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2020年10月17日 (土)

RUSH『PERMANENT WAVES』(1980)

1980年1月14日に海外でリリースされたRUSHの7thアルバム。

初期のハードロック路線から『2112』(1976年)、『A FAREWELL TO KINGS』(1977年)で大作主義/プログレ路線へと移行して自身の個性を確立し始めたRUSHでしたが、ことアメリカでは『A FAREWELL TO KINGS』の33位が最高で、シングルにいたっては「Closer To The Heart」の76位が最高。レコード会社的にも「ラジオで流しやすい適度な長さの、キャッチーな楽曲」を欲しがったことでしょう。実際、バンド側にもそういったプレッシャーは少なからずあったのかもしれません。

また、70年代末あたりになるとハードロックやプログレといったジャンルが旧世代として敬遠されがちになり、代わりにパンクロックやニューウェイヴといった新たなジャンルに注目が集まり始める。ちょうどこのシーンの変遷がバンドの変化/進化とうまくフィットし、次のディケイドへと突入した1980年頭にこの『PERMANENT WAVES』という意欲作で、新たな門出を迎えることになるわけです。

とはいえ、今作は以前の大作主義と80年代以降のコンパクト路線の間にある、過渡期といえるような内容。オープニングを飾る「The Spirit Of Radio」ではシンセを全面的にフィーチャーしたアレンジで、かなりキャッチーかつ親しみやすい内容ですが、要所要所にレゲエなどの新機軸も取り入れられており、複雑に変化していく構成はRUSHならではといったところでしょう。それでも、この曲が与えたインパクトは相当強いものがあり、続く「Freewill」とのオープニングはバンドの再出発/リニューアルにふさわしいものでした。実際、「The Spirit Of Radio」はシングルカットされ、本国カナダで22位、アメリカでも51位、さらにイギリスでは13位と過去最高位を更新しています。

アルバムは全6曲、アナログでは各面3曲ずつで、頭2曲で新機軸のコンパクト&キャッチー路線の片鱗を伺わせで、各面ラストで従来の大作路線をしっかり提示しています。A面ラストの「Jacob's Ladder」は7分半、B面ラストの「Natural Science」は3曲から構成された9分強の組曲。A面は上記のように頭2曲でポップな新機軸を打ち出しており、そのあとに従来の“らしさ”を「Jacob's Ladder」アピール。B面も同じくキャッチーなメロディ&曲調の「Entre Nous」やセンチメンタリズムの強い「Different Strings」などでしっかり引きつけておいて、最後の最後でプログレ超大作「Natural Science」で締めくくるという、良くも悪くも「そうはいっても、これまでの路線を簡単に捨てられないよね?」という意地みたいなものが伝わってきます(笑)。いや、これはこれでいいんですけどね。

結局、こういった意地は次作『MOVING PICTURES』(1981年)から少しずつ薄れていき、80年代半ばには完全に払拭されることになります。70年代と80年代後半以降の橋渡しという意味で、最初は過渡期と表現しましたが、実はこれくらいのバランスが心地よかったりするのもまた事実。本作や『MOVING PICTURES』がファンから名盤として高く評価されるのは、そういう理由もあるんでしょうね。個人的には80年代半ばの路線と90年代のゴリゴリスタイルがお気に入りなのですが、それでもこの時期の2作は特別な思い入れがあります。今春にはリリース40周年記念盤も発売されているので、ぜひこの機会にチェックしてみてはいかがでしょう。

 


▼RUSH『PERMANENT WAVES』
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