲調にフィットしており、全9曲/36分があっという間に感じられるはず。適度に挿入されるコーラス(シンガロング)のせいもあって、何度か聴いていると不思議と口ずさめるようになるのではないでしょうか。

9曲通して聴くと、改めて「Whatever Happened To Fun…」が突出した出来であることに気づかされますが、もちろんほかの楽曲もそこまで悪いわけではない。6分半近くもある「Last Radio Show」で聴かせるセンチメンタリズムは意外と日本人好みなテイストですし、王道のパワーポップチューン「Kids In The City」や「Weekend Boy」などもマニアにはたまらないはず。個人的にはアルバム前半(「American Kix」や「Turn It Up Loud」)がカラッとしたアメリカンロックだとしたら、後半(アナログB面)がパワーポップ的側面に特化した作風かなと。リリース当時は「Whatever Happened To Fun…」を含むA面ばかりリピートしていたけど、今ならアルバム後半を激プッシュします。

ちなみに、彼らのバックに付いていたのは元RASPBERRIESのウォーリー・ブライソン。プロデュースを手がけたのも、同じRASPBERRIESやエリック・カルメン、BAY CITY ROLLERSなどで知られるティース(ジミー・レナー)と、いわゆるパワーポップ界隈の重鎮たちでした。まあ、時代的にHR/HMがヒットし始めた時期だったので、タイミングが悪かったかもしれませんね。

なお、本作は今のところデジタル/ストリーミング配信は国内外でされておりません。Apple Musicでは2003年に発表された未発表音源集『TEENAGE NEON JUNGLE (RARE & UNRELEASED)』が配信済みなので、こちらで主要ナンバーの別テイクを楽しむことができます。

 


▼CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』
(amazon:海外盤CD

2020年5月22日 (金)

WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』(2016)

2016年4月初頭にリリースされたWEEZERの10thアルバム。

セルフタイトルアルバムはこれまで1stアルバム(1994年)3rdアルバム(2001年)、6thアルバム(2008年)と3作発表しており、それぞれジャケットのメインカラーから『BLUE ALBUM』、『GREEN ALBUM』、『RED ALBUM』の愛称で親しまれてきましたが、赤盤から8年を経てついに白盤(『WHITE ALBUM』)の登場です。ここまでセルフタイトルを多用するメジャーバンドも少ないですよね。

さて、本作の内容ですが……アルバムカラーとは一切関係なく(笑)、いつもどおりのWEEZER節前回のパワーポップアルバムに仕上がっています。前作『EVERYTHING WILL BE ALRIGHT IN THE END』(2014年)は要所要所にフックが用意された、なかなかトリッキーながらも彼ららしい1枚で好印象でしたが、それと比べると本作は若干ストレートすぎるかな? むしろ、ポップ色/甘味料を多めに使用することで、ジャケットの白とは相反して意外とカラフルな仕上がりではないかと思います。

オープニングの「California Kids」や「(Girl We Got A) Good Thing」などのポップ感は、どこかTHE BEACH BOYSあたりにも通ずるものがあり、これはジャケットにビーチで撮影した写真を用いているから……なんて深読みもしたくなりますが(笑)。まあ、たまたまでしょうね。また、シングルカットもされた「Thank God For Girls」などはモダンな味付けも含まれており、適度な“今”感を提示。このへんのカラフルさはさすがの一言です。

かと思えば、「Do You Wanna Get High?」のような泣き虫ロックナンバー、豪快なサウンドの「King Of The World」や「L.A. Girlz」みたいに初期の彼らが好きな層にもアピールする定番スタイルもしっかり用意されている。先のTHE BEACH BOYS的アプローチにしろ、もちろんこれまでも表出していた要素のひとつであるわけで、要するにすべてにおいて“WEEZERらしさ”から一歩もはみ出すことなく、リスナーが求めるものを的確に提供してくれる。まさに教科書的な1枚と言えるでしょう。

だからこそ、前作にはあった刺激という点においてはちょっと物足りなさも感じる。全10曲で34分という古き良き時代のレコード的コンパクトさと相まって、何度か聴いているうちに「もういいかな?」と思えてしまうこともある、そんな平均点的な1枚でもあるのかなと思いました。もちろん、出来は非常に良いですし、たまに聴くと「あ、やっぱり良いね」と感じるのですが、長きにわたり飽きずに楽しめる傑作とはちょっと違うのかな。

そういう作品のあとだったからこそ、続く11thアルバム『PACIFIC DAYTREAM』(2017年)『BLACK ALBUM』(2019年)の変化には思いっきり刺激を受けたわけですが。要は、この振れ幅こそがWEEZERなんでしょうね。

 


▼WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』
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2020年5月21日 (木)

AZUSA『LOOP OF YESTERDAYS』(2020)

2020年4月10日リリースの、AZUSA通算2作目のオリジナルアルバム。日本盤未発売。

THE DILLINGER ESCAPE PLANのリアム・ウィルソン(B)、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンドEXTOLのクリスター・エスペヴォル(G)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)というカオティックなエクストリームバンドのメンバーに、ベルギーの実験的ポップ・デュオSEA + AIRのフロントウーマン、エレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)を加えた4人編成のAZUSA。2018年11月リリースのデビューアルバム『HEAVY YORK』に続く本作では、前作で見せた独創的なスタイルをより推し進めたサウンドを楽しむことができます。

楽器隊が関わってきたバンドにも通ずる複雑怪奇なエクスペリメンタル・ロック/メタルに、クリーントーンとグロウルが交互に飛び出すエレーニの浮遊感が強いボーカルが乗ることで、ほかの何者にも似ていない唯一無二のエクストリーム・ミュージックを構築。デビュー作の時点では良い意味での不自然さやぎこちなさが、聴き手にも居心地の悪さを与えてくれて、逆にそれが中毒性を増す結果につながっていたと思います。しかし、本作ではその不自然さが薄れ、ナチュラルな不協和音(笑)や異物感が当たり前のように感じられます。これは筆者含め聴き手側に耐性がついたということなんでしょうかね。

また、全体的にストレートなメタル(特にスラッシュメタル)度が高まっている印象を受けたのも、本作の特徴かな。特にM-3「Detach」で聴くことができる演奏やメロディアスなギターソロは、我々が知るヘヴィメタルそのもの。って、それもそのはず。この曲でギターソロをプレイしているのはTESTAMENTのアレックス・スコルニック(G)なのですから。アレックスもジャズなどを専攻する、メタル界では異端側のソロイストですが、なるほどこういうバンドに入ってプレイすると意外にもオーソドックスに聴こえてくるから不思議です。

個人的には、その「Detach」のあとに「Seven Demons Mary」や「Monument」のような楽曲が続くところに、このバンドの強みや独創性を感じずにはいられません。演奏はともかく、結局はエレーニという逸材を見つけた時点でこのバンドは勝ちだったんだなと。前作は年間ベストに入れるほどのお気に入りでしたが、今作も長期にわたり何度もリピートする1枚になりそうです。

ただ、この形に関しては2作目にしてすでにやり尽くした感もあり、本作で早くもひとつの完成形を見せたと言っていいかもしれません。なので、ここからどういう進化を見せていくのかですよね。実験的なスタイルが求められる(バンド側もそこを強く意識している)存在だけに、どんどん新しい形を提示していかないと継続はキツいのかなと。そういう意味でも、バンドとしての次の一手が早くも気になるところです。

 


▼AZUSA『LOOP OF YESTERDAYS』
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2020年5月20日 (水)

ASKING ALEXANDRIA『LIKE A HOUSE ON FIRE』(2020)

ASKING ALEXANDRIAが2020年5月15日に発表した、通算6作目のオリジナルアルバム。日本盤未発売。

ダニー・ワースノップ(Vo)がバンドに復帰し、バンド名を冠した『ASKING ALEXANDRIA』(2017年)で“わかりやすくてメロディアスなハードロック”へとスタイルを移行させた彼らでしたが、その進化はまだまだ止まりそうもなく、今作でもさらに劇的な変化を遂げています。

プロデューサーにFROM FIRST TO LASTのマット・グッド(G, Vo)を再び迎えて制作された本作は、前作で取り入れたエレクトロな味付けを本格的に、かつ前面に打ち出したスタイルに。“わかりやすくてメロディアス”な作風はそのままなのですが、必ずしもハードなギターを必要としないアレンジには、もしかしたら賛否分かれるかもしれません。

もちろん、ロックバンドのアルバムであることには違いありません。打ち込みやデジタル要素を巧みに使いこなしたモダンなスタイルは、確かにこの進化の流れって近年のメタルコアやポストハードコア・バンドが一度は通る道かもしれませんが、これが本当に今の彼らに求められている形なのだろうか……という疑問も拭えません。

でもね、この変化って必ず意味があるはずなんです。

先行シングルの時点でこういう作品になるってことは気づいていたものの、いざアルバムとして通して聴き始めると最初の数曲こそ「えっ?」と動揺は隠せません。が、アルバムを聴き進めていくにつれ、それこそ女性シンガーソングライターのグレイス・グランディをフィーチャーしたミディアムバラード「I Don't Need You」あたりまでくると、このアレンジ/サウンドに不思議と慣れてしまっている自分に気づきます。結局楽曲自体の完成度やメロディの美しさが際立っているので、意外と楽しみながら、スルスル聴き進められてしまうわけです。

でね、結局ここで展開されているサウンドって今ならではの「スタジアムロック」だと思うんです。ASKING ALEXANDRIAが憧れるバンドって、以前カバーしていたSKID ROWとか、それこそGUNS N' ROSESとか、もっと言えばBON JOVIまでを含む、80年代にロックキッズどもが憧れたスタジアムロックであり、あの時代の音を現代的に解釈するとこうなるのかな?っていうのは、なんとなく想像できる。つまり、前作で試みたスタイルをさらにスケール拡大させた結果が、これなんだと……安直だな、我ながら(苦笑)。

だけど、きっと彼らの思考もそれくらいシンプルなんじゃないかと思うわけです。確かに「売れたい」とか「時代に擦り寄りたい」という邪心もゼロではないと思うけど(笑)、前作からのステップアップとして考えれば、こういう変化はやはり必然だったんだなと。多少の違和感は残るかもしれませんが、結局曲が良いんだもの。聴き込んでいくうちに「あれ……いいアルバムじゃない?」って気づくはずです(もっとも、そこまで聴き込まないと良いと思えないアルバムってどうなのよ?って話もありますが)。

全体的に平均点を遥かに上回る完成度だけど、ここに絶対的キーラーチューンが1曲だけでも入っていたら、間違いなく2020年を代表する名盤になったんだけどな。そこだけは惜しかったかな。

 


▼ASKING ALEXANDRIA『LIKE A HOUSE ON FIRE』
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2020年5月19日 (火)

PARADISE LOST『OBSIDIAN』(2020)

2020年5月15日リリースの、PARADISE LOST通算16作目のオリジナルアルバム。

前々作『THE PLAGUE WITHIN』(2015年)ではゴシックメタルをベースに、本来のデスメタル/ドゥームメタルらしさに回帰。ニック・ホルムス(Vo)のデス声も本格復活し、続く前作『MEDUSA』(2017年)ではドゥーム側に寄せたスロウ&ヘヴィなサウンドで聴き手を楽しませてくれました。

前作から2年8ヶ月ぶりに届けられた今作は、オープニングの「Darker Thoughts」でこそストリングスを取り入れた叙情的な世界観を展開しますが、基本的に序盤序盤3曲(「Darker Thoughts」「Fall From Grace」「Ghosts」)は前作を踏襲したスタイルなのかな。そこでリスナーを惹きつけておいて、4曲目「The Devil Embraced」から本編に入る……と言っては言い過ぎでしょうか? けど、本作のミソはここからではないかと思っています。

それはですね、あれですよ。バンドの全盛期といえる4thアルバム『ICON』(1993年)、5thアルバム『DRACONIAN TIMES』(1995年)で強くアピールしたゴシックテイストが色濃く復調しているんです。

もちろん、このテイストは前作にも少なからず存在していましたし、その前の『THE PLAGUE WITHIN』(2015年)でもしっかりと感じ取れるものでした。が、ここまでバランスよく(しかもわかりやすく)本来の持ち味を「武器のひとつ」として見せてくれたのは、特に古くからのファンには驚きと同時に喜びが込み上げてくるのではないでしょうか。

しかも、この“回帰”は単なる焼き直しではなく、7thアルバム『HOST』(1999年)から数作続いた“実験”を(それが成功であっても失敗であっても)なかったことにせず、そこを通過したことでアップデートできている。だから“あの頃”のようであってそうじゃない、完全に今の音であり、『THE PLAGUE WITHIN』から続く“良き形の進化”の結果なんですよね。

BLACK SABBATHCATHEDRALにも通ずるドゥーミーさ/スラッジ感なんてことを前作のレビューでは書きましたが、今回はそこに頼っていないし、むしろニックのクリーンボイスとグロウルを巧みに使い分けた歌唱と、グレッグ・マッキントッシュ(G, Key)によるメロウで泣きまくりのギタープレイが絶望的なまでの悲しみを表現してくれている。ああ、カッコいいったらありゃしない。

それこそ、先の「The Devil Embraced」から「Hope Dies Young」までの流れを全部クリーントーンで歌って、演奏をデジタルに置き換えたら……言いたいこと、わかりますよね? ホント、『HOST』は無駄じゃなかったんだと力説したい(少数派かもしれませんが、本当にあのアルバムが好きなもので)。

ちなみに、本作は海外デラックス・エディションおよびデジタル版(ストリーミング含む)は全11曲入りで、本来はM-9「Ravenghast」で終了する45分程度のコンパクトな構成。再びドゥーミーなこの曲で終わる構成、良いです。個人的にはボーナストラック2曲(「Hear The Night」「Defiller」)は蛇足かなと感じているので、アルバムを通して聴くときは「Ravenghast」終わりで一旦小休止するようにしています。だって、不穏なピアノ&ストリングスの音色で終わるほうが、このバンド(このアルバム)らしくて最高じゃないですか?

 


▼PARADISE LOST『OBSIDIAN』
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2020年5月18日 (月)

VADER『SOLITUDE IN MADNESS』(2020)

2020年5月1日に海外でリリースされたVADERの12thアルバム。日本盤は同年5月15日に発売されています。

前作『THE EMPIRE』(2016年)から3年半ぶりのフルアルバム。新作音源としては、昨年5月発売の5曲入りEP『THY MESSENGER』(2019年)から1年ぶりとなります。アルバムにはそのEPから2曲(M-3「Despair」、M-7「Emptiness」)が再収録されていることから、今作はその流れで制作されたことが伺えます。

VADERといえばピーター(Vo, G)の「速い曲は2〜3分の長さがベスト。5分以上もあるのは退屈」というポリシーどおり、アルバムは毎回3分前後の楽曲で構成されてきましたが、そのノリにさらに拍車がかかり、近作では4分台の楽曲も少なくありませんでした。が、本作ではそういったことは皆無。むしろ全体的に2分前後の楽曲中心で構成されており、短いもので1分台(M-3「Despair」の1分18秒、M-10「Stigma Of Divinity」の1分47秒)、最長でもM-11「Bones」の3分56秒と完全に4分を切った楽曲ばかり。だもんで、全11曲でトータル29分半というSLAYERの名作『REIGN IN BLOOD』(1986年)も真っ青な仕上がりとなっています。

もちろん短ければすべてよしってわけではないですよね。オープニングの「Shock And Awe」からして強烈なブラストビートの応酬でインパクト絶大。続くリード曲「Into Oblivion」も冒頭から過激なブラストビートで、聴き手側を存分に楽しませてくれます。当然ながら、ミディアム〜スローテンポで日和ったりすることもなく、M-5「Sanctification Denied」で若干テンポダウンするものの楽器隊の演奏はエクストリームそのもの。体力温存なんてもってのほか、常に全力疾走の状態が29分半続くわけです。

EP『THY MESSENGER』の時点で「アルバムも間違いなく過激の一言なんだろうな」と想像に難しくありませんでしたが、いやはや、EP以上のえげつなさでした(笑)。むしろ『THY MESSENGER』はオープニングの「Grand Deceiver」が若干メロウに聴こえてしまうほど、今度の『SOLITUDE IN MADNESS』は無慈悲さが際立ちます。こういうアルバムは言葉少なに、とにかく聴け!の一言で終わらせたいところです(苦笑)。

シンプルなのに手が込んでいて、ストレートなようで複雑に入り組んでいる。そんな濃厚な1枚を可能な限り爆音で楽しんでみてください。

なお、日本盤は本編のみのシングルディスクに加え、EP『THY MESSENGER』を同梱した2枚組仕様も用意。こちらはJUDAS PRIEST「Steeler」のカバーなども収録されており、思いの外メロウな仕上がりにニヤッとするはずです。

 


▼VADER『SOLITUDE IN MADNESS』
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2020年5月17日 (日)

JIMMY EAT WORLD『FUTURES』(2004)

2004年10月にリリースされたJIMMY EAT WORLDの5thアルバム。

前作『BLEED AMERICA』(2001年)の大ヒット(全米31位。ミリオン突破)をはじめ、同作から「The Middle」(同5位)、「Sweetness」(同75位)とシングルヒットが続出したことで、いよいよメジャーフィールドでも名前を目にする機会が増えたJEWですが、続く今作では同作にあった弾けるような明るさ/ポジティブさが減退したように感じられ、影や哀愁味などを強めた異色作に仕上げられています。

「Sweetness」のようなキャッチーさを求めるリスナーには、本作は地味に映るかもしれません。しかし、1曲1曲の精度/完成度は前作以上に高まっており、アルバム全体のバランス(楽曲の質のみならずサウンドの質)もシンプルなのに繊細さが際立つ作りに。これは新たなプロデューサーであるギル・ノートン(PIXIESFOO FIGHTERSFEEDERなど)の手腕によるものも大きいのかなと思います。

楽曲の作りのみならず、曲タイトルのシンプルさにも目がいくのが本作の特徴かもしれません。そんな中で特にインパクトを残すのが、モノクロのアートワークに加え、「Kill」や「Pain」「Drugs Or Me」あんどといった若干ネガティブに映るワードでしょう。しかし、当の「Kill」はダークさを微塵も感じさせない良曲ですし、「Pain」にいたっては疾走感の強いエモーショナルなロックチューンという、本作を代表する1曲ですし。中でも、アルバム中盤における「Pain」から「Drugs Or Me」への流れは美しさを通り越して、圧巻の一言。暗闇からどんどん光が差していくような構成は、本作におけるハイライトと言えるでしょう。

要するに、全体のトーンが暗めで落ち着いた雰囲気だからネガティブな作品なのかと思いきや、実はアルバムタイトルに象徴されるように、本作は“前を向いた”作品集なわけです。

ポップパンクの底抜けに明るい雰囲気が苦手というHR/HM寄りリスナーは少なくないかもしれません(ヘアメタルの陽気さとはまた違う空気感ですしね)。ですが、エモやそこを通過したパワーポップは少なからずハードロックリスナーにも引っかかるものがあるはずで、特にJEWの作品中ではこの『FUTURES』は演奏もタイトでハードさが前面に打ち出されており、もっとも我々のような層にリーチする1枚だと思うのです。事実、僕も『BLEED AMERICA』までのアルバムは嫌いではなかったけど、一気に惹きつけられたのはこの『FUTURES』を聴いてからですしね。

グランジ以降のオルタナティヴロックに偏見がなく、かつ「HR/HMといえば様式美」だとか「ヘヴィ/ラウド以降のバンドは認めない」なんていう穿った解釈を持ち合わせていないリスナーなら、絶対に引っかかるはず。一般的には3作目『CLARITY』(1999年)や『BLEED AMERICA』が代表作になるのでしょうが、個人的なベストアルバムはこの『FUTURES』です。

 


▼JIMMY EAT WORLD『FUTURES』
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2020年5月16日 (土)

GREEN DAY『WARNING』(2000)

2000年10月初頭発売の、GREEN DAY通算6作目のオリジナルアルバム(メジャー通算4作目)。日本盤は海外に先駆け、同年9月下旬にリリースされています。

メジャーデビュー作『DOOKIE』(1994年)から3作続けてロブ・カヴァロをプロデューサーに迎えアルバム作りを行ってきたバンドが、本作では初めてセルフプロデュースに挑戦(ロブもエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジット)。直近の『NIMROD』(1997年)では単なるアメリカン・パンクロックから外に一歩踏み出し、ロカビリーやアコースティックバラードなどに挑戦することで音楽の幅を広げ始めましたが、本作ではその変化がさらに大きな形で表現されています。

ポップパンクをベースにしつつもテンポを落とすことで、全体的に落ち着いた印象を作り出している。また、ギターの歪みも比較的抑えられ、要所要所にアコースティックギターを被せることでサウンドに柔らかさやしなやかさを与えている。悪く言ってしまえば「角が取れた」と否定的な声が聞こえてきそうですが、いえいえ。ちゃんと歌詞を読んでみてよ、と。しっかりパンクロック・バンドとしての主張に変化がないことに気づかされるはずです。むしろ、改めて歌詞を読み返すと、続く次作『AMERICAN IDIOT』(2004年)への布石が見つけられるんですよ。そもそも、『WARNING』(=警告)というアルバムタイトル自体が、その一端を担っているわけですからね。

だけど、「Basket Case」や「Welcome To Paradise」「Stuck With Me」のようなアップチューンを期待する層には、本作はおとなしすぎたのかな? 当時は自分の周りからあまり良い声を聞かなかった記憶があります。

でもね、あの頃のロック系クラブイベントでは「Minority」がヘヴィローテーションされていたし、みんなこの曲で楽しく踊っていたんですよ。これ以外にも「Warning」や「Waiting」といったシングル曲、「Church On Sunday」に「Castaway」「Macy's Day Parade」など完成度の高い楽曲群、次作で迎える転換期の序章とも言える異色作「Misery」など1曲1曲の個性は過去イチ。もし『AMERICAN IDIOT』をGREEN DAY第2章の幕開けと捉えるなら、この『WARNING』は第1期の集大成であり、ストレートなポップパンクから社会派パンクロックへと移行する上での過渡期でもあるのかな。

決して派手な内容ではないですし、セールス的にも過去3作と続くメガヒット作(『AMERICAN IDIOT』)に挟まれ低迷した印象を与えますが(全米4位とチャート的には良好でしたが、セールスは初めてミリオンを下回ってしまう)、彼らのファンの中では「隠れた名盤」「実は一番好き」という声も少なくないのでは。

自分の中ではGREEN DAYのことを初めて「パワーポップバンド」として認識することとなった大切な作品であると同時に、40分程度でコンパクトというのも手伝って『AMERICAN IDIOT』よりも聴く頻度の高い一番好きな1枚です。

 


▼GREEN DAY『WARNING』
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2020年5月15日 (金)

MY CHEMICAL ROMANCE『DANGER DAYS: THE TRUE LIVES OF THE FABULOUS KILLJOYS』(2010)

2010年11月にリリースされたMY CHEMICAL ROMANCEの4thアルバムにして、現時点での最新オリジナルアルバム。

前作『THE BLACK PARADE』(2006年)が全米2位、300万枚を超える大ヒット作となり、ワールドツアーも2年近くにわたり敢行。日本にも2007年1月と5月の2度にわたり来日公演を実施し、そのうち5月の来日では初の日本武道館公演も実現しました。また、2009年夏には『SUMMER SONIC』のヘッドライナーとしても来日しています。

こうした中、バンドは2009年に入ってからレコーディングに突入しましたが、2010年3月にボブ・ブライヤー(Dr)の脱退を発表。残りの作業にサポートメンバーを迎え、どうにか完成まで至るのでした。また、プロデューサーの人選も当初のブレンダン・オブライエン(PEARL JAMRAGE AGAINST THE MACHINEINCUBUSなど)から、前作を手がけたロブ・カヴァロ(GREEN DAY、GOO GOO DOLLS、SHINEDOWNなど)に変更するなどあり、完成までにかなりの苦労があったことが伺えます。

そうして届けられた4年ぶりの新作。最初にリードトラック「Na Na Na (Na Na Na Na Na Na Na Na Na)」を聴いたときの戸惑いは、今でもよく覚えています。大ヒットを記録した『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』(2004年)、『THE BLACK PARADE』の2作はゴスを通過したエモ・パンクという印象が強く、あのダークさが自分の中で引っかかったところが大きかったのですが、この曲はGREEN DAYにも通ずる突き抜け感と爽快感が強まっており、そのストレートさに「あれっ?」と呆気にとられたのです。

実際、アルバムを聴いてみてもその印象は変わらず、全体を覆うわかりやすいポジティブさは以前と異なるベクトルだなと感じました。なので、一聴しただけでは「曲は良いけど、思っていたのと違う……」と肩を落としかねないアルバムなのかなと。ですが、自身の人生をも変えてしまうような成功を手にしたバンドが、それ以前の「ネガティブの中から聴き手に寄り添って手を引く」スタイルから「ポジもネガも全部ひっくるめて引き受けるから、俺たちについてこい!」という逞しさにシフトしたのも頷ける話で、要は自分たちを取り巻く状況もを打破しつつ、全部責任を負うから信じてついてきてという宣言だったのかなと。今聴き返すと、そういう意思表示の1枚だったように感じられます。

実際、先の「Na Na Na (Na Na Na Na Na Na Na Na Na)」や「Sing」といったシングル曲の完成度は高いですし、ダンス色を強めた「Planetary (GO!)」や「The Only Hope For Me Is You」、日本人女性によるナレーションをフィーチャーしたパーティロック「Party Poison」、ブリットポップ期のUKロックにも通ずるものがある「Summertime」や「The Kids From Yesterday」など、どの曲も個性やクセは強いのに意外とスルスル聴き進められてしまうものばかり。ダークなものを求めるリスナーには期待はずれだったかもしれませんが、時代を牽引するトップランナーとしては正解の1枚だと(今なら)断言できます。

ただ、このアルバム発表から数年後にはバンドは解散を突如発表。本当なら“この先”に何を見つけたのかを表現してほしかったところですが……ご存知のとおり、2019年末にバンドは7年ぶりの再結成を果たしています。この3月には『Download Japan』で久しぶりの来日公演も実現する予定でしたが、結果はご存知のとおり。きっとこの困難を乗り越えた彼らは、きっと“この先”を形として見せてくれるはず。そう信じております。

 


▼MY CHEMICAL ROMANCE『DANGER DAYS: THE TRUE LIVES OF THE FABULOUS KILLJOYS』
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2020年5月14日 (木)

CHEAP TRICK『ALL SHOOK UP』(1980)

1980年10月にリリースされた、CHEAP TRICK通算5枚目のスタジオアルバム。

ライブアルバム『AT BUDOKAN』(1979年)および4thスタジオアルバム『DREAM POLICE』(1979年)がともに全米TOP10入り(前者が3位、後者が6位)を果たし、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たしたCHEAP TRICK。これらのヒットをフォローアップすべく制作された今作『ALL SHOOK UP』は、ある意味ではバンドが本来挑戦したかったことが表現されているのですが、それは必ずしもファンが望むものではなかったという、わかりやすい例になっています。

プロデューサーに迎えられたのが、かのジョージ・マーティン。レコーディングエンジニアにはジェフ・エメリックという、ビートルズでおなじみの布陣で制作された本作のレコーディングはAbbey Road Studio……ではなく、Air Studioにて行われました。

バンドとしての個性を確立させた初期3作、そこからさらに一歩前進した『DREAM POLICE』で確固たる「CHEAP TRICKらしさ」を手にしたものの、今作ではそれとは同じことはしなかった。かといって「まんまビートルズ」というわけでもない。適度なハードロック感を残しつつも、彼らは本作で早くも“大人”になろうとしていたのではないか。1作目の『CHEAP TRICK』(1977年)から本作までの5作を続けて聴くと、よりそう感じられるのです。

オープニングを飾る「Stop This Game」で表現された壮大さは過去4作にはなかったものですし、「Just Got Back」や「Can't Stop It But I'm Gonna Try」では従来の“らしさ”をより大人びたものへと進化させている。かと思えば、ジョージ・マーティンとタッグを組んだからこそ生まれたであろう「World's Greatest Lover」のような名バラードもあるし、かの“すかんち”が某曲で元ネタにした「Baby Loves To Rock」のようなロックンロールナンバーもある。どちらも確実にジョン・レノンポール・マッカートニーの影響下にあるアレンジですよね。

後半も『DREAM POLICE』でトライしたことがビルドアップされたかのような「High Priest Of Rhythmic Noise」や「Go For The Throat (Use Your Own Imagination)」、ストレートな「Love Comes A-Tumblin' Down」、トライバルで風変わりな「Who D' King」など個性的な楽曲が満載。ただ、過去4作にあった「弾けるようなパワーポップ感」は若干薄れつつあるような印象もあります。そこを良しとするか否かで評価がわかれそうですね。

『AT BUDOKAN』、『DREAM POLICE』とわかりやすいパワーポップ/ロック作品が続いたことで、(またジョージ・マーティンなど憧れのスタッフと共作することで)バンドとして新たな一手を提示しようと思ったのでしょうが、リスナーはそれでも「第二の『DREAM POLICE』」を欲しがった。結果、本作は全米24位と前作から順位を落とし、セールス面でも50万枚と売り上げ半減します。シングルもチャートインしたのは「Stop This Game」(全米48位)のみ。内容は過去4作にも匹敵する(いや、個人的には今一番ピンとくる)1枚ですが、ヒットには結びつきませんでした。

また、ハードなツアー生活に嫌気が差したトム・ピーターソン(B, Vo)は、本作完成後にバンドを脱退。バンドはピート・コミタを迎え、ツアーを行います。ここから約8年間、バンドの低迷期が続くわけですね……。

 


▼CHEAP TRICK『ALL SHOOK UP』
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2020年5月13日 (水)

CHEAP TRICK『BUSTED』(1990)

1990年6月下旬にリリースされたCHEAP TRICKの11thアルバム。日本盤は同年7月下旬に発売されています。

トム・ピーターソン(B, Vo)が復帰し、オリジナルメンバーで制作した起死回生の前作『LAP OF LUXURY』(1988年)から「The Flame」という初の全米No.1シングルが生まれ、その後も「Don't Be Cruel」(全米4位)、「Ghost Town」(同33位)、「Never Had A Lot To Lose」(同75位)とヒットを連発。アルバムも最高16位まで上昇し、100万枚を超えるヒット作になるなど、第二の黄金期に突入したCHEAP TRICK。続く今作『BUSTED』では、その成功を持続させようとするさまざまなトライが見受けられます。

プロデューサーには引き続いリッチー・ズィトー(HEARTBAD ENGLISHWHITE LIONなど)を起用し、ダイアン・ウォーレンやテイラー・ローズ、ミック・ジョーンズ(FOREIGNER)などの外部ライターも楽曲制作に参加。ですが、前作ほど全面的に起用しているわけではなく、全体を通して見てみるとロビン・ザンダー(Vo, G)&リック・ニールセン(G)が中心となって書いている楽曲のほうが多いのかなと。また、外部ライター丸投げは1曲のみ(バラード「Wherever Would I Be」のみで(カバー曲を除く)、外部ライターが多数参加している曲にも必ずメンバーがひとりはクレジットされている。このあたりに前作とは異なる、バンドとしてのアイデンティティが強く感じられるのではないでしょうか。

作風的にもAORや産業ロック色を強めた前作の延長線用にあるものの、アレンジ的には前作のように曲によってちぐはぐということもなく、ロックバンドとしての一体感が若干強まっている。前作での成功が良い作用をもたらしたのか、まさに「大人(アダルト)ロック」と呼ぶにふさわしい大人の余裕が強く伝わってきます。リードシングルに選ばれた「Can't Stop Fallin' Into Love」なんてまさにその象徴的なナンバー、落ち着いたテンポに歌うようなベースライン、メロディをサポートするようなギタープレイとロビン・ザンダーの色香がにじみ出たボーカルまで含め、まるで80年代半ば以降のロッド・スチュワートが歌いそうな、すべてが完璧な1曲なのです。

もちろん、オープニングを飾る「Back 'N Blue」やタイトルトラック「Busted」、ビートルズを彷彿とさせる「Had To Make You Mine」、ロイ・ウッドのカバー「Rock 'N' Roll Tonight」など、それ以外にもCHEAP TRICKらしいロックナンバーは豊富ですし、クリッシー・ハインド(THE PRITENDERS)をフィーチャーした「Walk Away」や「When You Need Someone」などミディアムバラードもたっぷり用意。全体のバランスは前作以上の仕上がりで、80年代半ば以降の産業ロック期では最高の1枚だと思います。

ですが、本作は全米48位と前作ほどのヒットにはならず、シングルも「Can't Stop Fallin' Into Love」(全米12位)、「Wherever Would I Be」(同50位)の2枚がチャートインしたのみ。この失敗が影響してか、翌1991年に初のベストアルバム『THE GREATEST HITS』を発表し、デビューから在籍したEpic Recordsを離れることになります。

ですが、この1、2年後に勃発するグランジ・ムーブメントにより、CHEAP TRICKはみたび日の目を浴びることになるのでした。それについてはまた別の機会に。

 


▼CHEAP TRICK『BUSTED』
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2020年5月12日 (火)

BAD COMPANY『HOLY WATER』(1990)

1990年6月に発表されたBAD COMPANYの9thアルバム。日本盤は同年7月下旬にリリースされました。

ポール・ロジャース(Vo)の脱退を経て加入した2台目フロントマンのブライアン・ハウ(Vo)の参加3作目にして、新生BAD COMPANY最大のヒット作。「Holy Water」(全米89位)、「If You Needed Somebody」(同16位)、「Walk Through Fire」(同28位)とヒットシングルが続き、アルバム自体も全米35位まで上昇。100万枚を超えるセールスを記録しています。

泥臭さの強かったブリティッシュハードロックを基盤にしたポール・ロジャース時代から一変、ブライアン・ハウ期はAORや産業ロックにすり寄ったアメリカン・ハードロックを軸に展開。特に本作ではラジオで流れやすいメロディアスなハードロックやバラード、耳に馴染みやすい歌声と分厚いコーラスというDEF LEPPARD以降の80'sハードロック、JOURNEYFOREIGNERHEARTなどに通ずるハードポップが満載の良作に仕上がっています。

シングルカットされた冒頭2曲「Holy Water」「Walk Through Fire」なんて完全にDEF LEPPARDですし、ヘヴィなスローブルース「Stranger Stranger」は『サーペンス・アルバス』(1987年)期のWHITESNAKE、適度なソウル感がたまらないミディアムバラード「If You Needed Somebody」なんてまさに80年代のFOREIGNERやHEART、同時期に活躍したBAD ENGLISH(そして復活後のCHEAP TRICK)の系譜ですし。さらに5曲目「Fearless」なんて、ギターリフのせいもあってか同時期にヒットしていたDAMN YANKEES「Coming Of Age」との共通点も見受けられるしね。

ミック・ラルフス(G)のギタープレイには適度なブルースロック感を残しつつも、ボーカルを主役に立てて脇役に徹する潔さが感じられる。そのへんは70年代のポール・ロジャース期とは異なるスタイルですし、同じバンドと見なすのは難しいかもしれません。サイモン・カーク(Dr, Vo)が歌う「100 Miles」のような牧歌的な曲には第1期を思い浮かべたりして、ちょっと微妙な気持ちになるかもしれませんが、だったら同じ名前の別のバンドとして楽しんだらいいんじゃないでしょうか。

1990年というと、80年代半ばから続いたHR/HMブームの末期であると同時に、翌年末から勃発するグランジ・ムーブメントまでの過渡期。ブライアン・ハウ在籍期はこのあともう1枚、『HERE COMES TROUBLE』(1992年)という良作を発表しており、こちらも全米40位(50万枚以上のセールス)を記録していますが、サウンドの質感や楽曲のスタイル的には今作のほうがより80年代的で、上に挙げたようなバンドのリスナーにも受け入れられやすいんじゃないかな。

現在はポール・ロジャースが復帰しているので、この時期の楽曲がBAD COMPANY名義でプレイされることはないでしょう。そんな中で、先日ブライアン・ハウがお亡くなりになるというニュースが飛び込んできました(ソース)。忘れ去られてしまうには勿体ない両盤も少なくないので、これを機に触れてみることをオススメします。

 


▼BAD COMPANY『HOLY WATER』
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2020年5月11日 (月)

KILLSWITCH ENGAGE『ATONEMENT II: B-SIDES FOR CHARITY』(2020)

2020年5月初頭にデジタルリリースされた、KILLSWITCH ENGAGEのミニアルバム。5月1日にBandcampで1週間先行配信され、同月8日から各種ダウンロード/ストリーミングサービスにて配信が開始されています。

タイトルからもおわかりのように、本作に収録された楽曲はすべて昨年8月にリリースされた最新オリジナルアルバム『ATONEMENT』と同時期にレコーディングされたもの。世が世ならシングルのカップリングや、追って販売されたであろうリパッケージ盤に追加収録されていたのかもしれません。

しかし、ここ数ヶ月世界中を絶望のどん底に陥れている新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、音楽産業自体が停滞(あるいは停止)してしまっている。KSE自身もこの春から新たなツアーを開始予定でしたが、残念ながら延期に追い込まれています。本作はそんな彼らを心待ちにしているファンへのプレゼントであると同時に、災害慈善センターのためのCOVID-19救済基金チャリティのために準備されたものでもあるのです(本作の収益の100%は同救済基金へ寄付されるとのこと)。

アルバムからのアウトテイクというと、実際にリリースされたアルバム本編収録曲より劣る印象があるかもしれませんが、今回リリースされた6曲は『ATONEMENT』全体のカラーからなんとなくズレてしまうため、泣く泣くカットしたものであり、完成度自体はアルバム本編と同等と言っていいでしょう。実際、どの曲もどこからどう聴いてもKSEそのものですし、彼ららしさや魅力は随所から感じられるはずです。

確かに、突き抜けるような壮大さが伝わる「I Feel Alive Again」やハードコアパンクの流れにある「Killing Of Leviathan」などは、もし本編に収録されていたらアルバムの統一感を損なっていたかもしれません。だからといって、これらの曲が悪いわけではなく、単にタイミングが悪かったということなんでしょうね。

歌詞に関しても、ジェシー・リーチ(Vo)は『ATONEMENT』で歌われているテーマと同様で、彼の人生における非常にハードな時期に書かれたものなので統一性があると述べています。なので、『ATONEMENT』と同じ時間軸の中で表現された、もうひとつの可能性と捉えれば本編と同じノリで楽しめるのではないでしょうか。

ストリーミングに関しては、再生すればするだけ権利者に収益が入ります。SpotifyなりApple Musicなりでヘヴィローテーションすることで然るべき団体に寄付されるので、気軽な寄付のつもりで(できれば爆音で)リピートすることをオススメします。

 


▼KILLSWITCH ENGAGE『ATONEMENT II: B-SIDES FOR CHARITY』
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2020年5月10日 (日)

2020年3月のアクセスランキング

ここでは2020年3月1日から3月31日までの各エントリーへのアクセス数から、上位30エントリーを紹介します。これまでは2ヶ月区切りで集計してきましたが、アクセス数も徐々に増えていることから、今回からは改めて1ヶ月区切りで発表していきたいと思います。

内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いたトップ30。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2020年1〜2月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)(※2019年9月30日更新/→1位)

2位:BRING ME THE HORIZON『Music to listen (中略) to-GO TO』(2019)(※2019年12月31日更新/→2位)

3位:UFO『WALK ON WATER』(1995)(※2017年8月10日更新/Re)

4位:HAREM SCAREM『CHANGE THE WORLD』(2020)(※2020年3月12日更新/NEW!)

5位:DIZZY MIZZ LIZZY『ALTER ECHO』(2020)(※2020年3月21日更新/NEW!)

6位:「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 1@苗場スキー場(2001年7月27日)(※2001年8月8日更新/↑28位)

7位:CODE ORANGE『UNDERNEATH』(2020)(※2020年3月15日更新/NEW!)

8位:DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』(1988)(※2018年2月9日更新/↓4位)

9位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓7位)

10位:BLOOD INCANTATION『HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE』(2019)(※2019年12月1日更新/↓6位)

 

11位:OUTRAGE『RUN RIOT』(2020)(※2020年3月17日更新/NEW!)

12位:CRY OF LOVE『BROTHER』(1993)(※2019年6月19日更新/↓3位)

13位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/↓12位)

14位:THE DOGS D'AMOUR『IN THE DYNAMITE JET SALOON』(1988)(※2019年6月22日更新/Re)

15位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新/↑23位)

16位:NIRVANA『NEVERMIND』(1991)(※2017年8月14日更新/↓14位)

17位:H.E.A.T『H.E.A.T II』(2020)(※2020年3月13日更新/NEW!)

18位:THERAPY?『GREATEST HITS (THE ABBEY ROAD SESSION)』(2020)(※2020年3月16日更新/NEW!)

19位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日更新/↓13位)

20位:ISSUES『BEAUTIFUL OBLIVION』(2019)(※2020年3月5日更新/NEW!)

 

21位:WHITESNAKE『FLESH & BLOOD』(2019)(※2019年5月11日更新/Re)

22位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN』(1984)(※2017年3月2日更新/↓15位)

23位:DAVID ELLEFSON『SLEEPING GIANTS』(2019)(※2020年3月20日更新/NEW!)

24位:JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』(1992)(※2017年4月10日更新/Re)

25位:DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』(2016)(※2020年2月29日更新/NEW!)

26位:DEF LEPPARD『THE EARLY YEARS 79-81』(2020)(※2020年3月22日更新/NEW!)

26位:DAVID COVERDALE『INTO THE LIGHT』(2000)(※2020年3月7日更新/NEW!)

26位:DEFTONES『COVERS』(2011)(※2018年8月29日更新/Re)

26位:DIRTY HONEY『DIRTY HONEY』(2019)(※2020年3月1日更新/NEW!)

30位:BABY CHAOS『APE CONFRONTS COSMOS』(2020)(※2020年3月23日更新/NEW!)

30位:11月24日、エリック・カーを偲んで。(※2005年11月25日更新/Re)

30位:WHITESNAKE『TROUBLE』(1978)(※2020年3月8日更新/NEW!)

30位:「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 2@苗場スキー場(2001年7月28日)(※2001年8月12日更新/Re)

LITURGY『H.A.Q.Q.』(2019)

2019年11月12日に予告なしでデジタルリリースされたLITURGYの4thアルバム。フィジカルでは日本盤が2020年5月13日に先行発売、続いて5月15日に海外でも発売されるとのことです。

2010年代前半にDEAFHEAVENALCESTとともに、新世代ポスト・ブラックメタル/ブラックゲイズの代表的バンドとして紹介されることの多かったLITURGY。前作『THE ARK WORK』(2015年)ではエレクトロニカ色を前面に打ち出したことで賛否両論となりましたが、本作では従来のアグレッシヴかつアヴァンギャルドな路線に回帰し、多くのリスナーに歓迎されました。

個人的には前作のテイストも嫌いじゃなかったのですが、確かにあのままのスタイルで2作、3作と続いたらちょっとキツいかな?と思っていたので、今回の路線は歓喜ものでした。オープニングの「Hajj」からして最高で最狂ですし、前作ではクリーンボイスが多用されていたものの今作では首尾一貫してスクリームしまくり。なおかつ、デジタルエフェクトなどを随所に取り入れたアレンジからは、前作での経験をしっかり踏まえつつ進化していることが伺えます。

このデジタルエフェクトに関しては、日本盤ライナーノーツでも触れられていますが……ちょうど同タイミングに発表されたCODE ORANGEの新作『UNDERNEATH』(2020年)と共通するものがある。ただヘヴィ一辺倒なわけではなく、軸がブレずにさまざまな要素を取り込むことで表現の豊かさを感じさせる技は両者に共通するところであり、ただその手法が2組とも異なるというだけなのかな。

ポストハードコアから新たなメタルを構築しようとするCODE ORANGEは、ダブステップ以降のヒップホップまでもを飲み込んで進化を続けている。一方で、LITURGYはアヴァンギャルドやエクスペリメンタル・ロックを拠点にブラックメタル経由、エレクトロニカや環境音楽(あるいは宗教音楽)までもを経由し、再びブラックメタルへと回帰することでオリジナリティを確立させた。その結果が本作であり、新しい世代のヘヴィメタル/ヘヴィミュージックのお手本的作品が完成したわけです。

クワイアなどのボーカルワーク、ピアノやハープ、ビブラフォン、グロッケンシュピール、ひちりき、竜笛といったアコースティック楽器をフィーチャーすることで、激しさの中にも美しさや優しさが散りばめることに成功した本作は、間違いなく前作があったからこそたどり着いた境地であり、過去最高の内容だと思います。ブラックメタル的な演奏スタイルで轟音を鳴らしながら、ここまで儚い世界観を見せてくれる本作。間違いなくCODE ORANGEの『UNDERNEATH』と並ぶ“2020年を代表する1枚”と断言させてください(正確には2019年末のリリースだけどね)。

 


▼LITURGY『H.A.Q.Q.』
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2020年5月 9日 (土)

BOSTON MANOR『GLUE』(2020)

2010年5月1日にリリースされた、BOSTON MANORの3rdアルバム。日本盤未発売。

全英80位を記録した『WELCOME TO THE NEIGHBOURHOOD』(2018年)から1年8ヶ月という比較的短いスパンで届けられた本作。同じスタッフと制作した、前作を最良の形でブラッシュアップさせた力作に仕上がっています。

デジタルやエレクトロの要素を活かしたアレンジは前作から引き続きですが、その使い勝手がわかってきたのか、前作のときよりも取って付けた感はなくなり、最初からこういったエレクトロ・ロックバンドだったんじゃないかと思わされるほど自然に聴くことができます。また、前作では若干抑えめだったパンクロック色も若干復調しており、オープニング「Everything Is Ordinary」から飛ばしていくことで全体の勢いが前作以上に感じられるから不思議です。

ですが、本作の最大の魅力はそういった的な側面ではなく、やはりエレクトロの要素を自由自在に用いたアレンジと、若干ゴシック調に寄ったテイストの深化でしょう。そのディープさ、ダークさはどこかDEFTONESにも似たものがあり、特にミディアムテンポでじっくり聴かせる楽曲ではその傾向はより強まって聴こえます。それもあって、以前よりもセクシーさが増しているような気も。きっとフロントマンのヘンリー・コックス(Vo)のボーカルワークが良い意味で肩の力が抜けたのも大きいのかな。要所要所でスクリームは多用されるものの、全体的には無理に力まないことで、気だるさとセクシーさを強めることに成功しているわけですから、この成長はかなり大きなものがあると思います。

また、ギターワークやそれに付随するアレンジもパンクやエモのそれというよりは、モダンヘヴィネス以降のメタルやスクリーモなどに通ずるものがある。それによって全体の空気感も先のDEFTONESなどの系譜に接近しているわけですから、この進化はメタル寄りリスナーからしたら非常に興味深いのではないでしょうか。ようこそ、こちら側へ!みたいな感じもありますし。

と同時に、90年代のブリットポップや80年代のUKニューウェイヴにも通ずる要素も感じられる。そういった点でもDEFTONESあたりとの共通点が見つけられ、個人的にはアルバムを聴き進めながらワクワクしてしまいました。

全13曲で50分超えと、40分以下だった過去2作と比べるとボリューミーに感じられますが、それでもスルッと聴き進められてしまうのは、本作の軸が最初から最後までブレていないから。いや、これまでもブレていなかったけど、本作に関しては迷いがまったく感じられないというのが正解かもしれません。モッシュ&ダイブしたりサークルピット作ったりとか、そういう盛り上がりこそ皆無ですが、一度聴いたら抜けられないような沼にハマる感覚は過去イチ。これはすごい力作が完成したんじゃないでしょうか。ぜひポストハードコアも素直に楽しめるHR/HMリスナーにこそ触れていただきたい1枚です。

 


▼BOSTON MANOR『GLUE』
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2020年5月 8日 (金)

MY DARKEST DAYS『MY DARKEST DAYS』(2010)

2010年9月にリリースされたMY DARKEST DAYSのデビューアルバム。日本盤未発売。

MY DARKEST DAYSは2005年に結成されたカナダ・オンタリオ州出身のハードロックバンド。同郷のチャド・クルーガー(Vo, G/NICKELBACK)が彼らを発掘し、2013年の解散までにチャドのプライベートレーベル・604 Recordsから2枚のアルバムを発表しています。

ということもあり、チャドはこのデビューアルバムのプロデュースにジョーイ・モイ(NICKELBACK、THEORY OF A DEADMANなど)とともに参加。アルバムで聴くことができるサウンド/楽曲もNICKELBACKの流れを組むポスト・グランジ/モダン・ハードロックの枠内にあるもので、NICKELBACKファンならば自然と受け入れられるテイストだと思います。

フロントマンのマット・ウォルスト(Vo, G)の歌声はチャドほどアクの強さやザラつきがなく、スルッと聴き進められるような質感。よく言えば耳なじみの良いポップさを持つ歌声で、悪く言えば突出した個性が感じられない……というのは言い過ぎでしょうか。ただ、高音域の伸びには一聴に値するものがあると思いますし、そこを活かしたミディアムバラード調の楽曲は彼らの武器でもあったのかな、と今になって感じています。

デビュー作ということもあってか、ゲストミュージシャンも豪華なものがあります。まず、チャド自身がソングライティングやボーカルで参加。そのチャドが加わったヒットシングル「Porn Star Dancing」ではリードギターをザック・ワイルドBLACK LABEL SOCIETYオジー・オズボーン)が担当しており、聴けば彼だとすぐにわかるワウを用いた豪快なソロとチョーキングを楽しむことができます。

また、同曲の別バージョンにはザックに代わってリュダクリスがボーカルでも参加。「Set It On Fire」ではオリアンティ(G)のプレイも耳にすることができます。さらに、オリジナル曲に加えDURAN DURANの1993年のヒット曲「Come Undone」のカバーも収録。こちらの女性ボーカルパートでは、同郷のジェシー・ジェイムズ・デッカーが花を添えています。

産業ハードロックをモダンテイストで味つけした、いわば「毒にも薬にもならない」類のバンド/アルバムかもしれませんが、アルバムとしての出来は平均点以上のものがあるのは確かです。

なお、2013年のMY DARKEST DAYS解散後、フロントマンのマットは実兄のブラッド・ウォルスト(B)が在籍するTHREE DAYS GRACEに電撃加入。THREE DAYS GRACEの近作を気に入っているリスナーならおなじみの1枚かもしれませんが、同バンドやALTER BRIDGEあたりのファンにも引っかかる要素満載なので、ぜひ一度チェックしてみてください。

 


▼MY DARKEST DAYS『MY DARKEST DAYS』
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BLACK LABEL SOCIETY『ORDER OF THE BLACK』(2010)

2010年8月に発表されたBLACK LABEL SOCIETYの8thアルバム。

1999年に1stアルバム『SONIC BREW』をリリースしたことを考えると、10年弱で8枚のアルバムを制作するというのはかなりのハイペースのように映ります。が、前作『SHOT TO HELL』(2006年)からこの『ORDER OF THE BLACK』の間には約4年のインターバルがあり、これはこの時点でのBLSのキャリアでは最長。というのも、ザック・ワイルド(Vo, G)はこの間にオジー・オズボーン『BLACK RAIN』(2007年)制作と同作を携えた長期ツアーに帯同したため、長く時間を割かれてしまったわけですね。

と同時に、2009年には重度の血栓症を患い、音楽活動を一切停止。これによりオジーのもとを離れることとなったわけです。一時は生命の危機もあり得たこの血栓症を無事乗り切ったザックは、再びBLSに本腰を入れることに。2005年にバンドに復帰したジョン・ディサルヴォ(B)と、本作のみ参加のウィル・ハント(Dr/EVANESCENCE)という布陣で今作を完成させます。

本作は久しぶりのBLSということもありますが、よい意味で過去数作のマンネリさを感じさせない力作に仕上がっています。ソングライティング面でもザックの才能/個性が良い方向に作用し、従来のBLSらしさ(BLACK SABBATHをモダン化させたヘヴィ感+サザンロックからの影響+エヴァーグリーンなポップ感)のみならずオジーの『BLACK RAIN』で見せたモダンメタル感もよい形で反映されており、1曲1曲の個性や完成度は近作の中でも随一ではないでしょうか。

オープニング2曲(「Crazy Horse」「Overload」)で見せる“2010年版オジー・サバス”的スタイルといい、キャッチーアップチューン「Parade Of The Dead」、BLS流王道ヘヴィネス「Southern Dissolution」、ザックのセンチメンタリズムが強く表れたピアノバラード「Darkest Days」や「Shallow Grave」など、とにかく楽曲が粒揃い。また、大半が3〜4分台ということで比較的コンパクトなのもあり、全13曲で49分というトータルランニングも聴きやすさにつながっているのではないでしょうか。

また、ザックのシンガーとしての表現力もより向上し、曲によってはオジー生き写しに聞こえることがしばしば。オジーが今30〜40代だったとして、ザックと一緒にモダンヘヴィネスと真正面から向き合ったら、きっとこんなアルバムを作っていたんじゃないか……なんてことすら考えてしまうほど、非常によくできた1枚。これをBLSの最高傑作と呼ぶ声も少なくないようです。事実、長く待たされたことも多少影響してか、本作はキャリア最高の全米4位という数字を残しています。セールス的にも前作の倍以上売り上げたようですし、まずは最高のカムバックを果たせたようです。

ちなみに本作、北米盤と日本盤(というかアジア地区のみ)ではジャケットのアートワークがまったく異なります。個人的には日本盤よりも北米盤のほうがすっきりしていて、非常に好みです。再発の際にはぜひ世界共通にしてほしいですね。

 


▼BLACK LABEL SOCIETY『ORDER OF THE BLACK』
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2020年5月 7日 (木)

AVENGED SEVENFOLD『NIGHTMARE』(2010)

2010年7月発売の、AVENGED SEVENFOLD通算5作目のオリジナルアルバム。

セルフタイトルの前作『AVENGED SEVENFOLD』(2007年)が全米4位と、前々作『CITY OF EVIL』(2005年)から大幅に順位を上げ、また同作を携えたワールドツアーも大成功。『AVENGED SEVENFOLD』を携えた2008年1月には初のジャパンツアーも実現(過去2回はサマソニでの来日)。僕自身もこのタイミングにはシニスター・ゲイツ(G)&ザッキー・ヴェンジェンス(G)へのインタビューを行うなどして、彼らに対する知識を増やしつつ好感度も上げていきました。この取材中、日本酒で泥酔したザ・レヴ(Dr)が乱入するハプニングもあり、途中から笑いの絶えないインタビューになったことをよく覚えています。

結局、ザ・レヴのいるA7Xを観ることができたのは、このときの来日公演と同年10月にBULLET FOR MY VALENTINEと行った対バンライブの2回のみ。2009年12月末、彼は不慮の事故により帰らない人になってしまいました。

同年11月からスタートしていた次作のレコーディングは翌2010年2月に、ザ・レヴのフェイバリット・ドラマーであるマイク・ポートノイ(当時DREAM THEATER)を加えた形で再開。ザ・レヴはデモ音源数曲でしか叩いていなかったので、音源として残されているドラムトラックはすべてマイクのものですが、コーラスやスクリームなどは数曲に生かされることに。こうして完成した5thアルバム『NIGHTMARE』は、ついに全米1位を獲得するのでした。

6分以上にもおよぶオープニングトラック「Nightmare」からしてA7X節全開で、ミドルテンポながらもグイグイ引っ張る感の強い「Welcome To The Family」、緩急に富んだアレンジのファストチューン「Danger Line」、哀愁味の帯びたM.シャドウズ(Vo)の歌声がジンとくるパワーバラード「Buried Alive」と、冒頭4曲を聴くだけで本作が名作であることが伺えるはず。以降もゴリゴリのメタルナンバーからドラマチックなアレンジのバラードまで、幅広いタイプの楽曲が並び、ラストは10分以上にわたる超大作「Save Me」で締めくくり。全体を通して感じるのは、過去4作に散りばめられた“A7Xらしさ”が煮詰める形で凝縮された、初期(というのは幅が長いですが)A7Xの集大成と呼ぶにふさわしい内容であるということ。従来のファンも納得させつつ、ビギナーに対しても入門編的な役割をしっかり果たしてくれる、そんな問答無用の1枚なのです。

とにかくバランス感に優れた内容で、80年代の王道ヘヴィメタルの要素も、90年代のグランジやモダンヘヴィネスを通過したサウンドも、2000年代のメタルコア/モダンメタルに括られるテイストもすべて含みつつ、懐かしくもあり新しくもあるという、非常に2010年らしい作風。ルーツに対するリスペクトもしっかり示しつつ、自身がこれからのシーンを牽引していくという気概も伝わる。そういう音を、ザ・レヴという仲間を失いながらもマイク・ポートノイという名手とともに作り上げられたのは、ある意味では偶然の産物だったのかもしれませんが、きっと最初から決まっていた必然だったんでしょうね。だって、ここまでのキャリアを考えればこういうアルバムが完成するのは、誰にだって想像できたはずですから。

「21世紀のGUNS N' ROSES」を目指したA7Xは、このアルバムで本家とは違った形でトップにまで登りつめ、新たなスタンダードとなった。本作はそれを象徴するような記念碑的な1枚です。

 


▼AVENGED SEVENFOLD『NIGHTMARE』
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BLACK VEIL BRIDES『WE STITCH THESE WOUNDS』(2010)

2010年7月にリリースされたBLACK VEIL BRIDESの1stアルバム。日本盤は同年11月に発売されています。

BLACK VEIL BRIDESは2006年にアメリカ・オハイオ州で結成された、グラム/ゴシック色の強いメタルコアバンド。活動拠点をハリウッドに移してからSNSなどを通じて着実に知名度を高めていき、当時若干19歳だったフロントマンのアンディ・ビアサック(Vo/当時はアンディ・シックス名義)のルックスと相まって、2009年6月に公開した「Knives And Pens」のMVは1年強で1,600万再生を記録するほどの人気を誇る存在でした。

SNSの寵児とでも言わんばかりの人気ぶりからか、はたまたマネジメントがIN THIS MOMENTなどを擁するMercenary Management、プロデューサー兼マネージャーがオジー・オズボーン・バンドのブラスコ(B)という強力なバックアップあってこそか、本作はデビュー作ながらも全米36位のスマッシュヒットを記録。この時点ですでに大物の風格を表していたわけですね。

さて、気になる音ですが、メタルコア以降のサウンド/アレンジをベースに、スクリームなどを交えつつも中音域をメインとしたアンディの甘い歌声や、オーソドックスなツインリードなどを中心に置くメロディアスな楽曲群は、AVENGED SEVENFOLDBULLET FOR MY VALENTINE以降の流れを汲む現代的な作風であることが伺えます。つまり、適度なヘヴィさを保ちつつも、軸になるのはエモ以降のキャッチーなメロディ。わかりやすさ重視なのが2000年代的であり、その傾向は2010年代に入ってさらに特化していった
ような気がします。

と同時に、KISSや80年代前半のMOTLEY CRUEを彷彿とさせるグラムメイクは、ひと時代前のヘアメタルというよりはMY CHEMICAL ROMANCE以降の流れと捉えることもできる。彼らのようなゴスメイクは(アメリカにおけるいわゆる)オタク受けが非常に良いですし(そういったファンが日本のV系を愛好するように)、要するに彼らが2010年にデビューしたのは必然だったのかもしれませんね。

ヒステリックに歌い上げることなく、アンセミックに大合唱できるようなシンガロングパートも意外と少ない。そういった点からはスクリーモやポストハードコア流れのバンドとは異なる、生粋のHR/HM流れのバンドであることにも気づかされるはず。ストリングスをフィーチャーしたアコースティックバラード「The Mortician's Daughter」のような楽曲を含むあたりからも、その傾向が伺えるのではないでしょうか。

個性や才能が本格的に開花するのは次作『SET THE WORLD ON FIRE』(2011年)以降になりますが、原石らしさが詰まった本作もまた処女作ならではの「この瞬間だけの輝き」を見つけられるはずです。

 


▼BLACK VEIL BRIDES『WE STITCH THESE WOUNDS』
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2020年5月 6日 (水)

BULLET FOR MY VALENTINE『FEVER』(2010)

2010年4月に発売されたBULLET FOR MY VALENTINEの3rdアルバム。

1stアルバム『THE POISON』(2005年)の時点で世界的に成功していたBFMVですが、続く2作目『SCREAM AIM FIRE』(2008年)ではメタルコア的なスタイルから王道ヘヴィメタル路線へと進化を遂げ、全英5位/全米4位というさらなる大成功を収めることに。アメリカでの成功に気を良くした彼らは、ここで舵を完全にアメリカ側に切ることを決断し、過去2作を手がけたコリン・リチャードソン(CARCASSFUNERAL FOR A FRIENDMACHINE HEADなど)からプロデューサーをドン・ギルモア(LINKIN PARK、GOOD CHARLOTTE、アヴリル・ラヴィーンなど)へと変更。一気にメジャー感の強いメタルサウンドへとシフトすることになります。

過去2作でスピード感の強い幕開けを遂げた彼らでしたが、本作ではオープニングを飾るミドルナンバー「Your Betrayal」にいきなり面食らうのではないでしょうか。インパクトという点においては過去2作の比にならないほど弱いものですが、アルバム全体としては『SCREAM AIM FIRE』のスタイルを残しながらも「コンパクトさ」「キャッチーさ/わかりやすさ」に比重を置くことでライト層にもアピールできる曲作りを目指した、スルッと聴き進めることができる良質のメタルアルバムに仕上げられています。

2曲目以降は「Fever」「The Last Fight」と前作の延長線上にあるキャッチーな歌メロのスピードナンバーが続きますし、彼ららしいパワーバラード「A Place Where You Belong」「Bittersweet Memories」もしっかり用意されている。マシュー・タック(Vo, G)のスクリームも健在で、実は思った以上に尖った部分も要所要所に散りばめられていることは、ちゃんと聴けば気づくはずです。

それでも、本作が「日和った」だとか「売れ線に走った」と揶揄されてしまうのは悲しいものですね。とはいえ、僕自身も初めて本作を聴いたときはオープニングの印象が(悪い意味で)強かったためか同様の印象を残しており、それほど聴きこまなかった1枚なんですよね。ですが、その後の彼らのキャリアを考えると彼らがしっかりメタルシーンで戦っていこうという意思表示として本作を完成させたことは一目瞭然。初期の過激さは加齢とともに影を潜めてしまったものの、リリースから10年経っても楽しめるような完成度の高いアルバム作りを意識していたことは、しっかり書き残しておきたいところです。

あとは、ここに「Scream Aim Fire」や「Waking The Demon」などに匹敵するキラーチューンが1曲でも用意されていたら、間違いなく過去2作に並ぶ名盤になっていたのかな。そう思うと「あと一歩」かもしれませんが、それでも平均点以上の優れたヘヴィメタルアルバムであることには間違いありません。

 


▼BULLET FOR MY VALENTINE『FEVER』
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SLEEPING WITH SIRENS『WITH EARS TO SEE AND EYES TO HEAR』(2010)

2010年3月にリリースされたSLEEPING WITH SIRENSの1stアルバム。日本盤未発売。

アメリカ・フロリダ州オーランド出身の5人組(現在は4人組)スクリーモ/ポストハードコアバンドのSLEEPING WITH SIRENSは、全米3位を記録した3作目の『FEEL』(2013年)やEpitaph移籍後の4作目『MADNESS』(2015年)が代表作になるのかもしれませんが、原点と言える本作もなかなか捨てがたい魅力満載の1枚ではないでしょうか。

適度なデジタル処理を擁するサウンドは、ピコリーモやエレクトロニコアと言い切るには少々物足りなさを感じますし、それよりは同じ年の秋に発表されることになるBRING ME THE HORIZON『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)の手法に近い印象を受けます。2000年代のバンドらしくブレイクダウンを含む曲構成からは手慣れたものを感じますし、重心高めのスクリームもピコピコシンセの音色に不思議とマッチしている。かつ、フロントマンのクリーンボーカルのハイトーンぶりが中性的で、実は日本人の完成にフィットするものではないかという魅力も伝わる。

楽曲自体も非常にメロウなものが多く、タイトルからして素晴らしいオープニングトラック「If I'm James Dean, You're Audrey Hepburn」を筆頭としたメタルコア的なものからシンフォニックなミディアムナンバー「Let Love Bleed Red」、デジタル色濃厚な「Don't Fall Asleep At The Helm」とそれに続くアンセミックなタイトルトラック「With Ears To See, And Eyes To Hear」など、緩急に富んだアルバム構成で、楽曲の1つひとつがかなり個性的。そこにケリン・クイン(Vo, Key)という唯一無二のボーカリストの声が乗ることで、ほかの同系統バンドと一線を画する存在感を強めている。そりゃあデビュー作の時点にして早くもブレイクの可能性を感じさせるはずです(しかも、名門Rise Recordsからのデビューですからね)。

彼らの国内盤リリースは5作目の『GOSSIP』(2017年)まで待たねばなりませんが、この頃から日本人好みの音をほぼ完成させていたんですね。かつ、ケリンのルックスも男前ですし。初来日は2015年の『MADNESS』リリース後、ONE OK ROCKの幕張公演オープニングアクトとしてでしたが、この組み合わせもなるほどと納得できるものがあります。全10曲で31分というコンパクトな内容なので、腹八分目なボリュームで最後までスルッと聴けてしまうはず。ここで「もっと!」と思った方は、ぜひ2作目、3作目と聴き進めて彼らの進化ぶりを確かめてみてはどうでしょう。その意味でも、この原点から聴き始めるのは大切かなと思います。

 


▼SLEEPING WITH SIRENS『WITH EARS TO SEE AND EYES TO HEAR』
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2020年5月 5日 (火)

BON JOVI『100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG』(2004)

2004年11月にリリースされた、未発表中心で構成されたBON JOVI初のBOXセット。海外盤はCD4枚+インタビューで構成されたDVDの5枚組仕様ですが、日本盤のみBOX未収録のシングルC/W曲を10曲集めたボーナスディスクCDを追加した5CD+DVDの6枚組となっています。

本作は1984年にデビューしたBON JOVIの20周年と、トータルセールス1億枚突破を記念して制作されたもの。これまで正式リリースされていなかった未発表曲のデモ音源、アルバム曲として発表済みの楽曲のデモバージョン、シングルのカップリングや映画のサウンドトラック盤などでリリースしてきたアルバム未収録曲を集めたもので、CD4枚に50曲(日本盤はCD5枚に60曲)というボリューミーな内容となっています。

80年代のデモや未発表曲は比較的少なく、『NEW JERSEY』(1988年)用に多数制作された楽曲群は皆無(日本盤のみ、既発の「Let's Make It Baby」をDISC 5に収録)。これは、のちに『NEW JERSEY』のデラックス盤(2014年発売)でまとめてリリースされていることを考えると、『NEW JERSEY』完全版(というか『SONS OF BEACHES』)をのちにちゃんと形として残したいという考えがあったのでしょうね。

ということで、デモの大半は『KEEP THE FAITH』(1992年)以降のもので構成されており、中にはリッチー・サンボラ(G, Vo)が初ソロアルバム『STRANGER IN THIS TOWN』(1991年)のために用意したデモや、デヴィッド・ブライアン(Key)が映画『メンフィス』に提供したボーカル曲、ティコ・トーレス(Dr)がリードボーカルを務める未発表曲まで含まれており、バンドとしての蔵出し感が非常に強い内容となっています。

そんな中に、ほんの少しですが80年代のデモ音源も含まれておりまして、1986年の「Someday Just Might Be Tonight」は時期的に『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)のために制作されたものなのでしょう。曲の質感的には次の『NEW JERSEY』か、あるいは『KEEP THE FAITH』あたりにも通ずるものがあり、この“枯れた”感はジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)が若くして持ち合わせていたものなのだと気づかされます。そのほか、1985年の「We Rule The Night」はモロにハードロック色濃厚で微笑ましいですし、1986年の「Out Of Bounds」はいかにも『SLIPPERY WHEN WET』からのアウトテイクというノリで嫌いじゃないかな。

個人的に興味深いのは、既発曲のデモバージョン。どのような流れを経て完成に至ったのか、完成版から削られた未公開のメロディなどその過程が垣間見られるという点でも、お得感がかなり強いのではないでしょうか。DISC 4の最後にシークレットトラックとして収められている「Livin' On A Prayer」含め、隅々までその違いを確かめてみてください。

デモやアウトテイクといわれると「ボツ曲ってことは出来が悪いんでしょ?」って思ってしまいがちですが、そこはBON JOVIのこと。これまでもシングルのカップリングなどで発表してきた平均点以上の未発表曲を聴けばおわかりのとおり、基本的にはほかの同系統のバンドよりも優れた良曲ばかり。中には「本当にこれでボツなの?」と思わされるものも多いですし、「Real Life」や「Good Guys Don't Always Wear White」などサントラでしか聴くことができなかった“隠れた名曲”にもこの機会に触れることができる本作。初心者にはオススメしませんが、BON JOVI好きを公言するリスナーには必ず引っかかるポイントがある作品集だと思いますよ。

こんな貴重なボックスセットがストリーミングサービスで手軽に楽しめるようになるなんて。なんて便利な世の中になったんでしょうね。

 


▼BON JOVI『100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG』
(amazon:国内盤5CD+DVD / 海外盤4CD+DVD / MP3

 

BON JOVI『GREATEST HITS』(2010)

2010年10月下旬に発表されたBON JOVIのコンピレーションアルバム。

文字通り、BON JOVIのヒットシングルを凝縮したグレイテスト・ヒッツ的内容で、新曲2曲を加えたディスク1枚で構成された通常盤と、さらに新曲2曲(計4曲)を加えた2枚組の“THE ULTIMATE COLLECTION”の2仕様が用意されました。全世界で大ヒットを記録した『CROSS ROAD』(1994年)から16年ぶりのベスト盤とあって、チャート的には前作の8位を上回る全米5位を記録しています。

実は本作、『CROSS ROAD』のとき同様に北米とそれ以外の国(主にヨーロッパ)、そして日本とで収録内容および曲順が一部異なります。2枚組の“THE ULTIMATE COLLECTION”ですと北米盤が計28曲(DISC 1:16曲、DISC 2:12曲)、インターナショナル盤が計30曲(DISC 1:16曲、DISC 2:14曲)、日本盤が計31曲(DISC 1:17曲、DISC 2:14曲)と日本盤が最多となっているので、ここでは日本盤の2枚組仕様について話を進めていきたいと思います。

DISC 1は通常盤と同じ内容で、『CROSS ROAD』との被りが10曲と非常に既視感の強い選曲。前回オミットされた「Born To Be My Baby」が入っていたり、「Lay Your Hands On Me」がフェードアウトするシングルエディットで物足りないなど良い面悪い面それぞれありますが、日本盤のみの追加トラックがもはや(ありがたくない)お約束となった「Tokyo Road」というのは……(以下、割愛)。「It's My Life」「Have A Nice Day」「Who Says You Can't Go Home」といった2000年代のヒットシングルもしっかり収められているので、2010年までのBON JOVIを手軽に振り返るという意味では、このシングルディスクでも十分事足りるかと思います。

気になる新曲2曲は、直近の新作『THE CIRCLE』(2009年)の路線というよりは、それ以前の“BON JOVIらしさ”が復活した温かみの強い佳曲。「What Do You Got?」はミディアムテンポのソウルバラードで、『LOST HIGHWAY』(2007年)あたりに入っていても違和感のない仕上がり。もうひとつの「No Apologies」はサビメロから始まる王道スタイルで、シンプルな作風ながらも強いビートとわかりやすい歌メロが好印象な良曲です。おまけとしては十分なクオリティで、過去の代表曲にも十分馴染んでいるかなと思います。

DISC 2は大きなヒット曲は少ないものの、BON JOVIファンなら誰もが知るような人気曲、ライブの定番曲などを多数収録。「In These Arms」「I'll Sleep When I'm Dead」「Keep The Faith」「Bed Of Roses」などの『KEEP THE FAITH』(1992年)収録曲、「This Ain't A Love Song」「These Days」といった『THESE DAYS』(1995年)からのシングル曲はすべてこちらに追いやられており(苦笑)、90年代は黒歴史かと言わんばかりの扱いなのは気になりますが、近年のシングル曲「Lost Highway」「When We Were Beautiful」「(You Want To) Make A Memory」や唯一の非シングル曲ながらもライブ必須の代表曲「Blood On Blood」が選ばれているのは興味深いかな。

だけど「In And Out Of Love」よ、お前は本当に必要だったのか? 1stアルバム『BON JOVI』(1984年)から選ぶなら「Runaway」は納得だけど、2ndアルバム『7800° FAHRENHEIT』(1985年)から毎回この曲なのは如何なものかと。だからといって「Tokyo Road」ではないんだけどね。この、一見全オリジナルアルバムから最低1曲ずつ選ばれているような錯覚に陥る選曲ですが、実は8thアルバム『BOUNCE』(2002年)からは1曲も選出されていないという事実に気づいたのは、聴き終えてしばらく経ってからでした。それくらい影の薄いアルバムというのも……切ない。

で、さらなる新曲2曲についても。「This Is Love This Is Life」は、リッチー・サンボラ(G, Vo)のマウス・ワウをフィーチャーした、“2000年以降のBON JOVIらしい”王道マイナーロック。メロディや曲構成などのシンプルさは近代的ですが、リッチーのソロが最高にカッコいい1曲です。もうひとつの「The More Things Change」も近年の彼ららしいカントリー経由のアメリカンロック。DISC 1収録の2曲と比べたら、ちょっとインパクトに欠けるかな。けど、DISC 2の流れで聴くと全然アリと思えるから不思議です。

実はBON JOVIのオフィシャルサイトで本作を予約した人や、インターナショナル盤のiTunes購入特典として、さらなる新曲「This Is Our House」を手に入れることもできました。こちらはのちにデジタルシングルとして配信リリースされており、現在各種ストリーミングサービスでも聴くことができるので、あわせてチェックしてみてください。スケール感の大きなシャッフルビートのスタジアムロックで、正直なぜこれをアルバム本編に入れなかった?と思うはうですから(笑)。

 


▼BON JOVI『GREATEST HITS』
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2020年5月 4日 (月)

BON JOVI『BURNING BRIDGES』(2015)

2015年8月下旬に発売されたBON JOVIの通算13作目のスタジオアルバム。

リッチー・サンボラ(G, Vo)の脱退、デビューから30年以上にわたり在籍してきたMercury Recordsとの契約終了などネティブな話題が続いたBON JOVI。2014年のメジャーデビュー30周年を経て届けられた本作は、ファンへの感謝の気持ちを伝える“ファン・アルバム”という名目のもと発表された古巣レーベルからの最終作。正式なオリジナルアルバムという形とは異なり、内容は過去に書き下ろしながらも録音してこなかった未発表曲に新曲を加えた異色の内容となっています。

本作制作の時点ですでに次作『THE HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016年)に取り掛かっていることから、今作は前作『WHAT ABOUT NOW』(2013年)と次作をつなぐ橋渡し的な内容とも言えます。実際、多くの楽曲はその2作に収録されていたとしても不思議ではない雰囲気/テイストのものばかりで、それもそのはず、全10曲(ボーナストラック除く)中9曲がジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)の単独作もしくは外部ライターとの共作という『WHAT ABOUT NOW』の流れを汲むものがあるからです。

リードトラック「Saturday Night Gave Me Sunday Morning」のみジョン&リッチー(とプロデューサーのジョン・シャンクス)共作で、確かに2000年代以降のBON JOVIらしさに満ちたテイストなんですけど、リッチーのギターやコーラスが入っていないせいか、ジョンがソロでロックバンド的なことをやったらこうなる……みたいな仕上がり。それ以外の楽曲もすべてそんな感じで、「ギターロック」アルバムというよりは「ボーカル」アルバムというイメージ濃厚かな。それが悪いという意味ではないんですけど、どうにも物足りなさを感じてしまうのも確か。

「リッチーは抜けたけど、バンドは続いていくよ。応援ありがとう」という感謝の気持ちと、「レーベルが思うようにサポートしてくれないから、今作ってる新作は新しく契約したレーベルから出して、過去の未発表曲と新作に入れない曲を録ったアルバムで残った契約1枚分を消化しよう」という消極的な気持ちが入り混じった、なんとも言えない1枚。それもあって、CDジャケットはペラ1枚で歌詞もクレジットもなし、全10曲で40分という80年代前半以来のコンパクトな構成。でも、曲は平均点以上のものばかりで、ファンならば間違いなく楽しめる内容。うーん、評価に困る作品ですね(苦笑)。

そうやってプロモーションにも消極的だったためか、チャート的にも全米13位と振るわず、セールス的にも現在までに10万枚にも満たないんだとか。でもね、何度も書くけど悪くはないんですよ? ただ、ベストでもない。ジョンのソロアルバムくらいの軽い気持ちで接すれば、バンドのファンもきっとポジティブに楽しむことができるはずです。

『WHAT ABOUT NOW』同様、全タイトル中聴く頻度がもっとも低い作品ではありますが、『THE HOUSE IS NOT FOR SALE』を経て聴き返すと発見も多いですし、やっつけでもこれくらいのクオリティの作品が作ることができるBON JOVIってやっぱりすげえな、と思わされる1枚です。

 


▼BON JOVI『BURNING BRIDGES』
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BON JOVI『WHAT ABOUT NOW』(2013)

2013年3月中旬に発表されたBON JOVIの12thアルバム。

前作『THE CIRCLE』(2009年)から3年4ヶ月ぶり、新曲を含むベストアルバム『GREATEST HITS』(2010年)から数えても2年4ヶ月と、現代においては比較的短いスパンで届けられた本作。10thアルバム『LOST HIGHWAY』(2007年)から続く記録を更新し、連続3作/通算5作全米1位という快挙を成し遂げました。しかし、セールス的には世の中の流れに沿うように下降気味で、アメリカでは初めてゴールドディスク(50万枚以上)獲得ならず、世界的にもトータル150万枚と前作から半減する結果となりました。

リッチー・サンボラ(G, Vo)曰く「ロックンロールに回帰した、至るところに大合唱できるようなコーラスがあって“これぞBON JOVI”って内容」だった前作『THE CIRCLE』は、全体のトーンが暗めで落ち着いた大人のハードロックを展開したBON JOVIでしたが、続く今作では前作のテイストを少し残しつつも9thアルバム『HAVE A NICE DAY』(2005年)や『LOST HIGHWAY』で顕著だった「レイドバックしたカントリーロックテイスト」が復活。全体の空気感もポジティブさに満ちたもので、『LOST HIGHWAY』がお気に入りというリスナー(そう多くないかもしれませんが)には好意的に受け入れられる内容かと思います。

でも、このテイストってBON JOVIというよりもジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)個人のものなんじゃないか?という気もしていまして。実際、ソングライティングのクレジットに目をやると、ジョン単独およびジョンと外部ライターとの共作による楽曲が全12曲中7曲と過半数を占め、海外デラックス盤だと全15曲中10曲がジョン単独制作に近い楽曲(日本盤は全17曲と最多収録曲数なのですが、さらに1曲増えて11曲がジョン単独制作に近い楽曲)になるわけです。これ、現時点での最新作『THE HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016年)とほぼ同じ流れなんですよね。そう考えるとこの2作って、いろいろ共通点や似ているポイントも多くないですか?

リッチーとの共作(およびジョン&リッチー+外部ライター)曲が少ないのは、リッチーのアルコール依存症治療も大きく影響しているのでしょうか(2011年の来日時はそのため不参加)。また、本作の完成前後にリッチーが3rdソロアルバム『AFTERMATH OF LOWDOWN』(2012年)に取り掛かったことも大きかったのかな。のちにリッチーはこのアルバムの楽曲に対して「もっと練り込むべきだった。もうひと手間かけるべきだったのでは」と疑問を呈していましたが、バンドのアルバムとして考えるとその声も頷ける気がします(自身がソングライティングに思うように参加できなかったからこその、外側からの貴重な意見ですよね)。

そういう意味でも、本作はジョンのソロ色が強く表出し始めた最初のアルバムであり、結果リッチーはバンドを離れることになってしまうわけです。もちろん、それだけが理由ではないと思いますが。

そんなネガティブな要素を孕む本作。確かにザッと聴く限りでは突出した1曲が少ない、全体像がぼんやりとした印象のアルバムかもしれません。また、特に日本盤は全17曲と無駄に曲数が多いのも災いして、なかなか通して聴く気の起きない1枚でもあるんですよね(苦笑)。

でも、リリースから7年を経た今聴くと、(『THE HOUSE IS NOT FOR SALE』を通過したせいもあってか)意外と楽しめる1枚なんですよね。ボーナストラックを除く12曲入りアルバムとして接すれば、そこまで悪い印象は受けないし、確かにジョンのソロ色は強いけど、しっかりリッチーの個性も感じられるし、バンドとしてのアンサンブルもしっかり“らしさ”を主張している。ここにキラーチューンが1曲含まれていたら、もうちょっと高く評価されていた1枚なのかなと、改めて思いました。

あと、デラックス盤のボーナストラックにバンド以外の楽曲(ジョンやリッチーのソロ名義による楽曲)を入れるのは如何なものかと思いました。この行為も本作に対するネガティブイメージを後押ししているような気がしてなりません。だって、AEROSMITHスティーヴン・タイラージョー・ペリーがソロで制作した楽曲は収録されていないし、ストーンズだってミックキースはバンドとソロの間に一線を引いている。そりゃバンド崩壊するわ……。

リッチーファンのは後味の悪い1枚かもしれませんが、80〜90年代のスタイルにとらわれないBON JOVIのリスナーなら肩の力を抜いて楽しめる良作だと思います。散々ひどいこと書いてきましたが(苦笑)、まずは難しいこと考えずに触れてみてはどうでしょう。

 


▼BON JOVI『WHAT ABOUT NOW』
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2020年5月 3日 (日)

ACCEPT『BLOOD OF THE NATIONS』(2010)

2010年8月下旬にリリースされたACCEPTの12thアルバム。日本盤は同年9月初頭に発売されました。

二度目の解散を迎える直前に発表された前作『PREDATOR』(1996年)から14年7ヶ月ぶり、2005年のウド・ダークシュナイダー(Vo)を含む黄金期ラインナップによる期間限定復活を経て、新たにアメリカン人シンガーのマーク・トーニロ(ex. T.T. QUICK)を迎えた新編成による二度目の正式再結成後最初のオリジナルアルバム。本国ドイツでは7thアルバム『RUSSIAN ROULETTE』(1986年)以来となるTOP10入り(最高4位)、アメリカでも8thアルバム『EAT THE HEAT』(1989年)以来のチャートイン(最高187位)を果たす、最高のカムバック作となりました。

レコーディング時のメンバーはマークのほかウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という、マーク以外は2005年復活時の面々。楽曲・サウンド的には80年代の黄金期幕開けを飾る4thアルバム『RESTLESS AND WILD』(1982年)から先の『RUSSIAN ROULETTE』までのACCEPTをなぞった、誰もが納得する「そうそう、これ!」感の強い良曲がずらりと並びます。基本的にはミドルテンポ中心ですが、適度にアップチューンも用意され、70分前後におよぶ長尺ながらも最後まで飽きずに楽しむことができる仕上がりです。

気になるマークの歌声ですが、パッと聴いた感じではウドの雰囲気を持った声質で、『EAT THE HEAT』におけるデヴィッド・リース(Vo)のときみたいな違和感はほぼないかと思います。事実、リードトラック「Teutonic Terror」のMVで初めてマークのボーカルパフォーマンスを耳にしたとき、「モノマネかよ!」と驚きを通り越して苦笑したくらいですから。

もちろん、全編において完全なるモノマネで通すことなく、例えばメロウな要素や歌い上げるようなメロディを持つ楽曲では、哀愁味漂う男臭い歌声を聴かせてくれます。特に「Kill The Pain」みたいなスローバラードでは、ウルフのギターソロ同様に“泣き”まくっており、個人的には好印象。と同時に、しっかり聴き込めば彼のボーカルは歌唱スタイルこそウドのそれに通ずるものがあるものの、金属的だったウドの声とは異なるねっとり感と湿り気を持った別モノであることにも気づかされるはずです。どっちが優れているとかどっちが良いとかそういう問題ではないですが、僕自身は非常に好みの声であることには間違いありません。

タイトルトラック「Blood Of The Nation」や先の「Kill The Pain」はもちろん、「Rollin' Thunder」や「Pandemic」などキラーチューン満載の本作は、9thアルバム『OBJECTION OVERRULED』(1993年)で果たせなかった第二の黄金期確立を見事に達成させた代表作のひとつと言えるでしょう。

それにしても、同郷の先輩SCOPRIONSが解散を決意したタイミングに、もうひとつのジャーマンメタルの雄が輝かしい復活を遂げた2010年は、振り返ってみると大きな節目の1年だったんですね。

 


▼ACCEPT『BLOOD OF THE NATIONS』
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SCORPIONS『STING IN THE TAIL』(2010)

SCORPIONSが2010年3月中旬にリリースした17thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年4月下旬に発売されています。

クラウス・マイネ(Vo)、ルドルフ・シェンカー(G)、マティアス・ヤプス(G)、パウエル・マキオダ(B)ジェイムズ・コタック(Dr)という編成による本作は、解散を前提として制作されたもの。本作を携え実施されるワールドツアーをもって、バンドはその活動を終了させる予定でした。それもあってか、本作はSCORPIONが大ブレイクを果たした80年代〜90年代初頭のスタイルを踏襲する、キャッチーで憂いのあるメロディと適度に硬質なハードロック&バラードで構成された力作に仕上がっています。

プロデュースを手がけるのはTHE RASMUSなどを手がけるミカエル・ノルド・アンダーソン&マーティン・ハンセンのコンビ。2人はオープニングを飾る「Raised On Rock」など楽曲制作にも深く携わっており、さらに彼らの手配によるものでしょう、多数の外部ライターによる楽曲が並んでおります。その数は全12曲(ボーナストラック除く)中、作曲面では10曲が外部ライターの書き下ろし、もしくはメンバーとの共作となっています。なんとなく、80年代半ばにHEARTが再ブレイクを目指してテコ入れした流れと似たものを感じますね。

しかし、それが功を奏してといいますか、中身は非常に“らしく”仕上がっているのですから、さすがプロの仕事と言いましょうか。90年代後半以降、良質の作品を提供はしてきたものの従来の“らしさ”を見失いつつあったバンドにとって、外部からの「これだよ、お前らがやってきた仕事は!」という教えはかなり大きく作用したはずです。

結果として、本作とセルフカバー&ルーツ曲のカバーで構成された新録アルバム『COMEBLACK』(2011年)での経験で完全に感を取り戻し、またツアーの大成功もあってバンドは解散を撤回。本作から5年後にはさらなるオリジナルアルバム『RETURN TO FOREVER』(2015年)を制作することになります。こちらではバンド単体で書いた楽曲の比率が格段に増えており、間違いなく過去2作での経験が功を奏したと言えるでしょう。

そういった意味では、本作はバンドの本質を取り戻すための習作だったのかもしれません。しかし、用意された素材がよかったこともあり、本国ドイツのチャートで2位、アメリカでも『FACE THE HEAT』(1993年)ぶりのTOP30入り(最高23位)を果たすこととなりました。

演奏面では若干のユルさは否めないものの、(リフ作り含め)黄金期の輝きを取り戻そうとする必死さも伝わる本作。美メロハードロックを愛好する人にこそ聴いていただきたい1枚です。と同時に、SCORPIONSというバンドがなんたるかを知りたいビギナーにもうってつけの入門盤とも言えるでしょう。特にストリーミングサービスでは80年代の名盤がことごとく未配信となっているので、ヒット作『CRAZY WORLD』(1990年)とあわせてチェックしてもらいたいものです。

 


▼SCORPIONS『STING IN THE TAIL』
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2020年5月 2日 (土)

V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』(2014)

2014年4月初頭にリリースされた、ロニー・ジェイムズ・ディオのトリビュートアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年3月下旬に発売されました。

2010年5月にがんのためこの世を去ったディオを追悼すべく、メタル界の重鎮から次世代バンドまで幅広い層が一堂に会したこのアルバム。全14曲(ボーナストラック除く)中、本作のために録音された未発表テイクは10曲と単なる埋め合わせ的アルバムでないことが伺えます。

そのラインナップもロブ・ハルフォードJUDAS PRIEST)やグレン・ヒューズ(ex. DEEP PURPLE)、SCORPIONSMOTÖRHEAD、ビフ・バイフォード(SAXON)といった大御所からMETALLICAANTHRAX、DOROなど直接的なフォロワー、そしてHALESTORM、コリィ・テイラー(SLIPKNOTSTONE SOUR)、KILLSWITCH ENGAGEなどの次世代アーティスト、さらにはヴィニー・アピス、ダグ・アルドリッジ、ジェフ・ピルソン、ルディ・サーゾ、クレイグ・ゴールディ、サイモン・ライト、スコット・ウォーレンといったDIOオールスターズまで、世代的にもかなり広いものとなっています。

本編ラストに収められたDIO「This Is Your Life」(1996年の『ANGRY MACHINES』収録曲)を除く13曲中、RAINBOWナンバーを選んだのが5組、BLACK SABBATHナンバーが3組、DIOナンバーが5組とやはりRAINBOWへの人気が集中。METALLICAに至ってはメドレー形式で4曲取り上げてますからね。ズルいわ(笑)。

サバス曲は当然すべて80年代の……と思いきや、オニ・ローガン(Vo/ex. LYNCH MOB)は『DEHUMANIZER』(1992年)からの「I」を選ぶ通ぶりを発揮。こちらはジミー・ベイン(B)やローワン・ロバートソン(G)といった旧DIO組も参加しています。この曲、こうやって聴くと思ったほどモダンなテイストが少なくて、80年代のディオ・サバスを踏襲してたんだねと気づかされます。

1曲ずつ解説していたらキリがないので割愛しますが、ANTHRAX「Neon Knights」におけるジョー・ベラドナのモノマネぶりが相変わらず最高なことと、SCORPIONS「The Temple Of The King」が完全に自分のものと化していること、METALLICAメドレーの強引ぶりなどは特筆すべきものがあるかなと。もちろん、ほかの楽曲も最高なので、原曲を知らないリスナーでも楽しめるはずです。

なお、日本盤にはSTRYPERによる「Heaven & Hell」、DIO DISCIPLES(DIO最終ラインナップのディオ抜き)による「Stand Up And Shout」を追加収録。ストリーミングなどのデジタルバージョンではHATEBREEDのフロントマン、ジャスタによる「Buried Alive」を聴くことができます。ここはぜひ、日本盤を手に入れておきたいところです。

 


▼V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』
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HEAVEN & HELL『THE DEVIL YOU KNOW』(2009)

2009年4月末にリリースされたHEAVEN & HELL唯一のスタジオアルバム。

HEAVEN & HELLはロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ヴィニー・アピス(Dr)という『MOB RULES』(1981年)や『DEHUMANIZER』(1992年)を制作したBLACK SABBATHの面々による変名バンド。2007年にディオ在籍時の楽曲を集めたコンピレーションアルバム『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』をリリースした際、この4人による新曲を3曲制作しましたが、ここで得た手応えから再度スタジオ入りし、アルバムまで完成させるに至るわけです。

オジー・オズボーンとのBLACK SABBATHも“生きている”ちゃあ生きているタイミングだったので、サバス名義ではなくディオ・サバスの1作目に当たるアルバム『HEAVEN AND HELL』(1980年)のタイトルをそのままバンド名に用いて、ツアーやレコーディングを続けますが、本作リリースから1年後の2010年5月16日、ディオはこの世を去ることに。結果として、本作が生前最後のレコーディング作品となってしまいました。きっと、ディオ自身も死期を悟り、最後にもうひと花という意味でサバス復帰を選んだのでしょうね。

作風的には『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』よりも、再編後に制作した『DEHUMANIZER』に近い、ミドルヘヴィナンバーを中心とした内容。ですが、『DEHUMANIZER』のようなモダンヘヴィネス的色合いはまったくなく、むしろ『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』に含まれていたミドルヘヴィナンバーをより熟成させた、濃厚でねっとりしたディオ・サバス曲で構成されています。要するに、悪いわけがない。最高の仕上がりなのです。

当時のアイオミのスタイルを考えると、本作の次に制作されたオジー・サバスの最終作『13』(2013年)にも通ずる作風と言えるでしょう。つまり、アイオミが「BLACK SABBATHとは?」という命題と向き合い、2人の代表するシンガーとともに完成させた“答え”という意味で、本作と『13』は対となる2枚だと思うのです。

『13』ではひたすらドゥーミーでミドルスロウな楽曲ばかりにご執心でしたが、ここではミドルを軸に若干のアップダウンが用意され、その緩急が聴き手に心地よさを与えてくれる。つまり、同じミドル続きでも『13』ほど退屈しないのが今作最大の特徴であると。それには、ディオという稀代の名シンガーの尽力も大きいと思います。ディオ御大、最後の最後にベストパフォーマンスを残そうと制作に臨んだのでしょう。どこをどう切り取ってもディオ以外の何者でもありません。

わかりやすい派手さは皆無ですが、ディオ・サバスを愛する者、あるいはロニー・ジェイムズ・ディオというシンガーの歌が好きなリスナーなら間違いなくハマる1枚。モダンメタルが台頭する2009年という時代に、オールドスクール世代がかましたカウンターという意味においても非常に重要な作品だと断言できます。

日本盤CDには先のコンピ盤『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』に収録された新曲3曲が、ボーナストラックとして追加されています。つまり、『THE DEVIL YOU KNOW』日本盤を購入すれば、HEAVEN & HELLとしてレコーディングしたオリジナル曲はすべて手に入ることになるので、これから購入する際には迷わず日本盤をゲットしておきましょう。

 


▼HEAVEN & HELL『THE DEVIL YOU KNOW』
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2020年5月 1日 (金)

DAVID BOWIE『CHANGESNOWBOWIE』(2020)

2000年4月17日からストリーミング限定配信がスタートした、デヴィッド・ボウイの未発表音源集。CDおよびアナログレコードは6月20日、レコード・ストア・デイの一環で数量限定販売される予定です。

本来は4月中のフィジカルリリースを予定していましたが、新型コロナウイルスの影響でレコード・ストア・デイ自体が6月に延期(そこからさらに秋以降に延期されています)。結果、ストリーミング配信のみ予定どおり実施されることになったわけです。

本作は生前のボウイ50歳の誕生日を記念して、1997年1月8日に英BBCラジオでオンエアされた特別番組用にレコーディングされた9曲で構成。レコーディング自体は前年の1996年11月にニューヨークで実施され、ボウイとゲイル・アン・ドロシー(B, Vo)、リーヴス・ガブレルス(G)、マーク・プラティ(Key)という当時の最新作『EARTHLING』(1997年)制作メンバーが参加しています。

当時のボウイ自身がフェイバリットに挙げていた楽曲を中心に、基本的にアコースティックベースで仕上げられており、要所要所で機械的に歪みのかけられたギタープレイがフィーチャーされ良い味を醸し出しています。アルバム冒頭の「The Man Who Sold The World」は今年初頭、ストリーミング限定EP『IS IT ANY WONDER?』の一部として公開済みでしたが、リズムレスでアレンジされたシンプルな曲調は新鮮な驚きを与えてくれました。前半はドラム抜きのアレンジが続くのですが、「Lady Stardust」や「The Supermen」などではシンプルなリズムも追加されており、逆にドラム有りアレンジに新鮮味を覚えることになります。

また、「Aladdin Sane」を筆頭にゲイル・アン・ドロシーがボーカリストとしても前面に押し出されており、ボウイとの絶妙なハーモニー、あるいはデュエットという形で名曲たちに彩りを与えているのも本作の特徴かと。まるで歌うようにうねりまくる彼女のベースラインの聴きどころのひとつで、ボウイのいぶし銀の歌声にねっとり絡みつくプレイにばかり耳が行ってしまうのは、きっと僕だけではないはずです。

そういえば、『IS IT ANY WONDER?』に収録された楽曲も1996年に収録されたものが多かったと思いますが、この時期のボウイはレコーディングに対して非常に積極的だったことが改めて伺えるのではないでしょうか。この時期の未発表音源、まだまだ出てきそうな気がしますが、ボウイが健在だったらこれらが世に出ることもなかったんだろうなと考えると、いろいろ複雑です。

とはいえ、「Quicksand」のような楽曲をこんなにも美しく味わい深い新アレンジで楽しめるのですから、今は前向きに捉えたいと思います。

 


▼DAVID BOWIE『CHANGESNOWBOWIE』

 

MARILYN MANSON『HOLY WOOD (IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』(2000)

2000年11月にリリースされた、MARILYN MANSONの4thフルアルバム。

グラムロック路線へとシフトし全米1位を獲得した前作『MECHANICAL ANIMALS』(1998年)から2年ぶり、同作を携えたツアーの模様を収めたライブアルバム『THE LAST TOUR ON EARTH』(1999年)から数えても1年ぶりと、この時期のマンソンはかなり精力的なイメージがあります。

ただ、1999年4月にアメリカで起こったコロンバイン高校銃乱射事件の影響(犯人の2人がマンソンのファンだったというデマ)もあり、さまざまなメディアやキリスト教保守派から糾弾されるというネガティブキャンペーンもあり、その音楽が正当な評価をされなかったのもこの時期の特徴かなと。

そんな時期に制作された本作は、『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)から始まった三部作構想のラストを飾る1枚。物語的には本作を起点にさかのぼっていく形になりますが、サウンド的には過去2作(『ANTICHRIST SUPERSTAR』『MECHANICAL ANIMALS』)のいいとこ取りという、おどろおどろしさを残しつつも全体的にはキャッチーという仕上がりです。

元々はアルバムに基づき、サブタイトルにある『IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH』と題した映画を制作する予定もあったようですが、上記のようなトラブルに巻き込まれたこともあり、映像化は断念。とはいえ、トゥイギー・ラミレズ(B)やジョン5(G)といったメンバーの尽力もあり、1曲1曲がコンパクトな仕上がりで親しみやすく、楽曲面ではかなり恵まれていた印象があります。事実、シングルカットされた「Disposable Teens」(映画『ブレアウィッチ2』主題歌)や「The Fight Song」、「The Nobodies」はどれもキャッチーで、現在までライブの定番曲として親しまれているものばかりですしね。

アルバムは4つのパートから構成されているのですが、個人的にはディープさを増していく第2パート「D: The Androgyne」(M-5「Target Audience (Narcissus Narcosis)」〜M9「A Place In The Dirt」)、そして第3パート「A: Of Red Earth」(M-10「The Nobodies」〜M-14「Burning Flag」)あたりが本作のキモかなと思っており、『MECHANICAL ANIMALS』大好きマンとしては同作の流れを良い形で引き継いだこのあたりのパートは大好物だったりします。

本作をキャリア最高峰のひとつに挙げるリスナーも多いようですが、過去2作の良い部分をバランスよく内包するという意味では確かにそのとおりかと。個人的には好みの問題で、前作のほうが一歩上だったりするものの、この三部作は3枚まとめて楽しむことで見えてくるものも多いので、ぜひマストで聴いていただきたいところです。

ちなみに、本作は最初に書いたネガティブな流れもあってか、全米13位とチャート的にはかなり数字を落とす結果に。続く5thアルバム『THE GOLDEN AGE OF GROTESQUE』(2003年)では再び全米1位を獲得していることを考えると、つくづく不憫なアルバムだなと悲しくなってしまいます。

 


▼MARILYN MANSON『HOLY WOOD (IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』
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