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2020年6月11日 (木)

SLY『SLY』(1994)

1994年11月下旬にリリースされたSLYの1stアルバム。

SLYは当時EARTHSHAKERを解散させたばかりの石原慎一郎(G)が、元バンドメイトの二井原実(Vo/当時ex. LOUDNESS。石原とはデビュー前のEARTHSHAKERで活動)とともに立ち上げたプロジェクトに、同じくLOUDNESSを脱退した樋口宗孝(Dr)と、元BLIZARDの寺沢功一(B)が加えた4人で活動。80年代に一世を風靡したジャパメタ・バンドの人気メンバーが一堂に会したこともあり、デビューアルバムのTVスポットが深夜に大量オンエアされるくらい、当時鳴り物入りのデビューを果たしました。

で、肝心の音ですが、このメンツから想像できるような80'sジャパメタ的な要素は非常に薄く、むしろ樋口さん脱退前のLOUDNESSのアルバム『LOUDNESS』(1992年)の延長線上にあるラウド/モダンヘヴィネスをベースにしたモダンなメタルサウンドが展開されています。ぶっちゃけ、シャラ(石原)がいるし、二井原さんのパワフルさを活かしたメロウなHR/HMを楽しめるのかと思っていたら、リードトラック「Kingdom Come」のヘヴィさにひっくり返った……それも、今となっては懐かしい限りです。

冒頭2曲(「Cry Of War」「Kingdom Come」)は確かにミドルテンポのグルーヴィーなヘヴィチューンですが、その完成度は非常に高く、むしろジャパメタ的な“クサさ”を排除したことで、同時期に台頭した同系統の海外バンドにも負けないクオリティだと断言できます。特に「Kingdom Come」のカッコ良さ、特筆に値するものがあると思うんですよ。

かと思えば、ストリングスをフィーチャーした壮大なヘヴィバラード「I Spend My Life Just Loving You」や、もっともこの4人らしさが表出したタイトルトラック「Sly」にように、メロディアスさに特化した楽曲もちゃんと用意されている。二井原さんのボーカルも艶やかで、80年代後半のLOUDNESS以上の輝きを放っているし、樋口さん&寺沢さんの地を這うようなリズムセクションも最高の一言。特に樋口さんのプレイは水を得た魚のように、伸び伸びと暴れまくっていて、個人的には本作こそ彼の90年代のベストワークと確信しています。

で、EARTHSHAKER時代のメロウなギタープレイを期待していたら、その予想を大きく裏切るヘヴィなギターワークでリスナーを驚愕させたシャラ……こんなプレイもできるんだ!と、個人的には好意的に受け取りました。だって、カッコいいじゃないですか。ねえ?

このサウンド&アレンジだからなのか、あるいは作曲者のセンスなのか、単調なメロディが多いことと、全13曲で70分近い長尺のトータルランニングは難点ではあるものの、それ以外は文句なしの完成度。世が世なら、日本を代表するHR/HM作品として高評価を受けたはずです。

……そう、時代が悪かったんです。海外含め、世の中的にHR/HMの人気は低迷し、特に80年代に活躍したアーティストたちは時代遅れとして、若者にスルーされてしまう傾向が強かった。大々的なパブ効果もあって、それでも本作はチャート的に成功したと記憶していますが……。

あ、あと本作が世の中的に廃盤だったり配信/ストリーミングで聴くことができないのは何よりの不幸だと思うので、ぜひアルバム全4作(とEP)のすべてを今すぐデジタル解禁していただきたい! 不遇すぎますよ、このバンド。

 


▼SLY『SLY』
(amazon:国内盤CD

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