CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』(1985)
1985年に発表され、LA出身の4人組バンドCANDY唯一のオリジナルアルバム。
日本でも『ウィークエンドでファン・ファン』の邦題でアナログ盤がリリースされ、表題曲「Whatever Happened To Fun...」が結構な頻度で当時のMTVなどでオンエアされたので、記憶に残っている40代半ばのリスナーも少なくないのでは。かくいう僕も、同曲のMVを目に耳にしたことでアルバムをレンタル。カセットにダビングしたアルバムをリピートしたものです。
大きなヒットもなく、アルバム1枚で解散してしまったバンドではありますが、彼らは80年代末から90年代にかけて再び(小規模ながら)注目を浴びることになります。
アルバム制作時のメンバーはカイル・ヴィンセント(Vo)、ギルビー・クラーク(G)、ジョナサン・ダニエル(B)、ジョン・シューベルト(Dr)。ギルビーはKILL FOR THRILLSやGUNS N' ROSESの一員として名を上げ、ジョナサン&ジョンはライアン・ロキシー(G)らとELECTRIC ANGELSを結成。カイルもソロ・アーティストとして90年代後半から活動が活発化します。そういったメンバーの活躍時にちょくちょくCANDYの名前を目にすることになり、「あれ、CANDYって『ウィークエンドでファン・ファン』の?」と気づくわけですが、アルバムは廃盤状態。なんなら、CD化すらされていません。
こういったメンバーの活躍によって、CANDYはバブルガムポップ/グラムポップ/パワーポップ界隈では半ば伝説化。アルバムは高値で取引されるようになりますが、2012年にRock Candy Recordsから再発(初CD化)され手軽に楽しめるようになるわけです。
当然、CDを即購入した筆者ですが、アルバムを聴き始めてすぐに違和感を覚えます。「あれ、曲順違くない?」と。そうなんです、US盤と日本盤とでは収録曲順が異なっていることに、ここで初めて気づくわけです。
ちなみに、当時の日本盤の曲順は下記のとおり。
A-1. Whatever Happened To Fun...
A-2. Turn It Up Loud
A-3. American Kix
A-4. Last Radio Show
B-1. Kids In The City
B-2. Weekend Boy
B-3. First Time
B-4. Electric Nights
B-5. Lonely Hearts
ところが、US盤(現行CD含む)はM-1「Whatever Happened To Fun…」とM-3「American Kix」が入れ替わっています。シングル曲「Whatever Happened To Fun…」から始まる日本盤を親しんできたので、すぐにその違いに気づくわけですよ。
まあ、そんな違和感もCDを聴き返すうちにすぐ慣れるわけですが。
さて。今回のレビューは現行CDに沿って話を進めます。軽快なアメリカンロック「American Kix」からスタートするアルバムは、全体的に音の軽さとカラッとした質感がポップな曲調にフィットしており、全9曲/36分があっという間に感じられるはず。適度に挿入されるコーラス(シンガロング)のせいもあって、何度か聴いていると不思議と口ずさめるようになるのではないでしょうか。
9曲通して聴くと、改めて「Whatever Happened To Fun…」が突出した出来であることに気づかされますが、もちろんほかの楽曲もそこまで悪いわけではない。6分半近くもある「Last Radio Show」で聴かせるセンチメンタリズムは意外と日本人好みなテイストですし、王道のパワーポップチューン「Kids In The City」や「Weekend Boy」などもマニアにはたまらないはず。個人的にはアルバム前半(「American Kix」や「Turn It Up Loud」)がカラッとしたアメリカンロックだとしたら、後半(アナログB面)がパワーポップ的側面に特化した作風かなと。リリース当時は「Whatever Happened To Fun…」を含むA面ばかりリピートしていたけど、今ならアルバム後半を激プッシュします。
ちなみに、彼らのバックに付いていたのは元RASPBERRIESのウォーリー・ブライソン。プロデュースを手がけたのも、同じRASPBERRIESやエリック・カルメン、BAY CITY ROLLERSなどで知られるティース(ジミー・レナー)と、いわゆるパワーポップ界隈の重鎮たちでした。まあ、時代的にHR/HMがヒットし始めた時期だったので、タイミングが悪かったかもしれませんね。
なお、本作は今のところデジタル/ストリーミング配信は国内外でされておりません。Apple Musicでは2003年に発表された未発表音源集『TEENAGE NEON JUNGLE (RARE & UNRELEASED)』が配信済みなので、こちらで主要ナンバーの別テイクを楽しむことができます。
▼CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』
(amazon:海外盤CD)
« WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』(2016) | トップページ | AMERICAN HI-FI『AMERICAN HI-FI』(2001) »
「1985年の作品」カテゴリの記事
- LIZZY BORDEN『LOVE YOU TO PIECES』(1985)(2025.07.12)
- KING KOBRA『READY TO STRIKE』(1985)(2025.07.10)
- ROUGH CUTT『ROUGH CUTT』(1985)(2025.07.08)
- サブスクに存在する音源を通して1980年〜1994年のHR/HM(およびそれに付随するハード&ヘヴィな音楽)の歴史的推移を見る(2024.11.10)
- ROBERT PALMER『RIPTIDE』(1985)(2024.03.04)
「Gilby Clarke」カテゴリの記事
- ROCK STAR SUPERNOVA『ROCK STAR SUPERNOVA』(2006)(2022.11.20)
- GILBY CLARKE『THE GOSPEL TRUTH』(2021)(2021.05.06)
- CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』(1985)(2020.05.23)
- HOLLYWOOD ROSE『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』(2004)(2019.03.17)
- GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』(1994)(2019.03.20)
「Candy」カテゴリの記事
- CANDY『WHATEVER HAPPENED TO FUN...』(1985)(2020.05.23)