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2020年7月 3日 (金)

ORANSSI PAZUZU『Mestarin kynsi』(2020)

2020年4月中旬にリリースされたORANSSI PAZUZUの5thアルバム。日本盤は海外から2ヶ月遅れの、同年6月中旬に発売されました。

ORANSSI PAZUZUはフィンランド出身の5人組サイケデリック・ブラックメタル・バンド。2007年の結成以降ヨーロッパをベースに活動しており、Nuclear Blast Records移籍第1弾となる今作が日本デビュー作となります。彼らがその名を知らしめたのが、前作『Värähteliiä』(2016年)でのこと。同作が「Pitchfork」を筆頭に欧米主要音楽メディアで絶賛されただけでなく、METALLICAのジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)がSpotifyお気に入りリストにピックアップしたことで、世界的に注目を集めることとなったのです。

全6曲で50分というトータルランニングからもわかるように、彼らの楽曲は7〜10分と非常に長尺なものばかりで、北欧ブラックメタルをベースにしながらもプログレやエレクトロ、ポストロック、ジャーマンロックなど多種多様のアバンギャルドな音楽から影響を受けたサウンドを展開しています。例えば、オープニングを飾る「Ilmestys」なんてイントロを聴いた段階では、NINE INCH NAILSあたりにも通ずるテイストを感じるのではないでしょうか。ところが、いざボーカルが乗ったところで邪術的ブラックメタルの香りがプンプン。ユン-ヒス(Vo, G)の声色はどこかDIR EN GREYの京(Vo)と重なる部分もあり、そのサウンドスケープ含めてDIR EN GREYのファンにも受け入れられる要素満載かと思います。

その後もKING CRIMSONを思わせるプログレ的展開が用意されていたり、RADIOHEADMOGWAIあたりのポストロック/エクスペリメンタルロックにも通ずるカラーがにじみ出ていたりと、一筋縄ではいかないアレンジが待ち構えており、長尺の楽曲にも関わらずスルスルと聴き進められてしまう。むしろ、次の展開がどうなっていくのかが楽しみでならず、気づけばラストまでたどり着いているという、濃厚で面白み満載の内容に仕上がっています。

全体を覆うスペーシーでサイケデリックな世界観は、ブラックメタルというよりはアートロック、あるいは上記のようなポストロック勢と比較すべきものかもしれません。それだけに、メタルだとかエクストリーム・ミュージックというジャンルの枠は取っ払って感じてほしい。そんな「リスナーの壁を取っ払う」強烈な作品だと確信しております。

『鉤爪(かぎづめ)の主』や「啓示」「空っぽの秘跡」「新しいテクノクラシー」「高潔の広間」「地下からの呼び声」「天国の門」という70年代洋楽的な邦題がぴったりなサウンド/世界観含め、ぜひ2020年というこの混沌とした時代にこそ聴いておくべき傑作。“アフター・コロナ”のBGMに最適な、時代を反映した1枚です。

 


▼ORANSSI PAZUZU『Mestarin kynsi』
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