BIFFY CLYRO『A CELEBRATION OF ENDINGS』(2020)
2020年8月14日にリリースされたBIFFY CLYROの8thアルバム。
オリジナルアルバムとしては前作『ELLIPSIS』(2016年)からほぼ4年ぶりとなりますが、その間にアコースティックライブアルバム『MTV UNPLUGGED: LIVE AT ROUNDHOUSE, LONDON』(2018年)、映画のサウンドトラックアルバム『BALANCE, NOT SYMMETRY』(2019年)を立て続けに発表しているので、何気に久しぶりという感覚はないかも。とはいえ、最後に来日したのが『ELLIPSIS』リリース直後の『FUJI ROCK FESTIVAL '16』なので、日本のファン的にはだいぶ長いことご無沙汰しました感があるんですけどね。
4年というスパンも過去最長。そんな「満を辞して」感の強い本作は、前作から引き続きリッチー・コスティー(AT THE DRIVE-IN、MUSE、MY CHEMICAL ROMANCEなど)がプロデュースを担当。以前も書いたように「UK版FOO FIGHTERS」(本当はスコットランド出身)という形容がぴったりなアリーナ/スタジアムロックを展開しており、そのダイナミズムに関しては若干穏やかだった前作以上ではないでしょうか。
ただ、本作にはストリングスを大々的にフィーチャーした楽曲も少なくなく、そういった味付けで繊細さや穏やかさを表現。激しいバンドサウンドとの対比としてうまく活用しています。リード曲にしても「Tiny Indoor Fireworks」のようにソフトなものから、アグレッシヴさを前面に打ち出した「End Of」、シンセによる味付けがEDM以降のモダンポップ的な「Instant History」、ストリングスを導入したことで壮大さが一気に増したバラード「Space」まで非常に幅広く、単にロックファンにだけ届けようとするのではなく、もっと広い層にまで行き届くような工夫が感じられます。
そう聞くと、「アルバムとしてはブレブレなんじゃないの?」とお思いでしょうが、そもそもBIFFY CLYROってそういうバンドじゃないですか? 変態的なアレンジを多用しつつもメロディはキャッチー、だけどハードロック的な攻撃性も備え持つ。そこが先のFOO FIGHTERとも重なる点でもあるわけで、こんなに優秀なバンドがなぜもっと海外でブレイクしないのか、不思議でなりません。
個人的には前作以上の完成度だと思っているし、聴く頻度も明らかに前作超え。『PUZZLE』(2007年)や『ONLY REVOLUTIONS』(2009年)にも匹敵する1枚だと思います。日本盤も海外と同日に、ひっそりとリリースされていますので、ぜひ手に取ってみてください(まずはストリーミングでの視聴から初めてもいいので)。
なお、本作は『OPPOSITES』(2013年)から3作連続UK1位を獲得。ロック低迷と言われる中で大健闘の数字を残してくれました。
▼BIFFY CLYRO『A CELEBRATION OF ENDINGS』
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