HAYLEY WILLIAMS『PETALS FOR ARMOR』(2020)
PARAMOREのフロント・ウーマン、ヘイリー・ウィリアムスが2020年5月中旬に発表した初のソロアルバム。
ヘイリーの外仕事としてもっとも有名なのは、おそらくフィーチャリング・シンガーとして参加したゼッドの「Stay The Night」(2013年/全米18位)やB.o.Bとの「Airplanes」(2010年/全米2位)になるのでしょうか。成績やセールス的には後者のほうが上ですが、ゼッドというアイコンとタッグを組んだという点においては、間違いなく前者の知名度は高いはずです。
実はそれ以外にも、さまざまなアーティストの楽曲にゲスト参加した経験を持つ彼女。過去にはWEEZERとの「Rainbow Connection」(2011年)やNEW FOUND GLORY「Vicious Love」(2015年)、CHVRCHES「Buy It」(2016年)、AMERICAN FOOTBALL「Uncomfortably Numb」(2019年)などといった楽曲で彼女の名前を見つけることができます。
そんなヘイリーがPARAMOREの5thアルバム『AFTER LAUGHTER』(2017年)以来3年ぶりに届けてくれた新作が、初のソロアルバムということで多くのファンが「バンドはどうした? え、活動休止?」と心配するかもしれませんが、心配ご無用。このソロアルバムのプロデュースを担当したのが、当のPARAMOREメンバーであるテイラー・ヨーク(G)。曲作りはヘイリーとテイラーが中心となり、中にはPARAMOREサポートメンバーのジョーイ・ホワード(B)の名前も見つけることができます。さらに、演奏面でもテイラーやザック・ファロ(Dr)といったバンド名と、ジョーイなども参加。PARAMOREとしてすべてを解決させるのではなく、バンドという枠を離れて表現したいことがあったというだけなんでしょう。アク抜きですね、要するに。
今年に入って5曲入りEPを2作立て続けに発表してきましたが、本作はそのEP2作の10曲にさらなる5曲入りEPを追加した、全15曲で構成。意外と各EPごとのカラーもしっかり色分けされており、配信だとあえてEP3枚組という形で表記されるあたり、本作に対する彼女の強いこだわりが見えてきます。
サウンド的には、バンドの最新作『AFTER LAUGHTER』で展開されたモダンポップ……バンドサウンドやエモといったジャンルなどの枠を取っ払い始めた新機軸……の延長線上にあるもので、エレクトロ色が強めに出ています。また、近作に見受けられたニューウェイヴ色も濃厚で、最近のヒップホップやR&Bからの影響も強く、ロックという枠に収めたくない多彩な魅力が感じられます。先鋭的な刺激こそ皆無ですが、安定感のあるボーカルとメロディ、それを若干ダークながらもカラフルに演出するサウンドメイクはさすがの一言。『AFTER LAUGHTER』よりも突き抜けた感が伝わる本作は、個人的にもかなりお気に入りです。
歌詞も非常にパーソナルな面が描かれており、このへんもバンドとの間に一線を引いた理由なのでしょう。こちらは対訳が用意された日本盤にてぜひ確認してもらいたいところです。
とにかく、非常によく作り込まれたダークポップのおもちゃ箱と呼びたくなるくらい、聴き応えのある1枚。いろんな意味で2020年らしい作品と言えるのではないでしょうか。と同時に、ここでのアク抜きを経て、次にPARAMOREとしてどんな作品を制作するのかも、今から楽しみになってきました。こんなご時世で難しいとは思いますが、可能なら彼女のソロライブも観てみたいものです。
▼HAYLEY WILLIAMS『PETALS FOR ARMOR』
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