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2020年9月

2020年9月30日 (水)

2020年9月のお仕事

2020年9月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※9月30日更新)

 

[WEB] 9月30日、「Billboard Japan」にてインタビュー和楽器バンド×エイミー・リー 独占鼎談で明かすコラボ曲完成の原点が公開されました。同記事の英語版もBillboard.comにて公開中です(Japan's Wagakki Band & Evanescence's Amy Lee Sit Down to Talk First Impressions and Collaborating)。

[紙] 9月30日発売「MG」VOL.1にて、氣志團インタビュー、MAN WITH A MISSIONライブレポート、HYDEライブレポート(ACOUSTIC DAY、ROCK DAYの2本)を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月28日、「リアルサウンド」にてライブレポート×ジャパリ団、有観客と生配信で作り上げた熱気ある景色 初の単独ライブレポートが公開されました。

[紙] 9月25日公開の映画「映像研には手を出すな!」の公式パンフレットにて、齋藤飛鳥、梅澤美波、山下美月(以上、乃木坂46)、英勉、大童澄瞳の各インタビューを担当・執筆しました。

[紙] 9月25日発売「CONTINUE」Vol.67にて、アニメ「ポケットモンスター」特集内“西川くんとキリショー”(西川貴教、ゴールデンボンバー鬼龍院翔)対談を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月24日、「ザテレビジョン」にてインタビュー長濱ねる、仕事に対するマイルールと今やりたいこと「素直に生きていくのは難しいけど、すごく大事」が公開されました。

[紙] 9月23日発売「週刊ザテレビジョン」2020年10月2日号にて、長濱ねるインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月20日、「NIKKEI STYLE」にてインタビュー乃木坂46の齋藤飛鳥 『映像研』で恥じらい取り払えたが公開されました。

[紙] 9月18日発売「映像研には手を出すな!」〜手を出した人専用オフィシャルブック〜にて、乃木坂46山下美月、英勉監督、上野裕平(東宝プロデューサー)、高野水登(脚本家)、伊藤沙莉、chelmicoの各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 9月17日発売「日経エンタテインメント!乃木坂46 Special 2020」にて、白石麻衣、生田絵梨花、齋藤飛鳥、高山一実、北野日奈子、新内眞衣、伊藤理々杏、賀喜遥香、田村真佑、早川聖来、弓木奈於の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 9月9日、「リアルサウンド」にてインタビューKAQRIYOTERROR、5人の結束強まった1年間の集大成 1stアルバム『アヴァンギャルド0チテン』で見せた意欲と挑戦が公開されました。

[WEB] 9月7日、「リアルサウンド」にてコラム『虹プロ』や『PRODUCE 101』に続くオーディションに? 清水翔太が審査委員長務める『ONE in a Billion』への期待が公開されました。

[紙] 9月4日公開の映画「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」の公式パンフレットにて、1期生×2期生の各対談を担当・執筆しました。

[紙] 9月4日発売「日経エンタテインメント!」2020年10月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 9月2日、「リアルサウンド」にてインタビュー南條愛乃が語る、今だからこそ歌を介して伝えたいメッセージ「“みんなに”というよりは“あなたに”届けたい」が公開されました。

[WEB] 9月2日、「リアルサウンド」にてインタビューLittle Glee Monsterに聞く、歌で笑顔を届けるために模索した日々 2020年上半期から現在までの活動を振り返るが公開されました。

[WEB] 9月2日、「ぴあ」にてインタビュー衝撃の改名発表の裏側も! 欅坂46が語る、激動の5年間と再始動への思いが公開されました。

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また、8月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2008号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

BLACK SABBATH『TECHNICAL ECSTASY』(1976)

1976年9月に発売されたBLACK SABBATHの7thアルバム。

前々作『SABBATH BLOODY SABBATH』(1973年)を経て、前作『SABOTAGE』(1975年)にて初期のスタイルからの脱却および転換期を迎えたBLACK SABBATH。音楽シーン的にはパンクやニューウェイヴなど新しいムーブメントがアンダーグラウンドで沸々と盛り上がり始めていたタイミングであり、サバスのようなバンドはオールドウェイヴ扱いされ出していた時期でもあります。

そんな中、バンドは『SABOTAGE』でうっすら見せていたプログレ路線やシンセを前面に打ち出したニューウェイヴ路線をさらに強め始めます。本作ではジェラルド・ウッドラフをキーボーディストとして前面的にフィーチャー。さらに、アートワークではPINK FLOYDLED ZEPPELINなどでおなじみのヒプノシスを迎え、それまでのおどろおどろしいイメージを払拭する施策に取り組みます。

オープニングを飾る「Back Street Kids」のニューウェイヴ風味を散りばめた豪快なハードロック、続く「You Won't Change Me」でのプログレタッチなハードロックは、前作での作風をさらに強調したもので、一瞬ギョッとされられるものの、今の耳で聴けば全然「あり」。ただ、BLACK SABBATHのイメージで接すると若干に違和感は否めません。当時はそれこそ、オジー・オズボーン(Vo)がこういう曲を歌うことに対してメタルファンは拒否反応を示したのでしょうか。今やメタルシンガーとしてもポップシンガーとしても受け入られているオジーですから、リリースから44年経った2020年なら普通に楽しめる楽曲群だと思います。

また、本作にはビル・ワード(Dr)がまるまる1曲歌う「It's Alright」も収録。ピアノを軸にしたバラードで、トニー・アイオミ(G)のアコースティックギターも良い味を出しています。この曲は90年代初頭、アクセル・ローズがGUNS N' ROSESのライブで「November Rain」を歌う前にピアノで弾き語りしていたことでおなじみですよね(ライブアルバム『LIVE ERA '87〜'93』にも収録されています)。さらに、ドラマチックな作風の「Gypsy」はのちのオジーソロ(特に90年代の『NO MORE TEARS』以降)にも通ずるテイストがあり、それも踏まえて今の耳では当たり前のように受け入られるはずです。

後半に入ると、若干ソウルやブルースのフィーリングが復調しているものの味付けは本作のテイストという「All Moving Parts (Stand Still)」(中盤での展開がサバスらしいような、らしくないような)、のちのオジーソロにもつながるような軽快なアメリカンロック「Rock 'N' Roll Doctor」、ストリングスを大々的にフィーチャーした、オジー『DIARY OF A MADMAN』(1981年)の世界観に通ずるバラード「She's Gone」、そしてプログレッシヴな展開&アレンジがサバスの未来(ロニー・ジェイムズ・ディオ加入後)を髣髴とさせる「Dirty Women」と、前半以上に粒ぞろいな楽曲がずらりと並びます。全体的にポップ色が強まっており、そういった意味ではソロに移行してからのオジーの習作と言えなくもないかな。

本作リリース後にはオジーがバンドを一時脱退するハプニングもありましたが、1978年にはもう1枚『NEVER SAY DIE!』も制作しています。サバスとしては本作と次作『NEVER SAY DIE!』はディオ加入後にあまりつながらなかったかもしれませんが、オジー自身にとってはソロへ移行する上での良きレッスンになったようです。そういった耳で触れると、非常に聴きどころの多い“隠れた名盤”かもしれません。

 


▼BLACK SABBATH『TECHNICAL ECSTASY』
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2020年9月29日 (火)

ZAKK SABBATH『VERTIGO』(2020)

2020年9月4日にリリースされた、ザック・ワイルドBLACK LABEL SOCIETYOZZY OSBOURNE)率いるZAKK SABBATHの1stアルバム。日本盤未発売。

ZAKK SABBATHはその名のとおり、ザック・ワイルドが敬愛するBLACK SABBATHトリビュートの名目で結成したバンドで、現在のメンバーはザック(Vo, G)のほか、オジー・バンドでの盟友ブラスコ(B/ROB ZOMBIE)、そしてジョーイ・カスティロ(Dr/ex. QUEENS OF THE STONE AGE、ex. DANZIG、ex. EAGLES OF DEATH METALなど)の3人。2014年頃からこの名義で活動しているそうで、2017年6月にはアナログ盤限定でライブEP『LIVE IN DETROIT』をリリースしています。

今回発表された初のアルバム、および初のスタジオ作品はCDおよびアナログ盤のみの限定リリースで、デジタル配信はなしとのこと。Bandcampでは「CD/アナログ+デジタルアルバム」という項目がありますが、これはブラスコによる40秒程度のアルバムアイキャッチ(メッセージ)のことで、「THIS ALBUM WILL NOT BE RELEASED DIGITALLY FOR DOWNLOAD OR STREAMING - only physical formats are available!」と明記されているのでご注意を。

さて、BLACK SABBATHの名デビューアルバム『BLACK SABBATH(黒い安息日)』(1970年)リリースから50年という節目に、これを祝うために制作された本作。アルバムタイトルは同作のオリジナル・リリース元のVertigo Recordsから冠したもので、収録内容もアルバム『BLACK SABBATH』アメリカ盤をそのまんまなぞったもの。なので、UK盤などに収録されていた「Evil Woman」は未収録(代わりに「Wicked World」が収められています)。また、トラックランニングも「Behind The Wall Of Sleep」や「N.I.B.」などが単曲としてカウントされず、「Wasp / Behind The Wall Of The Sleep / Bassically / N.I.B.」と前後のギター/ベースソロを含めて1トラック、CD自体は全5トラックとカウントされています。

内容的にはオリジナル盤をほぼ完コピに近い形で再現。チューニングこそ半音〜1音半まで下げられておりザックらしさ全開ですが、特に原曲のイメージを損なうようなことはありません。また、ギターソロもトニー・アイオミ(G)のオリジナルフレーズを尊重しつつも、要所要所にザックらしい豪快さやカントリーフレイバーが織り交ぜられており、サバスカバー集としてもザックの新作としても楽しむことができるはずです(個人的にはブラスコのベース音色が固すぎて、「N.I.B.」前のベースソロ「Bassically」に違和感を覚えたり。全体的にメタル色が強すぎて、原作にあったジャジーさが薄れているのが大きいんでしょうかね。そこだけが残念)。

特に本作をサバスらしく成立させている要因に、ザックの声質が挙げられると思います。昔からザックとオジーの歌声が似ていると評判でしたが、改めてこうやってサバスの楽曲を歌われると、本当に“近い”なと驚かされます。アルバム1曲目「Black Sabbath」での歌い出しの時点で、完全にオジーまんまですからね(笑)。BLACK LABEL SOCIETYでは作品を重ねるごとにザックの個性がより際立っていましたが、サバスに寄せようとすればするほどオジーになれるんだなと。しかも、これをあんな豪快なギタープレイをしながら再現しているんだから、持って生まれたものなんでしょう。

サバスファンやザックのファンなら持っていて当然の1枚。ビギナーはまずサバスの1stをじっくり聴き込んでから、本作に臨んでほしいなと思います。

 


▼ZAKK SABBATH『VERTIGO』
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2020年9月28日 (月)

DEFTONES『OHMS』(2020)

2020年9月25日にリリースされたDEFTONESの9thアルバム。

前作『GORE』(2016年)から4年という比較的長いスパンを置いて届けられた本作は、デビュー作『ADRENALINE』(1995年)を筆頭に、2作目『AROUND THE FUR』(1997年)、3作目『WHITE PONY』(2000年)、4作目『DEFTONES』(2003年)とごく初期からブレイク期までの諸作品を手がけたテリー・デイト(PANTERASOUNDGARDENLIMP BIZKITなど)がプロデュースを担当。バンドは本来、2008年から制作していた『EROS』という未完のアルバムでもテリーと再タッグを組んでいましたが、ご存知のとおりチ・チェン(B)が同年11月に交通事故に遭い、意識不明の重体に。これにより、『EROS』の制作はチ・チェンの回復まで待つことになるのですが、2013年4月にこの世を去ったことにより現在まで制作がストップしています。あれから10年以上の空白期間を経て、バンドはまっさらな新作でテリーと再コラボすることになります。

前作『GORE』はサンプリング要素を最小限に抑え、ヘヴィなギターを軸にしたサウンドメイキング……チノ・モレノ(Vo, G)言うところの〈the singer playing Morrissey to the guitarist's Meshuggah〉な作風に仕上がっていたと思います。個人的にも名盤『WHITE PONY』に匹敵する力作だと思っていましたが、続く本作はそれをさらに上回る、最上級のDEFTONESサウンドが展開されているのです。いやはや、驚きましたよ。

テリー・デイトによるミキシングの効果なのか、全体的にささくれ立ったサウンドメイキングが印象的な本作は、『WHITE PONY』的なポストロック要素も随所に散りばめられてはいるものの、芯にあるのは『AROUND THE FUR』でのメタリックなカラーと、『DEFTONES』で繰り広げられたプログレッシヴなスタイル。前作のような〈the singer playing Morrissey〉的メロウさももちろん残されているものの、同じくらい初期のDEFTONESらしいスクリームも増えています。

リフワークにしても、オープニングを飾る「Genesis」を筆頭に、本作中でもっとも過激な「Radiant City」、そして「Ohms」とギター、ベースともにヒリヒリするような音色の名フレーズを提供してくれているし、サンプリングやシンセを多用した「Pompeji」から「This Link Is Dead」の流れなどはPINK FLOYD的ですらあるし、ヘヴィなリフが繰り返される「Radiant City」のバックにも浮遊感の強いシンセが被せられている。すべてが適材適所と言わんばかりにバランスよく配置されているのだけど、それでいてどこかで破綻してしまいそうな危うさもしっかり残されているんだから、聴いていてドキドキが止まらないわけです。

ラップメタル的なカラーが思い出させてくれる90年代の懐かしい情景、ポストロックからプログレまでジャンルの拡大により壁を壊し続けた2000年代、そして大切なメンバーを失いながらも前進と進化を選んだ2010年代。このすべての経験が凝縮された、ある意味で集大成的なのに新しさすら感じさせてくれる本作は、DEFTONES以外の何者でもないし、DEFTONESにしか作れない唯一無二の1枚だと思います。いやあ、傑作すぎて言葉を失います。

 


▼DEFTONES『OHMS』
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2020年9月27日 (日)

FIT FOR A KING『THE PATH』(2020)

2020年9月18日にリリースされたFIT FOR A KINGの6thアルバム。日本盤未発売。

FIT FOR A KINGは2007年に結成された、テキサス州出身のクリスチャン・メタルコアバンド。前作『DARK SKIES』(2018年)完成後にDaniel Gailey(G)が加入したこともあり、今作は現編成で初のアルバムとなります。

その『DARK SKIES』からちょうど2年ぶりとなる新作は、前作から引き続きドリュー・ファルク(DANCE GAVIN DANCECANE HILLCrossfaithCrystal Lakeなど)をプロデューサーに迎えた、ヘヴィさとメロディアスさをバランスよく織り交ぜた良作。多くのメタル/ラウド系リスナーがイメージする、「メロディアスなメタルコア」のど真ん中を表現したような王道サウンドが展開されています。

このバンドの音に触れるのは本作が初めてでしたが、とにかく聴きやすいの一言。しなやかさとスピード感、ヘヴィさとミドルテンポならではのグルーヴィーさ、そしてギターやボーカルラインで表現されるメロディアスな要素、一度聴いただけで一緒に歌えそうなシンガロングパート、テクニカルだけど耳馴染みが良くて口ずさめそうなギターソロ。そういった要素のどれかひとつが突出しすぎることがなく、すべてが程よいバランスの上で混ざり合い、ひとつの楽曲を高い完成度で構築していく。まさに職人技と呼ぶにふさわしい本作は、ラウドシーンのみならずリル・ウェインをはじめとするポップフィールドのアーティストとも仕事をするドリュー・ファルクの手腕によるものが大きいのでしょうか。

実はこのバランス感って、日本のラウドロックシーンにもっとも近いものがあると思っていて、それは先に挙げたCrossfaithやCrystal Lakeといった海外でも活躍する国内勢がプロデュースやミックスをドリューにオファーするあたりにもつながっているのかなと。実際、ドリューが近年プロデュースしたりソングライティングで関わったアーティストの多くが、日本ウケしそうなバンドばかりですし、いろいろ納得いくものがあります。

ただ、ここまでバランスが良すぎて“破綻”がまったくないと、スルスル聴き進めてハイ終わり、なんてことにもなりかねない危険性も孕んでいると思っていまして。実際、完成度はかなり高いものの、じゃあどの曲が一番印象に残ったか?と問われると、すぐに「これ!」と挙げられるようなキメの1曲が見当たらないのも事実。すべてが平均点以上、80〜90点の間くらいの高品質なんだけど、例えば1曲だけ99点レベルとか、極端な話1曲だけ40点みたいな曲なんなものがないぶん、平坦なままで終わってしまう危険性も秘めているのかな。そんな気がしました。

強いて挙げれば、泣きメロチックな要素を持つ「Locked (In My Head)」や、Crstal LakeのRyo(Vo)がゲスト参加した「God Of Fire」あたりが一番気になるかな。後者は本作においてデジタル色をもっとも強く施されたこともあり、異色と言えるかもしれません。こういう良い意味での“毛色の違い”や“破綻”がもう少しあってもいいんですけどね。

高品質な優等生的作品だからこそ、パズルのピースがあとひとつ揃えばハネるんじゃないか。そんな1枚です。

 


▼FIT FOR A KING『THE PATH』
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2020年9月26日 (土)

SUICIDE SILENCE『THE BLACK CROWN』(2011)

2011年7月12日にリリースされたSUICIDE SILENCEの3rdアルバム。日本盤は同年7月20日に発売されています。

1stアルバム『THE CLEANSING』(2007年)、2ndアルバム『NO TIME TO BLEED』(2009年)と着実に成長を続けてきた彼らにとって、その人気を確実なものへと決定づけたダメ押しの1枚。前作の時点で全米TOP40入り(最高32位)を果たしていたものの、本作ではついにTOP30入り(最高28位)を記録。本作で彼らに触れたというリスナーも少なくないのかもしれません。

僕は前作『NO TIME TO BLEED』をたまたま購入し彼らに音に触れていたのですが、デスコア然としていた前作の要素を残しつつも、ミドルテンポに比重を置いたメタルコア路線の楽曲が増え始めたことで、少しメジャー感が増したなという印象を受けました。とはいっても、ミッチ・ラッカー(Vo)の咆哮は相変わらず激しいままなので、そこに対して「日和った」なんて一切感じませんでしたが(コアなデスコアリスナーの中には、そう感じた方もいたのかもしれません)。

しかし、そんな本作から「You Only Live Once」というメタルコア寄りの楽曲が代表曲のひとつとして支持を集めるようになるのですから、結果としてはこの進化は好意的に受け入れられたということなのでしょう。同曲に続く「Fuck Everything」や「March To The Black Crown」といったナンバーも同系統ですが、ブラストビートを多用したブルータルな「Slaves To Substance」や「Human Violence」といった楽曲を配置したアルバム序盤から「You Only Live Once」以降の流れ、再びアグレッションが増す「Witness The Addiction」や「Smashed」などを用意した後半という流れは不思議と聴いていて疲れませんし、むしろ良い流れだなとポジティブに感じるほど。僕自身デスコアというジャンルに思いっきり傾倒していたわけではなかったので、逆に過去2作よりも本作のほうがリピートしやすい、聴きやすいと感じていたほどでした(MVはゴア感満載でしたけどね)。

終盤には不穏なギターフレーズを織り交ぜたミドルナンバー「The Only Thing That Sets Us Apart」というフックの効いた曲がありつつも、ラストはやはりこれ!と言わんばかりの「Cancerous Skies」で終了。なお、「Witness The Addiction」にジョナサン・デイヴィス(Vo/KORN)、「Cross-Eyed Catastrophe」にアレクシア・ロドリゲス(Vo/EYES SET TO KILL)、「Smashed」にフランク・ミューレン(Vo/ex. SUFFOCATION)がゲスト参加。「Cross-Eyed Catastrophe」で聴けるアレクシアの女性クリーンボイスは良いアクセントになっており、このへんも本作のメジャー感アップに貢献しているのかもしれません。

「これはハードコアなのか、それともヘヴィメタルの進化系なのか」なんて愚問は置いておいて、ヘヴィなサウンドを愛聴するリスナーにとっては「新しい波が来た!」とうれしくなるような1枚だったことだけは間違いありません。実際、そう感じていましたし。

だからこそ、カリスマ的な存在感を放っていたミッチが本作を最後にこの世を去ることになるなんて、リリース当時は想像もしていませんでした(ミッチは本作リリースから1年以上経った2012年11月1日、バイク事故で急逝)。改めて「You Only Live Once」という楽曲の歌詞が胸に沁みます。

 


▼SUICIDE SILENCE『THE BLACK CROWN』
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2020年9月25日 (金)

BRING ME THE HORIZON『SUICIDE SEASON』(2008)

2008年11月中旬にリリースされたBRING ME THE HORIZONの2ndアルバム。日本盤は翌2009年1月下旬に発売されました。

BRING ME THE HORIZONの名を幅広く知らしめる最初の結果を生み出した、記念すべき1枚。ジャケットのグロさから、知らない人にはデスメタルとかゴアグランドのバンドかと間違えられそうですが(デビュー作を知らなかった僕も、店頭でそう勘違いして手にしたひとりです)、1stアルバム『COUNT YOUR BLESSINGS』(2006年)で提示したデスコアサウンドをさらに一歩推し進めた、モダンなメタルコアサウンドを楽しむことができます。

プロデュースを手がけたのは、北欧メロディックデスメタルシーンで知られるフレドリック・ノルドストローム(ARCH ENEMYDIMMU BORGIRSOILWORKなど)。前作でのアンダーグラウンド感が良い意味で薄れ、鋭角で低音重視ながらも全体的に聴きやすい/聞き取りやすいバランス感でまとめられています。初めて聴いたときは冒頭2曲「The Comedown」「Chelsea Smile」のアグレッションに若干引きつつも、それでも不思議と聴きやすいその作風に違和感を覚えたものです(もちろん、良い意味での違和感なんですけどね)。

緩急の起伏が激しいアレンジ/バンドアンサンブルと、デジタルテイストを随所に散りばめた味付けは、前作での(良くも悪くも)アングラの帝王感から一線を画するものがあり、短期間でメジャー感を強めることに成功。今思えば、次々作『SEMPITERNAL』(2013年)の片鱗と言えなくもないですが、この時点ではあくまで「アグレッシヴなバンドサウンドとの対比」という意味での味付けだったはず。なので、デジタル感をバンドの軸足に起き始めた『SEMPITERNAL』とは直接的な関連性はそこまで考えなくてもいいのかなと。むしろそれよりは、楽曲のプログレッシヴ度が急激に増す次作『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)とのつながりを考えたほうが正しいのかもしれません。

1作目から順に追っていくと、5作目『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)までは非常に真っ当で正しい進化の仕方をしているなという事実に、改めて気づかされるはず。とはいっても、前作『COUNT YOUR BLESSINGS』と本作との差は一番大きなものがあり、そういった意味では今作を真のスタート地点と捉えることもできるのかなと。この『SUICIDE SEASON』から『THAT'S THE SPIRIT』までの流れ/成長は非常にわかりやすいものがありますしね。

リリースから12年経った今の耳で聴くと、当時は激しすぎると若干の拒否反応を示した本作も不思議とキャッチーに思えてくる。慣れって恐ろしいですね(笑)。なお、本作中の「Football Season Is Over」にはメルボルンのハードコアバンドDEEZ NUTSからJJ・ピーターズ(Vo)が、「The Sadness Will Never End」ではイギリスのメタルコアバンドARCHITECTSからサム・カーター(Vo)がそれぞれゲスト参加。本作から10数年後、BMTHもARCHITECTSもイギリスと代表するメタル/ラウドバンドにまで成長するとは、この頃には想像もしていませんでしたね。

BMTH初心者が初期の作品に触れる際、本作から入っていくと現在とのあまりの違いに拒否反応を示すかもしれません。そういう意味では次作『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』のほうが入りやすいのかな? 同作が問題なくいけたら、こちらにさかのぼってみるのがベストかもしれませんよ。

 


▼BRING ME THE HORIZON『SUICIDE SEASON』
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2020年9月24日 (木)

WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』(2019)

CONVERGEのフロントマン、ジェイコブ・バノン(Vo)による別バンドWEAR YOUR WOUNDSが2019年7月12日にリリースした2ndアルバム。日本盤は2日先行の同年7月10日に発売されています。

アートブックなどミックスメディア・プロジェクトの一環として発表された『DUNEDEVIL』(2017年)を含めれば3作目のアルバムとなる今作(アルバム『DUNEDEVIL』は1stアルバム『WYW』日本盤にボーナスディスクとして付属。サブスクなどでも手軽に聴くことができます)。過去2作はあくまでジェイコブのソロ/サイドプロジェクトとして制作されたものでしたが、『WYW』制作に参加したメンバーを軸にバンド形態として始動。ジェイコブがベースやピアノなどを兼任しつつ、マイク・マッケンジー(G/THE RED CHORD、STOMACH EARTH)、ショーン・マーティン(G/TWITCHING TONGUES、ex. HATEBREED)、アダム・マッグラス(G/CAVE IN、NOMAD STONES)、クリス・マッジオ(Dr/ex. TRAP THEM、ex. SLEIGH BELLS)というUSハードコア界の重鎮たちが一堂に会するスーパーバンドへと進化したわけです。

ですが、ここで展開されているのは現代的なハードコアとは一線を画する、シューゲイザーやスラッジの影響下にあるアートロックのようなサウンド。アッパーなサウンドで攻めたり叫んだりすることはなく、ダウナーなボーカル&サウンドで悲しみや絶望など負の感情が時にメランコリックに、時にエモーショナルに表現されていく……そういった意味では、CONVERGEの最新作『THE DUSK IN US』(2017年)の中で芽生え始めた方向性を一歩推し進めたものと言えるかもしれません。

トリプルギターを用いた音の厚み、ピアノやエレクトロニクスを効果的に用いた叙情性、ボーカルラインやギターが奏でるメロディの多彩さはCONVERGEでは表現できなかった世界観でしょうか。そのサウンドをエンジニアリング&プロデュースするのが当のCONVERGEの一員であるカート・バルーというのも、また興味深いところです。

『WYW』が良くも悪くも実験性の強い1枚であったことを考えると、本作で展開されているのは紛れもなく“バンドのアルバム”だということ。この違いは非常に大きく、特にCONVERGEからの流れでジェイコブのソロに触れるというリスナーには今作のほうがとっつきやすいと言えるでしょう。もちろん、CONVERGEそのものを求めると痛い目を見ることになりますが……。ただ、『THE DUSK IN US』という作品を好意的に受け入れることができたファンには間違いなく響く良作であり、ある意味では『THE DUSK IN US』と表裏一体の1枚と断言できます。

楽曲の良さや世界観、演奏面など、どれを取っても高品質な1枚。今みたいな季節に、深夜に適度な音量で楽しみたいアルバムです。

 


▼WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』
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2020年9月23日 (水)

DEFTONES『KOI NO YOKAN』(2012)

2012年11月9日にリリースされたDEFTONESの7thアルバム。日本盤は同年11月14日に発売されています。

前作『DIAMOND EYES』(2010年)から2年半ぶりの新作は、引き続きベーシストにセルジオ・ヴェガ、プロデューサーにニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSHALESTORMMASTODONなど)を迎えて制作。2008年11月にチ・チェン(B)が交通事故で意識不明の重体に陥ってから、2作目の「不完全な形」でのアルバム制作となりました。

アルバムタイトルに日本語の「恋の予感」をそのまま用いた本作は、玉置浩二率いる安全地帯が如くメランコリックなAORを思わせるような……作品にはまったくなっておらず(笑)、前作からの流れを良い意味で引き継いだ、ヘヴィさとソフトさをバランスよく織り交ぜたエモーショナルな1枚に仕上がっています。チ・チェンを交えて制作する予定だった『EROS』という作品が怒りに満ちたヘヴィな作品になる予定だったところを、『DIAMOND EYES』では“Optimistic(=楽観的)”な作風を意識したと語られていましたが、そういった意味ではこの『KOI NO YOKAN』も“Optimistic”な1枚と言えるでしょう。

ただ、ゴリゴリした側面は若干後退したような印象も受けます。「Leathers」や「Poltergeist」のように味つけてエフェクトを多用した楽曲も含まれているものの、それらはポストロック的な用法というよりもヘヴィロック/ラウドロックの延長線上で用いられており、特に後者では楽曲を引き立てる上で良いフックになっているように感じました。

かと思えば、オルタナティヴロック/UKロック的なギターリフ/フレーズを取り入れた「Entombed」、ゴシックロック的なダークさを醸し出す「Rosemary」、ニューウェイヴ的な側面も見受けられる「Goon Squad」や「What Happened To You?」のような変化球もしっかり用意されている。轟音で力強く推し進めるというよりも、メロウさや気だるさを強調するためにヘヴィな音像を要所要所に配置する、むしろヘヴィさはおまけのようにすら感じ取れる。そういった意味では、これまでの作品とはスタート地点が真逆にあるような、不思議な印象を与えてくれるアルバムかもしれません。

なんというか、完全にひとつ完成してしまった……そんな1枚なわけですが、実はリリース当時は本作に対してあまりポジティブなイメージがありませんでした。なんというか……「コレジャナイ」感を抱いてしまったんです。「ああ、そっちに舵切ったか」と。次作『GORE』(2016年)を経た今聴くと、非常に前向きに受け取れるし、むしろ好みの音なんですけど。単純に2012年の自分の心境とフィットしなかっただけなんでしょうかね。謎です。

 


▼DEFTONES『KOI NO YOKAN』
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2020年9月22日 (火)

MASTODON『MEDIUM RARITIES』(2020)

2020年9月11日にリリースされたMASTODONのコンピレーションアルバム。日本盤未発売。

フルアルバムとしては『EMPEROR OF SAND』(2017年)以来3年半ぶりとなりますが、本作は新曲/アルバム未収録の既発曲/ライブ音源/バージョン違いなどで構成された作品で、録音された時期もまちまち。ですが、70分以上におよぶ長尺でも不思議と統一感が感じられるのは、彼らのスタイルが一切ブレていないという証明なのかもしれません。

新曲はリードトラックとして先行配信されていた「Fallen Torches」のみ。王道のMASTODONぶりを発揮したヘヴィなナンバーで、安心して楽しめるはずです。まあ、本作においてはこの新曲のほうがおまけ的なポジションかもしれませんが(笑)。

カバーは3曲用意。過去に雑誌付録のコンピレーションアルバムやRecords Store Dayの限定アナログ盤などで発表されていたものですが、ファイストの「A Commotion」、THE FLAMING LIPSの「A Spoonful Weighs A Ton」、METALLICAのインストナンバー「Orion」とどれもバラエティに富んだ選曲&アレンジ。「Orion」は想定内かつ“いかにも”なセレクト&演奏ですが、ファイストとTHE FLAMING LIPSは原曲のイメージを残しつつもMASTODONらしいヘヴィさ&プログレ感が強調された良カバーと言えるのではないでしょうか。

また、個人的にこのアルバムにおける大きな収穫は、既発曲のインストバージョンでしょうか。選曲は「Asleep In The Deep」「Halloween」(ともに2014年の『ONCE MORE 'ROUND THE SUN』収録)、「Toe To Toes」(2017年のEP『COLD DARK PLACE』収録)、「Jaguar God」(『EMPEROR OF SAND』収録)とどれも直近の作品からですが、インストゥルメンタルナンバーとしても十分に楽しめる演奏力とアレンジ力はさすがの一言。個人的には『EMPEROR OF SAND』のハイライトである「Jaguar God」がボーカルなしでもここまで“泣ける”ことに驚かされました。

そのほか、「Capillarian Crest」「Circle Of Cysquatch」「Crystal Skull」(2006年の『BLOOD MOUNTAIN』収録)、「Blood & Thunder」「Iron Tusk」(2004年の『LEVIATHAN』収録)と比較的初期の楽曲のライブ音源では、ムーディーさよりもアグレッシヴさに比重を置いたプレイを楽しむことができるし、映画などのサントラに提供した楽曲も聴くことができる。今やサブスクで手軽に楽しめる曲も少なくありませんが、先のカバー曲やインストバージョンのようにここでしか聴くことができないテイクも豊富な本作は、MASTODONというバンドをよりディープに理解する上で意外と重要な1枚かもしれません。

 


▼MASTODON『MEDIUM RARITIES』
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2020年9月21日 (月)

RAVEN『METAL CITY』(2020)

2020年9月18日にリリースされたRAVENの14thアルバム。

2019年1月発売のライブアルバム『SCREAMING MURDER DEATH FROM ABOVE: LIVE IN AALBORG』、および同作を携えた2019年3月の来日公演にてバンドとしての健在ぶりをアピールしたRAVEN。その来日時のインタビューにて「すでに新作は完成している」的な発言を残していましたが、ついにそのオリジナル作品が世に届けられることになりました。オリジナルアルバムとしては日本盤がキングレコードから発売された『EXTERMINATON』(2015年)以来5年4ヶ月ぶりになるようです。

『EXTERMINATON』からの大きな変化として挙げられるのが、30年近くにわたり在籍したジョー・ハッセルヴァンダーからFEAR FACTORYのマイク・ヘラーへとドラマーが交代したこと。ライブアルバムの時点ですでに演奏は耳にすることができましたが、そのパワフルで手数の多いプレイは高カロリーなRAVENの音にぴったりだし、むしろ往年の輝きを取り戻したんじゃないか、そう思えるほどのハイエナジーぶりを発揮していました。

で、このオリジナルアルバムでもそのハイカロリー/ハイエナジーぶりは健在で、ファスト&ヘヴィなドラミングに導かれるかのように新曲自体も良い方向に導かれている印象を受けます。「The Power」「Top Of The Mountain」のように王道スピードメタル(しかもキャッチー)が全体で貫かれつつ、タイトルトラック「Metal City」や「When Worlds Collide」のようなミドルヘヴィナンバーも随所に配置されている。中には「Human Race」のようにブラストビートを味付けに取り入れた変化球も用意されており、メタリックで統一されながらも緩急の差をつける構成はただただ気持ちよくき、全10曲/38分があっという間に過ぎ去っていきます。

楽曲の方向性やギターの演奏スタイル、ボーカルの歌唱スタイルこそ80年代の王道HR/HMのノリですが、ドラミングの手数やちょっとしたフィーリングから90年代以降のモダンさも伝わる。しかし、だからといって時代に媚びを売るような雰囲気はゼロで、むしろアメコミ風アートワーク同様に往年の良きものをそのまま2020年に持ってきたような潔さすら感じられるわけで、RAVENというバンドにとって今が何年なんていうのはまったく関係ないんでしょうね。

うん、彼らはそれでいいと思いますし、むしろこのまま世間の評価や流行り廃りに惑わされずバンド人生を全うしてほしい(90年代の迷いをリアルタイムで体験しているからこそ、余計にね)。そう思わずにはいられない、ど直球/ど真ん中の豪速球的HR/HMアルバムです。難しいことは考えずに、「Play Loud!」でひとつお願いします。

 


▼RAVEN『METAL CITY』
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2020年9月20日 (日)

CHIP Z'NUFF『STRANGE TIME』(2015)

2015年2月3日にリリースされたチップ・ズナフの1stソロアルバム。日本盤未発売。

ドニー・ヴィ(Vo, G)と並び、初期からENUFF Z'NUFFの主要メンバーとして知られるチップ・ズナフ(B, Vo)。ドニー脱退後は自身がリードボーカルを兼任し活動を継続していますが、ドニーがバンドを再脱退してしばらくバンド活動がままならなかった時期に、こんなソロアルバムを出していたんですね。実はつい最近まで未チェックでした。

本作はTHE KINKSのカバー「All Day And All Of The Night」を含むアルバム本編10曲に、元GUNS N' ROSESのスティーヴン・アドラー(Dr)とタッグを組んだEP『ADLER Z'NUFF』収録の5曲をボーナストラックとして追加した全15曲入り。アルバムとしては約70分とかなり長尺ですが、ひとまずここでは本編10曲とボートラ5曲を分けて考えたいと思います。

まずは、アルバム本編から。気心知れた仲間とともに、自身のスタジオなどで制作された本作は、基本的にENUFF Z'NUFFの延長線上にある作風。穏やかでダークでサイケデリック……という点においては初期や90年代半ばのENUFF Z'NUFFを髣髴とさせ、大半の楽曲がチップひとりで書かれたものだという事実に驚かされます。というのも、どの曲もチップ&ドニー名義で制作されたENUFF Z'NUFFのアルバムに収録されていても不思議じゃないくらい、完成度が高いのです。

オープニングを飾るダウナーな「Sunshine」からして、王道のENUFF Z'NUFF流サイケナンバーだし、中にはNINE INCH NAILSのトレント・レズナーと共作&リック・ルービンがプロデュースしたヘヴィな「Strange Time」という異色作まで存在する。で、その異色作から続く「Dragonfly」のダウナー感もたまらない。なにこれ、なんでENUFF Z'NUFFで出してくれなかったの? っていうか、ドニーばかりが天才だと思い込んでいて、バンドを守り続けるチップのことを過小評価していて本当にゴメン! そう思わずにはいられない内容でした。

90年代後期の作品に収録されていても不思議じゃないシャッフルビートのポップナンバー「Still Love Your Face」、ファンクの影響が強いダンサブルなオルタナチューン「F..Mary..Kill」、ダウナー感強めのパワーポップ「Strike Three」や「Hello To The Drugs」など、派手めの演奏でアレンジされたら確実にENUFF Z'NUFFナンバーとして通用する良曲ばかり。しかし、チップのボーカルの地味さが悪い方向に手伝って、この良曲たちをうまく生かせていない。そこだけが本当に勿体ない! ドニーのアクが強いボーカルで表現されていたら、どれだけ名作になっていたことか……。

ちなみに、「All Day And All Of The Night」にはゲストとしてCHEAP TRICKのロビン・ザンダー、そして元ガンズのスティーヴン・アドラーがゲスト参加。これもロビンがリードをとればよかったのに……と思わずにはいられません。それくらい、コーラス&ハモリでのロビンの声が特徴的すぎるんですよ。はあ。

一方、スティーヴン・アドラーと完全共作で挑んだEP5曲は、元ガンズのアドラーらしい派手さが加わった、非常にハードロック色の強い作風。オープニングを飾る「My Town」なんて完全にソレですよね。そこに、チップらしいパワーポップ感(美メロハーモニーやアナログシンセを使ったフレージングなど)が加わることで、デビュー時のENUFF Z'NUFFをちょっとだけ思い出させてくれます。全体の音作りもファットでキラキラ感が強く、アルバム本編のダーク&シンプルと対極にある構成です(メロディライン自体は同じくらい良質なのに。不思議です)。なお、「Tonight We Met (And Now We're Going To Fuck)」にはアドラーの盟友スラッシュがゲスト参加。いかにもなギタープレイを聴かせてくれます。

アルバム本編然りEP然り、楽曲を軸にした作品評価は高くなりますが、ボーカルを軸にした場合はどうしてもそこよりも劣るものになってしまう。頭では「もうドニーとは決別したんだ……」と理解していても、体がドニーの声を求めてしまう。チップって、つくづく不幸な人だなと思います。と同時に、ドニーをいつまでも求め続けてしまう僕らもね(苦笑)。

 


▼CHIP Z'NUFF『STRANGE TIME』
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2020年9月19日 (土)

CHEAP TRICK『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994)

1994年3月末にリリースされたCHEAP TRICKの12thアルバム。日本盤は同年4月上旬、『蒼い衝動』の邦題を付けて発表されています。

前々作『LAP OF LUXURY』(1988年)でセールス的に大復活を果たすものの、続く前作『BUSTED』(1990年)で『LAP OF LUXURY』ほどの成績を残すことができなかったCHEAP TRICK。折りからのHR/HMブームにも陰りが見え始めたことも影響し、1991年に発表した初のベストアルバム『THE GREATEST HITS』を最後にデビュー以来10数年にわたり在籍したEpic Recordsを離れることになります(その後、1993年にはロビン・ザンダーが初のソロアルバム『ROBIN ZANDER』をリリースしています)。

HR/HMブームが後押しして復活した彼らでしたが、今度はそのHR/HMを壊滅させたグランジ勢から「ルーツはCHEAP TRICK」という新たなバックアップが。これによりバンドは新たに老舗Warner Bro.と契約することになり、VAN HALENやTHE DOOBIE BROTHERSなどで知られるテッド・テンプルマンをプロデューサーに迎え、約4年ぶりの新作を完成させます。

「The Flame」的なバラードシングルやラジオヒットを目指した産業ロック路線にとらわれることなく、バンドはここで本来の自分たちらしさを取り戻します。オープニングを飾る「My Gang」のポップでキャッチーなギターロック、初期のダーク&サイケ感を取り戻したヘヴィな「Woke Up With A Monster」、そして黄金パワーポップチューン「You're All I Wanna Do」、「The Flame」を通過したことで生まれた自然体のスローバラード「Never Run Out Of Love」、キャッチーさの際立つミドルバラード「Didn't Know I Had It」など、アルバムは冒頭から中盤にかけて名曲目白押し。過去2作の産業ロック的な作りから脱却し、アルバム全体の音の抜けも非常によろしく、ボーカルと楽器隊のバランスの良さ、各楽器の音の粒までしっかり聞き取れそうなミックスなど含め、80年代以降のCHEAP TRICKの作品中もっとも高品質な1枚と言えるのではないでしょうか。

異色のダンスチューン「Ride The Pony」を筆頭に、硬質なギターロック「Girlfriends」「Let Her Go」、80年代後半の経験が見事に活きたミドルナンバー「Tell Me Everything」、70年代の彼らを思わせるヘヴィバラード「Cry Baby」、ハードなサウンドと軽やかなリズムがミックスされたダンスロック「Love Me For A Minute」と、アルバム後半も前半ほどではないにせよ完成度高め。個人的には前半5曲が鉄壁すぎるがゆえに、後半の楽曲群は若干質が落ちると感じてしまいます。といっても、平均点以上の出来なんですけどね。

日本盤はここにボーナストラック「Sabre Dance」(ハチャトゥリアンの「剣の舞」)のカバーを追加収録。異色のクラシックカバーではあるものの、意外とCHEAP TRICKというバンドに合っているから不思議です。

バンド本来の姿を取り戻した勝負作だったものの、過去2作には及ばない全米123位という結果を残し、結局Warner Bros.とは本作1枚で契約を終了。この時点ではグランジ経由の再評価は数字につながることなく、バンドは3年後に自主レーベルから2度目のセルフタイトルアルバム『CHEAP TRICK』(1997年)で再浮上に挑むことになります。

 


▼CHEAP TRICK『WOKE UP WITH A MONSTER』
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2020年9月18日 (金)

HOUSE OF LORDS『HOUSE OF LORDS』(1988)

1988年10月にリリースされたHOUSE OF LORDSの1stアルバム。日本盤は同年12月、『神々の舘』という邦題を冠されて発売されています。

HOUSE OF LORDS は1987年にGIUFFRIAを解散させたグレッグ・ジェフリア(Key)を中心に、末期GIUFFRIAに在籍したラニー・コードラ(G)とチャック・ライト(B/ex. QUIET RIOT)、ケン・メリー(Dr/FIFTH ANGEL、CHASTAINなど)の3人にJASPER WRATH、EYESといったバンドで活躍したジェイムズ・クリスチャン(Vo)を加えた5人組ハードロックバンド。KISSジーン・シモンズが新たに設立したレーベルSimmons Reocrdsと契約し、同レーベル第1弾作品としてリリースされたのがこのアルバムでした。同作はシングル「I Wanna Be Loved」(全米58位)のヒットも手伝って、最高78位という好成績を残しています。

グレッグ・ジェフリア、アンディ・ジョーンズ(CINDERELLAMcAULLEY SCHENKER GROUPVAN HALENなど)、そしてジーンの共同プロデュースにより制作された本作は、80年代後半という時代性が反映されたメロディアスでAORライクなハードロックが展開されています。元GIUFFRIAのメンバーによるバンドということでシンセ中心のサウンドがイメージされますが、本作において軸になるのは歌とギターで、全体的にはGIUFFRIAよりもハードエッジな楽曲で占められています。

ジェイムズ・クリスチャンの適度にハスキーで湿り気のある歌声は、当時すでに大ブレイクしていたWHITESNAKEのデヴィッド・カヴァーデイルを髣髴とさせるものがあります。もちろんそのへんはレーベル側(主にジーン)の狙いだったのでしょう。楽曲にしてもミドルテンポの王道産業ハードロックを軸にしながらも、「I Wanna Be Loved」のようにR&B的要素を若干含むメロウなロックや、GIUFFRIA時代を思わせる煌びやかなシンセが印象的な「Pleasure Palace」(楽曲クレジットにはGIUFFRIAのフロントマンだったデヴィッド・グレン・アイズレーの名も)、演奏力の高い各メンバーのプレイを大々的にフィーチャーしたアップチューン「Lookin' For Strange」「Slip Of The Tongue」、この時代ならではのパワーバラード「Love Don't Lie」など、比較的バラエティに富んだ楽曲群が並び、デビュー作にしては非常に完成度の高い内容となっています。

それもそのはず、ソングライター陣に目を向けるとマンディ・メイヤー(当時AISAのギタリスト。のちにGOTTHARDの一員に)やスタン・ブッシュ、CHEAP TRICKのリック・ニールセン、ジョニー・ワーマンなどといったアーティスト/職業作家の名前を見つけることができ、(バンド中心で執筆した楽曲に職業作家をコライトで入れたり、職業作家や別のソングライターが書いた楽曲をバンドで演奏する)いわゆるHEARTAEROSMITH方式を大々的に取り入れていることにも気づきます。このへんは策士ジーン・シモンズの手腕によるものでしょう。さすがです。

最初から最後まで、とにかく捨て曲なしの80'sハードロックの隠れた名盤。「隠れた〜」というのは、本作が現在国内盤廃盤状態であり、ストリーミングサービスなどデジタル配信がされていないという事実があるからです。バンドは1993年に一度解散し、2000年代に入ってから再結成。現在もジェイムズ・クリスチャン以外のメンバーを変えつつ、活動を継続しており、2020年6月には最新作『NEW WORLD - NEW EYES』も発表しています。これを機に、初期3作(本作と1990年の2nd『SAHARA』、1992年の3rd『DEMONS DOWN』)を再発してもらいたいところです。

 


▼HOUSE OF LORDS『HOUSE OF LORDS』
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2020年9月17日 (木)

BAD MOON RISING『OPIUM FOR THE MASSES』(1995)

1995年4月にリリースされたBAD MOON RISINGの3rdアルバムにしてラスト作。1996年夏には本作で初めてのUSリリースが実現しており、こちらのUS仕様(日本オリジナル盤未収録の3曲含む)も1996年9月に日本発売されています。

カル・スワン(Vo)&ダグ・アルドリッチ(G)、前作がほぼ完成したタイミングで加入したイアン・メイヨー(B)&ジャッキー・レイモス(Dr)が4人揃って初めて本格制作したアルバムであり、ソングライティングもBMR名義で制作されています(そうそう、本作ではバンド名を「B.M.R.」と記号的に表記するケースが増えていました。これはBAD MOON RISINGという“ビッグ・イン・ジャパン”的イメージを払拭するためと、グランジ以降の風潮に合わせたものだったのでしょうかね)。

プロデューサーとして新たにノエル・ゴールデン(TRIUMPH、NIGHT RANGERダフ・マッケイガンなど)を迎えた本作は、前作『BLOOD』(1993年)でのアメリカナイズされたダーク&ヘヴィ路線をさらに推し進めたもので、90年代前半のオルタナ・メタルからの影響を強く感じさせる1枚に仕上がっています。もはやデビューアルバム『BAD MOON RISING』(1991年)の頃とはまったく別のバンドです(苦笑)。

そういうこともあり、デビュー当時からのファンおよびLION時代からカル&ダグを応援してきたリスナーにとって本作は許しがたい“裏切りの1枚”だったのかもしれません。が、当時から思っていたことですが……これ、そんなに悪いアルバムでしょうか?

前作『BLOOD』ではカルの歌唱スタイルと乖離していた楽曲の方向性が修正されており、この抑揚の少ないボーカルパフォーマンスに合った楽曲がしっかり用意されている。オープニングを飾る「Belligerent Stance」なんてまさにその好例じゃないかな(どこか末期THIN LIZZY的で、それもカルのボーカルに似合っている)。ハードロック的リフメイカーとしては弱点の目立ったダグのプレイも、本作でのオルタナ・メタル的作風には絶妙にフィットしているし(グランジやオルタナ・メタルではHR/HMほど、かっちりしたアンセミックなギターリフがそこまで必要とされていませんでしたしね)。

以降も『BLOOD』でのスタイルをよりオルタナ側へと寄せることによって、もともと淡白だったカルのボーカルワークを活かすことに成功。ダグもジミ・ヘンドリクス直系のフリーキーなフレージングを活用することにより、90年代半ば前後の空気感を見事に捉えた印象深いプレイを楽しむことができる。「Into The Pit」や「Free」のような楽曲なんて、このタイミングじゃなか生まれなかったであろう異色作ではあるものの、非常にマッチしているんですよね。

『BAD MOON RISING』はLION時代に果たせなかった目的を消化するための「延長戦」であり、『BLOOD』は次のスタートへ向かう上での処女作、そして今作はメンバーが固定されようやく到達できたデビュー作だった。そう考えると、このアルバムがこういう内容になったのも納得いくのではないでしょうか(いや、古くからのファンにはそんなことまったくないかな)。一般的には駄作扱いの本作ですが、今も昔も変わらず愛聴できる「90年代半ばを象徴する」1枚です。

なお、先にも書いたように本作は日本盤とUS盤とで収録内容、曲順がまったく異なります。個人的には日本盤の収録内容および曲順がもっとも馴染む仕上がりではないかなと思っているので、これから購入する方にはぜひこちらをオススメします(残念ながらSpotifyなどストリーミングサービス未配信なので、中古CDショップで探してみてください)。

 


▼BAD MOON RISING『OPIUM FOR THE MASSES』
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2020年9月16日 (水)

BAD MOON RISING『BLOOD』(1993)

1993年3月にリリースされたBAD MOON RISINGの2ndアルバム。日本で先行リリースされたのち、同年5月にイギリスやヨーロッパ諸国にてUnder One Flag経由で発売されています。

1991年にデビューアルバム『BAD MOON RISING』をリリースしたのちに、ここ日本で初のライブツアーを実施したカル・スワン(Vo)&ダグ・アルドリッチ(G)。ツアーではアルバムレコーディング同様、チャック・ライト(B)&ケン・メリー(Dr)のHOUSE OF LORDS組が参加しましたが、続く今作でもほとんどの楽曲でチャック&ケンがリズムセクションをレコーディング。制作後期に元HURRICANE ALICEのイアン・メイヨー(B)とジャッキー・レイモス(Dr)が正式加入し、初めてパーマネントの4人バンド・BAD MOON RISINGが完成します(アルバムブックレットにはイアン&ジャッキーの姿も)。

プロデュースは前作同様、マック(QUEENEXTREMEBLACK SABBATHなど)が担当(カル&ダグも共同プロデューサーとしてクレジット)。レコーディングエンジニアとしてマックのほか、ジョー・バレシ(AVENGED SEVENFOLDQUEENS OF THE STONE AGEWEEZERなど)の名前も見つけることができます。基本的には前作の延長線上のあるスタイルなのですが、1作目をブリティッシュロック寄りとするなら、今作はよりアメリカナイズされた作風と言えるかもしれません。

適度に湿り気のあるブルージーなハードロックという点においてはまったく変化はないのですが、サウンドの質感が若干モノトーン寄りでダークさが増している。また、メジャーキーのアップチューンやミドルテンポのアンセミックな楽曲が良いアクセントとなっていた前作と比べると、今作は全編ミドル〜スロー中心で統一感が強い、そのぶん単調さが目立つ結果となっています。前作でのLION経由のヘアメタル〜正統派ハードロック路線から、時流に乗ってグランジ寄りのダーク&ヘヴィさが際立つスタイルへとシフト。これが従来のリスナーやファンには不評を買ったようです。

しかし、楽曲の出来はそこまで悪いものとは思えず、リリースから30年近く経った今、久しぶりに聴くと「意外と良いじゃない?」と思えるのです。リリース当時はあんなに落胆したのに。

で、何度か聴き返しているうちに気づきました。これ、曲とカル・スワンの声(歌唱スタイル)がマッチしていないんじゃないか?と。良く言えば味わい深い、悪く言えば抑揚があまりないカルのボーカルスタイルが、土着的なヘヴィロック路線に適していないような気がしてならないのです。もうちょっと派手な歌い手が歌唱したら、このメロディラインをうまく歌いこなせたのでは……今となっては後の祭りですが。

あと、やはりダグのリフメイカーとしての力量不足も目立ちますよね。こればかりは本当に仕方ないとはいえ……だからこそ、彼のようなギタリストには次作『OPIUM FOR THE MASSES』(1995年)のようなスタイルが適していた気がするのですが、それはまた別の機会に。

“ビッグ・イン・ジャパン”の名を欲しいままにし、海外ではまったく無名だった彼ら。残念ながら各種ストリーミングサービスでは配信されていないことから、今では中古CDショップで彼らの音源を手に入れるしかなさそうです(比較的安価で入手可能なので、この機会にぜひ)。

 


▼BAD MOON RISING『BLOOD』
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2020年9月15日 (火)

KITTIE『SPIT』(2000)

2000年1月にリリースされたKITTIEの1stフルアルバム。日本盤は同年7月に発売されました。

KITTIEは1996年にカナダ・オンタリオ州で結成された女性4人組ニューメタルバンド。メジャーのEpic Records傘下のArtemis Recordsと契約し、この『SPIT』というアルバムでメジャーデビューを果たしています。当時は平均年齢17歳というトピックと、女性ながらもKORNや同時期にシーンを席巻したSLIPKNOTに通ずるグルーヴメタルサウンドで注目を集め、アルバムは全米79位を記録(50万枚以上売り上げ)。『OZZFEST 2000』ではSOULFLYDISTURBEDらとともにセカンドステージに立ち、翌2001年には国内メタル系フェス『BEAST FEAST 2001』で初来日も果たしています。

ガース・リチャードソン(MUDVAYNERAGE AGAINST THE MACHINESICK OF IT ALLなど)をプロデューサーに迎えたそのサウンドは、まさに2000年前後のモダンメタル/ラウドシーンらしいゴリゴリかつグルーヴィーなもので、適度な浮遊感は初期KORNやCOAL CHAMBER、DEFTONES、SOULFLYあたりに通ずるものがあるような気がします。ただ、楽曲自体は今聴くとそこまで個性的というわけでもなく、上記バンドの亜流、もしくは影響下にあるもののまだオリジナリティを確立するまでには至っていないというところでしょうか。

しかし、そんなKITTIEの存在感を唯一無二のものにしているのは、女性ボーカルという点でしょう。クリーンパートでは線の細さが気になるものの、男性ボーカルにはない色気や妖しさ、華やかさは間違いなく大きな武器になっているし、この声で念仏調のラップボーカルやデスボイスなんてやられた日にゃ、最初こそ「おお、頑張ってるじゃん!」と生暖かい目で見守っているものの、何度か聴いているうちに「あれ……これ、カッコいいんじゃない?」と気づかされるはずです。

2020年の耳で聴くと、若干の古臭さは否めませんし、突出した個性はそこまで感じられない作品かもしれません。が、本作を当時17歳前後の女の子たちが魂削って作り上げたと考えただけで、オジさんは胸が熱くなるわけです(完全に親目線ですね、これ。苦笑)。まあ、そういう事実を抜きにしても、デカイ音で聴いたら意外とカッコいいんですよ、マジで。

あと、改めて聴くとニューメタルというよりはハードコアの色が強いのかな?という気がしてきました。どことなく初期RATMっぽい色合いも見え隠れしますし、90年代半ばのSEPULTURA的パーカッシヴさも含まれているし。10代の子たちがカッコいいと思ったものを全部詰め込んだミクスチャー感こそ、実は一番の初期衝動だったりするんですよね。そういう意味では2度と真似できない(したら怒られる)、奇跡の1枚なんじゃないでしょうか。

僕は当時、アルバムから入ったわけではなく、コンピ盤に収録されていた「Brackish」を聴いてハマったクチでして。そこから「Charlotte」のMVを観て「ああ、これはアリだわ」と気づき、慌ててアルバムに手を出したわけです。その頃にはもう、日本盤も出ていたんじゃないかな。よく足を運んでいたロック系クラブイベントでも彼女たちの曲が何度かかかっていましたし、当時局地的に盛り上がっていた記憶があります。

上に書いたように、女性ボーカルという点以外ではまだまだ未成熟ですが、続く2ndアルバム『ORACLE』(2001年)では「らしさ」を掴み始めているので、本作をチェックして気になった方はあわせて聴いてみることをオススメします(2作目も時間があったら取り上げようかな)。

 


▼KITTIE『SPIT』
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2020年9月14日 (月)

IHSAHN『PHAROS』(2020)

2020年9月11日にリリースされたイーサーンEMPEROR)の最新EP。

今年2月に発表された『TELEMARK』に続く、EP二部作の第2弾。前作はイーサーンが今も生活の拠点とするノルウェーの故郷・テレマルク(Telemark)をタイトルに冠し、自身のルーツであるブラックメタルの側面を強調させた内容に仕上げられていましたが、今作はその対極にあるソフトな側面……メロウなテイストを重視した作品集に仕上げられています。

全編でデス声を耳にすることができた前作から一変、今回は穏やかでメロディアスなボーカルを軸に、プログレッシヴロック的なテイストを強めた楽曲群が満載。およそヘヴィメタルからはかけ離れた、ジャジーでAOR的な香りもそこはかとなく感じられ、改めてイーサーンというミュージシャン/アーティストの懐の深さを体感することができるはずです。

個人的にグッときたのは、タイトルトラックのM-3「Pharos」。この曲ではクラシックからの影響を強く伝わってくるアレンジで、そこに大人びた味付けが散りばめられている、前作『TELEMARK』からは想像もできないような1曲。しかし、聴けばこれもイーサーンの色であることは明確で、いかに彼がソロ作品でメタルやプログレを基盤に、幅広いジャンルに挑んでいたかがこの1曲からご理解いただけるのではないでしょうか。

そんなクライマックスのあとには、今回もカバーが2曲用意されています。ひとつはPORTISHEADの「Roads」。90年代UKトリップホップの代名詞的バンドをここで取り上げるのも、なるほどと頷けるものがありますが、この曲がリリースされた当時ってイーサーンはEMPERORでの活動真っ只中だったはず。そう考えてみると、非常に面白いものがありますね。仕上がりも、しっかり原曲とイーサーン双方の「らしさ」が感じられるベストなものなので、原曲を知らない方はぜひ聴き比べてみるといいですよ。女性ボーカルをイーサーン流に解釈した歌唱法もたまらないです。

で、最後の1曲はa-haの「Manhattan Skyline」。そうきたか!と最初は驚きましたが、この曲ではイーサーンはリードボーカルではなく、代わりにLEPROUSのエイナル・スーベルグ(Vo, Key)が歌っているんです(イーサーンはサブでハモりなどを担当)。原曲に忠実なアレンジも好印象ですし、何よりも2人の美しく切ない歌声がぴったりなんです。このカバーを最初に聴いたとき、「ズルいわ……」と何度思ったことか。完璧な組み合わせによる、完璧な選曲。今年聴いたカバー曲の中でも突出した完成度だと思います。

『TELEMARK』と『PHAROS』、本来なら両作の収録曲をバランスよくミックスし、さらにその中間に位置する楽曲なんかも作ってトータル性の高いフルアルバムを作っていてもおかしくないのに、こうやって両極端に振り切った、タイプの異なる2作品を作ることに今回は重きを置いた。それにより、イーサーンの異端性がより際立ったわけですから、この実験は大成功だったと断言できます。特に、昨今サブスクを意識してあえてフルアルバムを作らないアーティストも増えていますし、こういう形で定期的に高品質の小作品を量産してくれるのなら、リスナーとしてもありがたい限りです。

ですが、イーサーン先生。今度はこの2枚をごちゃ混ぜにして、さらに訳のわからない異色作の完成を期待しています。だって、それをやれちゃう人なわけですからね。

 


▼IHSAHN『PHAROS』
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2020年9月13日 (日)

MARILYN MANSON『WE ARE CHAOS』(2020)

2020年9月11日にリリースされたMARILYN MANSONの11thアルバム。

デビュー時から在籍したInterscope Recordsを離れてからの3作(2012年の『BORN VILLAIN』、2015年の『THE PALE EMPEROR』2017年の『HEAVEN UPSIDE DOWN』)はどれも悪くないものの、往年の作品と比べると地味と言わざるを得ない内容でした。とはいえ、個人的には映画音楽を中心に手がけるタイラー・ベイツとタッグを組んだ直近2作のディープさは嫌いじゃなかったんですよね。でも、以前のように何度もリピートしたくなる作品でもなかった(前作はいい線いってたけど、数ヶ月で飽きてしまったし)。要は、MARILYN MANSONというバンド、そしてマリリン・マンソンというアーティストに何を求めるかで、近作の評価は大きく二分したのかもしれません。

で、前作『HEAVEN UPSIDE DOWN』から3年というスパンで届けられた本作は、新たなコラボレーターとしてシューター・ジェニングスを共同プロデューサーに迎えて制作した、心機一転の意欲作。シューターはカントリーやサザンロックを中心に手がけてきたアーティスト/プロデューサーですが、マンソンと彼はブライアン・イーノ期のデヴィッド・ボウイが好きという共通の趣味があり、そこで意気投合して2年前から本作に向けて準備を進めていたとのこと。楽曲制作およびレコーディングはコロナ禍に突入する前に終えており、内容的にはこの春以降の生活や環境は反映されていないようです。

さて、気になる内容ですが……リードトラック「We Are Chaos」がマンソンの諸作中もっともポップでキャッチーでわかりやすいという、異色の仕上がりだったので、おそらくそういう「わかりやすさ」に軸を置いた作品になるんだろうなと想像していたら、やはりそのとおりでした。オープニングの「Red Black And Blue」こそ従来のおどろおどろしさを残しているものの、全体的には先の「We Are Chaos」を中心にシンプルでわかりやすく、かつキャッチーな楽曲で占められています。とはいえ、そこはマンソンのこと、ヘヴィな音像やダークさはそのまま残されており、従来の「らしさ」は損なわれていません。むしろ、過去3作の延長線上にありながらキャッチーさだけを強めた、そんな印象すら受けます(ただ、地味さは過去イチですけどね)。

もはや90年代〜2000年代前半までのスタイルに戻ることはないようです。が、本作に限っては90年代の名作『MECHANICAL ANIMALS』(1998年)との共通点も至るところに見え隠れするんですよね。それが「イーノ期のボウイ」というキーワードでつながっているものなのかどうかはわかりませんが、あながち間違っていないような気もします。

あと、近作同様に本作もバンドの作品というよりはソロ色の強い作風かなと。特に日本盤ボーナストラックとして追加収録された「We Are Chaos」「Broken Needle」のアコースティックバージョンを聴くと、もはやマンソンはそれでいいような気がします。

願わくば、もう少し冒険的(というかアヴァンギャルド)なスタイルに挑戦してもらいたいところですが、昨年からのカントリー寄り/枯れたスタイルというのはもはや年齢的なものも大きいんでしょうか。ライブではあれだけバカやるんだから、音楽的にももうひと花咲かせてもらいたいんですが……なんて辛いことを言いながらも、本作はここ数作の中ではもっともリピートしそうな平均点以上、むしろ限りなく90点に近い高品質な1枚だと断言しておきたいと思います。初聴からこんなにリピートしたマンソンのアルバム、いつ以来だろう……。

 


▼MARILYN MANSON『WE ARE CHAOS』
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2020年9月12日 (土)

EN MINOR『WHEN THE COLD TRUTH HAS WORN ITS MISERABLE WELCOME OUT』(2020)

PANTERAのフィル・アンセルモ(Vo)が新たに立ち上げたプロジェクト、EN MINORが2020年9月4日にリリースした1stフルアルバム。

近年はSUPERJOINTのほかPHILIP H. ANSELMO & THE ILLIGALS、SCOURなど数々のプロジェクトで活動するフィル。ハードコアやエクストリームメタルを軸としたジャンルがベースになっていますが、このEN MINORはそれらとは一線を画するもので、フィルが80年代に影響を受けたゴシックロックを、自身ならではの形で踏襲したものとなっています。

つまり、攻撃的なシャウトやスクリームはゼロで、フィルはひたすら低音域でメロディを歌い上げる。演奏面でもディストーションのかかったギターリフやメタル的なテクニカル・ギターソロも皆無で、クリーントーンを中心に穏やかでムーディかつダークな世界観が展開されています。

メンバーにはフィルのほか、SUPERJOINTやTHE ILLIGALS、DOWNなどの一員でもあるスティーヴン・テイラー(G)やケヴィン・ボンド(G, B)、ジミー・バウワー(Dr)、THE DOVER BROTHERSのカルヴァン(Key)&ジョイナー(B)のドーヴァー兄弟、そしてスティーヴ・バーナル(Cello)という大所帯。チェリストを要する編成がこれまでのフィルの他のバンドとは異なり、彼がこのプロジェクトでどういった音を表現したいのかがここからも想像できるのではないでしょうか。

初めてEN MINORに触れる人にとっては、オープニングの「Mausoleums」でのスカスカな音像と絞り出すようなフィルの低音ボーカルにまず驚くことでしょう。このスタイルを事前に知らなかったら、きっとCDを間違えたと思うはずです(笑)。しかも、このスタイルは1曲のみではなく、2曲目も3曲目も続くわけですから。

しかし、アルバム中盤あたりから、ディストーションとまでいわないまでも、若干歪みのかかったギターフレーズが飛び出しはじめ、「This Is Not Your Day」前後の楽曲からはフィルのボーカルも少し肩の力が抜け、良い意味でレイドバックしたユルめの歌を楽しむことができます。このあたりになるとEN MINORの構築する世界観にも慣れ始め、ここで鳴らされている音やメロディが実はPANTERA時代にもほんの少しだけ表出していたことに気づくのではないでしょうか。

そうなんですよ、これは突発的なプロジェクトというわけではなく、過去のフィルが関わったバンドにも散りばめられていた要素のひとつでしかないわけです。そこを拡大させたのがこのアルバムなわけで、これもフィル・アンセルモという人間の個性だ……と、再確認できるわけですよ。まあパッと聴きでは、PANTERAやSUPERJOINTとは大きくかけ離れているので、なかなか気づかないかもしれませんが(むしろ、PANTERAにはこの色、随所から感じ取れるはずです)。

1990年代の、まだPANTERAに在籍していた頃のフィルがこれをやったら叩かれまくったでしょうけど、その後いろいろ炎上しまくって、もはや燃やす燃料すら見当たらない2020年の今だからこそ、正当評価されてほしい。と同時に80年代のゴシック、特にニック・ケイヴあたりが好きな人には届いてほしい良作です。

 


▼EN MINOR『WHEN THE COLD TRUTH HAS WORN ITS MISERABLE WELCOME OUT』
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2020年9月11日 (金)

CODE ORANGE『UNDER THE SKIN』(2020)

2020年9月4日に配信リリースされたCODE ORANGE初のライブアルバム。

今年3月に最新オリジナルアルバム『UNDERNEATH』(2020年)をリリースしたばかりの彼らですが、ご存知のとおり新型コロナウイルスの影響で本格的なライブ活動を行うことができず。しかし、リリースパーティをオンラインにて世界中に配信することで、予想以上の大勢のファンに観てもらうことができました。そのオンラインライブからヒントを得たのが、このアルバムに収録されたアコースティックライブでした。

このアコースティックライブ自体も、往年の『MTV Unplugged』をモチーフにしたもので、無観客ながらも彼らの楽曲をアコースティックベースでリアレンジされたものが、普段とはことなる編成で演奏されていきます。ハードコアバンドのアコースティックアレンジ、一体いかなるものなのか……。

全体を通して聴いて感じたのは、90年代前半から半ばにかけてグランジ勢が行なったアンプラグドライブを、今のCODE ORANGEらしいアレンジ&エフェクトでしっかり作品化されたものだなと。演奏されている楽曲は最新作『UNDERNEATH』と前作『FOREVER』(2017年)、その間に発表されたEPなどに収録された楽曲が中心となっており、楽曲が持つ空気やメロディの質感からは統一感が伝わってくるのではないでしょうか。この質感が非常にグランジ以降のオルタナティヴロックと共通するものがあるとわかり、改めてCODE ORANGEに対する理解が深まることでしょう。

それを強く実感させる要因として、ALICE IN CHAINSの代表曲のひとつ「Down In A Hole」(1992年の2ndアルバム『DIRT』収録)がカバーされている点が挙げられるでしょう。ALICE IN CHAIS版アンプラグドアルバムである『MTV UNPLUGGED』(1996年)で披露されたバージョンが元になったこの曲の世界観が、今作でCODE ORANGEが表現したかったそれと一致したこともあり、こういう貴重なテイクが世に送り出されることになったのならば、ファンとしてはうれしい限りです。

ボーカルに関してはジャミー・モーガン(Vo, Dr)よりもリーバ・マイヤーズ(Vo, G)が前面にフィーチャーされたことで、全体的に柔らかさや繊細さが強調された作風に。アコースティックギターをメインにしているものの、要所要所でデジタルエフェクトも施されており、このあたりに彼らなりのこだわりが感じられ、結果本作を“作品”たらしめているなど実感させられます。要するに、ライブアルバムとは言うものの、スタジオライブ音源を素材にした実験作という側面が強いのかなと。特にアルバムラスト「Under The Skin」「Hurt3」の流れはまさにその色がもっとも濃く表れた2曲で、そのリアレンジぶり含め本作の真骨頂と言えるのではないでしょうか。

『UNDER THE SKIN』を聴いてから改めて『UNDERNEATH』を聴き返すと、この2作は真の意味で表裏一体なんだなと気づかされます。コロナ禍がなかったら生まれなかったであろう本作ですが、このタイミングにCODE ORANGEをより深く理解する上で非常に重要な副読本だと断言できます。

 


▼CODE ORANGE『UNDER THE SKIN』
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2020年9月10日 (木)

YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』(2018)

2018年7月6日にリリースされたYUNGBLUDの1stアルバム。日本盤未発売。

YUNGBLUDはこの8月に23歳になったばかりの鬼才ドミニク・ハリソンによるプロジェクトで、“若き血”を意味するプロジェクト名のごとく血気盛んで反骨心にあふれる型破りなスタイルで、若年層を中心に支持を集めています。ヒップホップやダブステップ以降の(広意義での)ロックをベースにしたそのサウンドからは、POST MALONEやTHE 1975あたりとの共通点も見受けられ、この今ならではのミクスチャー感が強いテイストはポップフィールドでも十分に戦える仕上がりと言えるでしょう。

僕自身そこまで熱心リスナーというわけではありませんが、時折耳に飛び込んでくる楽曲の数々は40超えたオッサンの耳にも馴染みやすく、同時に刺激的なものでもあり、その流れでアルバムもチェックしていました。聴いて感じたのは、ケイティ・ペリーあたりが登場したときと同じような感触で、オルタナティブ感をしっかりアピールしながらもメインストリームでも受け入れられる、そんな「随所に大衆性の強いフックが仕掛けられた、オルタナティブ作品」だなと。

鳴らされている音そのものは、40代以上のリスナーが想像する“真っ当なロック”とは言い難いですし、ボーカルスタールもラップ以降のそれです。でも……例えばマシン・ガン・ケリー然り、先のPOST MALONEやTHE 1975しかり、実践していることの先鋭性は間違いなく“ロック”なんですよね。そういう概念的な“ロック”を忘れずに、2010年代的な音を提示してくれる。それが近年における“ロック”の解釈なのかもしれません。

あと、アルバム冒頭を飾る「Die For The Hype」を筆頭に、そのサウンドは“EDM以降”の低音の鳴りが特徴的で、可能な限り大音量で鳴らせば鳴らすほど、アルバムが持つ暴力性が増すというのも興味深いポイント。「Psychotic Kids」のようなドラムンベース調のミドルナンバーも、「I Love You, Will You Marry Me」のようなアップテンポのロックチューンも、「Kill Somebody」みたいなアコースティック主体の楽曲も、「21st Century Liability」みたいにラウド寄りのナンバーも、この“EDM以降”の質感で構築されているからこそアルバムの中でも浮くことなく統一感を持って楽しむことができる。このミクスチャー感、個人的には非常に好みでグッとくるものがあります。だからこそ、ホールジーやマシン・ガン・ケリー、マシュメロ、BRING ME THE HORIZONのような幅広いアーティストからラブコールを受けるんでしょうね。

このアルバムは1st EP『YUNGBLUD』(2018年)からの楽曲も含む、どちらかというと処女作といった1枚であり、以降に発表されているシングルなどを通じてドミニク・ハリソンの本性があらわになり、それが最初に爆発したのが昨年のEP『THE UNDERRATED YOUTH』かなと。なので、ヒップホップに苦手意識がある方はまず『THE UNDERRATED YOUTH』から聴いてみるといいかもしれません。6曲とコンパクトで、サウンド的なロック色もフルアルバム以上に濃いですしね。

 


▼YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』
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2020年9月 9日 (水)

BRING ME THE HORIZON『OBEY (with YUNGBLUD)』(2020)

2020年9月2日に配信リリースされたBRING ME THE HORIZONの新曲。

今年6月26日に配信された「Parasite Eve」に続く新曲は、若干23歳のUKロックアイコン、YUNGBLUD(ヤングブラッド)とのコラボレーションナンバー。BMTHとYUNGBLUDの組み合わせって、そりゃ悪くなるわけがない! 1ヶ月くらい前に2組のコラボを予感させるやりとりがSNS上で繰り広げられたときから「もしや……?」と思っていました。

いざヒップホップやダブステップ以降の(広意義での)ロックを鳴らすYUNGBLUDと、モダンメタル/ラウドロック以降の「メタルの枠をぶち壊す」今をときめく存在のBMTHがタッグを組むことが明らかになると、そりゃ過剰に興奮するわけでして。情報が解禁されてからずっと音源の到着を楽しみに待ち続けたわけです。

「Parasite Eve」は昨年のアルバム『amo』(2019年)以降のエレクトロニックミュージックをベースにした路線ながらも、若干ヘヴィさを復調させた路線でしたが、今回の「Obey」は『amo』というよりもそれ以前の『THAT'S THE SPIRT』(2015年)をさらにブラッシュアップ/ビルドアップさせた、メジャー感の強いモダンなヘヴィミュージック路線が打ち出されています。正直、YUNGBLUDと組むならもっとヒップホップ側に舵を切っても不思議じゃなかったものの、やはり近代のロックスター同士が組むのなら派手なサウンド&楽曲が似合いますものね。個人的にも、そしてパブリックイメージ的にも非常に納得の仕上がりではないでしょうか。

……と、ここまで読むとこの「Obey」は『THAT'S THE SPIRT』以前に後退したと受け取られそうですが、音像自体は『amo』以降の質感が保たれており、あくまで『amo』や続く大作EP『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(2019年)の延長から生まれたことは明白。つまり、これは後退ではなく「進化の過程で、いくつもある武器の中からひとつ選んだだけ」なのです。過去を捨てたり否定するのではなく、すべてを抱えて前進し続ける、それが今のBMTMではないでしょうか。

バンドは現在、今年から来年にかけて4作連続リリースを予定しているEP『POST HUMAN』シリーズを制作中とのこと。この「Obey」もその一環で完成したもので、レコーディングはゲームミュージック作曲家のミック・ゴードンらも加えて進行中のようです。ここまで期待を煽る新曲を定期的に届けられたら、『POST HUMAN』という新作にも無駄に期待が高まってしまいそうです。年末年始には第1弾が聴けるのかな……なんにせよ、今もっとも到着が楽しみな新作です。

 


▼BRING ME THE HORIZON『OBEY (with YUNGBLUD)』
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2020年9月 8日 (火)

STRYPER『EVEN THE DEVIL BELIEVES』(2020)

2020年9月4日にリリースされたSTRYPERの13thアルバム(1984年の『THE YELLOW AND BLACK ATTACK』含む。オリジナル作品としては11作目)。日本盤は海外に先駆け、9月2日に発売されました。

前作『GOD DAMN EVIL』(2018年)完成後にペリー・リチャードソン(B/ex. FIREHOUSE)が加入し、同作を携えた来日公演でもバンドの充実ぶりを提示したSTRYPER。昨年はマイケル・スウィート(Vo, G)がソロアルバム『TEN』(2019年)を発表しましたが、バンドとしても2年半という比較的短いスパンで新作を届けてくれました。

ペリー・リチャードソンがレコーディングに初参加した本作は、近年のアルバムの延長線上にあるストレートなHR/HMサウンドを軸に、ヘヴィさとメロディアスさをバランスよくミックスした彼らなりの“王道”感を重視した1枚に仕上がっています。マイケルのハイトーンも比較的伸びが良いですし、ロングトーンでは以前よりも歪みのかかったシャウトも織り交ぜ、ヘヴィさを強調させることに成功しています。このへんも、過去のSTRYPERやソロ作品と同様です。

楽曲に関しても、序盤に「Blood From Above」や「Let Him In」のようなアップチューンを配置しているものの、全体的に印象に残るのは「Do Unto Others」のようなミドルナンバー。特にこの「Do Unto Others」は往年の名曲にも通ずる良質なメロディアスさが際立つ1曲で、本作におけるキーポイントになるのではないでしょうか。

後半には本作唯一のバラードナンバー「This I Pray」や、アナログシンセの音色が懐かしさかつ新鮮さを味わせてくれる「Invitation Only」(こちらも良曲!)など、前半よりもポップ度が高まっており、硬質な印象が強い近作の中でも比較的80年代後半に寄ったテイストを楽しむことができます。しかし、そんな流れから最後は攻撃的なファストチューン「Middle Finger Messiah」で締めくくるあたり、今のSTRYPERの姿勢が伝わってきます。このタフさこそ2000年代のSTRYPERだ、と言ってしまえばそれまでですが、個人的にはポップ&キャッチーな80年代後半の路線も捨てがたいので、もうちょっとポップ度を色濃くしてくれてもいいのになあ……と思ってしまいます。まあ贅沢な悩みですけどね。

日本盤にはバラード「This I Pray」のアコースティックバージョン(ドラムトラックを抜き取ったテイク)を追加収録。オリジナルバージョンが4曲前とアルバムの配置的に間隔がそこまで空いていないので、どうしても2度聴かされている感は否めませんが、これはこれで良いバージョンなのでオマケとしてはアリかな。この曲でしっとり終わる日本盤と、「Middle Finger Messiah」で硬派に締めくくる海外盤、印象はだいぶ変わりますが、僕は前者も捨てがたいなと思いました。

特にここ数作は平均点以上の作品を量産し続けているSTRYPER。そういった作品に安心感を持って触れてきたリスナーには、今作も文句なしに楽しめるはずです。

 


▼STRYPER『EVEN THE DEVIL BELIEVES』
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2020年9月 7日 (月)

KING'S X『FAITH HOPE LOVE』(1990)

1990年10月下旬にリリースされたKING'S Xの3rdアルバム。日本盤は同年11月末に発売されました。

1988年に『OUT OF THE SILENT PLANET』でAtlantic Recordsからメジャーデビューを果たしたKING'S Xでしたが、日本デビューは次作『GRETCHEN GOES TO NEBRASKA』(1989年)から(『OUT OF THE SILENT PLANET』は1992年に日本盤化)。つまり、今作は日本2作目のアルバムにあたります。ちょうど前作で日本メディアでも取り上げられる機会がちょっと増えたこともあり、この『FAITH HOPE LOVE』が発売される頃には「ミュージシャンズ・ミュージシャン」だとか「70年代の本格派ロックを現代に蘇らせる期待のバンド」みたいな切り口でその名が広まり始めていた記憶があります(いわゆるヘアメタル流行に対するカウンターという意味で、こういう紹介をされていたのでしょうね)。

僕が初めて触れたKING'S Xの作品もこの『FAITH HOPE LOVE』でした。トリオ編成、プログレ的テクニカルさ、適度なハードロック感といった前情報からRUSHのようなサウンドを想像していましたが、半分は正解で半分は間違えだったのかなと聴いて実感しました。プログレハード感は確かに随所に散りばめられているものの、それよりも際立つのが後期ビートルズにも通ずるサイケポップ感。ストレートなようで随所にひねくれ感が散りばめられたハードロックサウンドに、美しいハーモニーがキラリと光るサイケデリア、そして一度聴いたら耳から離れないキャッチーなメロディ、本作の武器はこれだなと。

時にハード&ヘヴィ、時に甘美、時に浮遊感の強いサイケにと緩急をつけながら進む本作には、ダグ・ピニック(Vo, B)のほかにタイ・テイバー(G, Vo)、ジェリー・ガスキル(Dr, Vo)がリードボーカルを務める楽曲も多く含まれており、それらの要素が全13曲/約62分という長尺な内容を飽きさせないものにしています。曲によってはタイトルトラック「Faith Hope Love」のように9分半にもおよぶ大作も用意されていますが、不思議と飽きることなく楽しめるんですよね。むしろ、10代だったリリース時に聴いたときよりも、だいぶ歳をとった今のほうが腰を据えて楽しめる、そんな奥深さを持つ1枚だと断言できます。

あと、このバンドが非常に興味深いのはクリスチャンバンドだということ。当時、HR/HM系でクリスチャンバンドというと(良くも悪くも)STRYPERのイメージが強かったですが、KING'S Xはそのイメージを前面に打ち出していなかったことも偏見なく触れられた大きな要因だったのかな。まあ『FAITH HOPE LOVE』というタイトルも、今思えば「なるほどな」と納得なんですけどね。まあ、このへんは蛇足ですけどね(特に我々のような人種にとっては)。

初期ENUFF Z'NUFF『ENUFF Z'NUFF』(1989年)『STRENGTH』(1991年)EXTREMEの3rdアルバム『III SIDES TO EVERY STORY』(1992年)あたりを好むリスナーには、ぜひ一度触れてもらいたいバンドであり、そのとっかかりに最適な1枚かと思います。

 


▼KING'S X『FAITH HOPE LOVE』
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2020年9月 6日 (日)

U.D.O. & Das Musikkorps der Bundeswehr『WE ARE ONE』(2020)

2020年7月17日にリリースされたU.D.O.の17thアルバム(でいいのかな?)。日本盤は同年7月22日に発売されています。

前作『STEELFACTORY』(2018年)からほぼ2年ぶりに発表された本作は、通常のオリジナルアルバムとは趣向の異なる内容。アルバム全編にわたりドイツ連邦軍軍楽隊(Das Musikkorps der Bundeswehr)とのコラボレーションが展開されており、曲作りとアレンジをバンドと軍楽隊のクリストフ・シャイブリング中佐が担当し、さらにACCEPT時代の盟友ピーター・バルテスと、ACCEPTのみならずU.D.O.でも活動をともにしたステファン・カウフマン、ドイツ軍の作曲家たちも作曲に参加した、企画色が強く豪華な作りなのです。

ミディアムテンポ中心の曲作りは従来のU.D.O.らしいものですが、そこに軍楽隊の演奏が加わることで、楽曲の持つドラマチックさがより強調され、さらにへヴィメタルの重厚感と管楽器やストリングスなどの生楽器の繊細さの融合から生まれる躍動感に胸を打たれる。オーケストラとメタルの融合というと、最近ではMETALLICA『S&M2』(2020年)が思い出されますが、それとも違ったテイスト……オーケストラ曲としても成立する構造を持つ楽曲の数々に、新たな可能性を感じずにはいられません。

そのドラマチックさを強調するために、またU.D.O.らしい(いや、ある意味ACCEPTらしい?)シンガロングのパートにはバンドメンバーのみならず女性コーラスまで加えられている。さらには、「Blindfold (The Last Defender)」のように女性ボーカルがリードを取ることもあるし、「Neon Diamond」みたいにウド・ダークシュナイダー(Vo)とデュエットすることもある。こういう柔軟さ、繊細さが加わることで、ただ男臭さ一辺倒だった従来のスタイルに幅を持たせることにも成功しています。

楽曲の内容的には気候変動や環境汚染、さらには難民問題など近年のドイツ、さらには世界各国で直面している社会問題を扱ったものばかり。中には東西ドイツ統一から30年を祝う「Rebel Town」のような楽曲も用意されており、そういった面からもこのコラボレーションが意味することが伝わるし、さらに「伝えたいこと」をわかりやすい形、伝わりやすい形にすることでより幅広い層に届けようという強い意思も感じられます。

全15曲で約75分という、アナログ盤だったら2枚組確実の大作ですが、2組のコラボレーションからこれだけたくさんのメッセージ/曲が生まれたという点においては素晴らしさを感じずにはいられません。すべてが歌モノではなく、「Blackout」のようなドラマチックなインストナンバーも用意されているので、意外と最後まで楽しみながら聴けてしまうのではないでしょうか。1日に何度もリピートするような気軽さを持った作風ではありませんが、じっくり腰を据えて向き合いたい力作であり、ウド・ダークシュナイダーのACCEPT〜U.D.O.の集大成とだと力説したいと思います。

 


▼U.D.O. & Das Musikkorps der Bundeswehr『WE ARE ONE』
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2020年9月 5日 (土)

ACCEPT『RESTLESS AND WILD』(1982)

1982年10月にリリースされたACCEPTの4thアルバム。本国ドイツやヨーロッパ諸国での発売から遅れて1983年には、アメリカや日本でも発売されています。

前作『BREAKER』(1981年)で“突き抜ける”一歩手前まで到達したACCEPTが、本作によりついに“突破”。ワールドワイドな人気を獲得する足がかりとなる成功を収めることになります。実際、本作はイギリスで初のTOP100入り(最高98位)、スウェーデンで最高7位という数字を残し、本国より先に小ブレイクを果たすわけです。

まあ、その理由もアルバムを聴けばよくわかりますよね。オープニングの「Fast As A Shark」のカッコよさといったら、何ものにも変えがたいものがありますし。冒頭、いきなり牧歌的なドイツ民謡が始まり「あれ、レコード(もしくはCD)間違えた?」と思わせておいて、レコードを止めるスクラッチ音とウド・ダークシュナイダー(Vo)の金属的なシャウト、スピード感のあるメタルサウンドへとなだれ込む。最高のオープニングじゃないですか。曲自体も最高のシンガロングパート(サビ)があり、ギターソロもツインリード含め非常にわかりやすいフレーズ満載。これにハマれなかったら、あなたにはへヴィメタルは向いていません!と断言できるくらい、王道中の王道。リリースから38年(!)経った今聴いても、その魅力はまったく色褪せていません。

続くタイトルトラック「Restless And Wild」の重量感と男臭さといい、「Neon Nights」の男泣き感、「Flash Rockin' Man」のロックンロールテイスト、エンディングでのロシア民謡を彷彿とさせるシンガロングが魅力の「Princess Of The Dawn」における最後のブツ切り(ここは賛否分かれますが、「Fast As A Shark」でのオープニングを考えれば、まあ納得の構成かな。でも、できればスタジオ版フルバージョンも聴いてみたい!)。すべてが名曲とは言い難いものの、全体を通して聴いたときに平均点以上の仕上がりと感じられる内容ではないでしょうか。

そういう意味では、ワールドワイドなメジャーバンドへと駆け上がる前に見せる、最後のB級感満載の1枚と受け取ることもできるかな。もちろんこれは良い意味でのB級感ですが。彼らはここから、続く『BALLS TO THE WALL』(1983年)で初の本国TOP100入り(最高59位)を果たしただけでなく、全米74位(ゴールドディスク獲得)という成功を収めることになります。

僕が本作に初めて触れたのは、アナログからCDに移行した1990年。すでにバンドが解散してからでした。『METAL HEART』(1985年)以降はリアルタイムで聴いていたものの、なかなか手が伸びずにいた本作、もっと早くに聴いておけばよかったと何度思ったことか(田舎のレンタル店にレコードもCDも置いてなかったから仕方ないんだけど)。今はこうやってストリーミングで手軽に楽しめるなんて、本当にいい時代になりましたね(遠い目)。

 


▼ACCEPT『RESTLESS AND WILD』
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2020年9月 4日 (金)

HELL FREEZES OVER『Hellraiser』(2020)

2020年8月26日にリリースされたHELL FREEZES OVERの1stアルバム。

HELL FREEZES OVERは2010年代前半に結成された日本の5人組へヴィメタルバンド。僕が知ったのは前作にあたる1st EP『Speed Metal Assault』(2018年)リリース時で、購入してからしばらくして『RED BULL MUSIC FESTIVAL』の一環で開催されたメタルイベント『METAL MANIA』で初めてライブを観てノックアウトされたのでした。

そもそも、2010年代後半にこの音……1980年代初頭を彷彿とさせるピュアメタルがどう評価されるんだろう? 時代錯誤では? とEPを聴いたとき、一瞬だけ脳裏をかすめたのですが、そんな心配は余計なお世話でした。カッコければオールオッケー。説得力とか深みとかそんな難しいことを凌駕するパワー、これを前にしたら何も言えなくなるというか、全身の血液が逆流して脳天からピューっと吹き出しそうになるわけです。

そんな強烈なインパクトを残したファーストコンタクトから早2年。待望の1stフルアルバムの完成です。本作についてはすでに発売中のムック『ヘドバン』最新号にてレビューを書かせていただいており、そのおかげで一足先にアルバムを聴かせていただいておりました。で……そこからずーっとヘビロテ中。家で無心になりたいとき、移動中(コロナ感染を気にしながら)悶々としているとき、いつでも僕はこのアルバムを爆音で再生し続けています。

オールアナログ録音とかバッキングはすべて一発録りとか特筆すべきトピックはいろいろあるけど、まずはそういう細かいことを気にせずに、できるだけ大音量でひととおり聴いてもらいたい。同時代に活躍する同世代のバンドたちと比べものにならない、いや、比べようがないほどの熱量と、聴く者を良い意味でアッパラパーにさせてくれる躍動感と焦燥感は、現存するへヴィメタルバンドでは唯一無二ではないでしょうか。

適度な完成度の高さと、まだまだ伸び代が感じられる未完成な部分が程よいバランスで共存するこの感覚は、まさに1stアルバムでなければ出せないものであり、これを聴いていると……今から40年近く前に、MOTÖRHEAD『ACE OF SPADES』IRON MAIDEN1stアルバム(ともに1980年)、ACCEPT『RESTLESS AND WILD』(1982年)METALLICA『KILL 'EM ALL』(1983年)が発売された当時、これらの作品に初めて触れたメタルヘッズはこんな気持ちだったのかな?なんて想像してしまうんです。それくらいの名盤であり、最高の1stアルバムだと思います。

だからですね、こんな駄文を読む前に、まずは聴いて!

 


▼HELL FREEZES OVER『Hellraiser』
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2020年9月 3日 (木)

ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』(2016)

2016年4月にリリースされたエース・フレーリーのカバーアルバム。スタジオ作品としては通算7作目のソロアルバムとなります。

本作はエースに多大な影響を与えてきたアーティストたち(CREAMTHE ROLLING STONESジミ・ヘンドリクスFREETHIN LIZZYLED ZEPPELIN、THE TROGGS、STEPPENWOLF、THE KINKSと無難なセレクト)の名曲に加え、KISS時代の楽曲も3曲収録。自身が作詞作曲した「Parasite」および「Cold Gin」(ともにジーン・シモンズVo曲)はわかりますが、彼がレコーディングにほぼ関わっていない『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から「Rock And Roll Hell」(ジーン、ブライアン・アダムス、ジム・ヴァランス作)をセレクトしているのには思わず「?」となってしまいました(苦笑)。

全12曲中11曲でエースがリードボーカルを担当しており、「White Room」と「Bring It On Home」ではドラマーのスコット・クーガン(L.A. GUNS、ex. BRIDES OF DESTRUCTIONなど)がコ・リードボーカルを披露しています。エースのボーカルは今さら述べるまでもなく(笑)、味わい深いヘタウマぶりで、もはや安定感すら漂っています。うん、もうこれはこれでアリだし、これじゃなきゃいかんわな。

で、本作の注目点はもうひとつ、多彩なゲスト陣が挙げられると思うのです。先に述べたボーカル曲のうち、エースが歌っていない「Fire And Water」ではKISS時代の盟友ポール・スタンレーが参加。なにやら最初はジーンに声をかけたんだけどスルーされ(笑)、続いてポールに声をかけたらOKをもらえたんだとか。かわいそうだけど(苦笑)、結果いいコラボレーションが楽しめたので良しとしましょう(その後、ジーンは次作『SPACEMAN』にソングライティング&ベースで1曲参加しているので、めでたしめでたし)。

このほかにもスラッシュGUNS N' ROSES)が「Emerald」でエースとツインリードを披露し、リタ・フォードは「Wild Thing」でツインボーカル&リードギター、ジョン・5(ROB ZOMBIE)は「Spanish Castle Magic」と「Parasite」でリードギター、マイク・マクレディ(PEARL JAM)は「Cold Gin」でギターソロを聴かせてくれます。「Emerald」は意外とエースのボーカルがハマっているのと、スラッシュが良い仕事をしてくれていることで、個人的にもベストテイクかな。KISSナンバーの数々はさすがにボーカル含め小慣れた感強し(笑)。そんな中で、やはり「Rock And Roll Hell」だけはジーンのクセの強さが脳裏に焼き付いているので、ちょっとした違和感が。でも、慣れると悪くないですよ(実はギターソロがなかなかエースらしさ満載で、良テイクではないかと)。

今年9月にはカバー集第2弾『ORIGINS VOL.2』のリリースも控えており、すでに「Space Truckin'」(DEEP PURPLE)が公開中。こちらも楽しみにしております。

 


▼ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』
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2020年9月 2日 (水)

LYNCH MOB『WICKED SENSATION REIMAGINED』(2020)

2020年8月28日にリリースされたLYNCH MOBの9thスタジオアルバム。日本盤は海外に先駆けて8月26日に発売されました。

本作は同バンドのデビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)リリース30周年を記念して、ジョージ・リンチ(G)、オニィ・ローガン(Vo)という当時のメンバーがブライアン・ティッシー(Dr)、ロビー・クレイン(B)という現リズム隊とともに『WICKED SENSATION』を再解釈・再録音した1枚。当時の全12曲がオリジナル盤どおりの曲順で収録されているのですが、今のジョージらしいレイドバックしたギタープレイや、30年前は新人だったオニィの貫禄ある今の歌声がフィーチャーされた、“同じアルバムなのに新感覚で楽しめる”内容に仕上がっています。

30年前のLYNCH MOBはDOKKENから離れたジョージが盟友ミック・ブラウン(Dr)とともに「本当はこういうことをDOKKENでやりたかったんだけど、ボーカルが使えなさすぎてできなかったんだよ!」というくらい派手でヘヴィなサウンドが前面に打ち出されていて、それに応えようとオニィもハイトーンでただひたすらがなっているような印象でした(だが、それが良かったですが)。が、30年経った今のLYNCH MOBの印象は“大人”。オープニングを飾る「Wicked Sensation」なんてギターの歪みが薄れてカッティング重視のプレイに移行したこと、ルーズなリズムや中音域で歌うボーカルと相まって、ファンキーなラテンロックの香りすら感じられる。原曲のイメージが強すぎるためか、最初こそ違和感が否めませんが、何度か聴き込んでいくうちに慣れてきて、「これはこれでいいじゃない」と納得できるんだから不思議なものです。

続く「River Of Love」もグッとテンポを落として、アダルトな雰囲気を醸し出す。まさに大人のハードロックといった印象。全編そんな感じでリテイクしているのかと思えば、もともとミディアムテンポだった「Hell Child」は疾走感あふれるファストチューンへと生まれ変わっていて、原曲よりさらにカッコよくなっている。「Dance Of The Dogs」は原曲と同じテンポ感、同じ雰囲気ですが、確実に前のバージョンよりも良くなっているから、本当に不思議です。

個人的には「No Bed Of Roses」がシャッフルビートで再構築されているのがお気に入り。原曲はパワーバラード風だった「Through These Eyes」も、今作ではアコギ1本をバックに歌うシンプルなアレンジに生まれ変わっていますし。音圧的にも楽曲の作風的にも全体のトーンが統一されていたオリジナル盤と比べて、リメイク盤は多彩さに満ち溢れた作りになっているあたりに、バンドとしての成長を大いに感じます。

唯一文句をつけるとしたら、ラストの「Street Fightin' Man」。DOKKEN時代の名インストナンバー「Mr. Scary」をモチーフにしたこの曲だけでも、リフ含めジョージの豪快なパワープレイを味わいたかったなあ。まあ、ここで聴けるカッティングワークも嫌いじゃないですけどね。

原点にして集大成のような本作。実は、LYNCH MOB名義での制作はこれが最後になるとのことで(理由は昨今問題視されている差別的なワードを使ったバンド名。LYNCH MOBはジョージの周りに集まる仲間たちという意味でしたが、「公開処刑に集まる群衆」と捉えることもできる)、メンバーは変わらず新しい名前で活動を継続していくようです。残念ですが、これだけ聴きごたえのあるリメイクアルバムが作れるんだから、ジョージの今後に対しては特に不安視していません。このメンツでのオリジナル作品にも期待しています!

 


▼LYNCH MOB『WICKED SENSATION REIMAGINED』
(amazon:国内盤CD / MP3

 

2020年9月 1日 (火)

2020年7月のアクセスランキング

ここでは2020年7月1日から7月31日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2020年6月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:BRING ME THE HORIZON『Music to listen (中略) to-GO TO』(2019)(※2019年12月31日更新/↑2位)

2位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/↑3位)

3位:2020年上半期総括(ベストアルバム10)(※2020年7月3日更新/NEW!)

4位:WHITESNAKE『WHITESNAKE (1987)』(1987)(※2017年2月3日更新/Re)

5位:IRON MAIDEN『NO PRAYER FO THE DYING』(1990)(※2020年7月2日更新/NEW!)

6位:追悼:足立“YOU”祐二 〜DEAD ENDディスコグラフィー①〜(※2020年6月21日更新/↓1位)

7位:ENUFF Z'NUFF『BRAINWASHED GENERATION』(2020)(※2020年7月28日更新/NEW!)

8位:ORANSSI PAZUZU『Mestarin kynsi』(2020)(※2020年7月3日更新/NEW!)

9位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新/←→)

10位:STATIC-X『PROJECT REGENERATION VOL.1』(2020)(※2020年7月12日更新/NEW!)

 

11位:COVET『TECHNICOLOR』(2020)(※2020年7月8日更新/NEW!)

12位:HELLOWEEN『CHAMELEON』(1993)(※2020年7月21日更新/NEW!)

13位:NINE INCH NAILS『YEAR ZERO』(2007)(※2020年7月19日更新/NEW!)

14位:NINE INCH NAILS『THE FRAGILE』(1999)(※2019年1月25日更新/Re)

15位:THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』(2000)(※2020年7月27日更新/NEW!)

16位:×ジャパリ団『×・×・×』(2020)(※2020年7月20日更新/NEW!)

17位:追悼:足立“YOU”祐二 〜DEAD ENDディスコグラフィー②〜(※2020年6月24日更新/↑26位)

18位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新更新/↓7位)

19位:「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 1@苗場スキー場(2001年7月27日)(※2001年8月8日更新/Re)

20位:BPMD『AMERICAN MADE』(2020)(※2020年7月4日更新/NEW!)

 

21位:IRON MAIDEN『THE FINAL FRONTIER』(2010)(※2020年7月1日更新/NEW!)

22位:INTER ARMA『GARBERS DAYS REVISITED』(2020)(※2020年7月18日更新/NEW!)

23位:KIKO LOUREIRO『OPEN SOURCE』(2020)(※2020年7月22日更新/NEW!)

24位:THE GHOST INSIDE『THE GHOST INSIDE』(2020)(※2020年7月7日更新/NEW!)

25位:SOUNDGARDEN『KING ANIMAL』(2012)(※2020年7月29日更新/NEW!)

26位:VENOM PRISON『SAMSARA』(2019)(※2020年7月5日更新/NEW!)

27位:STONE SOUR『AUDIO SECRECY』(2010)(※2020年7月17日更新/NEW!)

28位:Boris『NO』(2020)(※2020年7月16日更新/NEW!)

29位:TRIVIUM GLOBAL LIVESTREAM(2020年7月10日)(※2020年7月13日更新/NEW!)

30位:TRIVIUM『VENGEANCE FALLS』(2013)(※2020年7月15日更新/NEW!)

 

7月は30エントリー中、21エントリーが7月更新分にあたり、そのうち10エントリーが新作レビューでした。更新した記事がしっかり読まれていることがわかり、今後のモチベーションにもつながりました。どうもありがとうございます。

このご時世、ライブレポート的なものが一切更新できない中で、ライブストリーミング配信のレポートというのを試験的に掲載してみました(29位にランクインした、7月10日実施のTRIVIUMのライブ)。有料配信かつリアルタイム配信後も視聴できるコンテンツのレポートをどう扱うかは、今後さまざまな配慮が必要になってくると思いますが、全体に触れるのではなくて大まかな雰囲気が伝わる形ならアリなのかな、なんて考えています。となると、セットリストの掲載にも注意が必要になりますよね。そこも含めて、今後注目すべきライブ配信がありましたらいろいろ考えていこうと思います。

DOKKEN『THE LOST SONGS: 1978-1981』(2020)

2020年8月28日リリースの、DOKKEN通算12作目のスタジオアルバム(ということでいいのかな?)。日本盤は海外に2日先行で発売されました。

本作はオリジナルアルバムというよりも、初期のデモテープや未発表音源、アナログのみでリリースされた初期音源、さらには当時の未発表曲を現メンバーでレコーディングした新録音源を含む、コンピレーションアルバム的な内容となっています。なので、録音時期もまちまちで、アルバムタイトルにある「1978-1981」の4年間に録音されたものが中心ということになるのでしょうか。また、レコーディング参加メンバーも非常に多くのメンツが参加したことになり、皆さんご存知のクラシック・ラインナップ……ドン・ドッケン(Vo)、ジョージ・リンチ(G)、ジェフ・ピルソン(B)、ミック・ブラウン(Dr)による音源も少なからず含まれています。

全11曲(日本盤はボーナストラック含む全12曲)中、5曲(「We're Going Wrong」「Felony」「Back In The Streets」「Liar」「Prisoner」)は過去にバンド非公式でリリースされたEP『BACK IN THE STREETS』(1989年)に収録されていたものと同一で、本作収録に際して音圧が若干増したかなという印象。どれも荒削りで、その後の1stアルバム『BREAKING THE CHAINS』(1981/1983年)への布石は……若干感じるかな、といった程度です。ちなみにこちら、当時のソングライティング・クレジットにはジョージ・リンチの名前が入っていますが、実際にはジョージ加入前に録音されたもの。ギタープレイもジョージっぽくはないかな。

ほかの曲もデモの延長という完成度/音質で、青臭さといなたさが強くにじみ出たB級感満載のものばかり。そんな中、「Rainbow」のようにジョージの“らしい”ギターソロが楽しめる曲があったり、メジャーデビュー以降のDOKKENを彷彿とさせる「Hit And Run」のような“みっけもの”も含まれている。全てに対してOKを出せるような代物ではありませんが、DOKKENをひととおり通過しているリスナーなら楽しみ方を見いだせる1枚かもしれません。

で、本作からのリードトラックとして先行公開された「Step Into The Light」と「No Answer」。この2曲だけ音質も録音もしっかりしているんですよね。かつ、ドンのボーカルがほかの楽曲と“違う”(笑)。要は高音がまったく出ていない、低〜中音域メインの節回しなわけです。この2曲のみ、新たにレコーディングしたか、ここ数年の間にレコーディングしておいたものなのでしょう。「No Answer」はちょっとダークさの目立つ作風で、90年代半ばのDOKKENぽくもあるかな。一方で「Step Into The Light」は爽やかでストレート、あまりひっかかりのない1曲……もうちょっとほかに選べなかったんでしょうか。正直、これだったら日本盤ボーナストラックの「Going Under」のほうが楽曲としての出来が良いんじゃないかしら。

かなり厳しめの感想を書きましたが、今このタイミングに本作をリリースする意味がわからないんです。すっげえ悪い見方をすると、単純にお金目当てだったとか……考えたくないですけどね、そんなこと。

同じタイミングに、ジョージもLYNCH MOBのデビュー作『WICKED SENSATION』(1990年)のリメイクアルバムを制作・発表しているけど、そっちのほうがまだ現在進行形のバンドの形が感じられて、好意的に受け取れたんだけどなあ。まあ、一時代本気で愛したバンドなだけに、なんとも寂しい限りです。

 


▼DOKKEN『THE LOST SONGS: 1978-1981』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

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