BLACK SABBATH『TECHNICAL ECSTASY』(1976)
1976年9月に発売されたBLACK SABBATHの7thアルバム。
前々作『SABBATH BLOODY SABBATH』(1973年)を経て、前作『SABOTAGE』(1975年)にて初期のスタイルからの脱却および転換期を迎えたBLACK SABBATH。音楽シーン的にはパンクやニューウェイヴなど新しいムーブメントがアンダーグラウンドで沸々と盛り上がり始めていたタイミングであり、サバスのようなバンドはオールドウェイヴ扱いされ出していた時期でもあります。
そんな中、バンドは『SABOTAGE』でうっすら見せていたプログレ路線やシンセを前面に打ち出したニューウェイヴ路線をさらに強め始めます。本作ではジェラルド・ウッドラフをキーボーディストとして前面的にフィーチャー。さらに、アートワークではPINK FLOYDやLED ZEPPELINなどでおなじみのヒプノシスを迎え、それまでのおどろおどろしいイメージを払拭する施策に取り組みます。
オープニングを飾る「Back Street Kids」のニューウェイヴ風味を散りばめた豪快なハードロック、続く「You Won't Change Me」でのプログレタッチなハードロックは、前作での作風をさらに強調したもので、一瞬ギョッとされられるものの、今の耳で聴けば全然「あり」。ただ、BLACK SABBATHのイメージで接すると若干に違和感は否めません。当時はそれこそ、オジー・オズボーン(Vo)がこういう曲を歌うことに対してメタルファンは拒否反応を示したのでしょうか。今やメタルシンガーとしてもポップシンガーとしても受け入られているオジーですから、リリースから44年経った2020年なら普通に楽しめる楽曲群だと思います。
また、本作にはビル・ワード(Dr)がまるまる1曲歌う「It's Alright」も収録。ピアノを軸にしたバラードで、トニー・アイオミ(G)のアコースティックギターも良い味を出しています。この曲は90年代初頭、アクセル・ローズがGUNS N' ROSESのライブで「November Rain」を歌う前にピアノで弾き語りしていたことでおなじみですよね(ライブアルバム『LIVE ERA '87〜'93』にも収録されています)。さらに、ドラマチックな作風の「Gypsy」はのちのオジーソロ(特に90年代の『NO MORE TEARS』以降)にも通ずるテイストがあり、それも踏まえて今の耳では当たり前のように受け入られるはずです。
後半に入ると、若干ソウルやブルースのフィーリングが復調しているものの味付けは本作のテイストという「All Moving Parts (Stand Still)」(中盤での展開がサバスらしいような、らしくないような)、のちのオジーソロにもつながるような軽快なアメリカンロック「Rock 'N' Roll Doctor」、ストリングスを大々的にフィーチャーした、オジー『DIARY OF A MADMAN』(1981年)の世界観に通ずるバラード「She's Gone」、そしてプログレッシヴな展開&アレンジがサバスの未来(ロニー・ジェイムズ・ディオ加入後)を髣髴とさせる「Dirty Women」と、前半以上に粒ぞろいな楽曲がずらりと並びます。全体的にポップ色が強まっており、そういった意味ではソロに移行してからのオジーの習作と言えなくもないかな。
本作リリース後にはオジーがバンドを一時脱退するハプニングもありましたが、1978年にはもう1枚『NEVER SAY DIE!』も制作しています。サバスとしては本作と次作『NEVER SAY DIE!』はディオ加入後にあまりつながらなかったかもしれませんが、オジー自身にとってはソロへ移行する上での良きレッスンになったようです。そういった耳で触れると、非常に聴きどころの多い“隠れた名盤”かもしれません。
▼BLACK SABBATH『TECHNICAL ECSTASY』
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