« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »

2020年11月

2020年11月30日 (月)

2020年11月のお仕事

2020年11月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※11月28日更新)

 

[WEB] 11月28日、「Billboard Japan」にてインタビューEP『文化的特異点』リリース~神はサイコロを振らない 柳田周作インタビューが公開されました。

[WEB] 11月27日、「リアルサウンド」にてインタビューPassCode 南菜生が語る、コロナ禍で見つめ直した“ステージに立つ意味” 「また何度でも始められることを伝えたい」が公開されました。

[紙] 11月26日発売「WHITE graph」004にて、乃木坂46齋藤飛鳥インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 11月25日発売「CONTINUE」Vol.68にて、特別企画「ラブライブ!シリーズ最新レポート」内「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours ONLINE LoveLive! ~LOST WORLD〜」10月11日公演、「ラブライブ!サンシャイン!! Saint Snow 1st GIG ~Welcome to Dazzling White Town~」10月17日公演のライブレポートを執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月25日、「FLYING POSTMAN PRESS」WEBにて、宮本浩次インタビューが公開されました(翌12月24日までの期間限定公開)。

[WEB] 11月25日、「FRIDAY DIGITAL」にてインタビュー「齋藤飛鳥が毒舌キャラをやめた理由」乃木坂46の9年を振り返るが公開されました。

[WEB] 11月24日、「リアルサウンド」にてライブ評THE YELLOW MONKEYがライブを通して繋ぐエンタメの未来 厳戒態勢で行われた東京ドーム&横浜アリーナ公演を見てが公開されました。

[WEB] 11月24日、「リアルサウンド」にてインタビュー南條愛乃に聞く、『グリザリア』シリーズと築いた作品との理想的な関係「どの曲も大事な相棒みたいな存在」が公開されました。

[紙] 11月21日発売アップトゥボーイ vol.297にて、櫻坂46齋藤冬優花インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 11月20日から全国5都市の主要CDショップなどで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2020年12月号にて、宮本浩次インタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 11月20日、「リアルサウンド」にてライブ評神宿、“アイドルらしさ”と“自分らしさ”の模索で出した一つの答え 縦横無尽なスタイル見せたツアー最終公演レポが公開されました。

[紙] 11月18日発売別冊カドカワ 総力特集 欅坂46/櫻坂46 1013/1209にて、ラストライブレポート(2日分)、小池美波、小林由依、菅井友香、渡邉理佐、山﨑天、幸阪茉里乃インタビュー、「MY BEST HITS」幸阪茉里乃インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月13日、和楽器バンド「TOKYO SINGING」特設サイトにてインタビューレコメンドコメントを寄稿しました。

[WEB] 11月13日、「リアルサウンド」にてインタビュー清春が明かす、黒夢やソロイストとしての活動で磨き上げた美学 「人間的な魅力のある、強い人だけが最終的には残る」が公開されました。

[紙] 11月10日発売「My Girls」Vol.312020年11月号にて、高槻かなこインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月9日、「リアルサウンド」にてライブ評ばってん少女隊、ファンと作り上げた“楽しい(=ふぁん)時間” 有観客単独公演で見せたメンバーの成長が公開されました。

[紙] 11月4日発売「日経エンタテインメント!」2020年12月号にて、櫻坂46菅井友香の新連載「いつも凛々しく力強く」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

=====

また、10月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2010号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

THE OCEAN『PHANEROZOIC II: MESOZOIC/ CENOZOIC』(2020)

2020年9月25日にリリースされたTHE OCEANの8thアルバム。日本盤未発売。

THE OCEANは2000年に結成されたドイツはベルリン出身のプログレッシヴメタル/スラッジメタルバンド。日本ではそれほど知名度は高いとは言えず、国内盤も過去に2度(2007年の『PRECAMBRIAN』と2018年の前作『PHANEROZOIC I: PALAEOZOIC』)発売されたのみ。僕自身、前作の日本盤リリースを機に知った存在でした。

そのタイトルからもわかるように、本作は前作『PHANEROZOIC I: PALAEOZOIC』から連作という形で制作されたコンセプトアルバム。この手の濃い内容のアルバムはなかなか売り上げに苦戦することも多いですが、本国ドイツでは前作での41位を超え、最高9位という高記録を樹立しています。

全8曲/約50分という、コンセプトアルバムのわりにはコンパクトにまとめられた感のある本作ですが、冒頭2曲「Triassic」「Jurassic / Cretaceous」の濃厚さ、情報量の多さにいきなり圧倒されるのではないでしょうか。なにせ前者が8分半、後者にいたっては13分半という、アルバムのほぼ半分を締めるボリューミーさですから。通常こういった長尺の楽曲はアルバムの中盤や終盤(アナログ盤でいうところのA面ラストやB面ラスト)に配置されることが多いですが、いきなり冒頭にアルバム1、2を争う長尺ナンバーを置くあたりに、彼らがリスナーに忖度することなく「自らのコンセプトに忠実に、やりたいことをやり通す」強い姿勢が伺えます。

でもね、この長尺2曲が非常に心地よいんです。プログレメタルのそれというよりは、MASTODONあたりにも通ずるスラッジ感の強いプログレ感や、近年のOPETH、あるいはDEFTONESにも通ずるゴシックな世界観にいつの間にか浸っている自分がおり、気づけば2曲聴き終えていた……というより、曲のつなぎ目を意識することなくアルバム全体を楽しめている自分に気づくのです。

そんなだから、4〜6分前後の楽曲で構築された3曲目以降も自然な流れに沿って楽しむことができるし、M-3「Palaeocene」以降も気づいたら次の曲へ移行していた、なんてことがしばしば。それくらいナチュラルな流れが意識されており、曲単位ではなくてアルバム単位でじっくり楽しめる良作だなと思いました。

適度な電子音楽要素も散りばめられており、それこそノルウェーのLEPROUSあたりにも通ずる世界観を見つけることができるのではないでしょうか。もはやプログレッシヴロックという言葉自体が死語に近いですが、このTHE OCEANはジャンルとしてのプログレを良質な形で現代的に進化させ続けている稀有な存在だなと、本作を聴いて実感させられました。うん、これは年間ベストレベルで推したい1枚です。

なお、本作には前作から引き続きKATATONIAのヨナス・レンクセ(Vo)が「Jurassic / Cretaceous」、スウェーデンのポストハードコアバンドBREACHのトマス・ハルボン(Vo)が「Palaeocene」にそれぞれゲスト参加。デジタル盤やフィジカル(CD)には本編のインストゥルメンタル盤を付属した2枚組仕様も用意されているのですが、ボーカルなしでも十分に楽しめる作品なのでこちらもあわせてチェックしてもらいたいです。

 


▼THE OCEAN『PHANEROZOIC II: MESOZOIC/ CENOZOIC』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月29日 (日)

DARK TRANQUILLITY『MOMENT』(2020)

2020年11月20日にリリースされたDARK TRANQUILLITYの12thアルバム。日本盤は同年12月23日発売予定。

ご存知のとおり、DARK TRANQUILLITYは90年代初頭から活動を続けるメロディックデスメタルの重鎮的存在。結成から数えても今年で31周年というキャリアを持ち、ここ日本にも幾度となくライブで訪れています。

そんな彼らが、本国スウェーデンでキャリア最高となる2位を記録した前作『ATOMA』から4年ぶりに届ける今作。マーティン・ヘンリクソン(G)および結成時からのオリジナルメンバーだったニクラス・スンディン(G)の脱退に伴い、2017年からサポートを務めてきたクリストファー・アモット(G/ex. ARCH ENEMY、ARMAGEDDON、BLACK EARTH)&ヨハン・レインホルツ(G/ANDROMEDA、NONEXIST、SKYFIRE)が加わった新編成で今作の制作に臨みました。

6作目『DAMAGE DONE』(2002年)で確立させた世界観の延長線上で創作活動を続けてきた彼らですが、本作もその例に漏れずといった内容でしょうか。ただ、冒頭の3曲(「Phantom Days」「Transient」「Identical To None」)でのグロウルのみで歌唱するミカエル・スタンネ(Vo)のボーカルスタイルには「おおっ!?」と驚かされるかもしれません。といっても、楽曲自体はこれまでの延長線上にあるメロディックデスメタルなので、安心して楽しめるわけですが。

ところが、4曲目「The Dark Unbroken」からクリーンボーカルを交えたスタイルへと移行。このあたりからマーティン・ブランドストローム(Key)のキーボードワークと相まって、ゴシック色が強まっていきます。個人的にはこういったテイストが大好きで、彼らに求めるものの大半がそこにあったりするので、続く「Standstill」や「Eyes Of The World」あたりでも聴けるこのスタイルは非常に好印象でした。さらに「Ego Deception」や「Empires Lost To Time」ではそこに攻撃性も備わり、聴き手としてのテンションもどんどん高まっていきます。

ギタープレイに関しても、「ああ、これはクリストファーのプレイかな?」とわかるようなものも散見されるものの、突出した色を出しまくっているというわけでもない。あくまでDARK TRANQUILLITYという歴史あるバンドのカラーに合わせたプレイをしている、そういう印象を受けます。それはヨハン・レインホルツについても同様で、クリス同様に速弾きを得意とするプレイヤーながらも、テクニックはあくまで味付けに使うのみといったレベルに留められています。そのへんは歴史あるバンドに対する敬意も大きいのでしょうか。

そういった意味でも、全体的に攻撃性と叙情性のバランス感に長けた1枚と言えるでしょう。ベテランバンドによる痒いところに手が届くような良作。若い頃のような突出したアグレッションや刺激こそ足りないものの、この手のサウンドが好きなリスナーなら安心して楽しめる内容だと思います。

なお、12月23日リリース予定の日本盤には、海外デラックス盤のDISC 2に収録された2曲(「Silence As A Force」「Time In Relativity」)に加え「There Is Nothing」の計3曲をボーナストラックとして追加。これからフィジカルでの購入を計画している方は、1ヶ月待って日本盤を購入してみてはどうでしょう。

 


▼DARK TRANQUILLITY『MOMENT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月28日 (土)

KILLER BE KILLED『RELUCTANT HERO』(2020)

2020年11月20日にリリースされたKILLER BE KILLEDの2ndアルバム。日本盤未発売(あれ、予定なかったでしたっけ?)。

マックス・カヴァレラ(Vo, G/SOULFLYCAVALERA CONSPIRACYNAILBOMB)、グレッグ・プチアート(Vo, G/THE BLACK QUEEN、ex. THE DILLINGER ESCAPE PLAN)、トロイ・サンダース(Vo, B/MASTODON)、デイヴ・エリッチ(Dr/ex. THE MARS VOLTA)の4人で結成され、2014年5月に1stアルバム『KILLER BE KILLED』を発表した彼ら。当初はアルバム1枚のみのスーパープロジェクトかと思いきや、翌2015年にドラマーがベン・コラー(CONVERGE、MUTOID MAN)に交代し、不定期ながらも活動を続けていくことを宣言。前作から6年半を経てついに2作目が届けられました。

ベンを含む編成では初のアルバムとなりますが、基本的な路線は前作を継承したもの。エクストリームメタル/ハードコア界の重鎮たちが一堂に会したバンドながらも、それぞれのエゴをむき出しにすることなく、ヘヴィながらもエモーショナルなメロディを前面に押し出した聴き応えのある良作に仕上げられています。

とにかく4人(というかフロントの3人)のカラーの配分が前作以上に明確になっており、役割分担もはっきりしてきた印象。1曲の中で複数のボーカリストが交わる曲構成は前作よりも増えているし、それが間違いなくこのバンドの個性につながっている。グレッグとトロイの個性の違いを存分に味わいつつ、要所要所で飛び込んでくるマックスのグロウルが大きな武器(フック)として効果を発揮しており、ようやくプロジェクトからバンドにまで進化したんだなと実感させられます。

どの曲も聴き応えのある良作ばかりなのですが、個人的に印象に残ったのが「Filthy Vagabond」かな。楽曲の作りといい、各シンガーの色分けといい、見事なまでに作り込まれている印象を受けました。この曲が本作を代表する1曲とまでは言わないものの、間違いなく彼らが目指したもの、やりたいことがここに凝縮されていると感じます。

かと思えば、続く「From A Crowded Wound」ではベンが加わったことによってなのか、どこかCONVERGEを彷彿とさせる色合いが増している。それをTHE DILLINGER ESCAPEのグレッグが歌うというところにも、個人的にはグッとくるものがあります。いやあ、すげえバンドです。

前作から引き続きプロデュースを担当したジョシュ・ウィルバーによるサウンドプロダクションも文句なし。HR/HMやラウド系リスナーのみならず幅広い層に受け取ってもらいたい、“エクストリームシーンの今”が凝縮されたKILLER BE KILLEDという“バンド”の本格的なスタート作だと断言させてください。

年末にこんな良作が飛び込んでくると、本当に年間ベスト作選びに苦労しそうです……(苦笑)。

 


▼KILLER BE KILLED『RELUCTANT HERO』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

2020年11月27日 (金)

FIRSTBORNE『FIRSTBORNE』&『SEPARATE WAYS (WORLDS APART)』(2020)

たまたま深夜にこのニュースを目にし、元LAMB OF GODのクリス・アドラー(Dr)がジェイムズ・ロメンゾ(B/ex. MEGADETH、ex. BLACK LABEL SOCIETY、ex. WHITE LION)とバンドを組んでいたことを知りました。

在籍時期は異なるものの、ともにMEGADETHに参加した経験を持つ2人が組むFIRSTBORNEというバンド。今年6月にセルフタイトルの5曲入りEPをデジタルリリースしていたそうで、こちら完全に見逃しておりました。

で、今回のニュースで知ったFIRSTBORNEのニューシングル「Separate Ways (Worlds Apart)」。ご存知のとおりJOURNEYが80年代前半にヒットさせた名曲カバーなわけですが、比較的ゴリゴリなイメージが強い2人がなぜこの曲を選んだのか、そしてどんな味付けをしているのか。気になってチェックしてみました。

そうしたらまあ……BPMも原曲よりアップさせ、全体的にゴリっとさせつつもメロウさはそのままという、なかなかな仕上がりのカバーで、個人的にかなり好印象。「クリス、バスドラ踏み過ぎだろ(笑)」というツッコミどころもあるものの、ボーカルを務めるGirish Pradhan(ギリッシュ・プラダーンと読むのでしょうか)の適度にハスキーでパワフルな歌声とマッチしており、安心して楽しむことができます。特に2番A〜Bメロでのフェイクなんて最高だし、エンディングで突如飛び出すグロウルにも思わずニンマリ。非常に“らしさ”がにじみ出た好カバーではないでしょうか。

また、ギタリストのMyrone(マイロンと読むのかな)のニール・ショーン(JOURNEY)を意識したプレイも好印象。この人はWEEZERのリバース・クオモとコラボしていたり、ミュージカル『ROCK OF AGES』でプレイしていたりと比較的裏方仕事が多かったようですが、だからこその的確なギタープレイなのかなと思いました。

にしても、冒頭こそあの印象的なシンセのリフがないものの、クリスのダイナミックなドラミングに続いて後ろから薄っすらと“あのリフ”が聴こえ始めると、思わず苦笑してしまいますよね。原曲をリアルタイムで通過した世代なら、そのへんなおさらじゃないでしょうか。でも、ここ10数年CMやスポーツ番組で初めて耳にした若いリスナーには新鮮に映るのかな。なんにせよ、個人的には大好物な1曲でした。

 


▼FIRSTBORNE『SEPARATE WAYS (WORLDS APART)』
(amazon:MP3

 

 

 

で、この1曲を起点に6月リリースの1st EPにも手を伸ばしてみました。だって、カバー1曲だけではこのバンドの真の姿はわかりませんものね。

なんともなアートワークに、最初こそ「ああ、そうだよね。元LAMB OF GODだし、元MEGADETH、元BLSだし……」と変な納得をしてしまいそうになりましたが、いざ音を聴いてみると……なるほど、JOURNEYをカバーするのも納得な音作り/曲作りでした。

ドラムの質感やミックスこそLAMB OF GODを思い出させるものでしたが、全体的には若干スラッシーなメロディアスハードロックといったところでしょうか。ギリッシュのボーカルや彼の個性を生かした曲作りと、その後ろで派手に鳴らされる各楽器のバランスが非常に絶妙で、楽器隊が前に出るときはしっかり前に出ているし、マイロンのギターも「Separate Ways (Worlds Apart)」のときより自由に暴れまくっている。クリスのドラミングも曲に忖度することなく、我の強さを突き通しているので、彼のファンもそれなりに安心して楽しめるのではないでしょうか(音楽的に趣味の範疇内ならばね)。

ちなみにギリッシュはインド出身で、地元ではGIRISH AND THE CHRONICLESというリーダーバンドを率いて10年以上にわたりメジャーシーンで活躍。クリスがドラムクリニックでインドを訪れた際、一緒にセッションしたのを機に知り合ったそうです。一瞬、JOURNEYにおけるアーネル・ピネダ(Vo)のようなシンデレラストーリーなのかなと想像したのですが、地元ではUniversal Music India所属ってことを考えると、それなりに成功していた方なんですよね。ギターのマイロンも裏方とはいえ、大ヒットミュージカルのバックバンドで長きにわたり活躍してきた人だし。そういった意味では「ベテランミュージシャンが無名の新人をフックアップして結成」というわけでもないのですよ、このバンド。だって、どの曲も完成度がめちゃめちゃ高いもの。

どれも3分前後にまとめられた楽曲群は非常にコンパクトに作り込まれたもので、職人的な技量の高さも伝わってきます。メロディセンスもかなり高いし、それを歌いこなすシンガーの技量、さらに負けじと個性を強く打ち出すプレイヤー陣の魅力。すべてにおいて完璧なEPではないでしょうか。

だからこそ、最初はフルアルバムを楽しみたかったなという気持ちもあるのですが、今はそういう時代じゃないのでしょう。まずはこれくらいで焦らすのがちょうどいいのかな。というか、そもそもフルアルバムという概念自体が彼らにあるのか、ないのか……。

なんにせよ、息の長い活動に期待したいと思います。

 


▼FIRSTBORNE『FIRSTBORNE』
(amazon:MP3

 

2020年11月26日 (木)

THUNDER『BANG!』(2008)

2008年11月3日にリリースされたTHUNDERの9thアルバム。日本盤は同年11月19日発売。

再結成後初のアルバム『SHOOTING AT THE SUN』(2003年)からハイペースで新作を制作し続けてきたTHUNDERですが、本作も前作『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006年)から丸2年と順調に音楽活動を続けているように映りました。しかし、リリースから数ヶ月後の2009年1月下旬、結成20周年を迎えたこのタイミングにバンドは夏のライブをもって再び解散することを発表。理由は各メンバーがTHUNDER以外の活動で忙しくなり始めたため。もともと期間限定で復活した彼らでしたが、持ち前のワーカホリックぶりが災いしたのか(苦笑)。

おそらく本作の制作中にもそういった予感が、メンバーの間にはあったんじゃないかと思います。そして、その決断を下すにふさわしい内容のアルバムが完成したと思えたから、リリース後に正式発表したのではないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、本作は再始動後のTHUNDERにおける集大成的な1枚だと断言できます。

過去2作と比べて躍動感の強かった『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』を経て、今作『BANG!』は全体のバランス感に優れた1枚と言えるでしょう。オープニングを飾るダイナミックはハードロック「On The Radio」やLED ZEPPELIN的ダイナミズムの塊みたいな「Stormwater」、これぞTHUNDER!と断言できるソウルフルなロックチューン「Carol Ann」など、冒頭から“らしい”楽曲がずらりと並ぶものの、4曲目「Retribution」では変拍子を用いた異色のアコースティックロックで意表を突き、続く「Candy Man」や「Have Mercy」で再び王道のTHUNDER節を届けてくれる。この緩急に富んだ構成、正しく再始動後の集大成と呼べるものでしょう。

アルバム後半も、アンディ・テイラー(ex. DURAN DURAN、THUNDERの『BACKSTREET SYMPHONY』プロデューサー)と共作したソウルフルなミディアムバラード「Watching Over You」や豪快なハードロック「Miracle Man」、肩の力の抜けたアコースティック&サイケデリックロック「Turn Left At California」、レゲエ的なギタープレイが耳に残るミディアムロック「Love Sucks」、渋みを増したアダルトなバラード「One Bullet」、ポップで軽やかなロックンロール「Honey」とバラエティに富んだ楽曲が並びます。90年代のTHUNDERらしさをしっかり残しつつ、再結成後の魅力も随所に散りばめたこれらの楽曲は、THUNDERというバンドにとってひとつの到達点だったのかもしれません。

と同時に、こんなに優れたロックアルバムが本国で最高62位までしか到達しなかった事実も、彼らに再び解散という道を選択させた、というのは言い過ぎでしょうか。そういう意味では、再々結成後のアルバムがどれも全英TOP10入りしている現実は、非常に喜ばしいことだと思うのです。

90年代前半のような動きが何も“起きなかった”のは時代のせいだったのか、それとも彼らに魅力がなかったのか。なんにせよ、この『BANG!』というふざけた名前のアルバム(笑)を完成させたことで、すべてやりきった感が強かったんでしょうね。それも頷けるくらいに、“普通に最高”な1枚です。

 


▼THUNDER『BANG!』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2020年11月25日 (水)

FM『SYNCHRONIZED』(2020)

2020年5月22日にリリースされたFMの11thアルバム(再録アルバム『Indiscreet 30』を含めると12作目)。日本盤は同年5月20日発売。

当初は4月10日のリリースを予定していた本作ですが、コロナ禍の影響などもあり発売が1ヶ月強遅れることになりました。中には半年以上遅れて発売されるケースも少なくないので、彼らの場合はラッキーだったのかもしれません。

『ATOMIC GENERATION』(2018年)からほぼ2年という短いスパンで届けられた本作。基本的には前作の延長線上にある作風で、90年代の彼ららしいブルージーなテイストを含むブリティッシュハードロックに、80年代のハードポップ/AOR調のテイストを散りばめた非常に聴きやすい……言い方が正しければ、“産業ロックよりのブリティッシュハードロック”という安定感の強い大人なサウンドを聞かせてくれます。

オープニングを飾るタイトルトラック「Synchronized」からして、往年の懐かしい香りが漂うメロディとサウンドに思わずニンマリしてしまうリスナーも少なくないはず。続く「Superstar」もAOR寄りの聴きやすいハードロックだし、ソウルフルさの増したミディアムナンバー「Best Of Times」なんてAOR期のBAD COMPANYみたいだし。かと思えば、渋みの強いバラード「Ghost Of You And I」では適度な打ち込みを導入しつつも、THUNDERなどに通ずる“枯れ”感と“泣き”の要素を華麗に演出。そして、「Broken」はイントロでこそ80年代AORっぽいシンセリフを響かせるも、歌が入るとブルースロックそのもの。

なんだこれ。派手さは皆無だけど、ジワジワと効いてきて気持ちいいじゃないか。

後半もこの流れを踏襲した楽曲が並び、とても2020年の新曲とは思えない「Change For The Better」を筆頭に古き良き時代のロック/ハードロックの世界へと我々を引きずり込んでくれるのです。「Walk Through The Fire」のイントロなんて、80年代半ばを通過したMTV世代なら思わずニヤッとしてしまうはずですよ(笑)。

スティーヴ・オーヴァーランド(Vo, G)による、程よい温度感のボーカルもこの“大人なハードロック”にぴったりだし、良い意味で我々の予想を裏切らないボーカルパフォーマンスで良曲たちをさらに一段高いクオリティにまで昇華させてくれる。これ、地味っちゃあ地味だけど、実は相当な技量がないとできないことだと思うんです。超一流ミュージシャンたちによる、破綻のない完璧な(ソフトな)ハードロック。いやこれ、完全に褒め言葉ですから。

あと、楽曲のクオリティが間違いなく前作以上。『ATOMIC GENERATION』も素晴らしい作品ではあったけど、もうちょっと派手さがあった気がするんですよ。でも、ここには無駄な装飾は一切存在せず、必要最小限の要素だけで構築することで無駄にクオリティの高さが際立つ。ここからも、ソングライターとしての才能とともに表現者/プレイヤーとしての技量の高さが抜きん出ていることが伝わるはずです。

リリースされていることは知っていたけど、コロナのバタバタでなかなか手を伸ばせなかった本作。なぜ半年も放ったらかしにしてしまったんだろう……と自戒の意味も込めて……この傑作、みんな聴きやがれ!

 


▼FM『SYNCHRONIZED』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月24日 (火)

QUEEN『GREATEST HITS』(1981)

1981年10月26日にイギリスでリリースされたQUEEN初のグレイテスト・ヒッツアルバム『GREATEST HITS』。80年代にはこのアルバムからQUEENに入ったというリスナーも多かったのではないでしょうか。かくいう僕も、初めて聴いたQUEENはこのアルバムでした(レンタルだったけど)。

昨日、このアルバムがアメリカBillboard 200(アルバムチャート)で初のTOP10入りを果たしたというニュースが飛び込んできました(ニュース元)。これは、同作のアナログ盤がWalmartのセールで15ドルに値下げセール販売されたことで、1週間で2万3000枚以上もの売り上げを記録したことから、前週の36位から8位まで急上昇したんだとか。ちなみに、同週の1位はAC/DCの新作『POWER UP』。ロックがまったく売れないと言われているアメリカで、AC/DCとQUEENが同時にTOP10入りする2020年。何が何やら(苦笑)。

さて、この記録に関して一部メディアでは「これまで同作の最高位は、1992年に記録した11位だった」と明記されていますが、これ正しくもあり間違いでもあるんですよね。要するに、同じタイトルだけど別内容のアルバムが前回の11位を記録しているのです。

今回のエントリーではレビューというよりも、このへんのややこしさについて記録を残していけたらなと思います。

 

まず、1981年10月発売の『GREATEST HITS』は当時、本国イギリスやここ日本はもちろん、アメリカでもしっかりどうタイミングにリリースされています。が、実はこの3ヶ国で発売された本作、収録内容が微妙に異なるのです。ここからは、イギリスで発売された全17曲入りの内容を“オリジナル盤”として話を進めます。

イギリスではEMIからリリースされた本作。その収録内容は現在も流通している同作と同じ内容です。ところが、当時Elektra Recordsから発売された北米盤は、オリジナル盤には未収録だった当時の最新シングル「Under Pressure」を追加したほか、「Keep Yourself Alive」シングルバージョン追加といった独自の14曲に厳選。これにより「Don't Stop Me Now」「Save Me」「Now I'm Here」「Good Old-Fashioned Lover Boy」「Seven Seas Of Rhye」が選外に。

一方で、日本で発売された同作はオリジナル盤と北米盤のいいとこ取りな17曲収録。こちらはオリジナル盤未収録の「Under Pressure」に加え、日本ならではの「Teo Torriatte」を追加。代わりに「Bicycle Race」と「Seven Seas Of Rhye」がオミットされています。北米、日本から嫌われる「Seven Seas Of Rhye」の立場よ。

ところが、1984年にCD化された際、独自選曲だった日本盤の内容は北米盤にシフト。僕が初めて聴いたのは、まさにこの北米盤CDだったので、「Another One Bites The Dust」から始まり「Bohemian Rhapsody」へと続く構成にしばし慣れ親しんでいました(オリジナル盤は逆です)。さらに北米に倣ってElektraの親会社Warner Musicからだった日本のリリース元が80年代半ばに東芝EMIへと移行。これにより1988年に再々発された日本盤『GREATEST HITS』は、オリジナル盤と同じ17曲入り/オリジナルセットリストへと落ち着くのでした。なので、『A KIND OF MAGIC』(1986年)までにQUEENを聴き始めたリスナーと『THE MIRACLE』(1989年)以降にQUEENに触れたリスナーとでは、この『GREATEST HITS』の思い出がまったく異なるわけです。なんなら、1981年のオリジナル盤リリース当時に日本盤に触れていたリスナーとも異なるわけで、1つのアルバムに対してたった10年の間に異なる大出を持つ3つの層が生まれるという、なんとも不幸な出来事が起きてしまったのでした。

 

話題を再びアメリカ(北米)に移します。『THE WORKS』(1984年)を機にそれまでのElektraからCapitol Recordsへと発売元を移したQUEENでしたが、90年代に入るとディズニー資本の新興レーベルHollywood Recordsへと移籍。Capitol Records移籍以降廃盤状態だった旧譜が、新作『INNUENDO』(1991年)に続いて次々と再発されていきます(その際、各盤に貴重なボーナストラックが追加されていたのは、個人的にもうれしくて。思わず全部揃えちゃったんだよね。苦笑)。そして、1991年11月24日以降……フレディ・マーキュリーの死、映画『ウェインズ・ワールド』に使用されたことで「Bohemian Rhapsody」が再ヒット。それと前後して、本国ではベスト盤第2弾『GREATEST HITS II』が発売されるのですが、こちらはアメリカでは当時未発売。『GREATEST HITS II』まで絡むと話がさらにややこしくなるのですが、これに関しては北米盤を語る際に欠かせない1枚なので、このまま進めさせていただきます。

さて、Hollywood Recordsからはオリジナルアルバムのリイシューこそあったものの、ベスト盤はしばらく未発売。ところが、上記の“1991年11月24日以降”QUEENに注目が集まり、手軽にQUEENの代表曲を楽しめるコンピレーション盤を求める声が高まります。こうして、(フレディ追悼の意も込めて)1992年3月にようやく北米独自盤『CLASSIC QUEEN』が発売されるのです。


▼QUEEN『CLASSIC QUEEN』
(amazon:海外盤CD

ジャケットの方向性こそ『GREATEST HITS II』とほぼ同一ですが、タイトルと収録内容が異なるという、非常にやっかいな本作。全17曲入りで、『GREATEST HITS II』を軸にしつつ『GREATEST HITS』オリジナル盤から数曲抜粋した非常にいいとこ取りという、「今からベスト盤2枚買うには金銭的に厳しいけど、これなら便利!」という当時のビギナーにはありがたい1枚でした。だって、「A Kind Of Magic」から始まり「Bohemian Rhapsody」へと続き、そこから「Under Pressure」「Hammer To Fall」、当時METALLICAがカバーしたことで再注目を浴びた「Stone Cold Crazy」と新旧の代表曲/隠れた名曲がズラリと並ぶわけですから、それを輸入盤として1000数百円で購入できるのは学生にはありがたいったらありゃしない。本作はアメリカでも最高4位まで上昇し、300万枚以上もの大ヒットとなりました。

そして、この『CLASSIC QUEEN』大ヒットに味をしめたHollywood Recordsは、同作から半年後に今度は『GREATEST HITS』と題した新規コンピレーション盤を発売します。そう、これが先に述べた、全米11位を記録した『GREATEST HITS』の正体です!(ここまで2000字以上。長かった。苦笑) 以降、こちらを“1992年北米盤”と称することにします。

似たようなデザインからシリーズ連作と感じさせるものの、濃い青を基調にした『CLASSIC QUEEN』に対して1992年北米盤は小豆色。内容は『CLASSIC QUEEN』から漏れた『GREATEST HITS』オリジナル盤収録のヒット曲を軸に、これまでどのエディションにも未収録だった80年代前半の小ヒット「Body Language」、そして『GREATEST HITS II』から「I Want To Break Free」を含む全17曲入り。思えば代表曲中の代表曲「We Will Rock You」も「We Are The Champions」も「Another One Bites The Dust」も「Killer Queen」も、『CLASSIC QUEEN』には未収録だったんですよ。そりゃあ二匹目のドジョウでも、それなりにヒットするわけです。


▼QUEEN『GREATEST HITS (1992 US EDITION)』
(amazon:海外盤CD

北米では10数年にわたり、この2作品がロングヒットを続けることになるのですが、2004年に事態が急変。なぜかオリジナル盤と同内容の『GREATEST HITS』がHollywood RecordsからCD化されるのです(どんどんややこしい話になってきた。笑)。ここでは、これまでの各国盤にはないボーナストラックも用意され、ボーナストラックとしてロジャー・テイラーが歌う「I'm In Love With My Car」や、「Under Pressure」「Tie Your Mother Down」のライブテイクなどを追加収録。「I'm In Love With My Car」が追加された理由は当時、QUEENの楽曲を題材にしたミュージカル『WE WILL ROCK YOU』が上演されたことも関係しており、「I'm In Love With My Car」は同ミュージカルの中でも登場するためと思われます。また「Under Pressure」「Tie Your Mother Down」は『ON FIRE : LIVE AT THE BOWL』(2004年)からのテイクで、同時期に発売されたため宣伝の意味もあったのでしょうね。


その頃日本では、長らくQUEEN作品をリリースし続けた東芝EMIが親会社の変更によりEMI Music Japanへと改名(2007年)。さらに、本国のEMIグループがUniversal Musicグループに吸収合併(2012年)。同じ頃、しばらく動きの止まっていたQUEENも新たにアダム・ランバートを迎えて“QUEEN + ADAM LAMBERT”としてライブ活動を開始したこともあり、2012年からは日本やイギリスなどでのリイシューが進むことになります。

その一環として、『GREATEST HITS』および『GREATEST HITS II』も世界共通仕様/同内容として、北米盤はHollywood Recordsから、それ以外の国ではUniversal Musicよりリリースされました。なお、日本盤のみボーナストラックとして(ややこしいわ。笑)、1981年盤の名残ともいえる「Teo Torriatte」が追加され、こちらはストリーミングバージョンでも耳にすることができます。以降、2020年に至るまでこの仕様は統一されており、先ごろアメリカでバカ売れした『GREATEST HITS』は現行のオリジナル盤と同じ内容となっております。

<完>

 

……以上が“『GREATEST HITS』戦争”ともいえなくもない、約40年にわたる同作のややこしい歴史です。なので、簡単に「これまで同作の最高位は、1992年に記録した11位だった」と言ってほしくないわけです。以上、面倒くさいQUEENオタクのたわごとでした。

追記:今回は世界中でもっとも流通しているであろう、かつ日本で手軽に入手しやすいイギリス盤、北米盤のみについて言及しました。このほかにも『GREATEST HITS』は国によってさまざまな“収録曲違い”や“独自ボーナストラック”が存在するので、そのへんはQUEENの私設ファンサイトやWikipediaDiscogsなどでチェックしてみてください。

 


▼QUEEN『GREATEST HITS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

QUEEN『QUEEN FOREVER』(2014)

2014年11月にリリースされた、QUEENのコンピレーションアルバム。CD1枚ものとCD2枚組の2仕様が流通しており、本稿では2枚組エディションについて触れていきます。

本作はクイーンの“ラブソング”に焦点を当てた作品集で、新たな未発表曲/テイクが加えられたことで大きな注目を集めました。当初本作について、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)は「ブライアン・メイ(G, Vo)と新たなQUEENのアルバムを制作する」と発言していましたが、それはのちに「フレディ・マーキュリー(Vo)や、すでに引退したジョン・ディーコン(B)が参加した80年代の音源を用いて、新たにギターとドラムを追加した『MADE IN HEAVEN』(1995年)と同じ方式の未発表曲」を含むコンピ盤であることが明らかになります。

本作のために準備された新曲/未発表テイクは3曲。アルバムのオープニングを飾る「Let Me In Your Heart Again」は『THE WORKS』(1984年)のセッションから、これまで未完成だった楽曲を新たに完成させたもの。フレディのボーカルパフォーマンスも本チャン作品と何ら差を感じさせない完成度で、そこに80年代以降のQUEENらしい厚みのあるダイナミックなバンドサウンドが重ねられています。確かにこれは『THE WORKS』や、それ以前の『THE GAME』(1980年)に収録されていても不思議じゃない1曲です。

続く「Love Kills」は、1984年にフレディがソロシングルとして発表した楽曲。もともとは映画『メトロポリス』のためにジョルジオ・モロダーとともに制作したディスコ調の楽曲でしたが、ここではバラード調にリアレンジされています。レコーディングクレジットにはジョン・ディーコンの名前も見つけられるので、おそらく『MADE IN HEAVEN』制作時のアウトテイクではないでしょうか。原曲のキラキラ/ピコピコ感のイメージが強いだけに、最初こそ違和感が残りましたが(曲後半にその名残が感じられます)、それって『MADE IN HEAVEN』でのリテイク曲を初めて聴いたときと同じ印象なんですよね。慣れれば「こういう曲」と納得するんでしょうけど、そこまでいくにはだいぶ時間がかかりました(苦笑)。

3曲目の「There Must Be More To Life Than This」はフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)収録曲のQUEENバージョンなのですが、これがちょっと複雑でして。もともとこの曲、QUEENのアルバム『HOT SPACE』(1982年)収録曲として制作されたものでしたが、なぜかお蔵入り。そこからマイケル・ジャクソンが1983年に制作予定だったデュエットアルバムの候補としてQUEEN側から提供され、マイケルのボーカルもレコーディングされたものの、『THRILLER』(1982年)の爆発的ヒットの影響などもあって制作中止に。最終的にフレディが自身のソロアルバムに自身のソロバージョンとして収録することで、世の中に初めて放たれます。

で、今回ここに収録されたのはその幻の“QUEEN feat. MICHAEL JACKSON”バージョン。フレディの声に並ぶと、マイケルの存在感も多少弱まってしまうといいますか、のちのマイケルほどのオーラがやや感じられないといいますか。完成バージョンというよりはデモに近い状態だったのかもしれませんね。その音源を、かのウィリアム・オービットがミックスすることで、本作にて日の目を見たわけですから、聴けただけありがたいのかもしれませんね。

以降はおなじみのQUEENナンバーが目白押し。“ラブソング”という括りなので、バラードに限らずさまざまなタイプの人気曲/隠れた名曲が30曲以上にわたり詰め込まれています。いわゆるグレイテストヒッツ・アルバムに飽き飽きしているQUEENリスナーにとっては意外な選曲も少なくないので、個人的にも長きにわたり愛聴しているコンピ盤のひとつです。

なお、日本盤のみボーナストラックとして「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」を追加収録。とはいえ、2枚組バージョンはインストの「Forever」で綺麗に締めくくられるので、多少蛇足のように感じられます。1曲でも多く聴きたいというリスナーは日本盤でもいいかもしれませんが、個人的には「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」なしの海外盤およびデジタル盤でも十分な気がします。

2021年でフレディ没後30周年。今年はこの手の発掘モノはリリースされませんでしたが、きっと来年はいろいろ続きそうな予感です。

 


▼QUEEN『QUEEN FOREVER』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤CD / 海外盤2CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

 

2020年11月23日 (月)

KISS『ANIMALIZE』(1984)

1984年9月にリリースされたKISS通算12作目のスタジオアルバム。それまで『地獄の〜』シリーズが多かった邦題も、ようやく本作からは原題をそのままカタカナ化することで落ち着くことになりました。

前作『LICK IT UP』(1983年)でメイクをやめて素顔をさらけ出し、さらにそのサウンドも当時勃発し始めたHR/HMブームに便乗したもので、話題性もあり成功を収めました。そういった意味では、続く今作で真価が問われるわけですが、2代目ギタリストのヴィニー・ヴィンセントが脱退。代わりに加入したマーク・セント・ジョンが唯一参加したのが、本作『ANIMALIZE』になります。

このアルバムは50年近いKISSのキャリア史上、唯一のポール・スタンレー(Vo, G)単独プロデュース作品。というのも、相方のジーン・シモンズ(Vo, B)が本作制作時期に映画『未来警察』に俳優として参加していたことで、制作途中で離脱してしまうのです。

全9曲中ポール歌唱曲が5、ジーン歌唱曲が4というバランスですが、もしジーンに余裕があったらもう1曲彼が書き下ろしたんでしょう。なお、ポール書き下ろし曲ではデズモンド・チャイルドが3曲に参加。リードシングル「Heaven's On Fire」などキャッチーな楽曲を提供しています。エリック・カー(Dr, Vo)もドラムのみならず、「Under The Gun」でポール&デズモンドと共作を果たしています。

前作『LICK IT UP』はそのひとつ前の『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)の延長線上にありながらも、初期のKISSらしいキャッチーさが復調し始めていましたが、今作ではそこに80年代前半ならではのゴージャスさ、ふくよかな質感が加わり、ある意味では“LAメタル/ヘアメタル版KISS”と言えなくもないHR/HMサウンドが展開されています(当時のファッションもまんまLAメタルですし)。オープニングを飾る「I've Had Enough (Into The Fire)」や「Under The Gun」なんて、まさに時代を意識したメタルチューンですものね。

そんな中にも、先の「Heaven's On Fire」や「Lonely Is The Hunter」のように初期を彷彿とさせるテイストの楽曲も含まれており、やっぱり“餅は餅屋”と再認識させられます(といっても、アレンジや音の質感は完全に80年代のそれですけどね)。個人的には、のちのスタイルへとつながっている「Thrills In The Night」のような楽曲がお気に入りです。

本作からは「Heaven's On Fire」が全米49位というまずまずのヒットとなり、アルバム自体も全米19位まで上昇。前作並みのヒット(プラチナム獲得)となりました。とはいえ、KISSの80年代史の中では軽んじられる傾向の強い1枚でもあり、そのへんはマーク・セント・ジョンという印象の薄いメンバーのせいもあるのかなと。マークは本作を携えたツアー開始から数公演で脱退、代わりに本作で3曲ソロを披露しているブルース・キューリックがそのままバンドに加わり、以降10年以上にわたりバンドを支えることになりあす。

 


▼KISS『ANIMALIZE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月22日 (日)

GARY MOORE『AFTER HOURS』(1992)

1992年3月上旬にリリースされたゲイリー・ムーア通算9作目のスタジオアルバム。日本盤は同年3月下旬に発売。

前作『STILL GOT THE BLUES』(1990年)でブルース路線へと移行し、全英13位/全米83位という好成績を残すことに成功したゲイリー。続く本作でもその路線を踏襲しつつ、前作では過半数をカバー曲が締める中、今作では全11曲中カバーは4曲と3分の1にまで絞り込んでいます。

楽曲自体は前作でのスタイルをより自然な形に、かつディープに踏み込んだアレンジでまとめこまれており、完成度としては前作を超えるものがあるのではないでしょうか。ゲイリー自身もこのスタイルでの自分の光らせ方を重々に把握したようで、ロック&ソウルな「Cold Day In Hell」を筆頭に、「Still Got The Blues (For You)」の延長線上にある「Story Of The Blues」、B.B.キングをゲストに迎えたジャジーな「Since I Met You Baby」などで歌心あふれるボーカルと、“いかにも”な泣きまくりギタープレイを響かせています。もうね、気持ちいいったらありゃしない。

思えば前作ではストレートな「Moving On」や盟友ジョージ・ハリスンによる「That Kind Of Woman」、比較的ロック寄りの楽曲も含まれていましたが、あの時点では完全に振り切るまでは気持ち的な余裕がなかったのかもしれません。と同時に、ブルースの名曲カバーを多数用意することで、そのカラーをより強めようとした。いわば実験的な1枚だったわけです。

ところが、今作では前作で得た手応えをそのままオリジナル曲で昇華。かつ、自分らしさを満遍なく散りばめることにも成功し、早くもブルースロック期の頂点へと到達するわけです。「Separate Ways」のような名バラードを前にしたら、もうこちらとしてもお手上げ状態ですよ。さらに、続く「Only Fool In Town」でののたうちまわるようなギタープレイのカッコよさ。それも素晴らしすぎるったらありゃしない。

そういえば、ブルースカバーが本作では少ないという話。実はシングルのカップリング用には本編未収録のカバーも多数用意されており、録ることは録っていたんだなと。ただ、オリジナル曲の充実度がそれを優ってしまったことで、こういう配分になったのでしょうね。後年リリースされたリマスター盤には、「Woke Up This Morning」といった有名曲や「Once In A Blue Mood」といったインストナンバーも追加されており、この『AFTER HOURS』期のセッションの裏側をより深く知れるのではないでしょうか。

こういった充実ぶりが、全英4位という結果につながったのも納得です。そして、ゲイリーはブルース期を総括するようなライブアルバム『BLUES ALIVE』(1993年)を経て、ジャック・ブルース(Vo, B)&ジンジャー・ベイカー(Dr)という元CREAM組と新バンドBBMを結成。よりディープな世界へと足を踏み入れていくことになります。(以下、BBM『AROUND THE NEXT DREAM』レビューへと続く)

 


▼GARY MOORE『AFTER HOURS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月21日 (土)

ELLEFSON『NO COVER』(2020)

2020年11月20日にリリースされたデイヴィッド・“ジュニア”・エレフソン(B/MEGADETH)のソロアルバム第2弾。

日本では今年3月に発売された初のソロアルバム『SLEEPING GIANTS』(海外では2019年7月リリース)に続く今作は、全曲豪華ゲストを迎えたカバー集。全19曲の大半はエレフソンのルーツ的楽曲になるのでしょうが、そんな中にFIGHTの「Nailed To The Gun」があったり、ビリー・アイドル「Rebel Yell」やW.A.S.P.「Love Machine」といったMEGADETHのデビューと非常に近しい時期の楽曲も含まれています。これは相方のトム・ハザート(Vo)の趣味なんでしょうかね。

さてさて。そんな本作のレコーディングメンバーですが、ベーシックはトム、エレフソン、アンディ・マルトンジェリ(G/ARTHEMIS)の3人が中心で、曲によって以下のようなゲストが参加しています(とにかく長いのでご注意を)。

※ボーカル
ジェイソン・マクマスター(DANGEROUR TOYS、WATCHTOWER)、ドロ・ペッシュ、ジェイコブ・バントン(ミック・マーズ、LYNAM、ex. STEVE RILEY'S L.A. GUNS、ex. MARS ELECTRICなど)、アンドリュー・フリーマン(LAST IN LINE)、アル・ジュールゲンセン(MINSTRY)、ブランドン・イーグレイ(CROBOT)、デイヴ・アルヴィン(WHITE TRASH)、トッド・カーンズ(THE AGE OF ELECTRIC)、マーク・スローターSLAUGHTER)、チップ・ズナフENUFF Z' NUFF

※ギター
ロン・“バンブルフット”・サール(一部ボーカルも/SONS OF APOLLOASIAなど)、ガス・G(FIREWIND)、アンディ・ジェイムズ(ex. SACRED MOTHER TONGUE)、エディ・オヘダ(ex. TWISTED SISTER)、グレッグ・ハンデヴィット(KUBLAI KHAN、ex. MEGADETH)、フランク・ハノン(TESLA)、ラス・パリッシュ(STEEL PANTHER、ex. FIGHT)、ジョン・アクイリノ(ICON)、タイソン・レズリー、デイヴ・シャープ(DEAD BY WEDNESDAY)、シャニ・キメルマン、ドリュー・フォーティアー(ZEN FROM MARS)

※ドラム
パオロ・カリディ(HOLLOW HAZE、ex. KILLING TOUCH)、デイヴ・マクレイン(SACRED REICH、ex. MACHINE HEAD)、チャック・ビーラー(ex. MEGADETH)、チャーリー・ベナンテ(ANTHRAX)、デイヴ・ロンバード(SUICIDAL TENDENCIESDEAD CROSSMR. BUNGLE、ex. SLAYER)、ジミー・デグラッソ(ex. BLACK STAR RIDERS、ex. MEGADETH、ex. Y&Tなど)、ダーク・ヴェルビューレン(MEGADETH、ex. SOILWORK)、オーパス(DEAD BY WEDNESDAY)、トロイ・ルケッタ(TESLA)、マイク・ヘラー(RAVEN、ZEN FROM MARS、ex. FEAR FACTORY

演奏はどれも原曲に忠実で、可もなく不可もなくといったところ。トム・ハザートがメインで歌う前半はダミ声中心なので、曲によっては「う〜ん……」と思うものも含まれています。が、中盤から後半……「Riff Raff」(AC/DC)、「Over The Mountain」(オジー・オズボーン)、「Sweet F.A.」(SWEET)、「Downed」(CHEAP TRICK)あたりはトム不参加でそれぞれマイク・マクマスター、アンドリュー・フリーマン、トッド・カーンズ、チップ・ズナフが歌っているので安心して楽しめるはずです。また、「Sheer Heart Attack」(QUEEN)や「Love Me Like A Reptile」(MOTÖRHEAD)にはドロ・ペッシュが、「Say What You Will」(FASTWAY)にはマーク・スローターがそれぞれ参加しており、聴けばそれとすぐにわかるボーカルで楽しませてくれます。

まあ、こういうアルバムはああだこうだ言わずに無心で楽しむのが一番なんでしょうね。強いて言うなら……ジュニアってそんなにCHEAP TRICK好きだったんだ、と(笑)。あと、DEF LEPPARDもね(アートワークの話)。なんだかんだこの人、ポップなものが好きなんでしょうかね。

 


▼ELLEFSON『NO COVER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月20日 (金)

IRON MAIDEN『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』(2020)

2020年11月20日にリリースされたIRON MAIDENの最新ライブアルバム。

本作は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった、今年5月の来日公演を含むワールドツアー『LEGACY OF THE BEAST WORLD TOUR』から、2019年9月にメキシコ・シティで行われたライブの模様を完全収録したもの。ライブアルバムとしては現時点での最新オリジナルアルバム『THE BOOK OF SOULS』(2015年)を携えたワールドツアーの模様を収めた『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』(2017年)以来3年ぶりとなります。この10年で考えると、すでに4作目……オリジナル作のリリース間隔がどんどん長くなっている一方で、その隙間を埋めるようにライブアルバムが(過去のアーカイブ含め)どんどん発表されるのは、ファンとしてうれしいような「いや、そんなに出されても」と困るような……。

とはいえ、『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』が日本を含むワールドツアーのハイライト的内容(世界各国のライブからベストテイクを集めたもの)だったのに対し、今作は1公演をまるまる収録。しかも、血気盛んなメキシコ公演の模様ですから、どれだけ贔屓目に見ても悪いわけがない。実際、約100分におよぶ全17曲のパフォーマンスは最高の一言なわけですから、困ったものです(苦笑)。

「Aces High」からスタートするセットリストがそもそも悪いわけないし、そこから「Where Eagles Dare」「2 Minutes To Midnight」という流れも最高。また、このツアーでは「The Clansman」や「Sign Of The Cross」といったブルース・ディッキンソン(Vo)不在時期の楽曲(過去のツアーでも披露していましたが)や、「The Wickerman」「For The Greater Good of God」という2000年代の楽曲も含まれており、まさにオールタイムベスト的なセットリストで、定番曲以外は『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』とそこまで被らないようになっているのも特徴ではないでしょうか。まあそこまで意外な曲はほぼないですけど、このセトリを生で味わったら確かにうれしくてたまらないですよね。

僕、ブルースの歌う「The Clansman」が原曲以上に大好きなんですよ。同曲が収録されたオリジナルアルバム『VIRTUAL XI』(1998年)って、生活環境が変わったタイミングだったのでそこまで真面目に聴き込めていなかったので、同作に対する印象も薄かったのですが、ライブバージョンで(かつブルースのボーカルパフォーマンスによって)急激に惹きつけられたのです。これは「Sign Of The Cross」も同様で、ブレイズ・ベイリー(Vo)には申し訳ないですが……。

ただ、2000年代に発表された『ROCK IN RIO』(2002年)や『DEATH ON THE ROAD』(2005年)あたりのボーカルパフォーマンスと比べると、さすがにブルースも歳をとったと感じずにはいられません。観客に歌わせるパートも増えている印象を受けるし、声の張りも……それでも、60歳を超えてここまで歌えるヘヴィメタル・シンガー、そうそういませんけどね。

逆に、演奏面に関してはより脂が乗っているように感じるのは気のせいでしょうか。初期の楽曲におけるアグレッシヴさこそ薄まっているものの、特に上に挙げたここ10〜20年くらいのプログレッシヴな楽曲では円熟味が伝わってくるんですよね。要するに、ヘヴィメタルバンドとしてまだまだ現役すぎるってことです。すげえバンドだな、相変わらず。

一応、『LEGACY OF THE BEAST WORLD TOUR』は2021年夏まで延期される形となりましたが、この最高の選曲/パフォーマンスのライブを日本でも楽しめる未来があるのか……こればかりは本当に神のみぞ知るといったところですが、今はこのライブアルバムをできる限り爆音で聴いて、デビュー40周年を迎えたIRON MAIDENに賞賛の拍手を送り続けたいと思います。

 


▼IRON MAIDEN『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外デラックス盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月19日 (木)

ANTHRAX『ATTACK OF THE KILLER B'S』(1991)

1991年6月下旬にリリースされたANTHRAXのコンピレーションアルバム。

タイトルからも想像できるように、本作にはシングルやEPのみで聴くことができたアルバム未収録の“B面曲”をコンパイルしたもの。ジョー・ベラドナ(Vo)在籍時の音源で構成されているのですが、その“B面曲”も完全網羅というわけではなく(SEX PISTOLS「God Save The Queen」、BLACK SABBATH「Sabbath Bloody Sabbath」とか入ってないしね)、あくまでこの当時(1990年の最新作『PERSISTENCE OF TIME』リリース後)のANTHRAXの“位置”を示す内容に限定されているようです。

それにより、例えば『PERSISTENCE OF TIME』からの「Keep It In The Family」「Belly Of The Beast」のライブテイクが収録されていたり、S.O.D.「Milk (Ode To Billy)」「Chromatic Death」のジョーイ歌唱によるセルフカバー、珍ラップ曲「I'm The Man」の“moreヒップホップ”な1991年バージョン、さらにPUBLIC ENEMYの名曲「Bring The Noise」をご本家と一緒にカバーしたりと、半分は新作/新録という気合いの入れよう。でも、この雑多な感じが当時のANTHRAXらしいミクスチャー感満載で、もはやスラッシュメタルだとかハードコアだとかヒップホップだとか、そういったジャンル分けすら無用な次元へと突入しております。

だって、最高にクールなスラッシュ/ハードコアのクロスオーバーチューン「Milk (Ode To Billy)」から勢いよく始まったかと思えば、次は王道ミクスチャーメタルの「Bring The Noise」、さらに次にはヘヴィ of ヘヴィな「Keep It In The Family」ライブバージョンですから。ジャンルで限定すると定まってないと言われてしまうかもしれませんが、これが良いんですよ。

で、この3曲の次が脱力系「Startin' Up A Posse」ですからね(笑)。最高ったらありゃしない。

完全なるお遊びであり、ガス抜き系アルバムなんですが、ANTHRAXというバンドの成り立ちや影響力を考えると、実はオリジナルアルバム以上に重要な役割を果たす1枚ではないでしょうか。本作をもってジョーイ・ベラドナがバンドを離れ、代わりにARMORED SAINTのジョン・ブッシュ(Vo)が加入。そうして完成したのがグランジ/オルタナ/モダンメタルからの影響をビンビン受けまくった『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)とういうことに「なるほど」と頷けてしまうのも、この異色作でワンクッション置いているのが大きいんじゃないでしょうか。

アルバムの完成度にこだわるリスナーには敬遠されてしまいがちですが、サブスク全盛の今だからこそこういう内容はウケるような気がする……と思っているのは僕だけでしょうか。こういうお子様ランチ、嫌いじゃないです。

 


▼ANTHRAX『ATTACK OF THE KILLER B'S』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ

 

2020年11月18日 (水)

THE DAMNED THINGS『IRONICLAST』(2010)

2010年12月14日にリリースされたTHE DAMNED THINGSの1stアルバム。日本盤は翌2011年1月12日に発売。

2009年に始動したこのバンドは、FALL OUT BOYの前身であるメタル系バンドに在籍していたジョー・トローマン(G, Vo)&アンディ・ハーレー(Dr)がANTHRAXのスコット・イアン(G)の声をかけ、コラボを始めたことがきかっけ。その際、当時ANTHRAXのメンバーだったロブ・カッジアーノ(G)も加わることになるのですが、2009年時点ではこのコラボレーションが新たなサイドプロジェクトにまで進展するとは、当のジョーも思っていなかったようです。

しかし、そこにEVERY TIME I DIEのキース・バックリー(Vo)という逸材がハマることで、このプロジェクトは一気に動き出します。キースが歌詞を書き、ジョーやロブ、スコットが曲を制作。レコーディングではロブがベースおよびエンジニアを兼務し、ニック・ラスクリネクツ(DEFTONESFOO FIGHTERSHALESTORMなど)がミックスを手がけることで完成したのが、このデビューアルバムです。

メロディ的にはFALL OUT BOYに通ずるキャッチーさ、メロディアスさが強いものの、サウンドやバンドアンサンブルはANTHRAXやEVERY TIME I DIEの影響下にあるヘヴィでガッツの強いもの。しかし、それらが合わさることで生まれる楽曲は、そのどのバンドにも似ているようで似ていないという、不思議な現象を引き起こしています。強いて言うなら、「1980年前後のHR/HMとパンクを通過したサウンドで、70年代のTHIN LIZZYDEEP PURPLEMOTÖRHEAD的なクラシックロックを表現」する……どこかFOO FIGHTERS的でもあり、THE HELLACOPTERS的でもあるという。だけどもうちょっとストーナーロック的な香りも感じられて、「独特なクセがあるのに不思議とわかりやすい」ハードロックを展開しているのです。

「We've Got A Situation Here」や「A Great Reckoning」あたりを聴くと、ある人はFOO FIGHTERSを思い浮かべるかもしれません。しかし、僕の中では「ヘヴィになったTHIN LIZZ」という認識なんですよね。もしくは「THIN LIZZYがストーナーロックに挑戦」という。いろんな化学反応の結果がこれなんでしょうけど、EVERY TIME I DIEのフロントマンがこんなにキャッチーでわかりやすいハードロックを歌っていることも、FALL OUT BOYとANTHRAXが合体するとこうなるんだってことも、全部意外であると同時に必然なのかなと。

THE HELLACOPTERSをよりメタリックにするとこうなるのかな、なんて思いながらリリース当時はリピートしていたことを、今ふと思い出しました。キースの歌声もどことなくニッケっぽいしね。THE HELLACOPTERS亡き2010年以降、どれだけこのアルバムを重宝したことか。でも、このバンドも短命で2012年には一度活動を停止していまいます。しかし、約8年後にコアメンバーはそのままに、よりパワーアップした2ndアルバム『HIGH CRIMES』(2019年)が届けられたときは、どれだけうれしかったことか。しかも、「よりモダンなのに、不思議とレイドバックしている」という進化を遂げていたんだから、たまったものじゃないですよ(笑)。

これまでストリーミング配信されていなかったのが不思議ですが、つい最近ようやく国内でも聴けるようになったので、昨年発売の『HIGH CRIMES』とあわせてチェックしてみてください。上に挙がったようなバンドにピンと来た方なら絶対に引っかかるはずなので。

 


▼THE DAMNED THINGS『IRONICLAST』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2020年11月17日 (火)

THE ROLLING STONES『STEEL WHEELS LIVE』(2020)

2020年9月25日にリリースされたTHE ROLLING STONESのライブ作品。

ライブ作品のリリースを目的としたものではない録音物をレストアして公式発売する“Official Bootleg”の一環で発表されたもの。ここのところ90年代のライブ作品がいくつもリリースされてきましたが、1989年のアルバム『STEEL WHEELS』のツアー関連では2012年のライブ音源『LIVE AT THE TOKYO DOME』(デジタルリリースのみ)、2015年の“From The Vault”シリーズからのライブ映像『LIVE AT THE TOKYO DOME』に続く3作目となります。といっても、先の東京ドーム作品は同一公演のものなので、正しくは2作品目なのですが。

本作には1989年8月31日からスタートしたワールドツアーの中から、1989年最後の公演となった12月17、19、20日のニュージャージー州アトランティック・シティでのライブを収録したもの(セットリストどおりということになると、本作は19日の模様を収めたものでしょうか)。この3公演にはLA公演(同年10月)でオープニングアクトを務めたGUNS N' ROSESからアクセル・ローズ(Vo)&イジー・ストラドリン(G)、そしてエリック・クラプトン(G)とジョン・リー・フッカー(G)がゲスト参加。当時海外ではラジオ放送もされ、この音源が日本にもブートレッグとして流れてきたものです。確かCD3枚組の大容量で、値段も1万円前後したような……浪人生だった自分にはキツイ出費でした(苦笑)。

当時の記憶をたどりながら本作(音源)に触れたのですが、その音のクリアさ、きめ細かさに驚かされました。いや、FMラジオ音源(を元にしたブート)も相当聴きやすかったですが、あれから30年以上を経て公式に届けられたこの音源、通常のライブ作品として何ら問題のない仕上がりだと思います。

このライブの次(約2ヶ月後)が初の日本公演とあって、選曲的にはジャパンツアー序盤に近いものがあり、内容的には大きな驚きはないのですが、やはり特筆すべきはアクセル&イジー参加の「Salt Of The Earth」、クラプトン参加の「Little Red Rooster」、クラプトン&ジョン・リー・フッカーとの共演曲「Boogie Chillen'」でしょう。Setlist.fmによると、ストーンズが「Salt Of The Earth」をライブで披露するのは1968年以来21年ぶりとのこと。ミック・ジャガーキース・リチャーズ、アクセルの3人が歌い分けるこの「Salt Of The Earth」は豪華なものがあります。若き日のアクセルは若干緊張気味なのか、いつものアグレッシヴさが足りないような気がしないでもありません(笑)。イジーのギターは……と耳を傾けると、どうしてもロニー・ウッドのスライドプレイに耳が行ってしまうという(苦笑)。ゴメンね、イジー。

クラプトン参加の「Little Red Rooster」は、聴けばすぐにわかるプレイなので書くまでもなく。続く「Boogie Chillen'」はジョン・リー・フッカーのカバーなので、主役は彼自身。ストーンズやクラプトンがレジェンドのバックを務めつつ、随所で自身の個性を出すという微笑ましさもこの時期ならではでしょうか。

まだストリーミングで音源しか耳にしていないので、映像のほうはこれから購入して確認しようと思いますが、東京ドーム公演とは違った海外での盛り上がりは一見の価値ありかなと。なお、ボックスセットには東京ドーム公演のDVDと、『STEEL WHEELS RARE REELS』と題して「Play With Fire」「Dead Flowers」(1989年9月3日のトロント公演)、「Almost Hear You Sigh」「I Just Want To Make Love To You」「Street Fighting Man」(1990年7月6日ロンドン公演)を収録したボーナスCDが付いているので、値段は張るけどこちらを購入してみようと思います。

 


▼THE ROLLING STONES『STEEL WHEELS LIVE』
(amazon:国内盤2CD+Blu-ray / 国内盤2CD+DVD / 国内盤ボックスセット / 国内盤アナログ(直輸入盤仕様) / 海外盤2CD+Blu-ray / 海外盤2CD+DVD / 海外盤ボックスセット / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月16日 (月)

KEITH RICHARDS & THE X-PENSIVE WINOS『LIVE AT THE HOLLYWOOD PALLADIUM』(1991)

1991年12月上旬にリリースされた、キース・リチャーズTHE ROLLING STONES)のライブアルバム。日本盤もほぼ同時期に発売されましたが、当初はCD+VHSビデオ+Tシャツのボックスセットで3万セット限定販売(1万円の高額商品でしたが当時購入しました……)。翌1992年2月にようやくCD単品が国内リリースされました。

本作はしばらく廃盤状態でしたが、2020年11月13日にリリース元をVirgin RecordsからキースのプライベートレーベルMindless Records(BMG傘下)に変え、最新リマスタリングが施された状態で再発。オリジナル盤と同じく全13曲入りのCDに加え、レストアされた映像版(DVD)と2枚組アナログ盤、さらにアルバム未収録の3曲を収録した10インチアナログ、豪華フォトブックなどを同梱したボックスセット、アルバム未収録3曲を追加したデジタル版が用意されています(2枚組アナログ盤も単品発売)。

本編の内容は、初のソロアルバム『TALK IS CHEAP』(1988年)を携えて行われたソロツアーから、1988年12月15日のカリフォルニア州The Hollywood Palladiumでの公演を収めたもの。キース(G, Vo)のほか、ワディ・ワクテル(G)、チャーリー・ドレイトン(B, Dr)、スティーヴ・ジョーダン(Dr, B)、アイヴァン・ネヴィル(Key)、ボビー・キーズ(Sax)、サラ・ダッシュ(Vo)という布陣=THE X-PENSIVE WINOSによる、生々しくもルーズでグルーヴィーなロック&ソウルを存分に味わうことができます。

選曲は『TALK IS CHEAP』からの楽曲を軸に、ストーンズでもカバーした「Too Rude」や「Time Is On My Side」のほか、ストーンズでのキース歌唱曲「Happy」に加え「Connection」のキース歌唱バージョンが楽しめるという、ソロツアーならではのサプライズも用意。ミック・ジャガーがストーンズナンバーをソロで歌ったとしても「そりゃそうだよな」くらいの感想しか出てきませんが(それも超代表曲しか歌わないしね)、自身が作詞・作曲に携わったストーンズナンバーを片割れのキースが歌うのはちょっと感動モノというか、違った意味での重みを感じます。しかもこの「Connection」、演奏含めめちゃくちゃカッコいい。ぶっちゃけ、原曲より好きです。

また、「Time Is On My Side」ではキースがボーカルをとるのではなく、サラ・ダッシュが歌うというのがまた素晴らしい。アルバムではその直前の「Make No Mistake」でキースと艶やかなデュエットを聴かせているサラですが、この「Time Is On My Side」のソウルフルさはストーンズバージョンよりもエモーショナルさが増しており、非常に好印象。ソロツアーではあるものの、あくまで“バンド”であることを強調しているところからもキースらしさが伝わります。ここでの実力発揮があったからこそ、翌年のストーンズのアルバム『STEEL WHEELS』(1989年)及び同ツアーへの参加が実現するわけですものね。

ちなみに、新規追加された3曲は「I Wanna Be Your Man」「Little T & A」のストーンズナンバー2曲と、ソロアルバムからの「You Don't Move Me」。レノンマッカートニー書き下ろしの「I Wanna Be Your Man」はキースのみならずバンドメンバーが一斉に歌うのがバンドっぽくてよろしいですし、「Little T&A」はストーンズバージョンよりもタイトなのがまた素晴らしい。「You Don't Move Me」はライブアルバムのこの流れでは少々地味なのでカットされたのでしょうね、という印象。だとしても、オマケとしては十分すぎるほど。できることなら、当日のライブと同じ流れに組み直してほしかったかな。まあ、あくまでオマケなので聴けるだけでも十分っちゃあ十分ですけどね。

まあとにかく、貴重なキースのソロツアーライブ音源を存分に味わえる貴重な1枚なので、ソロ3作ともども聴いておくべき重要作だと思います。

 


▼KEITH RICHARDS & THE X-PENSIVE WINOS『LIVE AT THE HOLLYWOOD PALLADIUM』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤ボックスセット / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月15日 (日)

AEROSMITH『CLASSICS LIVE II』(1987)

1987年6月にリリースされたAEROSMITH通算3作目のライブアルバム。

本作は『CLASSICS LIVE』(1986年)に続くシリーズ第2弾。前作はジョー・ペリー(G)&ブラッド・ウィットフォード(G)脱退後の音源も含まれていましたが、今作はオリジナルメンバーでの再始動後に行われたツアーから1984年12月31日(トム・ハミルトンの誕生日)のボストン公演を軸に、『DONE WITH MIRRORS』(1985年)を携えたツアーから「Let The Music Do The Talking」(1986年3月録音)、さらに1978年の伝説的イベント『California Jam II』 から「Draw The Line」を追加した“これぞAEROSMITH!”な内容。とはいえ、今回も全8曲と物足りないボリューム感が残念なところです。当時はまだ「完全収録」とか「ライブ再現」という概念よりも「作品としてパッケージすること」へのこだわりが強かったのと、あくまでLP1枚ものとして安価で提供することが大事だったんでしょうね。

選曲的にはどれも定番曲ばかりで、特に驚きはないかな。幸いというか前作と1曲も被っていないのだけは救い。「Let The Music Do The Talking」のライブテイクのカッコよさを堪能できたり、初期の「Movin' Out」を楽しめること、伝説の『California Jam II』 からの音源に触れることができるところは“売り”なんでしょうね。あと、トムの誕生日ということで「Walk This Way」の前にはスティーヴン・タイラー(Vo)が「Happy Birthday To You」を歌っているのも、オマケ要素としては大きいかも。

ところがですね。本作もサウンド(というかミックス)状態が非常に悪くてですね。なんですか、このモコモコとこもったドラムのミックスは! 前作から引き続きポール・オニールがプロデュースに携わっており、かつ今回はバンドもプロデューサーとしてクレジットされているのに、相変わらずの劣悪状態。前作を踏襲したものなんでしょうけど、ここだけは改善してほしかったなあ。

現在はシリーズ2作を1枚にまとめたCDも販売されていますが、この音なので統一感はありますよね(笑)。でも……今や「Let The Music Do The Talking」もライブDVD付属のCD音源で聴くことができますし、もっと言えば『CLASSICS LIVE』シリーズよりも音の良いブートがたくさんありますしね(苦笑)。これがいまだにカタログとして生き残っているのが不思議で仕方ありません。

この先、リミックス&リマスターされるなんてこともないでしょうし、「エアロの音源ならなんでも聴きたい!」というマニア向けの1枚ですね。これ聴くくらいなら『LIVE! BOOTLEG』(1978年)『A LITTLE SOUTH OF SANITY』(1998年)だけで十分ですよ!

 


▼AEROSMITH『CLASSICS LIVE II』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月14日 (土)

BUCKCHERRY『TIME BOMB』(2001)

2001年3月27日にリリースされたBUCKCHERRYの2ndアルバム。日本盤は同年3月14日に先行発売。

1999年という時代にスリージーでグラマラスなハードロックを展開したデビューアルバム『BUCKCHERRY』が中心に大きな注目を集めたBUCKCHERRY。本国アメリカでも最高74位(ゴールドディスク獲得)と新人ながらも大健闘を果たし、2000年のグラミー賞に「Lit Up」がノミネートされるほどの成功を収めました。特にここ日本では1999年末、大阪ドーム(現京セラドーム大阪)でのAEROSMITHMR. BIGのカウントダウンライブにオープニングくととして参加。2000年元日のZepp Tokyoを筆頭にジャパンツアーを敢行して好評を博しました。

1stアルバム完成後にヨギ(G)が加入し、初期のジョシュ・トッド(Vo)、キース・ネルソン(G)、JB(B)、デヴォン・グレン(Dr)という編成が完成。この5人で最初の最後のアルバムとなったのが、この『TIME BOMB』です。

前作ではテリー・デイトとSEX PISTOLSのスティーヴ・ジョーンズがプロデュースを手がけましたが、今作ではジョン・トラヴィス(キッド・ロック、STATIC-Xなど)が担当。前作でのかっちり作り込まれた作風と比べると、若干ですがラフさが感じられる作りとなっており、それがこのバンドが持つパンキッシュさに良い形で作用していると思います。

また、楽曲自体も前作より“隙”が多く感じられるスタイルで、BUCKCHERRYスリージーでグラマラス、かつデンジャラスというこのバンドに対して抱くパブリックイメージを体現したナンバーがズラリと並びます。オープニングを飾る「Frontside」の性急さ、「Time Bomb」でのスリリングさはまさにその象徴と言えるでしょう。

そんな中に豪快なハードロックを展開する「Ridin'」や「Slamin'」、ポップで親しみやすいロックンロール「Slit My Wrists」、アコースティックベースのサイケバラード「Helpless」、ブルージーなスローバラード「You」のような前作の延長線上にある楽曲が加わることで、アルバム自体にも幅が感じられる。パンク/スリージー一辺倒では収まりきらない、ジョシュ&キースのソングライターとしての才能が遺憾無く発揮されています。デビュー作が気に入った方なら、本作も問題なく楽しめる内容ではないでしょうか。

見事な形でデビュー作からアップデートを遂げたBUCKCHERRYでしたが、同年夏にJBが脱退。同年10月のジャパンツアー後にはヨギ、デヴォンが相次いで脱退し、2002年になるとジョシュまでもがバンドを離れ、解散を余儀なくされるのでした。

各ストリーミングサービスがスタートして以降、なぜか本作のみ日本国内では配信されていません。それどころか、最近ではデビュー作と最新アルバム『WARPAINT』(2019年)以外のアルバムは配信サービスによって配信数がだいぶ異なる歯抜け状態に。すべてが傑作とは言いませんが、この手のサウンドが好きなリスナーには欠かせないバンドだけに、ぜひとも全カタログの解放をお願いいたいところです。

 


▼BUCKCHERRY『TIME BOMB』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

 

2020年11月13日 (金)

AC/DC『POWER UP』(2020)

2020年11月13日にリリースされたAC/DC通算16枚目(オーストラリア国内では17枚目)のオリジナルアルバム。

前作『ROCK OR BUST』(2014年)からちょうど6年ぶりの新作となります。同作はその前の『BLACK ICE』(2008年)からも6年というスパンで届けられているので、このリリース間隔はもはや定番なのかもしれません。

しかし、バンドにとってこの6年は非常に波乱万丈な期間であり、正直僕自身『ROCK OR BUST』がラストアルバムになるんだろうな……と思っていたくらい。詳細については前作のレビューにて触れているので、そちらにてご確認を。

ここ1年ほど、秘密裏で今作の制作が進められており、都度都度SNSにそのレコーディング情報のすっぱぬきが飛び込んできましたが、どうやらブライアン・ジョンソン(Vo)、アンガス・ヤング(G)、スティーヴィー・ヤング(G)、クリフ・ウィリアムズ(B)、フィル・ラッド(Dr)という前作と同じ布陣でレコーディングしていることが明らかになると、いよいよその期待感はマックスにまで高まるわけです。

10月にリードトラック「Shot In The Dark」が公開された際、「これぞAC/DC!」と言わんばかりのキャッチーかつストロングスタイルのハードロックサウンドに、思わずガッツポーズをとってしまったものです。しかも、初公開されたのがエディ・ヴァン・ヘイレンの亡くなった当日だったこともあり、どれだけこの曲に救われたことか……。

それからしばらくして、本作をひと足先に聴く機会を得ました。リリースまでの半月強、どれだけこのアルバムをリピートしたことでしょう。それくらい、どこから切り取ってもシンプルでキャッチーで、ハードでパワフル……AC/DCそのものであり、全12曲41分があっという間に感じられるほど夢中になってしまう1枚なのです。

『ROCK OR BUST』は2〜3分前後の楽曲を中心に、全11曲で34分というびっくりするくらい短いアルバムでした。それはそれでよかったですし、今思えば“丸裸のAC/DC”ってくらいにロックンロールなアルバムだったと思います。それは裏を返せば、マルコム・ヤング(G)との最後のコラボレーションを経て、バンドの原点へと立ち返ることを意味したのかもしれません。

ところが、本作ではそのマルコムとのコラボで生み出されたネタを元に、「王道のAC/DC」を純化させる作業にこだわった。その結果、わかりやすさがより際立つ内容になったのではないかなと。この「マンネリなのに飽きが来ない」不思議なバランス感は、そういった努力の賜物なのかもしれません。

ポップでわかりやすい曲もあればリフ一発ですべてを持っていく曲もあるし、ライブでの盛り上がり必至のアップチューンも、一緒にシンガロングしたくなるアンセムも、全部揃っている。完全無欠のAC/DCを体現した本作は、間違いなく『BACK IN BLACK』(1980年)以降の集大成であり、『THE RAZORS EDGE』(1990年)以降の最高傑作だと断言できるものです。

これだからロックはやめられないのよ。

 


▼AC/DC『POWER UP』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外デラックス盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月12日 (木)

BIFF BYFORD『SCHOOL OF HARD KNOCKS』(2020)

2020年2月21日にリリースされた、ビフ・バイフォード(SAXON)の1stソロアルバム。日本盤未発売。

ご存知のとおり、ビフは1977年から現在にいたるまでポール・クィン(G)とともにSAXONを守り続けているオリジナルメンバーのひとり。約43年におよぶキャリアの中で、初めて個人名義でのアルバムをこのタイミングに発表しました。

プロデュースはビフ自身が担当。レコーディングにはフレドリック・オーケソン(G/OPETH)、フィル・キャンベル(G/PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSMOTÖRHEAD)、ガス・マクリコスタス(B/FUTURE SHOCKなど)、ニッブス・カーター(B/SAXON)、クリスチャン・ルンドクヴィスト(Dr/ex THE POODLES)、アレックス・ホルツヴァルト(Dr/TURILLI、LIONE RHAPSODY)、ニック・バーカー(Dr/VOICES)、デイヴ・ケンプ(Key, Sax/WAYWARD SONS)といったメンツが参加。大半の楽曲のベーシックトラックはフレドリック、ガス、クリスチャンが担当し、ビフは一部でベースもプレイしているようです。

内容的にはポップさが際立つ80年代後半以降のSAXON的ハードロックと、ここ数作で目立つアグレッシヴなSAXON的メタリックさが融合した1枚といったところでしょうか。序盤2曲(「Welcome To The Show」「School Of Hard Knocks」)がまさに前者の代表的楽曲群で、アルバム聴き始めで「なるほど、ソロではこっち側なのね」と思わせておいて、1分少々のインターバル「Inquisitor」を挟んで「The Pit And The Pendulum」「Worlds Collide」で後者路線でパワフルに攻める。

かと思えば、サイモン&ガーファンクルでおなじみの名曲「Scarborough Fair」でしっとり聴かせるスタイルも提示。序盤こそ原曲に近いアコースティックアレンジで、齢69歳のビフが渋みの増したボーカルを響かせますが、途中からバンドが加わり、フレドリックのムーディなギターソロとともに味わい深いアレンジで楽しませてくれます。

アルバム後半も、これぞというタイトルのパワーメタル「Pedal To The Metal」や「Hearts Of Steel」、トーンの落ち着いたメタルバラード「Throw Down The Sword」、アコースティック色の強い「Me And You」、目の前が開けるような壮大さのあるミディアムナンバー「Black And White」とバラエティに富んだ楽曲が並びます。要は「昨今のSAXONでのスタイルを軸に、もうちょっと幅の広いこともできるんですよ、そういう歌が歌えるんですよ」ということを提示した、バンドの延長線上のある1枚なのかな。『THUNDERBOLT』(2018年)のようなストロングスタイルのアルバムの後だけに、バンドではそのスタイルを崩すのを避け、ソロで“プラスα”に挑んだということなんでしょうかね。でも、それでいいと思います。

ビフの言葉によると、本作は彼の人生を振り返るようなものであると同時に、イングランドの歴史を踏まえた伝統的なものなんだとか。「Scarborough Fair」のような英国民謡をピックアップしたのも、その一環なのでしょう。

なんにせよ、年明けで70歳になるビフがこのタイミングに自身の半生を振り返るソロアルバムを発表したことは、NWOBHM40周年を迎えた2020年にとっては非常に重要なことではないでしょうか。非常によく作り込まれた王道ハードロックアルバム、オススメです。

 


▼BIFF BYFORD『SCHOOL OF HARD KNOCKS』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月11日 (水)

AC/DC『LIVE』(1992)

1992年10月下旬にリリースされたAC/DCのライブアルバム。日本盤は同年11月上旬に発売されています。

本作は全14曲入りCD1枚ものと、計23曲入りのCD2枚組コレクターズ・エディションの2仕様が流通していますが、ここでは2枚組バージョンについて触れていきます。

本作は1990年秋に発表されたオリジナルアルバム『THE RAZORS EDGE』を携えたワールドツアーから、同年8月のドニントン・パークでの『MONSTERS OF ROCK』でのヘッドライン公演を筆頭にイギリス、カナダ、ロシアでのライブ音源をまとめたもの。実際のライブのセットリストに添いながらも日替わりで披露された楽曲も含まれた、いわゆるライブベストアルバムとなっております。

当時の編成はブライアン・ジョンソン(Vo)、アンガス・ヤング(G)、マルコム・ヤング(G)、クリフ・ウィリアムズ(B)、そしてクリス・スレイド(Dr)というオリジナルアルバムでは『THE RAZORS EDGE』のみの編成。クリスのドラミングによる影響もあってか、アッパーな曲ではよりBPMが上がっており、「Whole Lotta Rosie」や「Let There Be Rock」ではどこかパンクロック的な香りすら感じらえる、この時期ならではの演奏を楽しむことができます。フィル・ラッド(Dr)在籍時には考えられないようなビート感ですが、僕はこの性急なAC/DCも嫌いじゃありません。

また、ボン・スコット(Vo)在籍時のライブアルバム『IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT』(1978年)と比べると、収録されている楽曲のハードロック度やヘヴィさが増し増しになっており、ボン・スコット在籍時のブルージーな楽曲やシンプルなロックンロールですら重さが備わっている。ボーカリストが変わったことでバンド自体が徐々に変質していったのを、収録楽曲からも伺えるはずです。

それと、前作からの10数年でAC/DCという存在がどんどん巨大化していき、気づけば8万人のスタジアムで演奏するようなビッグネームになっていたという事実もこのアルバムには刻まれております。まあそのへんは映像版(ドニントン・パークでのライブ映像作品)でより明確に確認することができることでしょう。もちろん、音源でもそのビッグなサウンドと聴衆たちの大歓声(随所に挿入される“アンガス”コールなど)からなんとなく理解できることでしょう。

収録曲に関しては文句のつけようのない、オールタイムベスト的内容です。『THE RAZORS EDGE』からの楽曲が多いのは当たり前の話ですが、同作自体久々の大ヒット作品だったので、そりゃそうなりますよね。オープニング「Thunderstruck」でのワクワク感からラストの「For Those About To Rock (We Salute You)」でのアグレッシヴさまで、気の抜きどころのない130分をぶっ続けでご堪能あれ。

 


▼AC/DC『LIVE』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月10日 (火)

NOTHING『THE GREAT DISMAL』(2020)

2020年10月30日にリリースされたNOTHINGの4thアルバム。日本盤は同年11月4日に発売されています。

前々作『TIRED OF TOMORROW』(2016年)のツアー後に脱退した元DEAFHEAVEN、現WHIRRのニック・バセット(B/WHIRRではギタリスト)に代わり、USハードコアバンドJESUS PIECEのフロントマンであるアーロン・ハードが新たに加入。新編成で制作した『DANCE ON THE BLACKTOP』(2018年)ではメランコリックさが過去イチな傑作ぶりを発揮していましたが、2019年初頭にオリジナルメンバーのブランドン・セッタ(G, Vo)が個人的事情でバンドを脱退してしまいます。過去作ではプロデュースワークに参加するのみならず、ソングライティング面でもかなり貢献してきたメンバーだけに、この脱退はバンドにとって大きな痛手だったはずです。

ここ数作、アルバムごとにメンバーチェンジが続き不安定な状態のNOTHING。しかし、バンドは新たにインディアナ州ノースウェストインディアナ出身のシューゲイズ/スラッジ/ハードコアバンドのCLOAKROOMのフロントマン、ドイル・マーティン(G, Vo)を新メンバーに迎え、通算4作目のアルバム制作に臨んだわけです。

今作では前々作『TIRED OF TOMORROW』を手がけたウィル・イップ(CODE ORANGEPANIC AT THE DISCOTOUCHÉ AMORÉなど)をプロデューサーに再起用。90年代のシューゲイザーやオルタナティヴロック色濃厚で、ドリーミーなハーモニーを前面に打ち出したキャッチーかつ尖った楽曲群がズラリと並ぶ良作に仕上がっています。オープニング「A Fabricated Life」から掴みは完璧。「Say Less」や「Catch A Fade」あたりでは往年のMY BLOODY VALENTINEや初期RIDEを彷彿とさせるスタイルで、聴き手を90年代前半にタイムスリップさせてくれるのではないでしょうか。

かといって、本作はそこまでソスタルジックな“90年代回帰”な作品集でもなく、2000年代以降の尖りっぷりも随所に散りばめられており、一筋縄ではいかないクセの強さは相変わらず。要所要所に用意されたサウンドエフェクトや楽器の定位のこだわりなど、彼らならではのトリッキーなフックにも(特にヘッドフォンなどで聴いていると)思わずニヤッとしてしまうはずです。

初期はDEAFHEAVENとの関係性などもあり、一部からはブラックゲイズ界隈にカテゴライズされたりもしましたが、このニューウェイヴ以降のバンド直系のサウンドは、むしろDEFTONESあたりに近いんじゃないかという気すらします(別にDEFTONESの影響下にあるという意味ではありませんよ)。そういう意味では、NOTHINGってUSアンダーグラウンドのヘヴィロックシーンにおける突然変異なのかな。そう思わないと、いろいろ説明できないことが多すぎますし。

ドリーミーさは相変わらずなんだけど、今作はどこかダークで物悲しく、ザラついた感が強い。この質感、大好物すぎます。アルバムを重ねるごとに過去を超えていく、現時点での最高傑作です。

 


▼NOTHING『THE GREAT DISMAL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月 9日 (月)

WHITESNAKE『LOVE SONGS』(2020)

2020年11月6日にリリースされたWHITESNAKEの最新コンピレーションアルバム。

本作は今年6月発売の『THE ROCK ALBUM』に続く、<Red, White and Blues Trilogy>と題した新編集によるベストアルバム三部作の第2弾。Red=ラブソング、White=ロックアンセム、Blue=ブルースをテーマに選曲された楽曲群が、リマスター&リミックスにより新たな形に生まれ変わりまとめられています。

第2弾の本作はRed=ラブソングということで、最初はバラードベストなのかな?と想像していたんですが、そういうことではないらしく、いろんな形のラブソングをまとめた(ってWHITESNAKEって基本ラブソングばかりですよね?)、スウィートな楽曲中心の1枚に仕上がっています。選曲範囲は『THE ROCK ALBUM』同様、『SLIDE IT IN』(1984年)以降のアルバム(デヴィッド・カヴァーデイルのソロアルバム『INTO THE LIGHT』含む)からセレクトされているので、アリーナロック調のビッグサウンドで統一感はかなり強いと思います。

以下、収録曲の内訳です。

M-6:『WHITESNAKE』(1987年)
M-2、10:『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)
M-5、9:『RESTLESS HEART』(1997年)
M-4、11、12:『INTO THE LIGHT』(2000年/ソロ)
M-3、8:『GOOD TO BE BAD』(2008年)
M-1、13:『FOREVERMORE』(2011年)
M-7、14、15:未発表曲。『INTO THE LIGHT』アウトテイク

前作では最新アルバム『FLESH & BLOOD』(2019年)からのアウトテイクが1曲含まれていましたが、今回はソロ作『INTO THE LIGHT』からのアウトテイクが3曲も。意外と世に出ていない曲って多いんですね。あと、『SLIDE IT IN』から1曲も選ばれていないのが意外でした。

オープニングの「Love Will Set You Free」は意外な1曲でしたが(まあ、タイトルどおりラブソングですからね)、以降はミディアム/スローナンバー中心にセレクト。「Too Many Tears」は『RESTLESS HEART』バージョンではなくてソロのほうなんですね。

今回も原曲にはなかった音が加えられていたり、全体の音像を調整したりと、リミックスと称していろいろ手を加えた曲が多数存在します。耳馴染みの強い「The Deeper The Love」とか「Is This Love」とか、慣れないと驚きますよね(苦笑)。ただ、アルバムごとにエンジニアが異なることで生じたミックスやサウンドプロダクションのバラつきが、よい意味で解消されて統一感が増しているのは興味深いなと思いました。それを良しとするか否かは、聴き手によって大きく異なるでしょうが、僕は好意的に受け取っています。

気になる未発表曲ですが、M-7「With All Of My Heart」はブルージーなスローバラード。個人的には大好物だけど、この並びだと地味ですね。歌メロも変に間延びした感が強いし。M-14「Yours For The Asking」は若干アップテンポめのポップチューンで、M-15「Let's Talk It Over」は賛美歌のようなオルガンの音色が気持ち良いスローバラード。どっちもソロならではといったところでしょうか。落ち着いたトーンで歌っており、シャウトしまくってないところに好感が持てます。

今作のようなミディアム/スローナンバー中心のコンピ盤というと、過去には『UNZIPPED』(2018年)というアコースティック主体の作品との共通点も多数見受けられますが、僕としては今作のほうが好みかな。『THE ROCK ALBUM』はクドすぎたので(笑)、今回はしばらくリピートできそうな1枚だと思います。

 


▼WHITESNAKE『LOVE SONGS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月 8日 (日)

URIAH HEEP『LOOK AT YOURSELF』(1971)

1971年11月にリリースされたURIAH HEEPの3rdアルバム。日本では『対自核』の邦題で長きにわたり親しまれてきた1枚です。

タイトルトラック「Look At Yourself」や「July Morning」といった名曲が収められていることから、本作を入門編としてURIAH HEEPの音に触れるというビギナーも昔は多かったのではないでしょうか。かくいう自分もそのクチで、GAMMA RAYがデビューアルバム『HEADING FOR TOMORROW』(1990年)で「Look At Yourself」をカバーしていたのをきっかけに同曲に触れ(もちろん『対自核』という邦題やジャケットのことは存じておりましたが、曲は聴く機会なく)、19歳のときに初めてこのアルバムに手を出したのでした。

……「出したのでした。」と書いておきながらなんですが、実はURIAH HEEPって本作とベスト盤くらいしかまともに聴いたことがなかったんですよ、つい最近まで。それこそ、今みたいにサブスクで手軽に聴くことができれば「あ、そういやほかのアルバムって聴いたことないな。ちょっといろいろつまんでみよう」ということになるのですが、レンタルCDショップも洋楽は下火になり、いくら安くなったとはいえ輸入盤であれこれ購入するというのもね。うん、なかなかハードル高いですよね。

ホント、今の人たちは羨ましいです(笑)。

さて、本編に戻ります。サブスクではリイシューなどでボーナストラックがいっぱい入っていますが、アルバム本編はA面3曲、B面4曲の計7曲入りで約41分という適度な尺。A面はいきなり「Look At Yourself」からパワフルにスタートします。今さら何も言うことなしの名曲。あ、GAMMA RAYもいいけど、日本のザ・ピーナッツのカバー(ライブテイク)もパーカッションを原曲以上の強調したカッコいいアレンジでオススメです。

続く「I Wanna Be Free」も適度なポップさがあってなかなかですが、本サイドのクライマックスは10分半におよぶ大作「July Morning」ですよね。ハードロックとプログレの中間と言いたくなるようなこの叙情的なナンバー、いかにも日本人好みのメロディとコード使いがたまらないなと。ケン・ヘンズレー(Key)のオルガン、ゲストプレイヤーのマンフレッド・マンによるモーグ・シンセがまた良いんですよね(そういえば、あとから知ったのですが、デヴィッド・バイロンという専任シンガーがいながら、「Look At Yourself」はケンが歌っているという不思議)。

B面もサイケなハードロックにミック・ボックス(G)のスライドプレイを前面にフィーチャーした「Tears In My Eyes」や、ケンのオルガンプレイを思う存分楽しめる8分半におよぶ「Shadow Of Grief」とダイナミックな楽曲が続きます。かと思えばソウルフルな「What Should Be Done」が変化球で飛び込んできたり、最後はハードブギー「Love Machine」でパワフルに締めくくったりと、なんだかんだでブリティッシュハードロック好きにはたまらない内容ではないでしょうか。

9月には本作発表後にバンドに加入したリー・カースレイク(Dr/のちにオジー・オズボーンのソロ作品にも参加)が亡くなり、それもあって名前をよく目にして久しぶりにほかのアルバムを聴いていたところでした。それに加えて、つい数日前にはケン・ヘンズレーの訃報が飛び込んできたばかり。ここ数日、またURIAH HEEPブームが来て、このアルバムまでたどり着いたところでした。本当にいいアルバムですね。子供の頃に聴いたときより、今のほうがしっくり来るものがあります(それだけ年を取ったってことかしら……)。

 


▼URIAH HEEP『LOOK AT YOURSELF』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月 7日 (土)

SYSTEM OF A DOWN『PROTECT THE LAND / GENOCIDAL HUMANOIDZ』(2020)

2020年11月6日、SYSTEM OF A DOWNが約15年ぶりの新曲を突如発表しました。

SYSTEM OF A DOWNは2005年11月に5thアルバム『HYPNOTIZE』をリリースして以降、新曲をまったく発表していません。2006年に一度活動を止め、2011年からは不定期ながらもライブ活動を続けてきた彼ら。特にここ数年は新曲をレコーディングしている様子がメンバーのSNSからも伝わってきましたが、新曲制作に対するメンバー間のリレーションシップがうまくいっていないのか、今日まで世に出ることはありませんでした。

ところが、バンドは11月6日にSNSを通じて、以下の声明を発表しました(以下、一部ですが意訳になります)。

SYSTEM OF A DOWNは15年ぶりに新しい音楽をリリースしました。今こそ、私たち4人が統一された声として非常に重要なことを発言するタイミングです。これらの2つの曲、「Protect The Land」と「GenocidalHumanoidz」はどちらも、私たちの文化的故郷であるアルツァフとアルメニアで起きている悲惨で深刻な戦争について語っています。

これらの曲を皆さんと共有できることを誇りに思います。ぜひ聴いて楽しんでください。さらに、それらの起源について学ぶために勉強しておくことをお勧めします。一度学んだら、そこで起こっている恐ろしい不正や人権侵害について声を上げることを願っています。そして、悪影響を受けた人々を支援するために、少額でも構わないので寄付をお願いします。

(中略)

多くの方にとって、音楽を聴くのに便利な方法があることを認識しています。そのため、何よりも慈善活動としてこれらの曲をダウンロードする機会を検討してください。ダウンロードの定価を最小限の寄付と考えてください。あなたにはその力があり、寄付することに寛大であるなら、SYSTEM OF A DOWNはあなたの慈悲にさらに感謝するでしょう。このダウンロードから得た利益は、アルツァフとアルメニアで困っている人々に必要な物資を提供するため、アメリカを拠点とする慈善団体であるアルメニア基金に寄付されます。

音楽と歌詞はそれ自体を物語っています。アルツァフのために広める必要があります。

ピース。

ダロン、シャヴォ、ジョン、サージ。

ここで語られている「アルツァフとアルメニアで起きている悲惨で深刻な戦争」とは、2020年ナゴルノ・カラバフ紛争のこと。Wikipediaはじめさまざまな場所で調べることができるので、ぜひ一度目を通しておくことをオススメします。

アルメニアをルーツに持つ彼らだからこそ、この事件(戦争)が彼らにもたらした影響は相当大きなものがあり、この戦争に注目を集めるためにバンドはひとつに結束し、新たな表現につなげた。こういう形で新曲を耳にすることができるとは思ってもみませんでしたが、彼らのスタンスを考えれば非常に納得いくものがあります。

歌詞にしても、まさにこの件をストレートに熱かったもので、エモーショナルに響くミディアムナンバー「Protect The Land」は言わずもがな、2分半の攻撃的なアップチューン「Genocidal Humanoidz」もそのタイトル(大量虐殺する人間モドキ、といったところでしょうか)から怒りが伝わります。どちらの楽曲もサウンド、メロディ的には過去のSYSTEM OF A DOWNの延長線上にあるもので、15年というブランクはあるものの、しっかり『MEZMERIZE』と『HYPNOTIZE』からの続きであることが伺えます。

この怒りがアルバムにまでつながるとは正直思っていませんが、2020年にこういうサプライズが待ち受けているとは思ってもみませんでしたし、こちらも心の準備ができていないのに曲を購入(ぜひBandcampで定額以上のご購入を!)して聴いてしまったものですから、心がぐちゃぐちゃなまま数時間リピートしてしまいました(苦笑)。

とにかく。2001年のフジロック以来、来日も実現していない日本のファンにとっては、ようやく心の底から「おかえりなさい!」と言えるタイミングなのかな。と同時に、世界中で起きているいろいろな悲惨なことに改めて目を向ける、絶好の機会にもなるんじゃないかと思っています。これはストリーミングで済ませず、ぜひデジタルダウンロード購入することをオススメします。

 


▼SYSTEM OF A DOWN『PROTECT THE LAND / GENOCIDAL HUMANOIDZ』
(amazon:MP3
(bandcamp:MP3

 

2020年11月 6日 (金)

AC/DC『IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT』(1978)

1978年10月にリリースされたAC/DC初のライブアルバム。

『ギター殺人事件 AC/DC流血ライヴ』の邦題で長きにわたり親しまれている本作は、当時の最新アルバム『POWERAGE』(1978年)リリース直前の1978年4月30日にグラスゴーのApollo Theatreにてライブレコーディングされたもの。今作のあとに出世作『HIGHWAY TO HELL』(1979年)を発表しているのもあり、本作はそれ以前のAC/DCにおけるベストヒット的内容と言えるでしょう。

ボックスセット同梱作品を除けば、本作がボン・スコット(Vo)在籍時唯一のライブアルバムであり、次のライブ作品『LIVE』(1992年)までは本作こそがAC/DC最強のライブアルバムとして親しまれてきました。まあ、そもそも『LIVE』はブライアン・ジョンソン(Vo)が歌っているので、同じ曲が含まれているとはいえ別モノと切り分けて考えるのが妥当かと思います。

ちなみにこの4月30日にグラスゴー公演では全12曲が披露されており、そのうち10曲をアルバムに収録(カットされたのは「Dog Eat Dog」と「Filling Thing」)。曲順は一部異なるものの(実際のライブでは2曲目だった「Problem Child」がアルバムでは5曲目など)、アルバムの構成としては非常に流れもよく、ロックンロールバンドとしてのAC/DCをベストな形で表現しているように映ります。

そう、この時期のAC/DCはハードロックというよりはハードブギー、もっと言えばシンプルにロックンロールバンドなんですよ。オープニングを飾る「Riff Raff」とかハードロック調ではあるものの、コードなんてシンプルなブルース進行ですし(LED ZEPPELINの「Rock And Roll」に通ずるものがありますよね)、「Bad Boy Boogie」から「The Jack」の流れなんてまさに王道ロックンロールですから。ハードロック色が強まったのって、結局ブライアン加入後の『BACK IN BLACK』(1980年)以降なんじゃないかな。だから、先の『LIVE』と切り分けて考えるのは当然なのです。

全10曲で約53分(アナログ1枚もの)は当時で考えると長尺ですし、アナログ盤で聴くラストの「Rocker」の音の悪さといったら、それはそれは(笑)。ですが、「Whole Lotta Rosie」以降の後半の熱量は特筆すべきものがあります。実際のライブとは異なる流れながらも、そのあとに当時の最新曲「Rock 'N' Roll Damnation」と初期の代表曲「High Voltage」を挟んで「Let There Be Rock」「Rocker」へと続く構成は最高以外の何ものでもありません。これ以上はないでしょ?ってくらい、究極の流れなのです。高校生のときから何百回、何千回とこの流れに興奮したことか。

アンガス・ヤング(G)のギタープレイの凄みやボン・スコットのフロントマンとしてのカリスマ性も存分に伝わる本作、初期AC/DCの入門編としてオススメの1枚です。

 


▼AC/DC『IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月 5日 (木)

AC/DC『WHO MADE WHO』(1986)

1986年5月下旬にリリースされたAC/DC初のコンピレーションアルバム。

本作はスティーヴン・キングが自らの短編作品を初めて自ら監督・映像化した映画『Maximum Overdrive(地獄のデビル・トラック)』のサウンドトラックとして制作されたもの。キング自身がAC/DCのファンであることから実現した企画で、アルバムには全9曲され、うち3曲が本作のために制作された新曲です。

タイトルトラック「Who Made Who」は本作のために用意された新曲のひとつで、AC/DCのポップサイドが強く表出した良曲。当時、よくMTVでこの曲のMVが流れていたので、そこで初めてAC/DCというバンドを認識した記憶があります。実際、初めてちゃんと聴いたアルバムも本作でしたしね(レンタルにて。初めて盤で購入したのは次作『BLOW UP YOUR VIDEO』です)。

そのほかの新曲2曲「D.T.」「Chase The Ace」はAC/DCには珍しいインストゥルメンタルナンバー。おそらく映画のサウンドトラックとして制作されたものかと思いますが、実際に使用されたのでしょうか(実は映画、未見なんですよね。キングのファンですが、自身が失敗作と認めるものをわざわざ探してまで観るのもねえ……)。どちらも、まあ“らしい”っちゃあらしい仕上がりですが、マストで聴くべき楽曲とも言い難い。本作に関してはタイトルトラックの印象が強いので、ほかの新曲はおまけ程度という認識かな。

で、これら3曲以外の6曲はボン・スコット(Vo)時代の「Ride On」含む既発ナンバーで構成。「You Shook Me All Night Long」「Hells Bells」(『BACK IN BLACK』収録)、「For Those About To Rock (We Salute You)」(同タイトルアルバム収録)、「Sink The Pink」「Shake Your Foundations」(『FLY ON THE WALL』収録)と直近の3作からのシングル曲が中心で、なぜか1983年の『FLICK OF THE SWITCH』からは1曲も選ばれず。まあそういう内容ということもあって、本アルバムは80年代前半のAC/DCを手軽に楽しめる“セミ・ベストアルバム”的作品として、長きにわたり重宝されてきた1枚でもあります。

結果、当時はチャート上では全米33位と低調でしたが、セールス的には現在までに500万枚を超えるセールスを記録。のちに全キャリアを総括するようなライブアルバム『LIVE』(1992年)や映画『Iron Man 2(アイアンマン2)』のサウンドトラックも発売されていますが、しばらくは本作が(アメリカでは)AC/DC入門編的な1枚だったようです。

「Who Made Who」って今聴くと、ポップなわりに硬質なミックスなんですよね。ヘッドフォンで聴くとズシズシと体に響くドラムの音が気持ちよいし、かつアンガス・ヤング(G)のギタープレイも派手だし。この曲のスタジオ音源が聴けるのは本作だけなので(ボックスセット『BACKTRACKS』配信バージョンには12インチ・ロングバージョン収録)、そういった意味でもファンは一度は手を出しておくべき1枚だと思います。

 


▼AC/DC『WHO MADE WHO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月 4日 (水)

SEVENDUST『BLOOD & STONE』(2020)

2020年10月23日にリリースされたSEVENDUSTの13thアルバム。日本盤未発売。

Rise Records移籍第1弾となった前作『ALL I SEE IS WAR』(2018年)から2年5ヶ月ぶりに発表される本作は、引き続きマイケル“エルヴィス”バスケットがプロデュースを担当。故クリス・コーネルSOUNDGARDEN)へのトリビュートとしてカバーされた「The Day I Tried To Live」を含む全13曲は、20年以上のキャリアを持つ彼らならではの安定感に満ちた仕上がりとなっています。

適度なヘヴィさとグルーヴ感、甘すぎないメロディと叙情的な空気感など、すべてがバランスよく配分されたアンサンブルは、時にニューメタルと揶揄されてきましたが、もはやここまで長く続けてきたらそれはひとつの個性であり、誰にも文句を言われる筋合いがないもの。初期の異端さは完全に払拭されてしまいましたが、ベテランならではの高品質な楽曲群を楽しむことができる本作は、非常に優れたHR/HMアルバムではないでしょうか。

冒頭3曲(「Dying To Live」「Love」「Blood From A Stone」)の流れは文句なしですし、どこからどう聴いても“これぞSEVENDUST!”と呼べるものばかり。これらに続くミディアムバラード「Feel Like Going On」の美しさ、そこから再びヘヴィさが復調する「What You've Become」、不思議な浮遊感がクセになる「Kill Me」など、とにかくどの曲もメロディとアレンジの作り込みが素晴らしく、1曲も聴き逃せない流れと言えるでしょう。

中盤以降も、どことなくサイケさを漂わせる「Nothing Left To See Here Anymore」、ザクザクしたリフの刻みとノリの良さ、なめらかなメロディが耳に残る「Desperation」、哀愁味に満ちた世界観が堪らない「Criminal」、グルーヴィーなリズムと個性的なギタープレイが魅力の泣きメロナンバー「Against The World」、グランジからの影響を見事に昇華させた「Alone」、賛美歌のようなイントロからカオスへと突入する「Wish You Well」と良い流れを作り、ラストはSOUNDGARDENの名曲をSEVENDUST流にカバーした「The Day I Tried To Live」で少し光を掴んでエンディングに到達するわけです。

「Dying To Live」から始まる「The Day I Tried To Live」というストーリーも素敵だと思いましたし、リードトラック「Blood From A Stone」に込められた「勝利や敗退、最高の時や最悪な時など、俺たちが今までに経験してきたすべての出来事に刺激を受けて作り上げた曲さ。俺たちにはまだみんなに差しだせるものがあり、そしてまだ伝えたい言葉がたくさんある。メンバー全員の思いを全て引き出したような曲なんだ」(ギタリストのクリント・ロワリーのコメント)という言葉が本作を代弁しているようにも感じられました。こんな時代だからこそ、下や後ろを向くだけでなく、停滞を気にせずに前や上を向いたりして光を掴んでほしい。そんなことを感じさせてくれるポジティブな1枚です。

 


▼SEVENDUST『BLOOD & STONE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月 3日 (火)

AC/DC『FOR THOSE ABOUT TO ROCK (WE SALUTE YOU)』(1981)

AC/DCが1981年11月にリリースした7thアルバム(海外にて。本国オーストラリアでは通算8枚目)。日本では『悪魔の招待状』の邦題でおなじみの1枚です(タイトル、悪魔とまったく関係ないんですけどね)。

ブライアン・ジョンソンを新たなフロントマンに迎え、亡きボン・スコットの追悼盤として制作された前作『BACK IN BLACK』(1980年)が全米4位まで上昇。現在までにアメリカでは2500万枚以上ものセールスを誇るメガヒット作として知られています。その勢いのまま、1年4ヶ月という短いスパンで届けられた本作は初の全米1位を獲得。セールスは前作より劣るものの、それでも400万枚を超えるヒットアルバムとなりました。

前々作『HIGHWAY TO HELL』(1979年)から3作連続でロバート・ジョン・マット・ラングがプロデュースを手がけた本作は、特に前作でのタイトで音の密度が高いミックスをさらに洗練させた、キリキリした高い音圧が魅力のヘヴィ・ロックンロールアルバムに仕上げられています。これ、最初はアナログ盤で聴いたと記憶しているんだけど、冒頭の「For Those About To Rock (We Salute You)」や「Inject The Venom」での迫力ある音像や音の密度に鳥肌を立てた記憶があります。特に大砲の音をフィーチャーした前者の豪快さは圧巻で、その後CDで聴いたときは「……あれ、ショボくない?」とがっかりしましたが、最新のリマスター音源は“あのとき”により近づいた音になったんじゃないかと思います。

本作から今でもライブで披露されているのは表題曲ぐらいで(しかも、ライブのエンディングでおなじみの1曲ですしね)、それ以外の楽曲の印象が非常に薄いアルバムかもしれません。事実、僕自身も10〜20代の頃は「『BACK IN BLACK』と比べると変にシリアスすぎて、通して聴くのがキビシイんだよなぁ」なんて思っていたし、その後しばらくは「AC/DCで真っ先に聴くべきアルバムではないよ」なんて触れて回ったくらい。ですが、そこそこ大人になってから聴き返したらカッコいいのなんの。意外と悪くないんですよ(当たり前か、『BACK IN BLACK』の後釜として制作されたんだから)。

確かに「Highway To Hell」や「You Shook Me All Night Long」のようなキャッチーさには欠けるものの、上記のような楽曲や「Snowballed」「Breaking The Rules」、本作中で比較的ポップなタッチの「C.O.D.」、ラストを豪快に飾る「Spellbound」など良曲も多数。メロディの詰めが甘いのは制作期間の短さにもよるでしょうし、『BACK IN BLACK』制作時のようにメンバーを駆り立てる大きな出来事もなかったことも影響して、こういう内容で収まったんでしょうね。もう半年時間を与えていたら、さらなる名盤になったのかな……いや、わかりませんが。

ただ、ピークである『BACK IN BLACK』を最後に少しずつ右肩下がりが始まったのは間違いない事実でして、本作のヒットを最後にバンドはしばらく低迷期に突入してしまいます。それについては、また別の機会に。

 


▼AC/DC『FOR THOSE ABOUT TO ROCK (WE SALUTE YOU)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年11月 2日 (月)

PANTERA『REINVENTING THE STEEL: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2020)

2000年3月(日本は4月)にリリースされたPANTERAの9thアルバムにしてラスト作を、20周年を記念してスペシャルエディション化。海外では2020年10月30日に発売され、日本盤は同年11月18日リリース予定です。

2003年にフィリップ・アンセルモ(Vo)とほかのメンバーが決裂し、そのまま解散。ダイムバッグ・ダレル(G)とヴィニー・ポール(Dr)はDAMEGEPLANを結成するのですが、ご存知のとおり2004年12月8日にダレルが不幸に見舞われ死去。黄金期PANTERAの再結成は二度と叶わなくなってしまうわけです。

結果として最終作となった本作、過去のレビュー「リリース当時に聴いたときは『ヘヴィでカッコいいけど、ちょっと聴き手を選ぶ内容かなぁ』と」「が、あれから18年経った今聴いてみると、意外とキャッチーな1枚であることに気づかされます」と書きましたが、そこから2年経った今……つまり、オリジナルリリースから20年経った2020年に聴いても、その思いは変わらず、非常に徹底して作り込まれた「ヘヴィなのに意外と触れやすい」1枚であることが再確認できます。

今回のアニバーサリーエディションはCD3枚組で、DISC 2にはスターリング・ウィンフィールド、メンバーのダイムバッグ・ダレル&ヴィニー・ポールがプロデュース&ミックスを手がけたオリジナル盤のリマスターバージョン(およびラジオエディット4曲)が収録されています。もとのバージョンよりも若干ギターの音色がふくよかになったように感じられるのですが、いかがでしょう。

今回特筆すべきポイントはそこではなく、DISC 1とDISC 3の内容ですよね。DISC 1にはアルバム本編を、『COWBOYS FROM HELL』(1990年)から『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(1996年)までのメジャー4作品を手がけたテリー・デイトが再ミックス。こちらがですね、非常に現代的なサウンドに生まれ変わっており、スリリングかつヘヴィなPANTERAの姿を再び拝めるのですよ。ぶっちゃけこの音で当時リリースされていたら、もっと高く評価されていたんじゃないか……というのは言い過ぎでしょうか。このバージョン、しばらくヘビロテしてしまいそうです。

DISC 3はアルバム未収録曲と同時期に制作/発表されたカバー曲と、『REINVENTING THE STEEL』収録曲の別ミックスバージョンで構成。「Avoid The Light」は映画『DRACULA 2000』、「Immortally Insane」は映画『HEAVY METALL 2000』の各サウンドトラック提供のアルバム未収録オリジナル曲。「Cat Scratch Fever」はテッド・ニュージェントのカバーで映画『DETROIT ROCK CITY』サントラ提供曲。「Hole In The Sky」はBLACK SABBATHのカバーで、EP「Revolution Is My Name」が初出、その後ベストアルバム『THE BEST OF PANTERA: FAR BEYOND THE GREAT SOUTHERN COWBOYS' VULGAR HITS!』(2003年)にも再収録。「Electric Funeral」も同じくBLACK SABBATHのカバーで、こちらはサバスのトリビュートアルバム『NATIVITY IN BLACK II: A TRIBUTE TO BLACK SABBATH』(2000年)が初出となります。ファンなら一度は耳にしたことのあるテイクかと思いますが、こうやってまとめて楽しめるのはありがたいものです。

で、注目の別ミックスですが、こちらはすべて“ボーカル抜きのラフミックス”という完成数歩手前のバージョン。全10曲、すべての別テイクが収められており、ミックス自体はリマスタリングが施されたDISC 1、DISC 2には劣るものの、楽器隊の一丸となったプレイを、ギターソロまで含めてじっくり楽しめるという意味では非常に貴重かもしれません。まあ、完全にマニア向けですね。

というわけで、すでにオリジナル盤を楽しみ尽くした輩にはDISC 1(とDISC 3)、これから本作に手を出そうと思っている人は……まずはオリジナルバージョンからでいいと思います(笑)。無理にミックス違いやインストバージョンまで含め、同じアルバムを3周もする必要はないでしょう。

にしても、今聴いても「Hellbound」やら「Revolution Is My Name」やら、SLAYERのケリー・キング(G)がアウトロでギターをプレイしている「Goddamn Electric」など、本当に名曲揃いだなあ……この“続き”聴いてみたかったなあ。もはや二分の一がこの世にいないことを考えると残念でなりませんが。

 


▼PANTERA『REINVENTING THE STEEL: 20TH ANNIVERSARY EDITION』
(amazon:国内盤3CD / 海外盤3CD / MP3

 

2020年11月 1日 (日)

2020年9月のアクセスランキング

ここでは2020年9月1日から9月30日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2020年8月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新更新/→1位)

2位:MARILYN MANSON『WE ARE CHAOS』(2020)(※2020年9月13日更新/NEW!)

3位:METALLICA『S&M2』(2020)(※2020年8月29日更新/↑6位)

4位:IHSAHN『PHAROS』(2020)(※2020年9月14日更新/NEW!)

5位:STRYPER『EVEN THE DEVIL BELIEVES』(2020)(※2020年9月8日更新/NEW!)

6位:BRING ME THE HORIZON『OBEY (with YUNGBLUD)』(2020)(※2020年9月9日更新/NEW!)

7位:CODE ORANGE『UNDER THE SKIN』(2020)(※2020年9月11日更新/NEW!)

8位:BAD MOON RISING『BLOOD』(1993)(※2020年9月16日更新/NEW!)

9位:RAVEN『METAL CITY』(2020)(※2020年9月21日更新/NEW!)

10位:EN MINOR『WHEN THE COLD TRUTH HAS WORN ITS MISERABLE WELCOME OUT』(2020)(※2020年9月12日更新/NEW!)

 

11位:BRING ME THE HORIZON『Music to listen (中略) to-GO TO』(2019)(※2019年12月31日更新/↓8位)

12位:KITTIE『SPIT』(2000)(※2020年9月15日更新/NEW!)

13位:BAD MOON RISING『OPIUM FOR THE MASSES』(1995)(※2020年9月17日更新/NEW!)

14位:KING'S X『FAITH HOPE LOVE』(1990)(※2020年9月7日更新/NEW!)

15位:DOKKEN『THE LOST SONGS: 1978-1981』(2020)(※2020年9月1日更新/NEW!)

16位:ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』(2016)(※2020年9月3日更新/NEW!)

17位:CHIP Z'NUFF『STRANGE TIME』(2015)(※2020年9月20日更新/NEW!)

18位:LYNCH MOB『WICKED SENSATION REIMAGINED』(2020)(※2020年9月2日更新/NEW!)

19位:HELL FREEZES OVER『Hellraiser』(2020)(※2020年9月4日更新/NEW!)

20位:CHEAP TRICK『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994)(※2020年9月19日更新/NEW!)

 

21位:MASTODON『MEDIUM RARITIES』(2020)(※2020年9月22日更新/NEW!)

22位:DEFTONES『KOI NO YOKAN』(2012)(※2020年9月23日更新/NEW!)

23位:ZAKK SABBATH『VERTIGO』(2020)(※2020年9月29日更新/NEW!)

24位:U.D.O. & Das Musikkorps der Bundeswehr『WE ARE ONE』(2020)(※2020年9月6日更新/NEW!)

25位:DEFTONES『OHMS』(2020)(※2020年9月28日更新/NEW!)

26位:NINE INCH NAILS『THE FRAGILE』(1999)(※2019年1月25日更新/↓9位)

27位:YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』(2018)(※2020年9月10日更新/NEW!)

28位:ACCEPT『RESTLESS AND WILD』(1982)(※2020年9月5日更新/NEW!)

29位:BRING ME THE HORIZON『SUICIDE SEASON』(2008)(※2020年9月25日更新/NEW!)

30位:WHITESNAKE『WHITESNAKE (1987)』(1987)(※2017年2月3日更新/↓24位)

 

9月は30エントリー中、25エントリーが当月更新分にあたり、そのうち14エントリーが新作レビューでした。当月エントリーでほぼ上位30を占めるのは最近ではなかったこと。非常にありがたいです。

31位以下に目を向けると、8月更新分や上位30に入らなかった9月更新分エントリーが多数含まれており、これまでのカタログ的に過去の記事が安定して読まれる傾向とは異なるものを感じます(もちろん、これまで上位入りしていた過去エントリーも数字を落としているものの、相変わらず読まれています)。仕事が忙しくなりはじめ、なかなか新譜とじっくり触れる時間が限られてきましたが、今後も可能な限り新譜を積極的に紹介していけたらと思います。

CARCASS『DESPICABLE』(2020)

2020年10月30日にリリースされたCARCASSの最新EP。日本盤は『鬼メスの刃 EP』という、最高のタイミングに最高の邦題で発売中です(笑)。

まとまった音源集としては『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』(2014年)以来6年ぶり、新曲音源としては昨年12月に発表された「Under The Scalpel Blade」以来10ヶ月ぶりのリリース。本来なら今年8月に『SURGICAL STEEL』(2013年)以来7年ぶりのニューアルバムが発売予定でしたが、コロナ禍によるロックダウンでCDやアナログのプレス工場が稼働できないことで2021年以降に発売延期に。しかし、若干状況が落ち着いてきたことを受け、アルバムまでのつなぎに4曲入りEPを発売することになったのでした。

レコーディング参加メンバーはジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)、ダン・ウィルディング(Dr)という前作からのメンツに加え、2018年に新加入したトム・ドレイパー(G)という4人。前任のベン・アッシュは前作のレコーディングには参加してない、あくまでツアーメンバーという立ち位置でしたが、今回レコーディングに参加することなくバンドを去りました。

さてさて。詳細な制作背景や楽曲の細かな解説は、本作日本盤封入の掟ポルシェさんによるライナーノーツに詳しく書かれているので、ぜひとも日本盤を購入してこちらをお読みください(そもそも本作、日本ではストリーミングで聴くことができませんし、デジタルでは今のところBandcampぐらいでしか購入できないので。安価で入手できる日本盤がオススメです)。ここでは僕目線で、簡単な感想を残しておきたいと思います。

収録された4曲中、M-3「Under The Scalpel Blade」のみ既発曲であり、唯一次のアルバムにも収録される予定とのこと。つまり、初出となるほかの3曲はここでしか聴くことができないわけです。じゃあアルバムからのアウトていくなの?と思いきや、オープニングを飾る「The Living Dead At The Manchester Morgue」からして王道のCARCASS節(いわゆるデスメタル的スタイルへと移行してからの彼ら)に初期のグラインドコア的要素を散りばめた、「そうそう、こういうのを待ってた!」という感動・感激の仕上がり。約6分の中にいろんな要素が詰め込まれた、非常に情報量の多い1曲と言えるでしょう。

かと思えば、ビートルズの名曲パロディのような曲名の「The Long And Winding Bier Road」は、メロディックデスメタル的ツインリードのフレーズを交えつつもミドルテンポで突き進むスタイルと、これまでにあまりなかったコード進行が新鮮な1曲。「Under The Scalpel Blade」は昨年末から散々聴きまくってきた1曲が、ついにCDとして一般流通。これを聴いただけで、続くアルバムに対する期待が一気に高まったことをよく覚えています。

最後の「Slaughtered In Soho」は怪しい雰囲気と曲調が癖になる1曲で、これも従来のらしさと“次”が同時に楽しめる仕上がりです。こんな曲を本編に入れないなんて、次のアルバムはどんな完成度なんだ……と期待だけが高まるばかりです。

というわけで、4曲ってやっぱり物足りない(笑)。無駄に期待だけがどんどん高くなる一方で、さらにまとまった新曲を楽しめるまでにあと何ヶ月待たなきゃいけないんだ……と逆に悲しくなってきました。まあ、いろいろ仕方ないですわな。今はこの4曲を擦りするほどリピートして(デジタルの場合、すり減る代わりにデータ消失したら困るけど)、来たるX-DAYを待ちたいと思います。

 


▼CARCASS『DESPICABLE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

 

« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »

2021年1月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

カテゴリー

無料ブログはココログ