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2020年8月11日 (火)

THE DISTILLERS『CORAL FANG』(2003)

2003年10月にリリースされたTHE DISTILLERSの3rdアルバム。日本盤は同年12月に発売されました。

THE DISTILLERSはフロントに立つブロディ・デイル(Vo, G)を中心に1998年に結成されたパンクバンドで、当初はトリオ編成で活動。1999年にRANCIDのティム・アームストロング(Vo, G)が主催するHellcat Recordsから1st EP『THE DISTILLERS EP』を発表し、デビューを飾ります。その後、リードギタリストが加入し4人編成となり、現在までに3枚のオリジナルアルバムを発表。なお、デビュー当時のブロディとティムは夫婦関係にありました(のちに離婚。2005年にはQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・ホーミと結婚しました。が、昨年に離婚云々の話題があったような……)。

現時点での最新作(といっても17年前の作品ですが)となる本作は、Hellcatを離れメジャーのSire Recordsと新たに契約して制作された1枚。メジャー契約の効果もあってか、プロデューサーにはギル・ノートン(FOO FIGHTERSJIMMY EAT WORLDPIXIESなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANARAGE AGAINST THE MACHINESLIPKNOTなど)を迎えた、「純粋培養なパンクロックアルバムなのに、しっかりキャッチーさも備わった」完全無欠のアルバムに仕上がっています。

ブロディのアクの強いボーカルはどこかコートニー・ラヴHOLE)を彷彿とさせるものがありましたが、ここで聴ける彼女のボーカルパフォーマンスはそれ以上にジョーン・ジェットを思わせるものもある。こういったボーカル面での成長は、楽曲のクオリティアップから引き出されたものなのでしょうか。アートワークのエキセントリックさから想像できる(感覚的な)アングラさは皆無で、全体を通して非常に聴きやすさに満ちた作風なのが印象的です。適度なスピード感とキャッチーなメロディ、耳に残るブロディのボーカル……ロックアルバムとしては文句なしのインパクトを与えてくれるはずです。

オープニングの「Drain The Blood」でのシンガロングできそうな大衆感の強さといい、モッシュ&ダイブ必至の「Die On A Rope」でのスピード感といい、「The Gallow Is God」や「The Hunger」でのダルな雰囲気といい、メジャー感と(音楽的な)アンダーグラウンドの危うさとのキワキワのあたりを進み続ける姿勢はさすがの一言だし、そんな中でラストに「Death Sex」を持ってくるあたりも完璧。当時、刺激が足りなかった自分にとってメジャーというフィールドから大きな衝撃を与えてくれた1枚でした。

ちなみに、このアルバムを購入したのは海外リリースから約4ヶ月後の2004年2月のこと。同年3月末に控えた『MAGIC ROCK OUT』での2度目の来日に備えて予習しようと思い聴いたのです。そのライブの様子は本サイトにも掲載していますが、16年前の自分もブロディのことを「パンク版ジョーン・ジェット」と比喩していますね(笑)。よほどカッコよかったんだろうな、と当時の記憶を必死に絞り出そうとしながらこのアルバムを爆音で聴いているところです。

なお、THE DISTILLERSは2006年に一度解散しており、ブロディはSPINNERETTEというバンドでアルバムを1枚残したり、2014年には初のソロアルバム『DIPLOID LOVE』(こちらも最高!)を発表していますが、2018年に『CORAL FANG』制作時のメンバーで再結成。現在までに「Man VS. Magnet」「Blood In Gutters」の2曲を収録したアナログ盤を発表しており、4作目のアルバム制作にも期待が寄せられています。

 


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