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2020年10月21日 (水)

EUROPE『WINGS OF TOMORROW』(1984)

1984年2月にリリースされたEUROPEの2ndアルバム。日本盤は同年4月に発売されたようです。

デビューアルバム『EUROPE』(1983年/邦題『幻想交響詩』)が本国スウェーデンで最高8位まで上昇し、ここ日本でも局地的にヒットを記録。これを受けて11ヶ月という短いスパンで届けられた今作は、前作で見せたドラマチックなHR/HMスタイルを極限にまで純化させた良質な北欧メタル作品に仕上がっています。

前作で個人的に気になったのが、ピッチの甘さでした。弦楽器隊のチューニングとジョーイ・テンペストのボーカルとの間に若干のズレが感じられて、曲によってはそれが気持ち悪く聴こえてしまったんですよね。言ってしまえばインディーズレベル、もっと言えばアマチュアレベルだったのかなと。極端な話、音楽コンテストの優勝商品としてデビューアルバムが制作されたようなものでしたし。さらに、楽曲も一部を除きB級感満載だった。まあこれに関しては仕方ないところがありますが。

ところが、そこから短期間で完成したこの2ndアルバムはその難点が克服され、さらに楽曲のクオリティまで一気に上げてきた。この成長、進化の速度はなかなかのものがあり、もしリアルタイムでこの流れを体験していたら相当驚いたことでしょう。

「Stormwind」や「Scream Of Anger」「Open Your Heart」「Wings Of Tomorrow」「Dreamer」と、とにかくメジャー感の強い名曲揃い。「Scream Of Anger」のアグレッシヴさと「Wings Of Tomorrow」や「Stormwind」で魅せるドラマチックな展開と美メロ、さらに「Open Your Heart」や「Dreamer」といったスローバラードの完成度。どれを取っても素晴らしく、録音の質さえ上げれば2020年という現代においても通用するものばかりだと思います。「Open Your Heart」はワールドワイドデビュー後に4thアルバム『OUT OF THIS WORLD』(1988年)でリメイクされていますが、今となってはこのシンプルなアレンジのオリジナルバージョンのほうがお気に入りです。

そのほかにもヘヴィな「Treated Bad Again」やノリの良さ抜群の「Wasted Time」、疾走感がたまらない「Lyin' Eyes」や「Dance The Night Away」、そしてジョン・ノーラム(G)の魅力全開のインストナンバー「Aphasia」と、本当に捨て曲なし。A級バンドの仲間入りを果たす次作『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)ほど完璧すぎず、適度な“ユルさ”やB級感を残すこのバランスが絶妙なんですよね。

本作リリース後、テンポキープができないという致命的な理由でトニー・レノが脱退。代わりにイアン・ホーグランド(Dr)が加入し、さらにミック・ミカエリ(Key)も加わり黄金期メンバーが完成し、『THE FINAL COUNTDOWN』へと到達するわけですが、それはまた別のお話。EUROPEというと「The Final Countdown」というパブリックイメージが捨てきれない人にこそ、真っ先に聴いていただきたい初期の名盤です。

 


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