DEEP PURPLE『WHOOSH!』(2020)
2020年8月7日に全世界同時リリースされたDEEP PURPLE通算21作目のオリジナルアルバム。
ラストアルバムと噂された前作『INFINITE』(2017年)から3年4ヶ月という、最近の彼らにしては比較的短いスパンで届けられた本作。本国イギリスでは第2期での再結成アルバム『PERFECT STRANGERS』(1984年/5位)や『THE HOUSE OF BLUE LIGHT』(1987年/10位)以来となる全英TOP10入り(6位)を果たしたほか、ドイツやスイスでは1位を獲得、オーストリアやフィンランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、スウェーデンでも10位以内にランクインする成功を収めました。また、同作を携えたワールドツアーも好評を博したこともあり、バンドの活動終了をもう少しだけ後ろ倒しにして、想定外の1枚を作ることになったようです。
……なんて話をどこまで信用していいのやら(笑)。プロレスとメタルの世界において引退は真に受けてはいけませんよね。とはいえ、前作の時点で年齢的にもこれがラストかなという印象は受けていたので、ファンからしたらうれしいサプライズなのでしょうか。
スティーヴ・モーズ(G)加入からすでに25年以上、ドン・エイリ(Key)が正式加入してから間もなく20年になろうとするこのタイミングに届けられた、現編成での5作目となる本作は、過去2作同様にボブ・エズリン(アリス・クーパー、KISS、PINK FLOYDなど)がプロデュースを担当。基本的には近作の方向性の延長線上にあるスタイルで、古き良き時代のパープルを見事に“演じ”きっています。演じると表現するとネガティブに捉えられるかもしれませんが、まったくそんなことはなく、むしろ変に革新的なことに挑戦されるよりも「誰が聴いてもパープル」と理解できるサウンド/楽曲に挑戦することが、彼らのような大御所には大切なんじゃないかと思っています。だって、実験的なことは若い頃に散々やってきたし、スティーヴ・モーズ加入後最初の1枚である『PURPENDICULAR』(1996年)だってある意味では実験的な作品でしたからね。
メンバー5人中4人が70代に突入し、最若手だったスティーヴ・モーズでさえ60代後半という事実が示すように、本作には荒々しさやスピード感といったものは皆無(『WHOOSH!』というタイトル自体はスピード感を表す擬音とのことですが、なんとも皮肉を感じさせます)。グルーヴィーさとユルさとの絶妙な隙間を突き進む様は、ある意味では『WHOOSH!』といったところかもしれません。ただ、そんな中でも「Nothing At All」や「No Need To Shout」のようなギター&オルガン(もしくはピアノ)の緊張感あふれるバトルがフィーチャーされた楽曲群には思わず手汗を握りますし、軽快さの強い大人なロックンロール「What The What」、不穏なイントロ&メロディが耳に残る「The Power Of The Moon」、52年前(!)に発表されたデビューアルバム『SHADES OF DEEP PURPLE』(1968年)のオープニングトラックを再録した「And The Address」など聴き応えのある楽曲も少なくなく、「死に損ないの年寄りの余興」とバカにできない1枚に仕上がっています(ごめんね辛口で)。
このバンドに対して今『IN ROCK』(1970年)や『MACHINE HEAD』(1972年)、『BURN』(1974年)と同レベルのクオリティを求めるのは酷以外の何ものでもないですし、そういった幻想はリッチー・ブラックモア(G)が抜けた時点で抱かないようにしているので、毎回新作に触れるときは平熱以下で向き合うようにしているのですが(余計にがっかりしないように)、今作も過去2作同様に聴き終えたあとの爽快感と満足感は一定以上得られるはずです。何を差し置いても聴くべし!と声高に宣言できるかと言われると困りますが、少なくとも「パープルの諸作品を聴いており、リッチー脱退後の作品も評価的に評価している」リスナーなら、文句なしに楽しめる1枚だと思います。
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