TOMMY LEE『NEVER A DULL MOMENT』(2002)
2002年5月にリリースされた、トミー・リー(MOTLEY CRUE)の1stソロアルバム。
トミーはMOTLEY CRUE脱退後の1999年にMETHODS OF MAYHEMというプロジェクトを立ち上げ、ドラマーのみならずシンガーとしても活躍。同年12月にリリースされた1stアルバム『METHODS OF MAYHEM』ではヒップホップ/ラップメタル界隈の著名アーティストを多数ゲストに迎えるも、セールス的には成功を収めることはできませんでした。
そこから約2年半を経て届けられた本作は、METHODS OF MAYHEMの延長線上にありつつも、ヒップホップというよりは当時ブレイクしていたニューメタルやオルタナ・メタルの影響下にあるサウンドを展開。もちろんリズムの跳ねたヒップホップ/ラップメタル調の楽曲も含まれており、良く言えば「トミーの雑食性をそのまま表現したオムニバス盤のような内容」、悪く言えば「まとまりのない、迷走の1枚」となるのでしょうか。まあ個人的には前者の認識が強いですけどね。
実際、トミーも歌ったりラップしたりと大忙し。オルタナ・メタル調の楽曲では次作『TOMMYLAND: THE RIDE』(2005年)にも通ずるセンチメンタリズムを見せており、なぜこれがMETHODS OF MAYHEMではなくソロ名義で発表されたのかがこのへんからも伺えるのではないでしょうか。
2002年という時代性を考えれば非常に納得のいく作風ですが、そこから18年経った2020年に聴くと(特にラップメタル調の楽曲には)若干の古臭さは否めません。一方で、リードトラックとしてMVも制作された「Hold Me Down」や、DEFTONESのチノ・モレノ(Vo)をフィーチャーした「Ashamed」、INCUBUSのブランドン・ボイド(Vo)をゲストに迎えた「Blue」あたりには、良質なメロディのおかげもあって普遍性が強く感じられる。これらの楽曲にはMOTLEY CRUEの『MOTLEY CRUE』(1994年)や『GENERATION SWINE』(1997年)との共通点も見つけられるはずです(にしても、このゲストの人選もいやらしいですよね。笑)。と同時に、トミーを欠いたMOTLEY CRUEが発表したアルバム『NEW TATTOO』(2000年)で失った要素でもあるわけですよね。
かと思えば、ラップメタルの延長でデヴィッド・ボウイの名曲「Fame」をカバー。当たり障りのないアレンジですし、トミーのボーカルもイマイチ。面白みといったら途中から挿入されるラップパートくらいかなあ。ほかのオリジナル曲の完成度が比較的高水準なだけに、本作で唯一残念なポイントです。
今聴くと、意外とギターがフィーチャーされた作品だったことにも気づかされます。そういう意味では、トミー・リーってどんなに頑張ってヒップホップぶっても、やっぱりロックの人なんですよね。そこを踏まえて、来たるニューアルバム『ANDRO』(2020年)は果たしてどんな作風になっているのか……期待60%、不安40%でリリースを待ちたいと思います(笑)。
▼TOMMY LEE『NEVER A DULL MOMENT』
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