SCORPIONS『STING IN THE TAIL』(2010)
SCORPIONSが2010年3月中旬にリリースした17thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年4月下旬に発売されています。
クラウス・マイネ(Vo)、ルドルフ・シェンカー(G)、マティアス・ヤプス(G)、パウエル・マキオダ(B)ジェイムズ・コタック(Dr)という編成による本作は、解散を前提として制作されたもの。本作を携え実施されるワールドツアーをもって、バンドはその活動を終了させる予定でした。それもあってか、本作はSCORPIONが大ブレイクを果たした80年代〜90年代初頭のスタイルを踏襲する、キャッチーで憂いのあるメロディと適度に硬質なハードロック&バラードで構成された力作に仕上がっています。
プロデュースを手がけるのはTHE RASMUSなどを手がけるミカエル・ノルド・アンダーソン&マーティン・ハンセンのコンビ。2人はオープニングを飾る「Raised On Rock」など楽曲制作にも深く携わっており、さらに彼らの手配によるものでしょう、多数の外部ライターによる楽曲が並んでおります。その数は全12曲(ボーナストラック除く)中、作曲面では10曲が外部ライターの書き下ろし、もしくはメンバーとの共作となっています。なんとなく、80年代半ばにHEARTが再ブレイクを目指してテコ入れした流れと似たものを感じますね。
しかし、それが功を奏してといいますか、中身は非常に“らしく”仕上がっているのですから、さすがプロの仕事と言いましょうか。90年代後半以降、良質の作品を提供はしてきたものの従来の“らしさ”を見失いつつあったバンドにとって、外部からの「これだよ、お前らがやってきた仕事は!」という教えはかなり大きく作用したはずです。
結果として、本作とセルフカバー&ルーツ曲のカバーで構成された新録アルバム『COMEBLACK』(2011年)での経験で完全に感を取り戻し、またツアーの大成功もあってバンドは解散を撤回。本作から5年後にはさらなるオリジナルアルバム『RETURN TO FOREVER』(2015年)を制作することになります。こちらではバンド単体で書いた楽曲の比率が格段に増えており、間違いなく過去2作での経験が功を奏したと言えるでしょう。
そういった意味では、本作はバンドの本質を取り戻すための習作だったのかもしれません。しかし、用意された素材がよかったこともあり、本国ドイツのチャートで2位、アメリカでも『FACE THE HEAT』(1993年)ぶりのTOP30入り(最高23位)を果たすこととなりました。
演奏面では若干のユルさは否めないものの、(リフ作り含め)黄金期の輝きを取り戻そうとする必死さも伝わる本作。美メロハードロックを愛好する人にこそ聴いていただきたい1枚です。と同時に、SCORPIONSというバンドがなんたるかを知りたいビギナーにもうってつけの入門盤とも言えるでしょう。特にストリーミングサービスでは80年代の名盤がことごとく未配信となっているので、ヒット作『CRAZY WORLD』(1990年)とあわせてチェックしてもらいたいものです。
▼SCORPIONS『STING IN THE TAIL』
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