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2020年8月20日 (木)

JOAN JETT & THE BLACKHEARTS『UP YOUR ALLEY』(1988)

1988年5月にリリースされたJOAN JETT & THE BLACKHEARTSの6thアルバム。

まずは個人的な思い出話から。ジョーン・ジェットといえば「I Love Rock 'N Roll」の印象が強い、というかジョーン・ジェット=「I Love Rock 'N Roll」といっても過言ではないくらい。同曲がヒットしたのは1981年のことで、その頃小学生だった僕は知るはずもなく。しかし、中学生以降になるとラジオやMTVを通じてさすがに同曲を知るようになるわけです。しかし、リアルタイムで発表され続けた新曲については一切触れることなく、そのまま高校生まで上がりました。

で、高1くらいのときにマイケル・J・フォックスとジョーンが出演する映画『愛と栄光への日々』(というより、原題の『LIGHT OF DAY』のほうが馴染み深いかな)が公開され、同作のサントラを手にするのでした……同作にはイアン・ハンター、デイヴ・エドモンズ、THE FABULOUS THUNDERBIRDSなど渋めのアーティストに加えて、なぜかBON JOVIの「Only Lonely」も収録。しかし、メインになるのがジョーンやマイケル・J・フォックスらの劇中バンドTHE BARBUSTERSによる「Light Of Day」でした。ブルース・スプリングスティーンが書き下ろしたこの曲、実は演奏自体はJOAN JETT & THE BLACKHEARTSによるもの。純粋に彼らの楽曲だったわけです。

この曲が初めて触れたジョーン・ジェットの新曲だったわけで、純粋に「カッコいい!」とハマるわけです(実際にはスプリングステーンの楽曲なわけですが)。で、そこから1年くらい経ち、新たに届けられた新曲が「I Hate Myself For Loving You」。ちょっと当時ヒットしていたハードロックにも通ずるキャッチーさを兼ね備えたダルなロックンロールに夢中になり、この曲だけをかなりヘビロテした記憶があります。さらに続いてシングルカットされた「Little Liar」もその延長線上にあるミディアムバラードで、こちらも愛聴。この2曲に背中を押され、ついにアルバムに手を出すことになります。

……長かったですね、ここからがアルバムのお話です(笑)。

ハードロック耳だった当時の僕がハマるの当然といいますか、上記2曲のソングライティングにはBON JOVIのブレイクやAEROSMITHの再起を手助けした職業作家のデズモンド・チャイルドが関わっているわけです。ジョーン・ジェットらしさを損なうことなく、要所要所にBON JOVI的なフックが散りばめられた、見事な仕事ぶりだと思います。

アルバム全体を見渡すと、デズモンドが携わったのはこの2曲と「You Want in, I Want Out」の3曲のみ。だからなのか、アルバム全体を通して聴くとそこまでBON JOVIやエアロ的な香りが強いわけではありません。その他の楽曲はバンドメンバーや長年の制作パートナーであるケニー・ラグナなどが関わっていることから、過去のスタイルを踏襲したロックンロールを楽しむことができます。それにチャック・ベリー「Tulane」やTHE STOOGES「I Wanna Be Your Dog」といったお約束のカバー曲も含まれているので、ロック純度はかなり高いかと。

そんな中、個人的にクレジットを見て一番びっくりしたのが「Desire」。これ、HR/HMファンにはHEARTKISS、エアロなどでおなじみ、ポップス方面でもセリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストン、ブリトニー・スピアーズやビヨンセなどのヒット曲を手がけるダイアン・ウォーレンがソングライティングに携わっているんですよ。そう聞くと「でた、産業ロックバラード!」と想像するかもしれませんが、実際には軽やかなロックンロールだったりするから2度驚きなわけです。ダイアン・ウォーレンが中心になって書いたというよりも、ジョーンが書いた曲をブラッシュアップする程度だったのかもしれませんね。

ミックスの音像自体は80年代中〜後半にありがちなビッグプロダクション気味ですが、1曲1曲の個性は非常に強い。彼女のオリジナルアルバムの中では異色の1枚かもしれませんが、だからこそ意外とハードロックファンが聴いても飽きることなく楽しめるのではないでしょうか。

ちなみに本作、全米19位と2作ぶりの全米TOP20入りを果たし、アルバムとしては『I LOVE ROCK 'N ROLL』(1981年)以来のプラチナム・ヒットとなっています。「I Hate Myself For Loving You」(全米8位)、「Little Liar」(同19位)というスマッシュヒットが生まれたことで、自分のようなにわかリスナー(笑)が増えたことも大きかったんでしょうね。

 


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