CHEAP TRICK『ALL SHOOK UP』(1980)
1980年10月にリリースされた、CHEAP TRICK通算5枚目のスタジオアルバム。
ライブアルバム『AT BUDOKAN』(1979年)および4thスタジオアルバム『DREAM POLICE』(1979年)がともに全米TOP10入り(前者が3位、後者が6位)を果たし、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たしたCHEAP TRICK。これらのヒットをフォローアップすべく制作された今作『ALL SHOOK UP』は、ある意味ではバンドが本来挑戦したかったことが表現されているのですが、それは必ずしもファンが望むものではなかったという、わかりやすい例になっています。
プロデューサーに迎えられたのが、かのジョージ・マーティン。レコーディングエンジニアにはジェフ・エメリックという、ビートルズでおなじみの布陣で制作された本作のレコーディングはAbbey Road Studio……ではなく、Air Studioにて行われました。
バンドとしての個性を確立させた初期3作、そこからさらに一歩前進した『DREAM POLICE』で確固たる「CHEAP TRICKらしさ」を手にしたものの、今作ではそれとは同じことはしなかった。かといって「まんまビートルズ」というわけでもない。適度なハードロック感を残しつつも、彼らは本作で早くも“大人”になろうとしていたのではないか。1作目の『CHEAP TRICK』(1977年)から本作までの5作を続けて聴くと、よりそう感じられるのです。
オープニングを飾る「Stop This Game」で表現された壮大さは過去4作にはなかったものですし、「Just Got Back」や「Can't Stop It But I'm Gonna Try」では従来の“らしさ”をより大人びたものへと進化させている。かと思えば、ジョージ・マーティンとタッグを組んだからこそ生まれたであろう「World's Greatest Lover」のような名バラードもあるし、かの“すかんち”が某曲で元ネタにした「Baby Loves To Rock」のようなロックンロールナンバーもある。どちらも確実にジョン・レノンやポール・マッカートニーの影響下にあるアレンジですよね。
後半も『DREAM POLICE』でトライしたことがビルドアップされたかのような「High Priest Of Rhythmic Noise」や「Go For The Throat (Use Your Own Imagination)」、ストレートな「Love Comes A-Tumblin' Down」、トライバルで風変わりな「Who D' King」など個性的な楽曲が満載。ただ、過去4作にあった「弾けるようなパワーポップ感」は若干薄れつつあるような印象もあります。そこを良しとするか否かで評価がわかれそうですね。
『AT BUDOKAN』、『DREAM POLICE』とわかりやすいパワーポップ/ロック作品が続いたことで、(またジョージ・マーティンなど憧れのスタッフと共作することで)バンドとして新たな一手を提示しようと思ったのでしょうが、リスナーはそれでも「第二の『DREAM POLICE』」を欲しがった。結果、本作は全米24位と前作から順位を落とし、セールス面でも50万枚と売り上げ半減します。シングルもチャートインしたのは「Stop This Game」(全米48位)のみ。内容は過去4作にも匹敵する(いや、個人的には今一番ピンとくる)1枚ですが、ヒットには結びつきませんでした。
また、ハードなツアー生活に嫌気が差したトム・ピーターソン(B, Vo)は、本作完成後にバンドを脱退。バンドはピート・コミタを迎え、ツアーを行います。ここから約8年間、バンドの低迷期が続くわけですね……。
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