LYNCH MOB『WICKED SENSATION REIMAGINED』(2020)
2020年8月28日にリリースされたLYNCH MOBの9thスタジオアルバム。日本盤は海外に先駆けて8月26日に発売されました。
本作は同バンドのデビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)リリース30周年を記念して、ジョージ・リンチ(G)、オニィ・ローガン(Vo)という当時のメンバーがブライアン・ティッシー(Dr)、ロビー・クレイン(B)という現リズム隊とともに『WICKED SENSATION』を再解釈・再録音した1枚。当時の全12曲がオリジナル盤どおりの曲順で収録されているのですが、今のジョージらしいレイドバックしたギタープレイや、30年前は新人だったオニィの貫禄ある今の歌声がフィーチャーされた、“同じアルバムなのに新感覚で楽しめる”内容に仕上がっています。
30年前のLYNCH MOBはDOKKENから離れたジョージが盟友ミック・ブラウン(Dr)とともに「本当はこういうことをDOKKENでやりたかったんだけど、ボーカルが使えなさすぎてできなかったんだよ!」というくらい派手でヘヴィなサウンドが前面に打ち出されていて、それに応えようとオニィもハイトーンでただひたすらがなっているような印象でした(だが、それが良かったですが)。が、30年経った今のLYNCH MOBの印象は“大人”。オープニングを飾る「Wicked Sensation」なんてギターの歪みが薄れてカッティング重視のプレイに移行したこと、ルーズなリズムや中音域で歌うボーカルと相まって、ファンキーなラテンロックの香りすら感じられる。原曲のイメージが強すぎるためか、最初こそ違和感が否めませんが、何度か聴き込んでいくうちに慣れてきて、「これはこれでいいじゃない」と納得できるんだから不思議なものです。
続く「River Of Love」もグッとテンポを落として、アダルトな雰囲気を醸し出す。まさに大人のハードロックといった印象。全編そんな感じでリテイクしているのかと思えば、もともとミディアムテンポだった「Hell Child」は疾走感あふれるファストチューンへと生まれ変わっていて、原曲よりさらにカッコよくなっている。「Dance Of The Dogs」は原曲と同じテンポ感、同じ雰囲気ですが、確実に前のバージョンよりも良くなっているから、本当に不思議です。
個人的には「No Bed Of Roses」がシャッフルビートで再構築されているのがお気に入り。原曲はパワーバラード風だった「Through These Eyes」も、今作ではアコギ1本をバックに歌うシンプルなアレンジに生まれ変わっていますし。音圧的にも楽曲の作風的にも全体のトーンが統一されていたオリジナル盤と比べて、リメイク盤は多彩さに満ち溢れた作りになっているあたりに、バンドとしての成長を大いに感じます。
唯一文句をつけるとしたら、ラストの「Street Fightin' Man」。DOKKEN時代の名インストナンバー「Mr. Scary」をモチーフにしたこの曲だけでも、リフ含めジョージの豪快なパワープレイを味わいたかったなあ。まあ、ここで聴けるカッティングワークも嫌いじゃないですけどね。
原点にして集大成のような本作。実は、LYNCH MOB名義での制作はこれが最後になるとのことで(理由は昨今問題視されている差別的なワードを使ったバンド名。LYNCH MOBはジョージの周りに集まる仲間たちという意味でしたが、「公開処刑に集まる群衆」と捉えることもできる)、メンバーは変わらず新しい名前で活動を継続していくようです。残念ですが、これだけ聴きごたえのあるリメイクアルバムが作れるんだから、ジョージの今後に対しては特に不安視していません。このメンツでのオリジナル作品にも期待しています!
▼LYNCH MOB『WICKED SENSATION REIMAGINED』
(amazon:国内盤CD / MP3)
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